• 検索結果がありません。

大学生による地域活性化に向けた取り組みとその教育効果

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "大学生による地域活性化に向けた取り組みとその教育効果"

Copied!
22
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

大学生による地域活性化に向けた 取り組みとその教育効果

〜 「香川大学直島地域活性化プロジェクト」を事例として〜

古 川 尚 幸

! .は じ め に

現在,都市部の中心市街地であれ,地方の農山漁村であれ,地域はそれぞれ 数多くの問題を抱え,問題解決の困難さに直面している。また,地域間格差の 広がりや地域経済の停滞とともに,日本各地で地域活性化を要望する声が大き くなりつつあり,地域活性化に向けた取り組みは,いまや社会的ニーズとなっ ている。

他方,大学を取り巻く社会環境も大きく変化しつつある。様々な地域で地域 活性化に向けた取り組みが模索されるなか,地域活性化を担う人材養成や,実 際のまちづくりの現場に積極的に参画することなど,いま地域が抱えている社 会的ニーズに応えることは,これまでも地域で活躍する人材を輩出することで 地域経済に貢献してきた各地域の大学が取り組むべき課題のひとつとなってい る。このような社会情勢のもと,産学連携による地域経済の活性化や,地域と 大学の連携によるまちづくり等,大学の地域貢献として,大学の研究・教育機 能を活用した地域活性化が盛んに取り組まれている

"#$%&'

(1) 高崎経済大学附属産業研究所編『大学と地域貢献』2003年11月

(2) 齊藤毅憲,藤永弘,渡辺峻監修『大学は地域を活性化できるか』中央経済社,2005年 3月

(3) 濱田康行編著『地域再生と大学』中央公論新社,2007年10月

(4) 小林英嗣+地域・大学連携まちづくり研究会編著『地域と大学の共創まちづくり』学 芸出版社,2008年11月

香 川 大 学 経 済 論 叢 第83巻 第4号 2011年3月 173−194

(2)

香川大学においても第2期中期目標のなかで!,「世界水準の教育研究活動に より,創造的で人間性豊かな専門職業人・研究者を養成し,地域社会をリード するとともに,共生社会の実現に貢献する」ことを大学の基本的な目標(長期 的目標)に据えており,この中期目標のなかで,「教育」,「研究」,「地域貢献」

の3項目について,それぞれ目標を掲げている。そのなかで,「地域貢献」に ついては,「「知」の源泉として,地域のニーズに応えるとともに,蓄積された 研究成果をもとに文化,産業,医療,生涯学習等の振興に寄与する」ことを目 標としている。さらに,「香川大学は「地域に根ざした学生中心の大学」とし て,高度専門職業人の養成,幅広い職業人の養成を両輪としつつ,地域の大学 として高い社会貢献機能を持った大学を目指す。研究面においては,前記の機 能を支える研究をこれまで以上に推進するとともに,特定の領域については世 界的な研究拠点の形成を目指す」としており,大学としての地域貢献に取り組 む姿勢を示している。また,中期計画のなかでも,「目指すべき研究の方向性」

の1つとして,「地域との連携を強化し,地域のさまざまな要請に応えた研究 を積極的に推進する」とし,研究・教育を通じた地域貢献を謳っている。

本稿では,香川大学生が主体となり,地域活性化の一翼を担うことを目的と してスタートした「香川大学直島地域活性化プロジェクト」(以下,直島プロ ジェクトと記す)について,2005年10月からこれまでの5年間にわたる活動 のマイルストーンとして,学生たちの活動内容を詳細に述べるとともに,この プロジェクトの効果についても触れることとしたい。さらに,活動開始以来,

5年が経過するにあたり,ここで,これまでの活動内容を振り返ることで,さ らなる今後の活動のメルクマールとしたい。

(5) 上野武『大学発地域再生 カキネを越えたサステナビリティの実践』清水弘文堂書房,

2009年7月

(6) 山村研一,上野眞也編『熊本大学政創研叢書7 地域を創る大学の挑戦』成文堂,2010 年3月

(7) 香川大学の第2期中期目標・中期計画について,詳しくは,http://www.kagawa-u.ac.jp/

files/2412/7044/9733/69.pdfを参照されたい。

−174− 香川大学経済論叢 526

(3)

! .チャレンジショップ

直島プロジェクトの活動の中心となっているのは,後述するように,学生が 主体となったチャレンジショップの経営である。ここでは,チャレンジショッ プについて,簡単に説明しておきたい。

チャレンジショップについて,いまのところ明確な定義は存在しないが,

「商店街や商工会議所などが,創業意欲のある者を商店街の空き店舗に一定期 間出店させ,商店主として育成を図る制度」"や,「中心商店街における空き店 舗対策または創業者支援策として,創業希望者に店舗賃借または店舗改装に伴 う初期投資への補助を行う事業」#をチャレンジショップ事業と呼んでいる。こ れら2つの定義に共通するのは,キーワードとして,「商店街の空き店舗対 策」,「起業・創業支援事業」である。すなわち,商店街空き店舗対策事業とし てのチャレンジショップ事業では,地方自治体や商店街が空き店舗を提供する ことにより,にぎわい創出や地域活性化に結びつけようとする取り組みであ り,起業・創業支援事業としてのチャレンジショップ事業では,新規開業を支 援する,いわゆる商業インキュベーターとしての取り組みである。これらは主 に支援する対象を社会人とした場合であるが,このチャレンジショップ事業 は,何も社会人のみを対象としたものではない。ここで,チャレンジショップ 事業の3点目のキーワードが登場する。そのキーワードは「起業・就業体験支 援事業」である。もちろん,この起業・就業体験支援事業は,対象を社会人と した取り組みでもあるが,高校生や大学生を対象とした起業体験や就業体験の ための取り組みにも活用されている。

社会人を対象としたチャレンジショップ事業の事例については,富山県富山 市中央通り商店街「フリークポケット」$等,枚挙に遑がないが,その継続性に ついては課題もある

%

。また,大学生が経営するチャレンジショップの事例とし

(8) 片岡達也「商店街活性化の起爆剤となる「チャレンジショップ」」『SERIトピックス』

No.820,2001年11月,1−5頁

(9) 宇於崎弘美,野嶋慎二「店舗育成手法としてのチャレンジショップ事業の現状とその 要件」『日本建築学会技術報告集』第15号,2002年6月,301−306頁

527 大学生による地域活性化に向けた取り組みとその教育効果 −175−

(4)

ては,カリキュラムと関連づけて活動している愛知県瀬戸市銀座通り商店街

(現在は,名古屋学院大学日比野学舎内に移転)における名古屋学院大学の取

り組み"や,愛知県豊橋市広小路商店街における豊橋創造大学の取り組み#,栃木

県那須烏山市における作新学院大学の取り組み

$

,学生だけではなく地域住民も 参画している北海道札幌市発寒商店街における北海道大学の取り組み%等,その 他数多くの大学で取り組まれてきた。

! .直島について

ここでは,香川大学直島地域活性化プロジェクトのフィールドである直島に ついて簡単に説明する&。直島は,高松市から北へ約13キロメートル,岡山県 玉野市から南へ約3キロメートルの備讃瀬戸に浮かぶ島で,大小27の直島諸 島の中心に位置している。直島本島は,東西約2キロメートル,南北約5キロ メートル,周囲約16キロメートル,面積は8.13平方キロメートルで,人口は 3,365名(2009年1月1日現在)の小さな島である。現在では,直島エコタウ ン事業のもと,三菱マテリアル直島製錬所によって豊島産業廃棄物を処理する 中間処理施設が設置されたことから「環境の島」として,また,ベネッセコー ポレーションによるベネッセハウスや地中美術館,家プロジェクトの開設から

(10) 長崎経済研究所「商業版インキュベーター チャレンジショップ事業の現状と可能性 を探る」『ながさき経済』2001年8月,7−16頁

(11) チャレンジショップの成功事例として知られていた富山市中央商店街「フリーポケッ ト」は2005年10月に閉店したが,新たなチャレンジショップとして「パレットスクエ ア」が誕生した。

(12) 水野晶夫「学生主体のまちづくり活動の教育的活用と課題−名古屋学院大学マイルポ スト・プロジェクトを事例として」『都市問題』第95巻第4号,2004年4月,65−81頁

(13) 花岡幹明「学生による起業体験とその取り組み−豊橋創造大学チャレンジショップの 試み−」『豊橋創造大学紀要』9号,2005年2月,91−101頁

(14) 前橋明朗「学生コミュニティ・ビジネスに関する検討−那須烏山市における空き店舗 を利用したカフェ経営を事例として」『作新総合政策研究』8号,2008年3月,79−96頁

(15) カタログハウス「北大・中島先生の発寒商店街復活計画〜なぜ,政治学者が商店街に 関わるのか〜」No.240,2010年秋冬号,131−137頁

(16) 直島の現状と課題について,詳しくは,古川尚幸「瀬戸内海島嶼部における地域活性 化の現状と課題〜直島(香川県香川郡直島町)を事例として〜」『香川大学経済論叢』第 83巻第1・2号,2010年9月,89−98頁を参照されたい。

−176− 香川大学経済論叢 528

(5)

「芸術の島」として,日本のみならず世界から注目を浴びている。

このような状況のなか,直島を訪れる入込客数も増加の一途を!っている。

香川県観光交流局の資料によると,2008年度については,観光目的で香川県 を訪れた入込客数が814万人であったのに対し,観光目的で直島を訪れた入込 客数は34万人であった。さらに,2010年には,7月19日から10月31日まで の約100日間にわたり,直島,豊島,女木島,男木島,小豆島,大島,犬島,

高松港周辺を舞台として「瀬戸内国際芸術祭」が開催され,約93万人の来場 客でにぎわった!

! .香川大学直島地域活性化プロジェクト

直島プロジェクトでは,2005年10月より,直島を活動拠点として,様々な 活動を展開してきた。特に,その活動の中心となるのは,学生チャレンジ ショップである「和cafeぐぅ」の運営であるが,その他にも島内での地域活 動や,島内外へ向けての情報発信など,その活動は多岐にわたっている。以下 では,活動開始に至った経緯や,それぞれの活動内容について,詳しく説明し ていく"

1.プロジェクト発足のキッカケ

筆者は,知人の紹介により,2005年3月からプライベートで直島を訪れる ようになった。さらに,直島の地元住民団体「うぃ・らぶ・なおしま」にも参 加するようになり,直島島民との交流を深めていた。そのなかで,直島を訪れ る観光客に対し,直島島民が抱えている思いをうかがい知るようになる。「せっ かく直島に大勢のお客さんが来てくれるのに,食事をしたり,お茶を飲んだ り,休憩する場所すらない」という思いである。確かに,筆者が直島に通い始 めた2005年当時,家プロジェクトが存在している直島町本村地区には,カ

(17) 瀬戸内国際芸術祭直島実行委員会資料より

(18)「和cafeぐぅ」開店までの経緯について,詳しくは,梶脇裕二,古川尚幸「学生の起 業体験における学びの「場」」『香川大学経済論叢』第81巻第4号,2009年3月,155−

169頁を参照されたい。

529 大学生による地域活性化に向けた取り組みとその教育効果 −177−

(6)

フェは「Cafeまるや」の1軒のみであった。この「Cafeまるや」は,2003年 2月に埼玉県から現代アートを鑑賞にやってきた大塚ルリ子さんが,直島にカ フェがないことに着目し,直島でカフェを開きたいという思いから,直島に移 り住み,2004年3月から経営しているカフェである。

そして,2005年10月の某日,ゼミ終了後の雑談のなかで,これら直島の現 状について話したところ,ゼミ生の有志が自分たちにも何かできることがある のではないかと,学生から提案を受けた。筆者の専門分野は,商品学や環境で あり,地域には興味はあったものの,学生からの提案を具体化していく術を もっている訳ではなく,まさに学生たちと一から模索していく状況であった。

ちょうど時を同じくして,2つの偶然が重なる。1つは,志を同じくする新 たなメンバーの加入である。後年,直島プロジェクト創成期の中心メンバーと なる学生が,同僚の紹介により,直島プロジェクトに加わることとなった。も う1つは,資金調達である。直島プロジェクトは,学生が主体となるため,当 初から大きな自主財源は期待できなかった。そこで,地元企業や地元自治体へ の支援要請のためのプレゼンテーションを行うこととなるが,その結果,獲得 できたのは物質的な支援であり,経済的な支援を受けることはできなかった。

このような状況のなか,経済学部プロジェクトが創設され,学部内公募の結 果,直島へのチャレンジショップ出店計画に対する調査・研究費を獲得するこ とができた。

他方,筆者は,直島を訪れる観光客の意識を知るべく,直島を訪れた観光客 を対象として,直島のイメージや地域資源に関するアンケート調査を行った。

その詳細については,別の機会に報告するが,そのなかで,直島を訪れた観光 客の満足度について,特産品,食事や休憩をする場所,買い物をする場所への 不満を持っていることが明らかとなった!(図1)。

これらのプロジェクトを取り巻く状況や直島における調査結果を受けて,直 島プロジェクトは,2005年10月に香川大学経済学部古川研究室の学生を中心

(19) 古川尚幸・馬淵キノエ「商品学的再評価による地域の持続可能性〜香川県直島町を事 例として〜」日本商品学会西日本部会大会,東海学園大学,2005年12月

−178− 香川大学経済論叢 530

(7)

観光案内所

1 2 3 4 5

3.1 3.0 3.0 2.7 2.7 2.4 ホテル・旅館・民宿

公衆トイレ 特産品(おみやげ品)

食事や休憩をする店 買い物をする店

に正式に発足するに至った。

2.プロジェクトの目的

このプロジェクトの大きな特徴のひとつは,プロジェクトの活動拠点となっ ているカフェについて,先述したチャレンジショップに見られがちな商店街の 空き店舗の活用ではなく,観光地にある民家を利用して,自ら出店したことで ある。また,通常のチャレンジショップでは,商店街のにぎわい創出のために 要請を受けて出店する場合が多いが,このプロジェクトでは,店舗についても 無償提供を受けることなく,自ら借り上げていることも大きな特徴のひとつで ある。さらに,もうひとつの大きな特徴は,参加している大学生は,それぞれ が経営者という位置づけであり,そこに雇用関係はない。カフェ経営に係る資 金については,高松−直島間の交通費はもちろん,その全てをカフェ経営の利 益のなかから賄っている点にある。したがって,自らの意思でカフェ経営の舵 取りを行う必要がある。

このような特徴をもつ直島プロジェクトであるが,このプロジェクトでは,

実践的経営教育や地域活性化に関する社会実験として,学生チャレンジショッ プ出店や地域活性化に向けた様々な活動を行っているため,その際の一連の活

図1 直島を訪れた観光客の満足度(下位)

531 大学生による地域活性化に向けた取り組みとその教育効果 −179−

(8)

直島プロジェクト 定例会

担当教員 助言・注意など

総務グループ シフト管理など

経理グループ 資金管理など

広報グループ HP管理など

総合企画グループ イベント企画など

商品開発グループ メニュー開発など 動の目的は,以下の3点を達成することにあった。

! 実践的経営教育の手法開発

出店までの過程で起こる様々な問題を解決することにより,座学では得るこ とのできない実学を身につける。

" 地域活性化の手法開発

地元住民・企業・自治体と協力し地域活性化に貢献することを通じて,直島 における地元経済の自立促進の手助けとなるモデルを提示する。

# 大学の地域貢献

香川大学として,また経済学部として,一連の活動を通じて,地域に貢献す る。

3.プロジェクトの実施

直島プロジェクトでは,これまでに,経済学部の学生を中心に,教育学部や 農学部,法学部,工学部から学生が参加し,カフェ運営はもちろんのこと,週 1回のプロジェクトミーティングや部門ごとのミーティングなど,精力的に活 動を行ってきた(図2)。

直島プロジェクトでは,学生リーダー1名のもと,副リーダー3名,さらに 図2 直島プロジェクト組織図

−180− 香川大学経済論叢 532

(9)

総務グループ,経理グループ,広報グループ,総合企画グループ,商品開発グ ループを設置し,各グループにもグループリーダーを設けて,プロジェクトを 効率よく運営するための組織を作ってきた。これらのリーダーやグループリー ダーの任期は,2年生の1月から3年生の12月と定めており,学生の互選に よって選出される。

つぎに,活動内容であるが,このプロジェクトが活動していくうえでの大き な柱はつぎの5つである。

! 「和cafeぐぅ」運営

" 観光ボランティアガイド

# 地域活動

$ 情報発信および交流

% 地元高校との連携

以下では,それぞれについて,詳しく説明していく。

! 「和 cafe ぐぅ」運営

学生チャレンジショップの本格開業に向けて,2006年5月4日から5月6 日の3日間にわたり,試験的にカフェを開業した。この試験営業の経験をもと に,2006年8月5日より現在に至るまで,「和cafeぐぅ」の運営を継続して 行っている(写真1および2)。「和cafeぐぅ」にご来店いただいたお客様の

写真1 「和 cafe ぐぅ」外観 写真2 「和 cafe ぐぅ」内部 533 大学生による地域活性化に向けた取り組みとその教育効果 −181−

(10)

数は,毎年ほぼ5,000名で,2008年6月22日には10,000名を,2010年8月 28日には20,000名を突破し,順調に行けば,2011年夏には,25,000名のお

客様を迎えることとなる。

また最近では,「和cafeぐぅ」を運営するなかで,!フェアトレード商品の

販売,"環境に配慮したカフェ経営の2つに取り組んでいる。

!フェアトレード商品の販売

直島プロジェクトでは,高松市内において活動を行っている公益社団法人セ カンドハンドと協力して,カンボジアで作られた雑貨を主としたフェアトレー ド商品を販売している。このフェアトレード商品の売上は,NPOセカンドハ ンドを通じて,途上国の経済的な自立に向けて使われることとなる。

"環境に配慮したカフェ経営

直島プロジェクトでは,その活動の拠点となる「和cafeぐぅ」において,

環境に配慮したカフェ経営を行うことで,このプロジェクトに参加している学 生はもちろん,観光客や直島島民に対して,環境問題について訴えている。具 体的には,#グリーン電力証書による自然エネルギーの利用,$食品廃棄物を コンポストで処理,%地域産品の利用,&エコバッグや塗り'の利用等,以下 の4項目である。

#グリーン電力証書による自然エネルギーの利用

「和cafeぐぅ」では,常時利用としては,香川県内でもいち早くグリーン電 力証書システムを導入して,環境問題に取り組んできた。具体的には,店舗内 で使用されている年間電力は約4,000kWhであるが,これらの電力を風力発 電およびバイオマス発電由来の電力で賄っている。これは,日本自然エネルギー 株式会社が発行するグリーン電力証書システム(を利用したものである。このシ

(20) グリーン電力証書システムについて,詳しくは日本自然エネルギー株式会社HPを参 照されたい。http://www.natural-e.co.jp/green/how_about.html

−182− 香川大学経済論叢 534

(11)

ステムでは,電力会社から供給される電気に対して電気料金の支払い,さら に,このシステムを利用して,自然エネルギー発電による「環境付加価値」を 支払うことで,店舗内で使用している電気を自然エネルギーにより発電したグ リーン電力とみなすことができるものである。

!食品廃棄物をコンポストで処理

「和cafeぐぅ」で廃棄される食品廃棄物は,直島町による可燃ゴミ収集によ り処理されるのではなく,店舗敷地内に設置されたコンポストにより堆肥化さ れ,肥料として利用されている。

"地域産品の利用

「和cafeぐぅ」の定番メニューである「直島☆のりのり丼」や「しょうが焼 きプレート」に材料として用いられている海苔は,直島産の海苔を使用してい る。また,「直島☆#奴」のネーミングで提供しているタコ飯では,直島産の タコを地元漁師から生きたまま購入し,可能な限り,地産地消に取り組んでい る。

#エコバッグや塗り$の利用

「和cafeぐぅ」において使用される食材の仕入れについては,レジ袋を利用 することなく,エコバッグを利用して行われている。また,「和cafeぐぅ」で 使用する$については,割り$を利用せず,何度も利用可能な塗り$を使用し ている。

以上の!グリーン電力証書による自然エネルギーの利用および"エコバッグ や塗り$の利用について,グリーン電力証書システムを活用して購入している 年間約4,000kWhの電力およびエコバッグ利用によるレジ袋年間約384枚の 削減により,二酸化炭素換算すると,1年間で約2,260kgの削減

%

となり,実 際に地球温暖化防止に向けた取り組みを行っている。

535 大学生による地域活性化に向けた取り組みとその教育効果 −183−

(12)

写真3 ストップ温暖化『一村一品』大作戦

なお,これらの環境に配慮した取り組みについて,2008年12月14日に環 境省主催「一村一品知恵の環づくり」事業の香川県大会である「Stop!地球温 暖化〜みんなでやろうよ。地球に「ええこと」Party〜2007」において,第1 位の「めちゃめちゃ『ええこと』賞」を受賞し,香川県代表に選出された。さ らに,2009年2月14日,15日の2日間にわたり,東京・品川で開催された

「ストップ温暖化『一村一品』大作戦」に香川県代表として出場した(写真3)。

! 観光ボランティアガイド

現在,直島町には,地元住民による「直島町観光ボランティアガイドの会」

(会長:高橋昭典氏)が存在し,直島を訪れる多くの観光客のガイドをボラン ティアで行っている。この観光ボランティアガイドは,事前にガイドする観光 客からの要望を聞き,当日の直島内の観光ポイントの状況を判断しながら,そ の場でコースを設定し案内するというものであり,直島を熟知しておく必要が ある。

このプロジェクトでは,2007年8月から,NPO直島町観光協会および直島 町観光ボランティアガイドの会と協力して,この観光ボランティアガイドにも 取り組んでいる。この取り組みは,年々増加する観光ボランティアガイドへの

(21) 電力の二酸化炭素換算係数:0.555kgCO/kWhとし,レジ袋削減の二酸化炭素換算 係数:0.0281g/毎×3.67(二酸化炭素換算係数)として計算

−184− 香川大学経済論叢 536

(13)

写真4 観光ボランティアガイドの様子 写真5 全国まちあるき観光サミット 需要と,ガイドの高齢化による島内人材の不足という現状に鑑み,多くの人々 に直島の魅力を伝えたいとするプロジェクトメンバーの思いと,直島町観光ボ ランティアガイドの会からの要請が一致し,結実したものである。現在,正規 の観光ボランティアガイドとして直島プロジェクトメンバーが活動しており,

今後も多くの学生がガイドとして活躍できるよう,準備中である。

この取り組みの成果のひとつとして,2009年秋には,「09香川まちめぐり てくてくさぬき」において,10月10日,11月14日,12月5日の3回にわた り,学生がガイドとなり,まち歩きを企画・実行した(写真4)。さらに,同 年12月12日には,「全国まちあるき観光サミット in善通寺」において,直島 プロジェクトの取り組みについて活動報告を行った(写真5)。

" 地域活動

このプロジェクトでは,地域の住民団体と協力し,直島内で様々な活動を 行ってきた。以下では,それぞれについて紹介する。

!なおしま自然探検隊

地元住民団体「うぃ・らぶ・なおしま」との協力のもと,2006年より,「な おしま自然探検隊」を開催している(写真6)。このイベントは,海ホタルな どの海辺に生息する生物を観察するもので,直島島外(主に高松市内)の児童 537 大学生による地域活性化に向けた取り組みとその教育効果 −185−

(14)

写真6 なおしま自然探検隊

写真7 ケナフ植付け

とその保護者が参加して開催した。そのなかで,香川大学生は,参加した児童 との交流や,参加者の食事の準備などに携わっている。

!ケナフの植付け・刈取り

2006年より,地元住民が行っているケナフの植付けおよびケナフの刈取り に協力している(写真7)。

"地域イベントの企画・運営

#英語講習会の開催

2008年度に開催し好評を得た英語講習会について,2009年9月に「和cafe

−186− 香川大学経済論叢 538

(15)

写真8 英語講習会開催

ぐぅ」において,水野康一経済学部教授を講師に迎え,地元住民を対象とした 講習会を行った。この講習会は直島プロジェクトの学生が企画・運営を担当 し,さらに講習会では,参加者のチューター役として,水野先生のアシスタン トを務めた(写真8)。

!食育イベント&オリエンテーリングの開催

地元スポーツ少年団の協力のもと,2010年3月7日に,直島小学校および 直島中学校の児童・生徒を招待し,学生の企画・運営による食育を取り入れた ちらし寿司大会(写真9)およびオリエンテーリング(写真10)を開催した。

これからも同様のイベントを開催する予定である。

写真9 食育イベント開催 写真10 オリエンテーリング開催 539 大学生による地域活性化に向けた取り組みとその教育効果 −187−

(16)

写真11 3周年記念イベント開催 写真12 地元交流会開催

# 情報発信および交流

このプロジェクトでは,プロジェクトの成果について,様々な機会をとらえ て広報活動を行ってきた。また,他大学において,まちづくりなどに取り組ん でいる団体と交流を持ってきた。以下では,それぞれについて紹介する。

!地域交流会

2009年8月9日に「和cafeぐぅ」において,オープン3周年記念イベント を開催した(写真11)。当日は,学生が制作した直島プロジェクトの活動年表 を店舗内に展示し,お客様に活動の紹介を行った。また,閉店後は,直島の住 民を招待して,地域交流会を開催し,住民との交流を深めた(写真12)。

"学生による学会報告

2007年度より,瀬戸内海研究会議主催の「瀬戸内海研究フォーラム」にお いて,様々な研究機関の研究者や活動団体の活動家のなかで,毎年,直島プロ ジェクトの活動報告を行ってきた(写真13)。なかでも,2008年9月に福岡県 北九州市で開催された「瀬戸内海研究フォーラムin福岡」において,学生が 活動報告したところ,その報告に対して,優秀賞を受賞することができた(写 真14)。

−188− 香川大学経済論叢 540

(17)

!経済学部オープンキャンパスへの参加

2006年度より,毎年8月に開催されている香川大学経済学部オープンキャ ンパスにおいて,出席した高校生に対して,このプロジェクトを紹介するプレ ゼンテーションを行うとともに,具体的な活動を紹介するための模擬店を出店 し,好評を得ている(写真15および16)。2009年度からは,直島プロジェク トからの提案で,オープンキャンパスでグリーン電力証書システムの使用,リ ユース容器の利用,レンタサイクルを利用する環境に配慮した参加者の誘導,

地元企業から環境に配慮した飲料の提供など,環境に配慮した「エコ・オープ ンキャンパス」をテーマに,オープンキャンパスの開催に協力している。

写真13 瀬戸内海研究フォーラムでの報告 写真14 優秀賞受賞

写真15 オープンキャンパス 写真16 オープンキャンパス 541 大学生による地域活性化に向けた取り組みとその教育効果 −189−

(18)

写真17 名古屋学院大学「マイルポスト」 写真18 岐阜経済大学「マイスター倶楽部」

!他大学との交流

直島プロジェクトでは,名古屋学院大学学生が運営するカフェ「マイルポス ト」や一橋大学学生が運営するカフェ「ここたの」,岐阜経済大学学生が運営 する地域活動団体「マイスター倶楽部」等,これまでに全国各地で地域活性化 に取り組んでいる学生団体と交流をもってきた。

さらに,2008年度より,「全国まちづくりカレッジ」に参加し,2009年11 月に名古屋学院大学で開催された「全国まちづくりカレッジ in 名古屋」から は活動報告を行い,まちづくりに情熱を燃やす他大学の学生団体との交流を深 めている(写真19)。また,2009年度からは,奈良県立大学で開催された「学 生と地域創造 in 奈良」に参加し,活動報告を行うとともに,ここでも他大学 との交流を深めている(写真20)。

特に,2010年度は,直島プロジェクトが当番校となり,11月6日,7日の 2日間にわたり,香川大学および直島を会場として,「第11回全国まちづくり カレッジin直島」を開催し,まさに北は北海道から南は沖縄まで,11大学2 高校の学生および教職員,直島住民の計163名が参加し,盛大に大会を開催す ることができた(写真21)。

これからも他の大学で活動している団体とさらに交流を深めるとともに,引 き続き「全国まちづくりカレッジ」等,情報発信の場に積極的に参加し,ネッ トワークを構築していきたい。

−190− 香川大学経済論叢 542

(19)

! 地元高校との連携

このプロジェクトでは,2007年9月に香川大学経済学部と玉野市立玉野商 業高等学校との間で結ばれた高大連携協定のもと,高校生とともに,2009年 度までカフェ運営等,様々な活動を協働して行ってきた。そのなかで,2008 年および2009年度8月には,直島で開催された「直島火まつり」において,

飲食店を共同出店した(写真22)。

2010年3月をもって,玉野商業高等学校との協定は終結したが,これから も機会があれば,大学生と高校生の交流を深めながら,カフェ運営にとどまら ず,高校生にもボランティアガイドをはじめとする様々な地域活動に参画して 写真19「まちづくりカレッジ」への参加 写真20「学生と地域創造 in 奈良」への参加

写真21 第11回全国まちづくりカレッジ in 直島

543 大学生による地域活性化に向けた取り組みとその教育効果 −191−

(20)

もらい,ともに活動を行っていく予定である。

! .お わ り に

前節まで,直島プロジェクトの5年間の歩みについて,詳細に述べてきた。

最後に,直島プロジェクトがもたらす効果について,教育的視点ならびに社会 的視点から述べておきたい。

! 教育的視点から見た直島プロジェクトの効果

直島プロジェクトを開始するにあたり,教育的視点から期待していた効果 は,「実践的な経営教育の手法開発」と「学生の地域活性化への理解」であっ た。「実践的な経営教育の手法開発」については,学生がチャレンジショップ をこれまで経営する過程で,様々な障害を乗り越えて今日に至っていることか らも,座学では得ることのできない実践的な教育を行うことができたと自己評 価している。また,「学生の地域活性化への理解」については,地元団体と協 力して,学生が「観光ボランティアガイド」を行う等,直島の地域住民や観光 客との交流も深まり,また地域活性化への理解も深まっている。

なお,この直島プロジェクトをモデルとした教育プログラムの開発に対し て,平成20年度から23年度まで,文部科学省から特別教育研究経費を獲得す ることができたことを追記しておく。

写真22 直島火まつりでの出店

−192− 香川大学経済論叢 544

(21)

! 社会的視点から見た直島プロジェクトの効果

直島プロジェクトを開始するにあたり,社会的視点から期待していた効果 は,「経済的自立モデルの提示」と「学生の地域活動への参加」であった。「経 済的自立モデルの提示」については,このプロジェクトが出店を公表して以 後,直島において地元住民による新規店舗の出店が続いていることから,幾分 かは直島経済に対して新たな刺激を与えることができたと自己評価している。

また,「学生の地域活動への参加」については,地元住民団体主催の「なおし ま自然探検隊」や「ケナフ植付けおよび刈取り」等,地元住民の理解と協力を 得ながら,学生が積極的に地域活性化の現場に参加していることからも,ひい ては大学の地域貢献に!がっていると確信している。さらに,現在,解決が急 がれ大きな社会問題となっている環境問題に対して,「環境」と「経済」が相 反するものではなく,両立するものであることを,小さな規模ではあるが,社 会に対して示すことができたことは,少なからずプロジェクトの成果の1つと 言っても過言ではない。

なお,この直島プロジェクトに対して,直島町からは2007年度に「直島町 功労者表彰状」を,エコアイランドなおしま推進委員会からは「エコアイラン ドなおしま推進委員会感謝状」を受賞することができたことを追記しておく。

この取り組みを通じて明らかとなった成果と課題が,これから様々な場所で 取り組まれる地域活性化,あるいは地域活性化に向けた人材養成を行っていく 上での参考となれば幸いである。

香川大学直島地域活性化プロジェクトを実施するにあたり,学生たちの活動を温 かく見守っていただきました濱田孝夫直島町長をはじめとする直島町民のみなさま,

過分なご支援をいただいた地元企業である株式会社ベネッセコーポレーション,四 国汽船株式会社,株式会社天満屋・高松天満屋店,株式会社エースワン・サンポー ト高松店(順不同)に深く感謝申し上げます。また,香川大学ならびに香川大学経 済学部からは,「香川大学地域貢献推進経費(2006年度)」ならびに「香川大学経済 545 大学生による地域活性化に向けた取り組みとその教育効果 −193−

(22)

学部プロジェクト(2005年度から2010年度)」に採択いただきご支援をいただきま した。ここに厚く御礼を申し上げます。さらに,直島プロジェクトにご理解・ご協 力いただきました香川大学経済学部教職員のみなさまに心から御礼を申し上げま す。

−194− 香川大学経済論叢 546

参照

関連したドキュメント

基本目標2 一 人 ひとり が いきいきと活 動するに ぎわいのあるま ち づくり.

3:80%以上 2:50%以上 1:50%未満 0:実施無し 3:毎月実施 2:四半期に1回以上 1:年1回以上

3:80%以上 2:50%以上 1:50%未満 0:実施無し 3:毎月実施 2:四半期に1回以上 1:年1回以上

3:80%以上 2:50%以上 1:50%未満 0:実施無し 3:毎月実施. 2:四半期に1回以上 1:年1回以上

電事法に係る  河川法に係る  火力  原子力  A  0件        0件  0件  0件  B  1件        1件  0件  0件  C  0件        0件  0件  0件 

1に、直接応募の比率がほぼ一貫して上昇してい る。6 0年代から7 0年代後半にかけて比率が上昇

○ 発熱や呼吸器症状等により感染が疑われる職員等については、 「「 新型コロナ ウイルス 感染症についての相談・受診の目安」の改訂について」

取組状況 実施 実施無し 対象設備 無し.. 評価点 1 0