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間質性肺炎の病態形成におけるネクロプトーシスの役割

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Academic year: 2021

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(1)

─ ─15 水村賢司 他 日本大学医学部総合医学研究所紀要

Vol.5 (2017) pp.15-17

1)日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野 2)日本大学医学部病態病理学系微生物学分野 水村賢司:[email protected]

性 炎 症 を 特 徴 と し て い る が, ア ポ ト ー シ ス は DAMPs(damage-associated molecular patterns)を 放出しない,非炎症性の細胞死である。一方,ネク ロプトーシスは,DAMPsを放出する炎症性の細胞 死であることが知られている2)。今回,我々は炎症 性プログラム細胞死であるネクロプトーシスに着目 し,間質性肺炎の病態形成への関与について検討を 行った。

2.対象および方法 1)細胞死実験

肺上皮細胞株(BEAS-2B)をネクローシス阻害薬 であるNecrox-5(Nex-5; Enzo Life Sciences)とネク ロ プ ト ー シ ス 阻 害 薬 で あ るNecrostatin-1(Nec-1;

Enzo Life Sciences)で1時間前処理後,タバコ煙抽 出 液 処 理 を 行 っ た。 生 細 胞 と 死 細 胞 の 決 定 は,

LIVE/DEAD Viability/Cytotoxicity Kit (Molecular 1.はじめに

間質性肺炎の本体は胞隔炎であり,胞隔炎が線維 化に至る過程は細胞死を主体とする肺上皮細胞の損 傷に始まると考えられている。しかし,間質性肺炎 の病態生理は不明な点が多く,また,治療効果は不 十分である。間質性肺炎の発端となる肺上皮細胞の 細胞死は,アポトーシスについての検討は行われて いるが,他の新規プログラム細胞死については十分 な検討が行われていない。

ネクローシスは長い間,「偶発的な細胞死」とさ れ,特異的な分子細胞学的イベントは必要ないと考 えられてきた。しかし,最近となりRIP1とRIP3と よばれるキナーゼの活性依存的に誘導されるカス パーゼ非依存性のプログラムネクローシス(以降,

ネクロプトーシス)が報告され,心筋梗塞や炎症性 腸疾患など様々な病気の病態生理に関与しているこ とが明らかとなってきた1)。間質性肺炎は,肺の慢

水村賢司1),権 寧博1),黒田和道2)

要旨

間質性肺炎の本体は胞隔炎であり,胞隔炎が線維化に至る過程は細胞死を主体とする肺上皮細胞 の損傷に始まると考えられている。しかし,間質性肺炎の病態生理は不明な点が多く,治療効果は 不十分である。今回,我々は,ネクロプトーシスという新規プログラム細胞死の間質性肺炎への関 与を検討した。間質性肺炎を引き起こす要因の一つは喫煙と考えられているが,タバコ煙抽出液に よる肺上皮細胞死は,ネクロプトーシス阻害薬で抑制され,タバコ煙による肺上皮細胞死はネクロ プトーシスで制御されている可能性が示唆された。また,タバコ煙暴露を行ったマウスの肺では,

ネクロプトーシス関連蛋白であるReceptor-interacting protein kinase 3(RIP3)の発現増強が観察さ れ,生体内でもタバコ煙によるネクロプトーシスの活性化の可能性が示された。本研究により,新 規プログラム細胞死であるネクロプトーシスが,間質性肺炎の病態形成に関与していることが示唆 された。今後は,ネクロプトーシスの肺線維化への影響についても検討していく予定である。

間質性肺炎の病態形成におけるネクロプトーシスの役割

The role of necroptosis in the pathogenesis of interstitial pneumonia

Kenji MIZUMURA

1)

, Yasuhiro GON

1)

, Kazumichi KURODA

2)

創立50周年記念研究奨励金(共同研究)研究報告

(2)

間質性肺炎の病態形成におけるネクロプトーシスの役割

─ ─16 Probes)を用いた。生細胞の染色は,生細胞の細胞 膜を透過し,生細胞が持つ細胞内エステラーゼに よって加水分解され,細胞膜不透過性の緑色蛍光物 質カルセイン(最大蛍光波長:515 nm)を生じるカ ルセイン-AMで,死細胞の染色は,死細胞の膜損 傷部分から透過し,核内のDNAに入り込んで赤色 蛍光(620 nm)を発するエチジウムホモダイマーで 行った。フローサイトメトリーは,FACS Canto II

(BD Biosciences) で 測 定 し,FlowJo analytical  software (Tree Star Inc.)で解析を行った。

2)タバコ煙暴露マウス

12-15 週齢のC57BL/6Jマウスを用いた。全身タ バコ煙暴露装置を用い,1日2時間,週5日,それぞ れ3週間,3ヶ月間,6ヶ月間暴露を行った。肺組織 を採取し,組織抽出液をウェスタンブロット法で解 析した。抗体は,rabbit antibody against mouse RIP3

(AHP1797; AbD Serotec)を使用した。

3.結 果

タバコ煙による肺上皮細胞死へのネクロプトーシ スの関与を,ネクローシス阻害薬であるNex-5とネ クロプトーシス阻害薬であるNec-1を用いて解析し た。タバコ煙抽出液は肺上皮細胞死を有意に誘導し

た(図1)。また,タバコ煙抽出液による肺上皮細胞

死は,ネクローシス阻害薬であるNex-5とネクロプ トーシス阻害薬であるNec-1両剤ともで有意に抑制

され(図1),タバコ煙による肺上皮細胞死にネクロ

プトーシスが関与することが示唆された。

次に,肺へのタバコ煙暴露によるネクロプトーシ ス誘導を検討するために,全身タバコ煙暴露装置を 用いマウスへのタバコ暴露を行い,ネクロプトーシ ス関連分子であるRIP3のマウス肺での発現を検討 した。RIP3発現はタバコ煙暴露3ヶ月をピークに上 昇していた(図2)。

4.考 察

間質性肺炎の本体は胞隔炎であり,胞隔炎が線維 化に至る過程は細胞死を主体とする肺上皮細胞の損 傷に始まると考えられている。しかし,間質性肺炎 の病態生理は不明な点が多く,また治療効果は不十 分である。間質性肺炎の発端となる肺上皮細胞の細 胞死はアポトーシスについての検討は行われている が,他のプログラム細胞死については十分な検討が 行われていない。今回,我々は,新規プログラム細 胞死であるネクロプトーシスの間質性肺炎への関与 を検討した。間質性肺炎を引き起こす要因の一つは 喫煙と考えられているが,本研究で,タバコ煙によ る肺上皮細胞死はネクロプトーシスで制御されてい る可能性が示唆された。また,タバコ煙暴露を行っ たマウスの肺ではネクロプトーシス関連蛋白である

図1 タバコ煙抽出液による細胞死とネクロプトーシス

図2 タバコ煙全身暴露によるマウス肺におけるネクロプトーシス関連分子RIP3の発現

1

図1.タバコ煙抽出液による細胞死とネクロプトーシス

図2.タバコ煙全⾝暴露によるマウス肺におけるネクロプトーシス関連分⼦ RIP3 の発現

**

Dead **

Live

0%

20%

40%

60%

80%

100%

DMSO Nex-5 Nec-1 DMSO Nex-5 Nec-1

Control CSE

3 weeks RIP3

β-Actin

WT Air 3 months 6 months CS

KO

1

図1.タバコ煙抽出液による細胞死とネクロプトーシス

図2.タバコ煙全⾝暴露によるマウス肺におけるネクロプトーシス関連分⼦ RIP3 の発現

**

Dead **

Live

0%

20%

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60%

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DMSO Nex-5 Nec-1 DMSO Nex-5 Nec-1

Control CSE

3 weeks RIP3

β -Actin

WT Air 3 months 6 months CS

KO

(3)

─ ─17 水村賢司 他

5.結 語

従来,間質性肺炎の病態形成にアポトーシスが関 与していることが報告されていたが,本研究によ り,新規プログラム細胞死であるネクロプトーシス が,間質性肺炎の病態形成に関与していることが示 唆された。間質性肺炎に対する新規バイオマーカー や治療ターゲットになる可能性があり,更なる検討 が望まれる。

文  献

1) LinkermannA, GreenDR. Necroptosis. N Engl J Med 2014; 370:455–65. 

2) Pasparakis M, Vandenabeele P. Nature. 2015 Jan 15;

517 (7534): 311-20.

RIP3の発現増強が観察され,生体内でもタバコ煙 は肺でネクロプトーシスを活性化することが示唆さ れた。

しかし,間質性肺炎においては,肺上皮細胞の損 傷の後に,異常な創傷治癒過程による線維化が起こ ることが知られているが,タバコ煙によるネクロプ トーシスと線維化については明らかではない。ネク ロプトーシスはアポトーシスとは違い,DAMPsを 放出する炎症性の細胞死であることが知られてお り,持続喫煙によるネクロプトーシスが肺の慢性炎 症を引き起こし,肺の線維化を誘導している可能性 があり,今後検討を行う予定である。

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