• 検索結果がありません。

宿主因子を標的とした新規抗HCV剤の合成と構造活性相関に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "宿主因子を標的とした新規抗HCV剤の合成と構造活性相関に関する研究"

Copied!
7
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

まきの たくや 氏名(本籍) 牧野 拓也(和歌山県) 学位の種類 博士(薬学) 学位記番号 論博第372 号 学位授与の日付 令和3 年 3 月 19 日 学位授与の要件 学位規則第4 条第 2 項該当 学位論文題目 宿主因子を標的とした新規抗HCV 剤の合成と構造活性相関に 関する研究 論文審査委員 (主査)教授 林 良雄 教授 三浦 剛 教授 高木 教夫 教授 松本 隆司

論文内容の要旨

C 型肝炎ウイルス(HCV)は、1本鎖プラス鎖 RNA ゲノムを有するフラビウイルス科に属するウイル スである。当該ウイルスに起因する C 型肝炎は、日本における肝疾患の 70-80%を占め、今日も大きな 社会問題となっている。輸血などにより HCV に感染すると、一定の潜伏期間の後に急性肝炎を発症す る。その後慢性肝炎に移行し、肝繊維化、次いで肝硬変を経て最終的には肝ガンを発症する。C 型肝炎 の治療では、標準療法として Peg-インターフェロン(IFN)療法が古くから用いられてきた。しかし、 その有効性と安全性には大きな課題があった。最近、ポリメラーゼ阻害剤やNS5A 阻害剤からなる直接 的抗ウイルス薬(direct-acting antivirals, DAAs)が登場し、IFN を用いない新たな治療法(IFN フリー治 療法)が可能となってきた。しかし、DAAs 治療においても、単剤療法では耐性変異の出現が顕著であ ることが知られている。そのため、複数の薬剤の併用が余儀なくされており、耐性が生じにくい宿主標 的ウイルス薬(host-targeting agents, HTAs)へのアンメットメディカルニーズは依然として高い。

(2)

このような背景のもと、著者は2つの研究目標を設定した。第一は、天然物類縁体の構造的特徴を生 かした多様なFR901459 誘導体合成手法の確立である。第二は、耐性懸念の低い新規 C 型肝炎治療薬の 創製である。本博士論文はその研究成果を まとめたもので、第一章ではFR901459 の アミノ酸残基を容易に変換できる新規合 成法の開発を、第二章ではこの合成法を用 いた構造最適化研究による新規開発候補 化合物 ASP5286 の創出を、そして、第三 章では合成難易度の高い ASP5286 に代わ る第二世代の新規開発候補化合物の創出 について述べる。 1. シード化合物 FR901459 の新規誘導体合成法の開発1 天然物FR901459 の抗 HCV 活性の向上及び免疫抑制活性の減弱を達成するため、論文報告されている CsA の X 線構造情報の詳細な解析を行った。その結果、FR901459 の有する 11 個のアミノ酸残基の内、 3 位のアミノ酸残基を最適化することにより上記課題を解決できると考えた。一方、天然物の化学誘導 において環状ペプチド中の特定のアミノ酸残基を効率的に変換する合成例は少ない。そこで著者は、3 位のアミノ酸残基を変換する新規合成法の開発に着手した。FR901459 の 2 位スレオニン残基選択的な N, O-アシル転位反応を起こし、デプシペプチド誘導体に導ければ、3 位アミノ酸残基の変換が可能に なると考えた訳である。反応条件検討の結果、p-TsOH 存在下 THF 中で加熱する条件において、63%と 高収率でデプシペプチド 3 の取得に成功した。次いで、エステル部での加水分解による開環反応とペ プチドデグラデーション反応を検討した結果、3 位アミノ酸残基を容易に変換できる共通合成中間体 4 を得た。続くアミノ酸の導入と再環化により、FR901459 の 3 位アミノ酸をD-MeAla へと変換した誘導 体5([(D)-MeAla]3-FR901459)の合成に成功した(Figure 2)。誘導体 5 の生物活性評価より、3 位アミノ 酸残基の置換は、in vitro 抗 HCV 活性の向上に加え、課題であった免疫抑制活性を減弱させることが示 唆された。しかし、誘導体5 は依然として強力な免疫抑制作用を示すことから、免疫抑制活性の減弱を 目指したさらなる構造変換が必要であった。 6 2 1 3 4 5 7 10 8 9 11 [Leu]9 [Thr]2 [MeLeu]9 [Abu] 2 [Val]5 CsA [Leu]5 FR901459 N O N N H N H O N N H O N N O N H O N N O OHO O O O O N H O N N H N H O N N H O N N O N H O N N O OHO O H O O O O

(3)

EC50 = 0.038 µg/mL IC50 = 0.070 µg/mL 抗HCV(5%FBS) 免疫抑制活性 Ring Closure 1 Deprotection 1 4 Condensation with Threonine Condensation with D-MeAla 3位 Ring

Opening Edman Degradation

(4)

の減弱を達成できると考えた。そこで、第一章において 確立した半合成手法を活用し、3 位及び 4 位アミノ酸残 基を同時に変換する合成法を確立し、4 位アミノ酸残基 の構造最適化研究を実施した。その結果、β 位に置換基 を有するα−アミノ酸((L)-MeIle)への変換により、in vitro での抗HCV 活性の向上と免疫抑制活性の大幅な低減を 達成した化合物11 を見出した(Figure 3)。 ところで、CsA は単独と標的タンパクである CyP と の結合時において、各コンフォメーションが異なること が知られている。そこで、化合物11 について単独およ びCyP 複合体の X 線構造解析を行った。その結果、両 者が類似したコンフォメーションを取ることが明らかになった(Figure 4)。本結果から、化合物 11 は 単体でも活性コンフォメーションを取れるため、抗HCV 活性が向上したと思われる。 更に、化合物11 は、in vivo 薬効を予測する上で重要な 50%ヒト血清添加条件下においても活性低下 を示さないことから、高いin vivo 抗 HCV 活性の発現が期待された。しかし、化合物11 は、腸管 pH 付 近における水溶性が <0.1 μg/mL と非常に低いため、開発化合物とすることを断念した。開発には、11 の有する強力な抗 HCV 活性と低い免疫抑制活性を保持しながら水溶性を担保する必要があった。そこ で、4位において免疫抑制活性の低減に重要なβ置換アミノ酸構造を有し、かつ水溶性の向上が期待で きる構造として、親水性のスレオニン構造に着目し、詳細な構造最適化研究を実施した。その結果、強 力なHCV 活性と減弱した免疫抑制活性を有し、かつ水溶性が大幅に改善された構造として、4位に(L)-O,N-ジメチルスレオニン残基を有する化 合物 6 を見出した。化合物 6 は、ラット Pharmacokinetics(PK)試験より、良好な経 口吸収性を有することが明らかとなった。 更に、HCV 感染キメラマウスへの経口投 与下での in vivo 抗 HCV 活性評価におい て、化合物6 は単剤および Peg-IFN との併 用投与 いずれの条件において も顕著な HCV 量の低下を示した(Figure 5)。以上 の結果より、化合物 6 を医薬品開発候補 ASP5286 として選択した。 3. バイオコンバージョン体から創出した開発候補化合物 30 並びにその周辺化合物の構造活性相関3 C 型肝炎の標準療法として複数の DAAs を組み合わせた経口剤カクテル療法が現在用いられている。 しかし、当該療法の薬価は非常に高額であり、医療経済上大きな課題である。したがって、ASP5286 の 開発においても低価格での製造が望まれた。しかし、ASP5286 の合成は環状ペプチドの開環反応やペプ チドデグラデーションなどを含む多工程を要するため、ASP5286 の優れた薬理活性プロファイルを保持 しながらより短工程で合成可能な第二世代のC 型肝炎治療薬の獲得が急務となった。標的となる候補化 合物を短工程で取得するには、構造最適化の起点となるシード化合物の選択が重要となる。著者は、化

Figure 5. Antiviral effects of ASP5286 (6) for genotype 1b HCV

in chimeric mice with humanized liver, A) monotherapy, B) Combination with Peg-IFN.

Figure 4. Superimposed crystal structure of 11 in

free and cyclophilin bound forms (Green : Crystal structure of 11, Purple: Crystal structure of 11 in

(5)

学修飾が容易なヒドロキシ体を生成するバイオコンバージョンに着目した。FR901459 のバイオコンバ ージョンの結果、様々な部位がヒドロキシ化された一連の化合物を取得した。その中から、CsA の X 線 構造情報を基に 9 位アミノ酸残基の変換により免疫抑制活性を減弱できるという仮説の基に、9 位に 1 級ヒドロキシ基を有する17 をシード化合物に選択した。そして、17 の抗 HCV 活性の向上を目的とした 構造変換を行った。その結果、17 より 1 工程で合成可能な 24 では、抗 HCV 活性が大きく向上し、かつ 免疫抑制活性についてもASP5286 と同等まで減弱した (Figure 6)。しかし、50%ヒト血清添加条件下に おいて、24 の抗 HCV 活性は約 6 倍減弱することが明らかとなった。そのため、第二章で得た知見を基 に3 位に置換基を導入することにより、ヒト血清添加時の抗 HCV 活性の向上が図れるという作業仮説 を立てた。そして、仮説の検証のため3 位選択的なアルキル化反応条件を検討した。その結果、3 位お よび9 位アミノ酸残基を短工程で変換可能な合成法を確立した。本合成法により見出した化合物32 は ASP5286 と同等の抗 HCV 活性、水溶性、および経口吸収性を示したことから、第二世代開発候補化合 物として選択した。 著者は、本博士論文研究において、天然物シーズから合成展開を行い、複数のC 型肝炎治療におけ る開発候補化合物を創出することに成功した。また、天然環状ペプチドにわずかな構造変換を加える ことで、そのコンフォメーションを活性コンフォメーションに変換できることを明らかにした。これ らの成果は、シクロスポリン誘導体の構造活性相関研究へ重要な知見を与えるものと考えている。 複雑な構造を扱う天然物創薬は、低分子創薬と比べて創薬展開の難度が高く、効率性が課題とされ てきた。著者は、本研究において天然物の構造的特徴に基づいた複数の合成手法を開発し、効率的な 天然物創薬が可能であることを示した。具体的には、天然環状ペプチドの新規デグラデーション法の 開発により、環状ペプチドを構成するアミノ酸残基を任意のアミノ酸残基へ置換する合成法を確立し た。また、バイオコンバージョン工程の導入により、複雑な構造を有する天然物の化学変換を容易に し、低分子創薬と遜色ない効率的な創薬が可能であることを示した。本知見が今後の天然物創薬研究 の一助となることを期待する。 【研究結果の掲載誌】

1. Takuya Makino, et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 30, 127251 (2020).

2. Takuya Makino, et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 30, 127308 (2020).

3. Takuya Makino, et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 30, 127423 (2020).

(6)

論文審査の結果の要旨

牧野拓也氏の博士学位申請論文は、薬剤耐性の起こり難い宿主因子を標的とした新規C型肝炎治 療薬(host-targeting agents, HTAs)の開発である。医薬品として安全性の確立された免疫抑制剤シ クロスポリンA (CsA)は、強力な抗HCV作用を持つことが知られている。しかし主作用の免疫抑 制作用は、C型肝炎治療においては副作用となる。そこで牧野氏は、CsAを基盤に安全性と低耐性 発現という2つの特徴を持つHTAの開発を目指した。すなわち、抗HCV活性の向上、免疫抑制活 性の低下を計画した。丁度、スクリーニングから見出された天然由来CsA誘導体FR901459の免疫 抑制活性がCsAより低かったことから、実際は当該誘導体をリード化合物にした。そして、1) FR901459からの位置選択的誘導体の合成手法開発、2)耐性が生じ難い新規C型肝炎治療薬の創 製の2つを目的に研究を展開した。本学位論文はその研究成果をまとめている。 すなわち、第一章においてはFR901459を構成するアミノ酸残基の3残基目を選択的に変換でき る新規合成法の開発を、第二章においては当該合成法をさらに発展させ、3および4残基目の選 択的変換に基づく構造最適化研究による新規医薬品開発候補化合物ASP5286の創出を、そして第 三章においては、合成難易度の高いASP5286に代わる第二世代の新規開発候補化合物の創出を記 載している。 より具体的には、第一章において、天然FR901459の3位サルコシン残基の変換法として、2位 スレオニン残基に着目した。そして当該β―ヒドロキシ基による選択的N,O-アシル転位反応を 利用し、環状ペプチドから環状デプシペプチドへの変換に成功した。そして生じたラクトン部の 加水分解による開環、続くエドマン分解による3残基目の除去、同一部位への新規アミノ酸残基 の 導 入 と 再 環 化 に よ り 、 FR901459 の 3 位 ア ミ ノ 酸 残 基 をD-MeAla へ と 変 換 し た 誘 導 体 5 ([D-MeAla]3-FR901459)の合成に成功した。誘導体5では、FR901459に比して、in vitroにおける

(7)

二世代開発候補化合物として選択した。

以上の如く、牧野氏は天然物シーズからの新規な合成展開により、HTA に基づく C 型肝炎治 療の複数の開発候補化合物の創出に成功した。本研究は、シクロスポリン誘導体の構造活性相関 研究へ重要な知見を与えるものと考えている。したがって、本論文は、博士(薬学)の学位申請

Figure 1. Structure of FR901459 and CsA.
Figure 4. Superimposed crystal structure of 11 in  free and cyclophilin bound forms (Green : Crystal  structure of 11, Purple: Crystal structure of 11 in  cyclophilin complex.

参照

関連したドキュメント

2008 ) 。潜在型 MMP-9 は TIMP-1 と複合体を形成することから TIMP-1 を含む含む潜在型 MMP-9 受 容体を仮定して MMP-9

このように、このWの姿を捉えることを通して、「子どもが生き、自ら願いを形成し実現しよう

「海洋の管理」を主たる目的として、海洋に関する人間の活動を律する原則へ転換したと

第一の場合については︑同院はいわゆる留保付き合憲の手法を使い︑適用領域を限定した︒それに従うと︑将来に

認知症の周辺症状の状況に合わせた臨機応変な活動や個々のご利用者の「でき ること」

GM 確認する 承認する オ.成立性の確認訓練の結果を記録し,所長及び原子炉主任技術者に報告すること

実効性 評価 方法. ○全社員を対象としたアンケート において,下記設問に関する回答

こうした背景を元に,本論文ではモータ駆動系のパラメータ同定に関する基礎的及び応用的研究を