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[研究ノート] 持続可能な財政規範, 税率, 公債累 積

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[研究ノート] 持続可能な財政規範, 税率, 公債累

その他のタイトル [Note] Fiscal Sustainability, Sustainable Tax Rate and Public Debt

著者 村田 安雄

雑誌名 關西大學經済論集

44

4

ページ 643‑652

発行年 1994‑10‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/13745

(2)

643 

研究ノート

持続可能な財政規範,税率,公債累積

は じ め に

1.  持続可能な長期の財政規範 2.  持続可能税率の理論と算定

3.  公債累積と一次的余剰の持続可能経路 数学付録

は じ め に

公債累積に伴って,多くの国はその財政支出に占める公債利払いの増大に対して,長期 的な見地からの対策を立てる必要に迫られている。本稿はこの問題を第1節において論

, 持続可能性を保つ財政の条件を提示する。ついで第2節では, GDPに対する一括 税としての税率の, 持続可能な財政規範に整合するものを導出し, 持続可能税率と名付 ける。そしてこの税率を算定して, 現実の税率と比較検討する。以上の理論は主として Blanchard (1990)およびBlanchardChouraquiHagemannSartor(1990)に沿って 展開され, OECDの統計資料を活用して算定が行われる。最後に第3節は, Blanchard

(1984)に依拠しながら,対GDP比で表した公債累積と一次的余剰との動学体系を考え

て,持続可能な進行経路を追求する。

1.  持 続 可 能 な 長 期 の 財 政 規 範

いま連続時間の t時点における政府の予算制約式はつぎのように表現される。

=Gt―巧十rB, (1) 

ここに G,T、およびB,はそれぞれt時点における(移転支出を含む)政府支出,租 税収入および公債残高を示しており, rは瞬時的名目利子率で一定と想定される。 (1) 右辺が正値のとき,それは財政赤字額を示し,これを公債(公的債務の略称としての)の

(3)

644  闊西大學「純清論集』第44巻第4 (199410

増発によって賄い,逆に(1)式右辺が負値をとれば,既発行の公債をそれだけ償還すると いうのがこの式の意味である。

(1)式右辺の rB1を左辺へ移項し,両辺に指数関数 exp(rt)を乗ずると, 微分演算 を考慮して,次式が得られる。

d(B1 exp(rt)) 

dt  (G1‑T1)exp(rt)  (2) 

さらに(2)式を t0時点(現在)より将来の n時点まで積分して整理すると, (1)

の微分方程式の解として

(T1‑G1)exp(‑rt)dt十比exp(‑rn)=B (3)  の方程式が導出される。その意味は, 現在から n時点までの一次的余剰と n時点での 累積残高との現在価値総計が, 現存公債残禍に等しいということである。 もし nが無限 へ伸長されたときに, (3)式左辺の第2項が消滅するならば,つぎの関係が成立する。

T1exp(‑rt)dt=B+G1exp(rt)dt  (4)  すなわち,将来の全税収の現在価値は現存公債残高と将来の全政府支出の現在価値の合計 に一致する, という長期的な財政の基本原則を(4)式は含意している。これを持続可能な

(sustainable)財政規範と呼ぼう。そしてこの規範が充足されるための前提として,

lim exp(‑rn)=O (5) 

co 

とならなければならず,これは公債残高の増加率を名目利子率より低く抑えるように要求 する。従って,持続可能な財政規範はまた,公債累積の増加率を名目利子率より低く抑制 することに同値である。

2.  持 続 可 能 税 率 の 理 論 と 算 定

(1)式の関係を対GDP比の変数で表示するために, t時点の名目 GDPY1として,

gG1/Y1, ,1=T1/Y1,  b1=B1/Y1  (6)  の諸変数を定義する。 GDPの瞬時的物価上昇率を冗,実質 GDPの瞬時的成長率を(}

とし,これらのパラメータは一定であると想定しよう。名目 GDPの成長率がか十0 等しいこと,および

ddBt1  d  d= bt1  坊+bdY1 

tdt  (7) 

の微分公式を考慮に入れると, (1)式の両辺を切で除した式はつぎのように整理され

(4)

持続可能な財政規範,税率,公債累積(村田) 645 

=g,,,+(r一 冗 ー8)b, (8) 

(8)式は(1)式を対GDP比で表現したものである。 (8)式における変数 rb1, g1およ mの値を先進7カ国について掲載したものが, それぞれ表1,2および表3であ

いま実質利子率 (r‑冗)は実質成長率〇より大きいと想定して,

a== r一 冗 ー8(>O)  (9) 

と置き, (8)式についての解の方程式を, (3)式と同様に,下記のように導出できる。

炉—g,)exp(‑ot) dt+bn exp(‑on)=b. (10)  この場合の持続可能な財政規範は

r ,1  exp(‑ot)dt=b0+r g1 exp(‑ot)dt  の関係が成立することであり,換言すると,

lim bn exp(‑on)=O 

→⇔ 

(11) 

(12)  が成り立つことである。 (12)の条件は,公債残高の対 GDP比の増加率が0より低いこ

とを要請する。

(11)式において将来の税率を一定在に設定すると,それは持続可能な財政規範によっ て決定される税率であるので,「持続可能税率」と呼ばれて,

'*=o {b+r g, exp(‑ot) dt} 

(13) 

になる。さらに出が毎時 rの率で増加すると仮定すれば, (13)式の持続可能税率はつ ぎのように決まる。ただし r<oを想定する。

i-*=ob。+— g。o‑r  (14) 

2では先進7カ国の政府支出の対GDP比が掲載されていて, これは出に相当す る。いま日本の在を算定するため, g。の値として31.9 (1992年の日本の g,)をと

b。の値を68.2 (1991年度末の日本の b、)と置いて, (14)式によって五を算定し た結果が表4の左半分にまとめられているI)。全体的に g、の増加率 rが増えるにつれ て,在の値は大きくなって行くが, r=‑0.25彩と0.0彩の場合に日本の 26 34

1) b。の値は村田 (1994年)の表2から得られる。

(5)

1先進7カ国の公債利払いrb(対GDP彩) 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 

646 

スヤ国ダ均 ンリ イナの

ラタ

米日ドフイ英力 G

国本ツ

08395355  21217332  2.1  1.  2.  2.  7.4  3.4  4.0  2.5  2.  1.  2.3  2.1  7.8  3.1  4.2  2.  2.0  1.  2.4  2.1  7.4  3.  4.2  2.4  2.  1.0  2.4  2.1  7.6  2.  4.3  2.  2.  0.9  2.2  2.  8.4  2.4  4.8  2.3  2.1  0.5  2.1  2.4  9.  2.4  5.4  2.4  2.3  0.3  2.2  2.5  9.  2.1  5.5  2.5 

2.2  0.3  2.7  2.8  10.9  2.1  5.2  2.5  2先進7カ国の政府支出(公債利払いを除く)g(対GDP96)  1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 

米日ド

国本ツ スヤ国ダ均

ンリ イナの

ラタ

フイ英力 G

30.6  30.5  45.1  50.0  41.  41.  41.  35.8  31.  29.9  44.7  50.2  43.5  40.6  41.  35.9  31.  30.4  44.1  49.2  42.9  39.4  40.4  35.9  31.  30.9  44.3  48.8  42.8  37.6  39.3  35.7  30.5  30.6  43.9  47.9  42.  35.3  38.2  34.9  30.4  30.0  42.6  46.9  42.9  35.2  38.3  34.6  31.  31.  43.0  47.4  44.1  37.5  40.4  35.6  31.  31.1  46.3  48.1  43.9  38.7  43.6  36.5  32.9  31.  46.3  49.0  42.3  41.1  44.7  37.2  蛋耳汁憮﹁階肇酪惨﹂凜た囃濾4 (1994,¥10n)

[注]表1と表2OECDEconomic Outlook 54 (Dec. 1993)の統計から算定。

(6)

3先進7カ国の広義の租税収入m(対GDP96)  1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 

米日ド

国本ツ スヤ国ダ均 ンリ イ`ナの

ラタ

フイ英力 G

29.7  30.2  45.5  49.2  37.8  41.  38.5  34.  30.1  30.8  45.8  49.3  38.3  41.  38.5  35.1  30.2  31.  45.1  48.6  39.1  40.1  39.2  35.1  31.  32.6  44.8  49.0  39.3  39.4  39.7  35.7  30.5  33.1  44.1  48.3  39.6  39.0  40.0  35.4  30.9  33.4  44.9  47.8  41.  38.5  40.3  35.8  30.8  34.6  43.1  48.3  42.2  38.6  41.  36.0  30.  34.4  45.3  48.5  43.3  38.1  42.8  36.3 

30.6  32.9  46.4  47.9  43.  37.0  43.3  36.1  [注]出所はOECDEconomic Outlook 54 (Dec. 1993) 4持続可能税率

(96)  日本(b=68.296,g=31.9%) ドイツ(b=41.896,g=46.396) 

~,

‑0.25 0.00 0.25 0.50 ‑0.25 ‑0.10 0.00 0.10  茶常耳惹t蕊澤造葬滋量わ定抽渫︵f土田︶

1.0 

49 

2.  3.0  27 . 

69 22  31. 

32.6  33.3  33.9  43.2  37.8  36.8  64.5  43.9  40.3  37.5 42.5  42.0  44.0  44.9  46.1  46.7  47.1  47.6  51.  49.6  49.2 

647 

(7)

648  闊西大學「紙清論集」第44巻第4 (199410

形の範囲に在って (a=196 3彩に対して),これらの値は, 表3における mの日本の 実績値に大体同じであることが分かる。つぎにドイツの mを算定するため, g=46.3 (1992年のドイツの gt)b=41.8(1991年度末のドイツの b1)に置く。その算定さ れた値は表4の右半分に掲載されていて, r=‑0.25形 と 一0.1彩のときに,それらの和 の値は大体42% 46形の範囲内にあって, 表3でのドイツの mの実績に相当することが 分かる。以上の日本とドイツの持続可能税率の算定値が含意することは, 政府支出の対 GDP比出を今後は増大させないようにするか,少しづつ減少させるようにすれば,現 実の税率を持続可能税率に近似させることが出来るということである。両国共, もしgt が増大すれば,持続可能税率は現実の税率を超過することになるであろう。その他のG7 の国ぐにもすでに政府支出の対GDP比を一定とした場合の持続可能税率は, 現実の税 率より高くなってしまっている。

3.  公 債 累 積 と 一 次 的 余 剰 の 持 続 可 能 経 路 さて一次的余剰/GDP比を

Vt== ,,‑gt 

と表すので, (8)式はつぎのように書き換えられる。

db1 

‑=ob1‑v1  dt 

(15) 

(16)  この式は,公債/GDP比b1が一次的余剰/GDP比約との関わりにおいて変化するこ とを意味する。

他方, 一次的余剰/GDP比約がその必要水準るよりも低いならば, Vtを高くする ように財政当局は反応するであろうから,ある正値の調整係数を aとして,

dv1 

dt =a(v‑v1)  (a>o)  (17) 

の財政反応関数が妥当するであろう。 (17)式はもちろん約がるより大きい時には, v, を減少させるという財政当局の行動をも含意する2)

(17)式によって約が変動し,それに伴って b1は(16)式に従って変わる。これらの2 変数の変動状態を両者の位相図に描いたのが図1である。 (16)式左辺がゼロになるのは

=Vt (18) 

2) Blanchard (1984)は同様の反応関数を考えた。図1は彼の図を参考にして描かれて

いる。

(8)

持続可能な財政規範,税率,公債累積(村田) 649 

v, 

V  

‑ b   b, 

A' 

1 b,  とむの位相関係 が成立する線上であり,また(17)式左辺がゼロになるのは

= V (19) 

の線上である。これらの各線で区分される領域内では,それぞれ(16)式と(17)式に従って

約と btは増加または減少するのであり,それらの変化を組み合わせて,図1の矢印で示

された色んな運動経路が描かれる。それらの中で AEの経路と A'Eの経路は均衡点 (b, と約が共に不変になる) Eに収束するが,それ以外の経路はすべて,約については(19) 式の成立する状態へと近づきながら, btについてはゼロまたは無限大へと発散する。実 (17)式を解くと,

功 =v+(vo —v) exp(‑at)  (20) 

になって,約は時間がたつと iへ収束するが, (16)と(17)の微分方程式の解としての bt

Vv

b+ exp(‑at)(b。―5—危昇) exp(at)  になる3)。ただしb=v/aと置かれている。

(21)式右辺の第3項をみれば,初期値が

(21) 

Vv

‑=a+u  b0‑b  3)数学付録を参照。

(22) 

(9)

660  隅西大學「経清論集」第44巻第4 (199410

の状態を満たす場合にのみ,経路AEまたは A'Eに沿って運動が均衡点Eに向かうこ とが分かる。初期値が(22)を満たさない場合の経路はすべて不安定的である。従ってE

は鞍点 (saddlepoint)不安定性をもつ。

均衡点Eにおいては b,は

b=v/11  (23) 

に等しい。ところで任意の S時点において, (11)式と同様の, 持続可能な財政規範を満 たす式を求めると,次式になる。

b.=rv, exp(‑u(t‑s))dt .  (24) 

ここで約をると置けば, b.(23)5になる。従って 5は持続可能な公債/GDP を意味する。かくしてE点では,一次的余剰は必要水準に保持され, 公債/GDP比は持 続可能水準に在る。そのE点へ到達する経路に乗るためには, Vt.b, の初期値が(22) 状態を満たすようにすればよい。 . 

また AA'線より下方の領域から出発する経路は, すべてるを超過する方向へ進むの で,それらは持続可能な経路とは言えない。その反対側の (AA'線より上方の)領域か ら出発する経路のうち, iの水平線より上方の領域に在るものは, btが最終的にるより 小さくなり,約がるより大きいので,持続可能な経路と言うことができる。

(22)を満たした(21)式と(20)式から得られる次式

Vtv=(a+a)(b‑b) (25) 

AA'線を表し,この線より上方の領城内に btv、が在る場合には,

vv::2:(a+a)(b1b)  (26) 

が成立する。従って上記の持続可能経路に乗るためには, (26)の不等式と,

v1>v  (27) 

の不等式とが共に満たされるように,初期値b。と%を決めればよい。

数学付録

db1/dt=ob1v1  dv1/dt=a(v‑ の両式を行列表示すると,

 

[:::::]=[:口:][::]+[;;] ③ 

52 

(10)

持続可能な財政規範,税率,公債累積(村田)

である。その特解を {bp'Vp}と記せば,

[ : : ]  =  ‑ [ :  

=

l [ : V ]

=点[―

a: :   ] [ : i i ] = [ : ]  

651 

④  になる。ただし b=v/aである。

特性方程式

a)(x+a)=  の根は

功 =a(>O),  X2=‑a(<O) 

⑥ ⑥ 

であるので,鞍点解を持つことが分かる。各特性根に対応する特性ベクトルを {1, k;) おいて (i1, 2), 算定式

k; = (x;‑u)/(‑1)  ヘ⑥を代入すると,

k1=0, =a+u

を得る。かくして未定定数 C1C2を用いて,一般解は下記のように表される。

=v+(v0v) exp(‑at) 

̀  

b占 + 詞exp(‑at)+(b。-b-~exp(at) 

⑧ 

[::] = c1 [: }xp(at)+c2 [a:]exp(‑at)+[:] ⑨  最後に,⑨式にて t=Oと置けば,初期値b。と%を所与として,未定定数は

C2= (v0‑v)/(a+o) ⑩ 

C1=b‑b‑c2

に定まる。かくして一般解の最終形はつぎのようになる。

 

参考文献・資料

1Blanchard, 0. J.,  "Current  and Anticipated  Deficits,  Interest  Rates and  Economic Activity", European Economic Review 25 (1984), pp. 727. 

2Blanchard, 0. J., "Suggestions for a New Set of Fiscal  Indicators", OECD  Economics and Statistics Department Working Papers, No. 79,  1990. 

3Blanchard, 0. J.,  J. C.  Chouraqui, R. P.  Hagemann, and N.  Sartor,  "The  Sustainability of Fiscal Policy: New Answers to an Old Question", OECD  Economic Studies No. 15,  1990, pp. 736. 

53 

(11)

652  関西大學『経洞論集』第44巻第4 (199410

4〕村田安雄「前川リボートをめぐるISバランス論と公的債務」,関西大学「経済論集』.

第且巻 1994, pp,471483. 

(5〕OECD Economic Outlook 54, December 1993. 

参照

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