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黄銅の応力腐食割れに関する研究(第1報)−α黄 銅の場合−

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

黄銅の応力腐食割れに関する研究(第1報)−α黄 銅の場合−

著者 岡 俊博, 武田 幸則

雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

巻 31

号 2

ページ 131‑139

発行年 1982‑11‑25

その他のタイトル A Study of Stress Corrosion Cracking in Brass (I) −in α Brass−

URL http://hdl.handle.net/10105/2324

(2)

黄銅の応力腐食割れに関する研究(第1報)

(x 出札一明/^

俊 博・武 田 幸 則

(奈良教育大学技術教室) (昭和57年4月30日受理)

A Study of Stress Corrosion Cracking in Brass ( I )

‑in α Brass‑

Toshihiro Oka and Yukinori Takeda

(Department of Technology, Nara University of Education, Nara, Japan) (Received April 30, 1982)

Abstract

Probability distribution of failure times and cracking times of stress corrosion cracking in Cu‑35%Zn alloy (α brass) under constant stresses (80%, 60%, 50% or 40% of the yield

stress) in Mattsson's solutions of pH 6. 5, 7.0, 7. 5 and 8.5 has been analysed by using the

Weibull probability paper which is widely used reliability engineering.

Probability distribution of failure times (Life) was found to be described as single or composite Weibull distribution, but in cracking times (Crack), as only single distribution.

Median failure times and median cracking times of the distributions depend on the pH and the applied stress. A concave or pan shaped curves between the median failure times or cracking times and pH are observed at applied stress of 80% and 60% of the yield stress, which correspond to the result by Mattsson.

The shape parameters observed in the ditributions of failure times and cracking times show between 1.6 and 3.6 in the pH range of 6.5‑7.5 at any applied stress, but in the pH of 8.5, the values show larger than 3.6. Those shape parameters larger than unity indicate the wearout failure which seems to correspond to the crack propagation. In the range of pH 6. 5‑7. 5, the crack propagation seems to be the type of intergranular crack‑

ing, and in the pH of 8. 5, it seems to be the type of transgranular cracking.

1.緒     言

応力腐食割れ(以下SCO は応力と腐食の二つの作用によりおこる金属材料特有の破壊であ る・応力のみ,あるいは腐食のみでは破壊がおこらない場合でも,その二つが同時に働く場合に 各々が単独で働く場合の算術和よりもはるかに大きく,また性質の異った現象がおこるのが特 徴である11. SCCの研究は古くから行われており,すでに19世紀末に黄銅製の薬英のSeason Cracking として知られている・その後の工業の発展とともに種々の金属材料が苛酷な条件下で

131

(3)

132

岡 俊博・武田幸則

使用されるようになり, secは軟鋼,オーステナイト系不鋸鋼,超高力鋼,チタン合金,アル ミニウム合金,銅合金に至る有用で実用的な合金材料でおこる2'ため,幾多の研究がなされて来 ているが,その統一された破壊機構に関する一致した理論はいまだ見当らず,現在でも数多くの 研究がなされている.

黄銅は管,棒,プレス材などの実用合金材料として広く用いられているが, sec防止対策と しては低温焼鈍による内部応力除去,あるいはSiやMnを微量添加して3サSCCの寿命を長く する事ぐらいで,アンモニア雰囲気ではSCCを避ける事が出来ない.藁銅のSCCは活性経路 腐食といわれ4',誘発(割れの発生) ‑割れの伝播‑→機械的破断の3過程からなり,誘発は普通 の孔食が発生,成長して応力集中となってi=りが始まる過程,または酸化皮膜によって溶解・除 去されてたりが始まる過程,あるいはi=り帯の溶解からトンネル腐食が十分に成長するまでの過 程であるとされている.また,割れの伝播の過程はMattsson51によって詳細に調べられ, pH 値によって異なり, pH3.9‑5.7とpH7.8‑ll.2では粒内割れが, pH6.3‑7.7では粒界割れに

よると報告されている.しかし,合金のSCC機構は応力の大きさ(変形速度),あるいは環境 の腐食性の強さによって変化し,誘発期間のバラツキが大きいので,破断までの時間を求めても,

その結果からSCCの機構を知ることは困難である.破断までの時間はよく整った実験でも統計 的分布(正規分布)をなし,バラツキが大きいので破断までの時間を個々に推定する事は困難とな る・即ち, secは統計的現象であって厳密には測定値を統計論的に処理すべきであると考える.

最近,柴田ら6,7)は実験室試料の結果や実際の装置における材料寿命を定量的に評価するため にも,不均一腐食による材料寿命の確率的評価法の確立のため,信頼性工学8,9)において広く用 いられているワイブル確率紙を用いて,ステンレス鋼の沸とう MgCU系におけるSCC破断寿 命の確率分布の解析を行っている.しかし,黄銅あるいは銅合金におけるこの手法による報告は

見当らない・そこで,我々は35%Znを含むα黄銅試料で, Mattsson氏液5'によりSCCの実 験を行ない,割れ発生時間ならびに破断寿命の測定を行ってその結果をワイブル確率紙を用いて 確率分布の解析を試みた.

2.実 験 方 法

本実験に用いた試料,腐食液,実験装置ならびに試験方法について以下に述べる.

黄銅試料は富士伸銅製Cu‑35^Znの焼鈍材(厚さ0.35mm,巾400mm,長さ800mm)を入手 した.その化学組成をTable lに示す.この板材を男断機で巾10mm,長さ100mmに裁断し,

Table 1. Chemical compositions and mechanical properties of Cu‑35%Zn sample.

Chemical compositions (wt %)

(4)

100

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′ ′

声4.2       声4.2 Fig.l. Shape and sizes of specimen.

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^TV Glass Tube 一Mattsson's Solution

Load

〔コ1

Fig.2. Schematic illustration of the experi‑

mental apparatus for measuring failure time and cracking time of the Cu‑35

%Zn specimen in Mattsson's solution

under constant stress.

Fig. 1に示す寸法で,試験片中央両側に1mm巾のノッチを入れた形状の試験片を約250本作製 した.試験片の断面積を正確に求めるために,ノッチ問の距離は工具跡徽鏡(〉く30)で0.01mm まで測定した.また,試験片の機械的性質を求めるために,同板材よりJIS 6号引張り試験片 に準拠した試験片をTOM5000D型万能試験機で引張り試験し,降伏応力値Oy; 0.2#流れ応 力)ならびに最大引張り強さを求めた.その結果をTable lに示す.

腐食液はMattsson氏液(0.05M CuSO4, 0.5M (NH4)2SO4+NH4OH)を使用した. pHの 調整は, 0.05M CuS04 と0.5M (NH4)2S04を純水に溶解して1日こすると, pH3.8を示す ので, NH4OH (25%液)を滴下して所定のpH値を得るようにした・腐食液のpH値は6.5, 7.0, 7.5, 8.5の4種類を用意した・なお, pH6.5と7.0の腐食液は作製してから長時間放置

するとpH値が上昇するので, CuS04を微量滴下して再調整した・また,実験時間が長い場合 腐食液が変色したが,試験途中での液の更新は行わなかった・

実験装置はFig.2に示すような40: 1の自製槙梓式を用いた・試験片はシリコンゴム栓を半 分に切った問に挟み,内径22mm,長さ56mmの透明ガラス管内に腐食液が温れないように固 くつめてガラス管外に山ている試験片上下部を上下両チャック部に丸ピンで支えるようにした.

下側チャック部の支え棒には歪ゲージを張り 付け, 4枚ゲージ法によるロードセルを構成

して,静歪計で負荷した荷重の適否を判定し た.割れが発生した時間を読みとれるように 績梓の先に直流型差動変圧器のコアを取り付 け,試験片の僅かな伸びをⅩ‑Y レコーダ で,試験片の0.001mmが記録紙のY軸方 向Imm(こ相当するように調整し,記録紙を Imm/minでⅩ軸方向に巻き取るようにし て,伸び‑時間曲線を記録した.試験片の破 断時に梓が下るのを利用して, 24時間タイマ ーの供給電源を切るようにして, Ⅹ‑Y レコ

Photo.1. Experimental apparatus for testing

the stress corrosion cracking in

brass.

(5)

134

岡 俊博・武田幸則

‑ダとは別に破断時間を知るようにした.上記の実験装置の全景をPhot0. 1に示す.

試験は試験機に上述の試験片の表面をアセトンならびにメチールアルコールで脱脂して,ガラ ス管内に挿入し,上下両チャックに取り付け荷重(降伏応力値6,の), 60, 50または40%)を 負荷する.次にpHを調整した腐食液をガラス管内に入れ,時間を測定するためタイマーを合わ せ, Ⅹ‑Yレコーダを作動させた.同一の条件で試験を行うために試験機を2台用意し,出来る 限り短い日程で一系列につき20本以上の試験片を試験した・

3.実 験 結 果

本実験では割れ発生時問と破断時間を測定し,両者の関連をも考察出来るようにした・まず, Fig.3ならびにFig.4はpH7.0とpH8.5におけるXIYレコーダで記録した試験片の伸 びと時間との関係を示したものである・いずれのpHの場合も,負荷した応力が大きい方から 割れ発生時間ならびに破断時間(寿命)が短い・また,図中の80%応力時の拡大図で示すよう に, Fig.4のpH8.5の場合は割れ発生後,階段状に伸びており, Fig.3のpH7.0では階段 状が不明瞭である・このpH7.0の傾向はpH6.5, 7.5の場合と類似していた・この差異は割 れ発生後の割れ伝播過程が異なるためと考えられる・

次に,信頼性工学8,9)において広く用いられ,木実験のように少ない試料数の場合有効である ワイブル確率紙を用いて破断寿命ならびに割れ発生時間をプロットする事により,確率分布を解 析した.ワイブル分布においては,破断寿命あるいは割れ発生時間tを確率変数として,累積確 率分布関数F(t)は, F(t)‑l‑exp{‑(t‑γ)m/'olによって表わされる・ここでmは分布の形状 を決定する形状母数で, t。は尺度母数, γは位置母数(本実験ではγ‑0)である.同一条件に おいて得られた破断寿命値(あるいは割れ発生時間)を小さな値から大きな値の順に並べ,順序 統計量とする. n番目の債の累積確率F(t)は測定総数Nとして, F(t)‑n/(「fN)によって 与えられる.破断寿命(あるいは割れ発生時間)の楢とそれに対応する累積確率F(t)をワイプ

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100     200 Time (min)

300

Fig.3. Elongation vs time curves of X‑Y re‑

corder on the conditions of pH 7.0 and applied stresses of 80%, 60% and 50% of the yield stress.

200  400  600  800 1 000 Time (min)

Fig.4. Elongation vs time curves of X‑Y re‑

corder on the conditions of pH 8.5 and applied stresses of80% aild 60%

of the yield stress.

(6)

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Fig.5. Weibull distributions of failure times (Life) of stress corrosion cracking in Mattsson's solutions of pH 6. 5, 7.0, 7.5 and 8. 5 at various applied stresses.

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Fig.6. Weibull distributions of cracking times (Crack) of stress corrosion cracking in Matt‑

sson's solutions of pH 6. 5, 7.0, 7. 5 and 8. 5 at various applied stresses.

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(7)

136

岡 俊博・武田串則

ル確率紙にプロットすると,ワイブル分布に従うならば,流線が得られる.木研究では,パ‑ソ ナル・コンピュータを利用してN個の試料の測定値を昇順位に並びかえ,また,ワイブル確率 紙の必要な部分を高解像ディスプレイにグラフ表示するようにした.

Fig.5は上記の手順でN‑19個の試験片の破断寿命倍をワイプルプロットしたものである.

腐食液のpHが6.5の場合 ), 60, 50%:のいずれの応力においても二つの勾配をもつ直線 で形成される.柴田ら6'によればこの二つの直線に明瞭な折点が見られる場合,複合ワイブル分 布と考えている.この傾向はpH値が7.0あるいは7.5の場合においても見受けられる・し かし, pH値が8.5の場合は80ならびに60%の応力における分布は大きな勾配mをもつ‑直線 上にあり,いずれも単一ワイブル分布と考えられる.

次に, Fig.6は上述の19個の試験片の割れ発生時問についてワイプルプロットしたものであ る・いずれの場合もややバラツキはあるが,破断寿命値のワイブル分布と異なり,一つの勾配を もった単一ワイブル分布であると考えられる.これらFig.5ならびにFig.6に示したワイブ ル分布の直線の勾配すなわち形状母数mを求めると, Table2に示すようになった.また,累 積確率分布関数F(t)が50%の時(いわゆる中央値)もTable2に示した.ここで,複合ワイ

ブル分布の場合長寿命側の勾配をml,短寿命側の勾配をm2として示している.

腐食した試験片表面を肉眼で観察すると,試験片が腐食液に浸潰していた部分と破断面は, pH 7.5では黒色の表面皮膜が形成されており, pH7.0ならびにpH6.5においては暗褐色(栗色) の表面皮膜に覆われている.試験片の厚さはほとんど減少しておらず,光沢を示しており,局部 的な腐食が進行して破断していると考えられる.それに反して, pH8.5における試験後の試験 片表面は暗緑色を呈しており,厚さもかなり減少して表面はぎらつき,全面的な腐食が進行して いたと考えられる.

Table 2. Shape parameters and median failure times of Life and Crack on the conditions of each pH and stress.

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S ヽーo^j OOO O O

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l一

Shape parameters

Life

I ml 15.04

4. 33 3.76

1

2. 16     7. 75

Median failure times Life Crack

m i m I (×103 sec)   ×103 sec)

5.22     3. 61 12.0     5. 56

13.6211.34 )::霊127.40 6.58 6.304.38 10.90 14.1611.281 8.04 13.6210.68 noor¥25.56 28.3821.66 42.0627.72

(8)

4.考     察

Table 2に示した負荷応力80%と60%について,破断寿命と割れ発生時問の中央値をpHの 関係で示すと, Fig.7のようにいずれの場合もpH7.0を最小とするなべ底形(凹形)を示し, pH7.0附近が最も早く割れが発生し破断する事がわかる.この結果はMattssonの研究結果5' とよく一致している.次に,破断寿命においては複合ワイブル分布のためにこっの形状母数ml とm2が求められたものが多いが,実際環境の寿命に対応しているのは長寿命側のmlである可 能性がある6'のでmlの値を選び,破断寿命と割れ発生時間の形状母数をpHの関係で示すと, Fig.8のようになった.信頼性工学ではm>1のワイブル分布の場合,故障率が時間とともに 増大するので摩耗故障型と呼ばれている.本実験ではpH7.0の50%応力時に長寿命側でm1‑

0.98 (≒1)の偶発故障型も見受けられるが,その他はすべてm>lの摩耗故障型である.割れ 発生時間においては, pH値が6.5から7.5の間では大差はなく, m‑2.蝣 ‑2.55の値で, pH8.5では3.61あるいは5.56 と前3者に比較して大きな値をとる.この傾向は破断寿命に おける場合も同様な傾向を示していると考えられる.また,形状母数m (あるいはml)を負符 応力の関係で示すと, Fig.9のようである.ただし, pH7.0における50%応力時の破断寿命の 場合,長寿命側のml値はそれを構成するプロット数が6点しかないので,この場合に限りm2 の値を採用した.破断寿命(Life)においては, pH7.0と7.5における形状母数の値は大差な

く応力の影響を大きく受けていない事がわかる.また, pH6.5においては低応力では1.62, 1.79 と低い値をとるが言知己力の80%ではpH7.0や7.5 とほとんど一致した値であり,正規 分布(m‑3.2)8 に近い値であるのに対して, pH8.5の場合は異常に大きな値を示しており,こ の値はTable 2に示す校合ワイブル分布の短寿命側の値と同等である.割れ発生時間(Crack)

65  7.0 7.5 8.0 8.5 PH

Fig.7. Median failure time (L) and median cracking time (C) as a function of pH at applied stresses of 80% and 60%

of the yield stress.

(L∈)∈ Latむ∈DLDd adDエS

6.5  7.0 7.5 8.0 8.5 PH

Fig.8. Shape parameters of failure time (L) and cracking time (C) as a function of pH at applied stress of 80% and

60% of the yield stress.

(9)

周 俊博・武田幸則

( L

∈ ) E   L a l む

∈ T 3 L D d 3 d D L

│ C

AO  60  80   40  60  80 Stress ( tfyx'l.)

Fig.9. Shape parameters of Life and Crack in the Weibull distributions of Fig. 5 and Fig. 6 as a function of applied

stress.

においては,図からもわかるようにpH6.5, 7.0, 7.5 ともに負荷応力の影響を大きく受 けていない事がわかる.しかし, pH8.5で は応力の増加でmの値は減少するが,それ でも前3者に比較して大きな値をとる.

上記の関係ならびに試料表面の腐食状況か ら, pH6.5から7.5におけるSCCは主に 粒界破断型であり, pH8.5におけるSCCは 主に粒内破断型であると考える事が出来る.

即ち, pH6.5‑7.5においては表面酸化皮 膜の形成が行われるが,皮膜形成の弱点であ る結晶粒界部が局部的に不均一腐食し,粒界 が活性経路となってSCCが進行するものと 考えられるのに対して, pH8.5においては 表面酸化皮膜の形成はなく全面的な腐食が行 なわれ,応力集中を起した結晶粒内のとり面 が活性経路となって長時間かかって延性的に 破断すると考えられる.このため破断時間の分布の巾は比較的小さくなって形状母数mの値が 他の三者に比べて大きくなったと考える.

次に複合ワイブル分布が粒界破断型に見られる理由は結晶粒界の構造に関係していると考えら れる10)即ち,大傾角粒界に沿ったSCCでは典型的な脆性的破断がおこると考えられるが,結 晶粒界には結晶の性質をもつ小傾角粒界も多数存在する事から,これらが割れの伝播に関係すれ ば,割れ発生場所は大傾角粒界であっても破断までに時間がかかり,ワイブル分布の短寿命側に 影聾をおよぽしてその勾配を大きくしたと考えられる.

5. ま  と  め

鋼に35%の所領を添加したα黄銅の応力腐食割れについて,腐食液はMattsson氏液をpH 6.5, 7.0, 7.5, 8.5の4種類に調整用意し,負荷応力を降伏応力の), 60, 50あるいは40%負 荷して,割れ発生時間ならびに破断寿命を測定し,その値を確率変数として累積確率をワイプル プロットして次のような結果を得た.

(1)本実験における破断寿命と割れ発生時間の中央値をpH値でプロットすると, pH7.0で最 小となる囲形の曲線を描く.この傾向はMattssonの研究結果とよく一致する.

(2) SCCの破断寿命値はワイブル分布で直線に乗るが,その勾配(形状母数) mは一つの場合 と二つ出る場合がある.即ち,単一あるいは複合ワイブル分布に従うと言える.

(3) pH6.5‑7.5における破断寿命のワイブル分布より求めた形状母数m(mi)は, 1.62‑3.6 の値をとり,また,割れ発生時問におけるmの値は1.6‑2.55の値をとる.いずれもm>1の 摩耗故障型を示す・しかし, pH8.5におけるmの値は前者よりも大きく比較的狭い分布で割れ

発生ならびに破断がおこることが判明した.

(4)試料表面の腐食状況ならびに酸化皮膜の色・光沢から, pH6.5‑‑7.5の試験片ではいずれも

(10)

Cu20の酸化皮膜が形成され,酸化皮膜の不完全な粒界が選択腐食され応力集中によって破断す る粒界破断型と, pH8.5の試験片に見られるように,全面的な腐食が進行して粒内で応力腐食 がおこって破断する粒内破断型と区別することが出来た.

(5) SCCの破断寿命において複合ワイブル分布に従う場合が粒界破断型のpH6.5‑7.5におい て見られるのは,粒界構造に関係して割れ伝播の過程で時間を要し,ワイブル分布の短寿命側に 影響を及ぼしてその勾配を大きくしたものと考えられる.

参 考 文 献 1)下平三郎:日本金属学会報, ll (1975), 811

2)下平三郎:日本金属学会報, 8 (1969), 651 3)佐藤史郎:日本金属学会報, 8 (1969), 728

4) M. Takano and S. Shimodaira: Corrosion Sience, 8 (1968), 55 5) E. Mattsson : Electrochimica Acta, 3 (1961), 279

6)柴田俊夫・竹山太郎:鉄と鋼, 66 (6) (1980), 693 7)柴田俊夫・竹山太郎:防食技術, 30 (1981), 47 8)塩見 弘:パ信頼性工学入門=改訂2版,丸善, (1972)

9)岡村弘之・板垣 浩:H強度の統計的取扱い‑構造強度信頼性工学日,培風館, (1979) 10)昆 謙造・大谷南海男:日本金属学会誌, 40 (1976), 1082

参照

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