NDC 501.9
分散制御系の最短時間最小次元オブザーバ
下 西 二 郎 西 山 宗 弘 富 田 信 昭*
(昭和52年4月28日受理)
Minimal Time and Minimal Order Observer for Decentralized Control Systems
Jiro SmMoNisHi, Munehiro NisHiyAMA, Nobuaki ToMiTA
(Received April 28, 1977)
This paper considers a state−observer for linear decentralized control systems. Namely, we assume that linear time−invariant discrete−time system has several control stations, there are no each station exchange between every control stations and each station has vector input−output.
In this paper, we will show that we can construct a minimal time and minimal order state observer at some control station, if and only if the decentralized control system is observable at that station. This observability for the decentralzed control systems has already defined by T. Yoshikawa and H. Kobayashi.
And then we also elarify that the minimal number of steps (minimal time) required in order that the output ef above observer coincides with the state of the system is the a+rs or equal to ct一}一B. Where a and B are integers determined fro皿structure of the decentraiized control systems.
1.ま え が き
同一の制御系の中に複数個の制御ステーションが存在 し,それらが異なる情報に基づいてそれぞれ割り当てられ た操作量を決定する制御方式を分散制御とよび,そのよう な系を分散制御系という。これは大規模系の制御(意志決 定)において,環境系,経済系,交通の流れの制御など現 実にもしばしば見られる系であり,理論的解析が望まれて いる新しい分野である。分散制御系が従来の集中制御門と 著しく異なる点はその情報構造であって,集中制御系での 仮定,条件のもとで確立されている多くの理論はそのまま では成り立たなくなる1)。
さて,分散制御系の場合も集中制御系の場合と同様に,
一般に各制御ステーションは系すべての状態を直接取り出 すことはでさない。このとき,いわゆるオブザーバ(状態 観測器)が必要とされよう。しかし,分散制御系に対する オブザーバの研究は見かけないようである。
筆者らは先に,離散時間型定係数分散制御系において,
*電気工学科
各制御ステーション聞には情報交換は存在しないものと仮 定し,ある一つのステーションでオブザーバが構成できる ための条件を考察した2)。すなわち,そこではある一つの ステーションで有限時間最小次元オブザーバが構成できる ための必要条件を明らかにし,それはそのステーションに おいて対象とする系が可観測であるということを示した。
しかし,そこでは各ステーションはスカラー入出力をもつ 系に限定されている。本稿では対象とする系のステーミョ ンはそれぞれベクトル入出力をもつ場合に拡張して取り扱 い,その最短時間性についても考察を加えた。その結果,
一つのステーションで最短時間最小次元オブザーバが構成 できるための条件は先に報告した条件と一致することが明
らかになったので報告する。
まず,第.2章で問題の記述を行う。続いて,第3章にお いて,前章で記述されたオブザーバの存在するための必要 十分条件を与え,その一般解を求める。さらに,そのオブ ザーバの最小次元数に言及し,最小次元オブザーバが必ず 構成できることを示す。第4章で,最短時間最小次元オブ ザーバがステーションiで構成できるための必要十分条件 は,対象とする分散制御系がステーションiによって可観
測となることであることを明らかにする。
なお,以下では本稿で用いられる記法にういて説明して おく。
Rn×n
AT
A−11n
On,m
ML
M−
N卜r M+
{.}
;n×nの次元をもつ実行列の集合
;Aの転置行列
;Aの逆行列
;n次単位行列
;n×mの次元をもつ零行列
;M:∈Rn×m, ranh M=mとするとき,s.
MLM:・・, Om,n, ranleM:■=n−mなる任意 の行列
.;Mの一般化逆行列
;Mの反射的一般化逆行列
;Mの疑似逆行列
;・の集合
(A,C):0.P;A∈Rnxm.,C∈Rnxmとするとぎ rank[C:riAT CT!…iATn−1CT]=nを満たす AとCの対。すなわち,AとCは従来め意味 での可観測対
2.問 題 記 述
ここではつぎの一連の方程式で記述されるV個の制御ス テーションをもつ分散制御系Sdにおいて,制御ステーシ ョン間に情報交換のない場合を考察対象とする。
Sd:x(le十1)=Ax(k)十Biui(k)十ZBIul(le) (1}
(J=11ATi)
yi(le)=Cix(le)(le−O,1一一一) . (2)
ただしx(k)EliRn, Yi(k)∈RMi, Ui(le)∈R「i, mi, ri≦;nと し,A∈Rn×n, Bi∈Rnx「i, Ci∈…RMi×nとする。
また,Bi, Ciはそれぞれの最大階数をもつものとする。
この系においては制御ステーションiは9i(le)を観測し Ui(le)を決定するものとする。(i一=1,2,……v)
制御ステーションに関してつぎの仮定を設ける。
(a)ステーションiは,係数行列A,Bl,…Bv, Ciに ついて既知とする。
(b)ステーションiは他の制御ステーションの操作特発 出構造は知らないものとする。
(i=1,2,…v)
さて,系Sdはつぎに記述される二つの制御ステーショ ンをもつ系S∂に置き換えることが可能である3)。
S∂:x(le十1)=Ax(ん)十Bノπノ(々)十Bノπ,(ゐ) (3)
yi(le)=一Cix(le)
yi(ゐ)=Cノκ(た)
ただし,Bゴおよび砺はそれぞれ[Bli….iBi−1iBi+1i…iBy]
と任意の[u1T(le)i…iuTi_1(le) luTi+1(le) …iUv(h)]に対 して,
Bj u, (le)=[Bii rlBi−iiBi+iE iBv][ulT(k)1
iuTi−i(k)IuTi+i(le)itzT.(le)]T (4}
を成立させるn×rank[BIi…iBHiBゴ+1i…iBv]なる行列
・Bゴおよびπノで菊る。
したがって本稿では以後系Sdtについて考察を進める。
なお,ことでは,制御ステーション間に情報交換がない場 合を取り扱うので,時刻kにおけるステーションiの情報
構造Zゴ(々)は
Zi(k) = {yi(O),・・・…yi(k), ui(O),・・・… ui(le−1)} (5)
である。
さて,系Sd においてステーションiの入出力を新たに 入力としてもつX次元の系Sを考えるとつぎのようにな
る。
S:z(le十1)=TAJz(le)十TAGyi(le)十TBiui(le) (6)
x一(le) == Jz(k)十Gyi(le) (7)
ただし,z(め∈RλぽSの状態変数x(le)∈Rnは出力であ る。また,T∈Rl×n, J∈Rn×2およびG∈Rnxmiはつぎの 関係を満たすものとする。
JT十GCi=In (8)
【定義】系Sd において任意の初期値x(0)および任意の 入力系列Ui(h),吻(le);le ・=O,1,2,……に対して M(k)==x(k) le一=O, 1, 2,・・・… (9)
とすることができるとき,Sは制御ステーションiにおけ るSd のオブザーバであるといい, SをSdeと表わす 。 SdOに対しては(1) z(々)が最:小次元ベクトルであること (最小次元オブザーバ),(2) SdOの初期値z(0)の設定が適
切でなかったために生ずる推定誤差が最短時間で零となる こと(最短時間オブザーバ)が実用上望ましい。以下では これらの条件(1),(2)を同時に満たすようなSdOを設計する ことを考える。すなわち,(6),(7)式において所望のT,J,G およびλを求めることである。このためには(8)式を満たす Gを事実上の設計パラメータとすればよい。なぜならば,
任意に選択されたGに対して(8)式を満たす」とTは必ず存 在し,かつ,このようなJとTは一意的ではないが特定の Gを選定したとき,(8>式を満たす」とTを用いて構成され たオブザLバはすべて等価となるからである4)。
3.最小次元オブザーバ
この章では,まず,ステーションiでオブザーバが構成 できるための条件を考察する。つぎに,オブザーバが構成 できるときtそれが最小次元数をもつようにできることを 示そう。
<定理1>系Sdノにおいてステーションiでオブザーバ が構成できるための必要十分条件は
rankCiBゴ=7σ励B ㈹ が成立することである。またこのようなGをGuと.記せばそ
分散制御系の最短時間最:小次元オブザーバ 下西・西山・富田
れは(11拭で与えられる。
Gu=V十(ln−VCi)Bl (CiBj )r一 (11)
ただし,VEiRn×miは任は任意である。
(証明)Sd の状態凝めとSの出力M(le)との聞の推定誤
.差をx(le)一晃(le)4−e( le)で表わせば(1),(2)式および〔6),(7〕
式から次式が得られる。
e(le十1)=(ln−GCi) {Ae(le)十B, uJ } {12)
e(o) 一J {Tx(o)一z(o)} a3)
ステーションiにはステーションブからの情報は伝達され ないことに注意すれば,ステーションiでオブザーバを構 成できるためには,Gに関する行列方程式,
(ln−GCのBノ;07z,7ゴ 〔14 が解をもっことが必要,かつ,十分な条件であることが囮 式から容易にわかる。このときa2)式は
e(le十1)=一(1.一GCi)Ae(le)
となる。ここで,Sの初期値z(0)をTx(0)と選べばQ3)式 よりe(0)・=Onであり,王@)=エ@):le・=O,1,・…・・となる ことは明らかである。
なお方程式囮式が与えられたとき,その解が存在するこ とと,(10)式が成立することとは同値の関係であり,その一 般解がal)式で与えられることは既に示されている5)。
続いて,ステーションiでオブザーバが存在するとき,
その最小次元数について考察しよう。まず,つぎの補題を 与える。
<補題1> 行列(In−GCi)の階数は, Gを適当に選ぶ ことによってn−miまで減ずることができる。すなわち,
min ranle(ln−GCi) =:n−mi {14 G
(証明) Ci∈RMixnは最大階数〃ηをもっから,次式を 満たす列変換行列Plが存在する。
CiPl一[1.i , O] mi (15)
n−Mi このP1を用いれば,
ranle(1.一GCi)=rank(1.一[P−IG I O])
一・ra・le[勉叢誌冠一☆一コa・・
mi
ただ・…一14[Pll GlP12 G2]猟とす・・
⑱式から明らかなように,Gをどのように選んでもln−mi は影響されない。よって(ln−GCi)の階数はn一御以上で ある。
<補題2>
G=Ci一〈:>rank(1.一GCi)=n−mi
(証明) 略文献5補題1参照
以上で得られた補題よりつぎの定理を得る.。
<定理2》
E.Q.D
働
ステーションiにおいてオブザーバが構成
できるとき,その最小次元を与えるGは必ず存在し,次元 数はn−miである。またそのようなGをGuMと表わせば 砺Mの一般解は次式で与えられる。
GuM==Ci一十(ln Ci Ci)
t[W十(ln−WCi)Bj (CiB] )rH] {18)
ただし,.W∈Rn×miは任意である。
(証明) (8)式および補題1日目明らかなようにSdOが 存在するためには系Sは最低n−mi次元必要である。した がって,(14式を満たすGの集合を{Gu}として{Gu}∩{GM}
なるG,すなわちG%Mが必ず存在することを示せば,GuM を用いて構成されたステーションiでのオブザーバは最小 次元となることがわかる。
まず,GuMが少なくとも一つ存在することを示そう。
このためには(11拭で与えられるGuに対してGu=Ci一とす るVが必ず存在することを示せば十分である(補題2参
照)。 (11)式は
ciG.ci一一civci十(ci−civci)Bj(ciBj).一ci (lg)
と変形される。よってV=Cゾとすれば⑲式の右辺はCiに 等しくなる。すなわちGu=Ci一である。またCi一は必ず存 在する。
つぎに,Vの一般解を求めるために,方程式
civci十(ci−civci)Bj(ciBj),一ci=ci mp)
を考えれば,その一般解VMは次式で与えられる5)。
VM=Cヂ十(1 一C,『q)W−Ci−Ci(In−WCi)Bゴ(CiBブ)一r 21)
このVMを⑳式に用いればGuMの一般解として(掬式を得
る。
ae式からlr−GuMCiはつぎのように書き表わされること が知られている5)。
InmGuMCi一一(ln−Ci−CiXln−WCi)(ln−BJ (CiBl ),HCi)
e2)
4.最短時間最小次元オブザーバ
オブザーバが実用上有効であるためには,それが最小次 元であることと共に,z(0)の設定が任意であっても有限 時間内で推定誤差が零となるようなものが要求される。し かもその時間は最短であることが望ましい。この章で示す 定理はこのようなオブザーバが構成できるための必要十分 条件を与えている。定理の証明に先立って二,三の補題を 与える。
<補題3> 7伽々qBブ=ranleBノであれば,系S dおよ びステーションiの観測方程式を次式のように正則変換で
きる。
S d:x(k十1)=A年(le)十BiUi(ん)十Bノ麗ゴ(ん)
ずが(k)=C∫努(々)
ここで,
鋤の22
煮全
AlllA12iA13iA14 ri
A21iA22iA23iO
ハ ド バ バ ロ
A31 i A32 i A33 i O
圏 I
A41iA42iA43:A44
7/ mi−7/nl−mi十7ゴn−7ゴーπ1
[一一セ壬一.
喉
7ゴ
rl
mi−rj n1−mi十7ゴ
mi−ri nl−mi十rj n−rl 一nl
n一「ゴーn1
三三ピ÷⊥耗:一瓢
η mi−7ゴnl−mi十アゴn一,.ノーnl
(25)
ただし,nlは適当な整数であり, C22;正則,(A33, A23);
O.Pである。
(証明) ranle Ci Bl =瓶嬬Bゴならば適当な正則行列 N1, T2が存在し, S dおよびステーションiの観測方程式
に
匹(k)=N1」罵(々) . 飼 勇(海)=・T2 yi(le) ⑳ なる変換を加えればそれらは次式で示す係数行列をもつ系 に正則変換される3)。
囲蕪鴬撫圏
プノ nl n一η一%1
一障L ⑳
螂叫誓三尉鋸
rJ nl. n−rJ 一nl ここで(全22,⊆22);0.Pである。
(30)
さらに,922が最大階数〃η一7ノをもっことに着目すれば,
適当な列変換行列P2−1∈Rnlxnlが存在し922を(31)式のよう に分割できる。
g22.A.一C22P2−1==[ C22 1 O ]mi−rl (31)
mi−rj nl−mi十rj
このときC22は正則行列である。P2を用いてつぎの正則行
列を定義する。
補議誰∴
rJ nl n−rJ 一nl
間
したがって(28)から(30)式をもつ系にX(k)=・N2x(k)なる変換 を施せばSdtに変換されることがわかる。
なお,
叫驚凄1訓瓢蕩
mi−7ブπ1一 %一7ゴ
C,LA[ e22 1 O)mi−r」 (33)
mi−rj%1一吻ゴ十η
とすれば(As, Cs);0.Pならば(A33, A23);Q.Pであるこ とは既に示さ.れている6)。 E.Q.D.
<補題4>3)系SdtがZi(k)のもとでスラーションiによっ て可観測であるための必要十分条件は
i) 7一々C∫Bノ=7α勿んBゴ 岡 が成立し,かつ,系Sd およびステーションiの観測方程 式をSd に変換したとき,
ii)A44がベキ零行列 圃
となることである。ここで,可観測とは,適当な有限時刻 みにステーションiがZ∫(ll)を用いてx(le)を一意に決定 できることをさす。
(証明) Sd に対する可観測性の定義および補題4の 証明については文献3を参照されたい。
補題3および補題4よりつぎの定理を得る。
<定理3> 系Sdノにおいて,ステーションiで最短下 聞最小次元オブザーバを構成できるための必要十分条件は Sdtが情報構造Zi(k)のもとでステーションiによって可観 測となることである。
(証明) 十分性;Sd がZi(le)のもとでステーションi によって可観測とする。このとき,ran leCiBl =rankBゴで あるから,ステーションiにおいて最小次元オブザーバを 構成するGuMが存在することは定理1および定理2から 明らかである。したがって,ここでは(ln−GttM)Aを指数 最小のべキ零行列にできる*ことを示せば十分である。.す なわち,7σ擁qBブ=7σ癖BノであることよりSd をSdに変 換する正則行列N1, N2およびT2が存在する。よってこれ らを用いて(ln−GuMCi)Aを相似変換すれば次式を得る。
N(ln−GuMCi)AN 14(ln GuMCi)A (sa}
ただし,N会N2N1, GuMANGuMT2−1である。
*つぎの関係がある。Aがベキ零行列⇔Aの固有値がす べて0
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相似変換は固有値に関して不変であるから,以後(36)式に ついて考察を進める。
さて,Ci, BゴおよびGuMを用いれば(22)式はつぎのよ うに表現できる。
バ ね ね ロ バ
1バG錫Mq=(1.一C−iCi)(ln−WCi)
(ln−Bノ(CiBブ)一rCi) 圃 ただし,W=NWT2−1である。ここでCiの一般化逆行列 およびCiBノの反射的一般化逆行列としてはそれぞれの性 質を満たすものであれば任意であるから,ここでは以下で 与えられるそれぞれの疑似逆行列を用いる。
f ir」 i O ] r」
喉llllll酬撫
rブ 吻一η
(CiBノ)+{1・iio⊃η
η mi一「」
(38)
(39)
㈱式および劒式がそれぞれの疑似逆行列となっていること は容易に確かめられる。これらの疑似逆行列を用いて(37)式 を計算すれば次式を得る。
In−GuMCi
ir. ...p... .L...g.....1 .....g. .tp..一..]r」
o 1 o 1 o i o imi−ri
「ll ⊥絶て⊥lllllllllll[⊥物一晒⑳ L o 1 r2 1 o i i in−r] 一ni
7/ mi−rti,nl−miH−rノ,n一アゴーπ1 ただし,
[一一脆一一}一一一腕.]7ブ
W2i i W22 l mi−rj
W全・一一一一:一一一トー一一;…一一一 〔41)
罵1藩㌃1濡㌶
7ブ 物一η
とするとき,「1,「2はそれぞれ,「1全一W32C22,「2A
−W42C22である。したがって(ln−G MCi)Aはつぎのよ うになる。
(ln−GuMCi)A=
o i o : o l o
o l o l o li o
ムL31 : ムL32 i ム」33 [ O
A41 li A42 i A43 i A44 tV N N N
(42)
ここで A31全A31十rlA21, A32全A32十丁1A22, A33全A33十
TIA23, A41b.A41十r2A21, A42AA42十丁2A22, A43−A43十r?
A23である。
皆式においてA44は仮定よりベキ零行列である。よって
(1ザG泌C∂Aの0以外の固有値はA33の固有値に等し い。結局,(ln−GuMCi)Aをベキ零行列にでき.ることを示 すためには,A33の固有値すべてを0にできることを示せ ばよいことになる。ところが,(A33, A23);0.Pで.あるか ら「1すなわち,W32を適当に選ぶことによってA33 = A33
+riA23の固有値は任意に指定できる7)。
なお,A44のべキ零指数をα,(A33, A23)の可観測性指 数をβとするとき,最短時間(最短ステップ数)は高々 α+βであり,そのようなW32を選ぶことができることは 既に示されている5)。
必要性;ステーションiにおいて最短興銀最小次元オブ ザーバが存在するものとし,このときのGをG。Mとする。
このとき,塀嬬Cβゴニ7σ鴻Bノの関係が成立していること は定理1,定理2より明らかである。このとき,補題3で 用いた変換行列N,T2が存在し,(ln−G。M)Aは(42>式の形 に変換される。しかるに,(ln−GoM)Aはべキ零行列であ るからA44はべキ零行列でなくてはならない。よって補題 4よりSd はZi(fe)のもとでステー一・一ションiによって可観測 である。 E.Q.D なお,従来の集中制御系においては,その系が可観測で あることは最短時聞最小次元オブザーバが構成できるため の十分条件に過ぎないが8),ここで考察した最短時間最小 次元オブザーバが構成できることと,分散制御系がステー ションiで可観測であることとは同値の関係にある。その ちがいは,分散制御系に対する可観測性の定義に関係する ものである。
5.あ と が き
.複数の制御ステーションをもつ分散制御系において,あ る一つの制御ス.テーションでオブザーバが構成できるため の条件について考察した。ここで対象とした系はそれぞれ の制御ステーションがベクトル入出力をもつ線形定係数離 散時間型であり,各制御ステーション間には情報の交換は ない場合である。
最初に,ある一つの制御ステーションでのオブザーバを 考察しようとするとき,注目するステーションiとそれ以 外のすべてのステーションゴの二つをもつ系に置き換えて 考えればよいことを示し,そのような系においてステーシ ョンiがオブザーバを構成できるための条件について考察
した。
続いて,ステーションiでオブザーバが構成できると き,それを最小次元とするような解が必ず存在することを 明らかにし,その一般解を与えた。
最後に,実用上最も有効とされる最:短時間最小次元オブ ザーバが構成できるのは,対象とする分散制御系がステー ションiによって可観測であるとき,かつ,そのときのみ であることを明らかにした,ただし,ここでの可観測性の 意味はステーション幼規時刻での状態X(k)を一意に決 定できるという意味である。
なお,有限時間内に推定誤差を漸近的に零に近づけるよ うな,いわゆる有限時間最小次元オブザーバが構成できる ための必要十分条件は,S 4におけるA44のすべての固有値 が1より小であることである。換言すれば,圏式において
([一一一一鑑一i・一一一三一ヨ[922・・])が検出可能であ・・
とを付記しておく。
最後に,.本稿を通読下さり,有益な御指摘並びに御助言
をいただいた神戸大学工学部教授前川禎男,助手雛元孝夫 の両先生に深く感謝の意を表する。
文 献.
1)吉川,システムと制御,21−1(昭52−1),51 2)下西・三元・前川,第21回JAACE学術講演会前刷,
(昭52−5),27
3)吉川・・小林,SICE論文集,11−1,(50−2),38
4 ) E. Tse. and M. Athans, IEEE Trans. Automutic Control, AC−15, (1970), 416
5)明石・今井,システムと制御,20−11(昭51−11),631
6 ) B.Gopinath, Bell System Tech. J., 50−3(1971),1063 7 ) W.H.Wonham, IEEE Trans. Automatic Controll.
AC−12 (1967), 660
8)西村・長田,SICE論文集9−6(昭48−12),665