• 検索結果がありません。

2-3

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "2-3"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

46

2-3  崖の特性とその分布

 斜面地を特色づける空間構成要素の現況調査は、都心部山の手地域における、1)崖の分布、2) 階段の分布と、3)斜面樹林の分布の三者から成る。

 このうち本節では、現在の山の手地域の斜面地において、欠くことの出来ない典型的な空間要 素である崖を取り上げる。そして山の手地域の崖の諸相を浮き彫りにするとともに、その分布の 特徴を明らかにすることによって、山の手地域の斜面地の全体像を把握する。

2-3-1  崖の範疇

 第1章でも述べたように、今日の山の手地域では自然斜面が非常に少なくなっている。そう いった状況の中では、「人工的に改変された崖」は、山の手地域の斜面地を構成する重要なエレ メントであると言えよう。

A A A A A A A A A

 ところで、いま人工的に改変された崖という表現を用いたが、そもそも「崖」という語句は範 疇が広い言葉であるように思われる。また本研究では、頻出する用語でもある。ここでは「崖」

という語句が、一般的にはどのように使用され、また本研究ではどのように捉えるのか、「崖」の 持つ意味−多義性について若干言及する。

 「崖」という言葉を辞書でひくと、「広辞苑」、「言泉」では「山や岸などが険しくそばだってい る所、切り岸(=切り立てたような険しい崖、断崖、絶壁)」と抽象的な表現で、また語の示す 範囲も非常に広い。

 また「土地条件図」における地形分類上の「崖」は、「比高1.5m以上の極急斜面(表面傾斜ほ ぼ35゜(≒勾配70%)以上)で幅15m未満(自然人工を問わない)」と定義されている。「土地 条件図」が地形分類の用途に供するという性格を有し、従って崖の示す範囲も明確に定める必要 があるため、数値による定義がなされ、語の示す範囲は限られたものであると言える。

 地理・地形学分野の文献における「崖」の用例を挙げると、「東京地盤図」の「後楽園の背後、

巣鴨駅、志村を結ぶ線から東側の台地は西側の豊島台に比べて低くなっていて、その間は5m以 下の小さな高度差の崖になっている(p.1)」や「東京の自然史」の「目黒川の谷でも地形は(神 田川の谷に)まったくよく似ていて(中略)南面する谷壁をみると、大げさにいえば屏風のよう に崖がつづいているのに対し、反対の北向きの谷壁はだらだらと下りになっている(p.77)」など がある。更に「東京都都市景観マスタープラン」では、「長くつながった崖の地形」を「崖線」と しており、貴重な景観資源と位置付けている。

 こうしてみると、「崖」とは広義には、「ある程度の比高を有する2つの地形面を接続する(あ るいは境する)斜面地で、しかもその斜面は切り立てたような極めて急な勾配を持つものである」

と定義できる。そして急な勾配を呈する斜面地であれば、自然地形であるか、または人工地形で あるかはさほど問題ではない。

 山の手地域では、浸食谷および山の手台地東端の東京低地に接する部分の谷壁斜面を総称して

「崖」と呼んでいる場合と、谷壁斜面の中でも特に比高が大きく、急傾斜となっている部分に対 して「崖」を用いる場合とがあるようである。このように「広義の崖」は、差異はあるが、一般

(2)

にその領域的な拡がりは大きいと言える。

 一方、視点をミクロに、山の手地域における日常生活での「崖」という意味で捉えてみると、

その語義はやや異なる。言い換えるならば、都市内において「崖」といったとき、それは広義の、

あるいは辞書的な意味での「崖」とは多少異なった解釈がなされることがしばしばあると言えよ う。この場合、前述した 山や岸などが険しくそばだっている所 というよりもむしろ、市街地 に見られるコンクリートや大谷石などの自然石で被覆された擁壁を指すことが多い。これは第1 章で述べた「人工的に改変された崖」であり、山の手地域の斜面地において空間構成上重要な意 味を持つものであるとともに、本研究においては中心的な話題に据えられる具象である。そこ

A A A A A A A A A A A A A

で、 自然地形との関連性を有する、擁壁(コンクリートや自然石などで被覆)及び土堤など人 工的に改変されたもの を「狭義の崖」と定義して、前述の「広義の崖」と区別する。そして本 研究においては「崖線」、「段丘崖」などといった連語及び特に注記した以外は、狭義の方を指し、

これを中心に取り扱うことによって両者を適宜使い分けることとする。

(3)

48

2-3-2  用途及び形態に見る崖の諸相

 崖−擁壁および土堤は、機能的には「建築・土木工事において盛土や切土による斜面が崩れな いように造った壁体構造物および土手」である。では、実際の都市空間では、崖はどのような場 所にみられるのか、またどのような形態を呈しているのか、崖の様々な相について述べる。

□崖がみられる空間

 山の手地域内の斜面地にほぼ全域にわたって分布する崖の大部分は、建物敷地(宅地)を区切 るものであり、土地の高低差をつくり出して(あるいは維持して)いる。そして、建築物や敷地 の規模に応じて崖の規模・形態も異なる。しかし、その他の用途に供する崖もあり、中には山の 手地域特有のものもある。

1)建築物及び建物敷地

 山の手地域全域にわたって分布し、このタイプの崖が最も多い。建築・宅地の規模に応じて規 模が大きく異なるが(写真2-12、2-13)、相対的に見ると他の3つのタイプに比べて小規模なもの が多いといえる。その反面、集積の状況は非常に多様で、自然地形の影響を最も受けやすい。わ ずかな高低差でも発生し、建物敷地(宅地)を区切ると共に、建て替え、再開発等により容易に 消失もしくは形態の変化が起こる。

写真2-12 新宿原町3丁目(大規模な崖) 写真2-13 新宿区原町2丁目(小規模な崖)

 写真2-14、15は豊島区高田1丁目の日無坂の1991年と現在の比較である。1991年時点では、

右側が戸建て住宅だったが、現在はマンションに建て替わり、新規に崖が建設されている。一方、

写真2-16は港区六本木の1994年の様子である。ここでは六本木1丁目再開発事業が行われ、現 在ではこの付近の地形は大幅に改変され、崖の状況も大きく変化している。

(4)

2)鉄道路線沿い

 JR山手線、中央線、都電荒川線、地下鉄丸の内線の軌道沿い2-4)には多くの崖が分布している

(写真2-17、18)。鉄道は急勾配の斜面は登ることが出来ないので、山の手地域の起伏の激しい地 形に対応しきれず、盛土・切土部に崖が発生したのである。一般的に、軌道の高低差を少なくす るために台地上では切土、谷間では盛土がなされる2-5)

 こうした軌道沿いに存在する崖の中で1箇所だけ性格の異なるのが、山手線の北東端、田端駅 から上野駅にかけての線路の西側にみられる「くの字」型に連なった崖である(写真2-19)。前 述したように、これは上野台地の台地端に沿って鉄道が敷設されたことによるもので、他の崖が

「地形に対応しきれずに生じた崖」であるのに対して、これは「忠実に地形に対応したことによっ て生じた崖」であるといえよう。鉄道路線に付随した崖は、都市空間においてどれも明瞭な境界 を形成するが、この崖は自然地形を更に強調するかたちで特に強い境界となっている。

写真2-14 豊島区高田1丁目 日無坂(1991) 写真2-15 豊島区高田1丁目 日無坂(2002)

写真2-16 港区六本木1丁目再開発地区

(1994.12(1997末まで残存)

(5)

50 3)道路の切り通しおよび盛土部分

 これは成因としては、鉄道路線に付随する崖と類似しており、道路の切り通しや盛土した場所 に表れる崖である。土木技術がそれほど発達していなかった江戸時代以前の街道は、自然地形に 適応して通っていたが、明治以降、近代都市計画理念に基づいて建設・改修された道路には、切 土・盛土が多く用いられている2-6)。また、このように切土・盛土が多い背景に、大正期から昭和 前期にかけて全盛を誇った路面電車の軌道が、モータリゼーション到来とともに自動車道路へと 移行したという歴史的側面が大きく関与していることは見逃せない。

 主なものとして、盛り土では、桜田通り(品川区東五反田4丁目付近)(写真2-20)、大久保通 り(新宿区新宿7丁目付近)、外苑東通り(新宿区弁天町付近)など、切通しでは、明治通り(豊 島区目白2丁目付近)、道灌山通り(荒川区西日暮里4丁目付近)(写真2-21)などが挙げられる。

 上記の道路はどれも、都内の主要幹線及びそれに準ずるような大通りであるが、その他でも、

切通しは山の手地域内の住宅開発で必ず伴うものであると言っても過言でないほど、規模に関わ らず多く見られるものである。一方、盛り土は、一般的に主要幹線に多く見られるものであると いえる。

写真2-17 JR山手線沿いの切り通し

(北区田端6丁目)

写真2-18 都電荒川線沿いの崖

(豊島区千登世橋付近)

写真2-19 JR山手線沿いの崖

(荒川区西日暮里駅付近)

(6)

4)オープンスペース・緑地内

 皇居の内堀、外堀沿いにみられる崖(石垣)は、山の手地域特有のものといえるだろう。江戸 時代初期に一大土木工事として、掘り割りがなされたことは周知であるが、これらも自然地形、

河川流路などになるべく即応するかたちで行われたものである。こうした堀端にみられる石垣は、

今日貴重な景観資源として認識されているが、中には埋め立てられ、公園や大学施設に転用され たものもある。

□崖の形態

 崖の形態は、それが位置する土地条件や土地所有と密接な関連性を有し、その違いが崖の規模

(高さ・長さ)や型の差異となって表出する。また、崖はその表面の仕様、すなわちテクスチュ アも様々で、両者はともに、都市空間の質を左右するものであるといえる。

1)崖の規模

 崖の規模に関わる要素は、「高さ−垂直方向への広がり」と「長さ−水平方向への広がり」に 大別される。高さは僅かな高低差のある場所に位置し、地形図上では表現されない50cm以下の ものから、台地と谷地を1つの崖で区分する10m以上のものまである。長さも同様に位置する場 所の土地所有などと関係して、その規模は千差万別である。一般に高い崖は水平方向にも長いも のが多い。

 図2-22、23はともに比較的規模の大きな崖の一例である。こうした崖は山の手地域のどこでも 見られるものである。こうした大きな崖が時に人間の行動や建設行為を極端に制限するものであ るという否定的な見方もできるが、一方で、地区のアイデンティティが表出している場所、空間 要素として捉えることも可能であるように思われる。

2)崖の表面の仕様

写真2-20 桜田通りの盛り土 写真2-21 道灌山通りの切り通し

(7)

52

 テクスチュアには大別して3つある。1つ目はコンクリートなど人工素材による崖である(写 真2-24)。人工素材を用いた崖は、一般的には表面が平滑に形作られたものが多く画一的印象を 与えるが、中には景観的配慮から自然石に模して表面加工が施されているものもある。

 2つ目は天然素材である石を使用した崖である。この多くは加工が容易な大谷石を積み上げた ものである。

 3つ目は土が露出した、すなわち土堤である。これは比較的傾斜の緩やかな斜面に限定され、

また大規模なものが多い。その他にも崖の構造とはなっていないが、崖の表面にツタなどを這わ せて緑化しているものもしばしばみられる(写真2-25)。いずれにせよ崖の表面の状態は、崖の 規模が大きくなるほど際立ち、人間の視覚に訴えてくるものであるので配慮を要する。

写真2-22 城壁のように聳える崖(新宿区新宿7丁目)

写真2-23 長大な崖(豊島区高田1丁目)

写真2-24 コンクリート・自然石による崖

(文京区白山1丁目)

写真2-25 緑に覆われた崖(文京区小石川2丁目)

参照

関連したドキュメント

3. 小 こ ばや 早 かわ 川  とも 智  あき 明 (昭和38年6月29日生) 新任 所有する当社 普通株式の数 3,129

本審議会では、平成 30 年9月 27 日に「

東京都 板橋区「江戸祭り囃子」 :神田流神田囃子保存会 近畿・東海・北陸ブロック 和歌山県下津町「塩津の鯔踊り」 :塩津いな踊り保存会 中国・四国ブロック

住所 〒163-8001 東京都新宿区西新宿2-8-1 都庁第二本庁舎20階 電話 03-5388-3481(直通).

表4 区市町村 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区

3. かね 金 子 こ よし 禎 のり 則 (昭和38年5月17日生) 新任 所有する当社 普通株式の数 2,252

中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区

経済特区は、 2007 年 4 月に施行された新投資法で他の法律で規定するとされてお り、今後、経済特区法が制定される見通しとなっている。ただし、政府は経済特区の