「日本における韓国文化の表象」に参加して
著者 金 柄徹
雑誌名 国立民族学博物館調査報告
巻 14
ページ 190‑193
発行年 2000‑07‑24
URL http://doi.org/10.15021/00002231
「日本における韓国文化の表象」に参加して
金柄徹(亜細亜大学)
まず、博物館にはまったく門外漢であるにも関わらず、今回のシンポジウムに参加 させて頂いたことに関して、朝倉敏夫先生をはじめ国立民族学博物館の関係者の方々 に御礼を申し上げたい。短期間ではあったが、お蔭様で様々なことを経験し、また多 くのことを学ぶことができた。
2日間のシンポジウムを通して既に韓国と日本の専門家による様々な議論がなされ たので、本報告書では博物館の専門家ではない者(強いていえば文化研究者)として の感想を簡単に述べたいと思う。
新「朝鮮半島の文化」展示
今回の展示(2000年3月)は、1983年以降公開されてきた「朝鮮半島の文化」展示 の展示替えであったが、残念ながら以前の展示を見てないので両者の比較はできず、
新しい展示に限っての感想だけを述べることにしたい。
今回の展示で一番ユニークな点は、朝倉先生の基調報告でも重要なプリンシプルの 一つとして紹介された「現代文化の展示」である。一般の博物館が過去のものを展示 することを念頭に置くと、現在のものを展示することは博物館としては一つの冒険的 作業であったに違いない。しかし、民博が追求しているのが「遺物(宝物)の展示」
ではなく「標本資料(情報)の展示」であることを考えれば、なるほどうなずける点
が多い。
朝鮮半島の現在を見せるため、展示には精神文化と物質文化とが一対をなすという 工夫が施されていたように思われる。即ち、 「伝統」は「意味ある過去」であり、そ れゆえに朝鮮半島の伝統文化の中には長い歴史を通じて様々な外来の文化が溶け込ま れてきているというメッセージが具体的な「もの」を通して伝わってきた。
もう一つ目が引かれるのはパティオに設置された酒幕である。朝鮮半島の文化を手 軽に体験できる場所としてのその活用が今後期待される。オンドルに座り、パジョン やマッコリが試食できれば、それこそ身近な異文化体験であろう。
さて、今回の展示に関する批判やその限界についても既に韓日の専門家によって具
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金柄徹(亜細亜大學)
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体的な指摘が行われたので、以下では3点ぐらいで筆者の考えをまとめることで本報 告書を終わりにしたい。
まず、情報伝達の限界である。限られた狭い空間に数多くの工夫や無数の情報がき っちりと詰め込んであるので、展示者の説明を聞いたり、 「配置の仕掛け」やその意 味をゆったりと吟味できる訪問客には大変興味深い展示であろうが、一般の客にはそ の面白さが見えないおそれがあるし、また韓国(朝鮮)文化の多様性は見えても、普 遍的な様子がつかめにくい可能性もあるのではなかろうか。
次に、今後の展示への要望事項である。現在、日本には約60万の在日コリアンが存 在するが、これからの展示にはその情報をもぜひ紹介してほしい。なぜ彼ら(彼女
ら)が日本にいるのか、なぜ在日コリアン・在日韓国人・在日朝鮮人などの名称が混 在して使われているのか(それゆえ、韓国語にしても韓国語・朝鮮語・コリア語など が用いられており、場合によってはハングル語という変な表現までもが使用されてい る)などを、朝鮮半島の分断の現実と共に(展示の主なターゲットとされる)日本の 小学生に伝えてほしい。
最後に、なによりも痛切に感じたことは展示という作業の難しさである。本当にお
疲れ様でした。
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