博士課程用(甲)
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(様式4)
学 位 論 文 の 内 容 の 要 旨
藤田 きしゅう 印
(学位論文のタイトル)
Serial dual single-photon emission computed tomography of thallium-201 and iodine-123 beta- methyliodophenyl pentadecanoic acid scintigraphy can predict functional recovery of patients with coronary artery disease after coronary artery bypass graft surgery
(201Tlと123I-BMIPPを用いた2核種同時収集心筋SPECTは、冠動脈疾患患者における冠動脈
バイパス術後の心機能の回復を予測することができる)
(学位論文の要旨)2,000字程度、A4判
【背景】
冠動脈疾患(CAD)患者において、冠動脈バイパス術(CABG)は、虚血心筋への血流を回復して 心機能を改善すると期待されるが、実際にはCABG後も心機能は必ずしも改善しない。その理由 の1つに虚血心筋のviabilityが挙げられる。このviabilityは心筋内の血流分布を反映する201Tl と、健常心筋の主栄養源である脂肪酸代謝を反映する123I-BMIPPを用いた2核種同時収集SPECT 検査にて評価できるが、同検査がCABG後の心機能の改善を反映するかどうかは未だ検討されて いない。そこで、虚血性の心機能低下を認めるCAD患者に、CABG施行前後に同検査を行ない、
術後遠隔期における心機能の改善を予測しうるかどうかを検討した。
【対象と方法】
単独CABGを要するCAD患者で、左室収縮能(LVEF)の低下した(50%未満)98名を対象とし、CABG 施行前と3週間後に2核種同時収集SPECT検査を施行した。AHA推奨の17分画毎に、両核種の集積 低下を0〜4の5段階でスコアリングして評価し(0:集積低下なし、1,2,3:軽度,中等度,高度集積 低下、4:集積なし)、全17分画でのスコアを合算してtotal defect score(TDS)とした。核種別 のTDSの差、すなわちTl-TDSとBMIPP-TDSとの差をmismatch scoreとして算定した。またCABG 施行前と6ヶ月後に左室造影(LVG)を施行し、LVEF,左室拡張末期容積係数(LVEDVI),左室収縮 末期容積係数(LVESVI)を測定した。さらにCABG前後での各測定値の変化をΔ値とし、BMIPP-TDS, Tl-TDS, LVEF, LVEDVI, LVESVIについて各々算定した。CABG施行前後でのLVEF値を比較し、5%
以上の改善を認めた62名をA群とし、改善を認めなかった残り36名をB群とした。
【結果】
A,B両群の患者背景は同等で、薬物治療の内容も、B群で利尿薬がより多く投与されていた他 は同等であった。
LVG結果は、CABG施行前では、A群においてB群より、EDVI値とESVI値はより低く、LVEF値は より高い傾向にあったが、有意差は認めなかった。施行6ヶ月後では、術前値に比し、EDVI値と ESVI値は、A群で有意に減少し、B群で有意に増加したが、LVEF値は、A群で有意に増加し、B群 で有意に減少した。ΔEDVI値とΔESVI値は、A群でB群より有意に低値であったが、ΔLVEF値は、
A群でB群より有意に高値であった。
2核種同時収集SPECT検査の結果は、CABG施行前では、Tl-TDSは、A群においてB群より有意に
博士課程用(甲)
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低値であったが、BMIPP-TDSは同等であった。ミスマッチスコア(BMIPP-TDS - Tl-TDS)は、A群 においてB群より有意に高値であった。施行3週間後では、術前値に比して、Tl-TDSとBMIPP-TDS ともに、A群では有意に減少したが、B群では有意な変化を認めなかった。ΔTl-TDSとΔBMIPP- TDSは、ともにA群においてB群より有意に低値であった。
本研究のテーマである心機能の改善、即ちΔLVEFと両核種でのΔTDS値を回帰分析すると、
ΔLVEFはΔTl-TDS (r=-0.462,p<0.001)とΔBMIPP-TDS (r=-0.631, p<0.001)とともに有意に 逆相関していたが、ΔBMIPP-TDSにおいてより強い相関を認めた。
またΔLVEFの予測因子を評価するために、ΔLVEF値と各因子の相関を解析した。単回帰分析 では、利尿剤の投与・術前EDVI値・術前ESVI値・術前LVEF値・術前Tl-TDS・術前ミスマッチ スコア・ΔTl-TDS・ΔBMIPP-TDSとの相関を認めた。重回帰分析(ステップワイズ法)では、術前 Tl- TDS値(multivarient β coefficient = -0.347,p=0.002)とΔBMIPP-TDS(multivarient β coefficient = -0.718, p<0.001)との有意な逆相関を認めたが、ΔBMIPP-TDS値においてより 強く相関していた。またカットオフ値を-3としてROC分析すると、ΔBMIPP-TDSはCABG施行6ヶ月 後のLVEF値の改善を、感度93.5%, 特異度91.2%, 精度92.9%において予測することができた。
【考察】
SPECT検査において、Tlの集積は心筋の血流を、BMIPPの集積は心筋の脂肪酸代謝を反映する。
両者の集積は共に、心筋が虚血に暴露されると低下し、血行再建後に増大する。
Tl集積量の変化をCABG前後で検討した報告では、CABG後にLVEF値が改善した群ではTlの集積 も増大したが、非改善群では増大しなかった。本研究においても同様に、A群即ち心機能改善群 ではTlの集積増大を認めたが、B群即ち非改善群ではTlの集積増大は認められなかった。
BMIPP集積量の変化をCABG前後での検討した研究は報告されていなかったが、本研究において、
Tlと同様に、A群即ち心機能改善群ではBMIPPの集積増大を認めたが、B群即ち非改善群では BMIPPの集積増大は認めなかったことが示された。
また本研究では、回帰分析にてΔTl-TDSとΔBMIPP-TDSはともにΔLVEFと逆相関し、ΔBMIPP- TDSにおいてより強い相関を認めたが、これは即ち、CABG後のTlとBMIPPの集積量増大が心機能 の改善を反映すること、さらにはBMIPPの集積量変化とより強く相関していたことを示している。
また重回帰分析にてΔLVEFと各因子の相関を解析すると、術前Tl- TDSとΔBMIPP-TDSが相関 しており、ΔBMIPP-TDSにより強い相関を認めたが、これも即ち、CABG後のBMIPPの集積量増大 から心機能の改善を予測し得ることを示している。
なおTlとBMIPPの集積が乖離した領域はバイアビリティーを有する心筋とされ、心筋機能が 虚血によって低下したものの、血行再建後に改善する可能性があると言われる。本研究におい ては、ミスマッチスコア(BMIPP-TDS - Tl-TDS)がバイアビリティーを有する心筋を反映すると 考えられ、実際に群間比較ではA群すなわち心機能改善群で有意に高値であり、また単回帰分析 ではΔLVEFと有意な相関を認めた。しかし重回帰分析ではΔLVEFとの有意な相関は認めず、
CABG後の心機能改善に対する独立した予測因子とは言えなかった。この理由としては、石灰化 や径の狭小化等の解剖学的な理由により標的血管に血行再建がなされず、バイアビリティーを 有するものの虚血が解除されず、心機能の改善に寄与し得なかった領域が存在したためと考え られる。
【結論】
201Tlおよび123BMIPP 2核種同時収集SPECTを、CABG施行前および3週間後に施行して算定した ΔBMIPP-TDSは、CABG施行6ヶ月後における心機能の改善を予測することができる。