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技術系人材委員会 調査研究報告書

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Academic year: 2021

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平成 20 年度

技術系人材委員会 調査研究報告書 (概要版)

平成 21 年 3 月

社団法人 研究産業協会

この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。

http://keirin.jp JRIA20 技術人材

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は し が き

昨今の技術革新の高度化と高速化には著しいものがあるが、それらに呼応した形で事業 マネジメント手法の変化も急速である。インターネット時代から Web2.0時代、さらにはユ ビキタス、NGN へと標語の変化も著しい中、コモデティとなったハードウエア技術の開発 生産拠点は、工賃が安くしかも人材が豊富な台湾、ベトナム、中国へとシフトし、また、

ソフトウェア関係の開発も人材豊富なインド、中国が急速にその力を伸ばしてきている。

そのような状況の中、中央研究所時代の終焉という言葉が言われ初めて久しいが、一社 で技術を開発して囲い込む形の事業モデルの維持は困難になってきており、M&A、協業 という形態を越えて、世はまさにオープンイノベーションの時代へと突入しているかのよ うに見える。一方では、先端製造技術を東南アジア地区に出しすぎた反省も見られ、製造 技術の国内囲い込みの強化施策も注目されており、一部優良企業における技術管理手法が 高く評価される現象も見られている。

このように技術開発競争や事業マネジメント形態の急速な変化は、技術者、研究者のあ り方にも大きな変化をもたらしている。いわゆる成果主義による評価の数値化、評価サイ クルの短期化の影響、リストラによる配置転換の頻発等は、従来、コア技術をじっくりと 育成して他社競争優位性を確立して行く手法の文化から、変化を先取りし、自らも考え方 や専門内容を変えてゆく事を必然とする競争文化への変更を余儀なくさせている。

競争文化の傾向が激しくなると、技術者、研究者の育成や心のあり方にも大きな変化と 迷いが生じている様に見える。競争を前向きにとらえて、変化を先取りし、企業の生きて ゆく方向を見いだそうという心構えは重要であるが、一方で後進の育成が不十分になり、

視野が短期事業成果を求める方向にのみ走るのであれば、国全体としては大きな方向性を 損ねることになる。実際に様々な社会システムの変化が、技術者、研究者のチャレンジ意 欲を損ね、イノベーション創出力の低下を招いているとの見方もあり、それが近年の大学 における理工科系の不人気に至っているとの指摘にもなっている。

人材委員会に於いては、以上のような状況認識をベースに、平成17年度から検討活動 を開始した。先ず、研究開発人材の育成に関する全体的な課題を抽出し、それらの中から、

特にチャレンジ精神などのモチベーションの向上に絡む課題と、イノベーションの創出力 などの研究開発能力に関係する課題に絞って施策の検討を進めた。

人材に関係した課題は、複数の要因が複雑に絡むので、原因分析は簡単ではない。例え ば、モチベーションを例にとっても、社会の意識、世代の特徴、学校での競争や勉学に対 する考え方から始まって、会社組織の風土、業績評価、育成施策、キャリアパスのあり方、

上司・チームとの関係等の要因が考えられ、同一会社内でも、部署により様相が異なって くるのが通常である。しかし、共通的な傾向は感じられる。いわゆる成果主義等の業績評 価制度と企業間競争の激化、ビジネスモデルの急速な変化が、技術者、研究者の業務にお ける自由裁量権と考える余裕、将来の希望を確実に奪ってきたのではないかと言うことで ある。これらは、人材育成担当者が先ず配慮しなければならない事項と考えられる。

イノベーション創出能力に関しては、もともと基礎研究の少なさが取りざたされていた

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が、最近では諸外国と比べた有効特許数の減少、学会発表数の減少等が問題視されている。

いろいろ議論はされるものの、本質的に有効な施策が打たれている感が薄い。むしろ、ビ ジネスモデルやソリューション、コンサルティングの偏重意識の中で、真に競争力のある 技術を生み出す力や生み出す方向性を見失ったかのように思える。イノベーション力こそ が真に力のある企業文化の根元であると思うが、リスク覚悟で新しい技術に挑戦するチャ レンジ精神が無ければ、イノベーションも生まれにくいものと考えられる。

昨年度、本委員会はこれまでの 3年間の活動をまとめて以下の3要素が人材育成に極め て重要であると結論付けた。

① 自発性の喚起と自発性を促す環境の整備

② 他組織やチーム内での人間の関わりを通して成長を促す事の理解

③ 育成思想の明確化と教育の徹底

これらの結論は、この間の多くの企業の訪問や、講演、著作物を元に、委員会の議論に より導いた物であるが、まだ検討の余地が残っている領域として、海外メーカ、日本の外 資系会社における人材育成の考え方の中に、日本独自の物とは異なる考え方が有ると分か ってきた。

本年度は、これら海外メーカ、外資系会社における人材育成施策を調査検討することと した。

今年度訪問や講演により調査した会社は、日本 IBM、日本マイクロソフト、住友 3M、ラク オリアの 4 社に留まったが、予想以上に大きな収穫が有ったと感じている。

この間、議論に参加された委員や、いろいろな助言、準備を頂いた協会関係各位に深く 感謝致します。本年度の後半は、世界中の景気後退により予想外の厳しい経済状況に陥っ ているが、本報告を読まれた方が一つでも有効な気付きを与えられれば幸いである。

平成 21年3月 社団法人 研究産業協会 技術系人材委員会 委員長 (株)日本電気 鹿田 實

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技術系人材委員会 名簿

(平成21 年3月現在)

<委員長>

鹿田 實 日本電気(株) 中央研究所エグゼクティブエキスパート

<副委員長>

石塚 真理 コンサルティング事業本部 経営コンサルティンググループ グループリーダー

<委員>

池川 豊年 東北電力(株) 研究開発センター 電力流通グループ 研究室長 伊藤 春彦 (株)東芝 研究開発センター 技監

稲葉 道彦 (株)東芝 研究開発センター 技監

金子 豊 (株)リコー グループ技術企画室 事業企画室 シニアマネジメント 武富 裕康 (株)UBE科学分析センター 総務部門 部門長

牧本 俊樹 日本電信電話(株)物性科学基礎研究所 主幹研究員

(50 音順)

<事務局>

舩津 貞二郎 (社)研究産業協会 専務理事 松井 功 (社)研究産業協会 調査研究部長 小林 一雄 (社)研究産業協会 企画部長

宮坂 洋一 (社)研究産業協会 調査研究部次長

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(社)研究産業協会 平成 20 年度報告書

平成 20 年度 技術系人材委員会調査研究報告書概要

背景と目的

人材委員会に於いては、一昨年より、研究開発人材の育成に関する全体的な課題を抽出 し、それらの中から、特にチャレンジ精神などの活性化に絡む課題と、イノベーションの 創出力などの研究開発能力に関係する課題を中心に検討を進めてきた。

昨年度の調査では海外企業の人材に関する取り組みについてわが国企業との差異につい て考察を行なった。それを受け、今年度は、まだまだ検討調査の余地が残っていると考え ていた海外メーカー、日本の外資系会社を取り上げ、日本の人材育成の考え方や方法論と は異なる有用なものがあるのではないかと考え、訪問調査や講演会への招聘を行った。

講演や訪問など具体的な活動は、以下の 4 社である。

今年度の活動

(1)住友3M(株) 執行役員 大久保 孝俊 氏 講演 日 時:08 年 07 月 23 日

場 所:研究産業協会

演 題:イノベーションを育む企業文化に基づいた企業経営 概 要:

・全世界で 7,000 人の研究員を擁し、ほとんど全ての市場にチャンネルを持つ。世界中 の TR にアクセスでき、質問すると常に親切に答えてくれる。

・研究開発の成功確立は低いものだと認識している。それ故、複数のマーケットへの有 用などに心がける。

・かっちり運営はするが、新しい物が出てくるように、プレッシャは掛けないし、エン カレッジにつとめる。人の流動性も高い。

・“自主性と失敗の許容”という W.マックナイトの精神は企業が永久に存続する為の条 件、アイデア創出の為の 15%ルールの推奨、会社は技術者のインフォーマルネットワ ークを構築させるためにフォーマルに支援する、技術者の草の根組織として 20 以上 の分科会を持つ、等々、技術イノベーションと人的ネットワーキングを重視する姿勢 が参考になった。

(2)日本IBM(株) Yamato Lab 人事シニアマネージャ 辻 智 氏 講演 日 時:08 年 07 月 30 日(水) 14:00-17:00

場 所:研究産業協会

演 題:IBMにおける「イノベーション時代のR&D人財育成」

・IBMは GTO(Global Technology Outlook)、GIO(Global Innovation Outlook)など 将来を見越した全世界、全産業的な動きをロードマップとして把握し、そこから IBM の事業としての方針へと落としこんで行く動きを強めている。社員に分かりやすく方 向性を示してゆける点や、ロードマップをまとめてゆく研究者、技術者がそこまで重 い役割を果たして行ける点が重要と感じた。

・また、イノベーション Jam、テクニカルコミュニティ活動など、イノベーションへの

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情熱を掻き立てる施策をいくつも、しかも世界レベルで実施している事に驚いた。

・Technical Vitality という役割の社員が、上記テクニカルコミュニティの運営活動を 企画するだけでなく社員同士を刺激させ合い、継続的なイノベーションを続ける企業 文化の創造を担っている。例えばアジア地区として技術交流会を開くなど、活発な交 流を続けていることが有意義に感じられた。

(3)マイクロソフト ディベロプメント(株) 代表取締役 藤井 照穂 氏 訪問 日 時:08 年 8 月 21 日

場 所:マイクロソフト ディベロプメント社(調布)

概 要:

・マイクロソフト ディベロプメント社は、マイクロソフトの日本の開発部隊で社員数 は約 350 名、採用は日本全体では年間 50 名程度で、マイクロソフト ディベロプメン トでは数名程度。技術力を持った人材を、中途社員で集める事に長けていると感じた。

・人材育成は、OJT が7割、Mentorship が 2 割、training が 1 割である。ここ 5 年ほど、

職種毎に Discipline を定め、carrier step を明らかにしてきた。

・入社した社員個人の育成に関しては、これまでは、個人の能力高さ、興味の強さに頼 っていたが、これからいろいろな制度を作ろうとしている段階であることが分かった。

(4)ラクオリア創薬(株) 常務執行役員 古田 晃浩 氏 訪問 日 時:08 年 12 月 16]日

場 所:ラクオリア創薬社(愛知県)

概 要:

・ファイザージャパン社から研究部隊約70名で08年2月に独立。自助と連携を重視した コンパクトな経営、育成スタイルを実行している。

・“モチベーションは待遇や褒賞ではなく、貢献の喜び”というのが社風。

・朝礼、掲示板利用など社員同士の意志疎通環境の整備に注力。EQをベースとしたソー シャルスキルを重視している。人事評価制度の構築はこれからというものの、地に足 が付いた人材育成活動を進めようとしている。

・特にIOCN(Integrated、 Open、 Collaboration、 Network)をvalueとして、他との 協力(collaboration)を重視した業務展開を図っている。

(5) 総括議論

日 時:09 年 2 月 17 日 場 所:研究産業協会

参加者:鹿田 委員長(NEC)、石塚 副委員長(三菱総研)、金子 委員(リコー)

舩津専務理事、小林企画部長

上記の訪問や講演を通して、外資の会社が持っている人事制度や人材育成の考え方の特 徴に関して議論した。海外メーカー、外資系会社が実施している人材育成施策として特徴 をまとめた。

今年度のまとめ

平成 17 年度に人材育成の課題と対応をまとめようと言う事になり、参加の各委員から 課題を出して頂いた。それを一覧表にまとめたところ、47 課題に上り、最終的にはそれら

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を 15 項目に分類した。それらの中でもチャレンジ精神の低下や創造性の低下が最大の課題 であるとして、それらの低下の原因と対策に焦点を絞って検討を進めることになった。

以来、2 年以上に渡って企業訪問や講演会、ワークショップ、シンポジウムを重ね、ま た関係の著作物を調べる中から、委員会としての考えのとりまとめを昨年度末に行った。

その結論は、

① 自発性の喚起と自発性を促す環境の整備

② 他組織やチーム内での人間の関わりを通して成長を促す事の理解

③ 育成思想の明確化と教育の徹底

の 3 点であった。ここでの考え方の基本は、自発的な意志に基づく行動を、組織が上手く 導く事が最重要で、しかもそれは、チームや社内、外部組織との人間的な交わりによって 助長されるというものである。また、チームや社内が上手く機能する為には、育成思想や 仕組みがなければならないし、その仕組みを動かす事を徹底しなければ、全体として上手 くは機能しないということ。人材育成が上手く、業績も良い組織の施策は、微妙な違いは 有るものの、この3項目に当てはまるのではないかと考えた。

しかし、それぞれ個別具体的な部分に関しては、検討の余地はまだ沢山残っていた。特 に、欧米の会社が持っている育成思想や育成方法は、日本とはかなり異なった物であった。

一般には、成果主義、実力主義が徹底していると思いがちだが、実際は、会社の在り方や 方法論を明示し、それに合った社員としての行動を求めたり、育成施策を実行したりして おり、そのやり方の中には、日本の企業にも参考となる物が多数有るのではないかと推測 された。

今年度の、訪問調査や講演は、日本 IBM、日本マイクロソフト、住友 3M、ラクオリアの 4社に留まったものの、予想以上に大きな収穫が有ったと感じている。具体的には、

・ GTO、GIO、Jam などイノベーション力の向上に役立ついくつもの施策を進めると同時に、

Technical Vitality という役割の社員が、コミュニケーションの活性化等を通じて刺激 し合い、継続的なイノベーションを続ける企業文化の創造を図っている(日本IBM)

・“モチベーションは待遇や褒賞ではなく、貢献の喜び”というのを社風とし、 IOCN

(Integrated、 Open、 Collaboration、 Network)をvalueとして、朝礼、掲示板利用 など社員同士の意志疎通環境の整備に注力するなど、地に足が付いた人材育成活動を進 めている(ラクオリア創薬)

・“自主性と失敗の許容”というW.マックナイトの精神は企業が永久に存続する為の条件、

アイデア創出の為の15%ルールの推奨、会社は技術者のインフォーマルネットワークを 構築させるためにフォーマルに支援する、技術者の草の根組織として20以上の分科会を 持つ、等々、技術イノベーションと人的ネットワーキングを重視している(住友3M)

これらの訪問の結果、共通的に言えることは、以下の通りであると認識した。

①日本は、他社横並び的に人事制度を変えてゆく傾向が強い。会社の戦略とは別個で、分 離した制度構築を進めがちである。仕組みは作っても、その精神を見直していないこと が多いのではないか。

②海外メーカーは、消費者に何を提供するのかという議論をベースに Vision を共有するな ど、置かれている立場をしっかりと考え、会社の在り方の原理原則を明確にした上で、

従業員に目的意識を明確にした説明ができている。人間ベースに物事を考えているとも

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言える。

③制度を入れるという考えではなく、これで生きてゆくのだという議論を共有して、あと は徹底的に努力する姿勢が見られる。それほど大それた施策を実施している訳ではないが、

素朴に努力する姿勢で、良いことは地道に進めている。

参照

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