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著者 末政 芳信

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(1)

限界原価計算の出発点 : ローレンス、ハンフレー ス共著「限界原価計算論」研究 (1)

その他のタイトル The Ground of Marginal Costing

著者 末政 芳信

雑誌名 關西大學經済論集

巻 5

号 7

ページ 765‑794

発行年 1955‑11‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/15737

(2)

原価計算に対する様々な要求から原価計算形態の主要な特徴は︑実際原価計算から標準原価計算へ︑標準原価計

算から弾力性予算を伴う標準原価計算へ︑それから直接原価計算への発展過程に見出す事が出来る︒此の様に今日

原価計算の理論的側面の一つの重要な課題として直接原価計算

(D

c t

c os t i ng )

が取り上げられるに至った︒

の慣習的原価計算乃至全体原価計算

( g n ve nt io na l  Co s

g , To ta l 

8 S 巨

F u l l g ,

  cos

g "

Ab so rp ti on

 

s ti n g ) 

1 d .  

対する批

判として直接原価計算乃至界限原価計算が大きく問題化されつ

4

あ る

( 1 )  

ー ラ

J.N

・ハリスの論文によって口火を切られて以降今日に至るまで多くの人々によって直接原価計算の問題

( 2 )  

が論じられて来た︒此等の論文は直接原価計算の取扱いについて︑種々様々であった︒即ち匝接原価計算を単に特

殊原価調査乃至原価分析の問題として研究するとか︑或は一つの原価計算制度として考えた場合についても︑単に

限界原価計算の出発点︵末政︶

ま し

' ︵ 

ーローレンス︑

限 界 原 価 計 算

の 出 獲 貼

一九三六年︑米国の一化学会社のコントロ

ハンフレース共著﹁限界原価計算論﹂研究(‑)│

従来

(3)

766 

第 五 章

限界原価の決定方法

最 終

勘 定

慣習的最終勘定

第 四 章

限 界

原 価

計 算

の 出

発 点

︵ 末

政 ︶

直接原価計算の一側面ー│直接原価計算の長所及び短所の問題︑直接原価計算の原価管理の面︑利益計画の面︑損

益計算との関係︑或は価格計算の問題等ー│'のみの部分的な問題を研究したものが少くなくない︒従って又直接原

価計算に関する単行本は︑自分の知る所では僅か三冊を数えるに過ぎない︒即ち︑英国のローレンス︑

( 3 )  

ス共著﹁限界原価計算﹂︵一九四七年発行︶米国の原価会計士協会

( N .

A .  

C . 

A . )

の会報第二十三号の﹁直接原価計

( 4 )  

算﹂(‑九五三年発行︶及び神戸大学の久保田博士著﹁直接原価計算﹂

ロ ー

レ ン

ス ︑

ハンフレースの著書は著者自身が序文に於いて﹃著者の知つている限りでは︑此の書物が限界原価

( 5 )  

計算問題に専心従事した最初のものである﹄と述べている如く︑直接原価計算に関する劃期的著作である︒従つて

( 6 )  

此の文献が内外に於いて多くの著書︑論文等に引用又は参考文献として記述されている事も当然首肯出来る︒

さて本書の性格はその構成配列によって明らかな如く多くの問題点を挙げてそれに関説している︒その内容は次

の如くである︒

全 体 原 価 の 手 法

主 と し て 歴 史 的 に

原価計算の基礎資料

第 二 章 第 三 章

第一章限界原価とは何にか

第 十 三 章 第十二章 第 十 一 章

第 十 章

第 八 章

実施の場合の価格計算者

一 九

五 五

年 発

行 ︶

で あ

る ︒

売 上 と 損 益 勘 定

月 次 勘 定

在 庫 品 及 び 仕 掛 品 評 価

生 産 ︑ 販 売 及 び 一 般 管 理

価格計算との関聯に於ける限界原価計算

ハンフレー

(4)

出発点を考察しようと思う︒ らない︒換言すれば原価計算目的として一般に考へられている︵一︶原価管理に役立つ事︒ 奉仕する事︒

二 九

然し本書が単なる理論的著作に止まらず︑直接原価計算の啓蒙普及の為の実践的書物である事に注意しなければ

﹃此の書物の目的は実務界の総ての人々に限界原価及びその会計理論を注

目させる事である︒⁝⁝⁝我々は二︑三の人々に対してではなくて︑多くの人々に問題を提起する外はないと思っ

そこで一つの原価計算制度としての限界原価計算を考察するには原価計算目的との関聯の元に把握しなければな

︵二︶期間損益計算に

(‑︱‑)経営政策的目的に有用な事の三観点から著者の云う直接乃至限界原価計算を研究しなければな

らない︒然しながら其等の問題を考える為には著者の限界原価に対する基本的な考察の分析から始めなければなら

ない事は云うまでもない所である︒従って本稿では限界原価計算論研究の手初めとして限界原価計算の基礎的概念

の問題としての限界原価の性格︑全体原価計算への批判︑限界原価の決定方法の問題を中心として限界原価計算の

(1 ) Jo na th an N•  

Ha

s ,

"

Wh :i t  d

i d  w

e  e ar

n  , l

a s t   mo nt

h P'̀ 

( N.  

A .  

C . 

B ul l e ti n  S e c ti o

n  

Ja nu ar y 

15 . 

1936.) 

此 の

紹 介

は ︑

ロ ー

レ ン

ス ︑

ハ ン

フ レ

ー ス

共 著

に 於

い て

な さ

れ て

お り

︑ 又

N. A.   C.   A.   Bu l l e t i n ,   N o.  2 3.  

も 述

べ ら

れ て

あ る

( 2 )

直 接

原 価

計 弊

の 文

献 に

つ い

て は

一 橋

大 学

番 場

教 授

I I

接 原

価 計

算 の

文 献

研 究

I I

︵ 原

価 計

算 第

二 号

一 九

五 四

・ 七

︶ に

網 に

紹 介

さ れ

て い

る ︒

Go ul d. L•  

H ar r i s,  

P a r t i a l   b il i o gr a p hy   o f  d i re c t   c o s ti n g  ( I n du s t ri a

l  

u nt a n ts   ha nd

d 

238239) 

Ad ol ph .  M at z,

^  

 

Ma rg in al

 

st ng

"

i l   b i og r a ph y   (T he e  N w  Y or k  C e rt i f ie d

・ Pu b l ic   Ac co un ta nt   P.  

3 6 0

.  

J u

n e,  

1 9 5

0) 

 

限 界

原 価

計 算

の 出

発 点

︵ 末

政 ︶

た︒﹄と述べている事によって明らかであろう︒ ならない︒此の事はその序文の冒頭に︑

(5)

限界原価計算の出発点︵末政︶

︵税綽涌信一九五三ー六︶ ︵企業会計一九五三ー六︶︵企業会計一九五四ー四︶︵企業会計一九五四‑

0 )

 

︵産業経理一九五四ー三︶

Ro be rt   Be y e r,   ^ ^  

I s   d ir e c t 

s t i g   t h e  a ns we r,

"

 f o o tn o t e,   ( Jo u r na l o f     Accountancy,

  Ap r i l .   1 95 5 .   P .   47 .)  

その他我国にも多くの論文がある︒

M

GI NA L CO ST IN G  (3 ) F .C .L AW RE NC E  E•N•

HU MP HR EY S  Pu bl is he d  b y  t he   Ma cd on al d 

Ev an s, 1 9   4 7.  

尚久保田博士は初めから

直接原価計算1 1

I I

の用語で紹介されている︒

(4 )  N.   A.   C.   A.   Bu l l et i n ,  Re se ar ch   Se r i e s , N  o.   23 ,  

" D i re c t   Costing" 

A pr i l ,  1 95 3

.   は約五十頁の書物で米国の文献では代

表的なものとして多くの論文に引用され︑我国でも久保博士︑松本教授︑番場教授等によって紹介されている︒

︵ 五 F .  C .  La wr en ce

 

E .  N•

Hu mp hr ey s,  "

Ma rg in al   co s t in g

"  

P .   V .  (6 )

① 

C .  T.

 

T h   " 

v i l

) . e B,   oo k  r ev ie w  (A cc ou nt in g  R ev ie w,   p.   2 81 .   A p r il ,  1 95 1. ) 

wr en ce ,  J . Be n n in g e r,  

c o

s t  an d  v al ue   co n c ep t s ."  

(H an db oo k  o f  m od er n  accounting

h e   t o ry ,  c h a pt e r  1 0 .   P . 2 8   2 .  2 83 .   1955.) 

③ 

Ad ol ph   Ma tz , 

"

ma rg in al   co s t in g

"  

b ib l i og r a ph y   (T he e  N w  Y or k  C e rt i f ie d  P u b li c   Accountant,

.     P 3 60 .  J u n e.   1950.) 

④ 

Go ul d  L•

H ar r i s,  

" C o nt r o ll i n g  o ve rh ea d  c o rt s

"  

b ib l i og r a ph y .   ( In d n st r i al   ac

 

un ta nt   ha nd bo ok ,  c h ap t e r.   7 .   P .2 3 8 .  1 95 4 . ) 

以上は米国の書物であるが英国の文献は非常に少く︑又︑入手が困難であるから引用されているものは不明である︒

⑥久保博士﹁旗接原価計算論﹂

英国政接原価計算の立脚点I I

I I

英国直接原価計算の目的への展開I I

I I I I

廊接原価計算の生成理論

I I

直接原価計算目的としての原価管理I I

f l

並びにその他の論文

I I

寵接原価計算論

I I

(6)

用 ﹂ 二種類の性質のものが存在する︒ 即ちそれは﹁直接乃至限界原価﹂

( Di r e ct or a  M rg in al   co s t ) 

⑦諸井教授マージナル・コステイング論の展開

⑧国弘教授﹁損益分岐論﹂の参考文献の個所 (7 )  I b id . P . ,    V .  

先ず限界原価計算を考察する場合には︑

︵原価計算一九五四ー七︶

﹁ 限

界 原

価 ﹂

(M ar gi na

l

s t)

が問題とじて取り上げられる︒従つて著者

も﹁限界原価とは何にか﹂と云う事から第一章を初めている︒そうして云う凡そ︑企業に於いて発生する原価は︑

(E st ab li sh me nt   or i  F xe d  charges)

と で あ る と ︒

﹁直接乃至限界原価﹂は商品を作る為使用された材料費と︑完成品に原材料を加工する為に使用された労務費︑

及び生産に直接に発生した経費とから成立つており︑その経費は例へば機械を動かす為の電力︑水力とか︑使用さ

れたエ具︑グリス︑オイル等のもので実際に生産が行はれなかったならば︑使用されなかった所の費用である︒従

つて一定条件の元では︑﹁直接原価﹂は生産された同じ一単位当りの商品に常に費消されているが故に︑﹁製造原価﹂

の 元

で は

(C os t  of Production)

として容易く扱う事が出来る︒又製造原価と売上商品原価の両者共︑一定条件︵

S

bl e c on d i ti o n ) 

( 1 )  

﹁直接原価﹂は一商品当り同一一定金額︵怠

me

fi xe d  su

n)

と な

る ︒

一方準備経費は監督の給料︑地代︑地方税︑火災保険料︑減価償却費等の為に発生した経費及び現在の経営準

(e st ab li sh me nt )

を︑維持する為のあらゆる経費があげられる︒従って準備経費は生産量に関係なしに企業に発生

限界原価計算の出発点︵末政︶

限 界 原 価 の 性 格

と﹁準備乃至固定費

(7)

限 界

原 価

計 算

の 出

発 点

︵ 末

政 ︶

する費用であり︑ ﹁直接原価﹂とは相互に関聯を持たない独立的な性質を有している︒

さてここで著者は次の如く問題を提起し︑その見解を明瞭にしているのである︒即ち上記の如き﹁直接乃至限界原

価 ﹂

M と﹁準備乃至固定費用﹂ F を﹁全体﹂原価或は﹁全てを含む﹂原価

( "

t ot a l "

c os t   or  

" a l l   i n"  

s t )

と呼ばれる原価

に導びく方程式の中に︑混入しようとして︑現在多くの人々は誤りを犯している︒これは M

が ﹁

恒 常

比 率

( co n s ta n t r a t i o )

で あ

り ︑

F が ﹁ 恒 常 数 ﹂

( 8

n st a n t  q u an t i ty )

であると云う基本的な事実を充分把握していないから︑多くの陥穿

や複雑さを避け得ないのである︒その陥穿や複雑さの度は︑直接原価を M ︑準備経費を F ︑ 販 売 価 格 を S ︑生産量を

P とした場合︑一般に純利益算定の公式が

2 ( S M + 0 1 ) ) 1

P r o 1  

f i t

と示めされる所に問題が存するとしてい

る︒そうしてこの点につき著者は平易な数字をこの公式に挿入し︑特に

F ‑

P の 問 題 と し て ︑ 一期間の販売量と生産

量の幾つもの組合せ例題を挙げ︑これを通じて一期間に於ける生産量と販売量との間に差異がある場合に︑準備経費

の原価

( co s t o f  e st ab li sh me nt   expense)

を生産量に結びつけて考へるべきか︑或は販売量に結びつけるべきかの問題を

提起し︑此等の問題の明白な解答は︑﹃純利益は製造の全活動と一期間中の販売とからのみ得られる︒且製造され︑

販売された一単位のものは利益が最終的に実現されると云う所に基いてプール計算にそれぞれの持分

( qu o t a)

単位と

e2 ) 

して貢献

( co n t ri b u te )

している﹄事であり︑換言すれば純利益が製造活動によって計算し得ず︑販売活動によって最

終的に実現されると云う事実︑所謂販売主義会計により今日純利益が計上されていることに注目し︑しかもかく理解

するならば︑直接原価 M のみが販売価格 S と同次元︵器

me

de me ns io n)

であり︑その差額は利益に関聯している︒そ

れは利益の実現に対して各単位によってなされた貢献

( co n t ri b u ti o n )

であり︑此の様な総ての貢献が期間中に集合さ

れ た

3(S

M )

所謂総限界利益

(G ro ss ma rg in )

となるからである︒ 一方準備計費 F は生産︑販売と直接関聯せず︑

(8)

限界原価計算の出発点︵末政︶

所謂限界利益から最初に充当されるのである︒又それによって残余が生じる場合に純利益となるのである︒従って正 しい純利益の方程式は

Pr of it 11 2( S

M

)

F であり︑即ち或る期間中に販売された商品からの限界利益

(M ar gi ns )

( 3 )  

或は貢献した総ての額︵庄

e

su m  o f   a l l   t h e  c o n t r i

i

o ns )

から準備経費を差引いた額であると断定され︑ここに我々

は著者のいう限界原価計算の欠くべからざる基本概念を見出すのであり︑それが販売主義会計との関聯の元に考察

された点を注目すべきである︒

更に M 及 び F を考察すると限界原価の用語が直接原価と結びつけられているけれども﹃限界原価が何んであるか

( 4 )  

が十分に描き出されていない﹄のでその考察に移る︒著者は限界原価は商品を生産する場合︑更に一個を追加生産

した時に生ずる追加原価

(a dd ed

s t

)

であり︑且この限界原価は同一条件

(s am e c on d i to n )

の元では︑使用された材

( 5 )  

料費︑労務費及びこの一個の追加生産をしなければ発生しなかったであろう経費を含む直接原価であるとした︒然

し一般的に限界原価の用語を使用ずる理由は﹃二三の原価会計担当者は直接原価

f l

の用語を使用する場合︑それ

( 6 )  

が個々の原価に賦課するに便宜な所の原価部分を意味する﹄と述べているところから推察される如く︑賦課するに

便利な直接費の概念との別を明確ならしめる為に限界原価乃至直接或は限界原価の用語を使用したものと思う︒

然し著者が絶えず﹁一定条件

(S

b l e c on d i ti o n }

の元で﹂ということを前提としての追加原価としての限界原価を取

り上げ︑それの内容的性質が直接原価であると規定した事と固定間接費を準備経費の性格をもつものとして説明し

た点とを熟慮すると︑こ

4

に限界原価の用語を特に選択した理由が存するのではなかろうか︑従って一定条件の元と

云う前提は非常に重要なものであると思う︒著者と同じ様な考え方としては︑アドルフ・マッツ

( Ad o l ph . M at z . ) 

! , l

り﹃限界原価は直材料︑直接労佑︑及びその単位の製造︵巨

e

ma nu fa ct ur e  o f  t h e   u n i t e )

1 1 .  

 

よって生ずる変動費︵

v a r i a b l e

(9)

限界原価計算の出発点︵末政︶

( 7 )

8) 

c os t )

のみを考慮する﹄と述べられている︒然し米国では主として﹁直接原価﹂

(D ir ec t c cs t )

の用語が用いられ︑英

9

﹁限界原価﹂の用語が使用されている様である︒

更に論を進めると︑今まで限界原価 M は明らかに一定条件の元に於いてのみ定数

(c on

s

nt )

であった事に注意を

向けなければならない︒需給の急激な大変動があり且︑材料価格︑労賃率及びその他の変化がある時には当然変化

するであらう︒準備経費 F についても同じ様な事が云ひ得られる︒即ち F は経営準備が其れ自体一定である限り固

定しているが︑不景気或は急激な好景気の場合には F も又増減する︑此等の問題に対して著者は﹃全体の問題が考

慮されるのは此等の限界内に於いてであり︑而も議論は此等の限界外に発生する変化によって何ら影響を受けない︒

仮りにこの限界を越えるとしても其等に一致せしめる様に容易く調整がなされ︑且限界原価計算の簡易は決して影

響を受けない︒即ち其の事は他の原価計算の形態の場合と同様に︑限界原価を使用する者は誰でも常に油断せずに

現在の状態を常に熟知し︑時勢に遅れぬ様に直ちに行動する様に努めなくてはならないと云ふ事を意味する︒原価

会計の任務について何等静止的なものは存しない︒恐らく充分強調する事は限界原価計算の簡易性に置かれている

( 1 0 )  

のではない﹄と述べている︒これは直接原価計算への批判として反対論者から問題にされる固定費と変動費の把握

( 1 1 )  

の困難性についての消極的な解答と見るべきではないかと思う︒

実際に M の価値を決定する事は決して容易な事でない︒単一商品を終始生産する工場では容易であるが︑多種類の生

産物及び数種の異なった形態の生産物の場合には︑生産が非常に秩序整然として居り︑且その基礎資料が明確であり

信頼出来るものでなければ限界原価を決定する事は決して容易でない︒故に基礎資料の正確性を保持する事に意を

4

がねばならぬと強調している︒さて普通には限界原価計算は製造工業に考へられるが商企業に於いてもその利 国に於いては︑

(10)

一 五

益を享受する事が出来る︒事実小売商人は日々の売買に於いて限界原価計算概念を実際に使用している︒即ち固定経

( fi x e d ex pe ns e)

の支払の為に小売商人は所有の商品を一定の限界利益

(M ar gi n)

を以つてどれだけ販売せねばな

らぬかを知つている︒而も如何程の各商品をどんな価格で売るかの目標を立て︑此の点に於いて予算統制と限界原

価計算の結び附けを行なっている︒製造家に於いても前述した様な小売商人の簡単な基本的事実を把握し︑大きな

複雑な事業に有効に応用し得る様にせねばならぬとする︒それには原価計算に於いて M と F とを区分する︒限界区

且混乱させる原価会計担当者による今︱つの慣習乃至は計

分法

(M ar gi na l d i v id i n g  l i n e )

が事業経営者を苦しませ︑

画として︑誤解されるといけないから原価計算上の限界概念の物的基礎を考察する事が有益だとする︒原価会計担

当者は常に事実を数字に醜訳すると云う任務を持つが故に基礎的事実の上に数字を組立てねばならない︒換言すれ

ば︑その生産と販売の事実の中に限界部分が明瞭且判然とする故生産と販売の事実の分析から初めねばならぬ︒生

産︑販売に先立つて︑︵イ︶機械を整備し︑ 工場︑事務所︑販売所を準備し︑︵口︶製品の試作︑研究︑製造方法の研

究︑販売方法の研究及び︵ハ︶材料︑部品︑製品の社内移動から顧客への送附等が商品の製造︑販売の前に行はれ

なければならぬ︑此等は準備をする為の活動であり︑そうゆう活動がなければ生産︑販売の活動は役目を果す事が

出来ない︒此の様に製造活動と準備とは相互依存関係にあるが然も独立的なものであり︑

ている︒即ち製造活動は加工

( co n v es r i on )

であり︑準備は管理

それに伴つて増減する︒ 一方管理は生産数量に関係なく固定している︒従って加工は生産量に何時も関聯して統制

されるが︑管理はその性質上加工と同じ様な方法で統制しても役立たない︒それは管理効力の縮少及び拡大の政策

は加工の正常限界

(n or ma l l i m i t s

)

内では正しくない事を示す︒

限界原価計算の出発点︵末政︶

( ad m i ni s t ra t i on )  

その性格は明確に相違し

である︒加工は生産数量に関聯し︑

(11)

(1) 

此処で著者の見解について要約してみようと思う︒ 注目しなければならない︒

限界原価計算の出発点︵末政︶

管理は経営準備を絶えず維持し︑事業特有のものであり︑善かれ悪かれ存続しなければならないからである︒この

事は著者が﹃限界原価 M は工場に於いてなされた努力を表し︑準備 F は此等の努力が利益を作る事によって好成積を

( 1 2 )  

得る為に遂行しなければならない所の堅固な障碍を表す﹄として経営管理の問題に原価を結びつけて考察してい

る点と併せ考えると意味深いものである︒換言すれば其処に著者の原価管理に対する基本的配慮を示すものとして

此の様に管理は恒常数となり一方加工は恒常比率をとなる︒ 此の関係は準経費を恒常

数︑限界原価を恒常比率と呼んだのと同じ事になる︒従って準備経費は管理に関聯を持ち︑同じく恒常数となり︑

一方限界原価は加工と関聯を有し︑これ又同じく恒常比率となる︒故に限界概念は如何なる仮説的或は恣意的な取

(13) 

扱いに依るものではなく︑実質的︑物的事実に基いていると著者は強調した︒

著者は準備乃至固定費用を一期間の生産数量に関聯せしめず︑その販売数量に負担せしめ︑所謂期間原価

( U )  

︵ 宮 r io d

s t)

として取扱い︑かつ販売により利益実現とする販売主義を基礎としている︒換言すれば一期間の総限界

利 益

い ︵

S

M )

より差引くべきその期の費用として準備経費を差引き純利益を算出する方法を用い︑利益の実現を

生産活動

(p ro du ct io n b as i s )

より販売活動

( sa l e s b as i s ) 

! i d .  

結びつけて考察した︒この様な純利益を正しいものとする

事は販売主義に対する一つの有力なる解釈を示めすものとして評価しなければならぬ︒然しながら総限界利益と

(S

│ M

)

から準備経費 F を差引いて計算すると云う事の基礎的問題として︑一般に云はれる限界利益

(m ar gi na l in co me ) 

(15) 

の意味を考えねばならぬ︒限界利益の問題は所謂利益計画等の動態的問題の解決を目指す

co nt ri bu ti on th eo r 

1 1 .  

よって展開されたものと見るべきである︒即ち限界利益は固定費及びその純益にどれだけ貢献

( co n t ri b u ti o n )

したか

(12)

④ 然 し

II

加工'~限界原価或は直接原価の理論を展開した事は意義あるものと思う。

c o s t

v ,  

a r

i a

b l

e  

cost~

の関係概念について今少し論及されるべきでなかったかと思う︒そうする事によって直接原

限界原価計算の出発点︵末政︶

(3) 

と直接乃至限界原価の区分の問題に於いて︑固定費を準備経費として理論づけた所に第一の特色を見出さなければ

( 2 1 )  

ならない︒此の種の考へ方としては︑久保田博士による

生産体制の準備費

f l

f l

或は又同博士によって紹介されたラ

ウ ン の

生産準備の原価

f l

f l

(22) 

があり︑固定費を性格的分析したものと注目しなければならぬ︒

(2) 

を示すものであり︑限界利益

( m a r

g i n a

i n   l 8 

m e

)

の用語が著者に於いては︑

G r o

m a

r g

i n

乃 至

m a

r g

i n

s

或 は

t h

e

(16) 

s u

m   o

f   a

l l  

t h

e   c

o n

t r

i b

u t

i o

n

として

f f

用されている事によっても明らかであろう︒又

L .

V .

  W h

e e

l e

r

によれば

( 1 7 )  

C o

n t

r i

b u

t i

o r

y   m

a r

g i

n

としている事によっても知り得られる︒従って

c o

n t

r i

b u

t i

o n

t h

e o

r y

により展開された

( 1 8 )

1 9

)  

P r o f

i t  

V o

l u

m e

  r a t

i o  

(P /V  

r a

t i o )

乃至

C .

V .

  P .  

r e l a

t i o n

s h i p

s

に関聯を持つものとして限界原価計算の限界利益

も考えなければならぬ︒然し

p >

r

比率及び限界利益の問題も単に損益分岐点等の管理政策上の問題に止ず︑総限

界利益を期間牧益として︑それに対応すべき期間費用たるべきものとして準備経費を結びつけて純利益を出しよう

とした点は︑利益が販売によって最終的に実現すると云ふ販売主義によるものとした点は評価せねばならない︒又

( 2 0 )  

此の点が全体原価計算により損益分岐点を利用した場合と相違がある︒

この様に限界利益に関聯をもつものとしての限界原価と期間原価としての固定費との問題を考慮し︑固定費

( 8

  s t  

p r e p

a r e d

  t o  

p r o d

u c i n

g ) 或ほチャーチの生産能力原価

又固定費と限界原価或は直接原価の区分に関する物的基礎として︑経営準備ーー'管理ー│'固定費︑製造活動

一般に問題とされる経営費用論的た限界原価概念及び

d i f f

e r e n

t i a l

c o s t

i ,  

n c

r e

m e

n t

a l

  c o

s t ,  

d i r e

c t  

( c o s

t   m a

n u f a

c t u i

n g   c

a p a c

i t y )

 

(13)

限界原価計算の出発点︵末政︶

( 2 3 )  

価計算論者によって述べられている直接原価計算は変動原価計算

( va r i ab l e c os t i ng )

であると云う性質が明確にされ

準備経費を期間原価として総限界利益に賦課したのであるが︑準備経費を生産活動と販売活動とに区分する 5 

( 2 4 )  

問題即ち固定的製造間接費と固定的販売費の区分及びそれぞれの取扱いの相違等についてはふれないで︑両者の固

定費を同一に取扱っており︑そこに直接原価計算批判者によって指摘される問題がある︒両者の固定費の性格につ

いて論じ且それと期間原価︵百

r io d c os t )

との関係を論及して欲しかった︒

固定費と限界原価との区分方法の問題は限界利益及び準備乃至固定費が会計組織の中で体系的に取り上げら

れ て

お り

一般に云われる記帳技術的費目分離によるものと云わねばならぬ︑ そこに著者が又記帳される基礎資料

( 1 )

I bi d . ,  P. 2.   (2 )  l b id . , P. 4 .   (3 )  l b id , . P.   25 .  (4 )  I bi d

,   P. 5.  

(5) 

I bi d

,   P. 5.   (6 )  I bi d . ,  P. 6.   (7 )  A do lp h,  m at z,  "

ma rg in al   co st in g"

 

3 57 .   (8 ) 米国の文献では

N. A.   C.  A .  B u ll e t in ,  N o. 3 .   2   を初めとして直接原価計槃

( di r e ct c os t i ng ) として述ぺて居り私の知る 所では前記

Ad ol ph , M at z

"

Ma rg in al co st ng

"

が違っているだけである︒

(9 ) 本書の外に英国のものとして

G .

C .  Stone,' ^ 

Th e  p ro s  an d  cons

f  marginal costing"   o

(T he   co s At   cc ou nt an t  J an F eh   1948)及びW.E•

Ha rr is on , 

"

Th e  c on tr ib ut io n  of   marginal

  co st in g  t o  present

  ,  d ay r  p ob le ms

"

 ( Th e  c o st   Ac co un ta nt  

を重要視する点が了解される︒

(6) 

るのではなかろうか︒

一 八

参照

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