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感受性植物におけるウイルスの強毒性発揮機構の研究

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 厚 見    剛

学 位 論 文 題 名

感受性植物におけるウイルスの強毒性発揮機構の研究 学位論文内容の要旨

  細菌や糸状菌などは農薬で防除できるが、ウイルスには、ウイルス伝播に関わる昆虫 や菌類を標的にする間接的なものを除いて効果的な農薬は存在しない。そこで、ウイル ス病を防ぐには抵抗性品種が用いられる。その中のひとつ、過敏感反応(HR)による 抵抗性は病原体が持つ非病原性遺伝子と宿主が持つ抵抗性遺伝子の特異的な組み合わ せで誘導される。HRが誘導されると、病原体はその中または周辺領域に局在化し、感 染を拡大することができない。しかし、いくっかの例外を除いてほとんどの抵抗性は打 破されている。これは、ウイルス、特にRNAウイルスが変異を蓄積しやすい性質を持 っことに起因すると考えられている。この様に、現在までのところウイルスの感染自体 を安定的に抑制することは困難であり、また感染した後に防除する農薬もなぃことから、

違う視点でも防除策を考える必要がある。その為には従来の抵抗性発揮の機構に加えて、

病気の発症機構についての知見の蓄積が重要であるので、感受性植物におけるウイルス の強毒性発揮機構に関する研究をおこなった。

  クローバ葉脈黄化ウイルス(CIY'VV)はエンドウやソラマメなどのマメ科作物に感染 し、多くの 品種を枯 死させる。CIYW n030分離株(Cl‑n030)をエンドウのPI 118501 に接種すると、接種葉では1週間以内に細胞死が観察され、さらに全身に感染して植物 体全体で細胞死が見られる。細胞死は脈の周辺領域で誘導され、 脈えそ と呼ばれる病 徴が誘導さ れる。ま た、エンドウのPI 226564にCIYW 90‑lBr2系統(Cl‑90‑lBr2)を 接種すると、接種葉・上葉ともに 激しい黄化 を伴った細胞死が誘導される。本研究で はCIYWVが誘導する脈えそと激しい黄化の2つのタイプの致死性の全身細胞死が発揮 される機構を理解することを目指した。また、ソラマメから単離された新規宿主因子の 機能を解析し、ウイルス抵抗性との関係にっいても調べた。

  以前の遺伝解析からCl‑n030がPI 118501に誘導する致死性の全身細胞死は不完全優 性1因子(Cynl)によって支配され、またCynlが座上する領域はMedicago truncatula とのシンテニーから抵抗性遺伝子がクラスターを形成している領域であると示唆され ていた。そこで、Cl‑n030が誘導する細胞死はHRに伴う細胞死と類似した機構で誘導 されるのではないかと考え、抵抗性反応が起きているのかを調べた。その結果、細胞死 が生じた組織では抵抗性反応に重要なサリチル酸経路のマーカー遺伝子(.SA‑CHI)と HR関連経路の マーカー 遺伝子(HSR203J)の 発現量が顕著に上昇していた。Cl‑n030 (Cl‑WT)の変異株で あるCl‑CBとCl‑D193Yは 細胞死を誘導する能カが低下している     ―1211ー

(2)

が 、SA‑CHIとHSR203Jの 発 現を 誘導 する 能カ も低 下し てい た。 さら に、 サリ チル 酸 経 路を活性化する薬剤であるbenzo(1,2,3)thiadiazole‑7‑carbothioic acid S‑methyl ester (BTH)を 処 理 し た と こ ろ 、Cl‑CBお よ びCl‑D193Yの 細 胞 死 誘 導 能 が 部 分 的 に 回 復 し た。 以上 から 、Cl‑n030の強 毒性 には サリチル酸経路が高く活性化され ることが重要で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。Cl‑CBはPlとHCProに1箇 所 ず つ 、Cl‑D193YはHCProに1 箇 所 の ア ミ ノ 酸 置 換 が あ り 、Pl/HCProのRNAサ イ レ ン シ ン グ 抑 制 活 性 がCB、D193Y の 順 に 低下 して いる こと が分 かっ てい る。 そこ で、Pl/HCProのRNAサイ レン シン グ 抑 制活性が毒性発揮に重要なのかを調べ るために他種ウイルスのTomato bushy stunt virus が コ ー ド す るRNAサ イ レ ン シ ン グ 抑 制 因 子p19をCl‑D193Yベ ク タ ー に 導 入 し 、 毒 性 が回 復す るか 調べ た 。そ の結 果、Cl‑D193Y/p19は致 死性 の全 身細胞死 を誘導し、サリ チ ル 酸 経路 やHR関連 経路 を活 性化 する 能カ も回 復し て いた 。よ って 、RNA, サイ レ ン シングの抑制がCl‑n030の強毒性に重要であることがわかった。

  PI 226564でCl‑90‑lBr2分 離株 が致 死性の全身細胞死を誘導する原因 となるウイルス 因子 の探 索を 行っ た 。Cl‑90‑lBr2とCl‑n030のキメラウイルスを作成し 、P3が原因因子 の ひ と っで ある こと が分 かっ た。 しか し、P3配 列をCl‑90‑lBr2と交 換し たCl‑n030の 毒性 はCl−90‐1Br2より弱く、強毒性発揮にはP3以外の因子も必要であ ることが分かっ た。 また 、点変 異を導入した実験から、Cl_90‐1Br2のP3の28番目のア ミノ酸残基をア ル ギ ニ ン か ら メ チ オ ニ ン に 置 換 す る と 毒 性 が 上 昇 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。   こ れ ま で に ソ ラ マ メ でC1Yvvの 強 毒 性 に 関 わ る 宿 主 因 子 が スク リー ニン グさ れ 、 XYPPXrepeat構 造を 持つ 機 能未 知の 遺伝 子灯 閲が 単離 され た( 班J弼 )。 りW朋の 予 想 ORFは191ア ミ ノ 酸 を コ ー ド し 、N末 端 側 にXYPPXrcpeatを9つ 持 っ た グ リ シ ン に 富 む(2913%) タン パ ク質 であ った 。XYPPXrepeatは様々なタンパク質に 存在するが機能 は不明である。本研究ではMcDガ伽ロ6ピ門脇ロ朋ゴ弸ロを用い、A 細細俯鯲ズ(PVX)ベクタ ーで班|閲のホモログ候補く.舶灯58‐J,‐2)の発現抑制または過剰発現を行った。その 結果 、発 現抑 制でPVXに よる 病徴 が厳 しくなった。また、発現抑制個体 にC釘c甜肭6P′ m甜ロめW臘ぷや孔Mp閙DJロをvf朋ぷを 接種すると、コントロールと比較して早期に枯死し た。PVXベ クターでAめ艚58‐Jを過剰発現するとM【の病徴発現は遅延した。Tissueprint で 過 剰 発現 した とき のPVXの拡 がり を調 べる と抑 制さ れて いた 。ま た、 アグ ロバ ク テ リウ ムに よる 葉組 織 での 一過 的発 現系ではAり灯5出|の過剰発現でPVXの蓄積量が低下 し て い た。 以上 からAめ 灯 弼が ウイ ルス 抵抗 性ヘ 機能 して いる 可能 性が 示唆 され た 。   以 上の 結果 から 、Cl−n030はエ ンド ウPIl18501に おい て、 全身でHR様の機構で細胞 死を 誘導 してお り、通常病原体感染への防御機構に働くサリチル酸経路 が、逆に病気を 発症 させ る原因 となっていることが明らかとなった。また、Cl‐90 ̄1Br2のP1226564で の強 毒性 にはP3を 含 めた 複数 の因 子が 関与 して おり 、複 雑な 強毒性発 揮機構が存在す る可 能性 が考 えら れ た。 さら に、k158遺伝 子に よる 新規 なウ イルス抵 抗性が存在する 可能性が示唆された。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

感受性植物におけるウイルスの強毒性発揮機構の研究

  本 論 文 は 、 和 文122頁 、 図49、 表4、 引 用 文 献118を 含 む4章 か ら な り 、 他 に 参 考 論 文 2編が添えられている。

  クロ ーバ 葉 脈黄 化ウ イル ス(CIYV功は 、 多く のエ ンド ウ の品 種を 枯死 させ る 。CIYW n030 離 眛(Cl‑n030)をエ ン ドウ のPI  118501に 接種 する と、 接 種葉 では1週 間以 内に 細胞 死 が観察 さ れ 、 さ ら に 植 物 体全 体で 細 胞死 が見 られ る 。ま た、 エン ドウ のPI 226564CIYW 90‑lBr2 分離昧(Cl‑90‑lBr2)を接種すると、 接種葉・上葉ともに 激しい黄fピ を伴った細胞死が誘導さ れ る。 本研 究 ではCIy、Wが 誘 導す る脈 えそ と激 し い黄 化の2つ のタイプの致死陸の全身 細胞死 が発揮さ れる機溝を解析した。また 、ソラマメから単離された新 規宿主因子の機能を解析し、ウ イルス抵抗陸との関係について調べた。

  以 前 の 遺 伝 解 析 からChl030がP1118501に 誘 導す る致 死陸 の全 身 細胞 死は 不完 全陵 陸1因子

( 伽11)に よ って 支配 され 、 また の田1が 座ヒ する 領域 はAぬ出 閲即加ヱn田ぬぬとのシ ンテニ ーから抵 抗陸遺伝子がクラスターを 形成している領域であると示 唆されていた。そこで、Chl030 が 誘導 する 細 胞死 は、 ウイ ル ス抵 抗陸 隴溝のーっである過敏 感反応(HR)に伴う細胞死 と類似 した機構 で誘導されるのではなぃか と考え、抵抗陸反応が起きて いるのかを調べた。その結果、

細 胞死 が生 じ た組織では抵抗陸反 応に重要なサリチル酸経路 のマーカー遺伝子(5H‐C日 カとHR 関 連 経 路 の マ ー カ ー遺 伝子 ( 日S贓 カ の発 現量 が顕 著に 上 昇し てい た。 ま た細 胞死 を誘 導す る肯皀カ と、SA.e田と日SR嬲rの発現を誘導する肯めりfま相関することを明らかにした。さらに、

サリチル酸経路を漕陞イける薬剤であるbenZ0(1,2,3)thぬdiaZ01e.7.caめ淵血icacidS‐methy ester任lTH)を処理したところ、糸田胞死誘導が弱い変異株の誘導能を相補した。以上から、Cl‐11030 の 強毒 陸に は サリチル酸経路が高 く漕陸r匕されることが重要 であった。P1/HCPr0のRlAサイ レ ン シ ン グ 抑 制 活 性が 毒陸 発 揮に 重要 なの か を調 べる ため に、 他 種ウ イル スの 乃ma6us s加ロ¢ 恒rusがコード一尹るRNAサイ レンシング抑制因子p19を、 サイレンシング抑制活陸の弱い 変異株ベ クターに導入し、毒陛が回 復するか調べた。変異株は、 致死陸の全身細胞死を誘導し、

サ リチ ル酸 経 路やHR関 連経 路 を活 陞ゴ ける 能カ も 回復 して いた 。よ っ て、RI岨 サイ レ ンシン

郎 税

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上 増

授 授

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主 副

(4)

グの抑制がCl‑n030の強毒陸に重要であることがわかった。

  PI 226564でCl‑90‑lBr2分離昧 が致死 陸の全 身細胞 死を誘 導する 原因と なるウ イルス因 子と し て、P3が そのひ とつで あるこ とが分 かった 。しかし 、Cl伽 .1&12とcl‐n030のキメラウイル ス を 用 い た 解 听 か ら 、 強 毒f生 発 揮 に はP3以 外 の 因 子 も 必 要 で あ る こ と が 分 か っ た 。   こ れ ま で に ソラ マ メ でCWVVの 強毒 陸 に 関 わる 宿 主 因 子と し て 、Xn)PXr叩eat構 造 を 持 つ 機能オミ知の遺伝子丘亅68が単離された(レ盈苅め。本研究では八轟めな飢】aぬ1めa出ぬnaを用い、

馬 伽 め 洫 船X(PV幻 ベ ク タ ー でWH駟 の ホ モ ロ グ 侯 陏 (N轟 幻 駟 ・ 工翻 の 発 現 抑制 ま た は 過 剰 発 現 を 行っ た 。 そ の結果 、発現抑 制でPvXによる 病徴が厳 しくな った。 また、 発現抑 制個体 にaぬzm6er皿Dsaを 血 おや孔 伽駟皿 (醐を レむ珊を 接種す ると、 コント ロール と比較 して早 期 に 枯死し た。PVXベ クター で朋廬j駟.jを 週を暁 現する とPvXの癇 歎発現 |ほ, 延し、 拡がりが 抑 制され ていた 。また 、N触158.jの過剰 発現で朋【の蓄積量が低下していた。以上から此泣j68 がウイルス抵抗陸へ機能している可能性が示唆された。

  以 上 の結 果 か ら 、Clln030は エ ン ドウP1118501にお い て 、 全身 でHR様 の機購 で細胞 死を誘 導 してお り、通 常病原 体感染 への防御 機溝に働くサリチル醐径路が、逆に病気を発症させる原因 と なって いるこ とが明 らかと なった。 また、Cl.90‐lBr2のP1226564で の強毒 陸にはP3を含め た複数の因子が関与しており、複雑な強毒陸発揮機構が存在する可お旨陸が考えられた。さらに、

k158遺 伝 子 に よ る 新 規 な ウ イ ル ス 抵 抗 陸 が 存 在 す る 可 お 旨 陸 が 示 唆 さ れ た 。   以 上、本 研究は 、感受 陞植物 でウイ ルスが発揮する病原幽幾構に多くの新規知見をもたらし、

そ の 成 果 は関 連 学 会 にお い て も 高く 評 価 さ れてい る。よ って、 審査員 一同は 、厚見 剛氏が 博 士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有するものと認めた。

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参照

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