79 疼痛時に処方する湿布薬の使い分けを
教えてください.(研修 8 ヵ月)
運動器の痛みには,骨折・捻挫などによる 急性痛と痛みが持続する肩こり・腰痛などに 多い慢性痛があります.湿布薬(貼付剤)は 運動器に関係する痛みによく使われており,非ステロ イド性抗炎症薬(NSAIDs)が含まれない刺激型貼付 剤(第 1 世代)と NSAIDs を含む経皮吸収局所作用型 貼付剤(第 2 世代)に分類されます.
第 1 世代貼付剤には冷たく感じる冷湿布,温かく感 じる温湿布があり,冷湿布はメントールにより局所の 発熱を緩和し,温湿布はとうがらし成分であるカプサ イシンが血管を拡張させ血流を増加させ患部を修復し ます.第 2 世代貼付剤は,1988年以降に承認された NSAIDs 含有貼付剤で,NSAIDs が皮膚より直接患部 に作用し抗炎症作用を示します.
また,第 1 世代,第 2 世代ともに基材の違いにより 厚いパップ剤と薄いテープ剤(プラスター剤)があり ます.パップ剤は,基材に水分を多く含み,水分が蒸 発し熱が奪われることで冷却効果を示すので外傷など の急性痛に適します.テープ剤は,脂溶性高分子を基 材とし水分を含まないため,患部を冷やさない方がよ い慢性痛に適しています.
従って,これらの使い分けは,熱感が強く冷やした い場合は冷湿布,カイロやお風呂で温めると楽という ような痛みで局所を温めたい場合は温湿布,痛みが強 い場合は NSAIDs 含有貼付剤をお勧めしています.ま た,テープ剤は粘着性が強く,よく動かす部位へ貼付 する場合に適しています.貼付剤では,かぶれ,貼り 心地,においなど患者さんの好みがあるので,色々と 患者さんのニーズを聞き処方して頂けたらと思いま す.平成28年度診療報酬改定で医薬品の適正給付を目 的にやむを得ない場合を除き 1 処方につき70枚までの 処方枚数制限があります.患者が多量に湿布薬を処方 してほしいと求めることがありますが,処方枚数制限 があることを説明し対応して頂けたらと思います.
(岡山大学病院 整形外科 鉄永倫子)
動脈血液ガス分析(血ガス)の見方を 教えて下さい.(研修 8 ヵ月)
現在の血液ガス分析器で計れる項目は酸素 化状態,酸塩基平衡,電解質,代謝項目と多 岐にわたってきています.血液ガス分析器の 機種によっては限られた項目しか測定できないものも ありますが,近年では 4 項目の何かが測定できるよう になっています.
1.酸素化状態
この項目では主に pO2 と Hb が測定されます.また 血液ガス分析器では分光光度計の原理を用いた Hb 分 画(酸化型;O2Hb,一酸化炭素型;COHb,メトヘモ グロビン;MetHb)等が測定できます.血液中の酸素 含有量は酸素とヘモグロビンで決まりますので,血ガ スでは酸素とヘモグロビンを確認し,酸素化の状態を 把握することが重要です.
2.酸塩基平衡
この項目には pH,pCO2 の測定が含まれます.逆に 言えば酸塩基平衡に関わる測定はこの 2 項目だけであ り,その他の HCO3 や BaseExcess は pH と pCO2 を 使った計算で得られる値です.こうやって考えると酸 塩基平衡の理解で最も大切なのは pH と pCO2である ことがよくわかると思います.つまり pH が正常値
(7.35-7.45)よりも高ければアルカローシス,逆に低 ければアシドーシスです.これは pCO2 がどうであれ,
HCO3 がどうであれ絶対です.従って酸塩基平衡の解 釈ではまず pH をみて,アルカローシス,アシドーシ スの判断をすることが大切です.次に注目するべきは pCO2 です.pOC2 は呼吸性の酸ですので,pCO2 が高 ければアシドーシスへ,低ければアルカローシスへ傾 きます.pH の解釈(アルカローシスかアシドーシス)
と pCO2 の解釈(pH が高くて pCO2 が低いか pH が低 く pOC2 が高い)が一致していれば呼吸性の要因が強 く呼吸性アルカローシスまたは呼吸性アシドーシスで 決まりです.厄介なのは代謝性要因ですが先述のとお りこれは所詮計算式で得られたものですので参考程度 に.あくまで pH と pCO2 では説明がつかない場合は HCO3 や BE に注目して下さい.HCO3 は代謝性塩基
24 25
岡山医学会雑誌 第130巻 August 2018, pp.79-80
80 ですので,高いとアルカローシス,低いとアシドーシ スへ傾きます.Base Excess は定義上過剰塩基ですの で,+が多ければアルカローシス,-が多ければアシ ドーシスですね.酸塩基平衡の解釈では実際の測定値 は pH と pCO2 のみで有り,最初にこの 2 項目に注目 することがとても重要です.
3.酸塩基平衡評価の実際
それでは実際に得られた動脈血ガス分析結果を見て みましょう.
pH7.28,PaCO2 39mmHg,HCO3- 18mEq/L,
BE -8.0mEq/L
この患者では pH は7.28で7.35よりも低いため,アシ ドーシス患者です.
CO2 は39mmHg で正常であり,呼吸性のアシドー シスではありません.HCO3-は18で低く,BE もマイ ナスであるため,代謝性アシドーシスで間違いないで す.このように実際の評価では結果を見ていく順番が 大切でまずは測定項目である pH と CO2 を見ること,
その後に計算項目である HCO3-と BE で評価をする ことが大切です.間違っても先に HCO3-や BE に注 目しないようにしましょう.
4.電解質
最近の血液ガス分析器ではナトリウム,カリウム,
カルシウム,塩素イオンが測定できます.それぞれイ オン強度を電極で測定しています.これらの電解質異 常を評価できることも血液ガス分析の良いところです ね.
5.代謝項目
現在の血液ガス分析器では血糖値(動脈血),乳酸値 が測定できるものが多いです.それぞれ重症患者管理 では異常値が出やすく,診断のためにも有効ですね.
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 麻酔・蘇生学
森松博史)
質問内容は岡山大学病院卒業臨床研修センターのご協力のもと,
ご提供頂いております.