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肝 細 胞 がん 各種がん

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(1)

各種がん

104

か ん さ い ぼ う がん

受診から診断、治療、経過観察への

(2)

 がんの診療の流れ

この図は、がんの「受診」から「経過観察」への流れです。

大まかでも、流れがみえると心にゆとりが生まれます。

ゆとりは、医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう。

あなたらしく過ごすためにお役立てください。

「体調がおかしいな」と思ったまま、放っておかないで ください。なるべく早く受診しましょう。

受診のきっかけや、気になっていること、症状など、

何でも担当医に伝えてください。メモをしておくと 整理できます。いくつかの検査の予定や次の診察日 が決まります。

治療が始まります。気が付いたことは担当医や看護 師、薬剤師に話してください。困ったことやつらいこ と、小さなことでも構いません。よい解決方法が見つ かるかもしれません。

がんや体の状態に合わせて、担当医が治療方針を説明 します。ひとりで悩まずに、担当医と家族、周りの方 と話し合ってください。あなたの希望に合った方法を 見つけましょう。

担当医から検査結果や診断について説明があります。

検査や診断についてよく理解しておくことは、治療法 を選択する際に大切です。理解できないことは、繰り 返し質問しましょう。検査が続くことや結果が出るま で時間がかかることもあります。

がんの疑い

受 診

検査・診断

治療法の選択

治 療

(3)

 目 次

がんの診療の流れ

1. がんと言われたあなたの心に起こること ��������������������� 1

2. 基礎知識 ������������������������������������������������������������� 3

3. 検査 ������������������������������������������������������������������� 6

4. 治療 ������������������������������������������������������������������� 8

1

病期と治療の選択

������������������������������������������� 8

2

手術(外科治療)

�������������������������������������������� 15

3

穿刺局所療法

������������������������������������������������ 17

4

肝動脈化学塞栓療法、肝動脈塞栓療法、肝動注化学療法

��� 18

5

薬物療法

������������������������������������������������������ 20

6

放射線治療

��������������������������������������������������� 21

7

転移�再発

��������������������������������������������������� 22

5. 療養 ������������������������������������������������������������������ 24

診断や治療の方針に納得できましたか?

������������������������ 25

セカンドオピニオンとは?

����������������������������������������� 25

メモ/受診の前後のチェックリスト

������������������������������ 27

(4)

がんという診断は誰にとってもよい知らせではありません。

ひどくショックを受けて、「何かの間違いではないか」「何で 自分が」などと考えるのは自然な感情です。しばらくは、不安 や落ち込みの強い状態が続くかもしれません。眠れなかった り、食欲がなかったり、集中力が低下する人もいます。そんなと きには、無理にがんばったり、平静を装ったりする必要はあり ません。

時間がたつにつれて、「つらいけれども何とか治療を受けて いこう」「がんになったのは仕方ない、これからするべきことを 考えてみよう」など、見通しを立てて前向きな気持ちになって いきます。そのような気持ちになれたらまずは次の 2 つを心が けてみてはいかがでしょうか。

あなたに心がけてほしいこと

■ 情報を集めましょう

 

 まず、自分の病気についてよく知ることです。病気によっては まだわかっていないこともありますが、担当医は最大の情報源 です。担当医と話すときには、あなたが信頼する人にも同席し てもらうといいでしょう。わからないことは遠慮なく質問して ください。

1

. がんと言われた

あなたの心に起こること

(5)

また、インターネットなどで集めた情報が正しいかどうかを、

担当医に確認することも大切です。他の病院でセカンドオピニ オンを受けることも可能です。

「知識は力なり」。正しい知識は考えをまとめるときに役に 立ちます。

※参考 P25「セカンドオピニオンとは?」

■ 病気に対する心構えを決めましょう 

がんに対する心構えは、積極的に治療に向き合う人、治るとい う固い信念をもって臨む人、なるようにしかならないと受け止 める人など人によりいろいろです。どれがよいということはな く、その人なりの心構えでよいのです。そのためにも、自分の病 気のことを正しく把握することが大切です。病状や治療方針、今 後の見通しなどについて担当医から十分に説明を受け、納得し た上で、あなたなりの向き合い方を探していきましょう。

あなたを支える担当医や家族に自分の気持ちを伝え、率直に 話し合うことが、信頼関係を強いものにし、しっかりと支え合う ことにつながります。

情報をどう集めたらいいか、病気に対してどう心構えを決め たらいいのかわからない、そんなときには、巻末にある「がん相 談支援センター」を利用するのも1つの方法です。困ったときに はぜひご活用ください。

1

がんと言われたあなたの心に起こること

(6)

肝臓は腹部の右上にあり、成人で800 ~ 1,200gと体内最大 の臓器です(図1)。肝臓の主な役割は、食事から吸収した栄養分 を取り込んで体に必要な成分に変えることや、体内でつくられ た有害物質や体外から摂取された有害物質を解毒し、排出する ことです。また、脂肪の消化を助ける胆汁もつくります。胆汁 は、胆管を通して消化管に送られます。

2

. 基礎知識

肝臓について

1

下大静脈 大動脈

膵臓 胆管 門脈

胆のう

肝臓

すいぞう

図1.肝臓と周辺の臓器の構造

(7)

2

基礎知識

肝細胞がんは、肝臓の細胞ががん化して悪性腫瘍になったも のです。同じ肝臓にできたがんでも、肝臓の中を通る胆管がが ん化したものは「肝内胆管がん(胆管細胞がん)」と呼ばれてい ます。肝細胞がんと肝内胆管がんは、治療法が異なることから 区別されています。

ここでは、肝細胞がんについて解説します。なお、一般的には

「肝がん」というと「肝細胞がん」のことを指します。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、炎症やがんがあっても初期に は自覚症状がほとんどありません。医療機関での定期的な検診 や、ほかの病気の検査のときなどに、たまたま肝細胞がんが発見 されることも少なくありません。健康診断などで肝機能の異常 や肝炎ウイルスの感染などを指摘された際には、受診するよう にしましょう。

肝細胞がんが進行した場合は、腹部のしこり・圧迫感、痛みな どを訴える人もいます。

肝細胞および肝内胆管のがんと新たに診断される人数は、1 年間に10万人あたり32.2人で、男性に多い傾向があります。

肝細胞がんとは

2

3

症状

4

統計

(8)

肝細胞がんの発生する主な要因は、B型肝炎ウイルスあるい はC型肝炎ウイルスの持続感染(長期間、体内にウイルスが留ま る感染)です。肝炎ウイルスが体内にとどまることによって、肝 細胞の炎症と再生が長期にわたって繰り返され、それに伴い遺 伝子の突然変異が積み重なり、がんになると考えられています。

ウイルス感染以外の要因としては、多量飲酒、喫煙、食事性の アフラトキシン(カビから発生する毒素の一種)、肥満、糖尿病、

男性であることなどが知られています。最近では、肝炎ウイル ス感染を伴わない肝細胞がんが増加してきているという報告も あり、その主な要因として、脂肪肝が注目されています。

5

発生要因

2

基礎知識

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3

検査

3

. 検査

肝細胞がんの検査は、超音波(エコー)検査や、CT検査、MRI検 査の画像検査と、腫瘍マーカー検査を組み合わせて行います。ま た、肝細胞がんとその他のがん、悪性か良性かの区別をするため に針生検を行います。治療方針の検討には、血液検査で肝機能を 調べたり、肝硬変の程度を評価するために内視鏡検査を行うこと もあります。

検査の種類

2

体の表面にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超 音波の様子を画像化して観察する検査です。検査機器があれば 外来でも簡便に行うことができます。がんの大きさや個数、がん と血管の位置、がんの広がり、肝臓の形や状態、腹水の有無を調べ ます。ただし、がんの場所によっては、検査が困難な場合や、皮下 脂肪が厚い場合は、十分な検査ができないことがあります。

患者さんの状態や、がんのある部位によっては、血管から造影 剤を注射して検査を行うこともあります(造影超音波検査)。

肝細胞がんの検査

1

1

)超音波(エコー)検査

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CT検査では、X線を使って体の内部を描き出し、治療前に、が んの性質や分布、転移や周囲の臓器への広がりを調べます。肝細 胞がんを調べる場合は、造影剤を用いながらCT検査を行うのが 一般的です。より詳しく調べるため、造影剤を注射したあと、何 回かタイミングをずらして撮影することがあります。

MRI検査は、磁気を使った検査です。必要に応じてCT検査と 組み合わせて、あるいは単独で行います。MRI検査でも、造影剤 を使用することがあります。

腫瘍マーカーとは、体のどこかにがんが潜んでいると異常高 値を示す血液検査の項目で、がんの種類に応じて多くの種類が あります。

肝細胞がんで保険が適用される腫瘍マーカーは、AFP(アルフ ァ・フェトプロテイン)やPIVKA-II(ピブカ・ツー)、AFP-L3分 画(AFPレクチン分画)です。腫瘍が小さい場合の診断では、2種 類以上の腫瘍マーカーを測定することが推奨されています。

ただし、肝細胞がんでもこれらのマーカーがいずれも陰性の ことがあります。また、がんではないが肝炎や肝硬変がある場 合、あるいは肝細胞がん以外のがんがある場合で陽性になるこ ともあるので、画像診断も同時に行います。

2

)CT検査、MRI検査

3

)腫瘍マーカー検査

3

検査

(11)

4

治療

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討しま す。がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。

病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。

肝細胞がんの病期は、がんの大きさ、個数、がんが肝臓内にとど まっているか、ほかの臓器まで広がっているか(転移)によって 決まります。

病期の分類にはいくつかの種類があり、多くの医師は、日本 の「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約(日本肝癌研究会編)」

(表 1)、もしくは、国際的に使われている「TNM悪性腫瘍の分類

(UICC)」(表2)を用いて説明をしています。

分類法によって、同じステージでも内容が異なることもある ため、注意が必要です。

4

.治療

病期と治療の選択

1

1

)病期(ステージ)

(12)

表1.肝細胞がんの病期分類(日本肝癌研究会)

I

VB期

T1 T2 T3 T4

①腫瘍が1つに限られる

②腫瘍の大きさが2㎝以下

③脈管(門脈、静脈、胆管)

 に広がっていない

すべて合致①②③ 2項目合致 1項目合致 すべて合致 せず

リンパ節・遠隔臓器に転

移がない I 期 II 期 III 期 IVA期

リンパ節転移はあるが、

遠隔転移はない 遠隔転移がある

I

VA期

日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版(2015年)」(金原出版)

より作成

(13)

4

治療

領域リンパ節N0 2

転移がない

領域リンパ節N1 転移がある

遠隔転移がM1 ある

T1a

血管侵襲1の有無 に関係なく、最大径 が2cm以下の腫瘍 が1つ

IA

IVA IVB T1b 血管侵襲を伴わず、

最大径が2cmを超

える腫瘍が1つ IB

T2

血管侵襲を伴い最 大径が2cmを超え る腫瘍が1つ、また は最大径が5cm以 下 の 腫 瘍 が2つ 以

II

T3 最大径が5cmを超 え る 腫 瘍 が2つ 以

IIIA

T4

門脈もしくは肝静 脈の大分枝に浸潤 する腫瘍、または胆 のう以外の隣接臓 器(横隔膜を含む)

に直接浸潤する腫 瘍、または臓側腹膜 を貫通する腫瘍

IIIB

* 1:血管内にがんが入り込むこと。

* 2: 肝細胞がんの領域リンパ節は、肝門部リンパ節、固有肝動脈に沿う肝臓リンパ 節、門脈に沿う門脈周囲リンパ節、下横隔リンパ節、および大静脈リンパ節で す。

UICC 日本委員会 TNM 委員会訳「TNM 悪性腫瘍の分類 第 8 版 日本語版(2017 年)」(金原出版)より作成

表2.肝細胞がんの病期分類(UICC第8版)

(14)

治療法を選択する際は、肝臓の障害の程度(肝予備能:肝臓の 機能がどのくらい保たれているか)も確認します。

 

肝障害度は、肝機能の状態によって、A、B、Cの3段階に分けら れます(表3)。また、肝硬変の程度を把握するために、Child- Pugh(チャイルド・ピュー)分類が用いられることもあります

(表4)。どちらの分類方法でも、AからCへと進むにつれて、肝障 害の程度は強まります。

2

)肝障害度、Child-Pugh分類

表3.肝障害度

それぞれの項目別にA、B、Cのどの段階に当てはまるかを確認します。

 ⃝Cに当てはまる項目が2つ以上ある場合は肝障害度Cになります。

 ⃝ Cに当てはまる項目が1つ以下で、Bに当てはまる項目が2つ以上ある 場合は肝障害度Bになります。

 ⃝それ以外の場合は肝障害度Aになります。

項目 肝障害度   A   B   C

腹水 ない 治療効果

あり 治療効果 少ない 血清ビリルビン値(mg/dL) 2.0未満 2.0 ~ 3.0 3.0超

血清アルブミン値(g/dL) 3.5超 3.0 ~ 3.5 3.0未満

ICGR15(%) 15未満 15 ~ 40 40超

(15)

4

治療

表4.Child-Pugh分類

各項目のポイントを加算し、その合計点により分類します。

項目 ポイント 1点 2点 3点

脳症 ない 軽度 ときどき

昏睡

腹水 ない 少量 中等量

血清ビリルビン値(mg/dL) 2.0未満 2.0 ~ 3.0 3.0超

血清アルブミン値(g/dL) 3.5超 2.8 ~ 3.5 2.8未満

プロトロンビン活性値(%) 70超 40 ~ 70 40未満

Child-Pugh分類

A 5 ~ 6点

B 7 ~ 9点

C 10 ~ 15点 日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第 6 版(2015 年)」(金原出 版)より作成

(16)

肝細胞がんの治療は、肝切除、ラジオ波焼しょうしゃく灼療法(RFA)、肝動 脈化学塞そくせん栓療法(TACE)が中心です。また、肝臓の状態やがんの 進行具合によっては、分子標的薬による薬物療法や、肝移植、放射 線治療を選択します。

肝細胞がんの患者さんの多くは、がんと慢性肝疾患という2つ の病気を抱えているため、がんの病期(ステージ)だけでなく、肝 臓の障害の程度(Child-Pugh分類による評価)も考慮して治療 方法を選択します。

図2は、肝細胞がんに対する治療方法を示したものです。担当 医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

3

)治療の選択

(17)

4

治療

*3:肝切除の場合は、肝障害度による評価を推奨

*4:腫瘍数が1個の場合、第一選択は肝切除、第二選択は焼灼療法

*5:Child-Pugh分類Aの場合

*6:年齢が65歳以下の場合

肝切除

  ●

ラジオ波焼灼療法

肝切除

塞栓療法

分子標的薬

肝移植

緩和ケア

塞栓療法

肝動注化学療法

分子標的薬

塞栓療法

肝切除

肝動注化学療法

分子標的薬

*4

*5

*6

日本肝臓学会編「肝癌診療ガイドライン2017年版」(金原出版),P.68より作成 図2.肝細胞がんの状態・肝障害度と治療

(18)

手術(外科治療)

2

手術を行うかどうかは、Child-Pugh分類がAまたはBで、肝 障害度に基づく肝機能の評価がよい場合、切除後に肝臓の量を どれだけ残せるかによって判断します。また、肝硬変の程度が Child-Pugh分類Cでは肝移植が勧められています。

1

)手術の種類

(1)肝切除

がんとその周囲の肝臓の組織を手術によって取り除く治療です。

多くは、がんが肝臓にとどまっており、3個以下の場合に行い ます。がんの大きさには特に制限はなく、10cmを超えるような 巨大なものであっても、切除が可能な場合もあります。また、が んが門脈や静脈の血管、胆管へ広がっている場合でも、一部のが んでは肝切除を行うことがあります。

ただし、腹水がある場合は、肝切除後に肝臓が機能しなくなる

(肝不全)危険性が高く、通常は肝切除以外の治療を行います。

切除の術式は、がんのある場所や肝機能に応じて、小さい範囲 での切除から、複数の区域にわたる大きい範囲での切除までさ まざまです。腹腔鏡手術は、がんのある場所や術式によっては可 能ですが、実施できる状況は限られており、通常、多くは開腹で の手術が行われています。

肝切除後、通常1 ~ 2週間程度で退院できます。

(19)

4

治療

以下、(c)がんが複数なら3個以下で3cm以内、という基準(ミ ラノ基準)を満たす場合に行うことがあります。

日本では、主に近親者から肝臓の一部を提供してもらう「生体 肝移植」が行われています。

手術直後には、酸素マスク、痛み止めのための硬膜外麻酔カテ ーテルや、ドレーン(手術した場所から出る血液・体液を排出す る管)、尿道バルーンカテーテル(尿をためる管)が体につけられ ています。これらは、体の状態が改善するにしたがって、徐々に 外されていきます。ドレーンは、外せるようになるまで、通常、数 週間から1カ月程度かかります。また、創きずの痛みは、数カ月程度 で治まることがほとんどですが、痛みは和らげることができま すので、我慢せず担当医や看護師に伝えましょう。

3

)手術の合併症について

肝臓の切除面から胆汁が漏れる胆たんじゅうろう汁漏、出血、肝不全などが起 こることがあります。胆汁漏はまれに再手術で治療することも ありますが、通常は、ドレーンをつけたままにすることで症状が 軽くなります。出血は輸血と再手術による止血が必要です。肝 不全は、肝臓がまったく機能しない状態のことで、手術を考慮す る時点で肝臓の機能に応じて十分な肝臓の量を残すようにして いますが、ごくまれに重篤な合併症である肝不全が起こること があります。

2

)手術直後の様子

(20)

穿

せん

3

局所療法

体の外から針を刺し、局所的に治療を行う方法で、手術に比べ て体への負担の少ないことが特徴です。Child-Pugh分類のAま たはBのうち、がんの大きさが3cm以下、かつ、3個以下の場合 に行われることがあります。肝細胞がんの穿刺局所療法として 推奨されているのは、ラジオ波焼灼療法(RFA)です。

1

)ラジオ波焼灼療法(RFA)

体の外から特殊な針をがんに直接刺し、通電してその針の先 端部分に高熱を発生させることで、局所的にがんを焼いて死滅 させる治療法です。治療の際は、腹部の局所での麻酔に加えて、

焼灼で生じる痛みに対して鎮痛剤を使用したり、静脈からの麻 酔を行います。焼灼時間は10 ~ 20分程度です。

発熱、腹痛、出血、腸管損傷、肝機能障害などの合併症が起こる こともあります。また、針を刺した場所に痛みややけどが起こる ことがあります。治療後は、数時間程度の安静が必要です。

2

)その他の療法

従来からの穿刺局所療法として、経皮的エタノール注入

(PEI)、経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)があります。

(21)

CT画像で体の中を透かして見ながらカテーテルを入れて、標 的となるがんの治療を行います。塞栓療法には、肝動脈化学塞栓 療法(TACE)と肝動脈塞栓療法(TAE)があり、肝細胞がんでは TACEが主流になりつつあります。

Child-Pugh分類のAまたはBのうち、大きさが3cmを超えた 2 ~ 3個のがん、もしくは、大きさに関わらず4個以上のがんが ある場合に行われることがあります。がんの存在する範囲が広 い場合は、治療を複数回に分けて行います。また、塞栓療法は、ほ かの治療と併用して行われることがあります。

4

肝動脈化学塞栓療法、肝動脈塞栓療法、肝動注化学療法

4

治療

日本肝臓学会 企画広報委員会編「肝臓病の理解のために 5. 肝がん(2015年)」,P.6

(図5 肝動脈化学塞栓療法の原理)より改変

図3.肝動脈塞栓療法(TAE)と肝動注化学療法(TAI)

●肝動注化学療法(TAI)

●肝動脈塞栓療法(TAE)

カテーテル

大腿部の付け根にある 動脈から肝動脈まで カテーテルを入れる がん

肝臓 塞栓物質を入れる

抗がん剤を投与する

(22)

1

)肝動脈化学塞栓療法(TACE)

がんに栄養を運んでいる血管を人工的にふさいで、がんを“兵 糧攻め”にする治療法です。血管造影に用いたカテーテルの先端 を肝動脈まで進め、細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)と、肝 細胞がんに取り込まれやすい造影剤を混ぜて注入し、その後に塞 栓物質を注入する治療法です。肝動脈を詰まらせることでがん への血流を減らし、抗がん剤によりがん細胞の増殖を抑えます。

2

)肝動脈塞栓療法(TAE)

肝動脈化学塞栓療法(TACE)と同様に、がんに栄養を運んで いる血管を人工的にふさいで、がんを“兵糧攻め”にする治療法 です。肝動脈塞栓療法(TAE)では、血管造影に用いたカテーテ ルから塞栓物質のみを注入します。肝動脈を詰まらせることで がんへの血流を減らします(図3右上)。

3

)肝動注化学療法(TAI)

血管造影に用いたカテーテルから抗がん剤のみを注入する治 療法です(図3右下)。

● 副作用について

肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動脈塞栓療法(TAE)、肝動注化 学療法(TAI)の治療後に、発熱、吐き気、腹痛、食欲不振、肝機能障 害、胸痛などの副作用が起こることがあります。副作用の程度は、が

(23)

4

治療

肝細胞がんの薬物療法では、分子標的薬による治療(分子標的 治療)が標準治療です。肝切除や肝移植、穿刺局所療法、肝動脈化 学塞栓療法(TACE)が行えない進行性の肝細胞がんで、パフォ ーマンスステータスと肝臓の機能がともに良好な場合には、分 子標的治療を行います。

1

)分子標的治療

1次治療では、分子標的薬であるソラフェニブまたはレンバチ ニブを用います。ソラフェニブによる治療後にがんが進行して しまった場合、副作用などの問題がなくChild-Pugh分類のAに 当てはまるときは、同じく分子標的薬である、レゴラフェニブを 2次治療として用いることがあります。なお、レンバチニブを1 次治療とした場合の2次治療については、まだ検討がなされてい る段階です。

5

薬物療法

● 副作用について

分子標的薬には、薬物ごとに固有の副作用があります。肝細胞がん の1次治療に用いられるソラフェニブでは、程度のごく軽い副作用も 含めると、ほとんどの患者さんで何らかの副作用がみられます。よく ある副作用は、手足の感覚が鈍くなったり過敏になったりする、手足 の腫れや痛み、皮疹、皮膚の表面がはがれおちる、下痢、食欲不振、高 血圧症、疲労、脱毛、悪心です。

中には白血球などの血球が減少するなどの重篤な副作用が起こる 場合もあるため、治療中に調子が悪くなった場合はすぐに担当医に 相談しましょう。自己判断はせず、治療薬の減量や休薬は、担当医の 指示に従ってください。

(24)

肝細胞がんの治療としては、まだ研究結果の蓄積が十分では なく、標準治療としては確立されていません。骨に転移したとき の疼とうつう痛緩和や、脳への転移に対する治療、血管(門脈、静脈)に広 がったがんに対する治療を目的に行われることがあります。

6

放射線治療

(25)

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別 の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。また、再発と は、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現す ることをいいます。

肝切除による治療後に再発する場合は、肝臓内での再発がほ とんどです。初回再発の90%以上が肝臓内での再発といわれま す。その要因としては、肝臓内の血管を介した肝内転移のほか、

肝切除後の残存肝からの新しい肝細胞がんの発生が考えられて います。

(1)肝臓以外の部位(肺、副腎、リンパ節、腹膜)に転移している場合 転移がみられる進行性の肝細胞がんに対しては、通常、分子標 的薬による治療を行います。

(2)脈管侵襲陽性の肝細胞がんの場合

脈管への広がりの程度によって、塞栓療法または肝切除を行 います。それらの治療を選択することが難しい場合は、肝動注化 学療法または分子標的薬による治療を行います。

7

転移�再発

1

)がんが肝臓以外の部位に転移している場合の治療の選択

4

治療

(26)

(3)骨に転移している場合

分子標的薬による治療や、必要に応じて、痛みの緩和を目的と した放射線治療を行います。

(4)脳に転移している場合

分子標的薬による治療や、必要に応じて、脳への放射線治療を 行います。

患者さんの状況や肝障害度に応じて、治療やその後のケアを 決めていきます。

(1)肝切除や局所療法による治療後に再発した場合

肝臓以外のほかの臓器への転移がない場合には、残っている 肝臓の量や、肝機能を考慮した上で、手術を含めた治療の中から 検討していきます。

(2)肝移植後に再発した場合

がんの状態や再発した部位、患者さんの状態によって異なり ますが、基本的には、通常の肝細胞がんに対する治療方針と同じ です。具体的には、外科的に切除するか、切除が難しい場合は、ラ ジオ波焼灼療法や塞栓療法、分子標的薬による薬物療法が行わ れることがあります。

2

)再発時の治療の選択

4

治療

(27)

治療後も定期的に通院し、体調の変化や再発の有無を確認し ます。

肝硬変と診断された方は、肝臓の別の場所に新しいがんが発 生することがしばしばあり、注意が必要です。再発の危険度が 高く、頻繁、かつ長期的な通院が必要となり、3 ~ 6 カ月ごとに 定期検査を実施します。定期検査では、肝機能や腫瘍マーカー を調べるための血液検査に加え、必要に応じて、超音波(エコ ー)検査や造影超音波検査、CT 検査、MRI 検査などの画像検査 を行います。また、PET 検査、骨シンチグラフィなどを行う場 合もあります。

自覚症状として、熱がなかなか下がらない、おなかが張って 苦しい、息苦しい感じが続く、疲れやすい、足がむくむ、食欲が ない、何となく足元がふらふらする、手指が震える、ぼうっとし たり眠りがちになったりする、などの症状が普段の状態と比べ て強いとき、あるいは急にひどくなったときは、担当医に連絡 して受診するようにしましょう。

5

. 療養

1

経過観察

5

療養

(28)

治療方法は、すべて担当医に任せたいという患者さんがいます。

一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという 患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではなく、

患者さん自身が満足できる方法が一番です。

 まずは、病状を詳しく把握しましょう。

わからないことは、担当医 に何でも質問してみましょう。治療法は、病状によって異なります。

医療者とうまくコミュニケーションをとりながら、自分に合った治療 法であることを確認してください。

 診断や治療法を十分に納得した上で、治療を始めましょう。

担当医以外の医師の意見を聞くこともできます。これを「セ カンドオピニオンを聞く」といいます。ここでは、①診断の確 認、②治療方針の確認、③その他の治療方法の確認とその根拠 を聞くことができます。聞いてみたいと思ったら、「セカンドオピ ニオンを聞きたいので、紹介状やデータをお願いします」と担当 医に伝えましょう。

担当医との関係が悪くならないかと心配になるかもしれませ んが、多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なこ とと理解しています。納得した治療法を選ぶために、気兼ねなく 相談してみましょう。

診断や治療の方針に納得できましたか?

セカンドオピニオンとは?

診断や治療の方針に納得できましたか?/セカンドオピニオンとは?

(29)
(30)

受診の前後のチェックリスト

□ 後で読み返せるように、医師に説明の内容を紙に書いてもらったり、

自分でメモをとったりするようにしましょう。

□ 説明はよくわかりますか。わからないときは正直にわからないと伝え ましょう。

□ 自分に当てはまる治療の選択肢と、それぞれのよい点、悪い点につい て、聞いてみましょう。

□ 勧められた治療法が、どのようによいのか理解できましたか。

□ 自分はどう思うのか、どうしたいのかを伝えましょう。

□ 治療についての具体的な予定を聞いておきましょう。

□ 症状によって、相談や受診を急がなければならない場合があるかどう か確認しておきましょう。

□ いつでも連絡や相談ができる電話番号を聞いて、わかるようにしてお きましょう。

□ 説明を受けるときには家族や友人が一緒の方が、理解できて安心だと 思うようであれば、早めに頼んでおきましょう。

□ 診断や治療などについて、担当医以外の医師に意見を聞いてみたい場 メモ/受診の前後のチェックリスト

メモ   (    年   月   日)

病期(ステージ)   [ Ⅰ期 ・ Ⅱ期 ・ Ⅲ期 ・ Ⅳ期 ]

大きさ       [       ] cm 位

数         [       ] 個

肝障害度      [ A ・ B ・ C ]

別の臓器への転移  [ あり ・ なし ]

(31)

がんの冊子

各種がんシリーズ

がんと療養シリーズ 緩和ケア 他 がんと仕事のQ&A

がんの書籍 (がんの書籍は書店などで購入できます)

がんになったら手にとるガイド 普及新版

別冊 『わたしの療養手帳』

もしも、がんが再発したら

国立がん研究センターがん対策情報センター作成の本

上記の冊子や書籍は、全国のがん診療連携拠点病院などの

「がん相談支援センター」で閲覧・入手することができます。

ウェブサイト「がん情報サービス」で、冊子ファイル(PDF)を 閲覧したり、ダウンロードして印刷したりすることができます。

がん情報サービス 

https://ganjoho.jp

上記の冊子・書籍の閲覧方法や入手先がわからないときは、

「がん情報サービス」または「がん情報サービスサポートセンター」

でご確認ください。

● インターネットで

● 病 院 で

0570-02-3410

03-6706-7797

受付時間:平日 10 時 ~ 15 時

(土日祝日、年末年始を除く)

*相談は無料ですが、通話料金はご利用される方のご負担となります。

ナビダイヤル

2008 年 9 月 第 1 版第 1 刷 発行 2018 年 4 月 第 4 版第 1 刷 発行 2021 年 6 月 第 4 版第 2 刷 発行 がんの冊子 各種がんシリーズ 肝細胞がん

編集:がん情報サービス がん情報編集委員会

発行:国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター    〒 104-0045 東京都中央区築地 5-1-1

(32)

各種がん

肝細胞がん

104

国立がん研究センター がん対策情報センター

「がん情報サービス」

https://ganjoho.jp

がん相談支援センターやがん診療連携拠点病院、がんに関するより詳しい情報は ウェブサイトをご覧ください。

       について

がん相談支援センターは、全国国指定のがん診療連携拠点病院など 設置されているがんの相談窓口」です。患者さんやご家族だけでなく どなたでも無料で面談または電話によりご利用いただけます

 相談された内容がご本人了解なしに、患者さんの担当医をはじめ かのわることはありません

わからないことやったことがあればお気軽にご相談ください

参照

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