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地方自治体の木造公共建築の施策展開に関する研究 [ PDF

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地方自治体の木造公共建築の施策展開に関する研究

井上 泰斗 1.1 背景・目的  我が国の国土の約 65%を占める森林には、土砂流出 防止、水源の涵養機能、特に、近年では大気中の二酸 化炭素吸収源として多くの期待が寄せられている。一 方で我が国の林業の衰退は著しく、森林の 45%を占め る人工林の持続的な維持・保全が困難となり、森林の 機能が十分に発揮できない状況にある。  さらに、戦後に植林された人工林の多くが高齢級の 段階を迎えるが、木材需要は低迷している。木材需要 の大きな割合を建築分野が占めるが、公共建築物の木 造率は低く、公共建築物の木造化は木材需要の拡大に 資するものとして喫緊の課題となっている。今後は、 特に、地域産業の経済復興を担う地域産木材による建 築物の木造化の取り組みが重要であり、さらに林産物 である木材は地域ごとに素材生産量や品質などにばら つきがあるため、地方自治体は地域の実情に即した独 自の施策展開が求められる。  本研究では、今後も進むと予想される建築物の木造 化推進の動きに対し、地方自治体で行われている木造 振興に関する施策展開の実態とその課題を明らかにす ることで、建築物の木造化推進に向けた指針の整備に 資する知見を得ることを目的としている。 1.2 研究方法  2 章では戦後以降の木造建築物に関する施策展開を 整理し、3 章では公共建築物に関する木造化の国の施 策に関して整理を行う。4 章では都道府県での木造化 の施策の整理、分析を行う。5 章では九州の 5 つの市 に関して木造公共建築の実態に関して整理・分析する。 2 章は資料調査、3、4 章は主にそれぞれ国、都道府県 のホームページから資料を調達し、分析する。5 章で はヒアリング調査によって、各自治体の取組を分析す る。 2 木造建築に関する戦後以降の施策展開 2.1 戦後復興期の建築物の不燃化  木造建築物は関東大震災や台風、戦災などで多大な 被害を受けたため、また、森林資源の保護のため、日 本では戦後に急速に建築物の不燃化を推進する施策が 策定され、急速に不燃化が進んだ。 2.2 木造建築物の促進への転換  オイルショック以降、木材需要が下がり始め木材 価格は 1980 年頃から下降し始め、それまでの木材増 産施策から木材振興施策に大きく転換した。そして、 1985 年頃から木材需要の拡大を進めるために木造建築 物を推進する施策が展開され始め、それまでの「不燃 化推進」から「木造推進」に大きく施策が転換された。 2.3 木造住宅の施策  木造住宅の施策が体系化されたのは 1976 年が初め てであり、それ以降、技術や住宅生産の合理化、地域 化が進められた。 2.4 環境対策としての木造建築物の推進  1970 年代から地球環境問題が顕在化し、本格的に地 球環境問題が大きく扱われるようになったのは 1992 年の「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」 の開催以降である。森林は地球温暖化の原因である二 酸化炭素の吸収源として認められたので、我が国では 林業の振興が重要課題となった。また、木造建築は他 の構造形式に比べてエネルギー集約度が小さいため、 建築物の木造化が促進されるようになる。 図 1 戦後以降の木造建築の施策展開 木造住宅 木造公共建築 木造建築 外材輸入の 促進 戦災・災害による木造建築物の被害 木材需要の拡大へ 林業の衰退 木材需要の増加、価格の上昇 1992 地球サミット 木造住宅在来工法 合理化促進事業 在来工法の技術的な合理化に 関しての調査、研究、開発。 1977 木造住宅振興 モデル事業 地域に合わせた木造住宅の 生産・供給体制の整備。 1980 地域木造住宅 供給促進事業 木造住宅の関係の事業を まとめて、総合的に行う。 国産材を使用した木造住宅の 普及が図られるようにする。 1989 戦災による住宅不足 住戸数が世帯数を上回る 木材利用合理化方針 木材消費量を減らすために 非木造で建てることを推進 1951 日本建築学会が建築防災のために 木造禁止を含む決議を行った。 防火、耐風水害の ための木造禁止 1959 建築基準法改正 木造建築に関する規制の 緩和が初めて行われた。 1987 建築基準法改正 木造の耐火建築物が可能になる。 2000 森林・林業木材産業 活力回復 5 カ年計画 主な方針に「モデル木造施設 建設事業」など建築分野での 木材需要の拡大を図る。 1985 地球温暖化 対策推進大綱 森林吸収源対策の一つとして 建築物における木材利用が 推進されている。 2002 貿易摩擦 MOSS 協議 低層の公共建築物の木造化を図る 官庁営繕法 庁舎が一定の規模を超える 場合は耐火建築物に しなければならない。 1951 学校施設における 木材利用の 促進について 文部省が各都道府県の知事に通知 1985 補助単価の 引き上げ 文部省と厚労省がそれぞれ 学校施設と社会福祉・ 医療施設の木造建築の 補助を RC と同等とした。 1985,86 公共建築物等 木材利用促進法 2010 木材需要の低迷 景気後退 森林林業再生プラン 木材自給率 50%を目標とする。 不燃化推進 木造推進 地球環境対策 林業振興 2008 長期優良住宅 普及促進法

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41-2 2.5 小結  戦後以降の木造建築に関する施策展開を図 1 にまと めた。戦後以降、建築物の不燃化が進められてきたが、 1985 年頃を契機に「不燃化推進」から「木造推進」へ の施策の転換が行われ、木造建築物の振興の施策が講 じられるようになった。次いで、地球環境問題が深刻 化した 90 年代から木材利用の拡大や環境負荷の低減 を目的として建築物の木造化を促す施策展開が行われ ている。 3 公共建築物に関する国の施策展開 3.1 各省庁における木造化の推進  各省庁の公共建築物の木造化の施策を表 1 にまとめ た。これまで各省庁は公共建築物の木造化を進めるた めに各々で施策を講じてきた。しかし、公共建築物の 木造率は未だ 7.5%1)と低い状態である。 3.2 政権交代以降の施策展開  2009 年の 9 月に政権が交代し、同年 12 月 25 日に農 林水産省が発表した「森林・林業再生プラン」では 10 年後の木材自給率の目標を 50%以上としている。翌年 には「公共建築物等における木材の利用の促進に関す る法律」(以下、促進法)が施行され、公共建築物の 木造化を義務化とまではしなかったが、低層の公共建 築物を原則として木造化することを推進している。ま た、「公共建築物における木材の利用の促進に関する 基本方針」を受けて、都道府県には都道府県の方針の 策定、さらにそれを受けて各市町村には市町村の方針 の策定を定めることが求められている。 3.3 小結  近年において各省庁で木造公共建築物の建築時の補 助、技術の向上の支援、情報提供等の木造化を推進し ているが、公共建築物の実際の木造化は進んでこな かった。しかしながら、促進法は低層の公共建築物の 原則として木造化を推進する方針を定めて、同様のこ とを地方自治体にも求めており、公共建築物の木造化 が進むことが期待される。 4 都道府県の木造公共建築の振興の施策 4.1 促進法の施行以前の施策  各都道府県において法律が施行される以前に作成さ れた公共建築物の木造化に関する方針等をリストアッ プし、木造化の取組みに関して具体的な記述があるも のを取り出した(表 2)。  表中の「基準」は木造で建てるかどうかの判断の指 標となるものである。木造化を行う建築物を面積と階 数を基準に定めており、a とdの基準は木造化が可能 な全ての公共建築物の木造化を図る基準となってお 表 1 各省庁における木造公共建築推進のための近年の施策 表 2 促進法の施行以前の各県の方針等 り、a は用途ごとにそれぞれ規模を定め、d は 2 階以下、 延べ面積が 3000 ㎡未満の建築物を木造化する基準で ある。a、d のように木造で建築可能な最大の規模を 基準としている県が多い。  「目標値」に関しては木造公共建築物に使用される 木材材積や使用される木材に対する県産木材の割合な ど使用木材の量を目標値に設定している県が多い。目 標値を設定している県で使用木材の量が関係してい ないのは宮城県のみである。また、方針の文中には道 県産材の積極的な活用を明記していることからも、地 域の林業の振興が方針の一つの主題であることがわか る。  「都道府県産木材の定義」は生産を中心として製材 加工を定義内に入れるものと入れないものがある。加 えて、認証材であることや産地証明を要する場合もあ る。都道府県産木材を定義する記述がない道県もある が、道県産木材を活用することが全ての道県の方針の 中で明記されている。 国土交通省 文部科学省 「学校施設における木材利用の促進について」の通知 (S60、H8、10) 木造学校の事例集・手引き集等の作成 (H10、11、16、19、22) 厚生労働省 社会福祉施設の事例集の作成 (H9) 医療施設のパンフレットの作成 (H15) 林野庁 森林・林業・木材産業づくり交付金 (H20 ∼) 森林整備加速化・林業再生事業 (H21 ∼) 地域産木材を使用した モデル的・先駆的な 木造公共施設の整備に対して補助 「公共建築における木材活用推進資料集」の作成 木造建築工事標準仕様書の監修 (H16) 木のまち整備促進事業 (H22 ∼)木造建築物の技術の進展及び普及啓発を図るために、先導的な技術を導入する大規模木造建築物の建築及び 内装木質化に対して補助 県のホームページで公開されている資料又は提供された資料より作成 北海道 公共建築物の木造化・木質化の推進方針 県産材利用推進計画 県産材利用推進方針 岩手県 岩手県公共施設・公共工事木材利用推進行動計画 宮城県 みやぎ材利用拡大行動計画 山形県 県産木材利用拡大山形県率先行動計画 県有施設の木造化、木質化の推進に関する指針 茨城県 県有公共建築物の木造化・木質化に関する指針 公共施設の木造・木質化指針 県有施設等における木材利用推進行動計画 埼玉県 県有施設の木造化・木質化等に関する指針 新潟県 公共施設等における県産材利用推進方針 長野県公共施設整備・公共土木工事等における県産材利用方針 長野県県産材利用指針 岐阜県 公共施設等における県産材利用推進方針 静岡県 しずおか木使い推進プラン 愛知県 あいち木づかいプラン 滋賀県 滋賀県産木材利用指針 公共施設木材利用推進方針 島根県 公共部門における木材利用行動計画 岡山県 県産材利用推進指針 愛媛県 公共施設等木材利用推進方針 高知県産材利用推進方針 県産材利用推進に向けた行動計画 佐賀県 佐賀県公共施設・公共工事県産木材利用推進の基本方針 大分県 大分県公共施設における県産材利用拡大 基本方針 鹿児島県 公共施設等木材利用推進方針 高知県 長野県 兵庫県 秋田県 福島県 栃木県 c e a a a a b a c d d d d c d d V V V , N N VL/SW VL VL/V VL/V VL/V , VL/SW ΣSW/ΣS VL/V 生産・加工 生産・加工 生産・加工 生産 生産・産地証明 生産・認証 生産・加工 生産・加工 生産 生産・加工・認証 生産・加工 生産又は加工 生産・加工(県産材) 加工(地域材) 基準 目標値 都道府県産木材の定義 木造公共建築に関する方針・計画等 基準:木造化を図るかどうかの具体的な判断基準を挙げて定めているものである。 a:用途ごとに階数と面積で定められている。面積はその用途の   面積で木造建築が可能な最大限の範囲で定められている。 b:用途ごとに階数と面積で定められている。面積は木造建築が  可能な規模からは緩く設定されている。 c:用途ごとに階数と面積で定められている。   用途が特定の施設に絞られている。 d:階数が 2 階、延べ面積 3000 ㎡以下の場合、木造でつくる。  それ以下の規模で木造が困難な建築物はその限りではない。 目標値:それぞれの施策の中で数値として定められているものである。 VL/SW:1 ㎡当たりの建築物で使用された木材材積 VL/V:建築物に使用される木材材積に対する地域産木材積の割合。 ΣSW/ΣS:木造率。対象とする全ての建築物の延べ面積の和に対する木造建築物の延べ面積の和の割合。 V:木材材積 ( ㎥ ) VL:地域産木材材積 ( ㎥ ) S:延べ面積 ( ㎡ ) SW:木造建築物の延べ面積 ( ㎡ ) N:建築物棟数

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41-3 0 ∼ 200 200 ∼ 400 400 ∼ 600 600 ∼ 800 800 ∼ 1000 1000 ∼ 延べ面積の合計 ( ㎡ ) (棟数) ※円の大きさは  延べ面積の  合計を現わす O 市 Y 市 H 市 F 市 822 (10) U 市 587.4 (1) 391.7 (1) 221.8 (1) 164.8 (1) 1558.7 (27) 681.1(2) (2)967 (1)810 972.1 (15) 589.9(2) (1)449.0 延べ面積 ( ㎡ )  また、木造化に対して一部の県を除き多くの道県が 「推進」等の表現をしている。市町村に対しては情報 提供や県産木材の利用の要請等が記述されており、具 体的な記述はされていない。 4.2 促進法の施行以降の施策  促進法に対する国の基本方針受けて既に複数の県が 方針を策定している ( 表 3)。公共建築物の木造化に関 する記述に関しては促進法の施行以前の施策と大きな 違いはないが、耐火建築物の対象とならない低層の公 共建築物は国の方針に即して全ての県の方針の中で原 則として木造とすることが明記されている。 4.3 県単独での補助事業  いくつかの県では国の事業とは別に単独で補助事業 を行っている ( 表 4)。補助の対象となる施設は国の補 助事業の対象となるものと大きな違いはなく、木材の 特性の効果の高い建築物や県民に木材利用の普及啓発 の効果のある建築物である。また、補助の対象は木工 事費や木材費等の木材関係のみの補助が多い。 4.4 小結  県レベルでは木材利用のみ主眼が置かれ、建築技術 の向上や職人の育成、竣工後の維持管理といった公共 建築物の木造化を実現する具体的な施策が策定されて いない。しかし、県産木材の利活用を促すには、林業 の振興だけでなく、建築を含めた総合的な方針を策定 する必要がある。また、促進法の基本方針を受けて策 定された 6 県の方針は、低層公共建築物の木造化を「原 則」としていることから、低層公共建築物に限っては 木造化が進むと考えられる。 5 九州の市町村での木造公共建築の実態  今回調査した市の概要を表 5 に載せる。林業が盛ん な自治体である H 市、U 市、Y 市と都市部の自治体で ある O 市、F 市の木造公共建築の実態の調査を行った。 5.1 木造公共建築の施策と実態  調査した 5 市の中で唯一 Y 市だけが施策を策定して いる。この施策は木造化を推進する施策ではなく、公 共建築物の木造化・木質化で地域産木材を活用するた めの施策である。木造公共建築物が多い H 市は明文化 した施策はなく、トップの方針で木造化に取り組んで いる。  林業の盛んな 3 市は木造化に積極的に取り組んでい る又はこれから取り組むという回答を得たが、都市圏 の 2 市は積極的に取り組んでいないという回答を得た。  F 市の木造建築物の多くは平成 19 年度まで高齢者福 祉施設であるが、現在は公民館に併設されているため に RC 造で建設されている。 表 3 促進法の施行以降の各県の方針等 表 4 県単独での補助事業 5.2 延べ面積と木材材積  それぞれの市での木造公共建築物の延べ面積を 200 ㎡単位で区切り、それぞれの規模ごとの延べ面積の和 と棟数を比較した ( 図 2)。H 市では 200 ㎡以下の建築 物が 27 棟と多いが、延べ面積の和は 400 ㎡以上であ る 3 棟に及ばない。図 3 は秋田県と鹿児島県の資料か ら延べ面積と材積に関する関係を示したものである。 ここから、延べ面積と材積は概ね比例の関係にあるこ とから、規模の小さい建築物を多く建設するより、規 表 5 調査対象の市の概要 表 6 木造公共建築の取組 図 2 規模別の延べ面積の和 長野県 長野県内の公共建築物・公共土木工事等における県産材利用方針 三重県 みえ公共建築物等木材利用方針 しまね県産木材の利用促進に関する基本方針 島根県 広島県 広島県公共建築物等木材利用促進方針 徳島県 とくしま木材利用指針 宮崎県 県産材利用推進に関する基本方針 a d d V ΣSW/ΣS、VL/V VL/V , ΣSW/ΣS 生産・加工 生産 生産・加工 基準 目標値 県産木材の定義 木造公共建築に関する方針・計画等 県のホームページで公開されている資料より作成 県のホームページで公開されている資料又は提供された資料より作成 茨城県 いばらき木づかい環境整備事業 元気な森づくり推進市町村交付金 越後のふるさと木づかい事業 県産材需要拡大施設等整備事業 紀州材需要創出事業 公共施設木材利用推進事業 かごしま木づかいモデル施設の整備 栃木県 新潟県 岐阜県 和歌山県 愛媛県 鹿児島県 特定公共建築物 特定公共建築物 特定公共建築物 公共建築物 公共建築物 公共建築物 モデル的公共建築物 木材費 補助 補助率 補助率 補助率 補助率 補助率+ 単位面積に対して定額 県産木材費 木工事費 木工事費 木工事費 木工事費 ― 事業名 対象建築物 補助の対象 工事費 木工事費:木造化に対して必要な経費。県産木材だけの場合も含む。 木材費:木材の材料費。県産木材のみの場合を含む。 特定公共建築物:特定の用途の公共建築物のみに絞られたもの。具体的には、学校施設、児童・老人福祉施設、医療施設等がある。 モデル的公共建築物:県民に対して木造建築物の普及啓発となる公共建築物やシンボルとなるような公共建築物。 工事費:ここでは木工事費以外の経費も対象となるものとし、工事費全額ではない。 総面積 ha 防火地域 ha 準防火地域 ha 林野面積 ha 国有林 ha 市町村有林 ha 私有林 ha 天然林 百㎥ F 市 34060 165 2494 11226 2719 2082 6452 4877 U 市 11755 ― ― 5896 ― 552 5344 580 O 市 50113 7.4 791.4 25583 696 2419 22336 16140 H 市 66619 ― 180 55481 2341 2962 49013 12570 Y 市 29967 ― 3 15476 1978 1298 12066 5296 人工林 百㎥ 190040 16831 38039 33524 14961 農林水産省「2005 年農林業センサス」及び国土交通省「都市計画現況調査」より作成 O 市 Y 市 H 市 F 市 U 市 棟数 施策 地域産木材の定義 木造化への取り組み 18 10 3 32 △ △ × × 〇 加工 生産 生産 ― ― 木造化に取り組んでいるが、 地域産木材の活用はできていない。 取り組んでいない。 取り組んでいない。 施策を策定し、地域産木材の活用に今後取り組む。 積極的に木造公共建築物に取り組んでいる。 ヒアリング調査及び提供資料より作成 2 〇:施策を明文化して定めている △:明文化をせずに市長の方針で木造化に取り組んでいる。 ×:施策なし 棟数は平成 13 年度から平成 22 年度の過去 10 年間で竣工した木造公共建築物である。ただし、U 市 及び Y 市は平成 17 年に合併したため、それ以降の棟数となっている。 各市から提供のあった 2001 ~ 2010 年に竣工した木造公共建築物の資料より作成 ただし、U 市と Y 市はそれぞれ 2005 年に合併したため、それ以降のデータとなる

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41-4 延べ面積(㎡) 0 100 200 300 400 500 600 700 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 木材材積 (㎥) 実施設計 基本設計 保管 伐採 葉枯らし 設計者 施工者 Y 市 製材組合 森林組合 企画・検討 資材リスト作成 製材リスト 作成 原木リスト 作成 製材・乾燥 建設 入札 発注 売買 供給 委託 引渡 運用 模の大きい建築物を建設する方が地域産木材を多く使 用できる判断がみられる。また、規模が大きい公共建 築物は市民に対しての普及啓発が期待でき、さらに、 木造建築の技術の向上にも寄与することが可能であ る。 5.3 Y 市の木材調達  木造公共建築での問題点の一つは短期間で大量の木 材調達をしなければならないことである。特に、地域 産木材を活用する際に木材のストックがない場合、施 工者が木材の発注後に伐採、製材、乾燥を行うために 工期が長期化する問題が発生する。  Y 市では施策の項目に「Y 市産木材の確保に関する 方針」を定め、それに従って木材調達を行っている。 そのフローを図 4 に示す。なお、施策の策定の際に Y 市の製材業者 10 社で製材組合を組織させている。  具体的には設計の途中段階で Y 市は設計資料から資 材リストを作成し、それを元に製材組合が製材リスト を作成し、さらに森林組合が原木リストを作成する。 次いで、森林組合の責任のもとで立木の伐採を行い、 葉枯らしをして乾燥させ、その後、森林組合が原木を 保管する。このように設計と同時進行で原木調達が行 われ、その後、入札等により施工者を決めて Y 市が工 事の発注を行い、施工者は木材の発注を行う。特記仕 様書には Y 市の「市産木材」の使用を明記している。 5.4 木造公共建築整備の問題点  O 市及び F 市では現在は木造公共建築に取り組まれ ていない。両市ともに建築基準法、特に F 市は防火地 域等の範囲が広く、耐火建築物の法規制が大きく影響 している。また、林業・木材業が盛んでないことから 木造で建設したとしても木材の調達が地域内で行われ ず、林業の盛んな他の地域の木材を使用することにな り、地域内に経済効果が期待できないのでコストを優 先する方針になっている。O 市では林務課と建築課の 行政的な課を超えた連携体制が整っておらず、地域材 活用の仕組みがつくられていない。  木造公共建築が盛んな H 市では職人の不足の問題、 U 市では木造公共建築物の木材の維持管理の問題など が発生している。 5.5 小結  市町村レベルでは地域によって木造公共建築に対す る姿勢に大きな差があるのが現状である。公共建築物 の木造化に意欲的な林業の盛んな地域に限られてお り、林業が盛んな地域、林業が盛んではない地域それ ぞれに地域の実情に合わせた施策が求められる。特に、 O 市、F 市のような比較的に木材消費地での取り組み 図 3 延べ面積と木材材積 図 4 Y 市の木材調達プロセス 謝辞 本研究にあたり県市町村の多くの職員の方々にご協力頂きました。ここに記して深く感謝致します。 参考文献 ・村山浩和「木造住宅をめぐる復興施策」建築雑誌 96 31-34 1981.11.20 ・永野義紀「在来木造住宅に関わる振興政策の変遷に関する研究」日本建築学会計画系論文集第 587 号 149-154、2005.1 ・長崎愛「地域材を活用した木造住宅に対する自治体の助成事業について」平成 19 年度日本建築学会近畿支部研究報告集 ・各省庁、都道府県、市のホームページ 註 1) 林野庁調査資料 は、木材利用の拡大には重要であるが、木造化のメリッ トを享受できないと考えているため、公共建築物の木 造化に対して消極的にならざるを得ないのが実情であ る。よって、各地域で公共建築物の木造化を進めるに は、木材消費地と生産地との連携体制の整備や、木造 公共建築の義務化等を含めた制度を整備する必要があ ると考えられる。 6 まとめ  本研究では地方自治体の木造公共建築の施策と実態 から以下のような知見を得た。 1)木造公共建築の施策には林業の振興だけでなく、 建築を含めた総合的な方針を策定する必要がある。 2) 市町村内に地域産木材がないことや製材所がない等 の問題に対して都道府県は行政区域が広いためより総 合的な施策が行え、県産木材の供給体制の整備が市町 村、さらに民間も活用できるなどの波及効果が期待で きる。 3) 地域の実情に合わせた施策の方針と同時にその地域 内のみの施策だけではなく他の地域との連携等を含め た施策が必要と考えられる。  今後は自治体を単体で扱うのではなく総合的に捉 え、また、建築の側面も含めた多角的な視点からの実 態を明らかにする必要があると考えられる。 秋田県「木造公共施設事例集」及び鹿児島県「木を使った快適空間」より作成 Y 市「市の木造公共施設整備にかかる Y 市産木材利用に関する方針」より作成

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