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手工・技術教育としての木材加工(1)

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手工・技術教育としての木材加工(1)

のこぎりびきの指導 大 迫 靖 雄 *

Wbo伽o戒加gasManualandTechnicalEducation(1)

OnSawingLeaming

YasuoOHsAKo

(Receivedl,Octoberl984)

Inthispaper,Iindicatethefollowing:(1)manualandtechnicaleducationare necessaryincompulsoryeducationandmanualeducationshouldbecloselyrelatedto technicaleducation:(2)inaccordancewithreportsalreadygiven,Isupporttheabove mentionedpointtheoretically:(3)thepresenthandicrafteducationinelementary schoolisarteducation,sothatmanualandtechnicaleducationarenotgivenin elementaryschool;(4)Ielucidatethat”00”0液i"gissuitableformanualandtechni・

caleducationbytakingupsawingleamingofwood.

緒 言

筆者は技術科教育における木材加工の位置づけに ついて,理論的な考察を行うことを目的として,2,

3の報告1.2)を行ってきた.

ところで,最近の児童,生徒の日常生活に関する 種々の問題が提案され,それが成人した時,大きな

問題となる可能性があることが種々の面から述べら

れている3).技術科教育に関係ある面からみると,例 えば,手先の不器用さ,特にはしが握れない,鉛筆 が削れないことなどが指摘されている3).このよう なことは子供達の生活環境の変化によると考えられ る.そして,このような事実が子供達が成人したと きの生活に支障をきたすことが充分考えられる.元 来,日本人は手先が器用であることが特徴の1つで あった.ただ,手先の器用さは多少は民族的なもの が考えられるが,その多くはあくまでも子供時代の 無意識な訓練が大きな影響を持つのではないかと考

える.

筆者は1980~1981年にわたり,文部省在外研究員 として,フランス国立熱帯林業研究所(Centre TechniqueForestierTropical)で研究に従事した

が,当研究所のメカニシャン達の実にみごとなテク

ニックを見ることによって,かならずしも日本人が

*技術科

器用の代表ではないことを強く感じた.彼らに,訓 練の仕方など聞いてみたが,きわめて合理的な指導 を受けていることを感じた.我が国における明治時

代の手工教育の多くがフランスの教育から学ばれた ことはよく知られている.そのようにフランスの場

合,小学校低学年から工作に関する指導がきびしく

なされている.

前著')でも述べたが,理論に裏づけされた技術の 指導が普通教育の中で,技術科教育としてきわめて 大切である.さらに,その前段階としての生活経験 も重要である.それらの点から木材加工をみると,

従来は日常生活の中に木材があり,それを対象とし た手先や工具を使用する場面が多くあった.そして,

それがそのまま技術科教育としての木材加工へ連続 することとなっていた.しかし,現在では,前準備

としての工具の扱いや手先の訓練がなされていない

現実がある3).このことが,当初述べたはしが使えな

い,鉛筆が削れないなどの現象としてあらわれる.

以上のようなことから,現実的に技術科教育を行 うためには技能と技術の連続性,すなわち,manual artsとindustrialartsの連続性が必要である.しか

し,現実の問題として,中学校における技術科教育 はindustrialartsに重点がおかれ4),ともすれば

manualarts的なものが低く評価されがちである.

そこで,筆者は普通教育としての技術科教育には,

なにが必要かということに目を向けて,木材加工の

- 2 3 -

(2)

指導による一連の報文を通して,manualartsと industrialartsの連続性について検討する.

手工教育と技術科教育

明 治 維 新 以 後 の 日 本 の 教 育 , 特 に 初 等 教 育 は 上

里5)によって述べられたように,明治19年に導入さ

れたとされている.ただ,上里も指摘しているよう に,手工教育が普通教育における技術教育として理 論的に整理されていたとはいえない.そして,導入 期の手工科から,多くの変遷をへて,中学校「職業・

家庭」と図画工作に含まれていた工作が合体した形 で,中学校において「技術・家庭科」として,1958 年10月1日官報に告示されて現在のr技術.家庭科」

が発足することとなった4).

ただ,この改正については,種々の異論があった

ことはすでに多くの人々が述べている6).そして,そ の異論の中に工的な部分と工作の部分をつなぎ合わ せたことに,いかにも無理があったことを述べたも のがある.この場合,木材加工は工作としてとらえ られている.例えば,佐々木6)は普通教育としての技

術教育について,2つの側面をあげている.1つは,

職業教育あるいは専門教育という性格ではないと述 べている.この点については筆者も以前述べてい る')ところである.したがって,普通教育として位置 づけられている以上,当然のことと考える.ところ が,もう1つの側面として,「単に,手労働を課すと いう意味の強い手工教育や生徒に労働を課すことを

おもなねらいとする勤労教育でなく,また職業指導 のための教科ではなく,専門教育……」と述べてい る.この引用のうち,後者の側面,すなわち,専門

ではないが,近代的な技術学の成果にそって,その

教育内容を編成する技術教育という性格が軽視され

ていることを述べている.本記述が指摘している中 の多くの部分については,たしかに認めなければな るまい.しかしながら,この記述にはきわめて大き な問題が含まれている.それは,佐々木が述べてい る2つ目の側面「単に手労働……」という指摘であ る.現在の「技術・家庭科」のうち,いわゆる技術

科教育の部分において主張される多くのものが,科

学的根拠を持つものは工的な部分に限られていると いう立場に立っている.佐々木の主張も工作的部分 を専門教育,科学的根拠にもとづかないことを意識

の中に持っていると考えられる.

元来,普通教育の中における技術科教育的発想は 手工教育の中に多く含まれている.特に上里5)が指 摘しているように,導入期の手工教育理論の中に,

手工教育の目的,あるいは条件が示され,まさしく 科学的根拠にもとづいた指導が模索されていた.さ

らに,上原7)は“木工"が手工教育に適していること

を述べ,木工による手工教育を行う注意として,「材 料ノ用ヲ知ラサルベカラズ,工具ノ用法ヲ解サルベ

カラズ,器物ノ製作法ヲ知ラサルベカラズ」と木材

の材料学,工具の使用法,製作(加工)法を指導す

ることを述ぺている.

これらの事実を見る時,r単に手労働……」=「科 学的根拠を必要としない手労働」という図式がいか に問題があるかということは明らかであろう.この ようなことにより,技術科教育において,現在問題 としてあるのは,意識する,しないにかかわらず,

職業教育的意識が強い部分ではないかと考える.こ の1つの証拠として,技術科教育の中・高一貫教育 がしばしば取り上げられることである.そして,こ の中には技術教育として,工業高校の教育がしばし ば研究の対象となっている8).これらは明らかに普 通教育における技術科教育でなく,職業教育として の技術教育を問題としているといえよう.

ところで,昨今,技術科教育における理論的裏づ けの確立と,小・中・高一貫教育の必要性が問題と なっている.このうち,技術科教育の理論づけに際 して,すでに小.高の教育課程の中に「家庭」とし て存在する家庭科と合体した形での中学校における

「技術・家庭科」に無理があることはよく指摘される ところである.しかし,それ以上に「技術」という 教科が普通教育で必要といわれながら,中学校にし

か存在しないことの問題点を明らかにすべきではな いかと考える.そのためには,現在の技術科教育を industrialartsとしてとらえるのでなく,manual

artsとindustrialartsとの連続性のある教育と考

えることが必要であろう.

技術科教育が中学校に取り入れられる時点で,工 作的な部分と職業(工業)的な部分が合体したこと は前述した4'‘).ところで,普通教育の中での技術科 教育は,当然小学校における教育からなされなけれ ばならないと考える.ここに,技術科教育の中に工 作的部分があることに意味があると考える.現在不 幸なことに,小学校の教育課程の中に正式には技術 科教育は入っていない.ただ,技術科教育を工的教 育と位置づけて,industrialartsと限定して考える

場合,現在の状況はある程度仕方がないと考える.

そして,筆者は前述したように,教育過程における

manualartsとindustrialartsの連続‘性の中に技術

科教育の意味があり,その延長として小・中一貫教

- 2 4 -

(3)

育の必要性を主張すべきであると考えている.した

がって,現在の教育体制が取られている間は,小学

校において,「図画工作」の中で技術科教育が行われ るべきであると考える.しかし,現在の「図画工作」

は原が述べている6)ように,歴史的な経過を考えて

みても,芸術教育として位置づけられている.した がって,本来の手工教育が技術教育の一貫として考 えられるべきところを,初等教育において拒否され

ているのが現状である.ここで,技術科教育の理論 づけをするためには,まず,初等教育としての手工 教育を発展させた技術科教育のあり方を考える必要

があろう.

アビ法,)の教育原理にみる手工・技術教育

上里5)は明治初期における初等教育への手工教育 の導入を,実技を伴う実践的な技術教育を初等普通 教育において志向した点を評価している.

ここでは,初期における手工教育が技術教育であ ったと評価しているが,このひな形はフランスの手 工教育とスウェーデンのネース師範学校で採用した いわゆるスロイド手工であったといわれる4.5).この ように,フランスにおける手工教育の歴史は古い.

そして,その目的とするところは〆筆者はすでに前

著')で紹介したが,「抽象的な書物中心の教授形態だ けでは普通教育はなり立たない」’0)ことを示してい た.さらにフランスでは,1923年,1938年の省令に おいて,小学校における「工作」の副次的機能とし て,適性発見と職業入門の2つを指示している.こ のように,フランスにおいては「工作」いわゆる手 工教育をめぐる多くの議論がかわされてきている'0).

ただ,フランスの手工教育はスロイド手工に比較 して,より技能的な点が強調されている点と,普通 教育における手工教育を標傍しながら,前述した職 業入門的な色彩もかなり強い点であった.しかしな がら,その精神としては,1882年工作教育について の法律,その施行令において,法案の報告者ポール・

ベールは,「……ただ,われわれは,科学教育が理論 だけにとどめられるべきでなく,さまざまな産業へ の実地の応用がそこに重要な位置を占めるべきであ ると考えるのである」と述べている'0).

このように,フランスの手工教育はいくたの変遷

はあるとしても,工作教育(=手工教育)が常に科 学的理論を背景としたものであるべきことを示して

いる.このことは,とりもなおさず手工教育が技術

科教育そのものであることを志向しているといえよ

う.この点我が国の場合,導入期では職業的手工教

育と普通教育としての手工教育をある程度ミックス

した形が考えられたといわれる5).

ところで,最近フランスでは,学校教育制度の改 革が叫ばれている.そして,多くの改革案が示され てきている'1).このうち最も有力な改革案として,ア

ビ改革'0)(LareformeHABY)がある.この改革の詳

細は桑原'2)によって紹介されているので省略するが,

本改革の中に手工・技術教育(§ducationmanuelle ettechnique)の項目が示されている.その内容は従

来の手工教育が,先に述べたポール・ベールによる 主張'0)にもかかわらず,手工業的技能や家事的技能 の訓練に主力があったことを批判し,“手工・技術教 育は21世紀の人間が生きなければならない工業世界 の現実に触れながら,(1)日常使用している機械生 産物の基本的なものについて,そのメカニズムを理 解させること,(2)技術観や職業観を変容させるこ

と”を狙いとすることを主張している'2).

そして,この教育が現在的教養の重要な部分,す なわち普通教育の一環としてコレージュ(coll色ge)

において共通必修科目として行われるべきことを述 べている'2).これは,まさしく手工・技術教育が技術

科教育そのものであることをあらわしているといえ よう.

以上,手工・技術教育およびこれに関する,アピ

法について述べた.

ところで,我が国では,手工教育の中で木工は常 に主要な部分を占めてきた.また,「技術・家庭科」

が設定された時点でも,工作側からの参加として,

木材加工が1つの重要な領域を占めてきている.し かしながら,原6)がその著書の中で細谷のことばと

して,「……工作と工業を継ぎ合わせたかたちの編成 はやはり一種の妥協であった」として,工作と工業 を一体化したことを批判的に述べている.しかしな がら,普通教育の中で工業とはいったいどのような 意味を持っているのであろうか.普通教育の中で意 味を持つとすれば,それは明らかに技術科教育にほ かならない.そして,それを工的意味に限定してい こうとするなら,職業教育としての意味づけを強く する以外にない.事実,前述したが,中・高一貫教 育がいわれ,その多くが工業高校との一貫として示 されている.しかし,今後我々が必要とすることは

普通教育の中における技術科教育ではないだろうか.

とするなら,アピ法で紹介した手工・技術教育を目 指す方がより納得する説明ができると考える.

我が国においては,木材加工をはじめとする工作 的な部分について,常に技能的な面が強調されすぎ

- 2 5 -

(4)

ている.そして,その背景に工作には理論とか科学 的根拠は必要としないという前提が感じられる6).

しかし,木材加工の専門的な立場からみると,木材 加工を指導する場合,材料学的あるいは加工学的に もきわめて多くの理論的な根拠が必要とされる.さ らに,教材としての親密度と長年の歴史的な経験か ら,より技術科教育用教材として,適していること を述べてきた1.2).ただ,木材加工の技術科教育とし ての理論的根拠が確立しているわけではない.しか

しながら,これらの点は他の領域(電気,機械,金 工,栽培……)も同様な状態にあるといえる.

我が国における技術科教育の理論づけの不充分さ

は,技術・家庭科というようにきわめて異質な2つ

の教育が合体して行われている現状を考えてみても,

ある程度納得できる.ただ,普通教育における技術

科教育の必要性は科学技術の発達にともなって’21

世紀にむかい,前述したアビ法の例を出すまでもな く,世界的傾向にあるといえよう.その場合,我が 国においてもindustrialartsに限定するのでなく,

manualartsとindustrialartsが合体した技術科教

育を志向する必要があろう.

「木材加工」の指導による手工・技術科教育 の連続性

すでに述べたが,手工教育の導入期について,上

里の研究がある5).その中にも示されているように,

その当時の手工科においてどのような手工を課せば よいかについて,上原7)は次の15の項目で条件を示

している.

H 居 職 ヲ 避 ク ル コ ト

(二)健康ヲ害スルモノヲ避クルコト 日 不 潔 ナ ル モ ノ ヲ 避 ク ル コ ト

四織工,靴下,織,木挽ノ如キ終始同一ノ業ヲ

執ルモノモ亦宜シク避クベキナリ

(五)分業法二属スルモノヲ避クルコト

向 諸 種 ノ エ 芸 二 遷 リ 易 キ モ ノ ヲ 撰 ブ ベ キ コ ト

㈲ 児 童 ノ 体 カ ニ 相 応 ス ル 所 ノ 業 ヲ 撰 パ ザ ル ベ カ ラ ズ

00瞥沢物及玩弄物ノ製作ヲ避ケ努メテ日常必要 ノ品物ヲ撰プベキコト

” 手 工 科 二 齢 テ ハ 文 明 二 必 要 ナ ル 美 術 ノ 思 想 ヲ

養成セザルベカラズ

什)漸ヲ以テ簡ヨリ繁二入り易ヨリ難二及プコト

ヲ得ルモノヲ撰プベシ

(±)学理ヲ応用スルコトヲ得ルモノヲ撰ブベシ

白 手 指 ノ 用 法 二 変 化 多 キ モ ノ ヲ 撰 プ ペ シ

閏工具ノ種類ハ成ルベク多キモノヲ撰ブベシ

㈲ 世 間 最 モ 普 通 ニ シ テ 最 モ 小 部 分 ノ 多 キ モ ノ ヲ 撰 プ ベ シ

㈲ 材 料 ノ 価 ノ 廉 ナ ル エ 芸 ヲ 撰 プ ベ シ

ここに示した15の項目のうち,特に(五),㈲,(封は

科学的根拠を持った教材を選び,また,特定の業種 でなく,あらゆる手工業に役立つ能力を養う,いい かえると普通教育の中での教養的部分を受け持つこ とを示唆している.このことは,ここで述べられて いる手工教育が技術科教育を目指していたことを示

していたといえよう.

この結果,上記15の条件に最もよくあてはまるも のとして,木工をあげている.さらに,上原7)は木工 の例について「材料ノ用ヲ知ラサルベカラズエ具ノ 用法ヲ解セサルベカラズ器物ノ製作法ヲ知ラスペカ

ラズ」ことを述べている.以上のような事実は手工

教育の中での木工が単なる手工技能にとどまるので

なく,また単なる美術教育ではないことを示してい

るといえよう.すなわぢ,その中で木工技術そのも のを材料学,加工学などの科学的根拠にもとづいて

教授することを示している.

ところで,現在我が国における技術科教育は正式 には中学校「技術・家庭科」という形でなされてい る'3),すなわち,普通教育の中でも小学校では技術科 教育は正式には取りあげられていない.ただ,前述

したように,木工に関しては小学校の「図画工作」

の中で教材として取りあげられている'4).しかし,そ れらの教材は加工の対象でなく,表現の対象,すな

わち美術教育の一環として取りあげられているにす ぎない.

本来,工作教育は美術教育よりむしろ手工教育に 取り入れられることが自然である.このことは例え

ば,前項で述べたアピ法9)によっても,手工・技術教

育(6ducationmanuelleettechnique)と全面的芸術

教育(§ducationartistipueglobole--音楽,図画,

彫刻,都市計画など)は区別されている'2).さらに,

我が国の小学校「図画工作」の目標は「表現及び鑑 賞の活動を通して,造形的な創造活動の基礎を培う

とともに,表現の喜びを味わわせ,豊かな情操を養

う」’4)となっている.

一方,アビ法における全面的芸術教育の目的も「す

ぐれた作品への感受性を高めることと生徒の自然な

制作・表現意欲とを結びつける」,「聴くこと,歌う

こと,鑑賞すること,描くこと,創作することが読 み書き同様に基礎学力と考えられる」などが示され

ている'2).

- 2 6 -

(5)

以上のことから,日本の「図画工作」とアピ法に よる「全面的芸術教育」はほぼ同様な目的を持って

いるといえよう.

ただ,我が国の教育の中でも,手工教育はいく多

の変遷をしている.そして,前述したが,原が述べ ている6)ように,美術との関係から現在は工作教育

が美術教育に位置づけられてきた傾向が強い.しか

し,手工教育の部分は,美術教育の中でも手工ある

いは工作教育として,かなりとらえ方が変化してき ている.このことについては,美術教育関係者も述

べている.以下述べると'5),

(1)導入期の手技的手工期:明治19年,この時期に

ついては前述した通り,むしろ技術科教育として の手工教育の傾向が強い.

(2)芸術的手工期:大正初期は完全な芸術教育とし ての手工教育であった.

(3)作業科工作期:昭和6年は勤労教育としての工

作教育で,強いてあげれば職業教育の一環とも考

えられる.

(4)芸能科工作期:昭和16年は戦時体制下における 科学的工作として位置づけられており,むしろ技 術教育に属していたといえる.

これ以降は戦後の工作教育となるが,戦後の工作 教育は前述したように,美術教育の色彩が強く,し かも中学校「技術・家庭科」が発足して以来,特に

その傾向が強い.

以上,工作教育の歴史的変遷を簡単に述べたが,

普通教育として必要とされる技術科教育(手工教育

も含んで)は現在小学校ではほとんどなされていな いことは明らかである.このような状態では,技術

科教育は不充分であり,今後は小学校における「図 画工作」の工作教育を美術教育と切り離し,手工教 育として,技術科教育の一環,もしくは一連の教育

として位置づける必要があると考えている.

「のこぎりびき」の指導による手工・技術科 教育の連続性

すでに述べたように,木材の加工は小学校の「図 画工作」の中でも取りあげられている'4).そこで,

小・中一貫した技術科教育を模索するため,小・中 学校で使用される工具,あるいは加工法について,

現在行われている指導の状況を点検し,手工・技術 科教育の一貫教育を検討する.

小・中学校で使用される木材加工用の工具の1つ として,のこぎりがある.そこで,本報において,

手工・技術科教育の連続性を検討するため,小・中

- 2 7 -

学校ともに使用する工具として,のこぎりびきの指 導について検討を加える.

小学校における「のこぎりびき」の指導

使用工具として,のこぎりは最初小学校「図画工 作」の4年生の教材工具に含まれている'4).指導要領 によると,板材を材料として取りあげる際に使用す

る工具として,のこぎりがあげられ,「のこぎり,金

づちの基本的な取り扱い」について指導することと なっている.さらに,「材料,用具,工具の正しい取

り扱い」についても指導することとなっている.こ の際,材料については児童の発達にしたがって,抵 抗の少ない材料から抵抗の大きい材料へ指導の順序 を示すことになっている.ただ,抵抗の少ない,大

きいという表現は材料を選択するにあたり,きわめ

て抽象的な表現である.同じく,木材についても,

やわらかい木という表現があり,のこぎりの事故防 止の指導を行うことが記されている'4).

以上のような一連の指導方針は,抽象的な表現が 多く,理論的な根拠をおさえていない.しかし,こ の指導は美術教育の一環として行われているため,

技術科教育で必要とされる科学的な根拠の裏づけを

厳密に指導する必要がないことに起因しているとい

えよう.すなわち,「図画工作」における工作教育は あくまでも,前項で述べた小学校「図画工作」の目 標にしたがっているものである.したがって,工作 教育といえども表現と技能に主力がおかれ,表現が 内容で,技能は手段にしかすぎない'5).さらに,小学 校「図画工作」は小・中・高校の美術教育の一環に あり,その目的とするところは表現と鑑賞である'5).

すなわち,創造活動の基礎的能力を養うことにある.

この点,技術科教育は表現を手段として使い,科学

技術教育を内容としているところに明らかなちがい

がある.

以上述べたように,小学校「図画工作」は中学校

「技術・家庭科」で行われる技術科教育とは異なった 目的を持っている.ただ,木材加工は目的は異なっ ていても,小・中両方の教材として取りあげられて いる.このように同一の教材を使用する場合,児童,

生徒の発達段階に応じて,積み重ね方式で指導する ことが,より教育効果をあげることとなる.そこで,

現在おこなわれている教育課程の中で,小・中学校 での教育をどのような形で連続させていくのかを検 討し,将来,技術科教育の小・中一貫教育の理論的

裏づけが得られたらと考えている.

そこで,本項では指導内容が小・中学校で行われ

(6)

ている木材加工に関する部分の中で,「のこぎり」の 指導に限り,まず小学校における指導の現状,定着

度などについて検討する.

まず,中学校「技術・家庭科」の中での木材加工 領域を学習するにあたり,小学校時代の学習がどの

ような形で定着しているか,またどのような指導が

行われたのかを生徒へのアンケート調査を通して考

察する.

アンケートの内容は資料lに示す。アンケート調 査の対象は荒尾市立荒尾第3中学校1年生(男女共 学)とした.荒尾第3中学校は2つの小学校出身の 生徒が在校する.そこで,被験者の出身小学校も記

入させた.

表1アンケート調査表

小学校卒業

①小学校の授業でのこぎりを使いましたか

1 . は い 2 . い い え

②小学校何年生でのこぎりを使いましたか 1 . 4 年 生 2 . 5 年 生 3 . 6 年 生

③のこぎりを何の授業で使いましたか 1 . 図 画 工 作 2 . ク ラ ブ ( ) 3 . そ の 他 学 校 で ( )

④のこぎりを使って何を作りましたか.作った

ものを書いて下さい.

⑤両歯のこぎりを知っていますか

1 . は い 2 . い い え

⑥たてびきのこぎりと横びきのこぎりのちがい

を書いて下さい

⑦のこぎりの使い方について小学校でならった

ことを書いて下さい

⑧小学校でならったのこぎりを使う時の注意を

書いて下さい

調査結果を以下示す.

(1)調査対象となった全員が,小学校でのこぎり

を使用した経験を持っていた.

(2)のこぎりを使用した学年は,A小学校の場合,

6年生,B小学校の場合,4年生であった.

(3)のこぎりを使用した教育課程は,2校とも「図 画工作」であった.さらに,4年生でのこぎり を使用したB校では,一部生徒が5,6年生のク

ラブ活動でも使用している.

(4)のこぎりを使用して作製した作品は,A校が

自由作品,B校が船であった.

(5)両歯のこぎりを知っているものは全体の約 70%であった.(ただし,言葉としての知識しか

ないものもいる)

(6)たてびきのこぎり,横びきのこぎりについて はほとんどの生徒が理解していない.

(7)技術あるいは技能に関する指導はA校の場合,

手前に引く時,力を入れる.B校の場合,手前 に引く時,力を入れる.板を固定して切る.

(8)作業時の注意として,けがをしないようにと いう簡単な安全教育がなされている.

以上の結果から,小学校において,すべての生徒 がのこぎりを使用している.しかし,その時期は指

導要領に示された4年生とは限らないことが明らか

となった.そして,高学年でのこぎりを使用する場 合の方が作品が多様化し,児童の成長と作品の種類 の関係が示された.しかし,指導要領に示されてい たのこぎりの基本的な使用法を指導する点について は,両校とも手前に引く時に力を入れることを指導 していたが,それ以上の技術的あるいは技能的な指

導は行われていない.なお,指導要領'4)に示されてい

た安全教育については,一応指導されていたといえ

しかし,以上の結果からは,「図画工作」の指導目 標に示されていた工具の基本的使用すら行われてい ないように思われる.したがって,技術科教育的な

指導は当然行われていないと思われる.すなわち,

のこぎりびきの指導が技術科教育に連続する手工教 育の意味を持っているとすれば,前項でも述べたよ うに,多少とも科学的根拠を持った指導をすべきで あろう.その点からいえば,小学校中学年の児童は それほど多くの知識を有していない.したがって,

指導の内容も限定されることは理解できる.しかし ながら,のこぎりびきについては,例えば,横びき,

たてびきのちがいを板との関係から簡単な知識で指

- 2 8 -

(7)

導することはできる.また,のこぎりそのものにつ いて,両方の歯型のちがい,さらに,カッターナイ フは3年生の工具として使用している'4)のであるか ら,それらの刃の構造との関係などの指導はすべき であろう.

しかしながら,前述したように,「図画工作」はあ くまでも美術教育を志向しており,指導の方向とし

て も , 工 具 は 単 な る 手 段 と し て 使 用 し て い る に す ぎ ない.このことから考えて,これらの結果は当然の ことともいえる.

中学校における「のこぎりびき」の指導

前項で,小学校におけるのこぎりびきの指導を通 して,ほとんど技術科教育として意味がないことは 勿論,手工教育としての意味も持たないことを述べ た.そこで,技術科教育としての木材加工は,現状 では中学校においてはじめて指導されることとなる.

中学校「技術・家庭科」においては,のこぎりび きの指導にあたっては横びき,たてびきの歯のちが い,木材の材料学的な指導,それらと関係するあさ りの必要性など,のこぎりびきに必要な知識に関す る指導を行うこととなっている'3).しかし,これらの 指導を行う木材加工1は,前著でも述べた通り非 常に短時間の指導しか行われていない.そのため,

充分な基礎知識の指導が行われていない.このこと から,木材加工は製作のみがその目的内容となって いるような誤解を受けている6).しかし,これはカリ

キュラムに問題があるのであって,木材加工領域の 問題ではない.ところが,現実の問題として,基礎

的知識を指導する時間的余裕がない.しかも,木材 加工1は中学校における技術科教育の最初に指導 される場合が多い.しかしながら,前述したように 小学校ではほとんど技術科教育は行われていないの で,小学校で履修したことがらに対する積み重ねの 指導ができない.この点,のこぎりびきの場合も技 術科教育的意味はほとんどないが,すでに,のこぎ りは小学校で全員が使用した経験を持っている.そ こで,時間的な節約の意味でも,中学校における指 導の中で,この小学校時代の経験を指導に結びつけ

ていくことを考える必要があろう.

それとともに,小学校における指導内容をさらに 有効に生かしていくことを考えることも大切であろ

う.そのためには,小学生の段階で,例えindustrial arts的な指導が困難としても,前述したようにその

前提としてのmanualarts的な指導は可能であり,

効果的と考える.のこぎりびきの場合,技術科教育

の前段階としての手工教育は可能であることを述べ た.この一例からも,木材加工は手工教育,技術科 教育の連続性という点から,きわめて効果のある領

域であることは明らかであろう.この点に関しては,

現在でも木材加工領域の指導が手工教育における技 能という面で効果があることは,すでに多くの人々 が認めてきたところである.しかしながら,技術科 教育としての木材加工は,ともすれば製作のみとい う批判を受けがちである.ところが材料学的な面か らみても,木材は非常に複雑なものであり,その加 工も材料特有の性質にもとづいた他の材料加工とは 異なった部分が多い.しかし,それらのことを充分 理解していけば,木材加工による技術科教育は多様 な指導が可能である.

以上,のこぎりびきの指導例を簡単にあげたが,

この1つを取りあげても多くの指導すべき内容を持 っている.これらの点については,manualartsと

industrialartsの両面からいずれ詳細に述べること としたい.

総 括

本報では,まず手工教育と技術科教育の連続性を 追求することによって,普通教育における一貫した 技術科教育を行うことの必要性を述べた.

これらの理論的な裏づけを行うために,フランス の手工教育と我が国における明治維新後の導入期の 手工教育を紹介した.

フランスの手工教育については,1882年に施行さ れた工作教育に関する法案の報告者ポール・ペール

による普通教育における工作乱又は手工教育の意味

づけを検討した.さらに,その延長上にある最近の

教育改革による手工・技術教育の必要性と意義につ いて,アビ法を紹介しながら検討を加えた.

我が国の導入期における手工教育については,そ れが技術教育を志向していた点に注目して,その手 工教育を行うために,木工がきわめて重要な位置を 占めていたことを明らかにした.

後半では,前半で述べた理論的裏づけにしたがっ て,普通教育において手工・技術教育の小・中一貫 教育が必要であることを述べた.そのために,現在 おこなわれている小学校におけるr図画工作」の中 の工作は美術教育として位置づけるのでなく,導入 期の手工教育的な技術科教育を志向すべきことを述 べた.さらに,その連続として中学校における技術 科教育との一貫性を志向すべきことを述べた.

そのために,一例として,小・中学校で使用する

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(8)

のこぎりびきの指導をあげ,手工・技術科教育の小・

中一貫した教育を行うことの可能性を述べ,木材加 工による技術科教育の小・中一貫教育の可能性につ

いて述べた.

なお,本報をまとめるにあたり,アンケート調査 に協力いただいた熊本県荒尾市立荒尾第3中学校 浜崎光邦教諭,また,貴重な資料をお送りいただい た筑波大学教育学系桑原敏明助教授に深謝いたし

ます.

参 考 文 献

1)大迫靖雄,熊大教育センタ紀要,第1号,47(1984).

2)大迫靖雄,「技術・家庭」(熊本県中学校教育研究会技 術・家庭部会),第27号,1(1983).

3)例えば,久保田競,脳力を手を伸ばす(大人も子供も 脳のパワー・アップ),紀伊園屋,1983.

4)和気孝衛編,技術科教師をめざす人のために,一ツ橋書

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店,、昭53.

5)上里正男,日本産業技術教育学会誌,Vol,22(2),

137(1980).

6)原正敏,佐々木享編,技術科教育法(各科教育双書 4),学文社,昭48.

7)上原六四郎,千葉教育会雑誌,109号,(明20.8).(前掲 害5)より引用)

8)光恒宏昭,日本産業技術教育学会誌,VoL23(1),

)1981

9)例えば,R・HABY,CombatpourlesjeunesFranCais,

J u l l i a r d , 1 9 8 1 .

10)アントワーヌ・レオン(池端次郎訳),フランス教育史(文 庫クセジユ449),白水社,1969.

11)桑原敏明,理想,No.611,210(1984).

12)桑原敏明,筑波大学教育学系論集,第8巻,2号,3(昭 59.)

13)文部省,中学校指導書技術・家庭編,昭53.

14)文部省,小学校指導書図画工作編,昭53.

15)石田茂吉,西光寺享,藤島溝雄編,小学校新学習指導 要領の解説と展開一図画工作編,教育出版,1984.

参照

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