Meta-Emotionと適応との関連 [ PDF
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(2) 多くは過去経験の記憶である。それは、自らの経験した. 動を捉える過程に混乱が多く、構造度が低いと考える。. 特定の出来事の場合もあれば、それらの経験が蓄積され. ●抽象度. た一連の事象の場合、さらに、そこから取り出された抽. 出来事」Ⅱ「出来事を集約した経験」 、Ⅲ「抽象概念」の. 象的な考えを語る場合もある。具体的な出来事とそれか. どのレベルに偏るかをみる。これは、特定の出来事が類. ら抽出された自己概念までの連続した階層の中で、どの. 似の経験の間で一般化され、抽象概念に取り込まれる過. 階層を用いて語るかは、教示内容によるとともに、個人. 程と考えられ、あらゆる階層にアクセスできることが、. の経験内容やパーソナリティなどに影響を受けるという。. 柔軟かつ安定した情動の働きを可能にすると考える。. *語りの構造分析―成人愛着面接より―. ●抽象概念のカテゴリー(問①③⑤について) 情動の. 情動についての語りが、Ⅰ「一回性の特定の. 成人愛着面接(AAI)においては、養育者についての. 抽象概念の様相。個人が情動を捉える際、情動に関する. 抽象的な形容の後に、具体的な出来事の想起を求め、意. 情報のどの側面にアクセスしやすいかをみる。情動の評. 味記憶的表象とエピソード記憶表象との整合・一貫性を. 価、強弱頻度、介入、原因、描写の5カテゴリーを設定。. 分析する。そこでは、語られた内容そのものよりも、語. ●意味づけ. られた経験への現在の評価や、語りの構造が重視され、. Negative/Neutral/わからないの 4 カテゴリー。自分の情. 分析基準として「会話の公準(Grice、1975)」を援用する。. 動と他者の情動に対するものと分けて評定。情動の意味. ・ 質の公準…信憑性の高い発話の指標. づけ方により、 その機能の仕方が異なってくると考える。. ・ 量の公準…他者に伝達するに必要な情報量の指標. ●反応潜時. ・ 関連性の公準…主題に即した語りを構成する指標. 象概念においては、質問を受けて記憶検索→集約的な要. ・ 様式の公準…明瞭な伝達の指標. 素の抽出→概念構成といったプロセスが想定される。エ. 情動に対する意味付けをみる。Positive/. 質問に対し、答えの作成に要する時間。抽. ピソードにおいては、エピソード想起に要する時間であ 【方法】 先行研究で得た知見をもとに大学生 5 名を対象とし. り、 経験への抑圧の程度として解釈できる可能性が高い。 ●主観的答えやすさ. 全発話後、被験者が 3 情動の答. た予備面接調査を行い、筆者と異なる専門家 1 名との協. えやすい順を回答。語りの構成主体が主観的に感じた答. 議を経て、手続き・質問項目・評定基準等を決定した。. えやすさは、各情動への親和性や抵抗と思われる。 ◎各規準の評定者間一致率は 72∼84%であった。. 【結果と考察】. 第二研究 Meta-Emotion と適応との関連. *手続き 個別面接法。教示で「あなたが感情について、どのよ うに感じたり、思ったりするかということについて、い くつか質問をしたい」と伝え、以下の質問を行う。 被験者が発話中、調査者は介入や誘導は一切行わない。. 【問題と目的】 Meta-Emotion と適応との関連を見る。 *情動の個人内機能と不安 情動の個人内機能として、個人のおかれている状況を. ●質問項目(○○…悲しい・怒り・嬉しい。順無作為). フィードバックし、その後の注意や行動を方向付ける役. ①自分の○○という感情についてどう思いますか。. 割がある。よって、情動からのシグナルを的確に捉えき. ②自分の○○という感情に関するエピソードは?. れないと、人は状況に対応する明確な方向付けを持ちに. ③他人の○○という感情についてどう思いますか。. くく、状況や、その情動自体が漠然とした脅威として体. ④他人の○○という感情に関するエピソードは?. 験される。こうした曖昧で不確かな脅威が経験される状. ⑤あなたにとって、 ○○という感情はどんなものですか。. 態について、不安という概念を用いることができると考. ①自己の情動の抽象概念②エピソード記憶、③他者の情. える。よって、Meta-Emotion と不安との関連をみる。. 動の抽象概念④エピソード記憶、⑤情動自体の抽象概念. *情動の個人間機能と社会的適応 情動の個人間機能としては、他者に自分の状態を知ら. *評定基準. 評定基準として、以下の7つを設定した。. せ、応答を引き出すというコミュニケーション手段とし. 個人が情動を捉える際に用いる情報量をみる。提. ての役割が挙げられる。情動の持つシグナルは、その状. 出される情報量は、簡潔であり完全―つまり、過不足な. 況において最も優先される情報を迅速に他者に伝え、て. く中程度である場合にもっとも構造度が高いと考える。. っとりばやく必要な反応を引き出すという点では、他に. ●混乱. なく優れている。よって、Meta-Emotion と、社会的適. ●量. 情動について語る際の語りの様式をみる。未整. 理で不明瞭な語り口が多い場合には、それだけ個人が情. 応の一指標としての社会的スキルとの関連をみる。.
(3) 約した経験」を語りやすい人は、不安傾向が高いといえ. 【方法】 *被験者. 大学生・大学院生 30 名。男女各 15 名。. る。データを詳しく見ると、集約された経験が語られる. (平均年齢=21.77 歳、SD=1.25 歳、範囲=19∼25 歳). のは、抽象概念よりも特にエピソードを求めた場合に多. *不安特性・社会的適応の測定. い。特定の出来事を求めたにも関わらず、それを集約し. 質問紙法。. 不安特性…STAI;State-Trait Anxiety Inventory(清. た経験が語られるのであれば、そこには情動体験への抑 圧が働いているものと考えられる。そのために情動の記. 水・今栄,1981) 社 会 的 ス キ ル … Kiss-18 ; Kikuchi’s Social Skill. 憶利用可能性の柔軟性に欠け、 情動を的確に捉えきれず、. Scale・18 項目版(菊池,1988) 。. 不安を生じさせやすくなるものと思われる。. *Meta-Emotion の測定 第一研究で作成した面接法。. TableⅡ−3 抽象度×STAI・ Kiss-18. 【結果と考察】 *Meta-Emotion と特性不安・社会的スキルとの関連. STAI Kiss-18. 特定出来事 集約経験 n.s .363* n.s n.s. 抽象概念 n.s n.s. * p<.05. 全体の量と STAI との間に有意な正相関がみられ. ●抽象概念のカテゴリー 「情動の描写」得点と STAI. た( r=.419, p<.05 )ほか、下位項目の各量と STAI との. との間に有意な正相関がみられ( r=.486, p<.01)、各情動. 間に多様な有意な相関が見られた。(TableⅡ-1). においても同様の傾向が見られた。 (TableⅡ-4). ●量. 今回の結果より、情動について多く語る人ほど不安が. 今回得られた結果より、他のカテゴリーに比べて「情. 高いと言える。情動について語る際、情動に関する情報. 動の描写」をよく行う人ほど不安が高いと言える。 「情動. を検索して取りだし、それを操作する過程をたどる。個. の描写」を多く行う人は、情動に関する情報の中で、情. 人が情動を捉える際に用いる情報量が多いほど、要する. 動体験そのものに焦点を向けやすいものと考えられる。. 操作が多く複雑なものとなり、まとまりをつけるのが困. 情動に対する考えを語るというよりも、情動体験そのも. 難で、的確な把握に困難が生じるのかもしれない。. のにアクセスしやすいということは、情動について積極. また、エピソードよりも抽象概念において不安との関. 的に操作し、構造化しようという方向付けが弱いものと. 連が認められたのは、個別の体験を総合的に捉え、積極. 考えられ、すなわち Meta-Emotion の構造度としては低. 的に操作する段階で困難があったものと解釈できる。そ. いと言える。それゆえに不安が高いと考えられる。. の過程で情報は集約されて簡潔なものへと変換されるべ きところであるが、その過程での失敗が情報量の過多と. TableⅡ−4 抽象概念のカテゴリー×STAI・Kiss-18. して現れたのではないか。また、結果を総合的に見て、 特に他者の不快情動に対する抽象概念の構成に多くの情 報を用いている人ほど不安が高いと考えられる。. TableⅡ-1 量×STAI・Kiss-18 STAI Kiss-18. 全量 .419* n.s. 悲量 .410* n.s. 抽象概念 エピソード STAI .458* n.s Kiss-18 n.s n.s. 悲 .413* n.s. 怒 .434* n.s. 評価 強弱頻度 介入 原因 n.s n.s n.s n.s n.s n.s n.s n.s. 喜量 n.s n.s. 自己 n.s n.s. 他者 .400* n.s. 喜 n.s n.s. 描写 .486* * n.s. * p<.05 ●意味づけ. 怒量 n.s n.s. 自己抽象 自己エピ 他者抽象 他者エピ STAI n.s n.s .400* n.s Kiss-18 n.s n.s n.s n.s 他者抽象 STAI Kiss-18. STAI Kiss-18. 自己の情動へのポジティブな意味づけと、. STAI との間に有意な負相関( r=-.398, p<.05 )、他者の 感情へのポジティブな意味づけ・反応と Kiss-18 との間 に有意な正相関がみられた( r=.408, p<.05 )ほか、下位 項目の各量と STAI・Kiss-18 との間に多様な関連が見ら れた (TableⅡ-5) 。 今回の結果より、自己の情動(特に不快情動)にポジ ティブな意味付けをする人ほど不安傾向が低いと言える。 自己の情動を肯定的に意味付けられるということは、そ れを受容するのが容易になり、情動を捉えやすくなると. * p<.05. 考えられる。 よって、 不安が低いと言えるのではないか。 他者の情動に対するポジティブな意味づけ・反応は、. ●抽象度 「出来事を集約した経験」得点と STAI との. 社会的なスキルと正相関を示した。他者の情動に対し適. 間に正の相関がみられた( r=.363, p<.05 )。(TableⅡ-3). 応的機能にそった反応がなされるならば、社会的適応が. 今回の結果より、本研究の教示に対して「出来事を集. 促進され、 社会的スキルが高いことも容易に了解できる。.
(4) 以上の結果―自己の情動への意味づけは個人内の適. た。そこでは、情動についての語りの構造が、情動を捉. 応である不安と関連が見出され、一方、他者の情動への. える過程に重なるものと考え、Meta-Emotion の様相を. 意味づけ・反応は、個人間の適応である社会的スキルと. 取り出すのに語りの構造に着目する有効性を呈示した。. の関連が見出されたことは、情動が自己内と対人間の両. 第二研究では、Meta-Emotion と適応との関連を調べ. 者において機能を有するという知見から見ても整合性の. た結果、Meta- Emotion の構造度が高いほど適応がよい. 高いものである。. という仮説に一致する方向で、Meta-Emotion の下位項. TableⅡ-5 意味づけ×STAI・Kiss-18. 目と不安特性・社会的スキルとの間に(特に不安特性との. STAI Kiss-18. 自positive 他posirive -.398* n.s n.s .408*. 間に)多様な関連が見出された。 Meta-Emotion は、情動の適応的な働きという観点か ら見て注目する有効性は高い。この概念を取り上げ、そ. 自悲しみ positive STAI -.506* Kiss-18 n.s. negative .353* n.s. neutral わからない n.s n.s n.s n.s. 自怒り STAI Kiss-18. negative n.s n.s. neutral わからない n.s n.s n.s n.s. positive -.371* n.s. 自己喜び 意味づけ×STAI・Kiss-18 n.s. の測定方法を検討し、さらに適応との関連を検証した点 に、本研究の意義を強調したい。 *今後の研究の展望 今後、測定方法のより一層の精緻化が必要と考える。 評定基準のさらなる検討や、7つの評定基準を独立した ものではなく、総合的にみていく中で、語りのパターン をカテゴリー化することなども視野にいれて検討する。. ●主観的答えやすさ. もっとも答えやすいとされた情. さらに、Meta-Emotion がどのような過程を経て成り立. 動を独立変数、STAI・Kiss-18 を従属変数とした1要因. つものなのか、その起源を探ることも課題である。. 3水準の分散分析を行ったところ、STAI において情動. *臨床への応用. の主効果が認められた(F=4.724, p<.05 )。 (表Ⅱ-7). Meta-Emotion への介入は、個人の情動を適応的なも. 今回の結果より、怒りをもっとも答えやすいと感じる. のに変化させる契機となることが期待できる。よって、. 人の方が、喜びを答えやすいと感じた人よりも不安が低. 研究にで得られた知見を実際の臨床場面で生かすことを. いといえる。喜びという快情動よりも、怒りという不快. 長期的な目標とし、今後の研究を重ねたい。. 情動への抵抗が少なく、容易に言葉にできれば、それを 脅威として体験することなく、 不安も低いと考えられる。. 【参考文献】 Campos, J.J., Campos, R., & Barrett, K.C. 1989 Emergent themes in the study of emotional development and emotion. 表Ⅱ- 7. regulation. Developmental Psychology,25,394-402. 48.0 S 46.0 T A 44.0 I 42.0 ︵ 不 40.0 安 特 38.0 性 36.0 ︶. Gottman, J. M., Katz, L. F., & Hooven, C. (1997) Meta-Emotion. How Families Communicate Emotionally. Mahwah, New Jersey : Lawrence Erlbaum Associates, Inc.. 34.0 悲しみ. 怒り. 喜び. もっとも答えやすかった情動. Grice, H. P. (1975) Logic and conversation. In Cole, P. & Morgan, J. L. (Eds.), Syntax and semantics : Vol.3. Speech act, 68-134, New York : Seminar Press.. ●混乱●反応潜時は、STAI・Kiss-18 との関連は見ら れなかった。これは、評定段階で測定しようとしたもの. Magai, C., Distel, N., & Liker, R. (1995). Emotion. をうまく捉えきれなかった可能性が考えられ、もう一度. socialization, attachment, and patterns of adult emotional. 方法の段階に立ち戻って、検討を加える必要がある。. traits. Cognition and Emotion, 9, 461-481.. ◎結果の一部,外れ値と判断された一名のデータを除く。. 【総合考察・今後の課題】 本研究では、第一研究において、先行研究で得られた 知見より Meta-Emotion の測定・分析方法を考案・検討し. 野村晴夫(2002)高齢者の自己語りと自我同一性との関連―語 りの構造的整合・一貫性に着目して― 教育心理学研究, 2002, 50, 355-366.
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