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目 次 家 政 自 然 編 論 文 1. 大 学 生 の 家 庭 科 に 対 するイメージにみる 男 女 共 修 家 庭 科 の 意 義 と 課 題 藤 田 智 子 1 2. 理 科 教 育 における 擬 人 化 による 体 感 学 習 の 可 能 性 吉 川 直 志 木 造 住 宅 の

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(1)

名 古 屋 女 子 大 学

第五十九号

家政・自然編 人文・社会編

J O U R N A L

OF

NAGOYA WOMEN’S UNIVERSITY

NO.59

HOME ECONOMICS

・NATURAL SCIENCE

HUMANITIES

・SOCIAL SCIENCE

平成二十五年三月 March, 2013

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家政・自然編 〈論文〉 1.大学生の「家庭科」に対するイメージにみる男女共修家庭科の意義と課題    ………藤田 智子 1 2.理科教育における擬人化による体感学習の可能性………吉川 直志 13 3.木造住宅の壁量に関する研究………山本 享明 21 4.「酸性食品」・「アルカリ性食品」の栄養学的意義についての再考    ………錦見 盛光・福島 和明・古市 幸生 29 〈研究ノート〉 5.大学における消費者教育の試み:愛知県消費生活情報ウェブサイトの改善    ………神山 久美 41 6.織物の剛軟性を理解するためのe-Learningコンテンツの試作    ………間瀬 清美・小町谷 寿子・石原 久代 51 〈資料〉 7.小学校第6学年理科「電気の利用」に関する授業検討    ………吉川 直志・石田 典子・中村 早耶香 61 8.市民による気温の一斉観測の成果と問題点―可児市(岐阜県)の事例―    ………村上 哲生 73 人文・社会編 〈論文〉 9.ちょっとしたつながりのコミュニティと持続可能性    ―サステイナビリティ学における社会学的視点(第2報)―…………平松 道夫 79 10.キャリアモデルの探索と形成にむけて    ―女子大学におけるキャリアモデルレポートの実践から― ………坂本 麗香 87 11.ものづくりワークショップの実践的研究(Ⅸ)    ―数学的・物理的要因を組み込んだワークショップ展開2―    ………渋谷 寿・宇野 民幸 99 12.大学教育におけるグループ学習のファシリテーション効果    ………白井 靖敏・鷲尾 敦・下村 勉 113 13.「経済教育」研究(第7報)    ―小学校「社会」の教科書分析に見る課題―………宮原 悟 123 14.カレル大学の発展における社会主義期の位置づけ    ―チェコ人のための大学という視点からの歴史の読み直し―…………石倉 瑞恵 135 15.意図的な隠れたカリキュラム ………氏原 陽子 149 16.女性の職業経歴分化を規定する要因 ………中村 三緒子 161

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18.日米高等学校国語教科書「書くこと」教材に関する事例研究    ―読書活動と関わる教材に注目して―………清道 亜都子 183 19.協働型サービスラーニングにより    「社会人基礎力」養成をめざす教科における「選択パターン」の導入    ………川田 博美 195 20.短期宿泊型の親子支援プログラムの効果測定の試み    ………竹澤 大史・飯田 沙依亜・幸 順子 207 21.エルサ・ベスコフ絵本研究    ―『ペレのあたらしいふく』に描かれた子ども像………村田 あゆみ 217 22.保育者養成のための歌唱指導    ―歌唱に関する学生アンケートの結果と考察―………藤田 桂子 227 23.音楽文化理解の新たなる方法を探る    ―ひとつのグレゴリオ聖歌が交響詩となるまでの断面史を通して― ……吉田 文 241 24.「保育表現技術(音楽2)」    ―読譜3―………安藤 恭子・森 久見子 255 25.日本の小学校における英語教育の課題 ………ダグラス・ジャレル 269 26.こうしてシャーロットの小説は始まる    ―作家としての特徴を考える―………杉村 藍 277 27.「古風」と「流行」から少女たちが学ぶこと    ―オルコット『昔かたぎの少女』―………羽澄 直子 291 28.トニ・モリスンの3作品における母親 ………石川 和代 303 〈研究ノート〉 29.保育者養成課程学生における言語表現の現状と課題    ―「保育内容演習(言葉)」の授業アンケートをもとにして― ……清道 亜都子 315 〈論文〉 30.「名古屋」語源考 ………林 和利 330 〈作品〉 31.家族(3重振り子Chaos Toy) ………渋谷 寿 331

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Home Economics・Natural Science 〈Papers〉 1.Significance and Issues of Coeducational Home Economics at the University    from the Viewpoint of the Students’ Conception of Home Economics    ……… T. FUJITA 1 2.Possibility of the Physical Feeling Study    by the Personification in Science Education ………T. YOSHIKAWA 13 3.A Study on Quantity of Wall of the Wooden House ……… T. YAMAMOTO 21 4.Revisitation of “Acid/Alkaline Ash Diets” in Terms of Their Nutritional Meaning    ……… M. NISHIKIMI, K. FUKUSHIMA, and Y. FURUICHI 29 〈Notes〉 5.A Trial of Consumer Education at the University:    Improvement in the Consumer Information Published on the Aichi    Prefecture Website ……… K. KAMIYAMA 41 6.A Trial of E-Learning Contents for Bending Resistance Examination    ……… K. MASE, H. KOMACHIYA, H. ISHIHARA 51 〈Brief Reports〉 7.Consideration about the Teaching Plan for “Use of electricity”    in the Sixth Grade Elementary school Science    ……… T. YOSHIKAWA, N. ISHIDA, and S. NAKAMURA 61 8.Results and issues of simultaneous measurements of air temperature    by untrained citizens in evaluating local climate; A case study in Kani City,    Gifu Prefecture, Central Japan ……… T. MURAKAMI 73 Humanities・Social Science 〈Papers〉 9.Community with Loose-tie and Sustainability:    Sociological Perspective in Sustainability Science (Ⅱ) ………M. HIRAMATSU 79 10.Toward The Search for and The Process of Formation of Career Ideals:    From A Survey of Female College Students’ Career Ideals    ……… R. SAKAMOTO 87 11.A Practical Study on the Craft Activities Workshop(Ⅸ)    −A Toy-making & playing Workshop fit to present Physical    Phenomena and Mathematical concepts 2− ……… H. SHIBUYA, T. UNO 99 12.Effectiveness of the Facilitations of Group Learning in Higher Education    ……… Y. SHIRAI, A. WASHIO, T. SHIMOMURA 113

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   Elementary Level ……… S. MIYAHARA 123 14.Analysis of socialism in the course of development of Charles University :    Re-reading Czech history from the viewpoint of the university    for Czech people ……… M. ISHIKURA 135 15.Intentional Hidden Curriculum ………Y. UJIHARA 149 16.Differentiation of women's Career ……… M. NAKAMURA 161 17.Formation of Sustainable Motivation for Learning through Practice Teaching    −Focusing on Practice Teaching Assignment and Self-Evaluation−    ……… S. MASUKAWA 171 18.Case Study of the Teaching Materials for Writing in Japanese and    the United States’ Language Textbooks for High Schools :    Concerning the Teaching Materials for Responding to Literature    ……… A. SEIDOU 183 19.Introduction of the “selection pattern” in the subject which aims at    “basic-ability-to-work-in-society” cultivation by collaborated type    service learning ……… H. KAWADA 195 20.A Trial Study to Evaluate Effects of Short-Term Residential Intervention    Program for Caregivers of Children with Developmental Disabilities    ……… T. TAKEZAWA, S. IIDA, and J. YUKI 207 21.A Study of Child Image in a Picurebook “Pelles nya kläder” by Elsa Beskow

   ……… A. MURATA 217 22.Singing Instruction to Students Aiming to be Childcare Workers    ―Result of Questionnaire Survey to Students and Discussion―    ……… K. FUJITA 227 23.Versuch einer neuen Methode fuer Musikkulturverstaendnis …… A. YOSHIDA 241 24.“Early Childhood Education Expression Skills(Music 2)”    ―on Music Reading Ⅲ― ………K. ANDO, K. MORI 255 25.The Challenges of English Education in Japanese Elementary Schools    ……… D. JARRELL 269 26.Thus Her Novels Begin: Charlotte Brontë’s Way of Novel Writing    ………A. SUGIMURA 277 27.What Girls Learn from “Old- fashioned” and “Fashionable” in Alcott’s

   An Old-Fashioned Girl ……… N. HAZUMI 291 28.The Mothers in Toni Morrison’s 3 Works ……… K. ISHIKAWA 303 〈Brief Reports〉

29.A Questionnaire Study on Students’ Linguistic Consciousness and Ability :

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〈Works〉

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緒言  家庭科が1994年に男女共通必修(以後,男女共修)となってから15年以上が経過した.戦後 の教育改革によって,家庭科は,それまでの女子教育,家事・裁縫教育から脱却し,民主的な 家庭について男女で学ぶべき教科として新たに誕生した.だが,その後,学習指導要領が改訂 されるたびに,家族・家庭に関する学習は軽視されモノ中心の学習内容となった。さらに,中 学校では技術・家庭科が男子向き・女子向き教科とされ,高等学校では女子のみ必修と,男女 で学習内容も分けられていった.  男女共修家庭科の実現に向けて,1970年代には「家庭科の男女共修を進める会」をはじめと する家庭科教育関連団体の働きかけもあり,一部の自治体では男女共修家庭科が行われ始めた. その後,女子差別撤廃条約に批准するための法整備の一つとして,家庭科は男女共修となった.  学習指導要領改訂のたびに家庭科の扱いは議論にあがり,実質的な授業時間数の減少という 問題も生じているが,現在のところ,小中高等学校において男女共修が実施されている.学習 内容も,家族の多様化や少子・高齢化が進むにつれ,家族・家庭生活に関する学習が重要視さ れる方向に変わってきている.家庭科教育は,家族・家庭生活について社会とのかかわりの中 で考え,基礎的・基本的な知識・技術を身につけ,自立した生活者として主体的に家庭生活を 営む能力を身につけるための教科といえる.その際,家庭の仕事=女性の役割とせず,男女が 協力して家庭生活を営むことが求められる.1)2)3)  そのような中,家庭科の男女共修の意義を問うべく,学習者と教員の両方の立場から,男女 共修に対する考えや男女共修家庭科での学びに関する研究が行われてきた.まず,学習者の立 場にある(あった)生徒・学生・社会人に対する調査研究をみていく.  男女共修家庭科が実施される以前に,独自の取り組みとして男女共修が行われていた大阪府 の高等学校で,「家庭一般」を履修した男子生徒と,履修していない男子生徒の比較を行った 結果,履修した男子生徒は,家庭科の男女共修に賛成であること,男女で協力して生活してい こうという意識が高いこと,生活における実践的態度が高いことが明らかにされている4).男 女共修家庭科となった直後に行われた荒井・鶴田5)の調査では,男女共修家庭科の履修経験 がジェンダー・エクイティ意識の形成に関連しており,特に男子において顕著であることが明 らかにされている.  男女共修家庭科の実施前と実施後における,高校生男女の家族・保育に関する意識などを比

大学生の「家庭科」に対するイメージにみる

男女共修家庭科の意義と課題

藤田 智子

Significance and Issues of Coeducational Home Economics at the University

from the Viewpoint of the Students’ Conception of Home Economics

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較した中西の研究6)7)8)では,男女共修家庭科を履修した高校生は,多様な家族形態・結婚 形態を受容し,自分の家族や高齢者に対しても好意的な態度を持ち,ジェンダー・エクイティ 意識の形成によって家事参加率も高く,高齢者や自身が高齢化することをポジティブに捉え, 親準備性も高いことなどが明らかにされている.特に男子高校生において,家庭科の履修経験 の有無による差が大きく,女子も共学校においては,男女共修で学んでいる場合,多様な家族 観を受容し親準備性も高いといった差がみられた.共修施行前後の生徒の意識を比較調査した 大竹・今藤9)によると,家庭科の学習をした男子(男女共修施行後)は,学習をしなかった 男子(施行前)より,家庭科観・性別役割観が革新的でジェンダーフリーの傾向があった.男 子においては,共学校で学んだ場合も男子校で学んだ場合も同じ傾向がみられた.しかし,女 子では,男女共修以前にはジェンダーフリーの傾向が比較的強かった共学女子において,男女 共修後,その傾向は弱くなっていた.  社会人を対象とした調査においても,家庭科を学ぶ意義が認められていることが報告されて いる10)11).また,高校生と社会人の調査結果の比較から,男女共修家庭科を学んだ男女は性別 役割分業意識に対して否定的であり,特に男性においては多様な家族観を持ち,自分の家族に 対しても好意的であることが指摘されている6)7)8)  教員に対する調査研究においては,以下のようなことが明らかにされている.  家庭科の男女共修が始まる以前の1978-1979年に調査を行った片山12)によると,男女共修に 対して,家庭科教員自身もあまり積極的に賛成してはいなかった.男女共修になることによる 教材研究の負担増・教員数や施設の不足など,実施に伴う困難さを危惧していたようである. 一方,男女共修実施後に,教師の生活主権者意識と家庭科観等を調査した荒井ら13)によると, 男女共修家庭科によって深められた内容は,男女平等への理解や性別役割分業,家族関係であ ると認識している割合が,家庭科教員は他教科の教員に比べて高いことが明らかにされている. 家庭科教員免許状を取得しようとする女子大学生の家庭科に対するイメージにおいても,家庭 科は女子が学ぶ教科であるというイメージが減少していること,生活主体を育成する教科であ ると認識されるようになったことが指摘されている14)  男性家庭科教員に関する調査では,男性家庭科教員に教えられた経験をもつ高校生は,家庭 科=女性教員といった固定観念がみられる割合が小さく,ジェンダー・バイアスが低い傾向が あった.特に男子生徒は,男性家庭科教員に教えられた場合,家庭科を好んだり熱心に学習し たりする傾向があることも明らかになった15)  以上のように,家庭科の男女共修には一定の成果が認められており,特に家族観や性別役割 分業意識に対する影響は大きく,現在の社会状況に合った意識が形成されている.実施前は不 安を抱いていた教員も,家庭科の男女共修によって生活者としての意識形成が進んでいると考 えるようになり,男性教員も学習者に好ましく受け止められている.  だが,家庭科のイメージには根強いジェンダー意識があり,家庭科教育の必要性についても, 「現在」ではなく「将来」の家庭生活に対してあるという考えが強いことも,中西16)によっ て指摘されている.また,高校生の家庭科に対する認識をインタビュー調査から明らかにした 研究によると,家庭科は男子にも必要ではあるが,特に女子にとって重要な教科であると高校 生は認識しており,背景には,家庭科教員に女性が多いことや,家庭内のことは全て母親がや り,父親は不在であるといったことがあった17)  「学習にどのような意味や意義を感じているか」という「学習レリバンス」は,学習そのも のを面白いと感じる「現在的レリバンス」と,学習が将来役立つといった感覚である「将来

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的レリバンス」の2つに分かれるが,両者のレリバンスがあった場合,男女とも継続的な学習 を促進する意識が高く,男子においては教育達成の度合いが高くなることが明らかにされてい る18).つまり,生徒たちが学ぶ意義をどのように感じているかということは,生徒の学力や学 習意欲と深くかかわるといえる.教える側の教員がどのように家庭科の意義を考えているかに よって,学習者の認識は左右されるとも考えられる.家庭科教育の在り方を考える上で,学ぶ 側である生徒や教える側になる大学生たちの家庭科に対する認識を,常に問い続けていく必要 性があるといえるであろう.  よって本研究は,男女共修家庭科を学んできた大学生たちの家庭科及び男女共修家庭科に対 するイメージを分析し,先行研究の結果との比較を通し,男女共修家庭科の今後の在り方につ いて考察することを目的とする.特に,将来教員になることを目指している教育学部の学生に 焦点をあてる. 研究方法  男女共修家庭科を学んできた大学生たちの家庭科に対するイメージを明らかにするため,以 下の方法をとった. [調査概要] 調査 対象:関東の私立大学Aと国立大学Bの教育学部に通う大学生で,初等家庭科教育法を履 修している141名(女子78名,男子63名)を対象とした.2年生向けに開講された授業であり, 初等家庭科教育の内容については既に学んでいるが,家庭選修の学生はいない.授業中に 実施したこともあり,回収率は100%で,未記入の項目はなかった. 調査時期:2010年4月及び10月(各大学の初回授業時) 調査 方法:調査は,先行研究14)16)と同様に,「『家庭科』というと…」「男の子にとって家庭科 は…」といった書きかけの言葉の後に思いついたことを続けて文章を完成させる,文章完 成法を用いた. [調査内容]  質問紙には,「次の書きかけの文章を読んで,それに続けて,思いつく言葉を書いて文章を 完成してください.あなたの頭に最初に浮かんだことをそのまま書いてください.」という発 問の後,13個の質問項目を設定した.そのうち,本研究で用いるのは,「『家庭科』というと…」 「女の子にとって家庭科は…」「男の子にとって家庭科は…」「家庭科の男女共学は…」の4項 目である. [分析方法]  中西16)の分類を参考に項目を設定し,記述を分析した.回答数をカウントする際,複数の 項目の内容を含む場合は,それぞれの項目でカウントした.また,割合は,各性別の人数に対 する割合を求めた. 結果と考察 1.「家庭科」というと一番に思い浮かぶもの

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 まず「『家庭科』というと…」に続けて書かれた文章を分析した.質問紙でも一番上にある 項目であり,「家庭科」と言われて最初に思い浮かべることといえる.記述内容は,先行研究 と同様に,学習内容について書かれたものが多かった.学習内容に関する記述と,学習内容以 外に関する記述に分けてみていく. (1)学習内容  学習内容について書かれたものを分 析した結果が図1である.男女とも,「調 理・料理」が最も多く約4〜5割の学生 が回答した.次に,「裁縫・被服」が約 2〜3割と続き,家庭科は調理と裁縫と いうイメージがあるようである.これは 先行研究と同じ傾向である.「衣食住」 という回答は1割程度あったが,単独で 住居に関する記述はみられなかった.ま た,「家族・保育」に関する記述は,男 子でごくわずかにみられたが,女子には みられなかった.「お母さんが家でやる 家事」(女子)といったように,学習内 容に性別役割分業意識が伴った記述も みられた.  また,「調理」といっても,単に「調理」 「調理実習」という記述の他,「調理実習とかがあっておもしろい」(女子),「調理実習でクラ スの人と仲良くなる」(男子),「調理の仕方など,女性としての役割(?!)みたいなものを学ぶ」 (女子)といったように異なったイメージをもっており,学ぶことそのものをおもしろいと感 じる「現在的レリバンス」や,調理実習を通して何を学ぶのかといった記述がみられた.授業 でクラスメート共に学ぶことは,協働の学びであるほか,「女性らしさ」の獲得も行われてい るようである. (2)学習内容以外  次に「家庭科というと…」に続けて書 かれた文章のうち,学習内容以外に関 する記述を分析した結果が図2である. 「生活に役立つ」「生きていく上で必要」 といった記述が女子の約3割,男子の1 割強でみられた.「将来役立つ」といっ た記述は,少数だが女子にみられ,「好 き・楽しい」は女子で約1割,男子では 5%程度であった.  「女子の教科」と回答したのはごく少 数で,先行研究と比較しても少なかっ た.男女共修が当たり前のものと認識さ れていると考えられる.「軽視されてい 図1 大学生の「家庭科」に対するイメージ(学習内容) 図2 大学生の「家庭科」に対するイメージ(学習内容以外)

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る」といった記述はみられず,「嫌い・苦手・難しい」といった記述もごく少数であった.  「教員」としては,「先生は女」といった記述のほか,大学で家庭科教育内容を担当している 教員名もみられた.「その他」としては,「授業が少ない」「クラスの人と仲良くなる」「楽」「勉 強という気がしない」といった記述があった. 2.家庭科の男女共修への意識  次に家庭科の男女共修に対するイ メージを分析した(図3).「家庭科 の男女共修は…」に続く言葉として, 「良い・大切・必要」といった記述 が女子で約8割,男子で約7割みら れ,「当然」「当たり前」といった記 述が,女子で約1割,男子で約2割 みられた.「どちらかと言えば良い」 も含めると,肯定的な記述が女子で 約90%,男子で約95%となり,否定 的な意見はみられなかった.男女共 修開始から15年以上経った現在,大 学生たちは,家庭科の男女共修は当 然と考えているようである.  家庭科の男女共修について肯定的な意見が大半を占めたが,どのような理由で肯定的に捉え 表1 家庭科の男女共修を肯定的に捉える理由 図3 家庭科の男女共修に対する考え

表 1 家庭科の男女共修を肯定的に捉える理由

男女とも同じように学ぶ必要がある

性別

当然・当たり前・ふつう 男子(9 名) 必要。ジェンダーフリーとかあるし。 男子 あたりまえのこと。男女に関係なく、自立した生活を行うためには学ばな ければいけない。 男子 大賛成。男女の差を気にしない風潮もあることだし。 男子 男女問わずやる必要があると思う 女子 必要だと思うが、男女どちらともが興味を持つような授業とする必要があ る 女子 絶対賛成!!男だから~、女だから~の時代は終わった 女子 性別に関係なく、学ぶことが大切 女子

男女で考えや能力に違いがあるからこそ、共に学ぶべき

性別

(男女)お互いのウィークポイントを補えるから良いと思う 男子 女性力をアピールするチャンスだと思う 男子 男女の得意、不得意が理解できる機会になる 男子 お互いにできることを分担して補い合える 女子 それぞれの価値観の違いが見られて楽しい 女子 お互いが助け合ったり(力仕事?は男の子、わからなかったら女の子に聞 く) 女子

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ているのか,具体的な記述内容をみていく.記述の一部をまとめたものが表1である.「ごく自 然なこと」「あたりまえのこと.男女に関係なく,自立した生活を行うためには学ばなければ いけない」といったように,「男女とも同じように学ぶ必要がある」と考えているからこそ, 男女共修を肯定的に受け止めている記述がみられる一方,「お互いにできることを分担して補 い合える」「それぞれの価値観の違いが見られて楽しい」といったように,「男女で考えや能力 に違いがあるからこそ,共に学ぶべき」という記述もみられた.男女共修に対して肯定的であ るといっても,異なる意味があることに注意すべきであろう. 3.男女にとっての家庭科の意味  男女共修に対しては大部分の学生が肯定的に捉えていたが,その理由として,生活者として 男女共通に必要であるという考えと,男女が違うからこそ必要といった考えがみられた.では, 家庭科が男女それぞれにとって,どのような意味を持つと考えられているのであろうか. (1)女子にとっての家庭科  まず,「女子にとっては…」に続けて 書かれた文章を分類したところ(図4), 「必要・役に立つ・大切」という記述 が,女子で28.2%,男子で34.9%であった. 「将来必要,花嫁修業・母親準備・主 婦準備」という記述が,女子で50.0%, 男子で31.7%であり,その内訳は,「将来 必要」が女子で23.1%,男子で15.9%, 「花嫁修業・母親になる準備」が女子で 21.8%,男子が9.5%,「自立のため」が女 子で5.1%,男子が6.3%と,女子にとって の家庭科は,将来自立するというよりは 結婚後のために必要であると,特に女子 自身に認識されているようであった.  また,「好き・楽しい・興味ある・得 意」という記述は男女とも約15%と同程度であるのに対し,家庭科が「できて当たり前」とい う記述は,女子では約1%,男子では約8%と,女子自身ではなく男子から認識されていた. (2)男子にとっての家庭科  次に,「男子にとっては…」に続けて書かれた文章を分類した(図5).「必要・役に立つ・大切」 は女子26.9%,男子23.8%,「将来必要」は女子26.9%,男子11.1%であった.  「嫌い・退屈・無関心・苦手」は女子19.2%,男子11.1%と,男子自身より,女子の方が思っ ていた.これは「女子にとっては…」ではみられなかった記述内容でもある.  一方,「楽しい・得意」という記述が女子で1.3%,男子で11.1%と,女子が思うより,男子自 身は家庭科を楽しく得意だと認識していた.女子から「興味を持つチャンス」というイメージ をもたれており,男子は,日常生活において,家庭科的内容に興味を持ったり学んだりする機 会があまりないと考えられているようである.  「自分磨き,付加価値」に分類したもののうち,付加価値にあてはまるものは,「できなくて もいいが,できたら好かれる」「プラスα」「あったらあるだけいいもの」といった記述である. 図4 「女子にとっての家庭科」のイメージ

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女子は「必要」で「できて当然」なのに 対し,男子の場合は,「できない・得意 でない」というイメージからスタートす るため,「できる」ということが特別な 価値を持つということであろう.  前項の結果と照らし合わせると,男 女どちらにとっても,家庭科は「必要・ 将来必要」と考えられていた.だが,女 子にとっては,妻として,母としての役 割への期待がみられ,「将来」「結婚後」 必要であると,女子自身が家事や育児を 担っていく自分の姿をイメージしてお り,性別役割分業意識を受容していた. また,女子は男子から「できて当然」と 思われており,男子は女子から「苦手」 であると思われていた.男子自身は「楽しく得意」と感じていたが,女子にはそう思われてい なかった.それぞれの性別における家庭科に対する認識にずれがあるといえる. (3)男女で家庭科の意味が異なるとみなされているのか  さらに,男女で家庭科の意味が同じだ と考えているのか,異なると考えている のかを明らかにするため,「女の子にとっ て家庭科は…」と「男の子にとって家庭 科は…」の記述を同じように書いていた か,区別して書いていたかを分析した.「男 女とも同じように必要」「女子向き」「男 子に特に必要」「男女とも必要だが意味が 違う」の4つに分類した結果が,図6で ある.その具体的記述を整理したものが, 表2〜5である.  男女とも約3割が男女で意味が同じと 考えていた.「大切」「必要」といった記 述が大部分であり,自立した生活を営む ためと,家庭を持った場合のための両方に,家庭科は必要と考えていた(表2).性別役割分 業意識にとらわれず,生活者として自立していく上で,家庭科は男女とも同じように必要と考 えているようである.  女子の約3割,男子の半数が,「女子向き」であり「女子にとっての方が重要」と考えていた. 具体的には,女子は,好きで,楽しく,得意であるのに対し,男子は,つまらなく,苦手であ るというイメージを持っていた(表3).また,女子にとっては,女性としての魅力を上げる ことができ,将来,家庭を持った時に必要というイメージがあった.「女子にやることをとら れて,何もやらずボーっとしている」や「調理実習では役立たず」といった男子の記述から, 家庭科の時間は女子がリーダーシップをとり,活躍できる貴重な場であると同時に,「女子の 図5 「男子にとっての家庭科」のイメージ 図6 「女子にとっての家庭科」と    「男子にとっての家庭科」に違いはあるか

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ための教科」というイメージを強化してしまっている恐れもある.一方で,男子にとって「案 外うまくできるもの」と男子自身が記述しているように,男子であるからといって,家庭科が 苦手でつまらないわけではないといえるであろう.女子は好きで得意,男子は嫌いで苦手といっ た固定観念に縛られないことが,まず必要でなかろうか.  「男子に特に必要」という記述を行った学生もわずかながらいた.「今の時代」「これから」

表 2 家庭科は「男女とも同じように必要」という認識

「女の子にとって家庭科は…」「男の子にとって家庭科は…」

性別

大切

男子(2 名)

必要

男子(5 名)

自立して生活していく上で必要

男子

将来の役に立つ

男子

現代社会において、女の子だから、男の子だからという差別的な見方はせ

ず、誰にとっても一様に、生きる力を養えるものであるべきだと思う。

男子

必須

女子

必要

女子(3 名)

将来、家庭を持ち、子どもを育てる上で必要なこと。自立して暮らしてい

く上で必要なこと。

女子

自活していくための基礎

女子

家庭に入った時や一人暮らしをしたときに困らないようにする

女子

女の子にとっても男の子にとっても、家庭科は日常生活に欠かせないもの

女子

表 3 家庭科は「女子向き」の教科という認識

「女の子にとって家庭科は…」

「男の子にとって家庭科は…」

性別

おもしろい(であろう)もの

つまらないもの

男子

好き

女子のための授業じゃない?

男子

活躍の場

調理実習では役立たず

男子

とても大切

とても難しい

男子

女子力向上に役立ちます

つまらない教科です

男子

花嫁修業、(将来のため)必要

不必要

男子

男の子よりも得意

ほとんど自由時間

男子

男子より出来が悪いと恥をかくかもし

れない。

女子にやる事をとられて、何もやらず

ボーっとしている。(特に調理系)

男子

男の子よりは上手くできるはずだと思

われてしまいがちなもの

案外、上手くできるもの

男子

楽しいと思っている

苦手だと思っている

女子

楽しい

難しい

女子

楽しい教科(調理実習や裁縫などが) つまらない教科…かも?

女子

ある程度できて当たり前なイメージ

めんどうくさい教科

女子

将来の生活に役に立つ

将来、家事を手伝ううえで大事なこと 女子

将来家庭をもつ時のための勉強

教科としてだけの勉強

女子

出来ると男を落とす武器になる!笑

プラスα

女子

家庭的な女性になるために最も必要と

考えられている

女の子の修行の場と考えられている

女子

女らしさをみがく所

調理実習(食べ物)が全てだった気が

する

女子

表2 家庭科は「男女とも同じように必要」という認識 表3 家庭科は「女子向き」の教科という認識

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というように,時代の要請に合わせて男子にも必要と考えていた(表4).また,家庭で教え られることが少ないからこそ,女子以上に必要という記述もあった.先に取り上げた先行研究 においても,特に男子において家庭科の学習効果が認められており,これは,男子は家庭科を 積極的に学ぶ機会がなかったり,家庭でも必要がないとされたりと,学ぶことから疎外されて きたからこそともいえるであろう.  男女とも必要だが意味が違うと考えていた学生は,女子で約35%,男子で約2割であった. 記述内容としては,妻として,母として,家族員のために家事をこなす上で女子は必要であり, 男子は,結婚するまでや,結婚しなかったり一人暮らしをしたりする上で必要,もしくは結婚 後,妻を手伝うために必要と考えられていた(表5).また,「親の苦労や周りの人たちの支え を認識する」といったように,母や恋人,将来の妻から,家事・育児をやってもらうことを当 然であると,男子は考えているようである.  前節の男女共修家庭科に対する意識を分析した結果と照らし合わせると,9割以上が男女共 修について肯定的であったが,同じ意味で男女共に学ぶべきだと考えている学生は3割にとど 表4 家庭科は「男子に特に必要」という認識 表5 家庭科は「男女とも必要だが意味が違う」という認識

表 4 家庭科は「男子に特に必要」という認識

性別

将来必要

今の時代必要

男子

絶対必要

女の子以上に必要かも。だって家で母

親も教えなさそう。

女子

必要不可欠

こらからもっと必要になると思います 女子

表 5 家庭科は「男女とも必要だが意味が違う」という認識

性別

自分のため

愛のため(女性を手伝うため)

男子

将来的に家庭を持った際の生きていく

術として大切である

固定観念にとらわれずに、学ぶべきも

のである

男子

将来あるいは現在家庭生活を営む上で

不可欠である

親の苦労や周りの人たちの支えを認識

するのに有効な教科である。

男子

花嫁修業

出来る男への第一歩

男子

花嫁修業

独り暮らしで必要になる

男子

家族との関わりを考える教科

一人でも生きていけるようにする科目

(笑)

女子

母になるために必要なことを勉強する

一人でも生活できる必要最低限を勉強

するもの

女子

将来、家庭を持って、家事をやるため

に学ぶこと

自立して1人でもある程度の生活がで

きるよう学ぶ

女子

主婦になった時に役立つ

軽視されがちだが一人暮らしをすると

きはとても役立つもの

女子

将来の生活に役に立つ

将来、家事を手伝ううえで大事なこと 女子

花よめ修行

普段やらないことを学ぶよい機会

女子

将来的に役に立つ

衣・食・住に興味を持つチャンス

女子

将来家庭を持ったときに、家事全般が

できるために必要

家の中に目を向けるために大切な教科 女子

「女の子にとって家庭科は…」

「男の子にとって家庭科は…」

「女の子にとって家庭科は…」

「男の子にとって家庭科は…」

表 4 家庭科は「男子に特に必要」という認識

性別

将来必要

今の時代必要

男子

絶対必要

女の子以上に必要かも。だって家で母

親も教えなさそう。

女子

必要不可欠

こらからもっと必要になると思います 女子

表 5 家庭科は「男女とも必要だが意味が違う」という認識

性別

自分のため

愛のため(女性を手伝うため)

男子

将来的に家庭を持った際の生きていく

術として大切である

固定観念にとらわれずに、学ぶべきも

のである

男子

将来あるいは現在家庭生活を営む上で

不可欠である

親の苦労や周りの人たちの支えを認識

するのに有効な教科である。

男子

花嫁修業

出来る男への第一歩

男子

花嫁修業

独り暮らしで必要になる

男子

家族との関わりを考える教科

一人でも生きていけるようにする科目

(笑)

女子

母になるために必要なことを勉強する

一人でも生活できる必要最低限を勉強

するもの

女子

将来、家庭を持って、家事をやるため

に学ぶこと

自立して1人でもある程度の生活がで

きるよう学ぶ

女子

主婦になった時に役立つ

軽視されがちだが一人暮らしをすると

きはとても役立つもの

女子

将来の生活に役に立つ

将来、家事を手伝ううえで大事なこと 女子

花よめ修行

普段やらないことを学ぶよい機会

女子

将来的に役に立つ

衣・食・住に興味を持つチャンス

女子

将来家庭を持ったときに、家事全般が

できるために必要

家の中に目を向けるために大切な教科 女子

「女の子にとって家庭科は…」

「男の子にとって家庭科は…」

「女の子にとって家庭科は…」

「男の子にとって家庭科は…」

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まる.男女共修家庭科に肯定的であるからといって,必ずしも家庭科を学ぶ意義を十分に理解 し,ジェンダー・バイアスに縛られていないわけではないことが分かる. まとめ  家庭科は,主に「調理・料理」「裁縫・被服」について学ぶ「生活に役立つ」教科として, 大学生に認識されていた.「女子の教科」といった記述は,先行研究と同様に少なく,家庭科 の男女共修についても9割以上が肯定的に捉えていた.家庭科の必要性,家庭科の男女共修の 意義は認識されているといえる.  だが,男女両方にとって家庭科は必要であると考えられていたが,その理由として,生活す る上で男女共に学ぶことが必要という認識と,女子にとっては「花嫁修業・母親になる準備」 として必要であるが男子にとっては一人暮らしや家事を手伝うために必要といったように,女 性の役割を身につけたり理解したりするための共修という認識がみられた.  女子にとっての家庭科は,「将来必要,花嫁修業・母親準備・主婦準備」であるという回答 割合の多さは,先行研究と比較しても顕著である.中西16)と比較すると,「必要・役に立つ・ 大切」と「将来必要,花嫁修業・母親準備・主婦準備」の回答割合が逆転している.  つまり,大学生の家庭科に対するイメージとして,根強いジェンダー意識があるといえる. 家庭科は,今の生活に役立つというよりは,将来への役立ち感の方が強く,その際,イメージ されているのは,「妻」として「母」としての女性の姿であり,将来への役立ち観とジェンダー 意識が絡み合っているといえる.  男女共修になったというだけで,ジェンダー・バイアスのかかった意識が低くなるわけでは ない.先行研究においても,男女共修によって共学校女子の性別役割分業意識が高くなってい た9).本研究においても,女性らしさをアピールする場,女性の役割を理解する場,女性が積 極的に活躍する場といったイメージがみられたように,男女共修が性別役割分業意識を強める 結果になる場合もあるのである.教員が,「女子は…,男子は…」とジェンダー・バイアスの かかった言動をしてしまうこともあるであろうし,家庭内における性別役割分業はなかなかな くならないため,家庭からの影響も大きいであろう.  調理や裁縫が苦手である女子による,「できて当然」であると思われて苦しかった,うまく できなくて辛かったという記述もみられた.一方で,男子は,女子がイメージするよりも家庭 科を「楽しい・得意だ」と感じていた.家庭科の教育内容に対する得手・不得手,好き・嫌い は,性差ではなく,あくまでも個人差である.「男女で協力して生活を営む」といった場合, 性差を活かして協力し合うということではなく,個々人の能力や特性,家庭の状況に応じて協 力し合うということなのである.それを理解できるような家庭科/家庭科教育法の授業を行っ ていく必要があるであろう.  男女共修家庭科の必要性は大学生たちに認識されていることが,本研究において明らかにで きた.だが,改めて男女共修の意義を確認するとともに,小・中・高等学校の学校教育現場で, 共修の意義をより意識した授業を行うことや,大学での教員養成においても,男女共修の意義 を伝えて続けていく必要性があるといえる.

(18)

今後の課題  今後の課題として,まず,各項目間の関連の検討が挙げられる.本研究では,文章完成法を 用い学生自身の言葉を分析した.その結果,「必要」といった場合にも,自立のために必要と いう認識と,将来,妻や母として在るために必要といった認識に分かれていることや,男女共 修に賛成であるからといって,共修の意義を十二分に理解しているとは言い難いことなどが明 らかになった.だが,記述内容を分類する際,複数の項目にまたがるものが多数あり,項目間 の関連の分析を行うことができなかった.今回の分析結果を基に,項目間の関連がみられるよ うな変数を設定し,分析モデルの構築・検証を行いたい.  次に,家庭科の学習経験による比較・分析が挙げられる.家庭科は,「生活」を取り上げる ため学習内容も幅広く,個々の教員によって用いる教材や授業の進め方が大きく異なると考え られる.また,高校家庭科は,2単位の家庭基礎と4単位の家庭総合を選択している学校がお よそ半々である.授業時間数が倍違うということは,家庭科での学びに対する深まりも違うと 考えられる.男性教員に習った経験が,ジェンダー意識に大きく影響することも先行研究で明 らかにされており,習った教員の属性と家庭科のイメージとの関連も分析すべきであろう.  今回は,教育学部の家庭選修でない学生のみを対象としたが,家庭選修/家政学部の学生と の比較や,学生の専攻ごとの比較も必要であろう.小学校ではクラス担任制をとっている学校 が多いため,一人の教員が自分の専攻にかかわらず全ての教科を教える場合が多い.家庭選修 /家政学部の学生には,家庭科の意義を十分に理解していて欲しいが,他専攻の学生も家庭科 を教える可能性がある以上,同様の理解が必要であろう.専攻ごとにどのような特徴があるの か明らかにすることで,より効果的な家庭科教育法の授業を行うことができると考えられる.  家庭科教育法の履修前後での比較も行いたい.本研究において,「『家庭科』というと…」と いう文章に続けて大学教員の名前を記述した者がわずかながらいた.直前に授業を履修してい たためだと思われるが,学生は大学での学びにおいても,その教科のイメージを形成している とも考えられる.授業の前後で比較することによって,教員養成において,家庭科についてど のような学びが必要であるか示唆を得たい. 文献 1)文部科学省:小学校学習指導要領解説 家庭編,東洋館出版社(2008) 2)文部科学省:中学校学習指導要領解説 技術・家庭編,教育図書株式会社(2008) 3)文部科学省:高等学校学習指導要領解説 家庭編,開隆堂出版株式会社(2010) 4)貴田康乃・増田久子:高校家庭科男女共学に関する調査研究(第1報)――「家庭一般」履修の男子高校 生の学習効果,日本家庭科教育学会誌,30・2,1-6(1987) 5)荒井紀子・鶴田敦子:男女共学家庭科の履修と高校生の意識(第1報)――ジェンダー観をめぐって,日 本家庭科教育学会誌,39・2,39-46(1996) 6)中西雪夫:男女共通必修家庭科の実施が高校生の家族・保育に関する意識に与えた影響(第1報)――家 族・結婚に関する意識の変化,日本家庭科教育学会誌,44・4,336-346(2002) 7)中西雪夫:男女共通必修家庭科の実施が高校生の家族・保育に関する意識に与えた影響(第2報)――性 別役割分業観・家事参加の変化,日本家庭科教育学会誌,44・4,347-353(2002) 8)中西雪夫:男女共通必修家庭科の実施が高校生の家族・保育に関する意識に与えた影響(第3報)――高

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齢者観・親になることへの準備状態の変化,日本家庭科教育学会誌,44・4,354-360(2002) 9)大竹美登利・今藤綾子:大学生の家庭観・性役割観に与える高校家庭科男女共修の影響,東京学芸大学紀 要.第6部門,技術・家政・環境教育,53,51-57(2001) 10)増田久子・貴田康乃:高校家庭科男女共学に関する調査研究(第2報)――男子社会人によってみた家庭科 履修の効果,日本家庭科教育学会誌,31・3,25-32(1988) 11)貴田康乃・増田久子:高校家庭科男女共学に関する調査研究(第3報)――男子社会人が望むこれからの 家庭科,日本家庭科教育学会誌,31・3,33-40(1988) 12)片山登美子:中学校・高等学校における家庭科男女共修の問題――家庭科担当教師の意見を中心に,日本 家庭科教育学会誌,24・1,1-8,(1981) 13)鶴田敦子・荒井紀子・原澤智子:男女共学家庭科の実施と教師の意識(第2報)――生活主権者意識と家庭 科観をめぐって,日本家庭科教育学会誌,41・2,41-48(1998) 14)永田晴子:女子大学生の家庭科イメージの変化――教職課程履修者の場合,お茶の水女子大学人文科学紀 要,56,263-284(2003) 15)吉野真弓・深谷和子:男性家庭科教員の意義と役割――生徒のジェンダー形成とのかかわりで,日本家庭 科教育学会誌,44・3,242-252(2001) 16)中西雪夫:家庭科男女共学はどんな成果を上げているか,青少年期の家族と教育――家庭科教育からの展 望,107-114,家政教育社(2006) 17)藤田智子:青年期の身体像と食生活への日常知と学校知の影響――高校生へのインタビュー調査より,格 差センシティブな人間発達科学の創成公募研究成果論文集,8,59-71(2009) 18)本田由紀:学ぶことの意味――「学習レリバンス」構造のジェンダー差異,学力の社会学――調査が示す 学力の変化と学習の課題,77-98,岩波書店(2004) 要旨  本研究の目的は,男女共修家庭科を学んできた学生たちの家庭科及び男女共修家庭科に対す るイメージを分析し,先行研究との比較を通し,男女共修家庭科の今後の在り方について考察 することである.調査は,関東地方の私立大学Aと国立大学Bの教育学部に通い初等家庭科教 育法を履修している大学生141名(女子78名,男子63名)に対し,文章完成法で行った.時期 は2010年4月及び10月(初回授業時)である.先行研究に基づき項目を設定し,記述を分析した.  その結果,家庭科は「調理・料理」について学ぶ「生活に役立つ」教科と認識されていた.だが, 女子は「花嫁修業・母親になる準備」として必要であるのに対し,男子は一人暮らしや家事の 手伝いのために必要と認識されていた.家庭科の男女共修に対し9割以上が肯定的であったが, 理由として男女共に同じ価値があるという記述と,男女で考えや能力に違いがあるからこそ共 に学ぶべきという記述があり,根強いジェンダー意識と,それに伴う「将来」への役立ち観が みられた.小・中・高等学校の学校教育現場で,共修の意義をより意識した授業を行うことや, 大学での教員養成においても男女共修の意義を伝えて続けていく必要性があるといえる.

(20)

要旨  小学校、中学校の理科教育の柱の中に、「エネルギー」と「粒子」という見方・考え方が入っ ている。理科教育においては、見えない「粒子」の存在は、それまでの知識を基にした体験や 体感によってしか理解できない。この研究では、ある現象を起こす基本因子としての「粒子」 を一人一人が演じることで全体のふるまいを再現する擬人化による体感学習の方法と、その可 能性を考察する。その擬人化による学習の一つの例として、糸電話を導入とした、波を伝える ものの擬人化による波の伝わり方の理解の方法を紹介する。 はじめに  小学校、中学校の理科学習指導要領(1)(2)において、理科教育は「エネルギー」「粒子」「生命」 「地球」の4つの柱で構成されている。現代科学の基本的な考え方として「エネルギー」と「粒 子」の概念は、素粒子物理において全ての物質は素粒子でできており物質はエネルギーと等価 であるという考え方からすれば当然であると言える。この中で、特に「粒子」の存在という考 え方、概念は現代科学の中心となっており、多くの現象は、分子、原子、電子の集団としての 振る舞いにより起こると解釈できる。こうした考え方を小学校、中学校の段階で身につけてお くことは、科学を正しく理解するための強力な武器となる。  「粒子」を柱の一つとする小学校の理科教育において、見えない「粒子」の存在を理解させ るにはやはり体験、体感が必要であると考えられる。その手法の一つとして、一人一人が「粒子」 を演じて全体の振る舞いを再現する擬人化の方法の可能性を考える。小学校、中学校の理科の 教科書にある単元で、この手法の活用によりその現象における粒子の振る舞いの理解を助ける ことが可能であると考えられる内容は多々ある。また、手法に遊びの要素を取り入れ、楽しく 演じる中で、実際の現象を知らずに体感できることもこの手法の利点であると考えている。ま ず、この論文では、擬人化した人間の粒子が個々に動くことで全体の動きとなり反応となって いくことを実際にみんなで演じて体験、体感できる事例の一つを紹介し、その有用性を考察する。  この論文では「音を伝えるもの」として振動を伝えていく因子を一人一人の人間が演じるこ とで、波、音の伝わり方を体感して理解できることを紹介する。小学校の理科には、「音」に

理科教育における擬人化による体感学習の可能性

吉川 直志

Possibility of the Physical Feeling Study

by the Personification in Science Education

(21)

ついて学ぶ単元は無いが、最も身近な現象を例にすることで、遊びや日頃の体験を通じて全て の現象に通じる波の科学を体感できる良い教材となる。 声を伝えているものの理解  私たちの声や周りの音を伝えているのは空気である。音が伝搬するのは、その音を伝える何 かがその間に存在しているということである。そのことをすぐに実感させることは難しい。ま ず、第一段階として、子どもの遊びの中にある、糸電話で話をすることの体験から始める。糸 電話の制作は簡単であり、短時間で誰でも作れるため、導入として良い教材である。糸電話で は、「糸」が声を伝えていることが実感でき、「物」が声を伝えているという実感からいろいろ な応用が可能となる。ここで、声や音を伝えたい先までの間に何か音を伝えるものが存在する ことで伝わるということを感じさせる導入実験として糸電話を使う。 1)糸電話の制作  子どものころに誰もが糸電話を作って遊んだ経験がある。また、手順も少なく、すぐに制作 に取り組める。  準備: 紙コップ 2個、 糸、 ビーズ 2個 または セロハンテープ  手順: 1.紙コップの底の中心に穴をあけ、糸を通す。      2.コップの内側へ通した糸の先にビーズを付ける。        または、糸をテープで紙コップの底に固定する。      3.同様に、適当な長さの糸の両側に紙コップを取りつければ完成。 自分たちで制作した糸電話で話をし、 実際に声が伝わっている様子を体験す る。この時、糸をピンと張らなければ 声が伝わらないことを確認する。 2)応用糸電話の作成  「糸」の部分を針金に代えた「針金電話」を作成する。針金であっても声を伝えること、また、 針金では糸電話と違って、張らなくて も声は伝わることを体験してもらう。 湾曲していても、ぐにゃぐにゃになっ ていても、声が聞こえることを不思議 に感じてもらえればよい。また、針金 の太さを変えると伝わる音の大きさも変わる。  糸以外の物でも、声は伝わることを確認してもらうために、図3のように、糸と糸の間に何 かを結びつけ、声が聞こえるか確認す る。例えば、焼き網を結びつけて行っ たが、しっかりと聞こえ、不思議な音 質となった。このように色んな物を試 して、音が伝わることを確認すると楽 しく、かつ、興味を引く実験が出来る。 ここでは、物があれば、音を伝えるこ 図1:糸電話 図3:物が音を伝えることを知る実験 図2:針金電話

(22)

とができることの確認ができればよい。 3)ゴム電話と風船糸電話の作成  これまでの実験で、物が音を伝えることが分かったので、空気が音を伝えていることを確認 するための実験に移る。まず、糸電話の糸をゴムに変えたゴム電話を作る。ゴムに力をかけな い状態では、声は聞こえるが、ゴムを 引っ張った状態では、声が届かなくな る(図4)。ゴム電話自体、声は小さ く聞こえ、引き延ばしたゴム電話では、 さらに音は伝わり難いことを確認した 後、ゴム風船電話の場合の実験を行う。 長細いゴム風船を膨らませ、その両端 を紙コップの底に差し込めば、風船電 話として声を伝えることが出来る。こ の風船電話は、とてもよく声を伝える。 何が声を伝えているのか。風船のゴム は伸びきっており、ゴム電話の経験か ら、ゴムは声を伝えていないと考える。また、風船の途中を捩じって空気が入って膨らんだ部 分を分けてやると聞こえなくなることから、声を伝えているのは空気であるという結論となる。 4)糸電話における声の伝わり方の誤解  糸電話遊びを通じて、多くの人は、音はギターの弦のように振動して伝わると誤解している (図5)。糸電話のコップの底の面が 声を感じ、糸と平行な方向に振動する ことを考えると、図5のタイプの波で 伝わっている訳ではないことが理解で きる。また、針金や間に物を入れた糸 電話でも音が伝わること、風船電話の 中の空気が音を伝えているということからも、ギターの弦の振動のような伝わり方でないこと が理解できる。  こうした糸電話実験(遊び)を通して、声や音は、その間にある物によって伝えられ、私た ちの声は空気によって伝えられることが理解できる。では、どの様に、伝わっていっているか を、次に考える。 縦波と横波の理解  糸電話を伝わる波の正体を考える前に、波には、縦波と横波の二つの種類があることに触れ る。横波とは、図5のような波の進行方向に垂直な変位が伝わる波であり、縦波とは、密度波 ともいわれる通り、疎と密の位置が交互に現れて伝わる波である。縦波を理解することは難し いので、ばねなどを使って縦波と横波を例示するとイメージしやすくなる。縦波の伝わり方を 理解させるには、その波を伝える物の構成因子を使って説明することになる。音(波)を伝え 図5:糸電話の誤ったイメージ 図4:ゴム電話と風船電話

(23)

る物質は全て原子や分子の集ま りであり、空気であっても、窒 素や酸素の分子の集まりである と考えると、そうした構成因子 が、波を伝えているという考え に至る。この見方で、縦波、横 波を図示すると、図6のように なる。波を伝える構成因子が横 一列に並び、右方向へ波が進行 しているとすると、横波は、上 下(左右)方向の変位であり、 縦波は、隣との間隔が狭く(広く)なるところが右へ進んでいく。  理科において、縦波、横波が登場するのは、地震波として、P波、S波があり、P波が初期 微動を伝え、S波が主要動となるというところである。このP波が縦波であり、大きなゆれを 伝えるS波が横波である。地震速報ができるのは、縦波のP波がかなり先に到達して、その後 遅れて横波の大きなゆれS波がくるので、その時間差が利用できるからである。同じ震源で発 生したゆれ(波)でも、縦波が先に到達し、遅れて横波がくるという伝わり方が意味すること は、縦波の方が進む速度が大幅に速いということである。  また、音や声を伝える波は、図5のタイプではないということであった。つまり、音は縦波 として伝わっていることになる。進行方向に対して同じ平行な方向の変位が、紙コップの底を 振動させて音としている。その音も鼓膜を振動させて音と認識していることから、縦波として 伝わっていることが理解できる。  しかしながら、こうした説明を、実感して理解することは非常に難しいと思われるため、こ の研究の主題である擬人化の手法を用いて、その理解をどのようにサポートできるかを考察す ることにする。 擬人化の手法による体感による波の理解  波を伝える物(媒質)は、固体、気体、液体とあるが、それぞれ、原子や分子といった「粒 子」で構成され、それぞれが波を伝える因子と して働いている。擬人化の手法では、その因子 としての「粒子」を人間が一人一人演じて、そ の波の伝わり方を体感することを行う。図のよ うに、擬人化実験に参加する人は一列に並んで 位置し、自分に伝わった情報を隣(前)に伝達 していく。  まず、最初は、構成因子が手をつないで整列 している固体をイメージして、みんなで横波を 伝える。図7のように一列に並び、前の人の肩 に両手を置いてつながる。最後尾の人が、前の 図6:横波と縦波のイメージ 図7:横波の擬人化 並びの上から 並びの横から

(24)

人の肩を横方向へ大きく揺らすと、その揺れは、 肩においた腕を通じて、前方へと進んでいく。 こうして、横波の進行をみんなで再現する。  縦波は、最後尾から、前の人の肩を軽く押し て、押された人は前に、前にその押された力を 伝えていく。図8のように、人間で縦波の進行 を再現することができる。  横波と縦波の伝わり方をみんなで再現する と、どちらの伝わり方が速いのかを体感する事 が出来る。やってみると、縦波のほうが、かな り速く前まで到達することが分かる。単純な実 感として、縦波が速く伝わることを体感するこ とができる。横への変位には、前の人を横へずらすための力が必要であることと、その変位が 大きいことから速度が遅くなるのだが、原理はどうあれ、やってみると、確かに縦波の方が速 いことがすぐに分かる。2列作り、縦波、横波で競争すればその伝わる速さの違いをより強く 実感させることも可能である。  この波の擬人化の利点は、波の伝わり方を体感できることに加えて、その伝わり方の特性を 自分たちで再現することで実感出来る所にある。地震波でP波が先に到着することも、こうし て理解することができる。 固体、液体、気体を伝わる波の理解  前章では、固体中を伝わる波の擬人化を行った。空気や水中を伝わる声は、気体中、液体中 の波である。そこで、固体、液体、気体の構成を思い出すと、図9のように、固体のイメージ は、となりの原子・分子と手をつな ぎ、つながって規則的に並んでいる。 液体のイメージは、詰っているが、 ばらばらで、勝手に動いている。気 体は、さらにばらばらで、隣の分子 との距離があるが、飛び回りながら ぶつかりあっている。こうした、固 体、液体、気体の構造のイメージを基に、波の伝わり方を再現すると、液体、気体では、隣と の結びつきが弱いため、横波は伝わらないことが理 解できる。図7で、前の人の肩に手を置いていたが、 液体、気体では、図10のように、つながっていない ため、最後尾でいくら横に揺れても前には伝わらな いことが分かる。横波が、空気中、水中では伝わら ないということがこれで理解できる。また、固体中 でだけ横波が伝わることも理解でき、地中を伝わる 地震波では、S波として横波が伝わることも分かる。 図8:縦波の擬人化 図10:液体、気体中の横波の擬人化 図9:固体、液体、気体のイメージ

(25)

 では、縦波はどうなるかも、同様に再現することができ る。図8では前とつながっていたが、今回は離れている。 しかし、ぶつかることは可能なので、前に体を当てて、す こし前に押してやる。そうすると同じように縦波は伝搬し ていくことが体感できる。縦波は、液体、気体、そして固 体と全てを伝搬できることが分かる。  ここまで理解出来ていれば、固体、液体、気体を伝わる 音の速さが異なることもすぐに理解出来る。固体はお互い が結びついているので、すぐに隣に伝わる。液体はばらば らなので、隣にぶつかるまで、すこし移動しないといけな い。気体中では、分子同士の距離が液体より開いているので、音の信号が隣の分子に伝わるま でに、もっと時間がかかる。この簡単な、思考実験でも、固体中の音速が一番早く、次に液体 中、そして、気体中を伝わる音速が一番遅いということになる。このことも、一列に並ぶ間隔 を広げたり、狭めたりすることで、簡単に体感することが可能となる。  こうして、擬人化の手法によって、体感により、波を伝える物性についても考えることが出 来るようになる。 糸電話にもどって  ここまで理解できたとして、糸電話遊びを振り返ると、改めて疑問に思うことが出てくる。 それらの疑問点についても、擬人化の手法を使っての理解を試みることが可能となる。 疑問点1)糸電話は、なぜピンと張らないと声が伝わらないのか?  音、声は縦波として糸を伝わっている。それを伝える構成因子が隣に情報を伝えて行かなけ れば、縦波であっても伝わない。糸の場合は、繊維質の物を紡いで作られる。からみあってい るがしっかりとはつながっていない状態であると考えられる。そのような状態では、縦波は繊 維から繊維へとは伝わりにくいため、張ってい ない糸では声が伝わらない。ピンと張ると、繊 維どうしが引っ張りあってしっかりとつながる 状態となるため、縦波の声が伝わるようになる。  擬人化の手法でも、図12のように、張ってい ない状態を、手はつなぐが腕の部分に動く余裕 があり、体を動かしても、となりに伝わる前に、 腕の部分で吸収してしまうことを再現し理解で きる。張った状態の糸では、しっかりとつながっ ているので、となりに動きが伝わりやすいこと が理解できる。 疑問点2)針金は、ぐにゃぐにゃでも、どうして声がつたわるのか?  針金は細く伸びているが、金属であり、固体であることを思い出すと、その構成因子はしっ かりと結びついているため、どんな状態であっても、つながっていれば、音は伝わることにな る。また、針金の太さを太くすれば、伝わる音も大きくなる。こうした現象も図8のような伝 図12:糸電話の擬人化 図11:液体、気体中の縦波の擬人化

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