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貨物駅改良による鉄道貨物輸送の効率化とその評価
政策研究大学院大学 まちづくりプログラム
MJU17701 石川
尚承1.
はじめにi鉄道貨物輸送は、現状国内輸送の約
5%(トンキロ
ベース)のシェアを担い、主に長距離帯において一定 の役割を果たしている(図1)。その大部分を占める日
本貨物鉄道㈱(以下、JR
貨物)は、1987
年の国鉄改革 直前に実施された輸送体系の転換に伴い、コンテナ 輸送に重点を置き、輸送体系に合わせた貨物駅の改 良等、30
年間で効率化施策を進めてきたが、貨物流 動と施策との関係性について計量的な分析は行われ ていない。現実には、CO2排出量の削減や物流の効 率化、また近年の物流業界における人手不足も受け、国内貨物輸送においてトラックから鉄道や海運への モーダルシフト政策が進められている。しかしなが ら、一般の個人客が貨物鉄道を利用する機会はほと んどなく、情報へのアクセスが限定的であり、ファク トファインディングの点からも物流政策に対する貢 献の余地があると考える。そこで本研究では、効率化 施策の一つである貨物駅の改良に着目した。そして
「全国貨物純流動調査(物流センサス)」を用いて輸送 機関選択モデルを構築し、輸送機関選択に与える施 策の影響を分析した。それにより、鉄道貨物輸送と国 内物流という二つの視点から見た駅改良施策を評価 する。
2.
貨物駅の改良施策の概要本研究で着目する貨物駅の改良は、コンテナ取扱 駅について、旧来の輸送体系に対応した形態(図
2)
から、コンテナ輸送に適したE&S
方式iiと呼ばれる形態(図
3)に改良するものである。旧来型の駅は、
当時の車扱輸送iiiに対応した荷役設備を改良してコ ンテナ駅化したものであり、列車が到着・出発する 着発線とコンテナを積卸す荷役線
(
コンテナホーム)
が離れており、また列車の編成長に対してコンテナi 本稿は論文を要約したものであり、参考文献等は論文を参照さ れたい
ii着発線荷役方式(Effective&Speedy container handling
system)
ホームが十分な長さを確保できていない駅が多い。
そのため、貨車を駅構内で何度も行き来させる作業 が必要となり、列車とトラックとの間のコンテナ引 受け・引渡しに時間を要する。一方、E&S方式は列 車が到着・出発する着発線に隣接してコンテナホー ムが設置されており、コンテナ引受け・引渡しを迅 速に行うことができる。駅での作業時間を旧来型と
E&S
方式とで比較すると、列車到着後・出発前のいずれも大幅な時間短縮が可能である。これにより、
トラックと鉄道の連携がスムーズとなり、コンテナ 輸送の効率化が可能となる。
110
駅(作業時間)
列車到着後:110分、列車出発前:115分図
2 旧来型の貨物駅
29
駅(作業時間)
列車到着後:19分、列車出発前:65分図
3 E&S
方式の貨物駅この
E&S
方式への駅改良は、2017
年4
月現在で コンテナを取扱う貨物駅全139
駅のうち、29駅で 実施済みである。これらの駅は整備事由により基盤 整備事業、整備新幹線事業、都市計画事業の各事業 に伴うもの、国・自治体の補助事業を活用したも の、JR貨物の自社施策によるもの、以上の5
種類 に分類できる。基盤整備事業は、貨物駅等の鉄道施設を移転集約 し、生み出した用地の売却益を国鉄長期債務の返還 に当てるもので、国鉄改革のスキームの一つとして 定められた事業である(JR貨物関連:205件)。基盤 整備事業は
JR
貨物の施策ではなく、従前の業務機 能が確保される機能補償が前提で増加増強の概念は 排除されているが、E&S
方式はコンテナ輸送の効iii 貨車一両単位での輸送
図
1 輸送機関距離帯別分担率(2015
年度)0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0
分担率(
%
)分担率_鉄道 分担率_内航海運 分担率_自動車
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率化の他、旧来型と比較して用地のスリム化が可能 であり、用地を生み出す必要のある基盤整備事業に も適した構造であったことから、対象駅の多くがE&S
方式として整備されてきた経緯がある 。補助事業を活用した事例は、福岡県北九州市にお
いて
E&S
方式の駅を新たに整備し、近接する旧来型の駅を移転した「門司貨物拠点整備事業」が挙げ られる。1997年に閣議決定された「総合物流施策 大綱」において「物流効率化による経済構造改革特 別枠」が設けられ、それによる「幹線鉄道等活性化 事業」として事業費の一部に対して国庫補助がなさ れている。また北九州市は施設を整備・保有する第 三セクター会社を設立し、工事費の一部補助を行っ ている。効果としては、整備前と比較し、所要時間 の短縮の他、コンテナ発着量が増加し
CO
2排出量も 削減された。なお、「幹線鉄道等活性化事業」では 他にも貨物鉄道のインフラ整備に対して補助が実施 されているが、E&S方式駅の整備に関する件名は「門司貨物拠点整備事業」のみである。
一方で、E&S方式の駅は現状全体の約
20%と、
改良は必ずしも進んでおらず、大多数の駅がコンテ ナ輸送に適合していない。改良が進まない理由とし ては、建設費等多大な初期費用を要する点、また工 事中も輸送は継続する必要があるため、全く同じ場 所には建設できず、多くの場合に整備先の土地の確 保を要する点等が考えられる。実際に、これまでの 改良は、既設の貨物駅が支障するため移転を要する タイミングで実施されたものが大半である。
3.貨物駅の改良施策に関する分析 3.1
分析の目的と方法本研究の目的は、2.で述べた貨物駅の改良施策が 輸送機関選択に与える影響を分析し、施策を評価す ることである。分析に使用するデータは「物流セン サス」3回分(2005年、2010年、2015年実施)の
3
日間流動調査データ(都道府県単位の集計データ)と した。輸送機関としては、物流センサスの代表輸送 機関が鉄道コンテナもしくは営業用トラックである 流動を選定した。輸送機関分担率より、内航海運は 長距離帯において高いシェアを持っており、鉄道と 競合する一方で補完関係でもあると考えられるため 本研究では分析対象外とした。また、物流センサス の区分上はフェリーがトラックに含まれるが、本研 究では内航海運と同様に対象外とし、航空機につい ては輸送機関分担率から同じく対象外とした。輸送距離に関しては、都道府県庁所在地間の道路
距離が
300km
以上の都道府県間の流動を対象とし同一都道府県内と沖縄県発着の流動は除いた。
300km
は、図1
の輸送機関分担率より、輸送機関の代替性がある距離帯と判断し採用した。JR貨物 の距離帯別輸送量(図
4)でも、輸送距離 300km
を境 に輸送量に大きな差があることが分かる。また、物 流センサスの対象となっている輸送品類は表1
に示 す9
種類である。図
4 JR
貨物 距離帯別輸送量(コンテナ) 表1
物流センサスにおける輸送品類3.2 分析
3.2.1 推定モデルと基本統計量
下記の推定式を用い、ロジットモデルを適用し推 定した。ロジットモデルでは、荷主は最も効用の高 い輸送機関を選択すると仮定されている。鉄道コン テナの効用は式(1.1)、営業用トラックの効用は式
(1.2)で表され、鉄道コンテナの効用に駅改良施策に
関する変数(駅E&S
方式×品類ダミー)を組み込ん でいる。また、式(1.1)と式(1.2)を用い、効用の差は 式(2)のように表すことができる。そして、各輸送機 関の効用もしくは効用の差を用いて、鉄道コンテナ を選択する確率は式(3.1)、営業用トラックを選択す る確率は式(3.2)で求められる。推定に用いた変数を表
2
に示す。被説明変数は物 流センサスにおける鉄道コンテナの平均ロットを考 慮し、一荷主が5
トンのロットで貨物を輸送すると 仮定した場合に、鉄道コンテナと営業用トラックの どちらを選択するかというダミー変数である。本研0 1,000 2,000 3,000 4,000
1
~1 0 0 1 0 1
~2 0 0 2 0 1
~3 0 0 3 0 1
~4 0 0 4 0 1
~5 0 0 5 0 1
~6 0 0 6 0 1
~8 0 0 8 0 1
~1 0 0 0 1 0 0 1
~1 2 0 0 1 2 0 1
~1 4 0 0 1 4 0 1
~1 6 0 0 1 6 0 0
以上輸送量(千トン)
距離帯(km)
1995年 2005年 2015年
品類 品目
農水産品 麦、米、野菜・果物、水産品等
林産品 原木、製材等
鉱産品 石炭、鉄鉱石、石灰石、原油等 金属機械工業品 鉄鋼、産業機械、自動車部品、精密機械等 化学工業品 セメント、LNG・LPG、化学薬品、合成樹脂等 軽工業品 パルプ、紙、食料工業品、飲料等
雑工業品 書籍、衣服、文房具、家具、その他の日用品等 排出物 金属スクラップ、廃プラスチック、汚泥等 特殊品 動植物製飼肥料、ドラム缶、段ボール箱等
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究では、非集計のロジットモデルを用いて推定して いる。ただし、使用データは集計データであり、OD・品類・年度ごとの鉄道コンテナと営業用トラッ
クそれぞれの輸送トン数である。輸送一件ごとに荷 主が鉄道コンテナと営業用トラックのどちらを選択 したかが分かるわけではない。そこで、貨物のロッ トサイズを5
トンと仮定することで集計データを非 集計データに変換し、非集計ロジットモデルを用い て推定することとした。説明変数としては、駅改良施策に関して発着県そ
れぞれの
E&S
駅数の和と品類ダミーの交差項を用いた。駅数の和としたのは、発地・着地のいずれか
に
E&S
方式の駅があれば、その影響が出ると想定したためである。
表
2 分析に用いた変数
また、トップリフターは大型コンテナを取り扱う 荷役機械であり、発着駅双方に配置されていないと 大型コンテナの輸送が不可能であるため、発着県の 配置駅数を掛け合わせている。輸送距離、運賃を算 出する際の代表駅は、JR貨物の集配距離に関する 調査により貨物駅の集配エリアが概ね
50km
圏内で ある点と、駅の取扱内容を考慮し、都道府県庁から50km
圏内の駅から選定した。運賃は、鉄道が「貨 物時刻表」掲載の5
トンコンテナで輸送する運賃(
集荷・配達含む)
、トラックが4
トン(
貸切)
の実勢運 賃を用い、その差とした。貨物駅までの集荷・配達 距離には、先述のJR
貨物調査資料による平均集荷・配達距離を用いた。
3.2.2 分析結果
推定結果を表
3
に示す。尤度比インデックスより 本モデルはまずまずの適合度と判断できる。E&S 駅数と品類ダミーの交差項では、9
品類のうち8
品 類で符号が正で統計的に有意となり、E&S駅が増 えると鉄道の選択確率は高くなると考えられる。一 方、排出物では符号が負で統計的に有意となったが 理由については後ほど考察する。トップリフター相 互配置は、符号が正で統計的に有意となった。集 荷・配達距離については、どちらも符号が負で統計 的に有意となり、集荷・配達距離が延びると鉄道の 選択確率は低下する結果となった。説明変数が1
大 きくなった場合の選択確率の変化を示す限界効果は 表4
の通りである。E&S駅数と品類ダミーの交差 項では、農水産品はE&S
が1
駅増えると鉄道の選 択確率が約2%高くなる一方、排出物では約 2%低く
なる結果となった。トップリフター相互配置は、値 が1
大きくなる、例えば発・着都道府県に配置駅が1
駅ずつの状況から発・着のいずれかで配置駅を1
駅増やすと、鉄道の選択確率は約0.3%高くなる。
表
3 推定結果
表4 推定結果(限界効果)
*有意水準の***,**,*は、それぞれ
1%,5%,10%水準で統計的に有意であることを示す
変数 内容
荷主が5tロットで貨物を輸送する場合 輸送機関に鉄道コンテナを選択すれば1 営業用トラックを選択すれば0 となるダミー変数
(以下、説明変数)
駅E&S方式×品類ダミー 駅E&S方式(発着都道府県のE&S駅数の和)と
品類ダミーの交差項
トップリフター相互配置 発都道府県と着都道府県のトップリフター配置駅数を 乗じたもの
輸送距離×品類ダミー 鉄道輸送距離(各都道府県の代表駅間の距離)と
品類ダミーの交差項
運賃差 鉄道5tコンテナによる運賃と4tトラック貸切運賃の差
(鉄道-トラック) (鉄道運賃には集荷・配達運賃を含む)
集荷距離 集荷先から発貨物駅までの平均距離
配達距離 着貨物駅から配達先までの平均距離
発着都道府県の
都道府県面積100km2あたりの貨物駅数 発都道府県の
都道府県面積100km2あたりの高速道路延長
各年度ダミー 「物流センサス」の実施年度
(2005年,2010年,2015年)のダミー変数
各品類ダミー 「物流センサス」の調査対象9品類のダミー変数
高速道路密度 貨物駅密度(発・着)
被説明変数
Logistic regression for grouped data Number of obs= 1,283,021 LR chi2(35) = 126148.2 Prob > chi2 = 0 Log likelihood = -216763.55 Pseudo R2 = 0.2254
変数名 係数 標準誤差 z値 p値 有意水準
駅E&S方式 × 農水産品ダミー 0.68022 0.01617 42.08 0 ***
駅E&S方式 × 林産品ダミー 1.19428 0.11142 10.72 0 ***
駅E&S方式 × 鉱産品ダミー 0.52732 0.09745 5.41 0 ***
駅E&S方式 × 金属機械工業品ダミー 0.12826 0.00935 13.71 0 ***
駅E&S方式 × 化学工業品ダミー 0.23498 0.00757 31.03 0 ***
駅E&S方式 × 軽工業品ダミー 0.05774 0.00623 9.27 0 ***
駅E&S方式 × 雑工業品ダミー 0.12518 0.01541 8.12 0 ***
駅E&S方式 × 排出物ダミー -0.79393 0.03886 -20.43 0 ***
駅E&S方式 × 特殊品ダミー 1.11751 0.03995 27.98 0 ***
トップリフター相互配置 0.10127 0.00163 62.19 0 ***
輸送距離 × 品類ダミー (省略) (省略) (省略) (省略) (省略)
運賃差(鉄道-トラック) -4.95E-06 2.68E-07 -18.46 0 ***
集荷距離 -0.06114 0.00083 -73.72 0 ***
配達距離 -0.05524 0.00149 -37.01 0 ***
貨物駅密度(発) 0.63963 0.07890 8.11 0 ***
貨物駅密度(着) 0.07169 0.06072 1.18 0.238
高速道路密度 -0.04401 0.00416 -10.59 0 ***
各年度ダミー (省略) (省略) (省略) (省略) (省略)
各品類ダミー (省略) (省略) (省略) (省略) (省略)
定数項 -3.62176 0.05823 -62.19 0 ***
被説明変数:荷主が5tロットで貨物を輸送する場合
輸送機関に鉄道コンテナを選択すれば1、営業用トラックを選択すれば0となるダミー変数
Marginal effects after blogit y = Pr(outcome) (predict, p) = .03175724
変数名 限界効果 標準誤差 z値 p値 有意水準
駅E&S方式 × 農水産品ダミー 0.02092 0.00053 39.11 0 ***
駅E&S方式 × 林産品ダミー 0.03672 0.00324 11.33 0 ***
駅E&S方式 × 鉱産品ダミー 0.01621 0.00299 5.43 0 ***
駅E&S方式 × 金属機械工業品ダミー 0.00394 0.00029 13.52 0 ***
駅E&S方式 × 化学工業品ダミー 0.00723 0.00025 28.45 0 ***
駅E&S方式 × 軽工業品ダミー 0.00178 0.00019 9.17 0 ***
駅E&S方式 × 雑工業品ダミー 0.00385 0.00047 8.15 0 ***
駅E&S方式 × 排出物ダミー -0.02441 0.00123 -19.88 0 ***
駅E&S方式 × 特殊品ダミー 0.03436 0.00114 30.13 0 ***
トップリフター相互配置 0.00311 0.00006 49.12 0 ***
輸送距離 × 品類ダミー (省略) (省略) (省略) (省略) (省略)
運賃差(鉄道-トラック) -1.52E-07 0 -18.14 0 ***
集荷距離 -0.00188 0.00003 -53.84 0 ***
配達距離 -0.00170 0.00005 -33.18 0 ***
貨物駅密度(発) 0.01967 0.00243 8.1 0 ***
貨物駅密度(着) 0.00220 0.00186 1.18 0.237 高速道路密度 -0.00135 0.00013 -10.36 0 ***
各年度ダミー (省略) (省略) (省略) (省略) (省略)
各品類ダミー (省略) (省略) (省略) (省略) (省略)
被説明変数:荷主が5tロットで貨物を輸送する場合
輸送機関に鉄道コンテナを選択すれば1、営業用トラックを選択すれば0となるダミー変数
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集荷・配達距離については、集荷距離の方が鉄道の 選択確率への影響が大きいことが分かる。4.分析結果に関する考察
結果からみれば、E&S駅数と品類ダミーの交差 項では、ほぼすべての品類で
E&S
駅が増えると鉄 道の選択確率が高くなり、排出物のみ選択確率が低 くなる結果となった。E&S方式では、2.で述べたよ うに駅での作業時間が大幅に短縮される。今回の推 定では、時間短縮の効果と選択確率の変化の関係性 を直接明らかにはできないが、荷主がトータルの輸 送時間短縮の点からE&S
駅を評価していることが 推定結果に表れたと考えられる。一方、排出物の事 例としては金属スクラップや汚泥等の循環資源であ るが、循環資源の輸送ではトラックの分担率が非常 に高いことから、排出物は納期の制約が少なく、荷 主は輸送時間を重視しない分、貨物の積み替えに対 する抵抗が強いのではないかと考えられる。トップリフター相互配置は、配置駅が増えると鉄 道の選択確率は高くなる結果となったが、大型コン テナによる鉄道輸送の需要が高まり、そのニーズに 対応するために
JR
貨物が配置駅を増やしてきたと いう、逆の因果関係が考えられる。実際に30
フィ ート級の大型コンテナは10
トントラックとほぼ同 じ容積であるため、出荷ロットを変更することなく トラックから鉄道へモーダルシフトが可能である。そのため、荷主や物流事業者では
30
フィート級コ ンテナを継続して導入しており、モーダルシフト促 進のため導入に対する国の支援も実施されている。ただ、E&S駅やトップリフターの配置駅が増え て鉄道の需要が増えても、供給量が不足していると 需要増に応えられず、その結果鉄道の選択確率は変 化しないと考えられる。この点については、2.で述 べた「幹線鉄道等活性化事業」を活用した輸送力増 強事業や列車の増発等、供給量を増やす施策を合わ せて実施することで、需要増に対応していると考え られる。実際に、E&S駅は輸送力増強事業が完了 している東京~福岡間および東京~札幌間に全
29
駅中15
駅が設置されている。5.駅改良による CO
2排出削減効果シミュレーション今回構築した輸送機関選択モデルを用い、E&S 方式の駅が増えた場合の、輸送機関選択への影響を シミュレーションし、それによる
CO
2の排出削減効 果を算出した。具体的には、埼玉県内の既存貨物駅4
駅のうち1
駅をE&S
に改良した場合を想定し、鉄道コンテナまたは営業用トラックにより輸送され る埼玉県発着の貨物について、まず輸送機関分担率 の変化をシミュレーションする。そして、CO2の排 出原単位を用い、駅改良前後で埼玉県発着の貨物輸 送(鉄道コンテナまたは営業用トラックによる輸送) に伴う
CO
2排出量の変化を算出する。なお、鉄道コ ンテナによるCO
2排出量には集荷・配達による排出 分も含む。また、鉄道コンテナと営業用トラックを 合計した埼玉県発着の輸送量は、駅改良前後で変化しないと仮定した。ベースの流動データは、3.で用 いた
2015
年物流センサスの3
日間流動調査データ のうち、埼玉県発着のデータとした。シミュレーションの結果、駅改良により鉄道輸送 量のシェア(トンベース)は埼玉県発で
3.8%、埼玉県
着で0.5%
増加し、埼玉県発着では1.5%
増加する結 果となった。この結果を用いると、埼玉県発着のCO
2排出量削減率は1.4%と算出された。
6.提言
本稿の分析結果から、まず駅改良によって鉄道貨 物需要が増加し、それにより環境負荷低減につなが ることが明らかになったため、JR貨物は
E&S
方式 への貨物駅の改良施策を今後も進めていくことが望 ましい。ただ、集荷・配達距離が延びると鉄道貨物 需要は低下する結果となったため、集荷・配達距離 の変化が想定される駅移転を伴う場合は、駅を改良 するメリットが相殺されることも考えられる。その ため、集荷・配達まで含めた発着地間の全輸送距離 を考慮して移転先を選定することが重要である。現状、様々な面からモーダルシフトへの支援が実 施されている。例えば、荷主等に対してモーダルシ フトに関する事業計画策定経費や運行経費の一部を 支援する「モーダルシフト推進事業」、物流事業者 に対して
CO
2削減が可能な輸送機器導入等に関して 支援する「物流分野におけるCO
2削減対策促進事 業」、先述した鉄道貨物の輸送力増強等のためのイ ンフラ整備に対する「幹線鉄道等活性化事業費補 助」等がある。今後も各種施策によるモーダルシフ トへの寄与に応じた支援が求められると考える。7.
おわりに本研究は、一企業である
JR
貨物の効率化施策(E&S
方式への駅改良)に関して、物流センサスデータを用いて評価したものであり、施策によるモーダ ルシフトへの寄与や便益に関する評価は不十分であ る。そのため、駅改良による便益・費用の整理を直 近の課題としたい。考えられる便益として、総所要 時間の短縮や長距離区間における交通費用の減少と いった荷主への便益(利用者便益)、CO2排出量の削 減や道路交通事故の減少等による社会全体への便益
(環境等改善便益)、JR
貨物や集配を行うトラック事業者の収益改善
(
供給者便益)
が挙げられる。一方、費用としては、建設費、用地取得や移転補償等に要 する用地関係費等が挙げられる。これらを指標とし て整理することで、旅客輸送とともに貨物輸送につ いても、便益・費用が過不足なく考慮され、各種プ ロジェクトの実施に際し、旅客・貨物輸送の便益・費 用を総合的に評価できる手法の確立に少しでも貢献 できる余地があるのではないかと考える。また、本 研究では鉄道に着目してモデルを構築したが、他の 輸送機関の効用をより考慮し輸送機関選択モデルの 精度向上を図ること、さらに、駅立地に伴う外部性 等を考慮した具体的な立地シミュレーションの実施 についても、今後検討する必要がある。