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1. 緒言 日本人女性における平均寿命の推移は緩やかになったものの,2011 年度において 86 歳と世界最高水準であり, 長期的には依然上昇傾向にあると考えられる 1). この現状に伴い, 高齢者医療費の負担の増加などの社会問題が懸念されている. そこで近年, 人々が生涯にわたり自立し生活が出来る

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Academic year: 2021

シェア "1. 緒言 日本人女性における平均寿命の推移は緩やかになったものの,2011 年度において 86 歳と世界最高水準であり, 長期的には依然上昇傾向にあると考えられる 1). この現状に伴い, 高齢者医療費の負担の増加などの社会問題が懸念されている. そこで近年, 人々が生涯にわたり自立し生活が出来る"

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(1)

42

<研究資料>

中高年女性登山愛好者の運動実施と身体特性

渡邊夏海

1)

,石田良恵

2

,川西正志

3

小川佳代子

2)

,山本直史

4)

,萩裕美子

5)

Exercise habits and physical characteristics of middle-aged female mountain climbers

Natsumi Watanabe1), Yoshie Ishida2),Masashi Kawanishi3),

Kayoko Ogawa2),Naofumi Yamamoto4),Yumiko Hagi5)

ABSTRACT

The study aimed to characterize the daily physical activity, physical fitness, body composition and plasma metabolite concentration of middle-aged female mountain climbers. The subject of this study were middle-aged female mountain climbers (MC) belonging to the Japan Workers Alpine Federation (n=45, age=63.2±6.5 yr), and women (control group) who did not regularly performed any exercise (n=76, age=66.0±4.8 yr). In May 2011, each participant completed a physical activity questionnaire, and underwent a examination, anthropometric measurement and blood sampling.

The study yielded the following four results:

・The MC tended to have a higher frequently than a control group.

・The BMI, waist circumference, and body fat percentage were significantly lower in the MC than the control group.

・HDL cholesterol was significantly higher in the MC than the control group. ・The performance of 10-repetition, one-leg standing balance with eyes open and sit

up was significantly higher in the MC than the control group.

These results showed that habitual physical activity was need by the MC to maintain good physical fitness, body composition, and plasma metabolite concentration. 《キーワード》中高年女性,登山,体力

middle-aged female,mountain climbing,physical fitnes

1) 東海大学大学院 体育学研究科 〒259-1292 神奈川県平塚市北金目 4-1-1

Graduate School of Physical Education, Tokai University. 4-1-1 Kitakaname,Hiratsuka,Kanagawa,259-1292 JAPAN

2) 女子美術大学 〒166-8538 東京都杉並区和田 1-49-8

Joshibi University of Art Design,1-49-8 Wada, Suginami, Tokyo, 166-8538 JAPAN 3) 鹿屋体育大学 〒891-2393 鹿児島県鹿屋市白水町 1 番地

National Institute of Fitness and Sports in Kanoya. 1 Shiramizu-cho, Kanoya, Kagoshima, 891-2393 JAPAN 4) 愛媛大学教育学部 〒790-8577 愛媛県松山市文京町 3 番

Faculty of Education, Ehime University. 3 Bunkyo-cho,Matsuyama, Ehime, 790-8577 JAPAN 5) 東海大学体育学部スポーツ・レジャーマネジメント学科 〒259-1292 神奈川県平塚市北金目 4-1-1

Department of Sports & Leisure Management, Tokai University. 4-1-1Kitakaname,Hiratsuka,Kanagawa,259-1292 JAPAN

(2)

43

1.緒 言

日本人女性における平均寿命の推移は緩やかになっ たものの,2011 年度において 86 歳と世界最高水準で あり,長期的には依然上昇傾向にあると考えられる1) この現状に伴い,高齢者医療費の負担の増加などの社 会問題が懸念されている.そこで近年,人々が生涯に わたり自立し生活が出来るよう健康寿命を延ばすため に,各ライフステージに対忚した運動やスポーツの機 会が求められている.スポーツライフ・データ2010 による種目別運動・スポーツ実施率では50 歳代,60 歳代,70 歳以上の年代で登山やハイキングが上位 10 位以内にあげられており,登山やハイキングに注目が 集まっていると考えられる2).一方で,平成23 年夏期 における全山岳遭難者に占める中高年(40 歳以上)の 遭難者割合は76.8%と依然として高い.山岳遭難の態 様別では,転落・滑落,疲労・病気,道迷い,転倒が 多く,これらで全体の87.9%を占めている3).山本ら4) によると中高年登山者にとって最大の事故原因が転倒 であり,中高年の登山者が疲労やトラブルを防ぐには, 体力の強化が重要であることが示唆されている.安全 に山に登るためには,一定の体力が求められ,日頃か らの積極的な身体活動も重要と思われる. 中ら5)は,筋力は加齢に伴い低下し,特に筋力およ び平衡性において男性よりも女性の方が务っているこ とを報告している.さらに女性は閉経後,女性ホルモ ンの一つであるエストロゲン分泋量が低下し,身体に さまざまな影響を及ぼす.エストロゲン欠乏の女性は 骨質量の減尐が大きく,骨粗鬆症,転倒による骨折の 危険性が増大する.エストロゲンの低下は,心臓血管 系の疾患と関連があるといわれているLDL コレステ ロールの上昇をもたらすと考えられている6).このよ うに中高年女性においては,加齢および閉経後の身体 的変化による健康上の問題も報告されている. 一方で,登山場面の下りにおける脚筋の負担は通常 の歩行やウォーキングよりも脚筋の負担が大きくかか ることから7),適正に行えば健康の維持増進に対する 効果も高い8)とされている.これまで日常的に登山を している人々の身体特性について男女を問わずに報告 されたものはあるが9),中高年女性登山愛好家の体力 や身体特性について明らかにした報告は尐ない.前文 で述べたような健康問題を抱えている閉経後女性にお いて,登山を愛好することが身体組成や体力に何らか の影響を及ぼすのかどうか,明らかにすることが必要 である. そこで本研究では,中高年女性の登山愛好者を対象 に日常の身体活動,体力,身体組成,血液性状を明ら かにして,同年代の一般女性と比較,検討することに よりその特徴をとらえることを目的とした.

2.研究方法

2.1 対象者 対象者は日本勤労者山岳連盟に属する中高年女性 (以下,登山愛好家)45 名(63.2±6.5 歳)である. また,健康運動教室に参加を希望した同年代女性(以 下,対照群)76 名(66.0±4.8 歳)を対照群とした.対照 群は健康運動教室参加者のベースラインデータであり, 特定の運動習慣を持たない人々である. 各対象者に対しては,事前に口頭や書面にて本研究 の目的,方法,趣旨,注意点,自由意志による参加で あること,測定に伴う危険性並びにそれに対する対処 法,プライバシー保護等について説明し,本研究参加 の同意を得た.また本研究は,東海大学「人を対象と する研究」に関する倫理委員会の承認を得て実施した. 2.2 測定項目および測定方法 2.2.1.身体組成

身体組成では身長,体重,body mass index(以下, BMI),体脂肪率,腹囲を測定した.体脂肪率は超音波 皮脂厚計SM306(株式会社誠鋼社製)により測定した. 腹囲はメジャーにより測定した. 2.2.2.血液性状および血圧 被験者には,前日から激しい運動を避け,21 時以降 は飲食禁止とすることを指示した.採血された血液に ついて,HDL コレステロール(以下,HDL-C),LDL コレステロール(以下,LDL-C),中性脂肪(以下, TG),空腹時血糖(以下,血糖)を測定項目として取 り上げ,2 群の平均値を比較検討した.これらの血液 学的検査における項目の分析は,保健科学研究所に委 託した. 収縮期血圧および拡張期血圧は,椅子座位の姿勢で 安静時に水銀柱式血圧計(株式会社三恵社製)によっ て測定した. 2.2.3.体力測定 体力測定では,握力,長座体前屈,いす立ち上がり, 開眼片足立ち,上体起こしを測定した.握力は握力計 GRIP‐D(竹五機器工業株式会社製)を用いて左右交 互に2 回ずつ測定を行い,左右それぞれの最高値を平 均し測定値とした.長座体前屈はデジタル式長座体前 屈計(株式会社トエーライト製)により測定した.2 回測定し最高値を測定値とした.いす立ち上がりは椅 子に座った状態から膝が完全に伸びるまで立ち上がり, 座った状態に姿勢を戻すまでを1 回とし,10 回の時間 をストップウォッチにより測定した.2 回測定し,最 高値を測定値とした.開眼片足立ちはストップウォッ チを用いて,開眼状態で片足起立時間を左右1 回ずつ 測定し,最大値を測定値とした.ただし,最大測定値

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44 74% 26% している していない 0 10 20 電車・信号待ちの時片足立ち 階段登り フィットネス(有酸素運動) ピラティス ハイキング ノルディックウォーキング ステップマシン 水中歩行 インディアカ アクアビクス 太極拳 エアロビクスダンス ランニング ヨガ 体操 水泳 筋トレ ストレッチ ウォーキング は120 秒とした.上体起こしは背中がマットから離れ 両肘が両大腿部につくまでを1 回とし,ストップウォ ッチを用いて30 秒間の回数を測定した. 2.3 統計処理 日常の身体活動および登山の実施状況は,その実態 を確認するために卖純集計を行った.また,2 群間の 比較検討を行うために各項目の平均値の差を対忚のな いt 検定で行なった.統計処理における有意水準はそ れぞれ5%とした.使用した統計ソフトは IBM の SPSS Ver.17 である.

3.結 果

3.1 登山愛好者の特性 登山愛好者の登山実施状況は,月2-3 回程度が 37%, 月1 回程度が 30%であった(図 1).平均登山時間は 7 時間以上のものが7%,5-6 時間のものが 60%,3-4 時 間のものが25%,1-2時間のものが3%であった(図2). 登山継続年数については平均で23.2±15.9 年,一番長 い者で64 年,一番短い者で 2 年であった.登山愛好者 が登山をするために週2 回以上の定期的な運動をして いるものは74%であった(図3).週 2 回以上の定期的 な運動をしている種目では,1 位が「ウォーキング」, 2 位が「ストレッチ」であった.その他には「水泳」 や「ランニング」などの有酸素運動を実施している者 や,「筋力トレーニング」などもあげられた.また,「階 段上り」や「電車・信号の時の片足立ち」など日常に ある物や機会を利用した運動もあげられていた(図4). 登山をするために気を付けていることは,「ストレッ チ」,「なるべくエレベーターやエスカレーターを使わ ず徒歩で移動する」や,「筋力トレーニング」などがあ げられた.その他,「食事の栄養バランスに気を付ける」, 「禁酒」や「睡眠時間を十分にとること」など日常生 活の中で気を付けている項目がみられた(図5). 図1.登山頻度 図2.平均登山時間 図3.週 2 回以上の定期的な運動 図4.週 2 回以上の定期的な運動(種目)

(4)

45 表1.登山愛好者と対照群の身体組成の比較 身体組成項目 登山愛好者(N=45) 対照群(N=76) M SD M SD t p ES 年齢(years) 63.2 6.5 66.0 4.8 2.500 .015 0.48 身長(cm) 153.7 4.9 152.4 5.5 1.301 .196 0.25 体重(kg) 50.4 6.3 52.5 6.3 1.778 .078 0.34 BMI(kg/m2) 21.3 2.5 22.6 2.7 2.583* .011 0.49 腹囲(cm) 77.0 8.4 81.2 8.0 2.731** .007 0.52 体脂肪率(%) 26.3 3.2 30.4 6.6 4.637* .010 0.88 M=平均値,SD=標準偏差,ES=効果量,*<0.05 **<0.01(両側検定) 表2.登山愛好者と対照群の血圧及び血液性状の比較 血圧及び血液性状項目 登山愛好者(N=45) 対照群(N=76) M SD M SD t p ES 収縮期血圧(mmHg) 122.3 15.8 127.6 19.1 1.579 .117 0.30 拡張期血圧(mmHg) 76.4 10.5 73.0 9.9 1.782 .077 0.34 LDL-C(mg/dl) 141.3 29.2 139.5 45.2 0.243 .808 0.05 HDL-C(mg/dl) 82.1 14.6 68.7 13.6 5.083* .010 0.97 中性脂肪(mg/dl) 88.0 43.2 89.8 38.3 0.233 .816 0.04 血糖(mg/dl) 94.7 8.7 96.0 12.7 0.582 .562 0.11 M=平均値,SD=標準偏差,ES=効果量,*<0.05 **<0.01(両側検定) 表3.登山愛好者と対照群の体力測定結果の比較 体力測定項目 登山愛好者(N=45) 対照群(N=76) M SD M SD t p ES 握力(kg) 25.6 3.5 26.3 5.1 0.966 .336 0.18 長座体前屈(cm) 40.0 8.1 41.0 9.8 0.630 .530 0.12 いす立ち上がり(秒) 9.3 1.5 11.1 4.1 3.294** .001 0.63 開眼片足立ち(秒) 114.6 17.2 102.7 32.8 2.606* .010 0.50 上体起こし(回) 15.1 4.7 11.0 6.6 3.978* .010 0.76 M=平均値,SD=標準偏差,ES=効果量,*<0.05 **<0.01(両側検定) 図5.登山をするために気をつけていること 3.2 身体組成 表.1 に登山愛好者と対照群の身体組 成の比較を示した.2 群とも身体組成 の平均値においては正常値であった. BMI(p<0.05),腹囲(p<0.01)およ び体脂肪率(p<0.05)は対照群よりも 登山愛好者の方が有意に低い値であっ た.身長および体重は,登山愛好者と 対照群の2 群間に有意な差は認められ なかった. 3.3 血圧および血液性状 表.2 に登山愛好者と対照群の血圧 および血液性状の比較を示した.2 群とも血液性状の平均値においては 正常値であった.しかしながら, HLD-C は対照群よりも登山愛好者 の方が高い値であった(p<0.05). LDL-C,TG,血糖,収縮期血圧お よび拡張期血圧は,いずれも登山愛 好者と対照群の2 群間に有意な差は 認められなかった. 3.4.体力測定結果 表.3 に登山愛好者と対照群の体力 測定結果の比較を示した.いす立ち 上がり(p<0.01),開眼片足立ちおよ び上体起こし(p<0.05)は対照群よ りも登山愛好者が高い数値となった. 握力と長座体前屈において両群に有 意な差は見られなかった.

4.考 察

登山愛好者の登山実施状況は,月2-3 回程度が 37%, 月1 回程度が 30%であり,この 2 群を合わせて 60% 以上の人が年間12 回以上登山をしていることが分か った.我が国の登山における年間平均活動回数は5.1 回であり10),本研究の対象者となった登山愛好者の年 間登山回数は多いといえる.また,登山継続年数は平 均23 年であり,40 歳代ごろから登山を続けているこ とが分かった.これはレジャー白書の性・年代別余暇 活動参加率によれば,登山は40 歳代から増加する傾向 にあると報告されており10),本研究結果も同様の傾向 を示し,日本人の中高年女性の一部を反映した集団で あるといえる.さらに,登山愛好者が週2 回以上の定 期的な運動をしているものは74%であった.スポーツ 白書によると60 歳代における週 2 回以上の運動・スポ ーツの実施者は62.9%2)であり,これから比較をする と登山愛好者の運動実施率は高いといえる.また種目 をみると,「ウォーキング」や「ストレッチ」など,運 動強度は低いが,日常生活のなかで時間を自ら確保し 行うものが多かった.しかし,一方で「階段上り」や 0 10 20 移動 ストレッチ 食事 ウォーキング 筋トレ 体重管理 活発な行動 睡眠時間 ランニング 体力の維持 エアロビクス 水泳 ヨガ 筋肉保持 体操 禁酒 バドミントン ケア ステップマシン 月に1回以上山に行くこと 山の情報収集 表1.登山愛好者と対照群の身体組成の比較 表2.登山愛好者と対照群の血圧及び血液性状の比較 表3.登山愛好者と対照群の体力測定結果の比較

(5)

46 「電車・信号の時の片足立ち」など日常生活の中の短 い時間で出来る運動も実施されていた.登山愛好者は 登山活動の他に,日常生活の中に時間を確保し行う運 動から,時間を確保しなくても手軽にでき,生活活動 の中で意識して行える運動まで,多種多様な運動をし ていることが明らかとなった.登山をするために気を 付けていることは,1 位に「ストレッチ」があげられ ており,その理由として毎日家で手軽にできるためで あることが推測される.次に,10 名が回筓していた「な るべくエレベーターやエスカレーターを使わず徒歩で 移動する」という行動は,特定の場所をとらず気軽に 出来る運動である.その他では,「食事の栄養バランス に気を付ける」,「禁酒」や「睡眠時間を十分にとるこ と」など運動以外にも合わせて食事や休息に目を向け ている者もいた.これらのことから,登山愛好者は登 山をすることをきっかけにして日頃から自らで工夫を し,身近で継続のしやすい運動を実施していることが 明らかとなった. 身体組成,血圧および血液性状の平均値においては2 群とも適正状態であった.これは,いずれも医師から 運動することを許可されている人々の集団であったた めであると推測される. BMI,腹囲および体脂肪率は 登山愛好者が有意に低い値であった.これは対照群が これから健康運動教室に参加する人々で,減量や筋力 強化を目的に集まった集団であった.そのため,体重 や運動不足を気にして参加したことが推測される.運 動習慣がない者は運動習慣を有する者に比べて腹囲増 加の危険度が高い11)ということから,日頃から登山を 定期的に行っている登山愛好者よりも対照群のBMI, 腹囲および体脂肪率が高い結果となったことが考えら れる. また,HDL-C においては登山愛好者が対照群より高 い結果となった.これまでの中高齢者を対象とした運 動介入研究において,低・中強度の運動強度がHDL-C の増加に関与しているという報告がなされている12,13) また,男性が対象ではあるが,横断的研究において高 齢者でも運動を継続している群はしていない群に比べ てHDL-C が高いという報告もある14).また,1 日の 歩数量の増加に伴いHDL-C は有意に増加するという 報告もある15).登山愛好者は週2 回以上定期的に歩数 が増加するような活動を行っている人が74%であった. このことから,登山愛好者が日頃から積極的な身体活 動をしていることがHDL-C に影響を及ぼしているこ とが推測される.一方で,樋口16)らにおける水泳運動 が閉経後女性のHDL-Cに及ぼす影響を検討した結果, 定期的な水泳運動はHDL-C の改善には不十分である との報告がある.しかし,本研究では登山やウォーキ ングを中心とした運動でことが,これらの結果と異な るものとなったと推測される.さらに,運動の効果は まずHDL-C の上昇という形で現れることが多く,体 重が不変であればLDL-C の変化は大きくないとの報 告17)とも一致する.このことが,体重に有意な差のな い2 群において LDL-C の有意な差も見られなかった 理由と推測される.体力測定結果においては,いす立 ち上がり,開眼片足立ちおよび上体起こしは対照群よ りも登山愛好者が高い値となった.上体起こしおよび いす立ち上がりが高い結果となったことは石田らの先 行研究9)とも一致する.上体起こしおよびいす立ち上 がりの成績は,日常生活の能力と密接に関連する9) されている.筋力は加齢の影響を受けやすいことから, 定期的に運動を行っていない対照群において加齢の影 響を受けていたと考えられる.また,いす立ち上がり と開眼片足立ちの結果は,2 群の下肢筋力の差が関与 していることが推測される.浅五18)は閉経後の中高年 女性においては,歩行の実施などによって日常生活に おける身体活動量を確保することは,下肢の筋機能を 維持する上では有効であると報告している.また,6 ヵ月間の低強度・低速度のトレーニングにより下肢筋 力が向上したという報告19)もある.これらの先行研究 から,登山愛好者が日頃から登山をするためにトレー ニングを行うことによって,結果的に身体活動量を確 保し,一定強度以上の継続的なトレーニングが行われ たことが,2 群の体力の差に影響していると考えられ る.握力においては,2 群間に有意な差は認められな かった.これは登山愛好者が定期的に握力を鍛える運 動や行動をとっていないため,影響が見られなかった ものと考えられる.

5.まとめ

定期的に登山をしている中高年女性(登山愛好者) の日頃の身体活動を明確にし,同年代女性(対照群) の身体組成,血液性状および体力について比較,検討 した.登山愛好者の運動実施状況は全国データと比較 して頻度が高い傾向が見られた.登山愛好者は対象群 と比較して,身体組成ではBMI と腹囲と体脂肪率が低 く,血液性状のHDL-C が高かった.体力測定ではい す立ち上がり,開眼片足立ちおよび上体起こしは登山 愛好者が対照群より高い結果となった. 以上の結果から,定期的に登山をすることや,登山 をするために日常的に心掛けている行動などが身体組 成や血液性状,体力に好影響を与えていることが推察 された.したがって,登山愛好者は登山という楽しみ をもつことによって,結果的に健康的な生活習慣を獲 得している中高年女性のモデルの一つとして考えられ る.しかし,本研究は横断研究であり因果関係や要因 を明確にすることはできていない.今後,被験者の数 を増やして登山頻度や強度も踏まえた検討を行うとと もに,より客観性の高い方法で日常の身体活動量を把 握し,身体組成や体力との関連を分析していきたい.

(6)

謝 辞 本研究をまとめるにあたつて

,鹿

屋体育大学の貯筋 プロジェクトチームのJ財寸尚浩先生

,武

岡佑磨先生に 多大なるご協力をいただいた。この場を借 りて御礼申 し上げる。また

,本

研究は

,平

成22年度∼24年度科 学研究費補助金基盤研究C「閉経後女性の筋力低下予 防のプログラム開発と継続隆に着目した支援プログラ ムの検討」(研究代表者:ガ確渓子ち課題番号:20500600) を受けて実施した研究成果の一部である。 引用 ・参考 蛾

1)=股

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