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ヒア リング調査報告①

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Academic year: 2021

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東日本旅客鉄道株式会社ならびに株式会社ジェイア ール東海ツアーズへのヒアリング調査報告

著者 石橋 太郎, 狩野 美知子, 大脇 史恵

雑誌名 静岡大学経済研究

巻 18

号 3

ページ 83‑88

発行年 2014‑01‑31

出版者 静岡大学人文社会科学部

URL http://doi.org/10.14945/00007829

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調 査

東 日本旅客鉄道株式会社 ならびに 株 式会社 ジ ェイ アール東海 ツアーズヘ の

ヒア リング調査報告①

石 橋 太 郎・狩野美知子 。大 脇 史 恵

は じめに

我々はこれまで地域再生あるいは地域活性化のために,観光産業ならびにその周辺産業の発 展の方向性あるいは具体的な施策について調査研究を行 ってきた。調査研究を進めるうえで,特

,観光産業に関わる宿泊施設・観光施設,観光振興施策を担当する自治体への間き取 り調査を 精力的に行ってきた.今回の報告はこれまで欠落 していた旅行会社への間き取 り調査を行った ものである 調査対象 とする旅行会社の選定にあたっては,我々の調査研究の軸足を静岡県 とり わけ伊豆地域においていることにより,伊豆への主たる誘客手段を持つ鉄道会社の系列会社であ る旅行会社への間き取 り調査 を行 うことにした 具体的には,東日本旅客鉄道株式会社 (以,

R東日本)のびゅう事業部 と株式会社ジェイアール東海ッアーズ(以,JR東海 ツアーズ)へ 間 き取 り調夕 を行った。

以下は,その調査報告である

1.JR東日本 び ゅう事業部

調査 日時:8月 7日 (水)10:00〜

応 対 者 :東京支社 びゅう事業部 担当課長 (商)

びゅう商品第一グループ 副課長

佐々木 隆 博 氏 甲 浩 幸 氏

0今回のとア リング調査を含めた2013年度の観光研究 プロジェク トに対 し,静岡大学人文社会科学部 より研究資 金の助成 を受けた また, ヒアリング調査にご協力いただいた方々にお礼申し上げる

②今回の調査には,石橋太郎,狩野美知子,大田隆之,大脇史意の 4名 が参加 した

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R東日本の基本的展開 JR東日本びゅう事業部は, 2名以上の個人型商品を主に開発 してお ,海外旅行や団体旅行については,子会社 「びゅうトラベルサービス」力S担当している。 この

「びゅうトラベルサービス」は,JALと ともに「びゅうワール ド」を展開 している。

また,」R6社で展開 していた「ジバング倶楽部」を,1988年9月 1日 から各社 ごとに事務局を 設置 し,会員管理業務 を開始 した.」R東日本では,「JR東日本ジバング倶楽部」である 会員は 男性65歳以上,女60歳以上が対象 となっている。 この新たな展開 として,「大人の休 日倶楽部」

(50歳以上向け)をスター トさせた。現在,会員は,150万人以上いて,商品紹介パンフレットは,

年配の人が親 しみやすいようにレイアウトに工夫を行っているこの会員向け商品は団体型商品 が主 となるが,他に趣味の会,カルチャースクール (神)の運営 も行つている。

旅行に対する」R東 日本のポジション JR東日本の事業部の中に「びゅう事業部」を設置 してい ることにより,鉄道会社 と旅行会響°という,両方の視点からの展開・取 り組みを行っている。

旅行会社 としては,先に挙 げた2名 以上の個人型旅行を「ぴゅう」 という商品 として取 り扱っ ている 「びゅう」商品を販売する上で店舗 「びゅうプラザ」を展開 している。他社商品を「委託 販売」(手数料)することもあるが,他社に比べるとこの扱いは多 くない これは,旅行会社の側 面を持つとはいっても」R東日本の鉄道の利用促進 を第一の目的としてお り,店舗 「びゅうプラザ」

の魅力づけとして他社商品の委託販売を扱っているためである.

委託販売以外での他社 (たとえば」TB)との関係 については,同じ時期 に同じ方面の旅行商品 について一緒に力を入れようということもあるが,商品開発にあたって共同企画をすることはな い。他社 との協力 という点では,越境する路線利用の場合,「鉄道会社」 として行 うことはある.

「びゅう」戦略と伊豆地域 「びゅう」の基本的戦略は,JR東日本の鉄道を使ってJR東日本の各 地域にいかに旅行 してもらうかにある.

たとえば伊豆地域への商品を企画するなら峙 」R東日本の鉄道である「踊 り子号」を使ってど のように伊豆に行ってもらうかという視点から商品を企画することになる。その商品 として,

平日限定の 「ジャス ト伊豆」,「味な伊豆」などがある。 これは,「踊 り子号」の利用を平準化する 目的でもある.な,」R東海の鉄道である「東海道新幹線」を利用 して伊豆へ という商品企画は,

R東日本にはない.

旅行商品については,広く。あまね く作ってお り,特にターグットを絞っているわけではない.

季節,地域 ごとの客の動 き等を意識 しながら作っている.

商品のターグットに合わせたアレンジ(旅,宿泊の価格帯などについて)をすることはある。

たとえば「のんびり小町」という旅行商品は若い女性限定のものであり,料理やエステに気を配っ 0旅行業第 2種 に登録 している.

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ている 「め ぐり姫Jは女性限定 の 日帰 り列車旅で,プチ贅沢が楽 しめる商品 となっている. 地元 の人 々 と連携 して「地域再発見 プロジェク ト」 に取 り組んでい る.地域がもつ魅力 を高め ることで,地域間の流動性 をつ くり出す ことが,」R東日本 に とって も必要である.地元 とは運命 共 同体 とい う意識 を持 ってお り,観光振興 に貢献することが当社 の社会貢献・社会使 命 であると 考 えてい る

「地域再発見 プロジェク ト」の取 り組みの一例 としては,2013年1月 か ら3月 に,伊豆 と湯河原 に集 中的に送客す る 「伊豆湯河原温泉いっぱい花 いっぱいキャンペーン」 を実施 したのにあわせ ,2013年 1月 に,江間のイチゴ等伊豆の物産 を紹介す る観光 イベ ン ト,伊豆産直市 を上野駅で 実施 した。 なお,上野駅では2011年度か ら食 を中心 とした地産 品シ ョップ 「のものJを常設店舗 として展開 している 地域の生産者や行政 との連携のもと,一定期間 ごとに各地域 に焦点 をあて て 「の もの」 を活用 してい る.

また」R東日本では「観光開発」 として,地元の人 と一緒 に観光 の企画 を開発 している。その一 例 として,横浜支社 の管轄 である伊豆箱根仕入れセ ンターの事務所 を熱海 に置 き,伊,箱根 の 観光協会 な どと一緒 に企画 をす るとい う取 り組みを行 つている。「地域の活性化」を目的 とし,観

光 に依存 している地域 をまとめる とい う意味での公共性 を果 たす役害」を,JR東日本 は果 たそうと

している.「旅市」 とい う名で展開 している旅行商品 (着地型商品)は,この成果である。地元の 人 が考 えた商品 (たとえば,ボランティアガイ ドによる散策,稲取の雛 のつ るし飾 りの製作体験 コース を組み込んだ商品筈)を売 り出 してお り,他社 にはない もの となってい る。「びゅ う」 と

「旅市Jとい う両商品を併せ た買い方 も可能 に している。

他 に,」R6社を挙 げて, 3ヶ月間の集中送客 キャンペーン 「デステイネーシ ョン・ キャンペー ン」の取 り組み を行 ってい る 毎年冬 は目的地 を京都 で行われ ることが定例 となっているようだ ,それ以外 については,行政か らの希望 に基づいて「デスティネーシ ョン (目的地)Jは決定 さ れ る。「デスティネーシ ョン」への申請 は県単位 であることが基本であ り,伊豆地域単独での実施 は課題 が多 い。県単位以外の例外 として,京都市,会津市,横浜市 (横浜港開港50周)の例が ある

デスティネーシ ョン・ キャンペー ンに採用 される と,駅にはBlのポスター5連張 り,そして

ガイ ドプックの配布が行 われ るが,ポスター とガイ ドプック年 の宣伝物 の印刷 は行政が負担す る ことになってい る Rは宣伝で盛 り上 げることになる。なお,デスティネーシ ョン・ キャンペー ンの予定地 は, 2年ほ ど先 まで決 まってい る。

伊豆地域 の課題 伊豆地域 の首都圏へのアピールはまだまだ足 りない と考 え られ る.たとえ成 伊豆で有名 な金 目鯛 も房総 の ものである と思 ってい る関東圏の人 は多い.

観光立県・観光立町 とい う視点で伊豆地域 と他地域 を比較す る と,他地域 は県 とい うまとま り

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経済研究18巻3号

の単位での意識が高いという印象がある(たとえば東北や新潟など).伊豆地域は,他地域 と比べ ると地域 (県単位)と してのまとまりが弱いように思われる。他地域では観光振興への危機感は 持っていて,県の観光協会がイニシアティプをとっているところもある.たとえば官城県の場合,

仙台市とその周辺の市町村が集まってキャンペーン協議会を作って活動 している.伊豆地域の場 このようにうまくまとめてい くかが課題であると思われる。先にも述べたが,JR東日本が地 元をまとめるという点でその役割の一部を担っていると考えている。なお,伊豆地域の人々の マーケットに対する意識 として,鉄道のみならず車への依存 も高 く,関東圏に強 く向いている。

なお,」R東日本の F会社要覧2012‐2013』ωの「2011年度びゅう商品方面別送客人員」によれば,

全方面計254万人中23万人が伊豆・箱根 となっている

2.JR東海 ツアーズ

調査 日時:8月 7日 (水)13:00〜

応 対 者 :経営企画部 担当部長               営業部    次長            

国内旅行部 国内旅行課長             国内旅行部 国内旅行二課 担当課長       

R東海ツアーズの設立 JR東海発足当時は,JR東海が自社で旅行業を展開 していた。旅行業 ,市場の動向をみながら,様々なトレン ドを敏感に捉えて魅力的な旅行商品を機動的に創造 し てい く事業であ り,その裏付けとして専門的な知識,ノウハウが必要な業種である。その意味で は安全,安定輸送の確保を大前提に長期的視点の下,最適な投資判断を求められる鉄道事業とは,

性格の異なる事業分野 と言える.よって,旅行業専門の会社である」R東海ツアーズが設立された

R東海ツアーズは,JR東海が7割,JTBが3割という共同出資会社である.冊 から旅行会社 としてのノウハウを受け入れ,出向も受けている.

他の旅行会社 との関係性 海外 と団体 を対象 とする商品については,J電の力を借 りながら展 開 している 飛行機を使 った商品については,」TB商品を置き,提携販売も行っている。 それ以

外 については,JTBの力を借 りず独自に旅行商品を作 っている。 つまり,」R東海 ツアーズの弱

い と こ ろ で はJTBと協 力 す る と こ ろ も あ る がそ れ 以 外 は (」TBの出 資 が あ る と は い え)JTBと は妥協のない競争関係の中で商品企画をしている.

@ http://wwwlreast.cojp/yourary'index.html (2013+ I E27E

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また,首都圏の販売店 は4店舗のみであ り自前の販売店 のみでは販売 に限界があるため,提

携販売 も活用 してい る  た とえば,」TB, 日本旅行,ネ ットエージェン トにもJR東海 ツアーズの 商品を販売 して もらっている これ らへの商品販売 は,」R東海 ツアーズの「提携販売課」が担当

してい る。

商品企画  ミッシ ョンとしてJR東海の鉄道 (たとえ成 東海道新幹紀 特急 ひだ,特急ふ じか わ など)をどう売 ってい くかとい う視点か ら商品を作 っている ただ し,伊豆地域 はJR東日本 による踊 り子号の運行エ リアであ り,旅行者 による選別 も進み収益性 も低 い.」R東海 としては伊 豆 の扱 いは弱い もの となっている.

R東海 ツアーズの戦略 となる主カ プランは,「新幹線+宿」 とい うスケル トンプランである.顧

客 の年齢層 は選んでお らず,オールターグ ッ トである

もう1つの戦略 としては,JR東海 が運営す る「50+」 とい う50歳以上 を対象 とする会員組織 向 けに旅行商品を販売 している これは10周年 を迎 える。添乗員付 きの旅行 プランであ り, 1名 も申 し込 む ことがで きる。 データ としてチェ ック している リピー ト率 によると,最近では50代 60代の男性一人旅,そしてその リピーターも多い

この会員数 は増加傾向にあ り,全国で現 在63万人 いる 東京〜新大阪の間の新幹線利用 プラン が中心 となってい る.

こうした戦略を基礎 に,他の旅行会社 と厳 しい競争 を行 っている.顧客 は100円単位 で も価 格を 比較するので,常に」R東海 ツアーズの商品 と他社商品 とを比較 しなが らどうした ら魅力的なも の として当社 が選 ばれ るかを考 えてい る。

なお,商品開発 は春夏秋冬 ごとに行 い, 2カ月 ごとにメインのパ ンフレットを刷新 してい る.

観光地 との関係 商品企画 にさい して,観光地地元 との協力体制 は重要である とりわけ「50+」

で はこの傾 向が強い。」R東海 ツアーズが企画 の主体 ではあるが,たとえば「50+Jの企画である

「富士山 トレイン371で行 く富士山麓の旅」 とい うプランでは,御殿場高原 ビールの協力 のもとの 企画 となってい る

他 の地域 でい うと,岐阜高山は常 に情報発信 が求め られる地域 であ りこのため地元 との協力 関係 の中で商品企画 をす る面が強い.

「鉄道 ―旅行会社 ―地元Jとい う3者の協力関係 が きちん としていない と,旅行 はうま くいかな .3者一体 で宙n宙nを 目指 してい る

関東圏の旅行動向 首都 圏の人 は,行き先 に応 じて利用する旅行会社 を使 い分 けている。海外 であれば」TBかHIS,国内で例 えば伊豆 に行 くのであれ ばJR東日本 の 「びゅう」 な どとい うよう  JR東海 ツアーズの商品 としては,京都 を行 き先 とす るものを求 めに来 る人 が多い。 また,首

都 圏の人 々は,テーマ性の高いものを選好するようである.

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2012年の首都圏での取 り扱いに関するデータをみると, 4割が京都への旅行である.首都圏か らだと2泊3泊で約5割を占める 3泊はたとえば,金土 日あるいは土 日月 といった旅行であ  基本的に秋の利用者が多いのだが,最近では商品の価格が安 くなる夏・冬も多 くなっている.

京都への旅行 としては,最1人旅が増え,男1人旅も増えている。他に,大阪への旅行が3 割を占め,京都・大阪でおよそ7害Jを占めている.次いで,名古屋,広島の順で,静岡は2%弱

と取 り扱いが少ない.

最後に東 日本大震災の影響 としては,震災直後は西に向かう旅行者が増えたが,全体 としては 減少であったしかし, 1年後には回復 し,現在では元の水準に戻っている.

おわ りに

今回,はじめて旅行会社への間き取 り調査を行った.旅行会社 といっても,鉄道会社系列の旅 行会社への聞き取 り調査を行ったのだが,我々の今後の研究をさらに前進 させ る大 きな契機とな ると確信 しているそれは,観光地への送客手段 としての交通機関 (鉄)の役割の大 きさを改 めて認識することができたからである.

要約すると,」R東日本もJR東 海ツアーズも,鉄道を利用 していかに観光地に客を誘発するかを 商品開発あるいは戦略の基礎 としている点で共通 しているしかも,「鉄道 ―旅行会社―地元」と いう3者の協力関係が不可欠である点でも共通 している.観光地の視点から言え1北 観光地がい かに魅力ある商品を開発 しても,そこにまで来る交通手段が十分になければ多 くの集客を望むこ とができない 交通手段 (鉄道)力Sなければ,旅行会社 も収益を上げることはできない し,観

地の観光振興 も空振 りに終わることになる 今後の我々の研究 としては,「交通機関 (鉄,バ

)一旅行会社―観光地 (観光産業に関わる宿泊施設・観光施設,観光行政を担 う自治体等)」 3者の関係性を踏 まえた地域再生・地域活性化のための施策に向けた研究を深めていきたい.

最後に,今回聞き取 り調査 を行ったJR東日本 と」R東海 ツアーズは,旅行業を展開するに当た りそれぞれ鉄道を資源 (あるいは資産)と して活用 しているが,事業の在 り方あるいは企業の在 り方において基本的に異なっている.」R東日本は事業部 として旅行業を行っているのに対 し,JR

東海 ツアーズは」R東海から分社化 して行つている.JR東日本は鉄道会社 としての役割・使命 (公 共性)を前提に旅行業を捉えているのに対 し,」R東海ツアーズはしのぎを削る競争の中で旅行業 の発展の一役を担っている.事業のな り方あるいは企業の在 り方が,旅行業,観光産業ひいては 観光地の再生・活性化 。発展にどのような影響を与えるかについても今後の研究の大 きな課題 と

なろう.

参照

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