★地方創生カレッジ・講義テキスト ★クリエイティブタウン・シリーズ ★「まちのへそ」からはじまる地方創生 ❖❖❖ 基礎編❶ なぜ、クリエイティブタウンか 3rd Week:まちづくりの3ポイントアプローチ □ Chap.1 :デザイン・ビジネス・スキーム □ Chap.2:川越一番街商店街 □ Chap.3:長浜「長浜らしく美しく住む」 □ Chap.4:高松丸亀町商店街 □ Chap.5:総合ディスカッション *講義テキストがあります。テキストは、講義の収録前に想定 したシナリオで作成しています。実際の講義とは異なります 長浜は、湖北にたたずむ美しい都市である。琵琶湖 の東岸には、南から大津、草津、守山、近江八幡、 彦根と魅力的な都市が並ぶが、その最北にあって、 いわゆる湖北の中心都市である。湖北には、長浜を 含め 9 つの市町村があったが、現在では合併して人 口 16 万 4000 人の都市となっている。 長浜の古い町は、東西 400m、南北 1200m の長方 形で、碁盤目状に割られ、町家が並ぶ。長浜に豊臣 秀吉が城を築いたのは 1575(天正 3)年。ただし、 江戸時代に入ってからは彦根藩領となり、純然たる 商工都市として栄えた。工業では伝統的には浜縮緬 と呼ばれる絹織物が特産品である(現在は大きな企 ✓ 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 市 る な都市 1 131 1 13 3 0 10 3 3 平成18年2月合併直前(1市8町合併前)の旧市町行政界 都市計画区域 木之本高月 浅井湖北 都市計画区域 彦根長浜 都市計画区域 都市計画区域外 旧余呉町 旧余呉町 旧余呉町 旧余呉町 旧木之本町 旧木之本町 旧木之本町 旧木之本町 旧西浅井町 旧西浅井町 旧西浅井町 旧西浅井町 旧浅井町 旧浅井町 旧浅井町 旧浅井町 旧高月町 旧高月町旧高月町 旧高月町 旧湖北町 旧湖北町 旧湖北町 旧湖北町 旧虎姫町 旧虎姫町 旧虎姫町 旧虎姫町 旧びわ町 旧びわ町 旧びわ町 旧びわ町 旧長浜市 旧長浜市 旧長浜市 旧長浜市 3rd Week/Chap.3 010 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 市 る な都市 0 り の 3/ 3
景になっているといえる。 ただし、長浜の小売り吸引力は年々低下する傾向 にある。大きな都市ほど商業集積が進み、ますます 多くの人を集めるようになるという全国で見られる 傾向が、ここでも観察される。長浜の商業が都市間 競争の中で厳しい状況に置かれていることがうかが える。 図□に長浜の市街地の地図を示そう。今は市街地 が大きく広がっているが、江戸時代からの町の範囲 は点線で囲まれた部分であった。この中には、伝統 的な町家がたくさん遺されており、美しい町並みを なしている。 その後、長浜を通過する主要な街道は徐々に内陸 部へ移動した。まず第二次大戦前(昭和 12 年~ 28 年) に、当時の市街地の東側をかすめるように、国道が 造られた。昭和 44 年にはさらに内陸の田圃の中に バイパスが建設された。その 10 年後の昭和 55 年に は、さらに内陸部に北陸自動車道が建設された。こ のように主要な道路が内陸へ移動するとともに、市 街地も内陸部へ広がった。 とくに、昭和 44 年建設のバイパス沿いにはたく さんの店舗が立地するようになった。これらのお店 業の機械などの製造工場も多い)。また浄土真宗の 古刹・大通寺があり、今でもたくさんの参拝客が訪 れる。長浜は門前町でもあった。 江戸時代の主要な街道は、琵琶湖に沿った北国街 道で、まちなかの琵琶湖よりを南北に貫通する。こ の北国街道と内陸部へ向かう街道とが交差すると ころは「札の辻」と呼ばれる。この辻の東北角に、 1900(明治 33)年に第百三十銀行長浜支店として 建てられ、「黒壁」の愛称で親しまれてきた建物が 物語の舞台である。 このような地域にある長浜は、文字通り湖北の中 心都市である。その様子は、小売り吸引力という指 標によって簡単に確かめられる。小売り吸引力とは、 その都市が周辺からどれだけ顧客を引きつけている かを示す指標で、具体的には、長浜の人口ひとりあ たりの売り上げを滋賀県全体の人口ひとりあたりの 売り上げでわり算して算出する。図に示すように、 長浜の小売り吸引力は滋賀県内の他都市を圧倒して いる。これは長浜が近隣の大都市に依存しない独立 性の高い都市であることを示している。このような 条件は、長浜に個性のある文化や社会を生み出し、 さらに町づくりにおいて独自の道を開拓してきた背 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 1 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 市 る な都市 0 り の 3/ 3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 0. 0. 1.0 1.3 1. 1 1 1 11 1 1 00 00 00 市 り の り たりの の り たりの 市 .3 1 . 3rd Week/Chap.3 市 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 市 地の ス い 1 の 市 3 3rd Week/Chap.3
は古い町にあった商店街から客を奪い始めた。株式 会社黒壁が活動を開始したのは、まさにこのような 経過の中で、古い町から人影が消えかけていた時の ことであった。 問題の建物は 1900 年(明治 33 年)国立第三十三 銀行長浜支店として建設された。1905(明治 38) 年には名古屋に本拠を置く明治銀行長浜支店とな り、1931(昭和 6)年に同行が倒産した後は、紡績 会社の配送所、煙草専売公社の営業所などを経て、 1954 年からは壁を白く塗り替え長浜キリスト教会 として使われてきた。 1987 年、長浜キリスト教会が移転、売りに出さ れた。取り壊され、マンションになるのではないか と心配した地元の人びとは、署名を集め、買い取っ て資料館にして欲しいと市役所に申し出た。対応し たのは、当時商工観光課長をしていた三山元暎さん。 三山さんは、市役所が資料館をつくっても町の活性 化につながらないと判断、同世代のまちづくりの研 究仲間に呼びかけた。呼びかけられたのは、繊維卸、 倉庫会社、建設会社、製造業などを営む経営者たち である。彼らは資金を出しあって、土地と建物を買 い取り、運営する会社を設立することを決めた。ま 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ り の 1 00 1 の そ な た から はじまる 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 開発 の り方 をし いた んは 市 を の な らない のまち りの か た 3rd Week/Chap.3 ず、市内の企業 8 社が 9000 万円を出資を決め、長 浜市に呼びかけて 4000 万円の出資をあおぎ、合計 1 億 3000 万円の資本金で株式会社・黒壁が設立さ れた。「市が単独で購入したら 1 億円いるぞ、会社 への出資なら半分以下で済むぞ」が長浜市へ出資を 求める殺し文句であった。 しかし会社を設立する前にも、設立して土地と建 物を買い取ったあとも、この建物で何を行うかがす ぐには決まらなかったという。結果から言うと、ガ ラスを扱うことを決め、古い建物を活かして施設を 整備、ヨーロッパへのガラス買い付けを敢行して、 大成功をおさめるのであるが、この間の奮闘記は、 半ば神話化されて、黒壁のホームページにも載って いるのでぜひお読みいただきたい。 買い取った敷地内には、黒壁土蔵づくりの本館(黒 壁ガラス館、1 号館)のほか、裏の土蔵をガラスの 食器を使った本格的なフランス料理レストラン(ビ ストロ・ミュルノワール、2 号館、現 3 号館イタリ ア料理店オステリアベリータ)にし、ほかにガラス の工房(スタジオクロカベ、3 号館、現 2 号館)、公 衆便所(4 号館、現在番号なし)、そしてポケットパー クが整備された。 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ ク ー ク ーは は ない ・ の を は または地方 した をい は の な ク ー のそ の を生かし は取り組み しい を い た の は ク ーは スクを らない の の いる しかし は 市 は の を ち い る な は ま の を し た 1 000 市 000 1 00 1000 「市 いる ク ーなら 000 」 • 1 0 を 00 を 3 か ら 市から1 の の は 000 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 3rd Week/Chap.3
ガラス館を成功させるためにも必要と考えられたの である。 以上のサクセスストーリから、図らずも3ポイン トアプローチが実践されていたことが読み取れる。 歴史的な建物を保全しそれを活かしていくという [デザイン]。株式会社黒壁というまちづくり会社が ディベロッパーになっていくという[スキーム]。[ビ ジネス]は、ガラス工芸という、歴史的な中にもハ イカラが光る長浜の町並みにピッタリの魅力的な商 品を言い当てた。 もちろん、これらは偶然の産物ではない。[デザ イン]については、1984 年に市民がコンサルタン トに頼らずつくった「博物館都市構想」があった。 長浜の町を博物館に見立て、歴史的資源を磨き上げ・ 活かしてまちづくりを進めようという構想である。 そのタイトルが「伝統を生かし美しく住む」である。 [スキーム]については、事あるごとに市民が資 金を出しあい、問題を乗り越える「伝統」があった。 以下がその会社リストだ。 このリストにはないが、古くは、市政 40 周年の 1983 年に、市民が 4 億 3000 万円に及ぶ寄付を集め て長浜城を再建した実績がある。リストの一番上は、 オープンは 1988 年 7 月。オープン後、ガラス館 の売上げは、1989 年(9 ヵ月)の 1 億 2300 万円を スタートに、毎年 7000 万円づつ増やし、10 年後の 1998 年には 8 億 7700 万円を達成した。一時間に「ひ と四人と犬一匹」しか通らなかった札の辻に賑わい が蘇った 当事者たちは、当初から、壊されそうになった建 物を救うということだけを目的とはしていなかっ た。その建物を活用して、地盤沈下の甚だしい中心 市街地活性化の核とすること、さらに、仕舞屋、空 き家が増加していた北国街道全体を、エリア開発し ていくことを考えていた。このようなエリア開発は、 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ ス 1号館:黒壁ガラス館 りの 2号館:ビストロ・ミュルノワール の を スの を た な ス ス ス ー 3号館:スタジオクロカベ スの 4号館:公衆便所 なし •ポケットパーク 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ の 99 0 00 1 000 1 00 000 00 0 1 3 00 01 0 03 0 0 0 0 0 33 1 3 0 1 10 0 1 1 1 3 1 0 1 00 1 1 3 3 0 0 0 0 13 1 0 0 10 30 300 1 0 1 3 3rd Week/Chap.3 スク の を へ「スク 」を 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ スキーム し を組み る ス 生 ス の りを ス をブ な都市 を し み い都市へ ス い な る の み ッ の な を い た な を し かし い 都市 ★ ス ロッ ー し 101 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 都市 1 を 生かし し [ ]の 10 3rd Week/Chap.3
の伝統があり、1987 年には、アートイベントの走 りとも言うべき、長浜芸術版楽市楽座(アートイン ナガハマ)を開始している。作品を中心市街地の店 舗のウインドウなどに飾って、通りをギャラリーに する「ギャラリーシティ楽座」も今では伝統になっ ている。 重要なことは、この3ポイントアプローチで町全 体の再生を展開していったことである。その後の活 躍、そして新たに登場した課題については、講座を 改めて詳しく取り上げるが、ここでは2つの取り組 みのさわりだけを紹介しておこう。 ひとつは歴史的な町家をいかした一棟貸しの宿泊 施設・町家ステイである。長浜では、改正中活法に よる新しい中心市街地活性化基本計画の認定を 2009 年 6 月に受けたが、認定後の最初のプロジェクトと して取り組まれた。 日帰りの観光地である長浜に宿泊機能を強化する 新しい試みである。同時にライフスタイルのブラン ド化の試みでもある。このように町中をまるごと宿 泊施設にする方法は、Albergo Defuzo(分散型ホテ ル)としてイタリアの歴史的都市で組織的に展開さ れ、日本でも篠山などで取り組まれている。ただ、 大通寺門前の表参道商店街を整備したとき、どうし ても空き店になる建物を、地元の商店街振興組合の ほかに、観光物産協会、観光協会、料理飲食(協) などが資金を出し合い、観光物産センター「お花館」 としてオープンさせた事例である(1987 年)。 この表参道整備は、それまでに検討して来た、道 を広げ高いビルに建て替えて再開発するという計画 を転換し、古くなったアーケードを各戸ごとの伝統 的な深い庇に変えて古い町並みを再現するという [デザイン]で実施された。 ガラスを言い当てた[ビジネス]にも前史がある。 まず、季節にあわせて調度を変えていく町家暮らし 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ ・ ス [スキーム]の ๏ ー 1 1 ๏ 1 0 1 1 00 ๏ 1 ク ーの 1 3000 000 ๏ ー 1 00 1 30 0 ๏ な はま 1 3 1 000 10 1 「い 」 ๏ CC C 1 0 0 ๏ ロ スク 1 1 00 1 の 00 ๏ ロ ー 1 00 3 000 その 1 10 1 00 ๏ 新 1 000 1 00 1 00 ๏ 1 は 法 10 ๏ まち り 1 1 1 103 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ ・ まち り の 10 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 10 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 地 再開発 基 1 0 を1 へ を を 10 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ み ー [ ス]の 10 3rd Week/Chap.3
日本の場合は、建築基準法や旅館業法が壁になるこ とから、制度や体制の整備が急がれている。 もうひとつは、街中のある街区の修復型再開発で ある。この街区には、1970 年代に建設された寄り 合百貨店の建物があり、周辺には駐車場が虫食い的 に広がる。一方点々と歴史的な町家や古い銀行建築 も残されている。これまで再開発制度では原則とし て敷地をいったん更地にする必要があった。2016 年の都市再開発法が、歴史的な建物を存置する仕組 みを設けたので、それを活用していく。新しい制度 は、日本の地方都市によく見られる市街地の再生の 切り札になるのではないかと期待される。 新たな取り組み❶ ス [ ス ス のブ ]の新しい試み er d 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 新たな取り組み❷ 傷んだブロックの修復 都市再開発法改正をいかした[スキーム]の新しい試み 10 eha a 3rd Week/Chap.3 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 「まちのへそ」からはじまる地方創生・基礎編❶ 新たな取り組み❷ 傷んだブロックの修復 都市再開発法改正をいかした[スキーム]の新しい試み 110 Redevelopment Area Parking Historic Town Houses Historic Buildings Another Buildings Museum Shopping Facilities built in 1970 Old Bank Anjo-ji Temple 3rd Week/Chap.3 ★