責任著者 中村牧子:富山大学医学部 第二内科(〒 930‑0194 富山県富山市杉谷 2630)
VF 心肺停止でECMO+IMPELLAによる循環補助と PCIを行い救命した1例
A case of cardiac arrest with ventricular fibrillation rescued by mechanical support of ECMO and IMPELLA and PCI
中村牧子 上野博志 中垣内昌樹 堀 正和 田中修平 城宝秀司 絹川弘一郎
Makiko Nakamura, Hiroshi Ueno, Masaki Nakagaito, Masakazu Hori, Shuhei Tanaka, Shuji Joho, Koichiro Kinugawa
Second Department of Internal Medicine, University of Toyama
富山大学医学部 第二内科
症例は 58 歳男性,主訴は心窩部痛・心肺停止.2018 年某月初旬,心窩部痛・嘔吐にて救急要請した.救急 車内で心室細動(VF)となり AED による除細動が 3 回施行されるも VF 停止せず,心肺蘇生が継続され当院 ER へ救急搬送された.気管挿管,アドレナリン,アミオダロン投与後も自己心拍再開が得られず,VA‑ECMO を 挿入し冠動脈造影(CAG)を施行.左前下行枝 #6 100%,右冠動脈 #1‑2 90%を認め,引き続き #6 に PCI 施行,
その後の除細動で洞調律へ復帰した.#1‑2 にも PCI を施行し TIMI 3 となったが左室拡張末期圧 20 mmHg と 高値のため左室ベント目的に IMEPLLA 2.5 を挿入した.CCU 入室時脈拍触知せず,胸部 X 線で肺うっ血あ り,心エコーで大動脈弁の開放を認めず,高度のびまん性左室壁運動低下(EF 10%)を認めた.低用量の静注 強心薬も併用開始し第 2 病日 ECMO を離脱した.CPK は最高 17737 IU/L,CK‑MB 702 ng/mL まで上昇した が,左室壁運動の改善を認め,第 5 病日 IMPELLA を抜去,第 6 病日人工呼吸器と静注強心薬を離脱した.第 14 病日の心エコーでは EF 47%に改善を認め,神経学的後遺症なく第 31 病日に独歩退院し,退院 1 カ月後に 就労復帰した.本例は ECMO による全身循環の維持,PCI による冠血行再建と IMPELLA による左室減負荷に より心機能が回復し救命し得たと考えられた.
《Abstract》
(2018. 8. 1原稿受領;2018. 10. 2採用)
● 左室ベント
● PCPS
● 心原性ショック
● 補助循環
● 急性心筋梗塞 Key words
はじめに
心停止患者に
ECMO
(Extracorporeal membraneoxygenation)を挿入する心肺蘇生 cardiopulmonary resuscitation
(CPR)を体外循環式心肺蘇生E︲CPR
(ECMO to support CPR)と呼ぶ.米国では
₂₀₀₀
年 日本循環器学会 第136回 北陸地方会 推薦演題( )
症 例
から心肺蘇生に
ECMO
を導入する例(E︲CPR)が増 え,救命率が改善したと報告されている(成人で生存 率₂₇%)
₁).わが国ではVA︲ECMO
は経皮的心肺補 助 装 置(percutaneous cardiopulmonary support;PCPS)と呼称することが多い.PCPS
研究会の報告 によると,わが国におけるPCPS
装着症例の内訳 は,多い領域から順に急性心肺不全₄₃%,救命領域
₃₁%,開心術後 ₁₃%,となっており, ₂₀₁₅
年度の救 命率は₄₄. ₆%
(離脱₄₂. ₆%,補助人工心臓 VAD
へ 移行₂. ₀%)である
₂).今回我々は難治性
VF
で心肺停止患者にVA︲EC- MO
とIMPELLA ₂. ₅
を導入し救命した₁
例を経験 した.IMPELLA
はわが国では₂₀₁₇
年秋より保険償 還された経皮的VAD,カテーテル VAD
であるが,まだ使用経験が少なくわが国における適応疾患,使 用状況および予後は明らかでない.ECMO+IM-
PELLA
を導入後の心機能,血行動態の推移,臨床経過を含めて報告する.
症例
症例:₅₈歳,男性.
主訴:心窩部痛,心肺停止.
既往歴:₄₈歳時 本態性血小板増多症(無投薬),
高尿酸血症.
内服歴:アロプリノール
₁₀₀ mg.
嗜好歴:飲酒 焼酎
₂︲₃
合/日×₃₃年,喫煙 ₂₀本/日×数年.
家族歴:特記事項なし.
現病歴:₂₀₁₈年某月初旬,胸部違和感を自覚し た.₂日後
₂₁
時入浴後から心窩部痛を自覚し,冷 汗・嘔吐・下痢も出現したため家族が救急要請した.₂₂
時₂₈
分 救 急 隊 接 触 時JCS ₀, 血 圧 ₁₆₅/
₇₄ mmHg,脈拍 ₈₆
回/分であったが,₆分後に救急 車内で心室細動(VF)となり心肺蘇生が開始された.AED
による除細動(DC)を計₃
回施行されたがVF
停止せず,心肺蘇生が継続され,当院救急部(ER)へ 救急搬送された.ERにて気管挿管施行し,アドレ ナリン₁ mg
を₃
回およびアミオダロン₁₅₀ mg
投与,
₁₅₀ J
と₂₀₀ J
で電気的除細動を試みられるも自 己心拍再開が得られず,VA︲ECMO挿入およびVF
の精査・加療目的に当科へ緊急入院した.現症:身長
₁₇₄ cm,体重 ₆₅ kg,BSA ₁. ₇₈ m
₂,BMI ₂₁. ₅, JCS ₃₀₀,血圧・脈拍・SpO
₂測定不可,頸静脈怒張なし,肺野にラ音聴取せず,心音聴取さ れず,腹部は平坦,軟,下腿浮腫なし.
入院時検査所見:WBCの上昇を認めるも,CPK の上昇は認めなかった.トロポニン
I
の上昇とD
ダ イ マ ー の 上 昇 を 認 め, 静 脈 血 液 ガ ス で はLac
₉. ₁ mmol/L
と 上 昇 を 認 め た.NT︲pro BNPは₁₀₉ pg/mL
とわずかに上昇を認めた.血液検査所見:(血算)
WBC ₁₄₅₉₀ / μ L, RBC ₄₈₉
×₁₀
₄/μ L, Hb ₁₅. ₀ g/dL, Plt ₂₂. ₁×₁₀
₄/μ L.(生化
学)BUN ₁₅ mg
/dL, Cr ₁. ₁₈ mg
/dL, T︲Bil ₀. ₄ mg
/dL, AST ₄₂ IU
/L, ALT ₃₀ IU
/L, LDH ₃₂₃ IU
/L,
CPK ₁₄₂ IU
/L,CK︲MB ₇. ₇ ng
/mL,ALP ₁₉₁ IU
/L, γ ︲GTP ₄₁ IU
/L, UA ₆. ₁ mg
/dL, CRP ₀. ₁₁ mg
/dL,Na ₁₄₃ mEq
/L,K ₅. ₄ mEq
/L,Cl ₁₀₄ mEq
/L,TG ₁₂₀ mg/dL,T︲Cho ₂₂₁ mg/dL,LDL︲C
₁₃₈ mg/dL,HDL︲C ₄₅ mg/dL,Glu ₁₈₈ mg/dL,
HbA₁c ₅. ₅%,NT︲proBNP ₁₀₉ pg/mL,心筋トロ
ポ ニ ンI ₇₅₅. ₅ pg/mL.( 凝 固 ) PT︲INR ₀. ₉₀,
APTT ₂₅. ₀
秒未満,Dダイマー ₁₃. ₃ µg/mL.(静 脈血液ガス分析(バッグバルブマスク換気下))pH
₇. ₁₅₇, pCO
₂₇₀. ₆ mmHg, pO
₂₁₁. ₆ mmHg, HCO
₃-₂₄. ₀ mmol
/L,AG ₉. ₆ mmol
/L,Lac ₉. ₁ mmol
/L.
経過:右大腿動静脈より
VA︲ECMO
(Terumo社 製,CAPIOX®,脱血管₂₁Fr,送血管 ₁₆. ₅Fr)を挿
入した.心臓マッサージの継続時間は₆₅
分であっ た.ECMO確立時の動脈血ガスはpH ₆. ₈₈₇,pCO
₂₅₉. ₉ mmHg, pO
₂₁₈₁ mmHg, HCO
₃-₈. ₆ mmol/L,
AG ₁₆. ₆ mmol/L,Lac ₁₅ mmol/L
と 代 謝 性 ア シ ドーシスの進行による高度のアシデミアとLac
の さらなる上昇を認めた.炭酸水素ナトリウムおよび アミオダロン₁₅₀ mg
を再度投与し緊急冠動脈造影(CAG)施行,左前下行枝(LAD)
#₆ ₁₀₀%,右冠動脈
(RCA)
#₁︲₂
に高度狭窄₉₀%を認めた.引き続き
LAD
にPCI
を施行し,薬剤溶出性ステントXience Sierra ₃. ₀×₃₈ mm
(Abbott社製)を留置した.LAD
にPCI
後の除細動で洞調律へ復帰し,動脈血ガスもpH ₇. ₂₆₉,pCO
₂₄₅. ₁ mmHg,pO
₂₂₃₁ mmHg,
HCO
₃-₂₀. ₀ mmol/L, Lac ₁₃. ₅ mmol/L
とアシドー シスの改善,Lac
低下が確認された.その後RCA
に もPCI
を施行しXience Sierra ₃. ₀×₃₈ mm
を留置 した(図 1).LAD,RCA
ともにTIMI ₃
が得られた が,左室拡張末期圧(LVEDP)₂₀ mmHg
と高値を認 めた.長時間のVF
と心臓マッサージによる心筋傷 害およびVA︲ECMO
による後負荷増大が懸念され たため,左室の減負荷をはかり左大腿動脈よりIM- PELLA ₂. ₅
(Abiomed社製)を挿入した.CCU入室時,脈圧が消失しており血圧は動脈圧ラ インから平均血圧のみ測定が可能であった.心拍数
₁₀₀ bpm,胸部 X
線で肺うっ血を認め,心電図は正 常洞調律でV
₂︲₃のR
波減高を認めた(図 2).心エコーでは大動脈弁の開放なく,左室は高度のびまん 性 壁 運 動 低 下(EF ₁₀%)を 認 め た. 平 均 血 圧 は
ECMO
の回転数に依存しており,回転数および補助 流量を上げると血圧は上がり,回転数および補助流 量を下げると血圧も低下した.大動脈弁の開放がないため
VA︲ECMO
による後負荷増大を懸念し,ECMO
の回転数を減じるも,血圧が低下したため,輸液負荷を行い前負荷の増加をはかった.しかし体 血圧上昇および大動脈弁の開放は得られず,肺動脈 圧(PAP)の上昇が認められ,胸部
X
線で肺うっ血も 認められたため輸液負荷を中止した.CCU入室時Lac ₄. ₁ mmol/L
といまだ高値であったため,VA︲ECMO ₂. ₀ L/min
を維持しつつ静注強心薬(ドブタ ミン₂. ₅ μ g/kg/min,ミルリノン ₀. ₂ μ g/kg/min)
の投与を開始した.以後脈圧がでてくるようになり
Lac
も低下した(図 3).肺うっ血の解除をはかり,フ ロ セ ミ ド
₁₀ mg
静 注 しECMO
の 補 助 流 量 を 図 1 CAG および PCICAGでLAD #₆で₁₀₀%閉塞,RCA #₁︲₂に高度狭窄₉₀%を認め,同 部位にそれぞれPCIを施行した.
LAD #6 100%
RCA #1‑2 90%狭窄
図 2 CCU 入室時所見
A:胸部X線.肺うっ血を認めた.左室内にIMPELLA留置あり.
B:心電図.正常洞調律でHR ₉₅ bpm,前胸部誘導でR波減高を認めた.
V6
aVF
aVL
aVR
III II I
V5
V4
V3
V2
V1
A B
図 3 CCU 入室後経過 1
心エコーで自己大動脈弁の開放を認めず,胸部X線で肺うっ血とLac ₄. ₁ mmol/
Lと高値も認められたたため,ECMO補助流量を₂. ₀ L/min,IMPELLA₂. ₅も
P︲₈で₂. ₀ L/minで補助し,ミルリノン,ドブタミン持続静注を開始した.以後
体血圧の脈圧がでてくるようになり,COの上昇,dPAPの低下,Lacの低下が 得られ,第₂病日目にECMOを離脱した.
(mmol/L)
dPAP CO
Lac
(mmHg)
(時間)
(L/min)
2.2
3.2
0.7 5.0 4.1
2L/min 1.5L/min フロセミド10mg ドブタミン
ミルリノン
P‑8(2.0L/min)
0.25μg/kg/min 3μg/kg/min 0.2
2.5
IMPELLA2.5 VA‑ECMO
6 21
0
4 8 12 16 24 28 32 36 40
5 4 3 2 1
25
0 5 10 15 15
20
₁. ₅ L
/min
に減じたところ,Lac ₃. ₂ mmol
/L
と再上 昇を認めたため,ドブタミン,ミルリノンを漸増し た(ドブタミン₃ μ g
/kg
/min,ミルリノン ₀. ₂₅ μ g
/kg
/min).その後は心拍出量 CO
の上昇,肺動脈拡 張期圧dPAP
の低下,Lacの低下が得られ,第₂
病 日にECMO
を離脱した.CPK
は最高₁₇₇₃₇ IU/L,
CK︲MB ₇₀₂ ng/mL
まで上昇したが,Cre, T︲Bil
と もに₂ mg/dL
を超えることなく肺うっ血も徐々に 改善した.心エコー上,左室壁運動の改善傾向を認 め,第₅
病日IMPELLA
を抜去,第₆
病日に人工呼 吸器を離脱し(図 4),第₇
病日に静注強心薬を終了した.エナラプリルとカルベジロールを導入し,第
₁₃
病日にCCU
を退室,歩行リハビリを開始した.第
₁₄
病日の心エコーではEF ₄₇%
(modified︲Simp-son
法)と左室収縮能の改善を認めた.カルベジロー ルを₁₅ mg/日まで増量し,神経学的後遺症なく第
₃₁
病日に独歩退院した.退院₁
カ月後の心エコーで はEF ₅₆%
(modified︲Simpson法)とさらなる収縮 能の改善を認め,就労復帰した.考察
本例は急性心筋梗塞
AMI
によるVF
で,救急隊 図 4 CCU 入室後経過 2Cre,T︲Bilとも₂ mg/dLを超えることはなく肺うっ血も徐々に改善した.心エコー上も左室壁運動の改善を認め,第
₄病日ミルリノン終了,第₅病日IMPELLA₂. ₅を抜去,第₆病日に人工呼吸器を離脱した.
(mmHg)
2L/min 1L
P‑8(2.0L) 7 6 5 4 3 2 off
ドブタミン
抜管 ミルリノン
ニトログ リセリン
ニトログ
リセリン カルペリチド
(病日)
IMPELLA
NTproBNP
sBP
Cre T‑Bil Lac
dBP mBP
mPAP ECMO
150
100
202 1399 710 399 501
50
0
15 23 20 16 16 14
2 1.5 1
15 10 5 0
1 2 3 4 5 6
0.5 0
(mmol/L)
(pg/mL)
(mg/dL)
0.4 1.18
9.8
3.2
0.9 1.5 1.9
1.72 1.56
1 0.8 1.22
0.7 1.11
1.1 0.2 0.25μg/kg/min
0.008μg/kg/min
2.5 3μg/kg/min 2 1
および救急部医師らにより絶え間ない心肺蘇生が継 続され,気管挿管およびアミオダロンを投与するも 自己心拍が再開しなかった.
VA︲ECMO
の確立まで 心臓マッサージの継続時間は計₆₅
分間であったが,血管撮影室にて瞳孔散大なく対光反射あり.時折四 肢も動かしていたため有効な心臓マッサージが継続 されていたと考えられた.来院時呼吸停止による呼 吸性アシドーシスを認め,その後心停止による代謝 性アシドーシスも合併し,
ECMO
確立時は高度のア シドーシスとなっていたが,遠心ポンプと人工肺に よる呼吸・循環補助によりアシドーシスは改善しLac
も低下傾向となった.引き続きVF
の原因精 査・加療目的にCAG
を施行し,AMIの責任病変で ある#₆
にPCI
を施行した.心原性ショックを呈し た多枝病変AMI
患者において,責任病変以外の病 変に対し同時にPCI
を施行すべきかに関しては,予 後を改善しないとの報告もあるが₃),本例はECMO
挿入によりアクセスサイトの制限があり,後日PCI
とした場合アプローチ部位が制限されること,RCA
の高度狭窄は複雑病変ではなかったこと,難治性VF
で完全血行再建が望ましいと考え,引き続き#₁︲₂
にPCI
を施行した.LAD,RCAともにTIMI
₃
で終了したが,LVEDP ₂₀ mmHg
と高値を認めた ため,IMPELLA ₂. ₅を挿入した.VA︲ECMO(PCPS)は経皮的に
₃. ₀ L/min
以上の 流量補助と人工肺による酸素化の補助が可能で,低 酸素血症を伴う心停止や急性心肺不全例によい適応 となるが,後負荷を増大させるため₄, ₅),肺うっ血を 有する例や低左心機能例では,通常IABP
を併用し ている.それでも肺うっ血の改善が乏しければ持続 血液透析濾過法(CHDF)を併用し,ECMO・IABP を離脱後もCHDF
を含めた長期の集中治療管理を 継続し,救命に至る例が多い₆).CHDFを併用して も肺うっ血が回復しない例,臓器障害が進行する例,自己心機能が回復せず
PCPS
離脱困難例は,臓器障 害が不可逆的となる前にVAD
へ移行する必要があ る.PCPS装着例はIntermacs Profile ₁
で体外設置 型VAD
の適応となるが,VAD
装着により自己心機能が回復し
VAD
離脱,すなわちBTR
(Bridge torecovery)とならなければ,心臓移植の適応を取得
後植込型補助人工心臓にコンバートする以外に,患 者は救命されても退院できる道がない.しかしなが らPCPS
補助の段階でBTR
が得られるかどうか,患者が心移植適応であるかどうかは判断が困難であ るため,VADへの移行が躊躇され救命できない例 も存在する.
IABPは冠血流を増加させ,後負荷を軽減するが,
補助流量は
₀. ₃︲₀. ₅ L/min
と少なく₄),AMIにおけ る心原性ショックでは予後を改善しなかったと報告 されている(IABP︲SHOCKⅡ trial)₇).わが国におけ る急性・慢性心不全診療ガイドライン(₂₀₁₇年改訂 版)でも心原性ショックにおけるIABP
のルーチン 使用はクラスⅢとなっている₈).本例のようにLac
の上昇,アシドーシスの進行まできたした例にIABP
のみ使用しても臓器障害の回復は得られず救 命には至らないと予想される.₂₀₁₇年秋よりわが国でも心原性ショックに対し 適応となった
IMPELLA
は経皮的VAD
で,IMPE-LA ₂. ₅
であれば最大₂. ₅ L/min, IMPELA ₅. ₀
であ れば最大₅ L/min
の流量補助が可能で,かつ前負荷 を強力に下げ心筋酸素需要を減らし,冠血流を増加させる₄, ₅).近年難治性心原性ショックに対し,VA︲
ECMO
とVA︲ECMO+IMPELLA
(ECPELLA) を 適応し予後を比較したところ,ECPELLAは₃₀
日 予後,₁年予後とも有意によかったとの報告があ る₉).ECMO
による後負荷増大に対しIMPELLA
を 併用することで,ECMO
単独に比べ左室は減負荷さ れ,予後の改善につながった可能性がある.本例もECMO
挿入後,LVEDP高値を認めたため,左室減 負荷(ベント)目的にIMPELLA ₂. ₅
を挿入した.CCU
入室時の心エコーで高度の左室壁運動低下を 認め,CPK
は最高₁₇₇₃₇ IU/L, CK︲MB ₇₀₂ ng/mL
まで上昇した.CK︲MBの最高値が高値の割に,本 例は第₁₄
病日にはEF ₄₇%まで回復しており, PCI
による冠血行再建に加えてIMPELLA
による左室 減負荷効果が心機能の回復に寄与した可能性がある.また本例は
ECMO
導入時Lac ₁₅ mmol/L
まで 上昇しており,最大CPK
値も高値で入院時循環不 全の程度は高度であったが,ECMO+IMPELLA₂. ₅+
低用量静注強心薬によりLac
は正常化し,CHDF
を要することなく第₆
病日に抜管,第₃₁
病 日に独歩退院という極めて良好な転帰をとった.難 治性心原性ショック例にECPELLA
が有用である 可能性がある.しかしながら,過去の無作為比較対象試験(RCT)
では
IMPELLA
はIABP
に比較してAMI
による心 原性ショックの予後を改善させなかった(ISAR︲SHOCK trial,IMPLESS in Severe SHOCK Tri-
al)
₁₀, ₁₁).一方USpella Registry
では心原性ショックを合併した
AMI
において,PCIの前にIMPELLA
₂. ₅
を挿入した群で予後の改善が示されており,再 灌流より先に左室を減負荷することで予後改善の可 能性が示唆されている₁₂).ISAR︲SHOCK trialではprimary PCI
の後にIMPELLA ₂. ₅, IABP
ともに挿 入されており,IMPELLA
の左室減負荷効果がAMI
発症早期に得られていない.IMPELLA ₂. ₅群でIABP
群より心係数(CI)の増加,拡張期血圧の上昇,Lac
の低下など血行動態の改善において優位性は示 されており,PCI
の前にIMPELLA
を挿入していれ ば異なった結果が得られた可能性もある.本例もPCI
の後にIMPELLA
を挿入したが,第₁
病日から₂
病日の間,VA︲ECMO ₂. ₀ L/min+IMPELLA₂. ₅₂. ₀ L
/min
の計₄. ₀ L
/min
の流量補助と人工肺によ るアシドーシス是正を必要とした.対象患者がIM- PELLA ₂. ₅
単独では臓器障害の改善が得られない 重症であったため,予後の改善が得られなかった可 能性もある.同様に,IMPLESS in Severe SHOCKTrial
の対象患者は全例で心停止の既往があり,入院 時Lac
がIMPELLA CP
群 で₇. ₅±₃. ₂ mmol/L,
IABP
群で₈. ₉±₆. ₆ mmol/L
と高値で,入院時pH
はIMPELLA CP
群で₇. ₁₄±₀. ₁₄,IABP
群で₇. ₁₇
±₀. ₁₇
であった.低体温療法が₇︲₈
割の患者で施行 され,腎代替療法が約₃
割の患者で施行されている 極めて重症な患者である.入院時アシデミアを合併しており,人工肺を有する
ECMO
の併用が望まし い患者も含まれていたためIMPELLA
単独で予後 の改善が示せなかった可能性がある.本例は,第
₁
病日ECMO
の補助流量を₁. ₅ L
/min
に減じたところ,Lac ₃. ₂ mmol/L
と再上昇を認め た際,IMPELLA ₅. ₀に変更するか検討したが,IMPELLA ₂. ₅
の 最 大 補 助 レ ベ ルP︲₈
( 補 助 流 量₂. ₀ L/min)でも時折サクションアラームを認めて
いたため₅. ₀
へアップグレードせず,静注強心薬の 増量にて対応した.サクションアラームの原因とし ては,心エコーでIMPELLA
の位置異常は認めず,ECMO
による右房脱血の影響もあり左室径が大き くないため吸入部が容易に左室壁にあたりやすいた めと考えられた.ECPELLAの管理にあたってはECMO
の補助流量とIMPELLA
の補助レベルの設 定,体液量と静注強心薬の併用をどうするかなど,補助循環の管理に注意を要し,動脈圧ラインと
Swan︲Ganz
カテーテルによるモニター,心エコーに よる左室径および壁運動の観察,IMPELLAの位置 の観察が重要と考えられた.今後さらなる症例の蓄 積,経験を積み重ねて検討が必要である.文 献
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