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紙おむつのリサイクルが進まない要因とその解決策の考察

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紙おむつのリサイクル

が進まない要因とその

解決策の考察

東京都市大学 環境学部 環境マネジメント学科 枝廣淳子研究室 4 年 1362027 緒方峻 2017/01/30

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目次

目次…P1 謝辞…P1 序論…P2 本論…P4~70 第1 章:「紙おむつの構造と環境負荷とはどのようなものが考えられるのか?」…P4 第2 章:「メーカー毎の環境配慮の取り組みの現状とは?」…P5 第3 章:「企業はどのような取り組みをしているのか?」…P7 第4 章:「自治体での取り組みの現状、取り組みの例」…P9 第5 章:「紙おむつリサイクルが推進しない原因・問題点」…P21 第6 章:「実際に行われているリサイクルの実例、その際の課題とは?」…P21 第7 章:「インタビュー調査:公益財団法人福岡県リサイクル総合研究事業化センター・ トータルケア・システム(株)、紙おむつリサイクルを推進する独立行政法人・ リサイクル会社の意見とその考察」…P26 第8 章:「インタビュー調査:福岡県大木町、紙おむつリサイクルを既に実施している 自治体の意見とその考察」…P33 第 9 章:「インタビュー調査:紙おむつ製造企業(ユニ・チャーム株式会社)、メーカー の紙おむつリサイクルへの考え方とその考察」…P39 第10 章:「インタビュー調査:環境省、中央省庁の考えとその考察」…P51 第11 章:「全インタビュー調査の振り返りと、見えてきた問題点の考察」…P62 第12 章:「本研究を通じて見えてきた紙おむつリサイクルの発展のための提案」…P65 結論…P72 文献表…P75

謝辞

今回、この卒業研究を卒業論文として形にすることが出来たのは、指導教授として担当し て頂いた枝廣淳子教授の熱心なご指導やトータルケア・システム株式会社の代表取締役で ある長武志様、同営業企画課長の嘉福人文様、公益財団法人福岡県リサイクル総合研究事業 化センターのプロジェクト推進班企画主幹(班長)の松尾成宏様、同研究開発課コーディネー ターの松村洋史様、同プロジェクト推進班技術主査の寺本洋子様、福岡県福岡県三潴郡大木 町の環境課課長である益田富啓様、環境省の担当者様、ユニ・チャーム株式会社の担当者様、 アンケート調査にご協力頂いた各自治体の担当者様が貴重な時間を割いてインタビュー・ アンケート調査に協力していただいたおかげです。 協力していただいた皆様へ、心から感謝の気持ちと御礼を申し上げます。

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序論

日本において高齢者(65 歳以上)の数は現在増加傾向にあり、総務省統計局の報告書では 平成25 年度の高齢者人口は 3186 万人で過去最多となっている。(文献表出典1)これによ って総人口に占める割合は 25.0%で過去最高となり、4人に1人が高齢者の計算になって いる。今後団塊世代が高齢者となっていくにつれて、さらに増加すると見られ、平成47 年 には65 歳以上の高齢者の人数は 3741 万人となっているとされている。(文献表出典 1) このような状況において高齢者介護の機会は増加することが必至であると考えることが 出来、それにより杖・車いす・紙おむつ等の介護福祉用品の需要も増加が見込まれている。 実際に大手メーカーのユニ・チャーム(株)の調べでは、大人用紙おむつと子供用紙おむつの 市場規模は2012 年に逆転し、大人用紙おむつの市場規模は子供用と比較して約 200 億円程 度大きいことが分かっている。(文献表出典 2) 特に現在中国や東南アジアで日本製の紙おむつの需要が高まっていることも影響して、 各メーカー・材料供給会社の両者ともに増産体制に移っている。その理由として、品質が高 く・安全であるという日本製の持つイメージや、新興国における紙おむつの利用が普及して きたということも影響している。(文献表出典 3) また子供用の紙おむつも、使用する子供の高年齢化・紙おむつの高性能化等によって使用 量も増加しているとの意見も存在していることがインタビュー調査によって判明した。 このように紙おむつの面では高齢者用の介護用紙おむつのみならず、子供用紙おむつに 至るまで需要の増加と、それに伴う消費が大きくなっているのが分かる。また上記の通り、 現在少子高齢社会が日本では進行しており、今後特に高齢者が使用する介護用紙おむつの 使用量は増大するのは確実であると見られている。 その場合、紙おむつ等の介護福祉製品の製造量・廃棄量は今後ますます増大すると考えら れ、廃棄物問題等の環境負荷、資源の枯渇等、紙おむつの使用量・廃棄量の増加によって、 今までは問題にはならなかった環境負荷・資源面等の問題が新たに発生する可能性が危惧 される。 問題の 1 つである廃棄物問題では、可燃ごみにおける紙おむつの比重がより高まってく るのではないかと見られている。福岡都市圏紙おむつリサイクルシステム検討委員会報告 書によると焼却ごみは今後減少傾向にあるとされている。特に2012 年から 2060 年までに 約1,000 万トンの可燃ごみが減少すると見積もられている。(文献表出典 5) しかしそのような状況においても、使用済み紙おむつの量はほとんど変化が無いと見ら れている。2012 年において焼却ごみに含まれる使用済み紙おむつの割合は全国平均で 7% を超える結果となっている。そして、今後その割合は増えていくと見られている。実際に現 在ユニ・チャーム(株)が使用済み紙おむつからパルプを再生する再資源化技術を活用した実 証試験を実施している鹿児島県志布志市においては、埋め立てごみに占めるおむつの割合 は20%に上っている自治体が存在するなど既に問題となっている自治体も存在する。1

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そのような今までは問題視されていなかった程度の問題が、今後多くの自治体において 表面化していくのではないかと考えられる。 図:焼却ごみに占める使用済み紙おむつの割合(全国):(文献表出典 5) だが日本において紙おむつの環境配慮、特にリサイクルに取り組んでいる事例は決して 多くは無い。その為取り組みや認識が不足していると言わざるを得ないのが現状である。 その為本論文では、介護製品の中でも消耗品であり国内外において市場規模が拡大して いる紙おむつに注目し、「紙おむつのリサイクルが進まない要因とその解決策に関する考察」 というテーマに基づき考察を行う。なお本論内では13 の章に分けて考察を行う。 第 1 章では紙おむつの構造と環境負荷とはどのようなものが考えられるのか、第 2 章で はメーカー毎の環境配慮の取り組みはどのようなものがあるか、第 3 章ではメーカー毎の 環境配慮の取り組みはどのようなものがあるか、第 4 章では自治体での取り組みの現状、 取り組みの例、第 5 章では紙おむつリサイクルが推進しない原因・問題点について考察を 行う。 また第6 章では実際に行われているリサイクルの実例、その際の課題、第 7 章は紙おむ つリサイクルを推進している(公財)福岡県リサイクル総合研究事業化センター・トータルケ ア・システム(株)へのインタビュー調査、第 8 章では既に紙おむつリサイクルを実施してい る大木町の環境課へのインタビュー調査、第 9 章では紙おむつメーカーの中で既にリサイ クルに取り組んでいるユニ・チャーム(株)へのインタビュー調査、そして第 10 章において 中央省庁の 1 つで環境に関して取り組んでいる環境省廃棄物・リサイクル対策部企画課循 環型社会推進室へのインタビュー、第11 章において今回行ってきた全インタビュー調査の 振り返りと問題点の考察、第12 章にて研究から見えてきた紙おむつリサイクルの発展のた

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めの提案を行う。そして最後に総括の結論を記載する。

本論

第 1 章:「紙おむつの構造と環境負荷とはどのようなものが考えられるのか?」

現在、製造・使用されている主流のおむつは、その名前にも入っている“紙”を使用した 紙おむつである。紙おむつに使用されている“紙”とは紙パルプのことである。主に使用さ れている紙パルプは、“吸水性と保水性”に優れる、繊維が太くて長い北米の針葉樹晒パル プ(NBKP…針葉樹晒クラフトパルプ)に限られているという。 しかし紙パルプの使用量は決して多くは無い。紙おむつの多くの部分では、紙パルプ以外 の石油由来の素材が多く使用されているのが現状となっている。 衛生材料企業の業界団体である、一般社団法人日本衛生材料工業連合会のホームページ によると、一般的な紙おむつの構造は以下の通りであると紹介されている。 図:おむつの構造:日本衛生材料工業連合会 紙おむつの構造より引用(文献表出典 6) おむつは主に表面材・吸水材・防水材・漏れ防止の立体ギャザー・テープ等の5 つに分け る事が出来る。そのうち、実際に紙パルプが使用されているのは給水材のみである。それ以 外の表面材・防水材・漏れ防止の立体ギャザー・テープ等にはそれぞれ、ポリエチレン・ポ リプロピレン・ポリウレタン等、各石油由来の材料が使用されている。その石油由来の材料 であり、紙おむつに使用されているプラスチック類の中で、ポリエチレンに次いで多く使用 されているのは、ポリプロピレンである。また吸水材として高分子吸水材=SAP(ポリアク リル酸ソーダ)と呼ばれる石油起源の材料も使用されている。 紙おむつの構造と構成材料は以上のとおりである。そのような特性の存在も紙おむつリ サイクルを阻んでいるが、現状の紙おむつの処分方法にも環境負荷が高まる要因があると 考えられる。 現在行われている処分方法は、現在製造されている紙おむつが紙を原料とするパルプ以 外に複数の石油由来の素材から構成されていること、衛生面を考えると使用後の紙おむつ

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から安心して使える素材として取り出せない等の理由から、リサイクルは行われずに、ほと んどの自治体において焼却・埋め立て処分が行われている。 以上を踏まえ、紙おむつには以下の3 つのような環境負荷が考えられる。 1 つ目は紙おむつの使い捨て・焼却処分によって発生する廃棄物の問題。 2 つ目は紙おむつに使用されるパルプ等の木材由来資源のみならず石油由来資源を多く 使用することに関してのライフサイクル全体での環境影響の問題。 そして 3 つ目は本来再生利用することが出来る資源を無駄に捨ててしまい、資源を適正 に活用することが出来ない問題。 これら上記の 3 点が現状では存在し、その他に今後発生が予測されている資源枯渇の可 能性もある。

第 2 章:

「メーカー毎の環境配慮の取り組みの現状とは?」

今回、調査を行う紙おむつを製造しているメーカーを選定するにあたり、衛生材料企業の 業界団体である、一般社団法人日本衛生材料工業連合会、全国紙製衛生材料工業会の紙おむ つ部会に所属している27 社を、本調査の対象として選定した。 その理由として、衛生材料製造業者・輸入販売業者が連絡を強固にし、衛生材料の品質の 向上、斯業の発展を図り、国民保健の向上に寄与するという目的の元において、日本衛生材 料工業連合会が組織されており、その全国紙製衛生材料工業会の紙おむつ部会には、名だた る国内の紙おむつの主要メーカーが所属している事が挙げられるからである。 以上のことから日本衛生材料工業連合会、全国紙製衛生材料工業会の紙おむつ部会に所 属している企業に関して調査を実施すれば、紙おむつ業界におけるリサイクルの取り組み の全体像が分かるのではないかと考えたためである。 今回実施した調査方法としては、日本衛生材料工業連合会、全国紙製衛生材料工業会の紙 おむつ部会に所属している27 社の会社ホームページをそれぞれ閲覧・評価することによっ て調査を実施した。そしてどのような取り組みが、どの程度各社で行われているか、またそ の情報が情報開示されているのか、調査を行った。また表においては、上方に紙おむつを製 造している大手企業 8 社を掲載し、その下にその他の紙おむつメーカーや材料の供給企業 を掲載した。

企業名

紙おむつに関してHP に環 境への取り組みの記載の有 無 具体的な目標の有無 目標に具体的な数字の記載の 有無 ユニ・チャーム株式会社 〇(エコチャーミングマ ーク)・その他※₅-₆ △(全体で記載有) ✖ 株式会社リブドゥコーポレ ーション ○(紙おむつリサイクル システム)※₇ ✖ ✖ P&G 株式会社 ✖ ✖ ✖

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白十字株式会社 ✖ ✖ ✖ 日本製紙クレシア株式会社 △(会社全体の取り組み で記載有)※₃ △(会社全体の取り組み で記載有)※₃ △(会社全体の取り組みで 記載有)※₃ 大王製紙株式会社 △(会社全体の取り組み で記載有)※₂ △(会社全体の取り組み で記載有)※₂ △(会社全体の取り組みで 記載有)※₂ 花王株式会社 ✖ ✖ ✖ 王子ネピア株式会社 ✖ ✖ ✖ アイム株式会社 池田紙業株式会社 ※₁ ✖ ✖ ✖ 伊野紙株式会社 ✖(HP 無し) ✖(HP 無し) ✖(HP 無し) イワツキ株式会社 ✖ ✖ ✖ 川本産業株式会社 ✖ ✖ ✖ クー・メディカル・ジャパ ン株式会社 ✖ ✖ ✖ 株式会社コーチョー ✖ ✖ ✖ 株式会社光洋 ✖ ✖ ✖ 株式会社サノテック 第一衛材株式会社 ✖ ✖ ✖ 大三株式会社 ✖ ✖ ✖ 株式会社近澤製紙所 ✖ ✖ ✖ 株式会社トーヨ ✖ ✖ ✖ 東陽特紙株式会社 ✖ ✖ ✖ 特種メーテル株式会社 ✖ ✖ ✖ ピジョン株式会社 △(会社全体の取り組み で記載有)※₄ ✖ ✖ 株式会社ララ ✖ ✖ ✖ ワンダフル日本株式会社 ✖ ✖ ✖ ※1…池田紙業株式会社は不織布の生産会社 ※2… 文献表出典 7 ※3… 文献表出典 8 ※4…文献表出典 9 ※5…文献表出典 10 ※6…文献表出典 11 ※7…文献表出典 12 調査結果は上記の表から分かるように、紙おむつの環境への配慮はほぼ進んでいないの が現状である。さらに配慮を実施している企業は一部の大手企業に止まっている。また、王 子ネピア株式会社等の会社では、テッシュペーパー等の他の製品においてFSC 活動などを 行っていたが、その対象商品に紙おむつは含まれてはいなかった。

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このように企業全体において、省資源・自然資源の保護を行っている企業はあるものの、 その取り組みが紙おむつにまで波及していると明記されている企業はごく少数であった。 以上の理由から、紙おむつ関連企業のリサイクルの取り組みは浸透・普及しているとは言 い難いのが現状であると考えられる。

第 3 章:

「企業はどのような取り組みをしているのか?」

前述の第 2 章では日本衛生材料工業連合会、全国紙製衛生材料工業会の紙おむつ部会に 所属している27 社の紙おむつに関する環境への配慮に関して、実際にどのような取り組み を行っているのか、調査を行った。 この章では第 2 章の調査を踏まえ、ホームページにおいて何らかの取り組みが確認され た全5 社(大王製紙株式会社・日本製紙クレシア株式会社・ピジョン株式会社・ユニ・チャ ーム株式会社・株式会社リブドゥコーポレーション)の環境への配慮の取り組み・紙おむつ へのリサイクルの実施の度合い等を調査していく。

1. 大王製紙株式会社

大王製紙株式会社では“森のリサイクル”と呼ばれるFSC 森林認証・PEFC 森林認証を 得た世界的な植林活動を行っている。また古紙のリサイクルの推進・グリーン購入法に対応 するための方針の設定などの全社を挙げた取り組みを推進している。 それ以外にも大木町の紙おむつ回収ボックスに広告出稿の形で他の紙おむつメーカー4 社と共同で一部費用負担をした。(文献表出典 7)

2. 日本製紙クレシア株式会社

日本製紙クレシア株式会社では、日本製紙グループ行動計画、環境行動計画「グリーンア クションプラン2015」の中で森林資源の保護育成を掲げている。その中で持続可能な資源 調達のため海外植林事業「Tree Farm 構想」を推進し、海外植林面積 20 万 ha を目指す、 国内外全ての自社林において森林認証を維持継続する、輸入広葉樹チップの全てを、PEFC またはFSC 材とする、トレーサビリティを充実させ、持続可能な森林資源調達を推進する、 といった取り組みが述べられている。また日本製紙クレシア行動計画の中においても、森林 資源の保護育成・環境に配慮した技術・製品の開発といった内容の取り組みを述べている。 (文献表出典 8) それ以外にも大木町の紙おむつ回収ボックスに広告出稿の形で他の紙おむつメーカー4 社と共同で一部費用負担をした。

3. ピジョン株式会社

ピジョン株式会社では ISO14001 環境マネジメントシステムの認証・環境配慮製品の制 作が行われている。また生産されている環境配慮製品は、乳幼児用おむつではあるが、おし

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っこ吸収ライナーと呼ばれる吸水材をパンツ型紙おむつにセットして使用することで、お むつの使用枚数は約半分に減らすことができ、ゴミの削減につながることが出来るなどの 特徴がある。(文献表出典 9)

4. ユニ・チャーム株式会社

ユニ・チャーム株式会社では「環境負荷低減」と「商品価値向上」の両方の厳しい基準を クリアした環境対応型商品に、ユニ・チャーム社独自のエコラベル「エコチャーミングマー ク」を表示している。2008 年から開始したこの制度は、現在 25 品目の商品に適用されてい る。運用においては、ファクター(商品の環境負荷と価値(機能など)を定量化し、新旧商 品の比較を行い、評価する環境指標のひとつ)の考え方に基づき、独自に作成したエコラベ ルガイドラインに沿って判断しているという記載があった。そしてエコチャーミング商品 の一例の中には介護用紙おむつ・リハビリおむつ等の商品が確認できる。 ハード面では2009 年に自立支援を可能とする排泄ケアを目的に、尿吸引ロボ「ヒューマ ニー」を発売した。この機械は専用の尿吸引パッドに内蔵されているセンサーが尿を感知し、 瞬時に尿を自動的に吸引し、タンクに尿を溜める。これにより夜間のおむつ交換が不要とな り、1 日 1 枚のパッドの交換で過ごせるので排泄ケアの負担を軽減、紙おむつの使用枚数が 減り、ゴミの量を重量比で90%減らした。さらに CO2 の排出量も 80kg となり、紙おむつ と比べて大きく削減しているとの説明がなされていた。また生物多様性の面での取り組み は、2014 年度の活動の中で当社製品の吸収材に使用するパルプは管理された森林から採取 した木材パルプで、持続可能な資源利用に努めている。(文献表出典 10・11) また同社では、リサイクル事業者であるトータルケア・システム株式会社(福岡県福岡市) へ資本参加を行っており、大木町の紙おむつ回収ボックスに広告出稿の形で他の紙おむつ メーカー4社と共同で一部費用負担をすることも行っている。

5. 株式会社リブドゥコーポレーション

株式会社リブドゥコーポレーションではリサイクル事業者であるトータルケア・システ ム株式会社(福岡県福岡市)へ資本参加を行っているという。 また大木町の紙おむつ回収ボックスに、広告出稿の形で他の紙おむつメーカー4社と共 同で一部費用負担をした。 トータルケア・システム株式会社が行っている、水溶化処理システムの考案の際には、当 時元大手SAP(高吸水性ポリマー)メーカーの技術者が在籍しており、その技術者が SAP リサイクルについてのアドバイスを提供した事実が存在しているという。 以上が、会社としての環境への配慮に対して、実際に取り組みが確認できた全5 社(大王 製紙株式会社・日本製紙クレシア株式会社・ピジョン株式会社・ユニ・チャーム株式会社・ 株式会社リブドゥコーポレーション)の取り組みの内容である。取り組みの傾向としては、

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多くの企業としては森林の保護に重きを置いているという事であるのが挙げられる。また、 現状では難しい紙おむつのリサイクルを目指して研究中の企業は、昨年から「オゾン水」を 使った「紙おむつの水溶化マテリアルリサイクル」の実験を行っているユニ・チャーム社1 社に止まった。 しかしこのユニ・チャーム社の取り組みは、一部マスコミではすでに成功したかのような 報道がなされているが、いまだ課題は山積であり、研究中の技術となっているため、即座に 大々的な事業として実現する可能性は低い。さらに、紙おむつの多くを占める石油由来の材 料に関して、取り組んでいるような言及は一社も無かった。たしかに紙おむつのパルプは、 紙おむつ全体の重量の70%程度に及んで、使用されているという報告書も存在する。2 しかしだからといって、同じく有限である石油資源を少しでも削減しようとする意識が 無いのは、大きな問題であると筆者は考える。それ以外でも、古紙パルプを紙おむつに利用 すると明記しているメーカーは、本調査では確認できなかった。 古紙パルプを紙おむつに使用していない理由は、肌触り・品質等の問題によるものではな いという。紙おむつに使用する紙パルプに求められている機能が「吸水性と保水性」なので、 全ての木材パルプが紙おむつ用に該当する訳ではなく、繊維が太くて長い「北米の針葉樹晒 パルプ」に限られているためである。この北米産針葉樹晒パルプが使われる主な用途は、紙 おむつ用を除けば、いわゆる「和紙(障子紙・襖紙・奉書紙等)」や、百貨店・専門店等の手 提げ袋や、工業用大型紙袋の外側等の厚くて白い頑丈な紙用に限られており、古紙として回 収されてマーケットにでるものはごくわずかでしかない。さらに分別もされていないため、 メーカーが針葉樹晒パルプ紙の古紙利用を検討しようとしても、必要量を安定的に入手す ることが困難であるのが現実であり、一般的に古紙利用はされていないという。このような 事情があるため、環境への対策としては十分であるとは言えないと考えられる。 以上を踏まえて、調査結果としては紙おむつの製造企業において、環境への配慮を行って いる事は確認出来たものの、主に森林資源の保護に止まっており、偏りがあった。さらに内 容的には不十分である印象を受け、また紙おむつリサイクルの取り組みを行っている企業 は一社に止まり、その成果等の記載も無かった。

第 4 章:

「自治体での取り組みの現状、取り組みの例」

第2 章・第 3 章では、主に企業を中心に取り組みの事例の調査を行った。そこでこの第 4 章では視点を変えて日本全国の自治体の調査を行った。その理由としては、現状では紙おむ つの排出の多くが家庭から出ているからである。 現在、国内で年間約 300 万トン以上の使用済み紙おむつが排出されている。その内訳で は、約30%が病院や老健施設等の事業者から、残りの約 70%が家庭から出されている。そ の家庭から出るごみは一般廃棄物(家庭系一般廃棄物)とみなされる。そして廃棄物の処理及 び清掃に関する法律の6 条において、一般廃棄物の収集・運搬および処分は、市町村に処理

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責任があり、市町村自らが行うのが原則であると定められている。そのため、自治体の力の 入れ具合によって、紙おむつのリサイクルの実施には大きな差が出てくるのではないかと 考えられる。 自治体の取り組みを調べるにあたり、その中でも今回は、各自治体がどのように紙おむつ を回収しているのかを調査した。その理由としては、紙おむつの回収は、既存のごみ回収シ ステムを活用することが大切であると考えたためである。 新しく回収システムを検討するのでは、費用や時間が掛かりすぎるうえ、回収担当者の選 定等をする必要があり多くの労力が必要となるなど、多くの問題が予想される。そのため回 収に関しては、既存の各自治体が実施しているごみ回収システムを活用して、適宜修正して いく方が、効率的であり現実的であると、筆者が判断したためである。 以上から、紙おむつリサイクルの実現には、各自治体による使用済み紙おむつであると区 別出来る形で回収を円滑に行うことが出来れば、より実現に近づくのではない考えている。 今回調査を行ったのは、自治体における紙おむつの回収方法の実態である。調査対象は、 日本全国47 都道府県に存在する全自治体である。対象の自治体の総数は 1,901 市町村であ り、各自治体のホームページ(Web ページ)を閲覧して回収方法・内容の情報収集・調査を行 った。また、北海道に存在する現在ロシア連邦が実効支配している北方領土(択捉島、国後 島、色丹島、歯舞群島の島々)に存在する 6 村(色丹村・泊村・留夜別村・留別村・紗那村・ 蘂取村)は、確認不能として本調査では処理した。 図:1901 自治体の紙おむつ回収の実態 本調査の結果は、上記のグラフから分かるように、紙おむつのみの回収はほとんど行われ ておらず、他の可燃ごみと一斉に回収している自治体が、ほとんどであるということが分か

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った。内訳としては、「可燃ごみと一斉回収を行っている自治体」は全体の 8 割(83%)を超 える1528 であった。逆に「他の可燃ごみと完全に分けて回収している(専用袋の使用・袋に 紙おむつが入っている旨の記載・透明で中身の確認ができる自治体)」は、全体の 2%の 38 自治体に止まった。それ以外の「一斉回収ではないが、他のゴミ袋と明確に見分けが難しい (他のゴミ袋と同じ方法で出すので間違える可能性がある等)自治体」は、全体の 1%にも満 たない4 自治体、「他のゴミ袋と明確に区別出来ない可能性がある(使用済み紙おむつを排出 する際に、可燃ごみのゴミ袋と紙おむつ専用袋の両方が使用できる等)の自治体」は、全体 の1%にあたる 20 自治体、「紙おむつの回収方法に関して未記載の自治体」は、全体の10% にあたる182 自治体、「自治体の HP やゴミ回収に関する Web ページが無い自治体」は全 体の4%にあたる 75 自治体という結果に終わった。 今回の調査ではある共通点が浮かび上がった。1 つは「他の可燃ごみと完全に分けて回収 している」38 自治体はその所在地において一定の偏りがあるということである。この 38 自 治体の内訳は以下の通りであるが、その中で他の可燃ごみと完全に分けて回収している自 治体が集まっており、その割合が突出しているのは東京都である。 図:紙おむつを明確に分かる形で、分別回収している38 自治体の都道府県別の内訳 上記の表のとおり、東京都は全体の4 割近くの 15 の自治体で、他の可燃ごみと完全に分 けて回収していることが分かった。またこの15 の自治体はいずれも東京 23 区外の自治体 となっている。 筆者はさらに、この38 自治体に関して財政面でも調査を行った。その調査の際に用いた 指標は、総務省が公表している「財政力指数」である。財政力指数とは、自治体の財政力を

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示す指標である。基準となる収入額を支出額で割り算(÷)した数値を表したものである。 その数値が1.0 であれば、収支バランスがとれていることを示しており、1.0 を上回れば基 本的に地方交付税交付金が支給されないというものである。 筆者は財政面の調査をする前に、財政の収支バランスが取れているということが、紙おむ つを別途に回収するために専用のごみ袋を用意する等、通常の回収方法よりも費用が掛か る回収方法を実施するためには必要となっているのではないかという仮説を考え、以上の 仮説を元に財政面の調査を企画した。 今回の調査の結果、38 自治体の内、全体の 76%に当たる 29 自治体においてその自治体 が所属している都道府県よりも財政力指数が高いという結果になった。特に区別回収をし ている自治体が最も多く存在する東京都では、実に15 自治体の内、87%(13 自治体)で東京 都そのものより、財政力指数が高い結果となった。 図:38 市町村の所属都道府県との財政力指数の比較 以上の調査から紙おむつの回収では、財政的な面が大きく関係してくる可能性があるの ではないかと考えられる。さらにその財政基盤の強固さが重要なのは都道府県ではなく、一 般廃棄物の処理義務が課されている、それぞれの地方自治体の可能性があるのではないか とも筆者は考えた。 また筆者は本調査を異なる視点から考察する為に、この38 自治体における紙おむつを使 用していると思われる乳幼児(0 歳~3 歳まで)と高齢者(65 歳以上)の割合を調査した。 総務省統計局のデータでは全国平均では両者合計の割合が、全体の 29%となっている。 (文献表出典 1) 本調査では、母数の 38 自治体の内、各自治体役所のホームページ(Web)内 に記載があり、調査が可能であった自治体は31 であった。その他の 7 自治体では情報を確 認することが出来なかった。 調査の結果、記録が閲覧できる31 自治体の中では、紙おむつを使用していると思われる

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乳幼児(0 歳~3 歳まで)と高齢者(65 歳以上)の割合が全国平均である、29%を超えている自 治体は全体の5 割に満たない 45%となっていた。特に全体の 4 割近くの 15 の自治体を有 している東京都に至っては、高齢者と乳幼児の割合が全国平均を超えている自治体はわず かに3 自治体しかなく、2 割に止まっている。 そのため、紙おむつの使用が多いことが予測される高齢者と乳幼児の割合が多い自治体 において、紙おむつの区別出来る回収を行なっているわけではない可能性があることが分 かった。 つまり、紙おむつを使用が想定される人間の総数の多少が、区別出来る回収方法を実施し ているという関係性を、本調査では実証することが出来なかった。 図:31 市町村(調査可能)の乳幼児・高齢者の全国平均の比較 前述のとおり、自治体の財政力を示す指標である財政力指数を用いての調査の結果、38 自治体の内、全体の76%に当たる 29 自治体において、その自治体が所属している都道府県 よりも財政力指数が高いという結果になった。特に区別回収をしている自治体が最も多く 存在する東京都では、実に15 自治体の内、87%の 13 自治体で東京都そのものよりも財政 力指数が高い結果となるなど、紙おむつの区別回収の実施において、財政面が影響している 可能性が考えられる結果となった。 以上から、紙おむつを他の可燃ごみと区別して回収する取り組みを行うには、財政基盤が 整っている自治体が行いやすいという可能性が考えられるのではないか。また、東京都にお いて多く実施している自治体が見られたのは、東京都が日本全国47 都道府県の中で、人口 増加率が最も高いためではないかと考えられる。 紙おむつはその製品特性上、減量が難しい特性が存在する。その為人口の増加が紙おむつ を使用する人間の増加に繋がり、結果的に紙おむつの区別出来る方法での回収を求める声

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が、経済的な側面から市民によって大きくなってきたのではないであろうか。後に紹介する インタビューからも明らかなように、多くの自治体で市民への経済的等の支援で紙おむつ の区別出来る回収を実施しているのも、この仮説を裏付けることに繋がるのではないか。 特に自然増加率に関しては、特に東京都では2014 年より自然増加の 4 県の増加率は、前 年に比べ低下している中、東京都は唯一増加に転じるという点も大きな要因となっている 可能性も考えられる。また社会増減率においても東京都が最も大きくなっている。(文献表 出典1) 以上から紙おむつを必要とする乳幼児や高齢者、またその家族や保護者等の多くの人々 の増加や転入によって増加している可能性があることが、紙おむつの区別回収の実施に大 きく影響が生じる可能性があるのではないかと考えられる。 上記の調査をしたうえで、筆者はこの38 自治体(うち 1 つはインタビュー時に調査)にア ンケート調査を行った。調査方法は該当自治体へ問い合わせフォームやメール等で質問票 を送り、回答して頂く形をとった。37 自治体中調査に協力して頂けた自治体は、全体の 73% にあたる28 自治体であった。本調査においては以下の 5 つの設問に回答して頂いた。 ① なぜ紙おむつを他の可燃ごみと区別できるように回収をしているか 回答して頂いた28 の自治体における紙おむつを他の可燃ごみと分けて分別している理由 は、最も多くの約7 割に上る 20 自治体において、「住民への経済的等の支援」を目的に分 別回収に取り組んでいることが分かった。2 番目に多い理由としては、4 自治体において「紙 おむつという製品特性上、個人の努力では減量が難しいことから」、他の可燃ごみと分けて 回収しているという結果となった。 またリサイクルを目的として、紙おむつを分別して回収していると回答している自治体 は1 つに止まっている。 以上から、現状では環境配慮を目的としている自治体は少なく、住民に対する経済的・福 祉的支援の観点が、自治体の取り組みを行う動機であるということが見受けられる。 ② 今後紙おむつのリサイクルを行う予定があるか、既に行っているか 調査を行った28 自治体の中で、既に紙おむつリサイクルを行っているのは 1 自治体のみ であり、今後紙おむつリサイクルを行うことを予定している自治体も1 つに留まっている。 その他の自治体においては現在のところ紙おむつリサイクルを行う予定や検討は行って いないとの回答が得られた。 ③ 紙おむつリサイクルを実施・検討している、していない理由とは 上記のとおり、調査を行った中で紙おむつリサイクルを現在検討している自治体は 1 つ に留まっており、その他は行う予定や検討もなされてはいない。唯一の紙おむつリサイクル を行うことを検討している自治体はその方法として、剪定枝と混合してペレット燃料を製

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造し、処理施設内のボイラー燃料に利用することを検討しているということである。その理 由としては、本来埋め立てるものをリサイクルすることによって、埋め立て処分場の延命化 を図る・エネルギー地産地消システム化のために紙おむつを有効利用する・燃料費の削減と いうことを目指していると回答した。 その他の検討・予定していない自治体の回答は以下のとおりである。 調査の結果、最も多くの理由として挙がったのは、「紙おむつリサイクルシステムが未確 立である」という理由であり、全体の44%に当たる 12 の自治体が回答した。その次に同数 で「リサイクル業者が近隣にない」・「衛生面で問題がある」という理由がそれぞれ5 つの自 治体から回答があった。それ以外には「財政面」・「焼却処分のため」などがそれぞれ回答さ れた。 図:紙おむつリサイクルを検討・実施しない理由 今回の調査結果は筆者にとって意外なものであった。当初筆者は自治体が紙おむつリサ イクルを検討・実施しない理由として最も大きいものは、衛生面や財政面に問題があるから ではないかと考えていた。その理由としては使用後の紙おむつには、必ず排泄物として尿や 便が付着してしまっている。そのため使用済紙おむつから作られた再生材料にも、衛生面で 問題があるのではないかという懸念が存在すると考えられる。また実際には清潔であった としても、消費者等に不潔である可能性があるというイメージがついてしまう可能性もあ る。さらに紙おむつリサイクルをする際には、燃料化・堆肥化する際にも追加で費用が発生 する。その為、その問題が解決されない限りは、自治体においては紙おむつリサイクルを検 討・実施することを、前向きに推進出来ないのではないかと筆者は考えていた。 調査結果は、筆者が考察した検討・実施しない理由である衛生面や財政面は確かに自治体

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が気にしている条件ではあった。しかし実際はより自治体が紙おむつリサイクルを検討・実 施することをためらっている理由として挙げられたのは、紙おむつリサイクルシステムが 未確立であるということであった。 そのため、紙おむつリサイクルを普及させるために、まずは様々な方法で行われている紙 おむつリサイクルシステムの確定または制度化、また全国や地域ごとにおける企業・自治体 等を巻き込んだリサイクルシステム網を構築することが、紙おむつリサイクルの実施に対 して二の足を踏んでいる自治体に紙おむつリサイクルの検討・実施に踏み出せる起爆剤に なるのではないかと考える。 ④ 紙おむつを他の可燃ごみと区別して回収を行う際に苦労したこと 調査を行った28 自治体において、紙おむつの他の可燃ごみとの区別回収を行う際に苦労 したこととして最も多いものは、「広報面」であり、全回答の 20%を占める結果となった。 2 番目に多かったのは 17%の「衛生面」、次いで「プライバシー保護」の 15%という結果 となり、上記の3 項目で、全体の半分以上を占める結果となった。また大きな特徴としては 「苦労したことは特に無し」という回答も、第4 位の 12%と一定数ある結果となった。 図:各自治体における紙おむつ回収時に苦労したこと 今回の調査では紙おむつの区別回収の際に自治体側が対応に苦労することは、主に広報 面・衛生面・プライバシー保護が大きな割合を占めているということが分かった。この結果 の中で特徴的であるのは、プライバシー保護が第3 位に入っているということである。 この結果からは、周囲の人間に自らの家庭において、紙おむつを使用していることを知ら

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れたくないと考える住民が一定数存在することの表れではないかと考えられる。今回調査 を行った東京都の武蔵野市等、一部の自治体からは集合住宅などでは周囲に紙おむつを使 用していることを知られたくない住民が、紙おむつを専用袋又は区別出来る形で排出せず、 一般の可燃ごみに混ぜて排出してしまうので対応に苦労しているとの回答も寄せられてい る。 しかし、多くを占めるのではないかと考えていた費用に関しては、回答した自治体が少な い結果となった。さらに特に苦労したことがないと答える自治体も一定する存在した。その 理由として筆者は元々紙おむつを使用する人口が多く、その負担軽減を住民が自治体側に 求めていた場合も多いのではないかと考える。 例えば実際に、神奈川県藤崎市では「もともと紙おむつの区別回収(専用袋を使用しての 無料回収)は住民要望も高かったため特に課題はない」との回答もあった。 今回調査を行った中で、紙おむつを使用すると考えられる年齢(0 歳~3 歳までの乳幼児と 65 歳以上の高齢者)の割合が全国平均より高い自治体は、データが存在する 24 自治体の中 では、全体の半数にあたる12 に上った。このこともこの調査結果に影響している可能性が あるのではないかと考えられる。 ⑤ 紙おむつを他の可燃ごみと区別して回収を行う際に注意していること 調査を行った28 自治体においての紙おむつの他の可燃ごみとの区別回収を行う際に注意 したこととして最も多いものは、「衛生面」であり全回答の22%を占める結果となった。 2 番目に多かったのは 19%の「広報面」、その後に「住民への理解を得る」(17%)・「規則 違反の発見・防止」(11%)のとなっており、この 4 つの項目で全体の約 7 割以上を占める結 果となった。 また苦労したことと同様に「注意していることは特に無し」という回答も全体の 11%と 第 4 位と同率となっている。さらにプライバシー保護に関しては、前述の苦労しているこ とよりも低い結果となっている。 衛生面が最も高い理由としては、住民の協力が不可欠なこの取り組みにおいて、家庭で排 出する際や回収する際に如何に衛生的であるかが、取り組みが受け入れられるかどうかに 懸かっているのではないかと考える。如何に負担を軽減するためとはいっても衛生的でな い排出・回収方法、その実施による環境被害が起こったのでは取り組みに賛同する住民は少 なくなってしまうのではないかと筆者は考察する。 そして特にプライバシー保護が苦労したことに比較して少ない理由は、各家庭において 既に家庭独自でプライバシー保護を行っているため、行政側が改めて注意する必要性が少 ない、または注意に神経を使わないで済む状況である為ではないかと考える。

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図:各自治体における紙おむつ回収時に注意していること 上記には、調査に回答して頂いた28 自治体の調査結果を記した。 筆者はその調査と同時に、紙おむつを使用するとみられる年齢(0 歳~3 歳までの乳幼児と 65 歳以上の高齢者)の割合が、全国平均より高い 12 自治体に絞っての集計も実施してみた。 その結果として、紙おむつを他の可燃ごみと区別出来るように回収している理由は「経済 的等の支援」が全体の8 割と最も多く、28 自治体対象のアンケートと結果は同様であった。 また紙おむつリサイクルを検討・実施しない理由は、「システムの未確立」・「業者が近隣に ない」が双方とも4 割を超える結果となり、衛生面と財政面のその両方を合わせた結果も 2 割に行かない等、28 自治体の結果よりも両者の差が如実に表れた結果となった。 紙おむつを他の可燃ごみと区別出来るようにして回収を行う際に苦労したことに関して は、上位3 つの「広報面」・「プライバシー保護」・「衛生面」は変わらず、その割合を伸ばし ていた。また「住民への理解を得る」・「費用」・「特に無し」の項目は無くなったことが印象 的であった。 このことは元々紙おむつの利用者が多く存在するために住民側の要請や希望が一致して おり、費用的な負担を住民に求める(紙おむつの区別回収を導入する)等の、自治体が回収費 用に対して出費することに関して市民の理解が得られやすく、納得しやすい可能性がある ことがこの結果をもたらしたのではないかと思われる。そのため、その苦労は住民の理解を 得ていることで他の自治体よりも少なくなったのが、この結果に反映されているという可 能性を考えることが出来るのではないか。

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図:紙おむつ利用者が多いと思われる 12 自治体における紙おむつ回収の際に苦労したこと 紙おむつを他の可燃ごみと区別できるようにして回収の際に注意することの上位 4 つは 「広報面(31%)」・「衛生面(15%)」・「プライバシー保護(15%)」・「規則違反の発見・防止(15%)」 となっていた。この結果は28 自治体対象のアンケートと比較すると、1 位の「衛生面」が 低下し、2 位の「広報面」上昇してそれぞれの順位が入れ替わり、3 位の「住民への理解を 得る」が無くなり、その代わりに5 位であったプライバシー保護が上昇して 3 位になった。 また4 位の「規則違反の発見・防止」に関しては順位の変動はなかった。またそれ以外の下 位では「費用面」・「ルールの周知」に関する項目も無くなったことが変化した点である。 この結果は、紙おむつを使用する人が多く、元々住民が経済的支援に繋がるこの政策を求 めていたことから住民への理解を得ることが容易になり、それと同時に日頃から紙おむつ を使用するため衛生面・費用面・ルール周知の面も同様に受け入れやすくなったためではな いであろうか。また同様の理由で取り組みに対し、様々な価値観を持ち、それぞれ理解をし ていると思われている住民に対して正しく目的や理由を伝えるためにも、広報面に力を入 れ、紙おむつ利用者が増加しているため、彼らが気にしているプライバシー保護に自治体は 重点を置いたのではないだろうか。

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図:紙おむつ利用者が多いと思われる 12 自治体における紙おむつ回収の際に注意すること 以上の調査から分かったことは以下の通りである。 まず紙おむつを他の可燃ごみと区別出来るように回収している自治体は、全国の全自治 体の2%ほどしか存在せず、ほとんどの自治体が他の可燃ごみと混在処分していると分かっ た。また区別出来る回収方法を行っている38 の自治体でも、その理由は「住民への経済的 等の支援」が大半を占めており、環境配慮を目的としたものではなかった。さらに紙おむつ リサイクルを検討・実施しない理由として、自治体が挙げたものは「リサイクルシステムが 確立していない」というものが最多であり、当初筆者が予想していた、「財政・衛生面」よ りも数値が高くなった。 このように、自治体における紙おむつの区別回収の際に苦労することは、「広報面」・「衛 生面」・「プライバシー保護」となっており、注意していることは「衛生面」・「広報面」・「住 民に理解を得ること」・「規則違反の発見・防止」であった。 ところが、苦労・注意したことの2 つの結果は、紙おむつを利用すると思われる年齢層の 人口が多い地域においては、異なり順位が大きく入れ替わることが本調査において判明し た。このことから紙おむつリサイクルの普及・促進に関しては、費用面・衛生面の問題より も、まずは紙おむつリサイクルシステムの確立が、自治体の紙おむつリサイクルの検討・実 施に深く関わっている可能性がある。 さらにそれぞれの地域における、各年齢層の人口等の地域独自の特性を理解したうえで、 臨機応変な対応やアプローチを行い、各自治体の解決するべき問題点を見つけ、対応策を変 更することが必要であると考えられる。

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第 5 章:「紙おむつリサイクルが進まない原因・問題点」 第2 章・3 章で述べた通り、紙おむつの環境配慮への取り組みは大手メーカーでしか見ら れず、また紙おむつのリサイクルは一部では取り組みが行われているが、メーカー・自治体 等でも全国的にはまだ、リサイクルは推進されてはおらず、焼却処分が大半を占めるのが現 状である。そのような現状に紙おむつリサイクルは置かれており、紙おむつのリサイクル・ また再生材料の紙おむつへの使用等の、取り組みが推進しない要因はどのようなものが挙 げられるのか、本章では調査を行う。 紙おむつリサイクルは現状において、衛生面で多くの問題点があるとされ、紙おむつへの リサイクル・再生材料の使用を妨げている。特に使用済み紙おむつは、一度し尿が付着した ために、単に紙おむつを素材別に分離するだけでなく、薬剤を用いた消毒・滅菌等の処理工 程が必要になる。そのため専用の機材・設備が必要となってくる為、新たな設備投資や費用 が掛かってくるという問題点が存在する。 また紙おむつメーカー側も、紙おむつのリサイクル品ということでし尿の付着が気になる 等の不衛生であるという消費者・使用者のイメージが現状においてあり衛生面を重視する 為、なかなか利用が進めることが出来ないという側面も存在するとされている。 他にも廃パルプを堆肥化して、肥料を作る技術も研究されているが、法規制のため実現不 可能に近いものとなっている。 昭和45 年に制定され、平成 27 年 7 月に最終改定された「廃棄物の処理及び清掃に関す る法律」では、同法17 条において「ふん尿の使用方法の制限」として「ふん尿は、環境省 令で定める基準に適合した方法によるのでなければ、肥料として使用してはならない。」と 定めている。そのため、人糞の肥料としての使用には加熱や化学的処理や長期熟成等の方法 で殺菌し、かつ寄生虫の発生を防ぐ等の法的規制が存在するので、ほぼ実現不可能となって いるという意見がある。 以上のように現状においては紙おむつをリサイクルするためには、多くの新たなエネル ギーを消費することや、衛生面・製品性能等・需要や環境面・法律面などを考慮すると、現 時点では有効な手段であると考えることは、難しくなっている。 第 6 章:「実際に行われているリサイクルの実例、その際の課題とは?」 第 5 章では紙おむつのリサイクルを行う際の問題点を取り上げた。しかしこのような状 況下において、福岡県で、官民共同の紙おむつのリサイクルを行う実証実験が行われたとい う興味深い事例が存在している。本章では福岡県で行われた実証実験を元に、リサイクル方 法の可能性・問題点を調査した。 福岡県環境部循環型社会推進課と、(公財)福岡県リサイクル総合研究事業化センターは、 平成 25 年 7 月に、学識経験者、排出事業者団体、関係各機関及び福岡都市圏の 17 市町 (福岡市、筑紫野市、春日市、大野城市、宗像市、太宰府市、古賀市、福津市、糸島市、那 珂川町、宇美町、篠栗町、志免町、須惠町、新宮町、久山町及び粕屋町)で構成する福岡都

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市圏紙おむつリサイクルシステム検討委員会(委員長=北九州市立大学国際環境工学部 伊 藤洋教授)を立ち上げ、福岡都市圏での紙おむつリサイクル新プラント建設を目指して、3 年間各種実証実験と協議検討を実施した。 紙おむつは通常パルプ、プラスチック及びポリマーの複合材料で構成されており、(公財) 福岡県リサイクル総合研究事業化センターが2015 年に調査した際には、未使用の場合重量 は大人用で約 60g なるが、そのうちパルプが 70%程度使用されているということが分かっ た。さらに紙おむつを使用した場合、し尿を吸収して重量が約3.5 倍に増加しており、同セ ンターの調査でも使用済み紙おむつに含まれるし尿の割合は、全体の約 70%に上ることが 分かるなど、紙おむつ内に多くの水分が含まれることになる事が分かった。そのため、紙お むつは燃えにくくなり、燃焼させるためには助燃材の投入が必要不可欠となってくる。 以上のように紙おむつの排出量が増加した場合、助燃材の費用負担等の要因から焼却コ ストの増加が懸念される。現状においては使用済み紙おむつのほとんどが、可燃ごみとして 各自治体の焼却施設等で処理されている。一部で熱回収を目的とした“サーマルリサイクル” は行われているものの、製品として再利用する“マテリアルリサイクル”は全国でもほとん ど実施されてはいないのが現状である。リサイクル(特にマテリアルリサイクル)が浸透しな い理由としては、使用済み紙おむつについては、使い捨てという用途上の問題や衛生面への 配慮等から、主に適正処分としての焼却処理が行われているというものは存在する。 しかし、リサイクルを実施することによって、針葉樹パルプの使用量削減(=森林資源の 保護)・焼却ごみの低減(=焼却施設の延命とごみ処理費用の低減)・リサイクル処理による CO2 の排出抑制=温暖化防止などの大きなメリットが生まれるという利点が存在する。 その結果、福岡県では水溶化処理システムを確立することが出来た。この処理システムの 導入により、パルプとポリマーの分離技術によって、使用済紙おむつからパルプ・プラスチ ック及び汚泥を取り出し、精製した再生パルプを建築資材へ、プラスチック及び吸水性ポリ マーを RPF(紙・プラスチック由来燃料)へ、汚泥(微生物を利用した排水浄化施設から発生 する微生物残渣)を土壌改良剤へと、リサイクルシステムを確立することに成功した。 以上のリサイクルシステムの実施の為、平成 17 年にトータルケア・システム社が大牟田 エコタウン内に大牟田プラントを設置し、世界で初となる紙おむつのマテリアルリサイク ル事業(水溶化処理システム)が行われた。この世界初となる紙おむつのマテリアルリサイク ルでは、「水溶化処理システム」と呼ばれる方法を用いてリサイクルを行っている。 手順としては、一般家庭、病院・福祉施設等から回収してきた使用済み紙おむつを、リサ イクルプラントに運ぶことが第 1 工程となっている。次に使用済み紙おむつを水と分離剤 の入った分離槽へ投入し、破砕して攪拌(かくはん)する。それによりそれぞれの比重を利用 して、パルプ・プラスチック・汚泥に分離して回収される。その後洗浄工程を経て回収され た不純物がない上質なパルプはその後成形され主に建築資材の原料として建材メーカーに 販売される。不純物の混じった低質パルプは土壌改良材等、プラスチックはRPE(固形燃料)、 汚泥は堆肥の原料として再利用されている。

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また、トータルケア社の処理プラントであり、大牟田エコタウン内に存在する“ラブフォ レスト大牟田”では1 日の処理能力は 20 トン、紙おむつ 10 万枚を誇り、パルプ回収率も 80%と高い水準である。(文献表出典 13 より引用) 上記の実証実験では、様々な問題点が浮上した結果となった。まず、消費者の意識の面で の取り組みへの参加する際への問題点が明らかとなった。福岡市が調査を行った、紙おむつ をリサイクルしたくない理由(複数回答有)では、圧倒的に「衛生面での問題が気になる」 というものが63%とその他の項目を抑えて、最上位を占める結果となっている。 図:紙おむつをリサイクルしたくない理由:福岡都市圏紙おむつリサイクルシステム検討 委員会報告書(案) より引用(文献表出典 14) トータルケア・システム株式会社へのインタビューの際に担当者が強く語って強調して いたのは、自社において水溶化処理システムを使用して再生した再生パルプの清潔さや安 全性であった。処理の過程では再生パルプ・廃SAP を精製する過程では、洗浄滅菌層を通 して滅菌を行う。また使用する水の 80%を再生利用する際にも汚染処理システムを使用し て処理を行うという処理方法を行っており、十分に清潔さ・安全性を確保している。 広報面では紙おむつリサイクルに興味を持った自治体職員・一般人などには積極的に広 報を行っている。しかし予算不足などの面から、紙おむつリサイクルを知らない、その他不 特定多数の一般人への大規模な広報活動は行えていないことが課題であると同社の嘉副営

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業課長はインタビューの際に話していた。 そのため、紙おむつリサイクルに関しての取り組み、特に衛生面での取り組みや一般人・ 消費者が気になる項目等の実際の数値などを包み隠さず公表して消費者・再生材料を使用 するメーカーサイドへの情報提供を強化し、紙おむつリサイクル・再生材料を使用した紙お むつへの理解を得ることが重要であると考えられる。 それ以外にも紙おむつリサイクルの取り組みの公表など、広報活動を推進する際には、今 後将来的に紙おむつを使用していく子供等の若年層や中年層の大人等、これからの社会の 基盤となっていく、もしくは現在基盤となっている層に対して積極的かつ多岐に渡っての 広報を行っていくことが必要なのではないかと考える。 その他に現行の紙おむつリサイクル制度における問題点としては、福岡市が行った紙おむ つリサイクルの推進条件を尋ねたアンケート(複数回答有)では、大きく分けて 3 つの推進条 件が浮き彫りとなる結果となった。 まず紙おむつのリサイクルを推進する際の条件として挙げられるのは、以下の3 点である。 1 つ目は「リサイクルに係る料金がごみ処理料金と同等かそれ以下であること(68.9%、 2 つ目は「定期的に回収してもらえること(66.1%)」、3 つ目は「分別・前処理(大便等の 除去)に手間がかからないこと(62.6%)」であった。なお各項目ではそれぞれ 60%を超え ている。以上のように現状では、コストや分別の手間といった実務的な条件が紙おむつリサ イクルを推進するうえで課題となることが分かった。 図:紙おむつリサイクルの推進条件:福岡都市圏紙おむつリサイクルシステム検討委員会 報告書(案) より引用(文献表出典 14)

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ただし上記の3 条件の内、3 つ目の条件である「分別・前処理(大便等の除去)に手間が かからないこと」に関しては、比較的簡単に条件のクリアが出来るのではないかと考えられ る。そもそも紙おむつは廃棄する際に排泄物をトイレに捨てることが求められているとは いえ、全ての排泄物は除去できず、微量の排泄物は付着したままになってしまう。そのため 放置しておくと、異臭が発生するという製品の特性上の問題がある。そのためほとんどの消 費者は、他の可燃ごみと紙おむつを分別して保管して匂いの発生・拡散を防ぐ取り組みをし ていると思われる。また上記のように既存の紙おむつの廃棄方法でも事前に排泄物はトイ レに流すと定めている自治体がほとんどとなっているのも事実である。 以上から紙おむつ専用袋で回収をする場合でも、比較的簡単に受け入れられるのではな いかと考えられる。そのため紙おむつリサイクルの推進条件として難しいと筆者が考える ものは、「経済面」・「回収の確実性」の2 つであるのではないかと考えられえる。 上記のように、様々な問題が紙おむつリサイクルの推進を実現するために存在する。その 中でも経済面で考えてみた場合、使用済み紙おむつのリサイクル処理料金を現在のごみ処 理料金よりも安価に設定することができれば、経済原理により焼却処理からリサイクル処 理に自然と変更される可能性が高い。 しかし、逆に紙おむつのリサイクル料金が現在のごみ処理料金よりも高い場合は、経済原 理のみではリサイクルは進まない可能性が高い。 この場合、紙おむつのリサイクルを推進するためには、何らかの行政施策が必要となる。 考えられる行政施策としては以下の通りであると考えられる。

紙おむつリサイクルの推進のための行政施策

1. 事業系一般廃棄物の処理料金の値上げ 2. ごみ処理料金の徴収方法を有料指定袋制から従量制に変更 3. 事業系紙おむつに係る処理料金の設定 4. 事業系紙おむつの受入禁止措置 しかし、上記に記載した施策は、排出事業者の理解を得られる説明をすることが困難であ り、いずれも排出事業者の経済的負担の増加となること等から、ほとんどの自治体において、 どの行政施策も実際に実施することは困難であるとされている。さらに紙おむつリサイク ルの普及のためには、市民への分別の啓蒙、紙おむつ回収量の確保、自治他の枠を越えた広 域的な収集運搬体制、排出事業者の協力、自治体の支援等の実現が必要となってくると思わ れている。

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第 7 章:「インタビュー調査:公益財団法人福岡県リサイクル総合研究事業化センター・ トータルケア・システム(株)、紙おむつリサイクルを推進する独立行政法 人・リサイクル会社の意見とその考察」 上記のように筆者は、紙おむつの現状・環境負荷、紙おむつリサイクルの推進のための問 題点・課題、またそれに付随する自治体・企業等の取り組みなどの実態の調査を行ってきた。 しかし、今までの調査では、主に書籍・アンケート・Web ページの閲覧などに止まってお り、実際に紙おむつリサイクルに携わっている方々の声や意見を直接聞く機会もなかった。 また使用済み紙おむつの環境配慮を目的として、研究を行っている先行研究も存在せず、市 町村等の自治体等の現場において、紙おむつリサイクルに実際に関わっている方の主張や、 現状の取り組みの問題点や改善点を知ることが本研究において必要不可欠となっていた。 そのため筆者は、調査の一環として、福岡県においてリサイクルシステムを社会に定着さ せることを目的に組織され、紙おむつリサイクルにも積極的に参画している“公益財団法人 福岡県リサイクル総合研究事業化センター”(以下リ総研)、福岡都市圏紙おむつリサイクル システム検討委員会においてオブザーバーを務め、日本初の紙おむつの水溶化処理システ ムを運用している“トータルケア・システム株式会社”(以下トータルケア社)の 2 団体に対 してインタビューを実施した。その際にお答え頂いた方は、トータルケア社からは、長代表 取締役・嘉副営業企画課長の2 名、リ総研側からは松尾企画主幹(班長)・松村コーディネー ター・寺本技術主査の3 名、合計 5 名にインタビューをすることが出来た。 本第 7 章では、紙おむつリサイクルを推進し、実際にリサイクルを請け負っている事業 者という立場で以下5 項目を回答して頂いた。 1. 実験を踏まえての現状の紙おむつリサイクルの問題点・改善点 リ総研・トータルケア社の現状の紙おむつリサイクルの問題点・改善点として両者が一致 して認識していることがあった。それは処理の際、請求されるリサイクル料金とゴミ処理に 実際にかかる費用に、大きな乖離が存在しているということである。 インタビューの際にリ総研の松尾企画主幹より横浜市のデータを見せて頂いた。それに よると横浜市のHP においては、一般廃棄物である事業系ごみは横浜市の工場・処分地へ搬 入する際に処理費用として1㎏当たり13 円を支払うことを定めているというものだ。 しかし松尾企画主幹はこの料金は安すぎると指摘する。本来であれば処理費用は40 円以 上必要であるというが、実際に事業者に請求される金額とは大きくかけ離れているという ことである。つまり一般廃棄物の焼却処理費用は安い理由は、税金をつぎ込んで安くしてい るという理由となっている。このような例は日本全国において多く見られるという。 そのため生じる問題として挙げられるのは、行政が許可を出している業者の処理料金が 相対的に高額になるということである。そのため意識が高い事業者以外は、利益を追求して これらは使用せず、費用の安い焼却処理を選択しがちになってしまう。産業廃棄物では民間 の業者一本なので再生利用実施率は高いという。しかし、一般廃棄物(事業系も含む)では市

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