過疎山村における高齢者を支える「つながり」の維 持と創出 : 浜松市佐久間町を事例として
著者 中條 曉仁
雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 人文・社会・自然科学
篇
号 65
ページ 17‑27
発行年 2015‑03
出版者 静岡大学教育学部
URL http://doi.org/10.14945/00009190
静 岡大学教 育学部研 究報告 (人文
社 会
自然 科学 篇)第65号
(20153)17〜 27 17
過疎山村における高齢者を支える「つなが り」の維持 と創出
―浜松市佐久間町を事例 として一
Theヽ
1』
ntaln and Crea■ on of Social Relaions of Elderly People in Depopulation Motmtalous Villages:The Case Sttldy of SaKtlma Town,Hamanttsu Ciけ中 條 暁 仁 Akihito NAKA」 O
(平
成 26年
10月2日 受理 )
1
問題の所在 と本稿の目的
現代の過疎 山村 は ,集 落の限界化や平成の大合併 1),経 済のグローバル化 な どに起因する地 域再編 によってさまざまな地域問題が生 じてお り ,住 民の多数 を占める高齢者の生活に大 きな 影響 を与 えている。
過疎 山村 をめ ぐる地域問題は大 きく
4つに区分 され
(岡橋 ,2004).高 齢者の生活 との関連 を付加すると ,次 の ように整理で きる。第 1は 「中心地域か らの遠隔性 Jで ある。一般 に過疎 地域は大都市か ら遠隔にあ り ,都 市 に転出 した子 どもの多い高齢者 にとって ,空 間的距離は老 親子関係 にさまざまな影響 をもた らしている。第
2は「人口の希薄 さと小規模社会 Jで ,過 疎 地域 は人口密度が低 く地域社会の規模 も小 さいため ,医 療や福祉 を中心 に施設立地は十分でな く ,サ ー ビスの供給に課題を抱 えている。 また ,公 共交通の縮小や撤退が相次 ぐなど ,個 人的
移動手段 を持たない高齢者の外 出にも制約 をもた らしている。第
3は「経済的衰退 と周辺化」で
,外部依存型の経済が不安定化する中で ,い わゆる「
6次産業化 Jな ど新 しい地域経済の担い手 として高齢者に期待が寄せ られている。第
4は「生態系空間の不安定化 Jで ,農 林業の低迷 に
伴 う農地や山林の荒廃が挙 げられ ,加 齢 に伴 う規模の縮小 はまぬがれないが ,高 齢者 に管理主 体の一翼 としての役書」 が求め られている。
過疎山村では ,集 落の限界化 により村落社会が伝統的に有 して きた地域的社会関係の弱体化 が懸念 されている。 さらに ,合 併か ら
10年を経た今 日において ,広 域合併 とは対照的に ,空 間
的に狭い範囲でのコミュニテイの重要性が高 まっている。地域住民の社会関係 を再編
再構築 す ることによつて ,生 活に必要な諸サービスの撤退や合併に伴 う行政サービスのス リム化 に対 応す る地域住民組織が生 まれている。近年
,こうした試みは「小 さな自治 Jあ るいは「小 さな 拠点」 として政策的にも進め られてお り
(国土交通省 ,2012),社 会経済や地域福祉 を内発的
に補完する取 り組み といえる。
本稿 は ,地 域的社会関係の総体 を「つなが り」 とよぶが, この社会関係は高齢者の生活 を支 えるサポー トの授受の基盤 となるものである。高齢者 にサポー トを付与せず とも ,サ ポー ト源 にな りうる地域的社会関係の創出が高齢者の生活 を支 える上で求め られているのである。後述 するように ,過 疎山村では村落社会 に根 ざした「つなが り Jを 維持することや ,そ れに代 わる
社会科教 育講座
OO
中 條 暁 仁
新たな「つなが り」 を創 出することが課題 になっている。特 に ,機 能剥奪が進む被合併山村 に おいては切実な問題 になっているといえよう。
そこで本稿 は ,過 疎山村の うち被合併山村 における集落の実態 をとらえた うえで ,高 齢者の
生活 を支 える「つなが り」 を維持あるいは創出す る取 り組み とその意義 を明 らかにす る。そ し て ,そ の「つなが り」の機能をあわせて検討す る。
2.浜
松市佐久間町の地域概観
本稿 は
,「平成の大合併」により過疎山村 を含む広域 な中山間地域 を編入 し政令指定市 となっ た浜松市 に注 目した。その中で も ,被 合併 山村 で高齢化が特 に高 く
(2010年時点で 47%),
地域住民が高齢化 に対応 した取 り組みを展開す る天竜区佐久間町 (l日 磐田郡佐久間町 )を 対象 地域 に取 り上げた。
佐久間町
(図 1)は,浜 松市 中区な どの中心市街地か ら北西へ直線距離で約 50km,天 竜区 の中心集落である二俣か らは約
30kmの距離 に位置す る。天竜川 の本流 とその支流の大手瀬川 と相川 ,水 窪川の流域 を占める山村で ,北 遠山地の西部 に位置する。天竜川本流 は蛇行 しなが ら町内を北西か ら南東方向に流れ ,支 流の大千瀬川や相川はほぼ西か ら東へ ,水 窪川はほ↓ 詞ヒ か ら南へ本流 に流れ込んでいる。同町は赤石山脈 に連なる山地か ら成立 してお り ,山 地高度は 矢岳 山
(926m)や愛宕 山
(800m)などが最 も高 く ,標 高
500〜600mの山地が連 なっている。
山林面積が町域の
90%を占め
,30度を超 える傾斜面で構成 されている。 この広い山地の中に
,中央構造線 などの断層帯や河川の浸食 ・堆積作用 によって平地や緩斜面が形成 され ,集 落が立 地 している。
佐久間町は
,2007年に「平成の大合併」によつて旧磐田郡 4町 村 とともに浜松市 に編入合併 され ,旧 天竜市 とともに浜松市天竜区を構成 している。そ もそ も平成の大合併以前の旧佐久間 町 は佐久間ダムが完成す る直前の
1956年に旧浦川町
,I日佐久問村 ,旧 山香村 ,旧 城西村の
4町図
1
浜松市佐久間町の概観過疎山村 における高齢者 を支える「つなが りJの維持 と倉1出
村が合併 して成立 した。 この昭和の大合併 には ,ダ ムと発電所の建設 により佐久問町に入 る巨 額の固定資産税収入が大 きく影響 した といわれている
(町村編
,211116)。前述す るように佐久間町 と愛知県豊根村の境界 には
,1956年に完成 した佐久間ダムが立地 し ている。 このダムは政府出資で設立 された電源開発会社が
1953年に最初 に着工 したダムであっ た。佐久間発電所の最大 出力 は
35万キロワッ トで ,堰 堤の高 さは 1555m,堰 堤長
2935mに及 ぶ もので当時の最新土木技術 を導入 して建設 された。
3 集落の小規模・高齢化と「限界化」
ここでは ,佐 久間町における各集落の立地特性 と人口面に注 目して ,そ の変動を検討する。
特に ,集 落人口に占める
65歳以上人口の割合 を示す高齢化率や構成世帯数 ,人 口増減率
,1世帯当た り人員の変動を分析する。
佐久間町に分布する諸集落は ,天 竜川とその支流沿いの谷底平野に多 く立地 している。支流 の大千瀬川には浦川地区の中心集落である柏古瀬や町 ,本 流沿いには佐久間地区の中心集落で ある中部や佐久問 ,山 香地区のそれにあたる大滝や大輪 ,城 西地区は水窪川沿いに芋堀が立地 する。 しかし ,全 般的に河川は峡谷状をなし ,平 地に乏しいことから高位緩斜面上にも集落が 点在する。これら標高の高位集落の大部分は水窪川流域にみられ ,佐 久問地区の羽ヶ庄
550mを最高に ,峯 の4110m,山 香地区の野田460mと 続 く。高位集落の多 くは ,南 向き緩斜面の山腹 地すべ り 1生 斜面に立地しているのが特徴である。
次に ,高 齢イヒ率の実態を確認する
(図 2)。佐久間町には
37集落が存在するが
,このうち高 齢化率が
50%を超えるのは浦川地区で
13集落中
9集落 ,佐 久間地区で
8集落中
5集落 ,山 香地 区で
11集落中
8集落 ,城 西地区で
5集落中
1集落ある。最 も高いのは和山間の
100%であり
,〆 ´
〆
図
2
次いで地人 の
800%,神妻
762%と続 く。 こうした高齢化率の高い集落は
,従来は中心性の低い縁辺集落に分布す
る傾向にあったが ,現 在では幹線道路
沿いの集落において も多 くみ られるの が特徴である。高齢化が全域 に進んで いることを示 している。
集落 を構 成す る世帯数 につい て
, 1960年と
2010年の数値 を比較 しなが ら 検討す る。それによると ,す べての集 落において世帯数が減少 し ,山 香地区 と城西地区で顕著である。中には
3分の 1あ るいは
4分の 1に まで減少 して いる集落 も多 く存在する。 しか し ,高
齢化が顕著 に進みなが らも世帯数の減 少が僅かに抑 えられている集落 も存在 す る。例 えば ,沢 上集落 は
684%と極 浜松市佐久間日
]こおける集落の高齢化率と構成世帯数
めて高い高齢化率であ りなが ら ,世 帯
資料:浜松市住民基本台帳を基に作成 数 は16から14に 減 少 す るの み で あ り,
儘
19
●50嘲上 瘍
40〜
50%か の 卜Ю%獅 030%締
世帯数(戸)
繹 l酢
20 中 條 暁 仁
小 田敷 集落で は■
0%で
あ る が10世帯 しか減少 していない。いずれ も縁辺 に位置す る小規 模集落であるが
,住
民が高齢化 しなが らも生活 を維持 して い る実態が窺 える。各集落 に おいて高齢者 のみの世帯が総 世帯数 に占める割合 をみる と,
20%台が2集落,30%台が
9
集落,40%台が10集 落,50%
台が10集 落,60%台が5集落,
70%台
が 1集落,100%が
1集落である。縁辺集落のみな らず
,中
心集落 にお ける高齢 者世帯の増加が顕著 になって い ることも特筆 される。続いて
,高
齢化率 と1世帯あた りの平均世帯 人員 との関 係 を検討す る (図 3)。 平均世帯人員 をみる と
,大
部分 の集落で20〜 30人
未満 に該 当 している。高齢化率 も40%を超 えてい る集落が多い ことか ら
,高
齢夫婦世帯 か高齢単 身世帯が多 くなって い るこ とが推測 され る。 また,縁
辺集落 には20人
未満 で高齢化率 の高い集落がみ られ るな ど,世帯 の小規模 と高齢化 が顕著 に進 んでいることが わか る。世帯人員の縮小 は
,高
齢者の生活に不可欠 な世帯 内でのサポー ト源の減少 を意味 してお り
,言
い換 えれば世帯内でのサポー トの授 受が行 われに くくなってい ることを意味 してい る。最後 に
,各
集落の人口増減率 を1960〜2010年 にお ける50年 間のデータか ら確認す る。 これに よる と,す
べての集落で50%以上 の人口減少がみ られ,縁
辺集落では70%以上が減少 している。い くつかの集落では
,90%以
上 に達 している。 こうした集落 に対 しては「 限界集落Jと して間 題視 され る傾 向 にあるが2),50年
を経た今 日において も集落が存続 している とい う事実 に注 目 すべ きであろ う。4 高齢者をめ ぐる地域的社会関係 とサポー トの授受
(1)サ
ポー トの機能 と特性ここで は
,本
稿 で地域的社会関係 を重視す る根拠 を提示す る。筆者 は,高
齢者が 自立 した生 活 を維持す る要素 として,高
齢者 とサポー ト源が構築す る社 会関係 を基盤 に授受 されるサポートを指摘 した (中條,2007)。
具体 的 には,「手段 的サ ポー トJと「情緒的サ ポー ト
Jが
ある。前者 は 日常生活 にお ける手 伝 いやお使 い,風
邪 で寝込 んで しまった ときの一時的 な看病 な ど高齢者 に対す る物理 的なサ ポー トであ り,後
者 は話 し相手や相談相手 になるな ど精神的なサポー トである。前者 は高齢者 との対面接触 を必要 とす るため,高
齢者 とサポー ト源 との空 間的距離がサポー トの授受 に影響 を及 ぼす。一方,後
者 は電話や メール,手
紙 な どの通信手段 によって も対応が可能であるため,●
50%l・・
040〜
50%搬030〜
40%締 030%締平均世帯規模 ひ
0‑30,4
じ弓天 蘇満
図
3
浜松市佐久FB5町
にお ける集落の平均世帯規模 と高齢化率 資料 :浜松市住民基本台帳を基に作成●
・
● ●
桑
●
過疎山村 における高齢者 を支 える「つなが り」の維持 と創 出
対面接触 を必ず しも必要 としない。 さらに ,高 齢者の生 きがいや居住継続の志向に関わるもの であ り ,高 齢者の生活にとって重要 な要素 となっている。 しか し ,両 者 を比較す ると
,日常生 活の遂行 に直接かかわると考えられるのは「手段 的サポー ト Jで ある。
(2)集
落の限界化とサポー トネ ッ トワークの空洞化
図4は
,農
山村 にお け るイ ンフ ォニマ ル なサ ポー ト源 のネ ッ トヮー クを,各
サポー ト源の空 間的位置 と加齢 に伴 うサポー トの授受の変化 に則 し て示 した模式図である
(中條
,2003)。高齢者 か らの空間的距離が遠いサポー ト源ほど社会関係の 構築力功口 齢 によって希薄化 し ,サ ポー トの授受が 行われに くくなる。過疎地域では子 どもと別居す る高齢者が多いが ,老 親子関係 は加齢に関わ らず 維持 されるのでサポー トは授受 される。ただ し
,老親子関係の空間的距離によってサポー トの授受 にかかる頻度や質が左右 される。一方 ,高 齢者 が
居住す る近隣圏域 に存在す る近隣者 は ,加 齢 に関 わ らず強い紐帯で結 ばれやすい。近隣者の中で も 高齢者宅か ら可視範囲にある隣戸 は ,高 齢者の 日 常生活 を見守る機能 を担い ,最 も安定 したサポー ト源 としてサポー トネッ トヮークの要 と位置づけ られる。
しか しなが ら ,過 疎地域で進む集落の限界化 は サポー トネッ トワークに空洞化 をもた らしている。
高齢者世帯の増加 とそれに伴 う社会関係の希薄化 は ,近 隣におけるサポー トの授受 を停滞 させ る。世帯規模の縮小 とも相 まって, 自己の世帯内 でのサポー トの授受が困難な高齢者世帯 に ,他 の世帯 をサポー トするだけの余裕があるとは考 えに くい。高齢者 だけで対応が難 しくなれば ,そ の解決のために別居子や近隣 とい ったイ ン フォーマルなサポー ト源 ,あ るいはフォーマルなサポー ト源を頼 りにせ ざるを得な くなる。 し か し ,別 居子のサポー トは空間的要因か ら限界が伴 うことに加 え, フォーマルなサポー ト源 も 前述のように需要密度の小 ささや社会保障費の削減 により十分 なサポー トを供給で きず ,そ れ への依存は困難である。
このようなサポー ト源の空洞化 を補完す る新たなサポー ト源 として注 目されるのが ,住 民参 加の地域福祉活動である。 この住民参加の地域福祉活動組織の特徴 は ,サ ポー トの授受が近隣 関係ではな く空間的に広い活動範囲を有 した社会福祉協議会や住民組織 によってお
U度化 され
,必ず しも相手 を居住集落の住民 に特定 しない点にある。 これによ り高齢者に近接す るサポー ト 源が増加 し ,集 落におけるサポー トネッ トヮークの空洞化 を補完することが期待 されるのであ る。
本 稿で取 り上 げる「 つなが り」 は
,サ
ポー トを授受す る基盤 となる地域的社会 関係 の ことで あ り,サ
ポー ト源 を創 出す る地域 的基盤 と言い換 えることがで きる。高齢者 にサポー トを授受つ 4
‥……‥‥‥…
加齢に影響されない安定した社会関係
――――――――
加齢により変化の生じる選択的社会関係
―――――――
サポート源相互の連携
◎ 高齢者
oサ
ポート源□ 高齢者に関与する組織
図
4
過疎 山村 におけるイ ンフ ォーマル な サ ポー ト源のネ ッ トワーク資料 :中 條 (21X13.p994)を 一部改変
つ 4 つ
4 中 條 暁 仁
せず とも ,サ ポー ト源 にな りうる地域的社会関係の維持や
ell出が過疎山村 の生活問題に対応す るために求め られているのである。
5
高齢者と地域住民による「つなが り」の維持と創出
(1)佐 久間口
]こおける小地域福祉活動の取 り組み
ここで は ,高 齢者 と地域住民 に よる
「つ なが り」の維持や創 出の実態 を明 ら かにす る。
佐久間町では ,高 齢者相互の地域的社 会関係 を維持 ・創 出す るために ,佐 久間 地区社会福祉協議会の働 きかけによって 小地域福祉活動が実践 されている。 これ は通称「サロン活動」 ともよばれ ,高 齢 者 と支援者が 1つ の場所 に寄 り集 まるこ
とで, 自己の社会関係 を補完 した り ,新
たに作 り出す ことなどを目指 している。
町内には
15サロンが分布 し ,空 間単位
別にみると集落が
12,それよりも大 きな 地区は 1,複 数の集落が共同で 1つ のサ ロンを運営する形態が 1つ みられる。図
5のように ,構 成人員 は数十人〜
600人を超 えるものまで多様である。高齢化率 の高い集落で多 く形成 されているのが特
徴 といえよう。開催頻度は,年
に数回から月に数回まで幅がある。活動内容は,
構成員が相互 に雑談 した り ,社 会福祉協議会が開講する研修 を実施するな ど ,高 齢者 が相互に 意思疎通 を図ることがで きる活動 となっている。
(2)「
吉沢 しゃくなげ会」にみる「つなが り」 とその機能
(i)集 落構成世帯と既存の「つなが り」の実態
ここでは ,佐 久間町吉沢集落で活動す る「吉沢 しゃ くなげ会」 を取 り上 げ ,集 落における既 存のつなが りや新たに創 出されるつなが り ,お よびそれ らの機能の実態 を提示する。
まず ,同 会が存在す る吉沢集落における既存のつなが りの実態 をみてお く。同集落は佐久間 町浦川地区にあ り ,地 区中心の
JR飯田線 ・浦川駅か ら約 8kmの 距離 にある縁辺集落である。
吉沢集落は相川 ・河内・ 西・東
深造 とい う
5つの組か ら構成 され ,集 落 を流れる相川 に沿っ て疎塊村 の形態 をとってい る。 これ らの組 は吉沢集落 を構成する小集落であ り
, 1〜2kmの間隔 を置いて分布する。
2010年
時点での高齢イヒ率は
750%,平均世帯人員 は17人 で ,高 齢イヒと世帯の小規模化が進ん でいる。表
1から ,集 落構成世帯の概要 を確認する。各組 とも
5世帯以下で
,70〜80歳代 の高 齢者 を中心 に単身世帯あるいは夫婦世帯で構成 されている。相川 。河内・西・東の各組 には
,図
5
佐久 間町における小地域福祉活動の分布 資料 :佐久間地区社会福祉協議会資料過疎山村 における高齢者 を支 える「つなが り」の維持 と創出
表
1
佐久間町吉沢集落構成世帯の概要組
帯 世 番 世 帯
人 員
第 1世 代
男 性 女 性
第 2世 代 男 性
女性
老 親 が最 も よ く交 流 して い る
別
1居子 の所 在 地
嚇嗽栞 の 用 保 車 有
相 川組
1
3人
800晨業
)●
(無) 46(農業
) 同 居有 一 無
1人
80(無)長男 :日 浜松市 〈 週 1回 程度
) 来 訪河 内組
3
1人
84(無)長 男 :日 浜 松 市
(週1日 程 度
) 来 訪5
1人
80(農業
)長 男 :口 静 岡市 (年 3日 程 度
) 来 訪2人
88(無) 86(無 )長 女 :東 栄 町
(通1回 以 上
) 来 訪無 有 有 6
7 人 人
50(自 営
) 47(自営
) 同 居長 男 :豊 橋 市
(週1回 程 度
) .IF.5西 組
8
1人
征¨長 男 :浜 北 市
(週1回 程 度
)訪
F.l有
9
1人
任^長 女 :浜 北 市
(週1回 程 度
) 来 訪無
4人
89(無)81(無) 76(主
婦
)霊ヽ
同 居
有 3人
80(湊業
) 75(主婦
)長 男 :口 浜松 市
(毎日
) 来 訪有
122人
84(無) 80(主婦
)長 女
:勤‖市
(通1回 以 上
)訪
F.5 有東 組
13
3人
90(無) 84傷業
) 50(農業
) 同 居 有14
151人 1人
80(農
業
)81(無)
長 男 :磐 田市 (■数 回
) 訪 問 有長 男 :日 浜
│ヒ市 〈 週 1日 程 度
) 来 訪16
1人
任ヽ長 女
:勤1市
(週1回 以 上
) 訪 閻 無深 融
17
1人
1人
62(陶
芸家
)有
18 65(無)
有
り
1年
8第
2世代 に該当する同居子のいる世帯 も存在する。そ して ,最 もよ く通 う別居子の所在地 をみ ると ,旧 浜松市 と旧浜北市が
3人で最 も多 く ,愛 知県豊川市
2人,静 岡市や愛知県豊橋市 ,同
東栄町 ,磐 田市が各
1人などとなっている。別居子の老親宅への「来訪」頻度は週 1回 程度が 最 も多 く ,場 合 によっては老親か ら別居子宅へ「訪問 Jし ている。乗用車の保有状況 をみると
,保有 しない世帯が 7,保 有する世帯が
11あった。保有 しない世帯 はいずれ も女性高齢者の単身 世帯であることが多 く ,性 差 による移動の制約が存在 していることがわかる。
次に ,村 落社会の活動状況 を確認 してお く。 自治会の寄 り合 い としての組長会 は2ヵ 月に
1回開催 されている。近年は ,自 治会費が合併により年間328万 円か ら
8万円にまで削減 される な ど ,施 設管理経費の捻 出が課題 となっている。農作業 における労力交換 は組が基本単位 と なっているが ,農 作業 に耐 えうる住民が出役 して田植 と稲刈 りを手伝 っている。氏神 として八 坂神社があ り, 8月
25日の祭礼 と元 日の初詣のみ神事が執 り行 われている。社殿の補修の際に は入会林の材木の売却益
250万円を費用 に充て ,管 理 を継続 している。そ して ,高 齢集落にお いて重要なのが葬式組である。組 ごとに組織 されてお り ,葬 儀 の際は担い手の高齢イヒゆえに別 居子が帰省 して老親に代わつて運営 している場合が多い。特筆 されるのは ,別 居子 には葬儀 に 関す る知識や経験が少 ないため ,予 め葬儀の運営 に関す るマニュアルが作成 されている点であ る。講集団は庚 申講・秋葉講などが存在するが
,トウヤ
(当家 )の 輸番制に限界が生 じ
,m05年頃か ら体止 されている。
GD「
つなが り」の維持・創出とその機能
「吉沢 しゃ くなげ会」 は ,吉 沢集落 に居住す る高齢者が構成員 となっている小地域福祉活動 組織である。高齢者中心の集落 となっているため
,17名の会員で構成 される同会は実質的に集 落活動の中心的担い手 となっている。
活動 は毎月第
2・第
4木曜 日に行われてお り ,集 落中心部にある旧吉沢小学機校舎の教室で
23皓
・ 蜀 営
>
自
農
24
中 條 暁 仁実施 されている。昼食 をはさんで
9時か ら
17時まで ,集 落の課題 を話 し合 った り ,社 会福祉協 議会か ら派遣 される講師の講話 を聴いた り , レクリエーシ ョンや雑談などをして過 ごす。会の 運営 には ,愛 知県豊橋市か ら
Iターンした世帯番号 7(65歳 ′男性 )の 会員が重要な役書
Jを果 た してお り ,会 場か ら遠距離 にある会員 を自動車で送迎 した り ,昼 食の弁当を約
8km離れた 愛知県東栄町の仕 出 し店へ受け IFTり に行 くなどしている。昼食時には男性会長
(世帯番号
11)が味噌汁 を振 る舞い ,参 加者はこれ を楽 しみに しているとい う 3)。 また年
3回(6月 ・
12月・
1月 )の 頻度で ,東 栄町内の料理店で懇親会 を開いている。
その他の活動 としては ,夏 季 を中心 に「道普請」 とよばれる道路や山道の清掃や補修作業 を 実施 した り
,月1回 の公立佐久 間病院か らの巡回診療 り を受 け入れるなどしている。特 に道 普請では ,男 性会員が大雨で損壊 した沢の橋 を修理 した り山水 を引 き込む水道管の補修作業 を するなど , 自己の可能な範囲で対応 している。 また緊急時のサポー トに関 して も申 し合わせが で きてお り ,連 絡 をとるべ き別居子の連絡先や対応 にあたる集落住民 も予め決めている 5)。
このように ,高 齢者組織の形成 と活動が村落社会のつなが りを維持あるいは創 出 してお り
,それが行政への依存を極力抑 えなが ら集落の力で対応す る能力 を生みだ していた。 しか し ,高
齢者 は加齢 による心身の変化 に直面す る存在であるため ,中 長期的に現状が維持 されるとは考 えに くい。現 に ,葬 儀の運営に関 しては別居子 とい う集落外のサポー ト源の支援 を受けている 例か らもそれが窺 える。
(3)「
がんばらまいか佐久間」の形成と機能
佐久 間町では
,2005年に「住民 まるごと参加型NPO」 をス ローガ ンに掲 げた特定非営利活 動法人「がんば らまいか佐久 間」が設立 された。 NPO設 立 に向けた動 きが本格化 したのは
,旧佐久間町 と浜松市 との合併協定書調印式が終了 した
2004年12月以降である。 これは ,佐 久間 町における政治・行政指導者層によって進め られた。
組織の設立は ,旧 佐久間町が従来担 って きた役割の一部 を
NPOが担 うことを意図 している。
会員数 は
2010年時点で
1,490世帯
, 1世帯 当た り
1,200円を年会費 として納入 してい る。図
6のように ,が んばらまいか佐久間では ,理 事会 ,事 務局 と
7つの活動委員会か ら構成 されている。
7つ
の活動委員会 は ,総 務委員会 ,保 健
福祉活動委員会 ,地 域お こし活動委員会 ,文 化
ス
ポーツ・社会教育活動委員会 ,環 境づ くり活動委員会 ,女 性活動委員会 ,世 代間交流活動委員
会 であ り,そ
れぞれ に活動会員 とよばれ る会 員 が あ わせ て約100人 所属 してい る。
各委員会 でのイベ ン トの実施が 中心的活動 であるが
,特
徴 的な取 り組 み と してデマ ン ド 型 タクシー と食堂の運 営が挙 げ られる。前者 は, NPOタ ク シ ー 運営委員会 の活動会員が 脚 認 嘩
:委
員 会│コ
艶 有働 國 蜂 業の運営「欧宅 ロ ー
輸
「フェスタ佐久剛 と「新そぼまつり」の 0画
実施
裳 電 群 ヒ
t{Z組鵜 罐 姉
図
6「
がんばらまいか佐久間」の組織図 資料:NPO法
人「がんばらまいか佐久間」資料囲 園 闇 固
過疎山村 における高齢者 を支 える「つなが り」の維持 と創 出
担 い手 となって2007年 に2両の タ クシーで活動が始 ま り
,前
日までに予約 をす ればサー ビス を受 ける ことが可能である。料金 は初乗 り
15kmま で が
311Cl円
で,それ 以 降2kmご
と に500円 が 加 算 され る システムである。2010年 度利用実 績 で,年間6,728件 あ り,月
平 均 561件 とな る。 一 方,後者 は:日役場 の近所 に店舗 を2007年 に開設 し,
自家栽培 の ソバ を女性活動委員会 が使 つて商品 を提供 してい る。 同 委員会の メンバ ーが
1日
あた り3
名,時
給500円 で6時
間従事 して い る。その他,食
堂で は農産物加 工 品等 の販売 と,町
内在住 の単身 高齢者 を招待 して食事会 を開 くな どしてい る。 タクシーや食堂の運 営 に関 しては,地
域住民 たる活動 会員 に対 して雇用 を創 出す る という意義 も見 出せ る。
ところで ,が んばらまいか佐久問への加入率
(図 7)をみると ,縁 辺集落 を中心 に加入率が 高 くなっていることがわかる。反対 に加入率が低いのは ,幹 線道路 に面 した世帯数の大 きな集 落である。 これ らの集落は ,各 種施設へのアクセスが比較的容易である。がんば らまいか佐久 間の福祉的活動 は今の ところタクシー事業 にとどまるが ,移 動手段 の確保 という面で加入 して いる世帯が多い ものと推測 される。また ,縁 辺集落では自己の集落で対応が立ち行かな くなっ た場合 を想定 して
,「安心感 Jを 得 るために加入が進 んでいるとも解釈で きる。小規模・高齢 化の進む集落において ,現 在は個人や地域社会による対応が可能であって もいずれそれが困難
にな り, より大 きな地域組織 による新たな対応 を期待 していると考えられる。
6
おわ りに
本稿 は ,地 域的社会関係の総体 を「つなが り
Jとよび ,そ のつなが りの維持や創出を目指 し た取 り組みの機能 と意義を ,過 疎山村であ り被合併山村で もある浜松市佐久問町の事例か ら明
らか にした。
過疎 山村では高齢者の生活問題が深刻化 してお り ,集 落の限界化 も加わつて ,村 落社会が伝 統的に維持 して きた地域的社会関係の弱体化が懸念 されている。この地域的社会関係は ,高 齢 者の生活 を支 えるサポー トの授受の基盤 となるものである。た とえ高齢者 にサポー トを付与せ ず とも ,サ ポー ト源にな りうる地域的社会関係の倉」出が現代の過疎 山村 に求め られている課題 である。 とりわけ ,機 能剥奪が進む被合併山村においては重要 な問題 となっている。
対象地域である浜松市佐久間町では ,集 落の小規模 ・高齢化が著 しく進み ,集 落での社会関
嘔 予
25
rが
んばらまいか佐久間J
加入率 (%)050%未
満C)50〜
60%未満∈)60〜フ0%未満
070〜
80%未満薇 80〜90%未満
●
9006以
上 世帯数 炉)鞣 l[1停
‑ b
図 7「 がんばらまいか佐久間」の集落別加入率
資料
:NPO法
人「がんばらまいか佐久間」資料26
中 條 暁 仁係が希薄化 していることが想定 される。 こうした変化 を受けて佐久間地区社会福祉協議会では
,集落 における社会関係 を維持あるいは槍
J出するために「 サロン活動」 とよばれる小地域福祉活 動 を展 開 し ,事 例の吉沢集落では既存の村落社会関係がサ ロン活動 に代春・再構築 され ,社 会 関係 の強イヒが図 られていた。 しか し ,高 齢者 は加齢 による心身の変化 に直面す る存在であるた め, 中長期的な現状の維持が課題 となっている。佐久間町では ,浜 松市 との合併後 に旧町域規 模 で地域 ガバナンス を担 う NPO組 織が形成 されてお り ,そ の活動の展開に期待が寄せ られて いる。 NPO加 入の地域差 をみると ,小 規模・高齢化の進む縁辺集落で加入率が高 くなってお り
,自己の集落で対応が立ち行かな くなった場合 を想定 して「安心感」 を得 るために加入が進んで いる と考えられる。
浜松市佐久間町では ,集 落 レベルや町域 レベルで助 け合いの構造がみ られた。いつかは自分 もお世話 になるという互酬的意識があるもの と思われ ,地 域社会 に「つなが り」が成 り立 って いることが背景にあると考 えられる。鳥越 (2008)で は ,他 者が困っている際に支援 を与える とい う行動 について ,短 期 の見返 りは求めないが ,い つかは自分のところに利益が戻 って くる と期待 しているとい う。本稿では
,「つなが り」 としての地域的社会関係がそもそ も構築 され る地域 的基盤にまで考察が及ばなかった。 この点は今後 の課題である。
総務省 (2011)に よれば
,2012年時点で高齢化率力も 0%以 上の集落は
,全国の過疎地域 鈍
954集落中
9,516集落
(全体比 147%)に のぼる。これらの集落では地域活動を単独で維 持することは困難とされ
,このうち今後
10年以内に消滅する集落は中四国地方 と東北地方 を中心に
454集落 ,い ずれ消滅すると長期的に予測される集落は
2,342集落にのぼるとされ ている。このうち ,静 岡県を含む中部地方は中四国地方と東北地方に次いで多 く ,前 者に 含 まれるのは関集落 ,後 者は
265集落に達する。
2)限
界集落に関 しては中條 (2011)で 問題 を整理 しているので ,参 照 されたい。
3)会
の
i 3営に必要な経費
(公共料金やお茶代等)は 年
12,000円の年会費か ら支出されているが
,弁当代 は別途
500円集め られている。高齢者 にとつて
,月 2回出席すれば弁当代 は
1,000円とな り ,会 費 を合 わせ ると月に
2,000円の支 出 となるが ,特 に不満 を申 し立てる人はない とυヽう。
4)公
立佐久間病院の巡回診療 には同病院に勤務する研修医が参加 し ,過 疎地域医療 に関する 研修 を重ねているという。
5)対 応 にあたる集落住民は ,乗 用車 を保有する人が担当 している。
文献
岡橋秀典 (2004):過疎山村の変貌
中俣
均編 『国土空間と地域社会』朝倉書店,pp l10‑136 総務省
(2011):『過疎地域等 における集落の状況に関する現状把握調査結果』総務省地域力創
造 グループ過疎対策室
鳥越皓之
(2008):『サザエさん的コミュニテイの法則』
NHK出版
中條暁仁 (2003):過 疎 山村 における高齢者 の生活維持 メカニズム ー島根県石見 町を事例 とし て 一
地理学評論
,76,pp 979‑101Xl中條暁仁 (2007):中 山間地域 における高齢者のサポー トネ ッ トワークと地域住民の福祉活動
注1
過疎 山村 における高齢者 を支 える「つなが り」の維持 と創 出