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教師を目指す学生のための相対性理論

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Academic year: 2021

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(1)

教師を目指す学生のための相対性理論

矢島裕介* (2018 年 8 月 31 日受理)

Relativity for Students Seeking to Become Elementary and Secondary School Teachers

Yusuke Yajima* (Received August 31, 2018)

       

*茨城大学教育学部実験物理学研究室(〒310-8512 水戸市文京2-1-1; Laboratory of Experimental Physics, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).

教師を目指す学生のための相対性理論

矢島裕介*

(2018年 8月31日 受理)

Relativity for Students Seeking to Become Elementary and Secondary School Teachers

Yusuke YAJIMA*

(Received August 31, 2018)

Abstract

A comprehensive exposition on the theory of relativity, more specifically the theory of special relativity, particularly suited for would-be teachers of elementary and secondary schools has been presented.

はじめに

「相対性理論」は,生みの親であるアインシュタインの名前やSF映画などにより,一般の人々に とって最も馴染みのある物理学の理論になっている。したがって,子ども達は「相対性理論」につい て学校で学習することはないにもかかわらず,「相対性理論」という言葉やそれが大体どんなことな のかを知っている場合が多い。したがって,子ども達を指導する立場にある教師は,理科の授業で「相 対性理論」を教えることはないものの,日常生活の中で「相対性理論」に興味を抱いた子どもには適 切な説明が行えることが望ましい。本稿では,子ども達が特に興味を持ちそうな「相対性理論」に 関する話題を中心として,物理学の言葉を用いた単なる物“語”ではなく,物理学の基礎的な事項 を踏まえて物“理”として「相対性理論」を理解できるようにした。将来教師になることを目指し ている学生は,自信を持って理科の指導が行えるようになるために,また,子ども達に信頼される 教師(安心して理科の授業が受けられる先生)になるために,一度は通過しておくことを勧める内 容である。

* 茨城大学教育学部実験物理学研究室(〒 水戸市文京 ; Laboratory of Experimental Physics, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).

(2)

教員志望学生のための相対性理論

ここで説明する「相対性理論」は「特殊相対性理論」,「特殊相対論」あるいは更に簡単に「相対 論」などと呼ばれる理論でこれまでの勉強してきたであろう力学の出発点だったニュートンの運動 の法則が17世紀の物理学の偉大な成果だったのに対してこちらは20世紀(始め)の画期的な成果 でありニュートンに対してアインシュタインが登場することは良く知っているだろう。またこの 理論の合言葉が“光速度不変”であることも有名である。そしてややこれに隠れ気味ではある が,“相対性”というコンセプトもこれと同じように重要なキーワードである(だから「相対性理論」

と呼ばれる)。ここでは,“光速度不変”と“相対性”からどんな話が展開できるのかを考えよう。

光速度・特殊相対性理論:ニュートンの運動方程式(運動の第2 法則)は加速度ベクトル(位置ベ クトルrを時間で2回微分したもの)と力Fが比例するというものであった(比例定数が質量m):

2 2

md dt

Fr

。時間で2回微分してしまうのだから,位置ベクトルに時間の一次式

a tb

を加え

r

a

ra tb

にしてもこの方程式には全く影響が現れない:

d

2

r

a

dt

2

d dt

2

r

2。しかし,時

間で1回だけ微分して速度を比べてみると,これらはaだけ違っている:

d dt r

a

  d dt r   a

つまり,時間の一次式で結ばれたこれらの位置ベクトルは,一定速度aで相対的に運動する座標で 決めた位置ベクトルなのだ。位置ベクトルをこのような条件で変更するのが「ガリレイ変換」であ る。つまり,ある位置ベクトルでニュートンの運動方程式が成り立てば(これが「慣性系」),其れ からガリレイ変換で導かれる位置ベクトルでも同じ運動方程式が成立つ。したがって,これも「慣 性系」であって,変換前の位置ベクトルと完全に等価だ。互いに一定速度で運動する座標が全て等 価だということは,そもそも空間に対して“静止”(絶対静止)することはできないということにな る(せいぜい何かに対して,例えば地球表面に対して相対的に静止するだけ)。これは何とも気持ち が悪いので,ニュートンの発見した運動法則が正しいことが認められた後も絶対静止を探す努力は 続き,その手掛りとして光速度の測定がいろいろ試みられたのである。

速度に関する私たちの“常識”は大体図1のようである。ここで,座標系Aと座標系Bでの速度 の関係は,

図1 速度の常識 見方を変えると・・・

座標系BAのx軸方向に速さvで運動している:

信号の速さは向きによって異なる.㻌 x’

y’㻌

2 2 v

c  㻌

c+v c-v

2 2 v

c  㻌

x y

c c

c c c

c c

c

座標系A:

信号が一定の速さcで広がる.

(3)





vy vy

x v x v v

' '

(1)

である。座標系Aでは,vx2vy2c2だから,(v'xv)2v'y2c2となる。つまり,座標系B では向きによって速さc’が変化する:

2 2 2

2 ' '

'

v v c 2 vv v

c

x

y

 

x

2)。 次に,光速度測定の試みの歴史を少し纏めておく。

■17世紀(中世)

★光速度無限派デカルト(フランス人15961650)

☆光速度有限派ガリレオ(イタリア人15641642)⇒しかし,光速度の測定には失敗(5km離れ た助手との間でランプの光を点滅させて測定しようとした)。

■レーマー(デンマーク人)の実験(1675) 木星の衛星の公転周期(木星の影

(蝕)から出てくる周期)を測定

(図2)

⇒一定ではなく地球が木星から 遠ざかるにつれて遅れた。

《初めて光速度を捕らえた》

■ブラッドレー(イギリス人)の実験(1728)

“雨の電車”の実験(図3)

半年後には望遠鏡の向きを変えな いと星が見えない(星の方角が違 って見える)

⇒約40秒の向きの変更が必要

⇒光速度は約30万km/s

太陽

地球 木星

衛星

図2 レーマーの実験

図3 ブラッドレーの実験 電車の窓

雨の跡 A

C B

AB:BC=雨の落下速度:電車の速度㻌

公転の速さ:

~30km/s㻌 地球 望遠鏡

遠くの星

見かけの星の方向

(4)

■フィゾー(フランス人)の実験(1849) 回転する歯車を通り抜ける光(図4) 重りで引張って歯車を回す。

①歯車の回転がゆっくりの時 は⇒歯車の谷を通り抜けた 光が鏡で反射して同じ谷か ら戻ってくる(見える)

②歯車の回転がだんだん速く なると⇒反射してきた光が 歯車にぶつかってしまう

(見えない)

③歯車の回転がもっと速くな ると⇒反射してきた光が隣 の谷を通って戻ってくる

(見える)

⇒光速度は311400kms(現在知られている値と5しか違わない)

■マイケルソン(アメリカ人)の実験(1926) 回転鏡の実験(図5)

モーターで回転鏡を回す。フ ィゾーの実験と大体同じ理屈。

⇒光速度は300000kms(誤 差1以下)

■マイケルソン-モーレイの実験(1881): 干渉計の実験(図6)

水銀に浮かした干渉計をいろいろな向きに回し て反射光A,Bの干渉を調べた。光の速さが進 行の向きによって変わるなら顕微鏡で見る光が 明るくなったり暗くなったりするはずだが結果 は変化なし(一日のうちのどの時間でも,一年 のうちのどの季節でも)。地球は一日に一回自転 し,太陽の周りを約30km/sで公転しているの に...

蝋燭

歯車

重り

8km

図4 フィゾーの実験

図5 マイケルソンの実験 鏡

サンアトニオ山

光源 回転鏡8面,12面,16面など

(ウィルソン山)

35km距離精度5cm以内

図6 マイケルソン-モーレイの実験 光源

鏡A㻌

鏡B㻌 反射光A㻌

反射光B㻌 顕微鏡

半透過鏡

(5)

⇒光の速さは見る人の運動の速さや向きに依らず一定値(300,000km/s)。

ローレンツ変換:マイケルソン-モーレイの実験により,光は観察する人の運動の速さや向きに依 らずどの方向にも一定の速さで進むこと(光速度不変性)が明らかになった。これにより絶対静止 の概念は否定され,一定の速度で相対的に移動している座標(観測者)が皆同等な“相対的”な世 界観が支持されたわけだ。ただ,誰が見ても光の速度が変わらないように見える,というのはこれ までの速度に関する常識とは相容れないものであり,今までの考え方に何らかの変更が必要なこと も分かった。どのような変更であるべきか?“相対性”は堅持しつつ“光速度不変”を取り込むの である。教科書ではこれらを同時に取り込んで変更を実施しているのだが,ここではこれらを一つ ずつ取り込んでいってみよう。これは少し遠回りだが,それぞれの意味が分かりやすいと思うので。

ある点から出た光をAさんとBさんが 観察する。光が出た瞬間はAさんとBさ んは光の出た場所にいるが,BさんはA さんに対して光の進む方向に速さvで運 動しているとする(図7)。時刻tでの光 の位置が,Aさんの座標でxA,Bさんの 座標でxBになった。

★常識:常識では,AさんとBさんにとっての時刻tでの光の位置の関係は,

vt x

xBA (3)

なのだから,Aさんの見る光の速さ

c

A

x t

A Bさんの見る光の速さ

c

B

x t

B は,

v t c

vt x t

cB xB A  A

 (4)

のようにvだけ違うはず。これは実験と合わない!《光速度は誰が見ても一定値c

☆変更(修正):これを実験と合うように修正するにはどうしたら良いだろう?

ステップ①:時刻tをAさんとBさんで共通にしないで,Aさんの時刻tAとBさんの時刻tBを考 える。そして,式3は,

A A

B x vt

x   (5)

にする。

ステップ②:式3や式5ではAさんとBさんの位置座標の関係に時刻が混ざり込んでいる。そこで,

AさんとBさんの時刻の関係にも位置座標を混ざり込ませて,

A A

B t Ax

t   (6)

としてみる。ここで,混ざり込みの度合いを示す定数Aは,常識(tBtA)からして非常に小さい はず。

ステップ③:光速度はAさんにとっても(

x t

A ABさんにとっても(

x t

B B)一定値(c)。し たがって,式5と式6から,

Ac v c Ax t

vt x t x t c x

A A

A A B

B A

A

 

 

 1 (7)

のはず。これからAを計算すると

A v c

2なので(vが小さければ0に近い!),式6は A

B v

図7 相対運動する観測者

(6)

A A

B x

c t v

t   2 (8)

でなければならない。

こうして,AさんとBさんの見る光の位置と時刻の関係が,常識の



A B

A A B t t

vt x

x (9)

から





A A B

A A B

c x t v t

vt x x

2

(10)

に変更された。この変更は,日常的な運動の速さ

v  c

ではほとんど表れてこないが

t

B

t

A

式9の常識では説明できなかった光速度不変の実験事実に合っている。

ステップ④:しかし,式10にはまだ問題がある。何が問題か?これを見るために,式10をxAtA

を未知数とする連立方程式と考えて解いてみる。式10の(上の式) +v×(下の式)でxAが,

v c

2

×(上の式) +(下の式)でtAが求まり,

 

2 2

2 2 2

1 1

1 1

A B B

A B B

x x vt

v c

t t v x

v c c

  

 

 

 

    

   

(11)

となる。

ここで,式10のことを思い出してみよう。式10は,Aさんの見る光の位置と時刻からBさんの 見る光の位置と時刻を導くルールであった。ところで,AさんとBさんは相対的に速さvで運動し ているのみであり,どちらかが他方とは異なる特別な立場にあるわけではない。したがって,式10 とは反対に,Bさんの見る光の位置と時

刻からAさんの見る光の位置と時刻を導 くルールも形式は式 10 と同じはずであ る(図8)。すなわち,式10の下付添え 字“A”と“B”を入れ替え,vを-vに変 更して





B B A

B B A

c x t v t

vt x x

2

(12)

とすれば,これがBさんの見る光の位置と時刻からAさんの見る光の位置と時刻を導くルールにな るはずだ。しかし,残念ながら,式11は式12とちょっと(

1/ (1  v c

2 2

)

の部分だけ)ちがってし まった。このままだと,Aさんの見る光の位置と時刻からBさんの見る光の位置と時刻を導く時と,

Bさんの見る光の位置と時刻からAさんの見る光の位置と時刻を導く時で,異なるルールを使わな ければならなくなってしまう。だが,もとよりAさんとBさんは同等なのだから,結局どの場合に どのルールを使えば良いのかが分からなくなってしまうということだ!ちなみに,式9の常識ルー

A B

-v 図8Bさんから見たAさんの運動

(7)

ルでは,これをxAtAを未知数とする連立方程式と考えて解いた場合も,下付添え字“A”と“B” を入れ替え,vを-vに変更した場合も共通に



B A

B B A t t

vt x

x (13)

となり,ルールとして同等になっている。このように,同等な人に共通のルールが成立つことを「相 対性原理」と言っている。相対性原理が成立っていないと,どんな時にどんなルールを適用したら 良いのかが判断できないのだ。式9の常識ルールは,相対性原理についてはOKだが光速度一定の 実験事実と合わない。一方,式10の変更版では光速度は一定にできたが相対性原理が成立たなくな ってしまった。ではどうしよう?

ステップ⑤:式10の変更版ルールを相対性原理に合うように更に変更してこの問題を解決しよう。

式10の両方に共通の定数Bをかけて,

 







 

 

A A B

A A B

c x t v B t

vt x B x

2

(14)

としてみる。共通の定数をかけるだけなら,せっかくたどりついた光速度一定(

c x t

A A

x t

B B の性質を壊すことはないから。ここで,式9の常識ルールからして定数Bは非常に1に近いはず。

先程,式10をxAtAを未知数とする連立方程式と考えて式11を導いたのと同様にして,式14 より,

 

 

2 2

2 2 2

1 1

1 1

A B B

A B B

x x vt

B v c

t t v x

B v c c

  

 

   

    

   

(15)

が導ける。相対性原理が成立つには,これが式12の添え字“A”と“B”を入れ替え,vを-vに変 更した,

 







 

 

B B A

B B A

c x t v B t

vt x B x

2

(15)

と一致しなければならない。したがって,

B

2

 1 (1  v c

2 2

)

より,

B  1 1  v c

2 2となる。予想 通り,定数Bvが小さければ1に近い!

◎:かくして,光の速さが誰にとっても一定となるという実験事実(光速度一定)と,同等な人に は共通のルールが成立つという原則(相対性原理)の両方を満たすルールが見つかった。すな わち,同じ出来事(進行している光の位置と時刻)を,Aさんが位置xAで時刻tAに起こったと 判断し,Bさんが位置xBで時刻tBに起こったと判断したとしたら,AさんとBさんの位置座 標と時刻は,

(8)

2 2

2

2 2

1

1

A A

B

A A

B

x vt

x v c

t v x t c

v c

  

 

  

 

 



(16) あるいは同じことだが,

2 2

2

2 2

1

1

B B

A

B B

A

x vt

x v c

t v x t c

v c

  

 

  

 

 



(17)

の関係で結ばれる。これが「ローレンツ変換」である。AさんとBさんの相対的な運動の速さv

光 の 速 さ c に 比 べ て ず っ と 小 さ け れ ば , 式 16 は 式 9

 

 

 

A B

A A B

t t

vt x

x

に , 式 17 は 式

13

 

 

 

B A

B B A

t t

vt x

x

となって常識の(ガリレイ変換の)世界に戻れる。

「ローレンツ変換」から何が分かる?:後の話は,このローレンツ変換を注意深く使うことに尽き る。

.同時とは

★Aさんの座標の別の場所xAxAで同じ時刻tAに何かが起こった。この出来事はAさんに対して 速度vで運動しているBさんにとっても同時刻か"

☆それぞれの出来事が起こった時刻はBさんにとっては

' "

2 2

' "

2 2

,

2 2

1 1

A A A A

B B

v v

t x t x

c c

t t

v c v c

 

 

 

(式18

である。したがって,

 

' " ' "

2

1

2 2

B B

v

A A

t t x x

c v c

   

(式19

となり同時刻とはならない。すなわち,ある人にとって同時刻に起こったことでも,同じ場所で起 こったこと(xA'xA"0)でなければ,その人に対して運動している別の人にとっては同時刻に 見えない。これが,「同時の相対性」と呼ばれている効果である。

.ローレンツ収縮

★長さLの棒が長さ方向に速度vで運動している時,この棒の長さはLに見えるか?逆に言えば,

長さLの棒に対して長さ方向に速度vで運動している人に,この棒の長さはLに見えるか?

☆棒の長さがLということの意味は?棒につけた座標系で,棒の両端の座標xBおよびxBが,xB

xBLになっているということ。この棒の座標xBおよびxBを,棒に対してvで運動してい る人が時刻tAに見れば,

(9)

' "

' "

2 2

,

2 2

1 1

A A A A

B

x vt

B

x vt

x x

v c v c

 

 

 

(式20

で,この人には棒の長さLAxA"xA'

" '

1

2 2

1

2 2

A B B

Lxxv vLv c

(式21)

に見える。なお,式 20 の符号“±”はどちらでも同じ(引算すればなくなってしまう)。つまり,

棒の長さは,棒に対して相対的に運動している人には

1  v c

2 2だけ短く見える。これも,vの大 きさが日常的な範囲では1とほとんど変わらないから我々は気付かなかった!この効果が「ローレ ンツ収縮」と呼ばれている(英語では“Lorentzcontraction”)。

.時計の遅れ

★時間刻み(カチ,カチの間隔)がtの時計が速度vで運動している時,この時計の時間刻みは止 まっている時と同じtになるか(「同じ」が常識)?逆に言えば,時計に対して速度vで運動して いる時,この時計の時間刻みどうなる(「変わるわけない」が常識)?

☆時計の時間刻みがtということは,時計の座標の原点(時計のある場所)xC=0で,ひとつの‘カ チ’の時刻tCと次の‘カチ’の時刻tC”の間隔がtだということ(ttC”-tC)。これらの時刻tCtC”は,時計に対して相対的にvで運動している人が測定すれば,

' 2 '

'

2 2 2 2

"

"

" 2

2 2 2 2

1 1

1 1

C C

A C

C C

A C

t c v x t

t v c v c

t c v x t

t v c v c

 

  

  

 

 

  

  

(式22)

であり,この人にとっての時間刻みの間隔は,

" '

" '

2 2 2 2

1 1

C C

A A A

t t t

t t t

v c v c

    

 

(式23

となる。つまり,自分に対して運動している時計の時間刻みは,止まっている場合に比べて

2 2

1 1  v c

倍だけ長くなる(これも,vの大きさが日常的な範囲では1とほとんど変わらない から日常生活には殆ど無関係だが・・・)。同じ時計の時間刻みが長くなるということは,全ての物 理現象がゆっくり進行するということであるから,例えば,運動している人の寿命は長くなる。

ただし,本人は自分の時計(自分に対して止まっている時計)で自分の寿命を計っているから寿 命が長くなったと実感できるわけではなく,むしろ,自分に対して運動している周りの世界では 自分より速いペースで時間が進行していると感じるだろう。この効果を,「時計の遅れ」,英語で

(10)

は“timedilation”(堅苦しい訳では「時間伸張」とか「時間膨張」など)と言っている。ここで,

注意すべきことは,速いペースで進むのは周りの世界の自分と隣り合う場所(自分と一緒に移動 している)での時間であり,周りの世界の特定の場所での時間は逆に自分の時間よりゆっくりと 進行するのだ。要するに時計は同じ場所で見た時の時間刻みがいちばん速くて(「固有時」と言う), 動き出すと刻みは遅くなる。

.双子のパラドックス

これは,数値を計算しやすい値にしてやってみよう。地球から4光年離れた星(地球に対して静 止しているとする)に,速さが0.8c(cは光速度)のロケットで行って直ぐに帰って来ることを考 える。ここで“4光年”とは,光の速さcで進んで4年かかる距離(4c)のことである。

往復に必要な時間を,①地球に残った人の立場と,②ロケットに乗った人の立場で考えてみる。

どちらの立場でも相手は同じ速さで遠ざかり同じ速さで近づくのだから,再会した時にはどちらも 相手の時計にはその速さ分だけの遅れが生じていると推定する(「時計の遅れ」の効果)。つまり,

立場を変えると遅れる時計が逆になる,これが“パラドックス”なのだが,これは,次のような考 え方で解決できる。

①地球に残った人の立場:c を光の(通常の秒速ではなく)“年速”とすれば,星までの距離は 4c だから往復の距離はその2倍で8cとなる。一方ロケットは年速08cで進むのだから,往復の所要 時間は10年である。

②ロケットに乗った人の立場:この立場では地球と星の距離は4光年ではない!この4光年は地球 に対して(そして星に対しても)静止している人が見た距離(長さ)であり,地球に対してvの速 さで運動している人にとってはこの距離は

1  v c

2 2倍に短くなる(ローレンツ収縮)。その結果,

ロケットに乗った人にとっての地球と星の距離は,v=08c を使って(

1  v c

2 2

 0.6

,行きが 0.6×4c=2.4cで帰りも同じく2.4cとなり,往復距離は4.8cになる。この距離を年速08cで進むの だから,所要時間は6年となる。つまり,双子の一方がロケットに乗り他方が地球に残ったとすれ ば,ロケットが地球に戻って来た時にはロケットに乗った方が4歳分若くなっている。

.速度の合成

★Aさんに対してBさんが速度vで運動し,Bさんに対してCさんが速度wで運動している。この 時,CさんのAさんに対する運動の速度uは?常識ではuvwなのだが・・・。

☆3人は,最初は同じ場所にいたとしょう。Cさんの位置は,Cさんの位置座標では0であり(xC=0), Bさんの位置座標では式16または式17を使って,

x

B

wt

C

1  w c

2 2 (式24)である。ま た,同じようにして,Cさんの時刻tCは,Bさんの時刻tBと,

t

B

t

C

1  w c

2 2(式25)の 関係になっていることが分かる(当然,xBtB=wになっている)。

では,Bさんが見たこの出来事(CさんがtBの時刻にxBの場所にいる)は,Bさんに対して速

(11)

度 -v で 運動 して いる A さ ん にど のよ うに 見え る か? 再び 式 16 ま た は 式 17 か ら ,

2 2

( ) 1

A B B

xxvtv c

t

A

t

B

v

2

x

B

1 v c

2 2

c

 

      

であるが,これは,式24と式25 より,

2 2 2 2 2 2 2 2

2

2 2 2 2 2 2 2 2 2

( )

1 1 1 1

1 1 1 1 1

C C C

A

C C

A C

wt vt t

x w v

v c w c v c w c

t vw c t vw t

t v c w c c v c w c

    

    

  

     

        



(式26)

となる。Aさんから見たCさんの速度uuxAtAであるが,これは,式26から

1

2

A A

x v w

u t vw c

  

(式27

となる。合成速度uは常識

uvw

と比べて係数

1 (1  vw c

2

)

だけ異なる(小さくなる)が,

vwの大きさが日常的な範囲ではこの係数は1とほとんど変わらない。だから我々は気付かな かった!しかし,速度が次第に大きくなってくると,この係数は合成速度を小さくするように働 き出す。

例えば,Bさんが自動車でCさんがヘッドライトから出る光だったとしたらどうなるか?wc

(光速度)だから,これを式 27 に代入して,

u   ( v c ) (1  vc c

2

)  c

となる。すなわち,自 動車の速さvに関わらずヘッドライトから出る光の速さはcに見える。

また,式27を変形して

  

2 2

1 1

1 1 1

v c v c

u v w c

vw c vw c

   

         

(式28

のようにしてみれば,vwcより小さい時,これは常にcより小さくなることが分かる(

uc

したがって,光速度にそれより小さい速度を合成しても結果は光速度のままだし,光速度より 小さいどのような速度同士を合成しても決して光速度に達することはできないのだ。

質量の速度依存:運動が速くなるにしたがい質量が増加するという,相対性理論に登場する常識と は異なる現象の中の代表格である。だたし,この“増加する”は“増加すると解釈できる”という 意味と考えるべきだと思う。“解釈できる”ということはそのように解釈しなくても(すなわち,質 量は速さに依らず常に一定と考えても),現象を説明するやり方があるということだ。

質量の速度依存の話をする時,質量は必ず運動量の中に出てくることに着目しよう。つまり,相 対性理論での運動量は,

pm vm

0

v / 1  v c

2 2なのだ。そして,ここに出てくる

1/ 1  v c

2 2 を質量に押し付けたのが“質量は速度と共に増加する”という解釈なのである。

でも,この式を見てみれば,

1/ 1  v c

2 2は別に質量に押し付けなくても,速度に押し付けても あるいは運動量そのものに押し付けても良いことになる。例えば運動量そのものに押し付けるので

(12)

あれば,“運動量とは質量m0(一定値である)×速度v×

1/ 1  v c

2 2である”ということになる。

すなわち,これまで運動量が質量×速度だと思っていたのは,光速度よりずっとゆっくりした運動 を取扱っていたために

1/ 1  v c

2 2があることに気づかなかった(

1/ 1  v c

2 2無しで取扱って も問題なかった),と考えるのである。

どんな場合にもこのような解釈ができることの例として,磁場の中での電子の運動を考えてみる。

磁場Bに垂直に速さvで運動する電子(質量をm0,電荷をeとする)は運動と直角な方向にローレ ンツ力を受けて等速円運動をする。この円運動の半径をrとすれば,円運動のための向心力

m v r

0 2

が 磁場に よるロ ーレンツ 力

evB

に等 しくな るので, 円運動 の半径 r

m v r evB

0 2

よ り

0

( )

r m v eB

のはずである。これはvが光速度cに比べて充分小さい場合だが,vcに対して無 視 で き な い く ら い 大 き く な る と , こ れ が

r m v eB

0

( 1  v c

2 2

)

に な る 。 こ れ は ,

2 2

0 0

1

mmv c

(質量の変更)とも

m v

0

m v

0

1  v c

2 2(運動量の変更)とも考えら れる。

相対性理論における運動量(質量 m0(一定値)×速度 v×

1/ 1  v c

2 2 )において,係数

2 2

1/ 1  v c

を速度に結びつけるのであれば,これまで学んできた時間や空間に関するローレンツ 変換だけから(「質量の速度依存性」というようなあらたなコンセプトを導入することなしに)運動 量を“質量×速度”から“質量×速度×

1/ 1  v c

2 2”に変更することの妥当性が導ける。ただし,

これはちょっと複雑な手順なので,話の本筋からは切り離して説明する。

なお,切り離した部分(枠で囲った部分)では式番号は本文とは別に1から始める。

力と運動の関係を考えるのが力学の中心テーマだろう。ニュートンの力学では,力Fは質量m×加 速度aであった(Fma)。ここで,力と質量はさておき,加速度について考えると,これは速度の 時間当たりの変化率(すなわち速度を時間で微分したもの)だった。これまで見てきたように,ロ ーレンツ変換の世界での速度や時間のルールは,常識と少しちがっている。したがって,加速度に ついても,常識を少し修正して考える必要があると見込まれる。どう修正したら良いだろう?

修正を考える前に,先ずは加速度について考えてみよう。考える手がかりはすでに学んだローレ ンツ変換だ(本文の式16,式17と同じ)。

(13)

2 2

2

2 2

1

1

A A

B

A A

B

x vt

x v c

t v x t c

v c

  

 

  

 

 



(1) 同じことだが,

2 2

2

2 2

1

1

B B

A

B B

A

x vt

x v c

t v x t c

v c

  

 

  

 

 



(2)

まず式1を時間tAで微分する。 xAtAでの微分はAさんの見る速度VAだから,

2 2

2

2 2

1 1

1

B A

A

B A

A

dx V v

dt v c

dt c v V

dt v c

  

 

  

 

 



(式3)

となる。したがって,Bさんの見る速度VBは,

1

2

B B A A

B

B B A

A

dx dx dt V v V dt dt dt v V

c

   

(式4)

である。実はこれは,すでにやった速度の合成でも出てくるが,更に加速度を求めるための練習と して微分でやってみた。早速加速度を求めるために,今度は式4を先程と同様にtAで微分しよう。

VAtAでの微分はAさんの見る加速度aAである。また,式4の右辺には分母にも分子にもVAが 入っているから,これを微分するには商の微分の公式を使う。結果は,

 

2 2

2 2

2 2

2 2

1 1

1 1

A A A A

B A

A

A A

v v

a V a V v

dV c c v c a

dt v V v V

c c

    

  

 

 

     

   

   

(式5)

である。式4と同様にして,Bさんの見る加速度aBは,

2

2 2

2

2 2

2

(1 ) 1

1 1

B B A A

B A

B B A

A

v c v V

dV dV dt c

a a

dt dt dt v V v c

c

 

     

  

   

 

 

3

2 2

1 v c 1 v

2

V

A

a

A

c

   

          

(式6

となる。式6は,vVAが充分小さければ単にaBaA,すなわち,加速度はAさんにとってもB さんにとっても同じとなる。だから,加速度の入ったニュートンの第二法則(Fma)が‘法則’とし て使えたのだ。しかし,ローレンツ変換の世界では,これが誰にでも適用できる共通のルールには ならないことを式6は示している(Bさんにとっての加速度はAさんにとっては加速度ではない)。 ではどうしよう?

このために,やや天下り的だが,式4から

1  V c

B2 2を計算してみる。結果は,

(14)

 

 

2 2

2 2 2 2

2 2 2 2

2 2

2

2 2

1 1

1 1

1 1

A A

B A

A A

c v V V v

c v c

V c V c

v v

c V V

c c

    

  

 

   

     

   

   

(式7)

のようになるが,これと式6を見比べると,式6が,

1

2 2

1

2 2

3

B B A A

a   V cV c a

(式8) のように書き直せることが発見できる。したがって,

1

2 2

3

1

2 2

3

B B A A

aV caV c

(式9)

となり,AさんとBさんが同じ形の式で繋がった!これから,ローレンツ変換の世界で誰にでも共 通の力学法則を作るには,加速度aの代りに,

a1 V c

2 2

3(式10)を使えば良さそうなこ と が 分 かる 。 なお , 式 10 は ,

a1 V c

2 2

3

dV dt1 V c

2 2

3で あ る が, こ れは ,

2 2

1

VV c

(式11)の微分に等しい。すなわち,

1

2 2

 

3

d 1

2 2

dV V c V V c

dt   dt

(式12)

である。これを導くには,先程も使った商の微分の公式や,合成関数の微分法などを使う。したが って,式9が成立つのであれば,

B

1

B2 2

 

A

1

A2 2

B A

d V V c d V V c

dt   dt

も成立つから,速Vの代りに式11を使っても共通ルールは作れそうだ。ちなみに,Vが充分小さければ式10は加 速度aそのものになるし,式11は速度Vそのものになる。これから,従来の力学法則で加速度が 出てくる所は式10に置き換え,速度が出てくる所は式11に置き換えれば,Vが充分小さい時には 従来の法則と一致し,かつローレンツ変換の世界でも使える力学法則が組み立てられると想像でき る。つまり,ローレンツ変換の世界で力学をやるには,

1

2 2

3

aaV c

(式13),と

VV 1  V c

2 2 (式14) がポイントになりそうだ。

このように,質量が速度の増加と共に大きくなるという考え方は,運動量の中に現れる速度v

2 2

/ 1  v c

v

に変更することと等価であること,およびそう考えることの根拠が分かった。従来

は,静止質量

m

0

m m

0

1  v c

2 2に変化する,と解釈するのが主流だったが,最近では質量 を一定値のままにしておく(「静止質量」という言葉は使わない)流儀も良く見られるようになって いる。これらの解釈に優劣をつけることはできないが,「質量って運動が速くなるとどんどん大きく

(15)

なるのですか?」というような質問には,(特に質問者が子供の時には)困ってしまいます。困って しまう理由は,これまでの説明で分かるはず。

以上,長々と説明してきたが,「質量の速度依存」というテーマにはこのような背景があることを 踏まえて次の話に進もう。

質量とエネルギー:いよいよ相対性理論の世界で力学をやることになる。

■運動量

ニュートンの力学での運動方程式

 

F dp dt d mv dt  

(式29) を

F dp dt d m v

0

1 v c

2 2

dt

(式30

に修正する。これまで説明してきた通り,これはローレンツ変換の世界でもみんなに共通な法則に なる形式を整えているし,速度が小さくなれば普通のニュートンの方程式に一致する。

この修正のご利益を見るために,これを自由落下に適用してみよう。常識では,一定の重力加速 度Jのもとでの運動は等加速度運動であり,時間がたてばたつほど速度は増加する。しかし,そう であれば時間t=Jcがたてば物体の速度は光の速度に達してしまうことになり,おかしい!それで は式30ではどうなるか?この物体に加わる重力Fm0Jであるから,式30は

2 2

0

(

0

1 )

m 㼓  d m vv c dt

(式31) となり,定数m0を除いて

1

2 2

d v v c dt

 

(式32)

である。これから,

2 2

1

vv c  㼓 t C

(式33)

となる。ここでCは定数であるが,最初の速度が0ならばC=0なので,この条件(C=0)で式33 をvについて解くと,

 

2

1

v  㼓 t  㼓 t c

(式34)

となる。つまり,スタートからしばらくは常識の等加速度運動

v  㼓 t

(式35)とあまり変わらない が,時間が経つにつれて分母が大きくなり,vはいつまで経っても光速度cには到達できない。し かし,

2 2

1 1

2

( )

2

1

v cv c   ct

(式36)

から,cそのものには達せないものの,時間をかければcにいくらでも近づくことができることは 分かる。しかし,そんなに長い間にわたって一定の重力加速度のもとでの運動を続けるわけにもい かないだろう。次はエネルギーの話。

■エネルギー

先ずは,エネルギーそのものではなく,エネルギーの変化率の話から始めよう(ただし時間微分 により)。そうすると,今までの話の延長としてエネルギーの話に入れるので。

表  分裂   この場合には,詳しい計算をしなくても,分裂後の 2 つの物体の質量の合計  m 1  m 2  が分裂前の 質量 M より小さくなることが分かる。それでは最初に持っていたエネルギー Mc 2 の内で,物体 1 の静止エネルギー m 1 c 2 にもならず,物体 2 の静止エネルギー m 2 c 2 にもならなかった分はどこへ行 った?それは,両物体の運動エネルギーになった。つまり,もとの質量の一部が,分裂後は運動エ ネルギーに姿を変えたということだ。 以上の例から,質量がエネルギーの一

参照

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