各種がん
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肝か ん 細さ い 胞ぼ う がん
受診から診断、治療、経過観察への流れ
がんの診療の流れ
この図は、がんの「受診」から「経過観察」への流れです。
大まかでも、流れがみえると心にゆとりが生まれます。
ゆとりは、医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう。
あなたらしく過ごすためにお役立てください。
「体調がおかしいな」と思ったまま、放っておかないで ください。なるべく早く受診しましょう。
受診のきっかけや、気になっていること、症状など、
何でも担当医に伝えてください。メモをしておくと 整理できます。いくつかの検査の予定や次の診察日 が決まります。
治療が始まります。気が付いたことは担当医や看護 師、薬剤師に話してください。困ったことやつらいこ と、小さなことでも構いません。よい解決方法が見つ かるかもしれません。
がんや体の状態に合わせて、担当医が治療方針を説明 します。ひとりで悩まずに、担当医と家族、周りの方 と話し合ってください。あなたの希望に合った方法を 見つけましょう。
担当医から検査結果や診断について説明があります。
検査や診断についてよく理解しておくことは、治療法 を選択する際に大切です。理解できないことは、繰り 返し質問しましょう。検査が続くことや結果が出るま で時間がかかることもあります。
がんの疑い
受 診
検査・診断
治療法の選択
治 療
目 次
がんの診療の流れ
1. がんと言われたあなたの心に起こること ��������������������� 1
2. 基礎知識 ������������������������������������������������������������� 3
3. 検査 ������������������������������������������������������������������� 6
4. 治療 ������������������������������������������������������������������� 8
1
病期と治療の選択������������������������������������������� 8
2
手術(外科治療)�������������������������������������������� 15
3
穿刺局所療法������������������������������������������������ 17
4
肝動脈化学塞栓療法、肝動脈塞栓療法、肝動注化学療法��� 18
5
薬物療法������������������������������������������������������ 20
6
放射線治療��������������������������������������������������� 21
7
転移�再発��������������������������������������������������� 22
5. 療養 ������������������������������������������������������������������ 24
診断や治療の方針に納得できましたか?������������������������ 25
セカンドオピニオンとは?����������������������������������������� 25
メモ/受診の前後のチェックリスト������������������������������ 27
がんという診断は誰にとってもよい知らせではありません。
ひどくショックを受けて、「何かの間違いではないか」「何で 自分が」などと考えるのは自然な感情です。しばらくは、不安 や落ち込みの強い状態が続くかもしれません。眠れなかった り、食欲がなかったり、集中力が低下する人もいます。そんなと きには、無理にがんばったり、平静を装ったりする必要はあり ません。
時間がたつにつれて、「つらいけれども何とか治療を受けて いこう」「がんになったのは仕方ない、これからするべきことを 考えてみよう」など、見通しを立てて前向きな気持ちになって いきます。そのような気持ちになれたらまずは次の 2 つを心が けてみてはいかがでしょうか。
あなたに心がけてほしいこと
■ 情報を集めましょう
まず、自分の病気についてよく知ることです。病気によっては まだわかっていないこともありますが、担当医は最大の情報源 です。担当医と話すときには、あなたが信頼する人にも同席し てもらうといいでしょう。わからないことは遠慮なく質問して ください。
1
. がんと言われたあなたの心に起こること
また、インターネットなどで集めた情報が正しいかどうかを、
担当医に確認することも大切です。他の病院でセカンドオピニ オンを受けることも可能です。
「知識は力なり」。正しい知識は考えをまとめるときに役に 立ちます。
※参考 P25「セカンドオピニオンとは?」
■ 病気に対する心構えを決めましょう
がんに対する心構えは、積極的に治療に向き合う人、治るとい う固い信念をもって臨む人、なるようにしかならないと受け止 める人など人によりいろいろです。どれがよいということはな く、その人なりの心構えでよいのです。そのためにも、自分の病 気のことを正しく把握することが大切です。病状や治療方針、今 後の見通しなどについて担当医から十分に説明を受け、納得し た上で、あなたなりの向き合い方を探していきましょう。
あなたを支える担当医や家族に自分の気持ちを伝え、率直に 話し合うことが、信頼関係を強いものにし、しっかりと支え合う ことにつながります。
情報をどう集めたらいいか、病気に対してどう心構えを決め たらいいのかわからない、そんなときには、巻末にある「がん相 談支援センター」を利用するのも1つの方法です。困ったときに はぜひご活用ください。
1
がんと言われたあなたの心に起こること
肝臓は腹部の右上にあり、成人で800 ~ 1,200gと体内最大 の臓器です(図1)。肝臓の主な役割は、食事から吸収した栄養分 を取り込んで体に必要な成分に変えることや、体内でつくられ た有害物質や体外から摂取された有害物質を解毒し、排出する ことです。また、脂肪の消化を助ける胆汁もつくります。胆汁 は、胆管を通して消化管に送られます。
2
. 基礎知識肝臓について
1
下大静脈 大動脈
膵臓 胆管 門脈
胆のう
肝臓
すいぞう
図1.肝臓と周辺の臓器の構造
2
基礎知識
肝細胞がんは、肝臓の細胞ががん化して悪性腫瘍になったも のです。同じ肝臓にできたがんでも、肝臓の中を通る胆管がが ん化したものは「肝内胆管がん(胆管細胞がん)」と呼ばれてい ます。肝細胞がんと肝内胆管がんは、治療法が異なることから 区別されています。
ここでは、肝細胞がんについて解説します。なお、一般的には
「肝がん」というと「肝細胞がん」のことを指します。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、炎症やがんがあっても初期に は自覚症状がほとんどありません。医療機関での定期的な検診 や、ほかの病気の検査のときなどに、たまたま肝細胞がんが発見 されることも少なくありません。健康診断などで肝機能の異常 や肝炎ウイルスの感染などを指摘された際には、受診するよう にしましょう。
肝細胞がんが進行した場合は、腹部のしこり・圧迫感、痛みな どを訴える人もいます。
肝細胞および肝内胆管のがんと新たに診断される人数は、1 年間に10万人あたり32.2人で、男性に多い傾向があります。
肝細胞がんとは
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3
症状4
統計肝細胞がんの発生する主な要因は、B型肝炎ウイルスあるい はC型肝炎ウイルスの持続感染(長期間、体内にウイルスが留ま る感染)です。肝炎ウイルスが体内にとどまることによって、肝 細胞の炎症と再生が長期にわたって繰り返され、それに伴い遺 伝子の突然変異が積み重なり、がんになると考えられています。
ウイルス感染以外の要因としては、多量飲酒、喫煙、食事性の アフラトキシン(カビから発生する毒素の一種)、肥満、糖尿病、
男性であることなどが知られています。最近では、肝炎ウイル ス感染を伴わない肝細胞がんが増加してきているという報告も あり、その主な要因として、脂肪肝が注目されています。
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発生要因2
基礎知識3
検査
3
. 検査肝細胞がんの検査は、超音波(エコー)検査や、CT検査、MRI検 査の画像検査と、腫瘍マーカー検査を組み合わせて行います。ま た、肝細胞がんとその他のがん、悪性か良性かの区別をするため に針生検を行います。治療方針の検討には、血液検査で肝機能を 調べたり、肝硬変の程度を評価するために内視鏡検査を行うこと もあります。
検査の種類
2
体の表面にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超 音波の様子を画像化して観察する検査です。検査機器があれば 外来でも簡便に行うことができます。がんの大きさや個数、がん と血管の位置、がんの広がり、肝臓の形や状態、腹水の有無を調べ ます。ただし、がんの場所によっては、検査が困難な場合や、皮下 脂肪が厚い場合は、十分な検査ができないことがあります。
患者さんの状態や、がんのある部位によっては、血管から造影 剤を注射して検査を行うこともあります(造影超音波検査)。
肝細胞がんの検査
1
1
)超音波(エコー)検査CT検査では、X線を使って体の内部を描き出し、治療前に、が んの性質や分布、転移や周囲の臓器への広がりを調べます。肝細 胞がんを調べる場合は、造影剤を用いながらCT検査を行うのが 一般的です。より詳しく調べるため、造影剤を注射したあと、何 回かタイミングをずらして撮影することがあります。
MRI検査は、磁気を使った検査です。必要に応じてCT検査と 組み合わせて、あるいは単独で行います。MRI検査でも、造影剤 を使用することがあります。
腫瘍マーカーとは、体のどこかにがんが潜んでいると異常高 値を示す血液検査の項目で、がんの種類に応じて多くの種類が あります。
肝細胞がんで保険が適用される腫瘍マーカーは、AFP(アルフ ァ・フェトプロテイン)やPIVKA-II(ピブカ・ツー)、AFP-L3分 画(AFPレクチン分画)です。腫瘍が小さい場合の診断では、2種 類以上の腫瘍マーカーを測定することが推奨されています。
ただし、肝細胞がんでもこれらのマーカーがいずれも陰性の ことがあります。また、がんではないが肝炎や肝硬変がある場 合、あるいは肝細胞がん以外のがんがある場合で陽性になるこ ともあるので、画像診断も同時に行います。
2
)CT検査、MRI検査3
)腫瘍マーカー検査3
検査4
治療
治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討しま す。がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。
病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。
肝細胞がんの病期は、がんの大きさ、個数、がんが肝臓内にとど まっているか、ほかの臓器まで広がっているか(転移)によって 決まります。
病期の分類にはいくつかの種類があり、多くの医師は、日本 の「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約(日本肝癌研究会編)」
(表 1)、もしくは、国際的に使われている「TNM悪性腫瘍の分類
(UICC)」(表2)を用いて説明をしています。
分類法によって、同じステージでも内容が異なることもある ため、注意が必要です。
4
.治療病期と治療の選択
1
1
)病期(ステージ)表1.肝細胞がんの病期分類(日本肝癌研究会)
I
VB期T1 T2 T3 T4
①腫瘍が1つに限られる
②腫瘍の大きさが2㎝以下
③脈管(門脈、静脈、胆管)
に広がっていない
すべて合致①②③ 2項目合致 1項目合致 すべて合致 せず
リンパ節・遠隔臓器に転
移がない I 期 II 期 III 期 IVA期
リンパ節転移はあるが、
遠隔転移はない 遠隔転移がある
I
VA期日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版(2015年)」(金原出版)
より作成
4
治療
領域リンパ節N0 *2
転移がない
領域リンパ節N1 転移がある
遠隔転移がM1 ある
T1a
血管侵襲*1の有無 に関係なく、最大径 が2cm以下の腫瘍 が1つ
IA
IVA IVB T1b 血管侵襲を伴わず、
最大径が2cmを超
える腫瘍が1つ IB
T2
血管侵襲を伴い最 大径が2cmを超え る腫瘍が1つ、また は最大径が5cm以 下 の 腫 瘍 が2つ 以 上
II
T3 最大径が5cmを超 え る 腫 瘍 が2つ 以
上 IIIA
T4
門脈もしくは肝静 脈の大分枝に浸潤 する腫瘍、または胆 のう以外の隣接臓 器(横隔膜を含む)
に直接浸潤する腫 瘍、または臓側腹膜 を貫通する腫瘍
IIIB
* 1:血管内にがんが入り込むこと。
* 2: 肝細胞がんの領域リンパ節は、肝門部リンパ節、固有肝動脈に沿う肝臓リンパ 節、門脈に沿う門脈周囲リンパ節、下横隔リンパ節、および大静脈リンパ節で す。
UICC 日本委員会 TNM 委員会訳「TNM 悪性腫瘍の分類 第 8 版 日本語版(2017 年)」(金原出版)より作成
表2.肝細胞がんの病期分類(UICC第8版)
治療法を選択する際は、肝臓の障害の程度(肝予備能:肝臓の 機能がどのくらい保たれているか)も確認します。
肝障害度は、肝機能の状態によって、A、B、Cの3段階に分けら れます(表3)。また、肝硬変の程度を把握するために、Child- Pugh(チャイルド・ピュー)分類が用いられることもあります
(表4)。どちらの分類方法でも、AからCへと進むにつれて、肝障 害の程度は強まります。
2
)肝障害度、Child-Pugh分類表3.肝障害度
それぞれの項目別にA、B、Cのどの段階に当てはまるかを確認します。
⃝Cに当てはまる項目が2つ以上ある場合は肝障害度Cになります。
⃝ Cに当てはまる項目が1つ以下で、Bに当てはまる項目が2つ以上ある 場合は肝障害度Bになります。
⃝それ以外の場合は肝障害度Aになります。
項目 肝障害度 A B C
腹水 ない 治療効果
あり 治療効果 少ない 血清ビリルビン値(mg/dL) 2.0未満 2.0 ~ 3.0 3.0超
血清アルブミン値(g/dL) 3.5超 3.0 ~ 3.5 3.0未満
ICGR15(%) 15未満 15 ~ 40 40超
4
治療
表4.Child-Pugh分類
各項目のポイントを加算し、その合計点により分類します。
項目 ポイント 1点 2点 3点
脳症 ない 軽度 ときどき
昏睡
腹水 ない 少量 中等量
血清ビリルビン値(mg/dL) 2.0未満 2.0 ~ 3.0 3.0超
血清アルブミン値(g/dL) 3.5超 2.8 ~ 3.5 2.8未満
プロトロンビン活性値(%) 70超 40 ~ 70 40未満
Child-Pugh分類
A 5 ~ 6点
B 7 ~ 9点
C 10 ~ 15点 日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第 6 版(2015 年)」(金原出 版)より作成
肝細胞がんの治療は、肝切除、ラジオ波焼しょうしゃく灼療法(RFA)、肝動 脈化学塞そくせん栓療法(TACE)が中心です。また、肝臓の状態やがんの 進行具合によっては、分子標的薬による薬物療法や、肝移植、放射 線治療を選択します。
肝細胞がんの患者さんの多くは、がんと慢性肝疾患という2つ の病気を抱えているため、がんの病期(ステージ)だけでなく、肝 臓の障害の程度(Child-Pugh分類による評価)も考慮して治療 方法を選択します。
図2は、肝細胞がんに対する治療方法を示したものです。担当 医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
3
)治療の選択4
治療
*3:肝切除の場合は、肝障害度による評価を推奨
*4:腫瘍数が1個の場合、第一選択は肝切除、第二選択は焼灼療法
*5:Child-Pugh分類Aの場合
*6:年齢が65歳以下の場合
●
肝切除●
ラジオ波焼灼療法●
肝切除●
塞栓療法●
分子標的薬●
肝移植●
緩和ケア●
塞栓療法●
肝動注化学療法●
分子標的薬●
塞栓療法●
肝切除●
肝動注化学療法●
分子標的薬*4
*5
*6
日本肝臓学会編「肝癌診療ガイドライン2017年版」(金原出版),P.68より作成 図2.肝細胞がんの状態・肝障害度と治療
手術(外科治療)
2
手術を行うかどうかは、Child-Pugh分類がAまたはBで、肝 障害度に基づく肝機能の評価がよい場合、切除後に肝臓の量を どれだけ残せるかによって判断します。また、肝硬変の程度が Child-Pugh分類Cでは肝移植が勧められています。
1
)手術の種類(1)肝切除
がんとその周囲の肝臓の組織を手術によって取り除く治療です。
多くは、がんが肝臓にとどまっており、3個以下の場合に行い ます。がんの大きさには特に制限はなく、10cmを超えるような 巨大なものであっても、切除が可能な場合もあります。また、が んが門脈や静脈の血管、胆管へ広がっている場合でも、一部のが んでは肝切除を行うことがあります。
ただし、腹水がある場合は、肝切除後に肝臓が機能しなくなる
(肝不全)危険性が高く、通常は肝切除以外の治療を行います。
切除の術式は、がんのある場所や肝機能に応じて、小さい範囲 での切除から、複数の区域にわたる大きい範囲での切除までさ まざまです。腹腔鏡手術は、がんのある場所や術式によっては可 能ですが、実施できる状況は限られており、通常、多くは開腹で の手術が行われています。
肝切除後、通常1 ~ 2週間程度で退院できます。
4
治療
以下、(c)がんが複数なら3個以下で3cm以内、という基準(ミ ラノ基準)を満たす場合に行うことがあります。
日本では、主に近親者から肝臓の一部を提供してもらう「生体 肝移植」が行われています。
手術直後には、酸素マスク、痛み止めのための硬膜外麻酔カテ ーテルや、ドレーン(手術した場所から出る血液・体液を排出す る管)、尿道バルーンカテーテル(尿をためる管)が体につけられ ています。これらは、体の状態が改善するにしたがって、徐々に 外されていきます。ドレーンは、外せるようになるまで、通常、数 週間から1カ月程度かかります。また、創きずの痛みは、数カ月程度 で治まることがほとんどですが、痛みは和らげることができま すので、我慢せず担当医や看護師に伝えましょう。
3
)手術の合併症について肝臓の切除面から胆汁が漏れる胆たんじゅうろう汁漏、出血、肝不全などが起 こることがあります。胆汁漏はまれに再手術で治療することも ありますが、通常は、ドレーンをつけたままにすることで症状が 軽くなります。出血は輸血と再手術による止血が必要です。肝 不全は、肝臓がまったく機能しない状態のことで、手術を考慮す る時点で肝臓の機能に応じて十分な肝臓の量を残すようにして いますが、ごくまれに重篤な合併症である肝不全が起こること があります。
2
)手術直後の様子穿
せん
刺
し
3
局所療法体の外から針を刺し、局所的に治療を行う方法で、手術に比べ て体への負担の少ないことが特徴です。Child-Pugh分類のAま たはBのうち、がんの大きさが3cm以下、かつ、3個以下の場合 に行われることがあります。肝細胞がんの穿刺局所療法として 推奨されているのは、ラジオ波焼灼療法(RFA)です。
1
)ラジオ波焼灼療法(RFA)体の外から特殊な針をがんに直接刺し、通電してその針の先 端部分に高熱を発生させることで、局所的にがんを焼いて死滅 させる治療法です。治療の際は、腹部の局所での麻酔に加えて、
焼灼で生じる痛みに対して鎮痛剤を使用したり、静脈からの麻 酔を行います。焼灼時間は10 ~ 20分程度です。
発熱、腹痛、出血、腸管損傷、肝機能障害などの合併症が起こる こともあります。また、針を刺した場所に痛みややけどが起こる ことがあります。治療後は、数時間程度の安静が必要です。
2
)その他の療法従来からの穿刺局所療法として、経皮的エタノール注入
(PEI)、経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)があります。
CT画像で体の中を透かして見ながらカテーテルを入れて、標 的となるがんの治療を行います。塞栓療法には、肝動脈化学塞栓 療法(TACE)と肝動脈塞栓療法(TAE)があり、肝細胞がんでは TACEが主流になりつつあります。
Child-Pugh分類のAまたはBのうち、大きさが3cmを超えた 2 ~ 3個のがん、もしくは、大きさに関わらず4個以上のがんが ある場合に行われることがあります。がんの存在する範囲が広 い場合は、治療を複数回に分けて行います。また、塞栓療法は、ほ かの治療と併用して行われることがあります。
4
肝動脈化学塞栓療法、肝動脈塞栓療法、肝動注化学療法4
治療
日本肝臓学会 企画広報委員会編「肝臓病の理解のために 5. 肝がん(2015年)」,P.6
(図5 肝動脈化学塞栓療法の原理)より改変
図3.肝動脈塞栓療法(TAE)と肝動注化学療法(TAI)
●肝動注化学療法(TAI)
●肝動脈塞栓療法(TAE)
カテーテル
大腿部の付け根にある 動脈から肝動脈まで カテーテルを入れる がん
肝臓 塞栓物質を入れる
抗がん剤を投与する
1
)肝動脈化学塞栓療法(TACE)がんに栄養を運んでいる血管を人工的にふさいで、がんを“兵 糧攻め”にする治療法です。血管造影に用いたカテーテルの先端 を肝動脈まで進め、細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)と、肝 細胞がんに取り込まれやすい造影剤を混ぜて注入し、その後に塞 栓物質を注入する治療法です。肝動脈を詰まらせることでがん への血流を減らし、抗がん剤によりがん細胞の増殖を抑えます。
2
)肝動脈塞栓療法(TAE)肝動脈化学塞栓療法(TACE)と同様に、がんに栄養を運んで いる血管を人工的にふさいで、がんを“兵糧攻め”にする治療法 です。肝動脈塞栓療法(TAE)では、血管造影に用いたカテーテ ルから塞栓物質のみを注入します。肝動脈を詰まらせることで がんへの血流を減らします(図3右上)。
3
)肝動注化学療法(TAI)血管造影に用いたカテーテルから抗がん剤のみを注入する治 療法です(図3右下)。
● 副作用について
肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動脈塞栓療法(TAE)、肝動注化 学療法(TAI)の治療後に、発熱、吐き気、腹痛、食欲不振、肝機能障 害、胸痛などの副作用が起こることがあります。副作用の程度は、が
4
治療
肝細胞がんの薬物療法では、分子標的薬による治療(分子標的 治療)が標準治療です。肝切除や肝移植、穿刺局所療法、肝動脈化 学塞栓療法(TACE)が行えない進行性の肝細胞がんで、パフォ ーマンスステータスと肝臓の機能がともに良好な場合には、分 子標的治療を行います。
1
)分子標的治療1次治療では、分子標的薬であるソラフェニブまたはレンバチ ニブを用います。ソラフェニブによる治療後にがんが進行して しまった場合、副作用などの問題がなくChild-Pugh分類のAに 当てはまるときは、同じく分子標的薬である、レゴラフェニブを 2次治療として用いることがあります。なお、レンバチニブを1 次治療とした場合の2次治療については、まだ検討がなされてい る段階です。
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薬物療法● 副作用について
分子標的薬には、薬物ごとに固有の副作用があります。肝細胞がん の1次治療に用いられるソラフェニブでは、程度のごく軽い副作用も 含めると、ほとんどの患者さんで何らかの副作用がみられます。よく ある副作用は、手足の感覚が鈍くなったり過敏になったりする、手足 の腫れや痛み、皮疹、皮膚の表面がはがれおちる、下痢、食欲不振、高 血圧症、疲労、脱毛、悪心です。
中には白血球などの血球が減少するなどの重篤な副作用が起こる 場合もあるため、治療中に調子が悪くなった場合はすぐに担当医に 相談しましょう。自己判断はせず、治療薬の減量や休薬は、担当医の 指示に従ってください。
肝細胞がんの治療としては、まだ研究結果の蓄積が十分では なく、標準治療としては確立されていません。骨に転移したとき の疼とうつう痛緩和や、脳への転移に対する治療、血管(門脈、静脈)に広 がったがんに対する治療を目的に行われることがあります。
6
放射線治療転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別 の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発と は、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現す ることをいいます。
肝切除による治療後に再発する場合は、肝臓内での再発がほ とんどです。初回再発の90%以上が肝臓内での再発といわれま す。その要因としては、肝臓内の血管を介した肝内転移のほか、
肝切除後の残存肝からの新しい肝細胞がんの発生が考えられて います。
(1)肝臓以外の部位(肺、副腎、リンパ節、腹膜)に転移している場合 転移がみられる進行性の肝細胞がんに対しては、通常、分子標 的薬による治療を行います。
(2)脈管侵襲陽性の肝細胞がんの場合
脈管への広がりの程度によって、塞栓療法または肝切除を行 います。それらの治療を選択することが難しい場合は、肝動注化 学療法または分子標的薬による治療を行います。
7
転移�再発1
)がんが肝臓以外の部位に転移している場合の治療の選択4
治療
(3)骨に転移している場合
分子標的薬による治療や、必要に応じて、痛みの緩和を目的と した放射線治療を行います。
(4)脳に転移している場合
分子標的薬による治療や、必要に応じて、脳への放射線治療を 行います。
患者さんの状況や肝障害度に応じて、治療やその後のケアを 決めていきます。
(1)肝切除や局所療法による治療後に再発した場合
肝臓以外のほかの臓器への転移がない場合には、残っている 肝臓の量や、肝機能を考慮した上で、手術を含めた治療の中から 検討していきます。
(2)肝移植後に再発した場合
がんの状態や再発した部位、患者さんの状態によって異なり ますが、基本的には、通常の肝細胞がんに対する治療方針と同じ です。具体的には、外科的に切除するか、切除が難しい場合は、ラ ジオ波焼灼療法や塞栓療法、分子標的薬による薬物療法が行わ れることがあります。
2
)再発時の治療の選択4
治療治療後も定期的に通院し、体調の変化や再発の有無を確認し ます。
肝硬変と診断された方は、肝臓の別の場所に新しいがんが発 生することがしばしばあり、注意が必要です。再発の危険度が 高く、頻繁、かつ長期的な通院が必要となり、3 ~ 6 カ月ごとに 定期検査を実施します。定期検査では、肝機能や腫瘍マーカー を調べるための血液検査に加え、必要に応じて、超音波(エコ ー)検査や造影超音波検査、CT 検査、MRI 検査などの画像検査 を行います。また、PET 検査、骨シンチグラフィなどを行う場 合もあります。
自覚症状として、熱がなかなか下がらない、おなかが張って 苦しい、息苦しい感じが続く、疲れやすい、足がむくむ、食欲が ない、何となく足元がふらふらする、手指が震える、ぼうっとし たり眠りがちになったりする、などの症状が普段の状態と比べ て強いとき、あるいは急にひどくなったときは、担当医に連絡 して受診するようにしましょう。
5
. 療養1
経過観察5
療養
治療方法は、すべて担当医に任せたいという患者さんがいます。
一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという 患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではなく、
患者さん自身が満足できる方法が一番です。
まずは、病状を詳しく把握しましょう。
わからないことは、担当医 に何でも質問してみましょう。治療法は、病状によって異なります。医療者とうまくコミュニケーションをとりながら、自分に合った治療 法であることを確認してください。
診断や治療法を十分に納得した上で、治療を始めましょう。
担当医以外の医師の意見を聞くこともできます。これを「セ カンドオピニオンを聞く」といいます。ここでは、①診断の確 認、②治療方針の確認、③その他の治療方法の確認とその根拠 を聞くことができます。聞いてみたいと思ったら、「セカンドオピ ニオンを聞きたいので、紹介状やデータをお願いします」と担当 医に伝えましょう。
担当医との関係が悪くならないかと心配になるかもしれませ んが、多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なこ とと理解しています。納得した治療法を選ぶために、気兼ねなく 相談してみましょう。
診断や治療の方針に納得できましたか?
セカンドオピニオンとは?
診断や治療の方針に納得できましたか?/セカンドオピニオンとは?
受診の前後のチェックリスト
□ 後で読み返せるように、医師に説明の内容を紙に書いてもらったり、
自分でメモをとったりするようにしましょう。
□ 説明はよくわかりますか。わからないときは正直にわからないと伝え ましょう。
□ 自分に当てはまる治療の選択肢と、それぞれのよい点、悪い点につい て、聞いてみましょう。
□ 勧められた治療法が、どのようによいのか理解できましたか。
□ 自分はどう思うのか、どうしたいのかを伝えましょう。
□ 治療についての具体的な予定を聞いておきましょう。
□ 症状によって、相談や受診を急がなければならない場合があるかどう か確認しておきましょう。
□ いつでも連絡や相談ができる電話番号を聞いて、わかるようにしてお きましょう。
●
□ 説明を受けるときには家族や友人が一緒の方が、理解できて安心だと 思うようであれば、早めに頼んでおきましょう。
□ 診断や治療などについて、担当医以外の医師に意見を聞いてみたい場 メモ/受診の前後のチェックリスト
メモ ( 年 月 日)
● 病期(ステージ) [ Ⅰ期 ・ Ⅱ期 ・ Ⅲ期 ・ Ⅳ期 ]
● 大きさ [ ] cm 位
● 数 [ ] 個
● 肝障害度 [ A ・ B ・ C ]
● 別の臓器への転移 [ あり ・ なし ]
●
がんの冊子各種がんシリーズ
がんと療養シリーズ 緩和ケア 他 がんと仕事のQ&A
●
がんの書籍 (がんの書籍は書店などで購入できます)がんになったら手にとるガイド 普及新版
別冊 『わたしの療養手帳』
もしも、がんが再発したら
国立がん研究センターがん対策情報センター作成の本
上記の冊子や書籍は、全国のがん診療連携拠点病院などの
「がん相談支援センター」で閲覧・入手することができます。
ウェブサイト「がん情報サービス」で、冊子ファイル(PDF)を 閲覧したり、ダウンロードして印刷したりすることができます。
がん情報サービス
https://ganjoho.jp
上記の冊子・書籍の閲覧方法や入手先がわからないときは、
「がん情報サービス」または「がん情報サービスサポートセンター」
でご確認ください。
閲覧・入手方法
● インターネットで
● 病 院 で
0570-02-3410
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2008 年 9 月 第 1 版第 1 刷 発行 2018 年 4 月 第 4 版第 1 刷 発行 2021 年 6 月 第 4 版第 2 刷 発行 がんの冊子 各種がんシリーズ 肝細胞がん
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発行:国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター 〒 104-0045 東京都中央区築地 5-1-1
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