制振壁の柱脚部における脆性破壊防止に関する研究 [ PDF
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(2) において,引張側柱にパンチングシア破壊を生じた実験例が すでに報告されており,引張側柱のパンチングシア耐力式 が提案されている.しかし , この式はパンチングシア耐 力そのものではなく , パンチングシア破壊発生後 , コン クリートの劣化に伴い徐々に耐力が低下した後に達する 耐力の算定式であり , パンチングシア耐力そのものの耐 力式ではない.また , 圧縮側の柱脚についてはパンチン グシア破壊が生じた事例はまだ報告されていない.. 2)Mattock の崩壊包絡線 Mattock の崩壊包絡線 2)は,せん断スパン比a/D=0 の時 のτ 0 の値を表すものである.しかし,τ 0 を求める事は 必ずしも容易ではなく,そのまま設計に応用することは 適切でない.そこで,既に提案されている Mattock の近 似包絡線 1)3)を用いてτ 0 を求め,実験値と比較すること とした.以下に Mattock の近似包絡線を数式化したもの を示す.τ 0 はτ 01 とτ 02 のうち小さい方の値である.. 以上の背景から , 軸力・主筋量・コンクリート強度をパ. t01 =0.493s +0.254sc (kg / cm2 ). ラメータとした 21 体の試験体を作成し , パンチングシア. ì16b3 + 16b - 4 5(b 2 -1) ï ü ï 2a(b + 5(b 2 + 1) t02 = ï -1ï ´s + í ý 2 2 ï ï 5 + 4b 2 ï ï ï (3b - b + 2)(5 + 4b ) ï î þ. 破壊実験を行い,その結果を日本建築学会九州支部研究報 告集 4)に公表している.本論では , その結果を基に,TRC 造 短柱のパンチングシア耐力式を提案すること,既往の研究. s=. におけるTRC造短柱を有する制振壁柱脚のパンチングシア 耐力余裕度を算出することを , 主たる目的とした.. sc = 0.85 Fc (kg / cm2 ). 3 パンチングシア耐力式の提案 TRC 造柱のパンチングシア破壊は ,RC造柱のパンチング シア破壊と類似した挙動を示すと思われることから,既存の RC 造パンチングシア耐力式を参考に,TRC造短柱のパンチン グシア耐力式を提案することとした.以下に耐震改修設 計指針 1) によるパンチングシア耐力の算定式を示す.. P. N P + S sY ´ S A A. a = 0.2493sc (kg / cm2 ) 耐震改修設計指針. Q/Qcal. 2 μ+σ. 1.5. μ-σ. 1. C40-16D10 C40-8D6 C21-16D10 C21-8D6 T40-16D10 T40-8D6 AVERAGE. 0.5. 0.58 0.76+. a st st 4 a Mattockの近似崩壊包絡線. b = tan a =. 2. QC =K av ´t0 ´ be ´ D K av =. st = 1.6 Fc (kg / cm 2 ). a D. 0. 1.5. 1. C40-16D10 C40-8D6 C21-16D10 C21-8D6 T40-16D10 T40-8D6 AVERAGE. 0.5. -0.6σ -0.2σ -0.4σ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8. 0. -0.6σ -0.2σ -0.4σ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8. 図 4 反曲点高さ一定として算出した Q/Qcal 1 2. 文献 4)における実験では,0.01rad 程度の回転角が生 Q/Qcal. じた時点で曲げ変形を拘束し , 試験体の変形に応じて反 曲点高さ a が変化する試験装置を用いている.上記の算 定式では,せん断スパン比(a/D)が考慮されていること, 実際の設計において必ずしも反曲点高さを特定すること. 2 μ+σ. 1.5. 1. 0.5. が容易ではないこと等から,算定式により,反曲点高さ 0. a を考慮する必要性について検討する.また , 柱は鋼管. 1. C40-16D10 C40-8D6 C21-16D10 C21-8D6 T40-16D10 T40-8D6 AVERAGE. 0.5. 0. -0.6σ -0.2σ -0.4σ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8. 図 5 反曲点高さを考慮した Q/Qcal2 表 1 標準偏差と平均値. 果によるコンクリートの圧縮強度上昇が期待できる.し. 耐震改修設計指針 標準偏差 平均値 Q/Qcal1 0.243 1.39 Q/Qcal2 0.178 1.47. かし , コンファインド効果がパンチングシア耐力に影響 を及ぼすかどうかは定かではないことから , その影響に ついては今後の検討課題とする.τ 0(せん断強度)の算 出方法としては,以下の 2 つについて比較する.. t0 =0.98+0.1FC1 +0.85s (0 £ s < 0.33FC1 -2.75). C40-16D10 C40-8D6 C21-16D10 C21-8D6 T40-16D10 T40-8D6 AVERAGE. -0.6σ -0.2σ -0.4σ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8. によって横補強されていることから,コンファインド効. 1)耐震改修設計指針式 以下に耐震改修設計指針によるτ 0 の算定式 1)を示す.. 1.5. μ-σ. Mattockの近似包絡線 標準偏差 平均値 0.245 1.39 0.187 1.48. 以上により算出した Q/Qcal と実験結果の標準偏差σ を図 4(反曲点高さ一定) ・図 5(実験時反曲点高さを考 慮)に,標準偏差と平均値をまとめたものを表 1 に示す. 図の左側は耐震改修設計指針式によるパンチングシア耐. =0.22FC1 +0.49s (0.33FC1 -2.75 £ s £ 0.66FC1 ). 力で,右側が Mattock の近似崩壊包絡線によるτ 0 を用. =0.66FC1 (0.66FC1 <s ). ら柱に取付く試験装置の下端までの距離は,既往の研究. いて算出したパンチングシア耐力である.基礎梁上面か における制振壁壁版端面と基礎梁の間に設けられたクリ. s =Pg ×s y +s0. アランスを参考に30mmで設計されている.そこで,Qcal1. Fc1,Pg,σy,σ0 は順にコンクリート強度σB,柱断面積に対す. では反曲点高さを 30mm とし,パンチングシア耐力を算. る全主筋断面積ag の比,柱主筋の降伏強度,N/(be×D)である.. 出した.. 44-2.
(3) 表 1 制振壁試験体と諸条件. とは設計上重要であると考えられる.また,耐震改修設. 存のRC造パンチングシア耐力算定式を用いて1.5倍程度. Clearance10mm 350 35. 4 既往の研究におけるパンチングシア余裕度. Hoop 4Φ@50. □-175×175×6 2-D22. H-100*50*5*7. 625. 1375. 150. 600. 600. 150. 2750. 1375. 2-D22 625. WRC-1 試験体 Outside View. Reinfocing Detail. 1014. H-244*175*7*11. 200. H-100*50*5*7. 2872 966. PL-6. H-150*75*5*7. 892. □-175*175*6 40. 4-1 試験体詳細 まず , 対象となる , 既に報告されている 8 体の TRC 造 短柱を有する制振壁試験体のパンチングシア耐力に寄与 する柱脚部周辺部について説明する.その他の詳細は文 献 5)6)7)を参照されたい.これらの試験体は , 文献 8)の解析的研究におけるプロトタイプ建物を参考に設 計されたものである.表 2 に , 試験体と諸条件をまとめ たものを示す.表中の a,s.gQu,Pmax,N はそれぞれ反曲点高 さ(基礎梁から壁板下面までのクリアランス), 繋梁の せん断耐力 , 実験時最大水平力 , 実験中一定に保持した 載荷軸力 , である.参考として , 図 6 に WRC-1 試験体と 3WRC-1 試験体を示す. WRC 試験体シリーズ)WRC 試験体シリーズは , 制振壁の 1 層部分のみを想定して設計されている 1 層 1 スパン試験 体である.実験変数は ,TRC 柱脚部の配筋詳細 , 繋梁の RC 壁板への埋め込み部分詳細 , 壁板厚である.コンク リートの設計強度は 35N/mm 2 である.周辺柱(175mm × 175mm)は , 脚部のみを□ 175 × 175 × 6 の鋼管で横補強 した TRC 柱としている.柱の主筋は , 全試験体において 8-D10(pg=0.019)である.また , 鋼管内部には厚さ 6mm の鉛直スチフナを設けており,横補強用鋼管と基礎梁の 間には , 鋼管が軸方向応力を負担しないように 10mm の クリアランスを設けている.全試験体の繋梁の寸法は H-150 × 75 × 5 × 7 で ,WRC-1 試験体 ,WRC-2 試験体,WRC3 試験体についてはウェブとフランジをそれぞれ 6mm と 9 m m の厚さの鋼板を溶接して補強している.しかし ,WRC-4試験体は,繋梁のフランジは補強しているがウェ ブは補強していないため,せん断耐力が約半分となって いる.WRC-1 試験体と WRC-3 試験体は柱脚部に , パンチ ングシアに対する補強筋として 13 φの磨き丸鋼を 6 本 配筋しているが ,WRC-2 試験体と WRC-4 試験体について はこれを省略している.磨き丸鋼を用いた理由は , せん 断力のみを負担し,引張力は負担しないようにするため である.基礎梁と壁板下端面の間のクリアランスは全試 験体で 35mm としている.. Concrete Wall. 235. の安全率で評価できる.. 965. じた鋼管横補強 RC 造短柱のパンチングシア耐力は,既. 1610. 結果となっている.よって,0.01rad. 程度の回転角が生. Reinforcing Detail PL t=9. 30. 260. パンチングシア耐力の両者を比べると,ほとんど同様の. Outside View. 70 70. H-150*75*(11+6)*7. 計指針と Mattock の近似崩壊包絡線によって算出された. 350. 3WRC-2. はばらつきが小さくなってお 3WRC-3 り,反曲点高さを考慮するこ 3WRC-4. 280. WRC-3. 偏差はおおきく改善されてい WRC-4 ることが分かる.Q/Qcal2 で 3WRC-1. 40. ると,平均値に大きな差は見 WRC-1 られないが,Q/Qcal2 の標準 WRC-2. 2 STKR)sσy(steel bar) a(mm) Reinfocement s.gQu(kN) Pmax(kN) N(kN) cσB(N/mm ) s σy( 39 401 344 35 8-D10 310 588 529 38 401 344 35 8-D10 310 562 529 42 401 344 35 8-D10 310 608 529 42 401 344 35 8-D10 141 366 529 41 328 335 40 12-D13 503 462 980 35 408 380 40 12-D13 421 374 980 45 285 403 40 8-D13 613 442 980 39 285 403 40 12-D13 510 469 980. H-100*50*5*7. Q/Qcal1 とQ/Qcal2 を比較す. H-250*250*9*14 400. 650. 150. 650 150. 400. 3WRC-1 試験体 図 6 制振壁試験体 3WRC 試験体シリーズ)3WRC 試験体シリーズは , 制振壁 の最下層 , 最上層 , 中間層を想定して設計されている 3 層 1 スパンの試験体である.実験変数は , 繋梁サイ ズ , 繋梁の RC 壁板への埋め込み定着部詳細 , 繋梁位 置等である.周辺柱(175mm × 175mm)は ,WRC 試験体 シリーズと同様に脚部のみを□ 175 × 175 × 6 の鋼管 で横補強した TRC 柱としている.柱の主筋は ,3WRC1 試験体 , 3 W R C - 2 試験体 , 3 W R C - 4 試験体では 1 2 D13,3WRC-3 試験体では 8-D13 としている.また , 鋼 管内部には厚さ 6mm の鉛直スチフナを設けており , 横 補強用鋼管と基礎梁の間には , 1 0 m m のクリアランス を設けている.3WRC 試験体シリーズの繋梁は全試験 体に 2 つ配置されている.表 4 の繋梁せん断耐力は ,2 つの繋梁のせん断耐力の合計を表している.基礎梁 と壁板下端面の間のクリアランスは全試験体で 40mm としている.. 44-3.
(4) 4-2 パンチングシア耐力余裕度 次に , 既往の実験で用いられた制振壁試験体のパンチ ングシア耐力余裕度を算出する.制振壁に取付く柱に生 じる軸力は , 繋梁に生じるせん断力によって変動し , 最 大耐力時の柱に作用する軸力は以下の式により表される. NC =. N + s. g Qu 2. Nt =. N - s.g Qu 2. 表 3 既往の制振壁柱脚の最大軸力と最大せん断力 WRC-1 WRC-2 WRC-3 WRC-4 3WRC-1 3WRC-2 3WRC-3 3WRC-4. 実際に , 実験時の負担せん断力の割合を求めるのは困難 であるが,3WRC 試験体シリーズについては , 測定された 試験体の 1 層部の左右壁板における実験時のせん断変形 角の比により , せん断力が各柱に分配されていると仮定 し , 柱に生じた最大のせん断力を算出した.WRC 試験体. Nt(kN) -46 -46 -46 124 -13 69 -123 -20. cQ exp. 294 281 304 183 316 344 299 375. t Q exp 294 281 304 183 181 130 200 219. 表 4 制振壁試験体のパンチングシア余裕度. ここで ,Nc は圧縮側柱軸力 ,Nt は引張側柱軸力である.次 に , 柱一本当たりに生じるせん断力について説明する.. Nc(kN) 575 575 575 405 993 911 1103 1000. WRC-1 WRC-2 WRC-3 WRC-4 3WRC-1 3WRC-2 3WRC-3 3WRC-4. cQ cal 604 584 637 472 614 513 662 573. t Q cal 226 223 231 351 411 513 328 437. Qexp/ cQcal Qexp/t Qcal 0.49 1.30 0.48 1.26 0.48 1.31 0.39 0.52 0.51 0.44 0.67 0.25 0.45 0.61 0.65 0.50. 5 結論 本研究では,崎野らによって提案されている制振壁の も圧縮側柱脚のほうがせん断力を大きく負担することが TRC 造柱脚パンチングシア破壊について行った実験結果 知られているが , まずせん断力を半分ずつ受け持つと仮 を基に,考察を行った結果以下の結論を得た. 定して実験時負担せん断力を算出している.表 3 に柱 1 1)鋼管横補強 RC 造短柱のパンチングシア耐力は,既存の 本当たりに生じる最大耐力時の軸力と最大せん断力を示 RC造短柱のパンチングシア耐力算定式1)2)3)を用いた場合, す.cQexp は圧縮側柱最大せん断力 , t Qexp は引張側柱最大 1.5 倍程度の安全率で評価できる. せん断力である. 2)既往の研究における制振壁柱脚のパンチングシア破壊 以上から,既往の研究の TRC 造短柱を有する制振壁 8 余裕度を算出した結果 , 実際の柱脚の破壊状況と精度良 体の実験値と計算値を比較することにより,パンチング く対応した結果を得られた. シア耐力余裕度を算出する.算定式は耐震改修設計指針 3)文献 4)による実験では , 単調載荷によるパンチングシ のパンチングシア耐力式に耐力上昇率(安全率)1.47 を ア破壊挙動についての研究を行ったが,より実際の地震 乗じたものとした.表 4 にパンチングシア耐力算定結果 時挙動に近い,繰返し載荷による影響を考慮したパンチ を示す.cQcal,tQcal はそれぞれ,圧縮側柱計算パンチング ングシア破壊挙動についての研究を行うことは今後の検 シア耐力,引張側柱計算パンチングシア耐力である. 討課題である. WRC-1 試験体と WRC-3 試験体は柱脚部にパンチングシア 4)鋼管によるコンファインド効果がパンチングシア耐力 に対する補強筋として13φの磨き丸鋼を6本配筋してい に及ぼす影響については , 今後の研究課題である. るが , 計算値はこれを考慮していない.また ,WRC-1 試験 参考文献 体と WRC-2 試験体の引張側柱脚は実際にパンチングシア 1)日本建築防災協会:2001年改訂版 既存コンクリート造建築物の 破壊が生じている.試験体の配筋や材料性質等について 耐震改修設計指針同解説,pp.102,pp.360,2001.10 は文献 5)6)7)を参考されたい.表から WRC-2 試験体に 2)Mattock A.H.et al.:Shear Transfer in Reinforced Concrete,ACI おける引張側柱の実験値が計算耐力を上回る結果となっ Journal,Vol.66,Feb.1969. 3)山本泰稔:シアスパンの短いRC部材の終局強度推定法,日本建築 ている.これは,実際にパンチングシア破壊が引張側柱 学会大会号,1980 年 9 月 に生じた結果と一致している.また,WRC-1試験体とWRC4) 崎野健治, 中原浩之,Nasruddin,松林寛樹:An Experimental Study 3 試験体についても実験値が計算耐力を上回る結果と on Punching Shear Strength of Edge Columns of Energy Dissipaなっているが , 算出値はこれらの試験体に配筋されてい tion Structural Walls,日本建築学会研究報告九州支部,2010.3., るパンチングシアに対する補強筋としての丸鋼を考慮し 投稿中 ていないこと , 各柱が水平力を半分ずつ受け持つと仮定 5)崎野健治,中原浩之:RC造短柱を有する3層転倒降伏型制振壁の 弾塑性性状に関する実験的研究,日本建築学会講演系論文集 して実験時負担せん断力を算出していること , から実際 NO.634,PP.2159 2008年12月 にはパンチングシア余裕度がさらに安全側にシフトする 6)崎野健治,中原浩之,福原健介,真木貴士,山本能之:各種周辺 と考えられる.しかし , 実際に WRC-1 試験体がパンチン 柱を有する3層転倒降伏型制振壁の弾塑性挙動その1-その3, 日本建 グシア破壊を生じた結果を考慮すると , 同程度の余裕度 築学会学術講演梗概集,C-1,構造Ⅲ,PP.1249-1254,8.2009 を持つ WRC-3 試験体はパンチングシア破壊を生じる可能 7)尾崎研二,崎野健治,日高桃子,田口雅浩:鉄筋コンクリート造 性が極めて高かったと考えられる.3WRC試験体シリーズ 周辺柱を有する制壁壁に関する実験的研究,日本建築学会研究報告九 州支部 第 45 号,pp.657-660,2006.3. は計算耐力が実験値を十分に上回っており,実験時にパ 8)日高桃子, 二木秀也 , 崎野健治:制振壁フレームの必要変形能力 ンチングシア破壊が生じていないという結果にも対応し と設計用応力に関する解析的研究 , 日本建築学会構造系論文集 ている. ,No613,pp81-87,2007.3 44-4 シリーズについては , 一般的な耐震壁は引張側柱脚より.
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