松 尾 寿 夫*
Resistance of partial discharge on contaminated surface by
Hisao Matsuo
(Electrical Engineering)
The contaminated surface is simulated by an electrolytic aqueous solution in which the point−
Plane electrodes are placed.
When the impulse voltage is applied to the electrodes, the partial discharge occurs at the point electrode and then grows in the direction of the plane electrode. Finally the flashover occurs when the two electrodes are bridged owing to. the partial discharge. It is considered that the partial discharge is considerably conductive.
Then the author has studied about the resistance of the partial discharge on the contaminated surface by means of measuring in detail the growth of the partial discharge using two photomu1−
tipliers.
】.まえがき
送電線のがいしは海岸に近い所では塩分によって,
工場地域では煙じんなどによって汚損される.このよ うな汚損がいしが霧,小雨などによって湿潤すると,が いしの表面に導電性の皮膜がでぎ,がいしの表面のも れ抵抗は著しく低下する.その結果がいしのフラッシ オーバ電圧は低下し,通常の送電電圧でもがいし連は フラッシオーパするようになり事故発生の原因となる.
ζのような観点から,・従来汚損湿潤したがいしをモ デル化した沿面を使用して,その放電特性についてい ろいろと研究されてきた.
著者は下面として電解質水溶液に針一平板電極を配 置した簡単なモデルを使用して,導電性三面における 放電現象について研究し℃きた1).
導電陸沿面において発生する局部放電は,かなり導 電性に富んでいると思われる.しかしどの程度の導電 性をもつものか判らない.そこで著者はSaxeおよび Meek2)が気中放電におけるリーダの導電性を検討す るのに用いたのと同様な方法で,すなわち光電子増倍 管によって局部放電の進展状態を観測することにより,
導電性沿面における局部放電の導電性について簡単に 検討した.
2.実験装置と実験方法
*電気工学科
本実験においては導電性二面として,Fig.1に示す・
ように長さ20cm,幅5cm,深さ3cmのベークラ イト製の箱に塩化カリウム水溶液を入れ,その中に二 一平板電極を配置したものを用いた. この箱の側面 の片側には局部放電の放射する光を透過する石英ガラ スをはめ込んだ.溶液の深さは常にlcmで濃度は 0,01Nとした.平板電極としては厚さ2mm9)銅板を,
針電極としては直径lmmのタングステン棒を用いた.
針電極は溶液面から約2mm離した.
§
め
藷/
<一一一一一一一 20cm
29
electrode
1cm 2mm
Aqueous solution of potassium chIoride
Fig.1Electrode arrangement.
Plane electrode
幅1mmのスリラトを有する光電子増倍管を針電 極の側面(PM1)および電極系上方(PM2)に:おいた.
PM1は固定されているが, PM2は針一平板電極間 の任意の位置に移動させることができる.針端で放電
が発生すると,その光をPM1によって検出し,シン クロスコープを掃引する.さらに局部放電が進展して PM2によって検出されるとシンクロスコープのブラ ウン管面上にパルスを生ずる.このPM2の位置を適 当に移動させることによって,局部放電の進展距離旦 とそこまで進展するに要する時間(進展時間)tとの 関係(£一t曲線)を求めることができる.
237.ちΩ Rs
284。7Ω 〆
0.1μF
Synch一 4.65Ω 「oscope
Contaminated surface
Synchro−
scope
Rs−0〜285.7Ω
Fig.2 Experimental circuit.
Fig.2は実験に使用した衝撃電圧発生回路である.
この回路で得られた波形は波頭一三0.3μ3,波尾長 40μsの急しゅん波形であった.印加電圧の極性はす べて正極性として針電極に印加した.
3.実験結果および検討
(1)光電子増倍管による局部放電の導電性の検討 まず針一平板間の距離旦gを10cmとして,17.4 kvの波高値をもった上記の急しゅん波を印加し,旦 一t曲線を求めた.次に£g=7cmとして各種の波 高値をもった電圧を印加して£一t曲線を求めた.
藷 鴫晶 彰 3
§
塁 慧 暫 餐 δ
7
6
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52,7Ω Rs翻0%一 202・3 { r一一人一一
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Resistivity of e玉ectrolytic solU面n
690〜710Ωcm
7
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3 4
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0
Rs−97.79 285.79 r一《一 一」一一一一一
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0
Fig.3
510152025
Time (μs)
(の
Development of partial discharge
(6−tcurves)
0
Fig.3
5 10 15 20 、 Time (μs)
(a)
Development of partial discharge.
(ゼ1−tcurves)
£g=7cmの場合は針電極に直列に 0,52.3,97.7,
202.3および 285.79の抵抗を接続した. これを Fig.3に示す.
電極間に電圧を印加すると,まず針電極に局部放電 が発生し,その後平板電極の方へ進展し,針一平板間 を橋絡するとフラッシオーバとなる.
皿g=7cmの丑一t曲線群のうち,局部放電が平板 電極から5cmの点まで進展した時の電圧の瞬時値が,
旦g二10cmで局部放電が同じく平板電極から5cmの点 まで進展した時の電圧の瞬時値に一致したものを各直 列抵抗値について求める.このようにして求めた旦g
=7cmの丑一t曲線群と£g=10cmの£一t曲線 との関係を示すとFig.4のようになる.この図にお いては皿g=・10cmの曲線の旦=5cmの点に皿g=
7cmの皿腐2cmの点を一致させてある.その時点で は皿g=10cmの場合も,旦g=7cmの場合も電極間
(直列抵抗Rsも含む)には同じ電圧がかかっている.
従ってFig.4では同じ時間tに対しては,両方とも フラッシオーバ近くまでは同じ電圧が電極間(直列抵 抗も含む)にかかっているとみられる.
局部放電先端と平板間の距離が同一であるとき,
Fig.4で任意の旦に対して,旦g=lOcmと旦g=7cm の局部放電の長さの差は3cmであるが,その3cm の部分の局部放電の抵抗が£g=7cmの直列抵抗で 等価的に表わされるならば,その部分の局部放電の抵 抗に等しい直列抵抗をもった豊g=7cmの旦一t曲線 は旦g=10cmの曲線に一致すると推定される.この ことを考慮すると,Fig.4から£g=10cmの針電極 から3cmの部分の抵抗は509程度であると推定さ れる.すなわち局部放電は高い導電性をもっているこ
とが判る.
10
8
3
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2
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〃1.
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彦g Rs Applied voltage
●10cm OΩ 17.4kv
;1;ii;i}一・
Resistivity of electrolytic SOlution
680〜77gΩcm
0 .5 10 15 20 25
Time (μs)
Fig.4 沼一t curves.
30 35
3
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8
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Resistivity of elec−
tr・lytiC s・luti・n
680〜730Ωcm
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£g Rs ApPlie(l voltage O8cm OΩ」 15.7kv
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00 5 10
Time (戸s)
15 20
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/ £g Rs Applied vo玉tage O8cm O 52 16.1kv む
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▽〃 285.7
Fig.5 4−t Curves.
以上は£g=10cmを基準にして旦g=7cmの曲線 を重ねたのであるが,丑g=8cmの曲線を基準にして
旦g=6cmの曲線を重ねると, Fig.5, Fig.6のよう になる.これらの図では基準になる旦g=8cmの場 合,異なった電圧を印加している.これらの図では 旦gの差は2cmであるが,やはりその部分の抵抗は 509以下と小さな値となっている.
Fig.3から判るように局部放電は進展初期すなわち その長さが短い間は三面の抵抗が直列抵抗に比べて充
5
Figl 6
10 15 T}me (μs)
4−tCurves.
20
分に大きいため直列抵抗の影響は小さいが,局部放電 がある程度進展するとその直列抵抗は大きく影響して くるものと思われる.従ってここで求めた抵抗値は局 部放電がある程度進展した状態での針電極付近の抵抗 値と考えられる.またToepler3)の式と考え合わせ
ると,局部放電の進展につれて針電極から3cm部分 の抵抗値は5α9前後の値をとるものと推定される.
(2)局部放電の抵抗値の近似計算
Toepler3)によると火花あるいはグロー放電の抵
抗値は実験的に次の式で与えられる. 。 豊K
(1)
R= ∫呂id・
ここで旦は放電部分の長さ,iは放電部分を通って 流れる電流,Kは定数(0.8〜8×10−2vsec/m)であ る.上式から判るように放電部分の抵抗はそれを通過 する電荷量に逆比例する.
この関係を本実験の場合に利用して局部放電の抵抗 を検討する.ただしこの場合次のような仮定を設ける.
(イ)局部放電が針一平板間を進展するとき,針電 極からの電流は局部放電を通って局部放電先端部分の みから溶液面に流入する.
(ロ)針電極から局部放電が進展する場合,微小距 離つつステップ状に進展する.
まず£一t曲線とそれに対応する電流波形を求める.
次に旦一t曲線において旦gをn等分し原点からの 距離を班,旦2,……,£」,……伽Q。=旦g)とす る.すなわち一つのステップの長さを旦glnとする.
旦一t曲線において£jに対するtの値をtjと する.局部放電はFig.7に太い折線で示すように進 展することになる.
1角
煮:
β!
0
Fig.7
tl t亭 t3
一冒一冒9・9一・・一@ 一tj _曹圏.一_.一_
Time.
Calculation of the resistance of partial discharge path.
恥=
p終審
従って放電部全体の抵抗Rは R−n轤PR、一K£gn∫ ・ j−l nj一・∫lfid・
(3)
(4)
t=t1のとき針電極から 旦=旦1の点まで局部放 電はステップし,t=t1からt=t2までの電流が局部 放電を通って流れる. 次にt=t2のとき局部放電は さらに丑2の点までステップし,t=t2か日t=t3ま での電流が流れる.同様にフラッシナーバ時まで考え ることができる.ここで」皿j=£」一£」一1=丑g/n の局部放電部分をフラッシオーバ時までに通過する電 荷量は
・・一∫llid・ (2)
この部分のフラッシオーバ直前での抵抗値を考えると
となる.
ここで£g=10cm, n=10としてRの値を求める と約12.2〜122.59となる. またn篇40とすると 12.6〜1269となる.
(3)式からも判るように局部放電のある部分の抵 抗はその部分が生じた直後ではかなり大きいが,進展 するにつれて次第に小さくなる.上記の場合針から 3cmの部分の抵抗値の時間的変化を求めると Fig.8 のようになる.ただし図中aは1〜IOである.この 図から判るように局部放電の進展につれて抵抗は急激 に減少しフラッシオーバ近くでは1〜lOρ と非常に 低い値となっている.
9
8
7
蔦6
乙
1・
4
3
2
1
B a軍1〜10
A:△ρ課lcln, n昌10 B:△躍昌0.25c吊, n 冨40
A
0
0 5 10 15
Time (μs)
Fig.8 Variation of the resistance of partial discharge 3cm in length from point electrode.
ここでは∠£」漏乏g/n=lcmおよびO.25cmの場合 について求めたが,実際には刀妬の値は丑の値によ って,すなわち局部放電先端の位置によって相違し,
放電路の写真から推定するに,恐らく2〜4mm以下 の値をとるのではないかと思われる.
(3)溶液の抵抗率の旦一t曲線に及ぼす影響 実験期間中の気温変化によって塩化カリウム水溶液 の抵抗率は幾分変化する.そこでこの抵抗率の変化が
£一t曲線に及ぼす影響について調べた.実験中の抵
抗率の変化はたかだか10%程度であるので,溶液の濃 度をかえてその抵抗率を土10%程度変化させ,丑g=
10cmとして£一t曲線を求めた.この結果をFig.9 に示す.この図から明らかに抵抗率のこの程度の変化 は旦一t曲線には殆んど影響しないことが判る.
10
8
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1・
著 聾 震 q 4・
2
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2
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/
/
〆
/ 獣瓢1誌
/ 1ぎ撫・珊
1△ 827〜840 〃
にToeplerの式から局部放電の抵抗を計算したが,
実験結果からも推定されたように,その値は非常に小 さいことが確かめられた.
本実験においては局部放電のインピーダンスを単に 直列抵抗によっておきかえたが,これはさらに詳しく 検討すべきである.しかし局部放電路に沿ってのイン ダクタンスおよび分布容量:については,印加衝撃電圧 の波頭においてはともかく波尾においてはその影響は 小さいと考えられる.従って本実験のように急しゅん 波印加の場合は,波頭部分の時間が非常に短いためそ の間に局部放電が進展する距離も短く,丑一t曲線に 及ぼす影響は小さいと考えられる.
またToeplerの式を使用するに当って簡単な仮定
(イ),(ロ)を設けたが,これらについては今後さらに 検討する必要がある.
終わりに,本実験をすすめるに当ってご援助を受け た前関東学院大学工学部故三田昇教授および九州工業 大学大重力教授ならびに実験に協力された当教室山口 和彦技官に感謝の意を表する.
0
Fip.9 510152025 Time (μs)
Effect of the resistivity of electrolytic solution on the development of partial d三scharge.
4.む す び
局部放電の導電性について光電子増倍管を使用する ことにより実験的に検討した.また簡単な仮定のもと
参考 文献
1) 松尾・ゆの木・大重・三田;電学誌,Vo1.89, p.1727 (昭44)
2)R.F. Saxe&J.M. Meek;Proc. IEE. Vo1.102,
Pt. C, p.221 (1955)
3) Antonios E. Vlast6s ;J. ApP1. Phys. Vol.40,
p.4752(1969)