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幼児の運動活動の場としてのスポーツ少年団

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鳥取看護大学・鳥取短期大学

幼児の運動活動の場としてのスポーツ少年団

著者 松本 典子

雑誌名 鳥取看護大学・鳥取短期大学研究紀要

号 79

ページ 19‑27

発行年 2019‑07‑01

出版者 鳥取看護大学・鳥取短期大学

ISSN 2189‑8332

URL http://doi.org/10.24793/00000101

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止

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はじめに

 筆者は昨年より鳥取県スポーツ少年団に関わるこ とになった.これまでに保護者としての数年間の関 わりがあるが,20 年以上前のことである.この間 に少子化が進行し,小学生の運動活動においては運 動する子としない子の二極化が見られるなど,鳥取 県内においても都市部と同様の問題が取り沙汰され てきていることから,スポーツ少年団の活動の様子 も当時と変化していることは優に予想できた.それ にもかかわらずその実態を徐々に知ることとなって 驚いたことは,団によっては団員として幼児の受入 れを可能としていることである.団員数減少による ところがその要因の一つとみられる.実際に県内に おいてどれだけの幼児が入団しているかは現在のと ころ明らかではないが,全国的には活動実態もある ことから,改めてスポーツ少年団を取り巻く変化の 大きさを思い知ることになった.

 一方で,幼児の運動活動に関する課題は山積して いる.「転んでも手が出ない」「まっすぐに走れない」

「ボールの投げ方が未熟」「ボールが目に当たる」

など,とくに幼児期に必要な運動体験の不足から生 じる「動きのぎこちなさ」が指摘されて久しい.体 力や運動能力は子どもたちの将来にも直接かかわる 問題であるがゆえに,幼児期にふさわしい活動を十 分に体験できる環境を整え,基礎的な身体能力を しっかりと身に付けさせることが喫緊の課題である ことは言うまでもない.そのため,多くの研究が進 められ,その成果等を基に文部科学省から「幼児期 運動指針」注 1)が示され,保育現場などでは課題克 服に向けた様々な取組みがなされている.他方では 子どもたちの健全な成長を支えるためのスポーツの 原則が提唱される1)など,子どものスポーツ活動へ の関心は益々高まっている.

 このような状況にあって,スポーツ少年団が幼児 を受け入れて活動できるようにすることは運動体験 の保障の意味からは望ましいことなのかもしれな い.しかしながら,発達段階の異なる幼児と小学生 を単純に同じメニューで活動させることは好ましく なく,展開の難しさが考えられる.仮にも指導者が 幼児を小学生と同様のやり方で体験させるような認 識だとすれば,行われる活動は幼児期本来の目的か らは逸れてしまいかねない.幼児の運動研究に携

幼児の運動活動の場としてのスポーツ少年団 松 本 典 子1

Noriko Matsumoto:A Study on the Japan Junior Sport Clubs Association as a Place for Preschool Children’s Movements

 日本スポーツ少年団では幼児団員の受入れが進められている.本研究は受入れにあたり幼児に とって効果的な活動となるための必要な条件を導き出すことを目的としている.検討の視点として,

スポ―ツ少年団の現況から,活動内容,指導体制および保護者の意識をあげた.活用が奨められて いるアクティブ・チャイルド・プログラムを指導書とする運動活動の展開が検討の対象である.指 導者養成とともに,保護者が指導に協力し親子で共に活動する意識をもつ必要性を指摘している.

キーワード:スポーツ少年団 幼児 幼児期運動指針 ACP 親子

       1 鳥取短期大学

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松 本 典 子

わってきた筆者にとっては,実際の活動に対しての 懸念が生じるのである.少なくとも指導者や保護者 などの幼児を取り巻く大人が,しっかりとした認識 のもとに活動を展開することが望まれよう.このよ うなことから本研究では,今後のスポーツ少年団が 幼児の運動活動にとって望ましい場となるよう,現 状から課題を設定し検討していく.

1.スポーツ少年団の概要

(1) スポーツ少年団とは

 スポーツ少年団は,昭和 39 年の東京オリンピッ ク競技大会に先立つ昭和 37 年に「スポーツによる 青少年の健全育成」2)を目的に,日本体育協会(現 在の公益財団法人日本スポーツ協会)創立 50 周年 の記念事業として創設された.高度経済成長期に あった当時,生活様式の変容によって子どもたちの 運動不足による体力低下や地域社会の崩壊に起因す る子ども集団の消失が問題視され始めていた.その ような中で,「子どもたちに地域を基盤としたスポー ツの場を提供することにより,正しいスポーツを計 画的,継続的に実践し,それによって子どもたちを 健全に育成しよう」3)と,スポーツ少年団の結成が 呼びかけられた.

 創設当時は団数 22 団,団員数 753 名でスタート した団体が,掲げた目的と東京オリンピック競技大 会を 2 年後に控えた国民のスポーツへの関心とが相 まって社会的な動きへと発展し,平成 17 年のピー ク時には団数約 36,000 団,団員数約 937,000 名4) 増加して,日本最大の青少年スポーツ団体へと成長 している.

 スポーツ少年団は,単位スポーツ少年団,市区町 村スポーツ少年団,都道府県スポーツ少年団,日本 スポーツ少年団の 4 つの段階で構成・運営されてい る.単位団は年度ごとに団員,指導者の登録が必要 であり,市区町村スポーツ少年団に登録した単位団 は,都道府県スポーツ少年団を通じて日本スポーツ 少年団へ登録される.活動拠点は学校ではなく地域

社会に置かれ,主活動は競技スポーツばかりではな く発育発達段階を考慮した幅広いスポーツ活動をグ ループで行うことに特色があるとされている.また,

当初の主な対象は 12 歳から 15 歳の中学生であり,

これらの少年と一緒に活動できる少年として小学校 5,6 年生や高校生などが加えられていた.1 回の練 習時間は,たいていの種目が 1 時間から 2 時間とさ れ,練習に対しては集中して行うことを求めあまり 長時間にならないよう注意を促している5)  このようにスポーツ少年団は,特定の競技スポー ツ種目に限定せず,幅広いスポーツ活動にレクリ エーション活動や社会活動なども組み入れた多様な プログラムによって,発育発達期にある子どもたち のスポーツを通した健全育成を目指して創設されて いる.その理念は,「一人でも多くの青少年にスポー ツの歓びを提供する」「スポーツを通して青少年の こころとからだを育てる」「スポーツで人々をつな ぎ,地域づくりに貢献する」6)にある.

(2) スポーツ少年団の現状 1)日本スポーツ少年団

 急成長を遂げたスポーツ少年団であるが,近年は 状況の変化とともに課題も見受けられるようになっ ている.まずは団員についてである.当初は中学生 を主対象とするスポーツ少年団であったが,中学生 が中学校のクラブ活動に拠点を移していくことによ り次第に小学校卒業と同時に卒団する傾向となり,

小学生中心のスポーツ少年団へと移行していくこと となった.そして,近年の少子化が大きな要因となっ て団員数は減少(平成 29 年団数約 32,000,団員数 約 694,000 名)7)し,対象学年を徐々に低学年へ広げ,

ついには幼児の受入れを可能とするまでとなってい る(対象年齢は単位団により異なる).方針では中 学生や小学校高学年のリーダーを養成し,異年齢集 団のまとめ役として考えられているスポーツ少年団 であるが,とくに中学生の団員が減少している近年 においてはその特性を活かしにくい状況になってい ると言われている.

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 指導者については,「認定員」「認定育成員」の資 格が設けられており,活動の中心的指導者としてス ポーツ少年団の指導・運営にあたることが求められ,

単位団には 2 名以上の有資格者の登録が義務付けら れている.これらの資格は,養成講習会を受講する などの一定の条件を満たすことにより都道府県ス ポーツ少年団の認定を受け,日本スポーツ協会から 資格が認定される仕組みになっている.ただし,現 在日本スポーツ協会では公認スポーツ指導者制度の 改定が検討されており,スポーツ少年団の指導者と しては「スタートコーチ(スポーツ少年団)」注 2) 格が創設される.これは,スポーツ指導者として最 低限身に付けておくべき知識を短期間で修得するこ とができるとされており,安全で効果的な活動を提 供できる指導者として,とくにスポーツ少年団や総 合型地域スポーツクラブ注 3)の指導者の資格取得が 期待されている.「スタートコーチ(スポーツ少年 団)」養成カリキュラムについては現在検討中である.

2)鳥取県スポーツ少年団

 鳥取県スポーツ少年団においても全国と同様の傾 向が見られ,直近の平成 30 年までの 5 年間で団数 は 174 団から 160 団,団員数 3,392 名から 3,019 名8)

といずれも 1 割程度減少している.平成 30 年に鳥 取県体育協会により単位団に対して実施されたアン ケート調査9)(以下,H30 調査)によると,回答のあっ た 83 団(回収率 51.9%)のうち団員として中学生 までの受入れを認めている団が 14 団(17%)はあ るものの大半は小学生までで構成され,10 団で幼 児の受入れが可能(入団者の有無は不明)とされて いる.団員の中にリーダーの有資格者がいるのは 22 団(27%)であった.以下に,H30 調査と平成 19 年に実施された同様の調査10)(以下,H19 調査)

との比較を基に鳥取県スポーツ少年団の現状をみて いく.

①指導者

 指導者の年齢は 40 歳代を中心に 20 歳代から 60 歳代に及び,平成 30 年度は 718 名の指導者が登録 されているが,男性指導者が主となっていて女性指

導者の割合が減少してきている.きめ細やかなバラ ンスの取れた指導体制を築くためにも女性指導者の 育成が望まれている.

 指導の重点としては,「礼儀」「楽しさ」への意識 が両調査とも高いものの,H30 調査においては「技 術向上」や「勝利追及」へやや重きが移っているこ とが指摘されている.これについては,保護者の意 向やスポーツ界を取り巻く社会的背景が影響してい ることが考えられている.指導方針は,「いずれの 子どもも平等に行う」とする指導者が多い傾向では あるが,H30 調査では「下手な子重点」「まじめに 行う子」「努力する子」「上手な子優先」なども散見 され,それぞれの指導者や単位団の方針に基づいて 指導の重点が多様化していることが見てとれる.指 導者の資質向上にむけては,「認定員講習会」など の何らかの既存の研修会に参加することによって向 上を図ろうとする傾向が強くなっており,H19 調査 で多く回答のあった「独自の研修会の開催」は減少 している.

②活動状況

 活動場所は,ほとんどの団が小中学校の施設や市 町村の管理する施設を利用している.活動日数につ いては週 3 日が多いが,両調査の 10 年間のうちに 週 4 日から 3 日に移行している傾向が見られた.曜 日は,いずれの調査においても土日の両日もしくは 土曜日に活動している団が 7 割以上である.活動時 間については,H30 調査では平日は 2~3 時間,土 日は 3 時間以上とした団が最も多く,H19 調査に比 較して 1 回の活動時間が 1 時間程度長くなっている.

③保護者の負担感,意識

 団員の練習への送迎,練習中の世話,大会遠征時 の応援や大会運営のボランティア活動など,保護者 に求められる協力要請は様々にあるようである.こ のことが負担となって団員数を増やしにくい要因に なっていると言われるように,鳥取県においても団 員増のネックとして「保護者の負担増」を挙げる団 が最も多い.また,スポーツあるいはスポーツ少年 団への理解不足や誤解から,入団することにより競

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松 本 典 子

技力強化,選手養成につながるととらえる保護者も あって,保護者同士の考え方の違いが退団の原因に もなっていることがあげられている.

2.幼児の活動の場としての課題

 以上がスポーツ少年団の概況である.スポーツ少 年団のこのような状況下において幼児の運動活動が 展開されるためには,以下の視点からの検討が必要 と思われる.

(1) 活動内容について

 最も重視すべきは活動内容である.運動技術を巧 みに行うことよりも運動好きにすることが求めら れ,運動遊びを通して様々な動きや運動動作の獲得 を目指す幼児期においては,小学生やそれ以降の団 員の運動内容とは変わらざるを得ない.単に団員を 増やすことだけの目的から入団を受け入れ,小学生 と一緒に競技種目の技術練習的な運動メニューに よってのみ活動させるようなことが考えられている としたら,それは幼児にふさわしいとは言えないも のである.「技術向上」や「勝利追及」に重きを置 く傾向が少しずつ増えてきている現状からは,幼児 の活動だけでなく小学生の活動全般についても見直 し,スポーツ少年団の発足当初に掲げられた「競技 スポーツばかりでなく発育発達段階を考慮したス ポーツ活動のほか,文化・学習活動や社会活動など,

幅広い活動を展開する」11)という趣旨に立ち返るこ とも必要ではないかと思われる.

 この点において,幼児を含む子どもたちの活動内 容として,日本スポーツ協会から「幼児期からのア クティブ・チャイルド・プログラム(ACP)」12) 推奨され,前述した新資格である「スタートコーチ

(スポーツ少年団)」の養成カリキュラムへの導入 が考えられている.本研究においては,本プログラ ムがスポーツ少年団における幼児受入れのための要 の運動メニューになると考え,後にその内容につい ての検討を試みることとする.

(2) 指導体制について

 活発に活動する年上の子どもたちの姿を間近にす る環境は,幼児にとってこれほど刺激に富むものは なく必然的に運動に誘い込まれるものかもしれな い.しかしながら,多くの指導者は小学生を中心に 指導してきており,発達特性の異なる幼児期の運動 活動(運動遊び)をも担うことについては難しさが 感じられる.いずれにしても指導者には幼児期の発 達特性や適した運動内容を十分に把握しておく必要 があること,また単位団の限られた活動時間やス ペースで小学生と幼児に適したメニューで活動させ るための工夫が必要となろう.そのためには,指導 者や幼児を補助する,あるいは支援する指導者や リーダー,保護者などによるサポート体制が求めら れる.中学生リーダーが少なくなっている現状に あっては,幼児と指導者をつないで効果的な活動を 展開するために保護者の協力が欠かせないものとな る.そのほかの関係者も含めた指導者と保護者とが 協同で活動を展開できるかどうかが,スポーツ少年 団における充実した体制つくりのポイントになるよ うに思われる.

(3) 保護者の意識について

 親自身が幼児期の発達をよく理解し,ふさわしい 幼児期の運動活動への認識をもつことがまずもって 必要であろう.スポーツ少年団へ入団することによ り幼いうちから競技力を養うことを求めるのは,幼 児期の望ましい運動体験の面からもスポーツ少年団 の趣旨にも適合しない.保護者のこうした意識や価 値観は幼児の運動活動への影響が強いだけに重視さ れなければならない.そして, まだ充分に自立して 活動することができない幼児の場合は,通常の団員 と保護者との関係とは区別して考え,幼児を指導者 任せにしてしまうのではなく,保護者が指導に協力 する,それ以上に親子で共に活動するという意識や 態勢が,幼児の活動意欲を促す上で必要ではないか と思われる.

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3.幼児期の運動活動

(1) 幼児期運動指針

 幼児期の望ましい運動活動については多くの研究 が進められてきている.日本スポーツ協会において も,発育期のどの時期にどのような運動をすべきか を根拠として運動プログラムを作成する研究が進め られ,幼少期に身に付けておくべき基礎的な動きに ついて,その習得方法と効果的な指導法の研究13)

が行われている.また,文部科学省では平成 19 年 からの 3 か年に「体力向上の基礎を培うための幼児 期における実践活動の在り方に関する調査研究」14)

が実施されている.これらを基に平成 24 年文部科 学省より 3 歳から 6 歳の小学校就学前の子どもを対 象とする幼児期運動指針(以下,指針)が示された.

次には,幼児期の望ましい活動の根拠として指針を 取り上げ,運動内容や活動方針を中心にその概要を 掴むことにする.

1)目的

 指針では,「一人一人の幼児の興味や生活経験に 応じた遊びの中で,幼児自らが体を動かす楽しさや 心地よさを実感すること」,そして「幼児が楽しく 体を動かして遊んでいる中で,多様な動きを身に付 けていくことができるように,多様な遊びが体験で きるような手立ても必要であること」を述べ,身体 活動が毎日 60 分以上になるようにと示された15)

2)重点

 幼児期は,動きが多様に獲得され動きの種類の拡 大が図られるとともに,動きが上手になっていく動 きの洗練化も図られる時期であること,また心と体 が相互に関連しながら総合的に発達する時期である ことより,次の 3 点が重視されている.

① 多様な動きが経験できるように様々な遊びを取り 入れること

②楽しく体を動かす時間を確保すること

③発達の特性に応じた遊びを提供すること16)

3)運動内容

 身に付けさせたい基本的な動きの例として,「体 のバランスをとる動き」(立つ,座る,寝ころぶ,

起きる,回る,転がる,渡る,ぶら下がるなど),「体 を移動する動き」(歩く,走る,はねる,跳ぶ,登る,

下りる,這う,よける,すべるなど),「用具などを 操作する動き」(持つ,運ぶ,投げる,捕る,転がす,

蹴る,積む,こぐ,掘る,押す,引くなど)にまと め,これらを幼児の発達にあわせて体験できるよう にと述べられている17)

4)活動方針

 体を動かす遊びには特定のスポーツ(運動)のみ を続けるよりも多様な動きが含まれ,したがって 様々な遊びをすることで複合的な動きを経験し,結 果的に多様な動きを獲得できると述べ,特定の活動 ではなく様々な運動遊びの体験の必要性があげられ ている.また,幼児の自発性や主体性が尊重されな ければ楽しい活動にはなり得ないため,トレーニン グのように特定の動きばかりを繰り返したり,運動 の頻度や強度が高すぎ,特定の部位にストレスが加 わったりしないよう注意する必要性が指摘されてい る.加えて,幼児はその時期に発達する身体機能を 使って動こうとする特性があり,発達にあった遊び をすることが機能のいっそうの促進になること,活 動意欲を満足させることが有能感を育むこと,個人 差が大きいことを考慮するよう述べられている18)

5)発達特徴と留意点

 それぞれの年齢段階における発達特徴と適した運 動内容,および環境構成上の留意点は以下のとおり である.

① 3~4 歳:自分の体の動きをコントロールするよ うになり,次第に身体感覚を高める.「体のバラ ンスをとる動き」「体を移動する動き」留意点:

体を使った遊びの中で多様な動きが経験でき,

自分から何度も繰り返すことに面白みを感じる ことができるような環境構成が必要である.

② 4~5 歳:全身のバランスをとる能力が発達し,

操作するような動きも上手くなっていく.「用具

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松 本 典 子

などを操作する動き」留意点:まねをしたい動 きを見せてくれる友達,保育者,保護者の存在 が基本的な動きの獲得に大きく影響するため,

モデルとしての保育者の役割も求められる.

③ 5~6 歳:「基本的な動きの組み合わせ」ができる ようになり,目的に向かって集団で行動したり,

役割分担したりして遊ぶようになる.様々な動 きをより滑らかに遂行できるようにする.留意 点:全力で走ったり跳んだりすることや,挑戦 してみたいと思えるような組み合わせた動きが 含まれる遊びに,十分に取り組めるよう配慮す 19)

(2)アクティブ・チャイルド・プログラム

 スポーツ少年団においては日本スポーツ協会発行 の「アクティブ・チャイルド・プログラム」(以下,

ACP)の活用が奨められている.ACP には,「子ど もたちに幼児期からの運動習慣を定着させ,スポー ツの基礎となる動きを習得させることがスポーツ少 年団の使命」20)と述べられ,組織として幼児の受入 れを積極的に進めようとされていることがわかる.

そのため ACP では,指導者には幼児期の発達特性 をよく理解し運動内容を工夫して指導にあたること が求められ,指針を示しながら幼児期における運動 の意義や幼児期の発達特性がまとめられている.

 運動内容には,用具や手近にある物を使った例と して,ボール,ロープ,新聞紙を取り上げ,数種類 ずつの展開例が示されている.ボールでは,つく,

転がす,投げる,受ける,運ぶ,当てるなどの動き や,それらの動きをゲームに発展させるやり方など のように,それぞれの用具の特性をいかした遊び方 があげられている.さらに,鬼ごっこ,押しくらま んじゅう,かくれんぼ,ゴム跳びなどの伝承遊びが 取り上げられ,遊び方,発展のさせ方,安全上の配 慮が盛り込まれている21)

 指導の観点としては,多様な動きの体験,一定の 身体活動量と活動強度の確保,個人差への配慮,飽 きさせない工夫,認めること,楽しい雰囲気つくり,

こころの発達や社会性の獲得,異年齢交流の 8 項目 について述べられている22).これらより,集中力の 乏しさによる飽きさせない工夫の必要性や成長した 点を認めることにより有能感を育むことなど,幼児 の指導において留意されなければならない基本的な 事項が指摘されていることがわかる.さらに指導に あたっては,一方向の指導にならないようにし子ど もたちとの信頼関係を築く必要性を説き,そのため に肯定的な言葉かけを多くして安心できる雰囲気を つくること,子どもたちの主体性を尊重することを 重視するよう解説されている.そして,良い動きへ 導くために言葉で指導しようとするのではなく,合 理的な動作が必然的に生じる活動を工夫し,それに よって子ども自身に判断させることが求められてい る.このほかにも,バランスの取れた活動になるた めの「指導日誌」の活用,ほめ方,しかり方,家庭 との連携の図り方など,指導者として心得ておくべ き指導法についてきめ細やかに示されている23)

4.考察

 以上の内容をもとに,スポーツ少年団において ACP を指導書として幼児の運動活動を展開するこ とについて,前項の3つの視点から考察を進める.

(1)活動内容について

 ACP で取り上げられている用具や身近な物を 使った運動は,指針の「用具などを操作する動き」

に分類され,4 歳ころから体験させたい内容である.

用具は子どもたちの興味を誘い運動に引き込む魅力 をもつと言われており,操作性の動きに挑戦するこ とは,積極的に物と体を一体化させて動くことにな り,子どもたちの全身の協応性を高め調整力系の能 力を伸ばすことになる.さらに用具を使った運動は,

動かす用具自体の動きによって体の動かし方の適否 を子ども自身で判断でき,運動学習につなげやすい ことも指摘されている24).したがって,用具を使っ た運動を工夫して体験させることは小学生の活動に

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おいても効果が期待できる.取り上げられている用 具に限らず,単位団で使用される用具なども活用し ながら様々な動き体験へ導くことが望まれる.

 また伝承遊びは,かつては近所の子どもたちが集 まりメンバーに合わせてルールを柔軟に工夫しなが ら一緒に遊んでいたものである.ACP では,異年 齢の集団であるスポーツ少年団の構成特性と伝承遊 びの特性を重ね合わせて考えられていることがわか る.異年齢での活動機会の少ない現在の子どもたち にとって,異年齢交流を体験できる良い機会にもな る.またこれらの活動により,指針に分類されてい る「体のバランスをとる動き」「体を移動する動き」

に示される多様な動きの体験が可能であることは言 うまでもなく,伝承遊びの導入は効果的な手法と考 えられる.

(2)指導体制について

 ACP の指導理論は指針を基に構成され,幼児期 の発達特性や指導上の把握しておくべき内容が丁寧 に盛り込まれていることが確認できた.とかく大人 が陥りやすい言葉による良い動きへの指導を戒めて いる点は,小学生の理解の仕方との違いを的確に示 しており大切な視点である.これらのことから,

ACP で展開されている指導法の獲得により効果的 な指導が期待でき,ACP の指導者養成カリキュラ ムへの導入は意義あるものと判断する.

 一方,実際の活動の展開にあたり指導者やリー ダー,保護者などによる指導や関わり方については ほとんど触れられていない.展開の仕方については,

小学生と一緒に,活動の導入段階もしくは前半の活 動として取り入れる例が示されているだけであり,

それぞれの単位団の実態に合わせた体制つくりが前 提となっているように見受けられる.したがって,

幼児団員の人数や発達段階などにより具体的な実践 方法が考えられなければならないが,特定の指導者 のみに頼る方法では限界が感じられるところであ る.保護者を含めた体制つくりについての根本的な 見直しが必要ではないかと考える.

(3)保護者の意識について

 充分に自立して活動することができない幼児を含 めて実際の活動を展開する場合,家庭との連携が欠 かせない.そのため ACP においても保護者の理解 と協力を得るための工夫として,保護者説明会や研 修会等を利用してスポーツ少年団の趣旨や方針に共 感を得られるようにすることや,子どもの活動の様 子を家庭へ伝えることを促している.これらは確か に必要なことであるが,家庭はそのような関わりで よいのであろうか.

 親世代が多忙で子どもと一緒に遊ぶ時間をとりに くい現状は確かにある.そのためスポーツ少年団と しては,保護者に負担感を抱かせない配慮から活動 への関与を強く求めていないのかもしれない.しか し,保育施設では保育のプロのもとに子どもたちの 活動が展開されるが,スポーツ少年団の指導者はほ とんどが保育者ではない.もっと親や家族が一緒に なって子どもを育むことを考えるべきではないか.

親が側にいて見守り,あるいは一緒に活動して楽し む.その中で自然に生じる励まし,認め,ほめる言 葉かけほど子どもたちの意欲を高め,安心して活動 に取り組み,有能感を育むことができるものはなか ろう.親や家族が共に活動することで家庭での実践 につなげることが容易となり,日々の生活に運動遊 びを習慣化させやすくもなる.つまり,保護者の負 担を少なくするという考え方ではなく,親が一緒に 参加して遊びを展開することが幼児の発達を促すこ とにつながり,スポーツ少年団がその機会を提供し 支援する場であるという考え方をもっと示してはど うかということである.日本最大の少年スポーツ団 体であるスポーツ少年団が,今後その方針を明確に 打ち出し実践につなげることができれば,子どもた ちの成長への効果は大きいと考える.

今後に向けて

 日本スポーツ少年団ではドイツのスポーツ少年団 との交流事業が行われているが,そのドイツにおい

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ては地域のスポーツクラブが発達しており,幼児期 から親や家族と一緒に運動活動に親しむ習慣が定着 している.こうしたクラブの教室では,幼い子ども たちが親と一緒にフープやボールなどの用具を使っ て様々な遊びを楽しんだり,マットの上で転がった り,時には外から拾い集めた落ち葉を使って創作活 動に興じるなど豊かな活動の展開が見受けられる.

かつてこのようなクラブの指導書25)を調査した際,

それには活動内容を限定することなく手軽にできる ものから野外活動にいたるまで実に様々な内容が工 夫され,しかも個々の親子のつながりを深め子ども を集団に馴染ませる内容から,自立した活動,そし て集団としての調和を図るねらいをもつ活動まで工 夫し検討されていることがわかり,当時のわが国の 同種の活動との違いを感じた.つまり,幅広い体験 内容が個々の子どもたちの発達に即して,また家庭 での継続的な活動にもつながるよう配慮して考えら れていること,また個々の子どもたちが社会的関係 をつくり,集団で活動できるようになることを意図 して考えられているところに,一過性の体験型方式 との差があった26)

 幼児主体のこうしたドイツのクラブとスポーツ少 年団に幼児を受け入れようとする日本の場合とでは 事情は異なるが,子どもの健全な成長を願う趣旨は 同じである.スポーツ少年団が今後幼児団員を本格 的に受け入れるには,指導者の養成と同時にそれぞ れの団の実情に合わせてしっかりとした体制が考え られる必要がある.そのためにも,子どもが自立し て集団の中で楽しんで活動できるようになるまで,

親と指導者が協同で育んでいこうとする意識をより 高めることが重要と考える.交流事業を通してドイ ツのこのようなスポーツ文化に触れることができれ ば,さらに交流の意義が深まるようにも思われる.

 本研究を進めるにあたり,鳥取県スポーツ少年団 副本部長椿知夫氏および鳥取県体育協会生涯スポー ツ担当御﨑智徳氏にご協力いただきました.謹んで 感謝申し上げます.

1)文部科学省が委嘱した幼児期運動指針策定委員 会により先行研究に基づき平成 24 年 3 月に取り まとめ公表されたガイドライン.

2)日本スポーツ協会により公認スポーツ指導者制 度の改定が行われ,「スタートコーチ」が競技別 指導者資格として 2019 年度から,「スタートコー チ(スポーツ少年団)」は 2020 年度より養成される.

3)人々が,身近な地域でスポーツに親しむことの できる新しいタイプのスポーツクラブで,子ども から高齢者まで(多世代),様々なスポーツを愛 好する人々が(多種目),初心者からトップレベル まで,それぞれの志向・レベルに合わせて参加で きる(多志向),という特徴を持ち,地域住民によ り自主的・主体的に運営されるスポーツクラブ.

 スポーツ庁:総合型地域スポーツクラブ,

 http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/

mcatetop05/list/1371972.htm (2019. 2. 1).

引用・参考文献

1)『子どもの権利とスポーツの原則』,公益財団法 人日本ユニセフ協会,2018.

2)『ガイドブックスポーツ少年団とは』,公益財団 法人日本スポーツ協会,2018,p. 2.

3)前掲2),p. 3.

4)公益財団法人日本スポーツ協会:スポーツ少年団 登録 状況,https://www.japan-sports.or.jp/club/

tabid301.html (2019. 2. 1).

5)前掲2),pp. 5-20 抜粋.

6)前掲2),p. 5.

7)前掲4).

8)「平成 30 年度鳥取県スポーツ少年団市町村登録 状況一覧表」,公益財団法人鳥取県体育協会生涯 スポーツ推進委員会資料,2018.

9)「平成 30 年度スポーツ少年団活動に関するアン ケート調査」,公益財団法人鳥取県体育協会,

2018.

10)公益財団法人鳥取県体育協会:鳥取県スポーツ

(10)

少年団活動実態調査, http://www.sports-tottori.

com/wordpress/wp-content/uploads/ 2015 / 04 / sposyoanke.pdf (2019. 2. 1).

11)前掲2),p. 4, p. 11.

12)『幼児期からのアクティブ・チャイルド・プロ グラム』,公益財団法人日本スポーツ協会,2018.

13)公益財団法人日本スポーツ協会:平成 17~19 年度日本体育協会スポーツ医・科学研究,「幼少 年期に身につけておくべき基本運動(基礎的動き)

に関する研究」,https://www.japan-sports.or.jp/

publish/tabid669.html (2019. 2. 1).

14)文部科学省:体力向上の基礎を培うための幼児期 における実践活動の在り方に関する調査研究報告 書,http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/

youjiki/index.htm (2019. 2. 1).

15)幼児期運動指針策定委員会『幼児期運動指針ガ イドブック』,文部科学省,2012,p. 2.

16)前掲 15),p. 7.

17)前掲 15),p. 8.

18)前掲 15),pp. 7-13 抜粋.

19)前掲 15),pp. 14-16 抜粋.

20)前掲 12),p. 4.

21)前掲 12),pp. 35-78 抜粋.

22)前掲 12),pp. 79-81 抜粋.

23)前掲 12),pp. 82-110 抜粋.

24)松本典子「「用具などを操作する動き」の意義」,

『鳥取短期大学研究紀要』第 69 号(2014),pp.

1-8.

25) Lorenz K, u. G. Stein, Eltern Kind Turnen,

(Celle : Pohl-Verlag, 1988).

26)松本典子「親子体操〔Eltern-Kind-Turnen〕の 指導方法に関する考察」,『スポーツ方法学研究』

第 7 巻第 1 号(1994),pp. 83-91.

参照

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