■一般演題 ポスター)
一 般 演 題 ポ ス タ ー ︶P-4
アルカリ誤飲による腐食性食道炎の一例 石巻赤十字病院 内科 ○山本 康央,石田 雅嗣,藤野 直也,長田 元伸,石塚 圭一 症例は32歳男性。H18年4月、アルカリ性の液体(pH 8.5∼9.0 詳細不明) を誤飲し、直後から嘔吐、胸部痛出現し当院に救急搬送された。上部消化 管内視鏡(GTF)で食道頚部から下部まで全周性のびらん、出血を認めた。 その後、絶食、プロトンポンプインヒビター(PPI)、抗生剤で管理した。 1週間後のGTFでは全周性に潰瘍、びらんを形成するとともに、門歯列よ り30cmに狭窄あり、内視鏡が通過不可能であった。狭窄確認から2週後に 内視鏡下バルーン拡張術を行ったが、拡張に伴い縦隔気腫となったため、 その後の拡張術をしばらく中止し、保存的に治療、経過観察を行った。初 回バルーン拡張から5週後に食道造影をしたところ、頚部食道にから造影 剤の流出が認められず、GTFでは頚部食道にも狭窄あり、内視鏡通過不可 能であった。外科的治療も 慮されたが、内視鏡的拡張術を選択し、初回 バルーン拡張から9週後から再開した。初回は癒着が強く、ガイドワイヤー も通過しなかったために、細経内視鏡にて鈍的に癒着を剥離した。狭窄は 数箇所確認できた。以後、週3回のペースで計15回バルーン拡張を行い、 全粥きざみ食は摂取可能となった。初回バルーン拡張から3ヶ月後からは 週2回、5ヶ月後からは週1回、6ヶ月後からは2週に1回、13ヶ月後か らは月1回のペースでバルーン拡張を施行した。計59回のバルーン拡張の 末、H20年3月にバルーン拡張せずに抵抗なく外径9.2mmの内視鏡が通過 するようになった。以後は現在まで経過観察中である。今回、アルカリ誤 飲による腐食性食道炎後に生じた高度食道狭窄に対し約60回に及ぶバルー ン拡張術を行い、外科的治療を回避できた症例を経験したため報告する。P-3
ヘルペス食道炎の一例 気仙沼市立病院内科 ,気仙沼市立病院外科 ,東北大学医学部病理 診断学講座 ○ 長 南 雅志 ,安海 清 ,土佐 正規 , 下 勝則 , 奈良 志博 ,笠沼 勇一 ,星 達也 ,鈴木 忠泰 ,遠藤 渉 , 笹野 伸 【症例】76歳男性【既往歴】平成19年COPD増悪にて当院入院、11年前より 喘息【現病歴】平成20年8月12日、喘息、COPD増悪による呼吸苦にて当院 呼吸器科に入院となり、吸入およびプレドニゾロン30mgの点滴を開始、同 19日にデキサメタゾン6mgへ変 し、適宜漸減、最終的にプレドニゾロン 10mgの内服治療を継続し、退院予定であった。しかし、同28日より著明な 食欲不振を認め、消化器精査目的に内科紹介となった。【全大腸内視鏡検査】 異常なし。【理学所見】9月3日に口唇に水泡が見られビダラビン軟膏を一 日数回塗付していた。【上部消化管内視鏡検査(9月4日)】切歯列25cmよ りEG junctionにかけて地図状の大小不同の浅い潰瘍が全周性に多数して いた。潰瘍底及び、周囲の粘膜より生検を施行した。【病理組織検査】潰瘍 部の一部でスリガラス状の核を伴うN/C比大の異型細胞が認められたが、 核内封入体などは認められなかった。その後の免疫染色にてHSV-1、2 (+)、CMV(-)であった。【経過】当初、内視鏡所見よりサイトメガロ食 道炎も疑ったが、CMVアンチゲネミア(−)であった為、ガンシクロビル 投与は見合わせて、絶食および粘膜保護剤内服にて経過観察を開始、一週 間ほどで症状軽快。免疫染色の結果及び、上部消化管内視鏡検査にて潰瘍 の消失を認めたため、食事を再開し、経過良好であった。【結語】ヘルペス 食道炎は悪性腫瘍、免疫不全患者での発症例が多いが、 常人でも発症す ることが報告されており、 常人の場合は抗ウイルス薬を投与しなくても 治癒するとされ、本症例も無治療で軽快した。点滴ステロイド治療は本症 例の起因となった可能性があり、免疫不全が予想される場合は上部消化管 検査を 慮する必要があると えた。P-2
胃十二指腸疾患別に検討した逆流性食道炎の頻度 国民 康保険三戸中央病院 内科 ,弘前大学 消化器血液内科 , 弘前市立病院 臨床検査科 ○木村 聖路 ,高杉 滝夫 ,中里 文佳 ,工藤 敏啓 , 田中 正則 【目的】最近の上部消化管内視鏡検査では逆流性食道炎の増加が著しいが、 他の胃十二指腸疾患との関連性は明らかでない。そこで胃十二指腸潰瘍を 含む各上部消化管疾患別に逆流性食道炎の合併率を検討して、この急増す る新疾患が他のどの疾患との関連性が高いか検討した。【方法】過去5年間 の上部内視鏡検査7209例(平 年齢62.7歳、男女比1 :1.16)を対象とし、 対象群における胃十二指腸内視鏡所見とLA 類grade A以上の逆流性食 道炎の有無を検討した。そして各胃十二指腸疾患毎に逆流性食道炎の合併 頻度を算出し、疾患別に比較検討を行った。【成績】7209例中763例に逆流 性食道炎が観察されて、全体の合併頻度は10.6%だった。各胃炎での合併 率は慢性胃炎のみ9.1%、平坦びらん性胃炎18.2%、隆起びらん性胃炎 12.8%、表層性(紅斑性)胃炎16.1%、出血性胃炎13.0%だった。内視鏡 所見が慢性胃炎のみに比べてびらん性胃炎、表層性胃炎、出血性胃炎では 逆流性食道炎の合併頻度が高く(p<0.05)、特に平坦びらん性胃炎で最も 高かった(p<0.0001)。潰瘍疾患での合併率は活動性胃潰瘍8.7%、胃潰瘍 瘢痕10.7%、活動性十二指腸潰瘍20.7%、十二指腸潰瘍瘢痕9.3%であり、 活動性十二指腸潰瘍で最も合併率が高かったが(p<0.001)、胃潰瘍ではむ しろ低い合併率だった。また瘢痕期の潰瘍では胃十二指腸とも合併率が低 下した。胃良性ポリープでの合併率は胃腺腫0.0%、胃粘膜下腫瘍6.1%、 過形成ポリープ7.7%、胃底腺ポリ−プ17.4%であり、胃底腺ポリープで最 も合併率が高かった(p<0.005)。胃悪性腫瘍での合併率は胃癌4.3%、悪 性リンパ腫0.0%であり、他疾患に比べて著しく低かった。【結論】慢性胃 炎に比べてびらん性、表層性、出血性胃炎の各患者は逆流性食道炎を合併 しやすく、特に平坦びらん性胃炎での合併率が高かった。胃潰瘍に比べて 十二指腸潰瘍患者は逆流性食道炎を合併しやすかったが、瘢痕化すると合 併率は低下した。胃癌での合併率は著しく低く逆流性食道炎との乏しい関 連性が示唆された。P-1
食道胃摘出標本におけるGastroesophageal flap valve (GEFV)の解剖学的検討 東京慈恵会医科大学 内視鏡科 ,東京慈恵会医科大学 消化器肝 臓内科 ,東京慈恵会医科大学 解剖学講座 ,札幌医科大学 医学 部 解剖学第二講座 ,静岡県立静岡がんセンター 大腸外科 ○荒川 廣志 ,貝瀬 満 ,郷田 憲一 ,吉村 昇 ,炭山 和毅 , 倉持 章 ,小林 剛 ,田尻 久雄 ,河合 良訓 ,鈴木 大輔 , 藤宮 峯子 ,絹笠 祐介 【目的】GEFVは内視鏡胃内反転観察時の胃噴門部のvalve様粘膜ひだであ る。本研究では未固定凍結食道・胃標本を用いてGEFVの内視鏡像と肉眼解 剖を比較検討した。【対象・方法】未固定凍結保存ヒト食道・胃摘出標本1 献体を対象とした。解凍した同標本の胃幽門部を糸で結紮した後、食道入 口部より水を注入して食道胃内に充満させた。その後、食道からスコープ を挿入して胃内反転操作でGEFVを観察し、内視鏡像と外表からの肉眼観 察を対比した。ついで用手的に胃を変形させてHis角を形成させた時に、内 視鏡像上のGEFVはどのように変化するかを確認した。【結果・ 察】水で 充満した下部食道と胃噴門部の一部は洋ナシ状に拡張してvestibuleを形 成し、その口側端はわずかにくびれていた。くびれ部には横隔膜食道靱帯 (食道と横隔膜を固定する靱帯)が付着していた。内視鏡像においても同 部位はわずかに狭くなっていたが、粘膜面は正常で器質的狭窄はなかった。 同部位は食道造影上の下部食道括約筋(ring A)に相当し、また内視鏡検 査では下部食道にしばしば認める強い収縮輪に相当すると推測された。胃 内反転観察による内視鏡像では拡張したvestibuleは一見するとドーム状 を呈しており食道裂孔ヘルニア嚢様だが、その最口側部はring Aによって スコープが間隙なく食道壁にしっかり取り囲まれてドームの頂部を形成し た。この所見はGEFVのgrade 3に相当した。Vestibuleの大半は食道粘膜 で覆われており下部食道から成っていた。スコープを胃内反転させたまま 用手的に下部食道と胃穹窿部にHis角を形成させると、スコープの正面か ら正円状に見えていた胃噴門部は斜め下方から見上げる形になり、その結 果flap valveひだが形成された。しかしvestible自身に大きさ等の変化はな かった。 一 般 演 題 ポ ス タ ー ︶P-8
粘膜下腫瘍の形態を呈し表層に食道癌を認めた1例 広島市立安佐市民病院 内科 ,広島市立安佐市民病院 内視鏡科 ○川瀬 理恵 ,永田 信二 ,斧山 美恵子 ,中山 奈那 , 本田 洋士 ,桑原 一 ,木村 茂 ,辻 恵二 ,大越 裕章 , 日高 徹 【目的】今回, 我々は内視鏡的に粘膜下腫瘍の形態を呈し, 表層に食道癌 を認めた1例を経験したので報告する。【症例】症例は59歳, 男性。既往歴 は急性膵炎・胆石症であり, 悪性腫瘍の既往はなかった。H10年7月, 検診 異常にて施行した上部消化管内視鏡検査にて, 食道上切歯裂より約25cm に大きさ25mm大の隆起性病変を指摘された。表面は正常粘膜に覆われて いたが, 一部白色調を呈しており, 同部位に一致してルゴールの不染を認 めた。生検を施行したが, 悪性所見は認めなかった。EUSでは,M・SM間 に境界明瞭で内部 一なhypo echoic lesionとして描出された。以上より食 道粘膜下腫瘍と え, 年1回の上部消化管内視鏡検査にて経過観察として いた。SCCは正常範囲内であった。 内視鏡的に大きさ, 形態に大きな変化 は 認 め な かった が, 長 期 間 経 過 観 察 を し て い る こ と も あ り, 十 な informed consentのもと, H20年7月total biopsy目的にてESDを施行し た。病変は正常粘膜で覆われたふたこぶ状の隆起性病変からなり, 大きさ は25mm×15mmであった。病理組織結果は粘膜筋板に由来する腫瘤の形 成を認め, α-SMA, デスミン強陽性で平滑筋への 化が保たれているこ とから平滑筋腫と診断した。その表層に一致して, 高 化型扁平上皮癌を 認めた。癌は粘膜固有層に限局しており深達度T1a-LPM, 脈管侵襲陰 性, 側方, 深部断端陰性であった。術後の経過は良好で, 現在までのとこ ろ転移・再発は認めていない。【結語】内視鏡的に粘膜下腫瘍の形態を呈し, 約10年間大きさ, 形態に変化を認めず, 表層に食道癌を認めた稀な1例を 経験した。P-7
深達度診断が困難であったLSBE由来表在食道腺癌の一 例 東海大学東京病院 外科 ,東海大学医学部 消化器外科 ○葉梨 智子 ,島田 英雄 ,千野 修 ,西 隆之 , 山本 壮一郎 ,原 正 ,名久井 実 ,幕内 博康 症例は63歳男性。 診で初めて受けた上部消化管内視鏡にて下部食道隆起 性病変を指摘された。検査の2ヶ月前より胸焼けの自覚はあったが、それ 以前は無症状であった。内視鏡にて切歯より34ー38cm全周性の発赤面と大 小不整な隆起性病変を多数認めた。前壁の一部は非癌部と思われたが、境 界診断は困難で、亜全周性0-IIc+IIa+Is型バレット腺癌と診断。やや大き めのIs型隆起性病変部でSM深部浸潤と診断した。上部消化管造影において もEGjunctionから約7.4cmに渡りBarrett上皮と えられる網状粘膜を認 め、口側に長径5cm、顆粒集簇を呈する隆起性病変をほぼ全周性に認めた。 長径2.2cmの結節状無茎性隆起を内部に認め、この部で深達度SM 3、0 -IIa+1s型バレット腺癌と診断した。明らかなリンパ節転移は認めず、術 前診断 cT1b(SM3)N0M0 cStageIb、LSBEに発生した腺癌にて、右 開胸開腹胸部食道亜全摘3領域郭清を施行した。病理組織診断では大部 が高 化腺癌で、目立つ隆起部は病巣下にリンパ球浸潤を伴っており、深 達度はM3あった。肛門側に一部印環細胞癌、低 化腺癌成 があり、こ の部 で深達度SM3であった。LSBE由来表在癌報告は少なく、若干の文 献的 察も含め報告する。P-6
アカラシアに合併し、術前深達度診断が困難であり、術 後再発をきたした食道癌の1例 西神戸医療センター 消化器科 ,西神戸医療センター 外科 ,西 神戸医療センター 病理科 ,神戸市立医療センター中央市民病院 消化器科 ,静岡県立がんセンター 消化器内科 ,有馬温泉病院 内科 ○吉岡 正博 ,岡部 誠 , 越 真木子 ,真下 陽子 , 足立 友香里 ,林 幹人 ,井谷 智尚 ,三村 純 ,小森 英司 , 高峰 義和 ,橋本 夫 ,占野 尚人 ,坂本 岳 , 藤堂 彰男 症例は60歳代、男性。20歳頃より嚥下困難感があり、3年前に当科を受診 され、精査を行った。食道透視では食道下部にくちばし様の狭窄があり、 それより口側の食道はフラスコ状に拡張していた。上部消化管内視鏡検査 では下部食道に狭窄を認め、それより口側は拡張し大量の残 が見られた。 食道アカラシアと診断し、2回の内視鏡的バルーン拡張術を行った。背景 の食道粘膜は粗雑で炎症性変化も強く見られた。周囲に顆粒状の粘膜を 伴った扁平な隆起を中部食道に認め、過形成性ポリープと診断した。1年 後、再検の内視鏡検査で中部食道の扁平隆起がやや増大していた。色素撒 布による観察では明らかな不染帯は指摘できなかった。生検組織検査で扁 平上皮癌と診断した。腹部超音波検査や胸腹部造影CTなどで遠隔転移やリ ンパ節転移を認めなかった。超音波内視鏡検査で深達度sm3と診断した が、リンパ節腫脹は認めなかった。拡大観察では明らかに粘膜下層浸潤を 示唆するIPCLパターンではなかった。食道切除術を行い、病理組織学的に は深達度はpT1a(pLPM)であり、リンパ節転移を認めず、切除断端は陰 性、脈管侵襲も認めず、根治切除と判断した。術後約1年で、頚部残存食 道に食道癌の再発あり、放射線化学療法で現在は寛解が得られている。 アカラシアではその3∼5%に食道癌が合併するが、背景粘膜の炎症性変 化が高度な場合も多く、慎重な経過観察、診断、治療が必要となる。今回、 我々は存在診断、術前深達度診断が困難であり、バルーン拡張後に診断さ れ、食道切除後に再発した食道癌の1例を経験したため、文献的 察を加 え報告する。P-5
高度リンパ管侵襲を認めた表在型食道癌の1例 関西労災病院 消化器外科 ○岡田 かおる,三木 宏文,中平 伸,鈴木 玲,吉村 弥緒, 宇治 美子,吉田 敦子,吉岡 康多,田村 茂行 はじめに:内視鏡による深達度診断は治療法を決定する上で重要である が、今回、上部消化管内視鏡上では表在型食道癌の診断であったが、術後 切除標本にて高度リンパ管侵襲を伴う進行癌であった1症例を経験したの で報告する。症例:67歳女性。現病歴:平成19年7月毎年受診していた 康診断の上部消化管内視鏡で食道に異常指摘される。精査加療目的で平成 19年8月精査加療目的で当科紹介受診。家族歴:特記すべきことなし。嗜 好歴:喫煙歴なし、アルコールはビール350ml/day程度。検査所見:血液検 査上、異常認めず、腫瘍マーカーは正常範囲。上部消化管造影では異常所 見認めず。上部消化管内視鏡では前切歯列より約31cmからやや発赤した粘 膜を認め、透見できる血管網は途絶、無血管領域も認め、35cmまでほぼ全 周性に広がっていた。同部位はヨード染色ではまだら不染となり、ピンク カラーサイン陽性であった。同部位より生検行いSquamous cell car-sinomaの診断。胸部造影CT上原発巣指摘できず、明らかな転移認めず。 PET−CT上も異常集積認めず。術前診断、食道癌 Mt 0−IIc T1aN 0M0の診断となった。全周性であることより平成19年9月食道癌一期根 治術施行。術中病理診断にて106recLに転移認め、食道亜全摘、3領域郭清、 胸骨後胃管再 術を行った。術後は経過良好で術後19日目に退院となった。 病理結果:最終病理結果は表在性に広がる上皮内癌を認めるとともに、高 度リンパ管侵襲を認め一部は筋層を貫いて浸潤する像を認め、Squamous cell carsinoma (mod)、AD、Inf b ie( ) IM(−) ly3 v1 n2 pT3N2M0 pstage IIIであった。結語:術前の内視鏡診断上では表在型 m3の早期食道癌の診断であったが、術後の切除標本にて高度のリンパ管 侵襲を伴う進行癌の結果であった。現在術後1年以上経過しているが無再 発で経過している。 一 般 演 題 ポ ス タ ー ︶P-1 2
家族性大腸腺腫症と診断され大腸亜全摘後18年目に 発症した十二指腸乳頭部腺腫,早期直腸癌を合併し た食道胃接合部癌の一例 九州大學大学院 病態制御内科学 ,同 形態機能病理学 ,同 臨 床腫瘍外科学 ○麻生 暁 ,中村 和彦 ,山田 真梨子 ,徳永 紀子 , 井星 陽一郎 ,村尾 寛之 ,荻野 治栄 ,金山 兼司 , 隅田 頼信 ,板場 壮一 ,秋穂 裕唯 ,高柳 涼一 , 当間 宏樹 ,永井 英司 ,後藤 綾子 【症例】53歳 男性 【主訴】なし【病歴】1989年突然の下痢を認め,大 腸内視鏡検査にて多発ポリープを指摘され家族性大腸腺腫症(FAP)と診 断.1990年に大腸亜全摘術が施行され,以後定期的に経過観察されていた. 2005年の 診にて 潜血検査陽性、 血を指摘されるも消化管検査は行な われなかった.2008年4月,前医上部内視鏡検査にて異常を指摘され当院 紹介入院となった.【入院後経過】当院での内視鏡では食道胃接合部に1/ 3周在性の隆起性病変を認め生検でwell to moderately differentiated adenocarcinomaの診断であった.内視鏡上隆起内にはっきりとした相対 的陥凹を認め,送気により一部伸展不良を認めた.超音波内視鏡でも腫瘍 エコーにより第3層の不明瞭化を認め深達度SM 2と診断した.またこの 他に十二指腸乳頭部に長径30mmを超える十二指腸乳頭部腫瘍(生検では tubular adenoma),歯状線より口側の残存直腸に15mm大のIsp型ポリープ (生検ではtubular adenoma with moderate epithelial atypia)を指摘さ れた.十二指腸腺腫に対し本人が強く内視鏡治療を希望したため,吻門部 胃癌に対する胃切除術後,内視鏡アプローチが極めて困難になる可能性を 慮し,十二指腸乳頭部腫瘍,大腸ポリープに対して内視鏡的切除を先行 した.その後開腹噴門側胃切除術+D2郭清を施行した.切除標本では胃癌 はpType IIa+IIc ,SM2,ly1,v1,切除断端陰性であったが,1群リ ンパ節までの転移を認めた.乳頭部腫瘍はadenoma,直腸 ポ リープ は adenocarcinoma in adenoma 粘膜内癌,断端陰性であった.現在術後3ヶ 月,術後補助化学療法を外来施行中である.【結論】本症例はFAPに対する 大腸亜全摘術後18年目に同時性多発癌を来した一例である.FAPは未治療 であれば,ほぼ100%大腸癌が発生する.大腸全摘術後も他の消化管および 消化管外に悪性腫瘍が発生する確率が高く,サーベイランスが必要である. FAP患者に時に胃癌を認めるが,食道胃接合部癌の合併は極めてまれであ り,若干の文献的 察を加えて報告する.P-1 1
十二指腸に脱出した胃腫瘍6症例の検討 康生会武田病院 消化器センター ,京都府立医科大学大学院医学 研究科 消化器内科学 ○土屋 礼子 ,高岡 遠 ,峠岡 佑典 ,中部 奈美 ,朴 義男 , 高橋 周 ,吉川 敏一 今回、当院で経験した十二指腸に脱出した胃腫瘍について臨床的検討を加 えた。【対象と方法】当院で2003年4月から2008年10月までの期間に経験し た6症例7病変につき、年齢、性別、症状、病変の形態・大きさ・局在、 内視鏡診断、内視鏡的整復の有無、治療、病理組織等につき検討した。【結 果】男女比は2:4、平 年齢は80.3歳(68∼91歳)であった。主訴は、腹 痛2例、嘔吐1例、食思不振1例、タール 1例、無症状( 診で軽度 血、 胃透視で胃ポリープを指摘)1例であった。2例が 胆管結石の内視鏡的治 療中に発見された。胃腫瘍の形態はすべて有茎性の隆起性病変であり、頭 部の直径は平 2.8cm(1.5∼4cm)であった。1例は2つの病変が十二指 腸内に脱出していた。病変の存在部位は幽門後壁側2例、幽門前壁側、幽 門小弯側が1例ずつ、前 部大弯側が1例、胃角部前壁、胃角部大弯が1 例ずつであった。内視鏡的診断については、胃病変が十二指腸に脱出して いることの診断は全例で容易であった。内視鏡による腫瘍の胃内への整復 は5例6病変で可能であった。治療は、胃内に整復後に内視鏡的切除3例、 胃内に整復後外科的切除1例、整復不能のまま外科的切除1例、経過観察 1例であった。切除例における病理組織検査の結果は、2例が過形成性ポ リープ、1例が癌化を伴った過形成ポリープ(m,ly0,v0,ce-)、1例が腺 癌(sm massive)、1例が進行内 泌細胞癌であった。【 察】胃腫瘍が十 二指腸内に脱出することは比較的まれであり、無症状であることも少なく ないと報告されている。今回の検討では、腹痛や嘔吐などの症状を伴うBall valve syndromeの合併が6例中3例あったこと、悪性病変が7病変中3病 変あったことより、本病態においては慎重な治療方針の決定が必要である と えられた。P-1 0
十二指腸に脱出した巨大胃腺腫の一例 社会保険大宮 合病院 内科 ,社会保険大宮 合病院 外科 ,さ いたま市民医療センター 外科 ○田島 一美 ,小野寺 大吾 ,酒井 利幸 ,浅見 育広 , 中野 真 , 本 都 ,宗像 博美 ,青笹 季文 ,渡邉 善正 , 南部 弘太郎 ,塩谷 猛 ,渋谷 哲男 【症例】68歳女性。【主訴】食欲低下【既往歴】アルツハイマー型痴呆。【現 病歴】2008年7月より食欲低下が出現し近医受診。腹部XPにてイレウスの 疑いにて紹介入院となった。【経過】大腸内視鏡検査にて異常を認めず。腹 部造影CT、MRIを施行し胃体上部から十二指腸水平脚中部にかけて連 続する腫瘤を疑わせる病変を認めた。上部消化管内視鏡検査では胃体上部 大弯に広い基部を有する有茎性の腫瘤を認めた。表面は 葉状の隆起でや や柔らかい巨大な腫瘤であった。腫瘤先進部は幽門をこえ十二指腸球部へ 脱出し、さらに十二指腸水平脚まで達していた。生検にて過形成ポリープ の診断であったが、一部癌化の可能性も 慮し胃部 切除術を施行した。 病理診断は210×40mm大の胃型の胃腺腫であった。腺腫としては巨大であ り貴重な一例と えられ報告する。P-9
潰瘍の治癒過程で増大した胃腺腫の3例 昭和大学 藤が丘病院 消化器内科 ○平田 邦代,澤田 晋,山田 雅哉,安田 宏,落合 康雄, 猪 志,黒田 高明,竹越 淳,橋本 裕輔,江林 明志, 丸岡 直隆,渡邊 綱正,小川 修,吉汲 宏毅,遠藤 豊, 井上 和明,与芝 真彰 【緒言】潰瘍の治癒過程に生じる隆起型の瘢痕は、過形成性変化の可能性 が高いという報告があり、増大する胃腺腫を認める例は稀である。今回、 潰瘍の治癒過程に発育した腺腫を3例経験したため、病理学的検討をし、 文献的 察も含めて報告する。 【症例1】65歳 男性。心窩部痛のため上部消化管内視鏡を施行した。胃 角小彎に潰瘍を認め、辺縁からの生検でGroup IIIと診断された。1ヵ月後 の再検で、潰瘍は瘢痕化していたが、瘢痕に連続して肛側に白色隆起性病 変を認め、生検でGroup IIIと診断された。 【症例2】71歳 女性。 血を指摘され、上部消化管内視鏡を施行した。 胃角小彎に潰瘍を認め、辺縁からの生検でGroup IIIと診断された。PPIの 内服を開始し、3ヵ月後に再検したところ、潰瘍は瘢痕化していたが、瘢 痕周囲に白色隆起を認め、生検でGroup IIIと診断された。6ヵ月後に再検 したところ、同様の結果であり、ESDで一括切除した。病理結果はCar-cinoma in adenoma,depth m,ly0,v0,LM-,VM-で完全切除であっ た。 【症例3】47歳 男性。心窩部痛のため上部消化管内視鏡を施行した。胃 角小弯に潰瘍を認め、辺縁からの生検でGroup Iと診断された。PPIの内服 を開始し、12ヵ月後に再検したところ、潰瘍は瘢痕化していたが、瘢痕周 囲に白色隆起を認め、生検でGroup IIIと診断された。ESDで2 割切除後、 APC焼 した。病理結果はadenomaで切除端は陰性であった。 一 般 演 題 ポ ス タ ー ︶P-1 6
短期間に著明な形態変化をきたした早期胃癌の1例 愛媛県立中央病院 消化器内科 ,愛媛県立中央病院 病理部 ○長谷部 昌 ,児玉 明洋 ,日高 ,上原 貴秀 ,平岡 淳 , 市川 壮一 ,宮本 安尚 ,二宮 朋之 ,道堯 浩二郎 , 前田 智治 ,古谷 敬三 半年間で著明な形態変化をきたした早期胃癌の1例を経験したので報告す る。症例は70歳男性。既往歴:50歳時に胆管細胞癌にて肝切除、胆管空腸 吻合術。20年3月肝内結石による閉塞性黄疸、胆管炎で当科入院となった。 入院時の上部消化管内視鏡検査で胃前 部前壁に15mm0 IIa型早期胃癌 を認め、内視鏡的胃粘膜下層剥離術(ESD)を施行した。20年7月経過観 察の内視鏡検査でESD潰瘍瘢痕とは別部位である前 部小弯に一部に発 赤調の粗大顆粒状を伴う25mm程度の結節集簇型病変が出現した。生検で はtubular adenomaあった。2ヵ月後の内視鏡検査では、著明な結節の増 大が見られた。生検ではwell differenciated adenocarcinomaであった。 3ヵ月後の内視鏡検査では、粗大結節は消失し病変部は25mm程度の扁平 隆起様を呈した。同病変に対して10月1日ESDを施行した。病理結果は隆 起部に一致し高 化型腺癌が認められ、病変は粘膜固有層にとどまり断端 陰性、脈管浸襲陰性で完全切除であった。 及的に半年前の内視鏡所見を 確認した所、同部位には0 IIc様病変が認められ、短期間に0 IIc型から0 IIa結節集簇型、さらにはo IIa型へと形態変化をきたしたものと推定され た。短期間に著明な形態変化をきたした早期胃癌を内視鏡で観察しえたの で文献的 察を加え報告する。P-1 5
範囲診断に苦慮した胃型形質を有した早期胃癌の1 例 国立国際医療センター戸山病院 消化器科 ,国立国際医療セン ター戸山病院 病理部 ○大嶋 隆夫 ,笹島 圭太 ,尾上 淑子 ,藤谷 啓一 , 西村 崇 ,朝山 直樹 ,中島 亮 ,山田 晃弘 ,白井 聖一 , 矢田 智之 ,赤澤 直樹 ,櫻井 俊之 ,永田 尚義 , 横井 千寿 ,酒匂 赤人 ,小早川 雅男 ,秋山 純一 , 柳瀬 幹雄 ,正木 尚彦 ,上村 直実 ,伊東 干城 症例は65歳男性。平成17年6月、近医の上部消化管内視鏡検査で胃角部前 壁に約10mm大の隆起性病変を認め紹介となった。術前診断10mm、0 I, cMで同年7月にESD一括切除を行った。切除標本は25×15mm、病理組織 診断は「0 I+IIb,10×8mm,tub1,M,ly0,v0,VM-,LM uncertain」 であった。3か月後の内視鏡検査では同部に瘢痕を認めるのみであった。 以後、通院は患者の都合で中断されていたが平成20年4月、フォロー目的 で来院。治療後瘢痕上に約10mm大の軽度発赤した陥凹性病変を認め生検 でtub1であり精査加療目的で入院となった。術前の色素およびNBI拡大 内視鏡診断で、10mm、0 IIc+uls、cMで遺残再発を疑い6月にESDにて 一括切除を行った。偶発症は認めなかった。術中治療後瘢痕に相当する腫 瘍の口側前壁はliftingが殆どなくST フードで視野展開を行った。病理組 織診断は「0 IIc,10×9mm,tub1,M,ly0,v0,Ul-II,VM-,LM-」で あった。病変の口側は潰瘍瘢痕上にあり粘膜下層の線維化と粘膜筋板の乱 れを伴う事から、初回切除した腫瘍の遺残再発である可能性が病理組織学 的にも示唆された。但し免疫染色では殆どの癌細胞がMUC6(+)、比較的 多数の細胞がMAC5AC(+)、ごく かにMUC2(+)、CD10(-)であるこ とから胃型形質癌と えられたが、初回切除標本ではMUC6陽性細胞は殆 ど認めず、比較的多数の細胞がMAC5AC(+)、ごく かにMUC2(+)、 CD10(-)で形質発現に差異はあるが両者ともに胃型形質を有していた。胃 癌における同一病変内の組織多様性を 慮すると免疫染色の結果は遺残再 発の可能性を否定するものではないが、初回病変近傍に病変が予め存在し ていた可能性も完全には否定できない。今回の病変は内視鏡像において瘢 痕上に存在していたこと、病理組織像の構築図においても癌と瘢痕の存在 がかなり重複していること、内視鏡上IIbを術前読めていない結果、1回目 のESDでLM陰性が得られなかったこと、以上より遺残再発病変と診断し た。胃型粘液形質を有する場合、進展範囲診断が困難であることが報告さ れており本症例もそれに矛盾しないものと える。今後、術前生検の時点 で形質発現を検索し胃型の場合はより注意喚起して範囲設定するなど対策 が必要と える。P-1 4
追加胃切除後fStageIIIAであったESDでSM1胃癌 と診断された症例 千葉県がんセンター 消化器外科 ,千葉県がんセンター 消化器 内科 ○滝口 伸浩 ,原 太郎 ,傳田 忠道 ,中村 和貴 , 須藤 研太郎 ,山口 武人 【はじめに】器具の開発、改良および内視鏡医の手技の向上の結果、本邦 における胃癌の内視鏡治療の進歩はめざましい。その結果、適応拡大も図 られつつあり、 化型癌ではサイズにかかわらず粘膜内癌であるものを適 応としている施設も多い。一方、SM1胃癌への適応拡大も一部では行われ 始めた。今回、ESD後、SM1、脈管侵襲陽性で追加手術となった症例でf StageIIIAであった症例を経験したので報告する。【症例】79歳男性。自覚 症状なし。胃癌検診で胃透視にて異常を指摘され、胃内視鏡施行。胃体上 部から噴門にかけて小弯中心の0-IIa病変で高 化型線癌の診断。XP上7 cm。IT2ナイフを 用してESD施行。ESD標本の病理結果は0-IIa病変は 75mmX42mm で高 化型線癌SM1,ly1,v1,VM 不明,食道浸潤陽性で あった。追加切除となり、腹腔鏡補助下胃全摘術D1+βを施行した。その 結果SSのリンパ管内に0.3mmの癌遺残があり、pT2(SS)ly1v0pPM 0 pDM0pN2(4/27)でfStageIIIAであった。術前のCT診断は、H0P0N 0M0と診断されていた。現在、TS1内服治療中である。術前画像診断で、 腫瘍遺残の指摘ができないため、ESD後の治療方針は、ガイドラインに って約20%のリンパ節転移率であることを患者に説明し手術となった が、ここまで進行していることは予想外であった。【結語】粘膜筋板を貫い て完成したSM胃癌は粘膜内癌とは明らかに異なった動態を示す事を念頭 におく必要がある。ESDでSM癌であった場合、胃内視鏡やCTで追加治療 の決定をすることは困難である。P-1 3
光線力学療法(PDT)にて治療した胃癌ESD後遺残 再発の2例 国立がんセンター東病院 内視鏡部 ○金 潤哲,矢野 友規,鶴田 真也,三梨 桂子,池 弘朗, 金子 和弘,大津 敦 早期胃癌に対して内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が広く普及しているが、 その適応が拡大するにつれて、遺残再発例が増えることが予想される。 ESD後遺残再発例に対する再ESDは非常に高度な技術が要求される。今回 我々は、早期胃癌ESD後遺残症例に対して再ESDを施行したが遺残し、光 線力学療法(PDT)を施行した2例を経験したので報告する。【症例1】65 歳、男性。他院にて胃体下部大弯15mm大の0-IIaに対してESDを施行さ れ、病理診断では adenocarcinoma,tub1, pM ,ly0,v0,VM(-),LM (+)であった。経過観察の上部内視鏡検査にてESD後遺残再発を認めたた め、治療目的で当院紹介受診。ESD後遺残再発としてESD施行。十 な切 除範囲にて一括切除したが、病理診断では adenocarcinoma,tub1,pM , ly0,v0,VM(-),LM( )だった。再ESD後4ヶ月後の上部内視鏡検査に て生検でadenocarcinomaを認めた。治療後の瘢痕が著しく、再ESDは困難 と判断。手術を勧めるも本人は拒否したため、十 なインフォームドコン セント(IC)の後にPDTを行うことにした。ポリフィルマーナトリウム (フォトフィリン)113mg(2mg/kg)を静注2日後と3日後にエキシマダ イレーザー(EDL)(100J/cm2×8)計800Jを照射し、偶発症なく退院。 6ヶ月後の上部内視鏡検査では、遺残を認めず生検でも陰性であった。【症 例2】82歳男性。近医にて早期胃癌の診断を受け、当院に紹介受診。当院 の上部内視鏡検査にて、胃前 部小弯に0-IIa 、30mm大を認めた。ESD 一括切除を施行したが、病理診断では、胃前 部小弯の病変は、adenocar-cinoma,tub1,pM,ly0,v0,VM(-),LM(?)であった。経過観察の上部内 視鏡検査では、前 部小弯のESD後瘢痕上から生検でadenocarcinomaを 認めた。初回ESD後7ヶ月後、14ヶ月後に遺残再発に対する再ESDを施行 したが、いずれも治療に難渋し 割切除になった。再ESD後5ヶ月後の上 部内視鏡検査にて遺残再発を認めた。再ESDは不可能と判断し、手術を勧 めたが患者が拒否したため、充 なICの後にPDTを施行した。フォトフィ リン135mg(2mg/kg)を静注2日後と3日後にEDL(100J/cm2×7)計 700Jを照射し、偶発症なく退院。2か月後の上部内視鏡検査では、遺残を 認めず生検でも陰性であった。【結語】胃癌ESD後遺残再発に対してPDTで 治療した2例を報告した。いずれも観察期間が短いが、現時点では遺残再 発を認めていない。PDTは、手術拒否または不能で、再ESD困難な遺残再 発例に対する治療選択肢の一つになり得る。 一 般 演 題 ポ ス タ ー ︶P-2 0
重複癌(胃癌、子宮頚癌)を合併したPeutz-Jeghers 症候群の1例 宮崎大学 医学部 内科学講座 消化器血液学 野 ,宮崎大学 医学部 外科学講座 腫瘍機能制御外科学 ○杵嶋 奈々瀬 ,原田 拓 ,山本 章二朗 ,田原 良博 , 安倍 弘生 ,三池 忠 ,山路 卓巳 ,中村 憲一 ,楠元 寿典 , 岩切 久芳 ,蓮池 悟 ,永田 賢治 ,柴田 伸弘 ,前原 直樹 , 千々岩 一男 ,下田 和哉 Peutz-Jeghers症候群(PJS)は消化管のポリポーシスと口腔粘膜、口唇、指 趾の色素沈着、常染色体優性遺伝を3主徴とする症候群で、消化管及びそ の他の悪性腫瘍の合併が多いことがよく知られている。今回、我々は胃癌、 子宮頚癌の重複癌を合併したPJSの1例を経験したので報告する。症例は 38歳、女性。家族歴では と兄、娘、息子がPJSと診断されている。生後数 か月で、指趾に色素沈着が出現、家族歴からPJSと診断されていた。36歳時 に検診目的で施行された上部消化管内視鏡検査(GS)で、胃体部大弯に10 mm及び5mm大のポリープを指摘されていた。2008年6月の検診のGSに て胃体中部大弯に巨大な粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め、また子宮頚癌 検診の細胞診でclassIIIbと診断され、精査加療目的にて当院紹介となった。 胃病変は当科のGSでは胃体中部大弯にびらん面を伴う巨大な粘膜下腫瘍 様の隆起性病変として描出され、生検でadenocarcinomaと診断した。また カプセル内視鏡で小腸病変の精査も施行し、空腸に腫瘍を認め、幽門側部 胃切除術と空腸部 切除術を施行された。子宮病変は、画像検査では径 6cm前後の多房性腫瘤として描出され、子宮頸部のびらんからの生検で adenocarcinomaと診断された。精査後、StageIb2の子宮頸癌の診断で、 広汎子宮全摘術が施行され、現在術後化学療法施行中である。摘出標本の 病理組織学的評価では、胃および子宮の両病変ともに粘液産生能に富んだ 腺癌で、粘膜下腫瘍様の形態を呈していたことからも胃病変は転移病変で ある可能性が示唆されたが、免疫組織学的診断やPJSの症例であることを 含めて 慮し、最終的に重複癌であると診断された。PJSでは消化器腫瘍や 子宮頚癌を高頻度に合併するが、本症例のように胃癌と子宮頚癌の重複癌 を合併した報告は稀である。また胃癌は粘膜下腫瘍様の形態を呈し、興味 深い症例と思われたため、若干の文献的 察を加えて報告する。P-1 9
早期胃癌様肉眼所見を呈した前立腺癌胃転移の1例 名古屋記念病院 化学療法科 ,名古屋大学大学院 消化器内科学 ○古田 竜 一 ,伊奈 研次 ,安藤 貴文 ,後藤 秀実 症例は77歳の男性。2007年9月近医にて前立腺の腫大を指摘されていた。 2008年2月頃から排尿困難、腰背部痛および食欲不振が出現し、持続する ため精査目的に当院を紹介された。腹部CT検査にて径52mmと前立腺の腫 大を認めた。血清PSA値は正常であったが、骨シンチグラムの結果、多発 骨転移を認めたため、前立腺生検を試行し中 化型腺癌(Gleason score7) と診断された。持続する食欲低下に対しスクリーニングGIFを施行した。胃 体中部大弯に径約1cmの褪色調の境界不明瞭な浅い陥凹性病変が指摘さ れた。病変部にびらん、潰瘍はなく、粘膜構造は保たれていた。病変部の 病理学的検索で転移性腫瘍が強く疑われ、PSA染色で強陽性であることか ら前立腺癌胃転移と診断された。本症例はホルモン療法が奏効し、胃病変 の消失を認めた。現在も治療を継続し経過観察中である。前立腺癌は頻度 の多い悪性腫瘍の1つであるが、胃転移を認めることはまれで、内視鏡的 に診断された前立腺癌胃転移は現在まで3例の報告をみるに過ぎない。今 回われわれは早期胃癌との鑑別を要した前立腺癌胃転移の1例を経験した ので報告する。P-1 8
直腸狭窄によるイレウスが契機となり診断しえたス キルス胃癌・転移性直腸癌の1例 名古屋セントラル病院 ○桶屋 将之,神谷 友康,真鍋 孔透,佐藤 寛之,安藤 伸浩, 川島 靖浩 [症例]70歳代、男性 [主訴]腹部膨満感 [既往歴]高血圧 [現病 歴]平成20年8月中旬より腹部膨満感を自覚。平成20年9月近医受診。大 腸内視鏡検査にて下部直腸(Rb)に腫瘍を指摘され、同月当院紹介受診。 精査加療目的にて入院となった。[経過]直腸診にてRbに全周性狭窄を伴 う弾性軟な腫瘤を触知した。腹部CTにて著明な大腸ガスの貯留と腹水は 認めたが直腸の腫瘤像は認めなかった。腹部Xpにてニボー像あり、イレウ スと診断。透視下にて大腸内視鏡検査施行した所、Rbに全周性狭窄を伴 う隆起性病変あり。ファイバー通過は可能であった。ガストログラフィン による注腸にても全周性の狭窄を認めた。腫瘍マーカーはCEA・CA19-9 共に正常値であった。翌日腹満増強および腹部Xpにて著明な腸管ガスの貯 留を認めたため、経肛門的にイレウス管を挿入した。直腸腫瘤の病理結果 はno malignancyであったため、超音波ガイド下経肛門的針生検を施行し た。腹水貯留も著明であり、腹水穿刺施行し培養・細胞診を提出した。上 部消化管内視鏡にて胃の拡張不良・胃壁の進展不良・多発する不整潰瘍を 認 め、ス キ ル ス 胃 癌 と 臨 床 的 に 診 断 し た。腹 水 細 胞 診 か ら Class V adenocarcinomaを検出。直腸針生検より粘膜下から筋層にsignet ring cell を伴う異型細胞浸潤が見られ、胃癌の転移と診断。以上よりスキルス胃癌・ 腹膜播腫による転移性直腸癌と診断した。人工肛門造設術を施行し、S-1 内服による化学療法(28日間投与・14日間休薬)を開始し、経過観察中であ る。今回我々は、イレウスが契機となり診断しえたスキルス胃癌・転移性 直腸癌の1例を経験したので若干の文献的 察を加え報告する。P-1 7
発生,進展の経過が推察された残胃噴門部癌の1例 坪井病院 外科 ,日本医大 外科 ,白河病院 外科 ○山下 直行 ,萩原 信敏 ,勝田 美和子 ,進士 誠一 , 宮下 正夫 ,徳沢 英哲 ,田尻 孝 【症例】74才,女性.【主訴】 血.【経過】1993(59才)胃癌にて幽門側胃切 除 .0(I I c)T 2 , t u b 2 ,m p,n 0 ,P 0 ,H 0 ,D 2 ,B -I 吻 合 , stageIb.1994,1995,に上部消化管内視鏡問題なし.1997噴門近傍に隆起性 病変あり,groupIV(要再検). 2002食道胃接合部に白色色調変化,IIa集簇 病変, GroupIII,要再検だったが来院せず.2008.3.再来.残胃癌の診断で紹 介(Hb7.1).【術前診断】上部消化管内視鏡,造影検査で食道胃接合部に全周 性Type3,食道浸潤長は3-4cm.CTでNo.110(+),腹部LN(-).T3orT 4(肝,膵).Remnnant Gastric Ca M-15-EOS,Circ,T3(orT4,LIver)N (+, No.110)H0, P0,cStageIIIA以上(原発上部胃癌に準ずればN3, StageIV).【手術】1)食道浸潤長,2)前回手術の癒着,3)T4の可能性か ら左開胸を選択.開腹でP0,CY0確認後,開胸.膵脾を脱転し,左背側から 右 横 隔 膜 脚 ま で 剥 離 後,授 動 し た 肝 左 葉,残 胃 を 剥 離 す る.sT 3,sN (+,110, 食道壁に集簇し固着),残胃全摘下部食道切除,脾摘,胆摘,手術時 間484 ,出血量720ml,輸血MAP2U.【術後経過】腹腔内膿瘍(胆汁性)を ドレナージし,肋弓 部感染をデブリードマン,再縫合し軽快退院.現在外 来にてTS-1を継続し再発の兆候なし.【病理】切除標本では腫瘍の中心は 食 道 胃 接 合 部,や や 食 道 側 で あった.70x50mm, pap, ss, N(+) (No.110:2/4,No.10:1/4),int,INFβ,ly3,v2,H0,P0,CY0. 【 察】1)初期発生,進展の過程を一部検証し得た残胃癌の1例を経験し た.2)今症例は胃側から発生し,食道側まで側方進展した後,深部へ浸潤し たように推察された.3)リンパ切転移が疑われる残胃癌は定形的郭清に準 じてNo.10郭清のため脾摘も併施すべき.3)3cm超の食道浸潤,他臓器 (肝)浸潤や癒着が疑われる残胃癌に対し,左開胸アプローチ,膵脾脱転が有 用 で あった.JCOG9502の 結 果 や JCOG0110で 試 験 中 の 膵 脾 脱 転 し な い No.11,10郭清は原発胃癌に限るべきで,症例に応じた対応が必要. 一 般 演 題 ポ ス タ ー ︶P-2 4
非切除胃に発生したgastritis cystica profunda合併 胃腫瘍に対してESDを施行した3例 大阪府立急性期・ 合医療センター 消化器内科 ,大阪府立急性 期・ 合医療センター 病理科 ○齋藤 義修 ,竹田 晃 ,藤永 哲治 ,田中 司 , 原田 直毅 ,山川 美帆 ,西山 範 ,入江 孝 ,鈴木 貴弘 , 春名 能通 ,井上 敦雄 ,島津 宏樹 ,伏見 博彰【背景・目的】Gastritis cystica profunda(GCP)は胃腺窩上皮の過形成 と粘膜深部に増生する嚢胞状拡張腺管を特徴とする胃炎を指す。胃切除後 の残胃に発症することが多いとされ、非切除胃に発症することは比較的稀 とされる。今回われわれは非切除胃に発生したGCP合併胃腫瘍を3例経験 したので文献的 察を含めて報告する。【症例1】69歳、男性。体上部後壁 に径10mm大の0 -IIc病変を認め、生検にてGroupV(tub2)と診断された。 同病変に対してESDを施行、病理組織結果は adenocarcinoma : tub 1>tub2, pT1(M), UL(-),ly0, v0, pLM(-)/2mm, pVM(-)/1 mmであった。病変部近傍の粘膜下層にGCPを認めた。【症例2】68歳、男 性。体 下 部 小 弯 前 壁 に 径10mm大 の 0 -IIa 病 変 を 認 め、生 検 に て GroupIVと診断された。早期癌の可能性を 慮し、ESDを施行した。病理 組織結果は tubular adenoma : moderate atypia 30%, mild atypia 10%,pHM0(5mm),pVM0(1mm)であった。病変部直下の粘膜下層 にGCPを認めた。【症例3】81歳、男性。体上部小弯に径25mm大の0 -IIa 病変を認め、生検にてGroupV(tub1)と診断された。 同病変に対してESD を施行、 病理組織結果は adenocarcinoma :IIa,tub1,pT1(SM2), UL(+),med,INFα,ly0,v0,pLMX,pVM(-)/1.5mm であった。 病変部直下の粘膜下層にGCPを認めた。【 察】GCPは切除胃においては残 胃癌との発生との関連が示唆される病変である。本症例のように非切除胃 においてGCPを認める症例の報告が近年なされているが、その臨床的意義 については確立されたものはない。治療方針については今後 なる検討が 必要であり、今後も厳重な経過観察が必要であると えられる。