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(1)

責任著者 中村牧子:富山大学医学部 第二内科(〒 930‑0194 富山県富山市杉谷 2630)

VF 心肺停止でECMO+IMPELLAによる循環補助と PCIを行い救命した1例

A case of cardiac arrest with ventricular fibrillation rescued by mechanical support of ECMO and IMPELLA and PCI

中村牧子  上野博志   中垣内昌樹  堀 正和  田中修平 城宝秀司  絹川弘一郎

Makiko Nakamura, Hiroshi Ueno, Masaki Nakagaito, Masakazu Hori, Shuhei Tanaka, Shuji Joho, Koichiro Kinugawa

Second Department of Internal Medicine, University of Toyama

富山大学医学部 第二内科

 症例は 58 歳男性,主訴は心窩部痛・心肺停止.2018 年某月初旬,心窩部痛・嘔吐にて救急要請した.救急 車内で心室細動(VF)となり AED による除細動が 3 回施行されるも VF 停止せず,心肺蘇生が継続され当院 ER へ救急搬送された.気管挿管,アドレナリン,アミオダロン投与後も自己心拍再開が得られず,VA‑ECMO を 挿入し冠動脈造影(CAG)を施行.左前下行枝 #6 100%,右冠動脈 #1‑2 90%を認め,引き続き #6 に PCI 施行,

その後の除細動で洞調律へ復帰した.#1‑2 にも PCI を施行し TIMI 3 となったが左室拡張末期圧 20 mmHg と 高値のため左室ベント目的に IMEPLLA 2.5 を挿入した.CCU 入室時脈拍触知せず,胸部 X 線で肺うっ血あ り,心エコーで大動脈弁の開放を認めず,高度のびまん性左室壁運動低下(EF 10%)を認めた.低用量の静注 強心薬も併用開始し第 2 病日 ECMO を離脱した.CPK は最高 17737 IUL,CK‑MB 702 ngmL まで上昇した が,左室壁運動の改善を認め,第 5 病日 IMPELLA を抜去,第 6 病日人工呼吸器と静注強心薬を離脱した.第 14 病日の心エコーでは EF 47%に改善を認め,神経学的後遺症なく第 31 病日に独歩退院し,退院 1 カ月後に 就労復帰した.本例は ECMO による全身循環の維持,PCI による冠血行再建と IMPELLA による左室減負荷に より心機能が回復し救命し得たと考えられた.

《Abstract》

(2018. 8. 1原稿受領;2018. 10. 2採用)

● 左室ベント

● PCPS

● 心原性ショック

● 補助循環

● 急性心筋梗塞 Key words

はじめに

 心停止患者に

ECMO

(Extracorporeal membrane

oxygenation)を挿入する心肺蘇生 cardiopulmonary resuscitation

(CPR)を体外循環式心肺蘇生

E︲CPR

(ECMO to support CPR)と呼ぶ.米国では

₂₀₀₀

日本循環器学会 第136 北陸地方会 推薦演題

( )

症 例

(2)

から心肺蘇生に

ECMO

を導入する例(E︲CPR)が増 え,救命率が改善したと報告されている(成人で生存 率

₂₇%)

₁).わが国では

VA︲ECMO

は経皮的心肺補 助 装 置(percutaneous cardiopulmonary support;

PCPS)と呼称することが多い.PCPS

研究会の報告 によると,わが国における

PCPS

装着症例の内訳 は,多い領域から順に急性心肺不全

₄₃%,救命領域

₃₁%,開心術後 ₁₃%,となっており, ₂₀₁₅

年度の救 命率は

₄₄. ₆%

(離脱

₄₂. ₆%,補助人工心臓 VAD

へ 移行

₂. ₀%)である

₂)

 今回我々は難治性

VF

で心肺停止患者に

VA︲EC- MO

IMPELLA ₂. ₅

を導入し救命した

例を経験 した.

IMPELLA

はわが国では

₂₀₁₇

年秋より保険償 還された経皮的

VAD,カテーテル VAD

であるが,

まだ使用経験が少なくわが国における適応疾患,使 用状況および予後は明らかでない.ECMO+IM-

PELLA

を導入後の心機能,血行動態の推移,臨床

経過を含めて報告する.

症例

 症例:₅₈歳,男性.

 主訴:心窩部痛,心肺停止.

 既往歴:₄₈歳時 本態性血小板増多症(無投薬),

高尿酸血症.

 内服歴:アロプリノール

₁₀₀ mg.

 嗜好歴:飲酒 焼酎

₂︲₃

合/日×₃₃年,喫煙 ₂₀本/

日×数年.

 家族歴:特記事項なし.

 現病歴:₂₀₁₈年某月初旬,胸部違和感を自覚し た.₂日後

₂₁

時入浴後から心窩部痛を自覚し,冷 汗・嘔吐・下痢も出現したため家族が救急要請した.

₂₂

₂₈

分 救 急 隊 接 触 時

JCS ₀, 血 圧 ₁₆₅/

₇₄ mmHg,脈拍 ₈₆

回/分であったが,₆分後に救急 車内で心室細動(VF)となり心肺蘇生が開始された.

AED

による除細動(DC)を計

回施行されたが

VF

停止せず,心肺蘇生が継続され,当院救急部(ER)へ 救急搬送された.ERにて気管挿管施行し,アドレ ナリン

₁ mg

回およびアミオダロン

₁₅₀ mg

与,

₁₅₀ J

₂₀₀ J

で電気的除細動を試みられるも自 己心拍再開が得られず,VA︲ECMO挿入および

VF

の精査・加療目的に当科へ緊急入院した.

 現症:身長

₁₇₄ cm,体重 ₆₅ kg,BSA ₁. ₇₈ m

BMI ₂₁. ₅, JCS ₃₀₀,血圧・脈拍・SpO

測定不可,

頸静脈怒張なし,肺野にラ音聴取せず,心音聴取さ れず,腹部は平坦,軟,下腿浮腫なし.

 入院時検査所見:WBCの上昇を認めるも,CPK の上昇は認めなかった.トロポニン

I

の上昇と

D

ダ イ マ ー の 上 昇 を 認 め, 静 脈 血 液 ガ ス で は

Lac

₉. ₁ mmol/L

と 上 昇 を 認 め た.NT︲pro BNPは

₁₀₉ pg/mL

とわずかに上昇を認めた.

 血液検査所見:(血算)

WBC ₁₄₅₉₀ / μ L, RBC ₄₈₉

×₁₀

μ L, Hb ₁₅. ₀ g/dL, Plt ₂₂. ₁×₁₀

μ L.(生化

学)

BUN ₁₅ mg

dL, Cr ₁. ₁₈ mg

dL, T︲Bil ₀. ₄ mg

dL, AST ₄₂ IU

L, ALT ₃₀ IU

L, LDH ₃₂₃ IU

L,

CPK ₁₄₂ IU

L,CK︲MB ₇. ₇ ng

mL,ALP ₁₉₁ IU

L, γ ︲GTP ₄₁ IU

L, UA ₆. ₁ mg

dL, CRP ₀. ₁₁ mg

dL,Na ₁₄₃ mEq

L,K ₅. ₄ mEq

L,Cl ₁₀₄ mEq

L,TG ₁₂₀ mg/dL,T︲Cho ₂₂₁ mg/dL,LDL︲C

₁₃₈ mg/dL,HDL︲C ₄₅ mg/dL,Glu ₁₈₈ mg/dL,

HbA₁c ₅. ₅%,NT︲proBNP ₁₀₉ pg/mL,心筋トロ

ポ ニ ン

I ₇₅₅. ₅ pg/mL.( 凝 固 ) PT︲INR ₀. ₉₀,

APTT ₂₅. ₀

秒未満,Dダイマー ₁₃. ₃ µg/mL.(静 脈血液ガス分析(バッグバルブマスク換気下))

pH

₇. ₁₅₇, pCO

₇₀. ₆ mmHg, pO

₁₁. ₆ mmHg, HCO

₂₄. ₀ mmol

L,AG ₉. ₆ mmol

L,Lac ₉. ₁ mmol

L.

 経過:右大腿動静脈より

VA︲ECMO

(Terumo社 製,CAPIOX®,脱血管

₂₁Fr,送血管 ₁₆. ₅Fr)を挿

入した.心臓マッサージの継続時間は

₆₅

分であっ た.ECMO確立時の動脈血ガスは

pH ₆. ₈₈₇,pCO

₅₉. ₉ mmHg, pO

₁₈₁ mmHg, HCO

₈. ₆ mmol/L,

AG ₁₆. ₆ mmol/L,Lac ₁₅ mmol/L

と 代 謝 性 ア シ ドーシスの進行による高度のアシデミアと

Lac

の さらなる上昇を認めた.炭酸水素ナトリウムおよび アミオダロン

₁₅₀ mg

を再度投与し緊急冠動脈造影

(CAG)施行,左前下行枝(LAD)

#₆ ₁₀₀%,右冠動脈

(RCA)

#₁︲₂

に高度狭窄

₉₀%を認めた.引き続き

(3)

LAD

PCI

を施行し,薬剤溶出性ステント

Xience Sierra ₃. ₀×₃₈ mm

(Abbott社製)を留置した.

LAD

PCI

後の除細動で洞調律へ復帰し,動脈血ガスも

pH ₇. ₂₆₉,pCO

₄₅. ₁ mmHg,pO

₂₃₁ mmHg,

HCO

₂₀. ₀ mmol/L, Lac ₁₃. ₅ mmol/L

とアシドー シスの改善,

Lac

低下が確認された.その後

RCA

に も

PCI

を施行し

Xience Sierra ₃. ₀×₃₈ mm

を留置 した(図 1).LAD,

RCA

ともに

TIMI ₃

が得られた が,左室拡張末期圧(LVEDP)

₂₀ mmHg

と高値を認 めた.長時間の

VF

と心臓マッサージによる心筋傷 害および

VA︲ECMO

による後負荷増大が懸念され たため,左室の減負荷をはかり左大腿動脈より

IM- PELLA ₂. ₅

(Abiomed社製)を挿入した.

 CCU入室時,脈圧が消失しており血圧は動脈圧ラ インから平均血圧のみ測定が可能であった.心拍数

₁₀₀ bpm,胸部 X

線で肺うっ血を認め,心電図は正 常洞調律で

V

₂︲₃

R

波減高を認めた(図 2).心エ

コーでは大動脈弁の開放なく,左室は高度のびまん 性 壁 運 動 低 下(EF ₁₀%)を 認 め た. 平 均 血 圧 は

ECMO

の回転数に依存しており,回転数および補助 流量を上げると血圧は上がり,回転数および補助流 量を下げると血圧も低下した.大動脈弁の開放がな

いため

VA︲ECMO

による後負荷増大を懸念し,

ECMO

の回転数を減じるも,血圧が低下したため,

輸液負荷を行い前負荷の増加をはかった.しかし体 血圧上昇および大動脈弁の開放は得られず,肺動脈 圧(PAP)の上昇が認められ,胸部

X

線で肺うっ血も 認められたため輸液負荷を中止した.CCU入室時

Lac ₄. ₁ mmol/L

といまだ高値であったため,VA︲

ECMO ₂. ₀ L/min

を維持しつつ静注強心薬(ドブタ ミン

₂. ₅ μ g/kg/min,ミルリノン ₀. ₂ μ g/kg/min)

の投与を開始した.以後脈圧がでてくるようになり

Lac

も低下した(図 3).肺うっ血の解除をはかり,

フ ロ セ ミ ド

₁₀ mg

静 注 し

ECMO

の 補 助 流 量 を 図 1 CAG および PCI

CAGLAD #₆₁₀₀%閉塞,RCA #₁︲₂に高度狭窄₉₀%を認め,同 部位にそれぞれPCIを施行した.

LAD #6 100%

RCA #1‑2 90%狭窄

(4)

図 2 CCU 入室時所見

A:胸部X線.肺うっ血を認めた.左室内にIMPELLA留置あり.

B:心電図.正常洞調律でHR ₉₅ bpm,前胸部誘導でR波減高を認めた.

V6

aVF

aVL

aVR

III II I

V5

V4

V3

V2

V1

A B

図 3 CCU 入室後経過 1

心エコーで自己大動脈弁の開放を認めず,胸部X線で肺うっ血とLac ₄. ₁ mmol/

Lと高値も認められたたため,ECMO補助流量を₂. ₀ L/min,IMPELLA₂. ₅

P︲₈₂. ₀ L/minで補助し,ミルリノン,ドブタミン持続静注を開始した.以後

体血圧の脈圧がでてくるようになり,COの上昇,dPAPの低下,Lacの低下が 得られ,第病日目にECMOを離脱した.

(mmol/L)

dPAP CO

Lac

(mmHg)

(時間)

(L/min)

2.2

3.2

0.7 5.0 4.1

2L/min 1.5L/min フロセミド10mg ドブタミン

ミルリノン

P‑8(2.0L/min)

0.25μg/kg/min g/kg/min 0.2

2.5

IMPELLA2.5 VA‑ECMO

6 21

0

4 8 12 16 24 28 32 36 40

5 4 3 2 1

25

0 5 10 15 15

20

(5)

₁. ₅ L

min

に減じたところ,

Lac ₃. ₂ mmol

L

と再上 昇を認めたため,ドブタミン,ミルリノンを漸増し た(ドブタミン

₃ μ g

kg

min,ミルリノン ₀. ₂₅ μ g

kg

min).その後は心拍出量 CO

の上昇,肺動脈拡 張期圧

dPAP

の低下,Lacの低下が得られ,第

病 日に

ECMO

を離脱した.

CPK

は最高

₁₇₇₃₇ IU/L,

CK︲MB ₇₀₂ ng/mL

まで上昇したが,

Cre, T︲Bil

と もに

₂ mg/dL

を超えることなく肺うっ血も徐々に 改善した.心エコー上,左室壁運動の改善傾向を認 め,第

病日

IMPELLA

を抜去,第

病日に人工呼 吸器を離脱し(図 4),第

病日に静注強心薬を終了

した.エナラプリルとカルベジロールを導入し,第

₁₃

病日に

CCU

を退室,歩行リハビリを開始した.

₁₄

病日の心エコーでは

EF ₄₇%

(modified︲Simp-

son

法)と左室収縮能の改善を認めた.カルベジロー ルを

₁₅ mg/日まで増量し,神経学的後遺症なく第

₃₁

病日に独歩退院した.退院

カ月後の心エコーで は

EF ₅₆%

(modified︲Simpson法)とさらなる収縮 能の改善を認め,就労復帰した.

考察

 本例は急性心筋梗塞

AMI

による

VF

で,救急隊 図 4 CCU 入室後経過 2

Cre,T︲Bilとも₂ mg/dLを超えることはなく肺うっ血も徐々に改善した.心エコー上も左室壁運動の改善を認め,第

病日ミルリノン終了,第病日IMPELLA₂. ₅を抜去,第病日に人工呼吸器を離脱した.

(mmHg)

2L/min 1L

P‑8(2.0L) 7 6 5 4 3 2 off

ドブタミン

抜管 ミルリノン

ニトログ リセリン

ニトログ

リセリン カルペリチド

(病日)

IMPELLA

NTproBNP

sBP

Cre T‑Bil Lac

dBP mBP

mPAP ECMO

150

100

202 1399 710 399 501

50

0

15 23 20 16 16 14

2 1.5 1

15 10 5 0

1 2 3 4 5 6

0.5 0

(mmol/L)

(pg/mL)

(mg/dL)

0.4 1.18

9.8

3.2

0.9 1.5 1.9

1.72 1.56

1 0.8 1.22

0.7 1.11

1.1 0.2 0.25μg/kg/min

0.008μg/kg/min

2.5 g/kg/min 2 1

(6)

および救急部医師らにより絶え間ない心肺蘇生が継 続され,気管挿管およびアミオダロンを投与するも 自己心拍が再開しなかった.

VA︲ECMO

の確立まで 心臓マッサージの継続時間は計

₆₅

分間であったが,

血管撮影室にて瞳孔散大なく対光反射あり.時折四 肢も動かしていたため有効な心臓マッサージが継続 されていたと考えられた.来院時呼吸停止による呼 吸性アシドーシスを認め,その後心停止による代謝 性アシドーシスも合併し,

ECMO

確立時は高度のア シドーシスとなっていたが,遠心ポンプと人工肺に よる呼吸・循環補助によりアシドーシスは改善し

Lac

も低下傾向となった.引き続き

VF

の原因精 査・加療目的に

CAG

を施行し,AMIの責任病変で ある

#₆

PCI

を施行した.心原性ショックを呈し た多枝病変

AMI

患者において,責任病変以外の病 変に対し同時に

PCI

を施行すべきかに関しては,予 後を改善しないとの報告もあるが₃),本例は

ECMO

挿入によりアクセスサイトの制限があり,後日

PCI

とした場合アプローチ部位が制限されること,

RCA

の高度狭窄は複雑病変ではなかったこと,難治性

VF

で完全血行再建が望ましいと考え,引き続き

#₁︲₂

PCI

を施行した.LAD,RCAともに

TIMI

で終了したが,

LVEDP ₂₀ mmHg

と高値を認めた ため,IMPELLA ₂. ₅を挿入した.

 VA︲ECMO(PCPS)は経皮的に

₃. ₀ L/min

以上の 流量補助と人工肺による酸素化の補助が可能で,低 酸素血症を伴う心停止や急性心肺不全例によい適応 となるが,後負荷を増大させるため₄, ₅),肺うっ血を 有する例や低左心機能例では,通常

IABP

を併用し ている.それでも肺うっ血の改善が乏しければ持続 血液透析濾過法(CHDF)を併用し,ECMO・IABP を離脱後も

CHDF

を含めた長期の集中治療管理を 継続し,救命に至る例が多い₆).CHDFを併用して も肺うっ血が回復しない例,臓器障害が進行する例,

自己心機能が回復せず

PCPS

離脱困難例は,臓器障 害が不可逆的となる前に

VAD

へ移行する必要があ る.PCPS装着例は

Intermacs Profile ₁

で体外設置 型

VAD

の適応となるが,

VAD

装着により自己心機

能が回復し

VAD

離脱,すなわち

BTR

(Bridge to

recovery)とならなければ,心臓移植の適応を取得

後植込型補助人工心臓にコンバートする以外に,患 者は救命されても退院できる道がない.しかしなが ら

PCPS

補助の段階で

BTR

が得られるかどうか,

患者が心移植適応であるかどうかは判断が困難であ るため,VADへの移行が躊躇され救命できない例 も存在する.

 IABPは冠血流を増加させ,後負荷を軽減するが,

補助流量は

₀. ₃︲₀. ₅ L/min

と少なく₄),AMIにおけ る心原性ショックでは予後を改善しなかったと報告 されている(IABP︲SHOCKⅡ trial)₇).わが国におけ る急性・慢性心不全診療ガイドライン(₂₀₁₇年改訂 版)でも心原性ショックにおける

IABP

のルーチン 使用はクラスⅢとなっている₈).本例のように

Lac

の上昇,アシドーシスの進行まできたした例に

IABP

のみ使用しても臓器障害の回復は得られず救 命には至らないと予想される.

 ₂₀₁₇年秋よりわが国でも心原性ショックに対し 適応となった

IMPELLA

は経皮的

VAD

で,IMPE-

LA ₂. ₅

であれば最大

₂. ₅ L/min, IMPELA ₅. ₀

であ れば最大

₅ L/min

の流量補助が可能で,かつ前負荷 を強力に下げ心筋酸素需要を減らし,冠血流を増加

させる₄, ₅).近年難治性心原性ショックに対し,VA︲

ECMO

VA︲ECMO+IMPELLA

(ECPELLA) を 適応し予後を比較したところ,ECPELLAは

₃₀

日 予後,₁年予後とも有意によかったとの報告があ る₉)

ECMO

による後負荷増大に対し

IMPELLA

を 併用することで,

ECMO

単独に比べ左室は減負荷さ れ,予後の改善につながった可能性がある.本例も

ECMO

挿入後,LVEDP高値を認めたため,左室減 負荷(ベント)目的に

IMPELLA ₂. ₅

を挿入した.

CCU

入室時の心エコーで高度の左室壁運動低下を 認め,

CPK

は最高

₁₇₇₃₇ IU/L, CK︲MB ₇₀₂ ng/mL

まで上昇した.CK︲MBの最高値が高値の割に,本 例は第

₁₄

病日には

EF ₄₇%まで回復しており, PCI

による冠血行再建に加えて

IMPELLA

による左室 減負荷効果が心機能の回復に寄与した可能性があ

(7)

る.また本例は

ECMO

導入時

Lac ₁₅ mmol/L

まで 上昇しており,最大

CPK

値も高値で入院時循環不 全の程度は高度であったが,ECMO+IMPELLA

₂. ₅+

低用量静注強心薬により

Lac

は正常化し,

CHDF

を要することなく第

病日に抜管,第

₃₁

病 日に独歩退院という極めて良好な転帰をとった.難 治性心原性ショック例に

ECPELLA

が有用である 可能性がある.

 しかしながら,過去の無作為比較対象試験(RCT)

では

IMPELLA

IABP

に比較して

AMI

による心 原性ショックの予後を改善させなかった(ISAR︲

SHOCK trial,IMPLESS in Severe SHOCK Tri-

al)

₁₀, ₁₁).一方

USpella Registry

では心原性ショック

を合併した

AMI

において,PCIの前に

IMPELLA

₂. ₅

を挿入した群で予後の改善が示されており,再 灌流より先に左室を減負荷することで予後改善の可 能性が示唆されている₁₂).ISAR︲SHOCK trialでは

primary PCI

の後に

IMPELLA ₂. ₅, IABP

ともに挿 入されており,

IMPELLA

の左室減負荷効果が

AMI

発症早期に得られていない.IMPELLA ₂. ₅群で

IABP

群より心係数(CI)の増加,拡張期血圧の上昇,

Lac

の低下など血行動態の改善において優位性は示 されており,

PCI

の前に

IMPELLA

を挿入していれ ば異なった結果が得られた可能性もある.本例も

PCI

の後に

IMPELLA

を挿入したが,第

病日から

病日の間,VA︲ECMO ₂. ₀ L/min+IMPELLA₂. ₅

₂. ₀ L

min

の計

₄. ₀ L

min

の流量補助と人工肺によ るアシドーシス是正を必要とした.対象患者が

IM- PELLA ₂. ₅

単独では臓器障害の改善が得られない 重症であったため,予後の改善が得られなかった可 能性もある.同様に,IMPLESS in Severe SHOCK

Trial

の対象患者は全例で心停止の既往があり,入院 時

Lac

IMPELLA CP

群 で

₇. ₅±₃. ₂ mmol/L,

IABP

群で

₈. ₉±₆. ₆ mmol/L

と高値で,入院時

pH

IMPELLA CP

群で

₇. ₁₄±₀. ₁₄,IABP

群で

₇. ₁₇

±₀. ₁₇

であった.低体温療法が

₇︲₈

割の患者で施行 され,腎代替療法が約

割の患者で施行されている 極めて重症な患者である.入院時アシデミアを合併

しており,人工肺を有する

ECMO

の併用が望まし い患者も含まれていたため

IMPELLA

単独で予後 の改善が示せなかった可能性がある.

 本例は,第

病日

ECMO

の補助流量を

₁. ₅ L

min

に減じたところ,Lac ₃. ₂ mmol/

L

と再上昇を認め た際,IMPELLA ₅. ₀に変更するか検討したが,

IMPELLA ₂. ₅

の 最 大 補 助 レ ベ ル

P︲₈

( 補 助 流 量

₂. ₀ L/min)でも時折サクションアラームを認めて

いたため

₅. ₀

へアップグレードせず,静注強心薬の 増量にて対応した.サクションアラームの原因とし ては,心エコーで

IMPELLA

の位置異常は認めず,

ECMO

による右房脱血の影響もあり左室径が大き くないため吸入部が容易に左室壁にあたりやすいた めと考えられた.ECPELLAの管理にあたっては

ECMO

の補助流量と

IMPELLA

の補助レベルの設 定,体液量と静注強心薬の併用をどうするかなど,

補助循環の管理に注意を要し,動脈圧ラインと

Swan︲Ganz

カテーテルによるモニター,心エコーに よる左室径および壁運動の観察,IMPELLAの位置 の観察が重要と考えられた.今後さらなる症例の蓄 積,経験を積み重ねて検討が必要である.

文 献

₁) Thiagarajan RR, Brogan TV, Scheurer MA, et al:Ex- tracorporeal membrane oxygenation to support cardio- pulmonary resuscitation in adults. Ann Thorac Surg

₂₀₀₉;87:₇₇₈︲₇₈₅

₂) PCPS研究会.pdf:http://www₂.convention.co.jp/pcps/

pdf/enquete.pdf(cited ₂₀₁₉ Apr ₂₆)

₃) Thiele H, Akin I, Sandri M, et al:PCI Strategies in Patients with Acute Myocardial Infarction and Cardio- genic Shock. N Engl J Med ₂₀₁₇;377:₂₄₁₉︲₂₄₃₂ ₄) Atkinson TM, Ohman EM, O'Neill WW, et al:A Practi-

cal Approach to Mechanical Circulatory Support in Patients Undergoing Percutaneous Coronary Interven- tion:An Interventional Perspective. JACC Cardiovasc Interv ₂₀₁₆;9:₈₇₁︲₈₈₃

₅) Rihal CS, Naidu SS, Givertz MM, et al:₂₀₁₅ SCAI/ ACC/HFSA/STS Clinical Expert Consensus State- ment on the Use of Percutaneous Mechanical Circula- tory Support Devices in Cardiovascular Care(En- dorsed by the American Heart Association, the Cardiological Society of India, and Sociedad Latino

(8)

Americana de Cardiologia Intervencion;Affirmation of Value by the Canadian Association of Interventional Cardiology︲Association Canadienne de Cardiologie d'intervention). J Card Fail ₂₀₁₅;21:₄₉₉︲₅₁₈

₆)関 敦,桃原 哲:急性期にPCIを行いIABP,PCPS を併用し救命し得たKillip IV型の急性心筋梗塞の 例.ICUCCU ₂₀₀₈;32:₉₁₃︲₉₁₈

₇) Thiele H, Zeymer U, Neumann FJ, et al:Intra︲aortic balloon counterpulsation in acute myocardial infarction complicated by cardiogenic shock(IABP︲SHOCK II):

final ₁₂ month results of a randomised, open︲label trial.

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₈)筒井裕之:急性・慢性心不全診療ガイドライン₂₀₁₇  改訂のポイント.第₈₂回日本循環器学会学術集会抄録 ₂₀₁₈.LS₄₅

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参照

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