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(1)

萩原 啓

(

理化学研究所・慶應義塾大学

)

0. 記号と約束事

記号 N , N

+

, Z , Q , R , C はそれぞれ非負整数、正整数、整数、有理数、

実数、複素数の集合を表す。

本稿では環といえば単位的可換環のことを指し、環 R に対し R 代数 と言えば R からの環準同型が指定された環のことを指す。

函手は常に共変なもののみを考える。圏 C から圏 D への反変函手を 考えたいときは、反圏 C

op

からの函手を考える。

記号 H は Hoffman 代数 Q⟨ e

0

, e

1

を表す。これは、シャッフル積およ び deg e

i

= 1 という次数付けによって次数付 Q 代数とみる。また、

k = (k

1

, . . . , k

r

) N

r+

に対し e

k

= e

1

e

k011

. . . e

1

e

k0r1

dep(k) = r とおく。

集合全体のなす圏を Set で表す。

K に対し Vec

K

Vec

finK

GrVec

K

GrVec

finK

でそれぞれ K ベク トル空間の圏、有限次元 K ベクトル空間の圏、次数付 K ベクトル空間 の圏、次数付 K ベクトル空間で次数付けを忘れたときに有限次元であ るようなものの圏を表す。また環 R に対し Mod

R

Alg

R

AffSch

/R

R 加群、 R 代数、 R 上のアフィンスキームの圏を表す。

次数付 K ベクトル空間と G

m

表現 ( 左からの K 線型作用 ) との同一視 は「 r G

m

r

n

倍で作用する部分」が次数 n となるようにする。

次数付 K ベクトル空間 V =

k∈Z

V

k

に対し、 V

=

k∈Z

V

k

とおく。

1. 序 1.1. 目標 . まず、 2 つの自然数列を導入する。

定義 . (1) k N に対し、ウェイト k の多重ゼータ値で Q 上生成される R の部分 Q ベクトル空間を Z

k

と書く。その Q 上の次元を d

k

と書く。

また、 Z

=

k∈N

Z

k

とおく。

(2) 数列 (d

k

)

k∈N

を (1 t

2

t

3

)

1

= ∑

k∈N

d

k

t

k

( Z [[t]]) で定める。

本稿の目的は、以下の定理の、混合 Tate モチーフおよび P

1

\{ 0, 1, ∞} のモ チーフ論的基本亜群をもちいた証明についてその概略を紹介することである : 定理 1.1. (Deligne, Goncharov, 寺杣 ) 任意の k N に対し、不等式

d

k

d

k

が成り立つ。

1.2. 証明の戦略および本稿の構成 . 本稿では実際には以下の定理を示す : 定理 1.2. 以下の条件を満たすような次数付 Q 代数 A

MT

および H 、次数付 Q 代数準同型 ζ

mot

: H H 、環準同型 per : H C が存在する :

1

(2)

(1) 次数付 Q ベクトル空間として、 A

MT

{ x

2k+3

| k N} 上自由に生成 された非可換 Q 代数 Q⟨x

3

, x

5

, . . .⟩ に同型である。ここで deg x

i

= i とする。

(2) 図式

H

ζ

an

//

ζmot

A A A A A A A A C H

per

>>

} } } } } } } }

は可換である。ここで ζ

an

e

k

に (−1)

dep(k)

ζ (k) を対応させる Q 数準同型である。

(3) 次数付 Q 代数 H は、

(a) 整域であり、

(b) 2 次の部分 H

2

が 1 次元 Q ベクトル空間であり、

(c) 次数付 Q 代数としての同型 H /( H

2

) = A

MT

を持つ ( ここで左 辺の分母は H

2

で生成されるイデアルを表す ) 。

特に、任意の k N に対し Q ベクトル空間の完全系列 0 H

k−2

H

k

A

kMT

0

が存在する。

まずは、この定理からどのようにして定理 1.1 が従うかを見る。その為に 記号を 2 つ導入する。

定義 . (1) 次数付 Q ベクトル空間 V =

k∈N

V

k

で、各 V

k

が有限次元であ るものに対し、冪級数 H

V

(t) Z [[t]] を

H

V

(t) = ∑

k∈N

(dim

Q

V

k

) t

k

と定める。

(2) 実係数の冪級数 f, g R [[t]] に対し、 f g の全ての係数が 0 以上であ ることを f g と表す。

さて、定理 1.2 を認めると不等式列

H

Z

(t) H

Imageζmot

(t) H

H

(t) = H

AMT

(t) · (1 t

2

)

1

= 1

1 t

3

t

5

t

7

− · · · · 1 1 t

2

= 1

1 t

2

t

3

が得られ、これから定理 1.1 は直ちに従う。ここで、第 1 、第 2 の不等式は定 理 1.2 (2) の可換性から、第 3 の等式は定理 1.2 (3) の最後の注意から、第 4 等式は定理 1.2 (1) からの帰結である。

註 1.3. (1) 定理 1.2 に現れる各代数に関して幾つかコメントする。

(a) A

MT

は「混合 Tate モチーフのなす淡中圏の淡中基本群」 ( 冪単部分 ) の関数環であり、純粋にモチーフ論的な対象である。

(b) 環 H は「 Betti-de Rham 捻子」の関数環の部分代数であり、こ

れはモチーフの Betti 実現と de Rham 実現との「ずれ」を統率す

る対象である。また、準同型 per はその「ずれ」を周期として取

り出す写像である。

(3)

(c) 環 H は本稿の枠組みにおいては「 P

1

\ { 0, 1, ∞} de Rham 的基 本 ( ) 群」 ( 実際にここで用いるのはパス空間 ) の関数環として 解釈され、 ζ

mot

は「 Betti 実現における 0 から 1 へのパスとのペ アリング」から得られる写像である。

(2) H の元 ( 1)

dep(k)

ζ

mot

(e

k

) は、 ζ(k) に移されることからも分かるよ うに、多重ゼータ値の「モチーフ論的持ち上げ」、すなわち「モチヴィッ ク多重ゼータ値」というべきものであり、 ζ

mot

の核は「モチヴィック 多重ゼータ値の関係式」の集合というべきものである。

(3) 上の証明における第 2 の不等式は、実は等式であることが Francis

Brown によって証明されている。第 1 の不等式も等式であると期待さ

れているものの、通常の多重ゼータ値とモチヴィック多重ゼータ値と の関係を扱う超越数論的な箇所であり、現時点では ( おそらく ) ほとん ど何も知られていない。

さて、次節以降では定理 1.2 の証明について解説していく。まず第 2 節で は「混合 Tate モチーフの圏」を導入しその性質を用いて (1) を導く。次に第 3 節では「 P

1

\ { 0, 1, ∞} のモチーフ論的パス空間」と「 Betti-de Rham 捻子」

を用いて次数付 Q 代数 H f 、次数付 Q 代数準同型 ζ

mot

: H H f 及び環準同 型 per : H f C を構成し、 (2) の可換図式の類似 ( H H f で置き換えたも の ) が得られることを示す。最後に第 4 節で、 H f の部分代数として H を構 成し、それが (2) の可換図式を誘導することと (3) の諸性質を示す。

なお、本稿を書くにあたって参考にした文献は、主として Deligne-Goncharov の論文 [DG05] Burgos Gil-Fres´ an による解説記事 [BGF] 、および安田氏の解 説記事 [Yas14] であるが、その他 Deligne による論文 [Del89] および Bourbaki セミナーの記事 [Del13] 、定理 1.1 への別アプローチを与えている Goncharov のプレプリント [Gon] や寺杣氏による論文 [Ter02] なども適宜参考にした。

本稿の内容はあくまで、広大なるモチヴィック多重ゼータ値の世界への第 一歩に過ぎないので、より詳しい解説および進んだ話題に興味を持たれた読 者は是非これらも参考にして頂きたいと思う。

本節を終えるに当たり、当サマースクールの世話人、京都大学の佐久川憲 児氏、愛知県立大学の田坂浩二氏、福岡工業大学の三柴善範氏の三氏には、拙 稿の執筆に関して多大なる御支援と御尽力を頂いたことを感謝いたします。ま た、事前の勉強会およびサマースクールに参加し、さまざまな質問およびコ メントを下さった皆様、とりわけ慶應義塾大学の山本修司氏、大阪大学の安田 正大氏、草稿に対して有益なコメントを下さった佐久川氏には、本稿の内容 に関する筆者の理解を深めて下さったことをこの場を借りて感謝いたします。

2. 混合 Tate モチーフの圏とその淡中群

本節では、 [DG05] でその構成法が与えられている「 Z 上の混合 Tate モチー

フの圏」 MTM

/Z

について、その性質を述べ、次にそれら諸性質を認めた上で

の Q 代数 A

MT

の定義および定理 1.2 (1) の証明の概略、最後に [DG05] にお

ける MTM

/Z

の構成法の概略について解説する。しかしながら、これらの内

容をきちんと理解する為には、そのような圏が構成できる ( 存在する ) と信じ

られていた背景である ( 混合 ) モチーフの理論の大枠について知っておくこと

が有用であると思われるので、まずはこれについて非常に大雑把にではある

が触れる。なお、 2.1 節に関して、より詳しい内容に興味がある読者は、例え

ば Andr´ e の本 [And04] などを参照されたい。

(4)

2.1. モチーフ論的背景 . そもそも、モチーフとは、 Weil 予想の解決を動機の 一つとして、 Grothendieck によって提唱された対象で、しばしば標語的に言 われているように代数多様体の「普遍的なコホモロジー理論」というべきも のである ( 正確には、本稿で扱うモチーフとは通常「混合モチーフ」と呼ばれ ているもので、 Grothendieck が当時考えていた「純モチーフ」を含む、より 一般的な概念である ) 。また、一般にコホモロジー理論というものが、位相空 間や代数多様体などの「図形」の、 「線型代数化」であることを考えると、 「代 数多様体の圏の普遍的な線型代数化」と言うこともできる。

現在では、一言で「モチーフ」といっても様々な変種・一般化が提唱され 研究されているが、ここでは最も基本的な「体 k 上の ( Q 係数 )( 混合 ) モチー フの圏」 MM

/k

について、もう少しだけ数学的に述べる。

k 上の代数多様体の圏を Var

/k

と書くことにすると、圏 MM

/k

は少なく とも以下のような性質があると期待されている :

函手 h : Var

op/k

MM

/k

が存在して、 Var

/k

に対する様々なコホモロ ジー理論 ( エタールコホモロジー、 de Rham コホモロジー、 (k C どの場合には )Betti コホモロジーなど ) およびそれらの間の比較同型 等はこれを経由する。特に各モチーフに対してそのコホモロジー ( れは「実現」などとも呼ばれる ) が定義される。

MM

/k

は淡中圏となっており、自然な同型 h(X × Y ) = h(X) h(Y ) h(Spec k) = 1 が存在する。また、各対象 M は重さフィルトレーショ ンと呼ばれる部分対象列 (W

i

M)

i∈Z

をもつ。

代数多様体 X Var

/k

に対し、 MM

/k

において自然な直和分解 h(X) = ⊕

0≤i≤2 dimX

h

i

(X)

が存在し、モチーフ h

i

(X) の各実現は、対応するコホモロジー理論に おける X i 次コホモロジー群と自然に同型になっている。さらに、

M = h

i

(X) のときに (W

i

M )

i∈Z

が各実現に誘導するフィルトレーショ ンは、対応するコホモロジー群が元来もつ重さフィルトレーションと 一致する。

MM

/k

における拡大群 Ext

MM

/k

は、代数的サイクル ( または代数的 K 群 ) の言葉で具体的に記述される。

ここで、例の紹介とこの後の話の準備とを兼ねて、 「 Tate モチーフ」を導入 する。アフィン直線から一点を除いてできる Q 上の代数多様体 X = A

1Q

\ { 0 } を考えると、 h(X) は圏 MM

/Q

において 0 次部分 h

0

(X) 1 次部分 h

1

(X) 分解する ( この場合には h

2

(X) は 0 となる ) が、この 1 次部分を Tate モチー フとよび Q

mot

( 1) と書く (mot の代わりに M を用いたり、添字を省略した りすることもよくある ) 。

一方、上で述べたように Betti コホモロジー H

B

: Var

op/Q

Vec

Q

;   X 7→

i≥0

H

Bi

(X( C ), Q )

に対応して「 Betti 実現」 ω

B

: MM

/Q

Vec

Q

があるのであるが、この函手 によって Q

mot

( 1) は H

B1

( C \ { 0 } , Q ) に移り、同様に代数的 de Rham コホモ ロジー

H

dR

: Var

op/Q

Vec

Q

;   X 7→

i≥0

H

dRi

(X/ Q )

(5)

に対応する「 de Rham 実現」 ω

dR

: MM

/Q

Vec

Q

によって Q

mot

( 1) は H

dR1

((A

1Q

\ {0})/Q) に移る。すなわちモチーフ Q

mot

(−1) は、その 0 次コホ モロジーが 0 で、 1 次コホモロジーが 1 次元であるような数学的対象であり、

いわば「穴そのもの」の数学的表現である。

さらに、 de Rham の定理の代数幾何学的表現である (Var

op/Q

から Vec

C

の函手間の ) 自然同型 comp : H

dR

C

=

H

B

C に対応して (MM

/Q

から Vec

C

への函手間の ) 自然同型

comp : ω

dR

C −→

=

ω

B

C

があり、これに Q

mot

(−1) を代入すると、同型 H

dR1

((A

1C

\ {0})/C) = H

B1

(C \ { 0 } , C ) が得られる。これは 1 次元 C ベクトル空間の間の同型であるが、その 各々が自然な Q 構造を持ち、それと上記同型との「ずれ」が微分形式 t

1

dt の穴の回りでの積分、すなわち「周期 2πi 」として現れる。

なお、このあたりのより詳しい説明については、例えば望月氏による数学 セミナーの記事 [ ] が参考になる。

さて、圏 MM

/Q

は淡中圏である ( と期待されている ) ので、対象 Q

mot

( 1) のテンソル積および双対を取ることで対象 Q

mot

(n) = Q

mot

( 1)

(n)

(n Z ) のような対象もこの圏にあると考えることができる。これらの拡大によって 作られる対象が「混合 Tate モチーフ」である。より正確には以下のようにし て Q 上の混合 Tate モチーフの圏 MTM

/Q

が ( 圏 MM

/Q

の存在を仮定した上 で、 ) 定義される :

定義 . MM

/Q

の充満部分圏で、対象 Q

mot

(−1) を含み、テンソル積、双対、

拡大、部分商を取る操作で閉じているもののうち最小のものを MTM

/Q

と書 き、その対象を Q 上の混合 Tate モチーフとよぶ。

ちなみに、 Q

mot

(n) は以下のような重さフィルトレーションをもつ ( と期待 される ):

W

i

Q

mot

(n) =

{ Q

mot

(n) (i ≥ −2n のとき ) 0 (i ≤ − 2n 1 のとき ) このような状況を、 Q

mot

(n) は重さ 2n であるという。

さらに、事情はより複雑になるので詳細は省略するが、より一般の「よい」

スキーム S に対しても、 S 上のモチーフ」という概念が定義できると信じら れており、特に「 Z 上のモチーフの圏」もあると信じられている。そこで、こ の圏の存在を仮定すれば、上と同様に考えることで「 Z 上の混合 Tate モチー フの圏」も定義することができる。

さて、とはいえ現時点ではモチーフ全体の圏の存在は、体上の場合ですら、

更に深い予想を認めたりしない限り全く証明されていないため、ここまでの 議論はあくまで heuristic なものである。しかし、 Q 上および Z 上の混合 Tate モチーフの圏 ( と呼ぶに相応しい圏 ) に限れば、いかなる予想も認めることな くその構成法が得られている。次小節では、公理的にその圏の存在について 述べる。

2.2. 本節の主定理 - 混合 Tate モチーフの圏の存在 . まず、佐久川氏の講演 で導入されたように、 Q (1)

B

= 2πi Q Vec

finQ

Q (1)

dR

= Q GrVec

finQ

( 数 1) であったことを思い出しておく。

定理 2.1. 6 つ組 (MTM

/Z

, Q

mot

(1), ω e

dR

, ω

B

, comp, F

) であって以下の条件

をみたすものが存在する :

(6)

(1) (a) MTM

/Z

は Q 線型 Abel テンソル圏で Q

mot

(1) はその可逆な対象。

(b) ω e

dR

: MTM

/Z

GrVec

finQ

および ω

B

: MTM

/Z

Vec

finQ

Q 線型テンソル函手。

(c) comp : ω

dR

⊗C

=

ω

B

⊗C MTM

/Z

から Vec

finC

へのテンソル函 手間の自然同型。ここで、 ω

dR

は、 ω e

dR

に忘却函手 GrVec

finQ

Vec

finQ

を合成したものである。

(d) F

: ω

B

ω

B

は MTM

/Z

から Vec

finQ

へのテンソル函手間の自 然同型。

(2) MTM

/Z

は函手 ω

B

および ω

dR

をファイバー函手とする Q 線型ニュー トラル淡中圏である。

(3) ω

B

( Q

mot

(1)) = Q (1)

B

ω e

dR

( Q

mot

(1)) = Q (1)

dR

であり、自然同型が 誘導する同型 comp : ω

dR

( Q

mot

(1)) C ω

B

( Q

mot

(1)) C は、以下 の図式を可換にする :

ω

dR

(Q

mot

(1)) C

comp

=

//

=

ω

B

(Q

mot

(1)) C

=

Q C

mult

// C oo

mult

2πi Q C ここで mult は掛け算から誘導される線形写像を表す。

(4) 自然数 i および整数 mn に対し、拡大群 Ext

iMTM

/Z

( Q

mot

(n), Q

mot

(m)) は、 (i = 0 かつ m = n) または (i = 1 かつ m n 3 以上の奇数 ) のとき 1 次元 Q ベクトル空間に、それ以外のとき 0 になる。ここで、

Q

mot

(n) は、 n 0 のとき Q

mot

(1)

n

n < 0 のとき Q

mot

(−n)

と定 義する。

(5) 全ての MTM

/Z

の対象 M に対し、偶数で添字付けられた増大フィル トレーション、即ち · · · ⊂ W

2m

M W

2m+2

M ⊂ · · · なる M の部分 対象の列で次の条件を満たすものが存在する :

(a) 十分大きな偶数 i に対して W

i

M = M 、十分小さな偶数にたいし て W

i

M = 0 となる。

(b) 部分商 Gr

W2n

M = W

2n

M/W

2n2

M は、 Q

mot

(n) の有限直和 に同型である。

(c) 自然な射 ω e

dR

(W

2n

M ) ω e

dR

(M ) は同型 e

ω

dR

(W

2n

M) = W

2n

e ω

dR

(M )

を誘導する。ここで、右辺は

m≥n

ω e

dR

(M )

m

と定義する。

(6) F

2

= Id

ωB

であり、図式

ω

dR

C

Idconj

//

comp

ω

dR

C

comp

ω

B

C

F

Id

// ω

B

C

Idconj

// ω

B

C は可換である。ここで conj は複素共役写像である。

定義 . 定理の圏 MTM

/Z

を Z 上の混合 Tate モチーフの圏 (The category of

mixed Tate motives over Z ) 、函手 ω

B

ω

dR

をそれぞれ Betti 実現 (Betti

realisation)de Rham 実現 (de Rham realisation) 、自然同型 comp を

比較同型 (comparison isomorphism) とよぶ。

(7)

練習 2.2. 以下を証明せよ。

(1) 同型 F

( Q

mot

(n)) : Q (n)

B

Q (n)

B

は ( 1)

n

倍写像である。

(2) 対象 Q

mot

(n) は、 W

2n

Q

mot

(n) = Q

mot

(n) W

2n2

Q

mot

(n) = 0 みたす。

(3) 部分対象の列 (W

2n

M)

n∈Z

は条件 (5-a)(5-b) で一意に定まる。

(4) MTM

/Z

における射 f : M N に対し、 f |

WiM

: W

i

M N W

i

N を経由し、 f (W

i

M ) = f (M ) W

i

N となる。

註 2.3. (1) ここに現れている F

を前小節の言葉で言うと、一般に各 X Var

/Q

に対して C の複素共役写像が位相空間 X( C ) に連続かつ函手的 に作用することから函手 H

B

: Var

op/Q

Vec

Q

の自然自己同型が誘導 されるが、これに対応すべき函手 ω

B

の自然自己同型が F

である。

(2) 上の定理によると、混合 Tate モチーフ M に対し ω

dR

(M ) の重さフィ ルトレーションは、偶数で添字付られており、また自然な分裂をもつ ことになるが、このような現象は混合 Tate モチーフ特有の現象であ り、一般のモチーフの de Rham 実現に対してはこのようなことは成 り立たない。

2.3. 定理 2.1 の帰結 . 以下では、この定理を認めた上で、定理 1.2 (1) の証明 の概略を述べる。まず、 MTM

/Z

が淡中圏であることから以下の定義が意味を 持つ :

定義 . アフィン群スキーム G

dR

を Aut

dR

) と定義する。

さて、各 Q 代数 R Alg

Q

およびテンソル函手間の射 ξ Aut

dR

R) に対し、 Q

mot

( 1) を代入することで Mod

R

の同型

ξ( Q

mot

( 1)) : ω

dR

( Q

mot

( 1)) R −→

=

ω

dR

( Q

mot

( 1)) R

が得られるが、定理 2.1 の条件 (3) より ω

dR

( Q

mot

( 1)) RR 上階数 1 の 自由加群であるので、 R

×

の元 r が対応する。この対応は R に関して函手的 である。

定義 . 上の対応 “ξ 7→ r” によって定まる Q 上のアフィン群スキームの準同型 G

dR

G

m

を ev

Q(1)

と表す。また、核 Ker (ev

Q(1)

) U

dR

とおく。

一方、各 R Alg

Q

および r R

×

M MTM

/Z

に対し、 ω e

dR

(M)⊗R が次 数付 R 加群の構造をもつので「次数 n の部分は r

n

倍する」という ω

dR

(M ) RR 加群の自己同型が定義できる。これは M について函手的なので、 MTM

/Z

から Mod

R

への函手 ω

dR

R の自然自己同型を定める。さらにこれはテンソル 函手の間の射になっているので、群 Aut

dR

R) 、すなわち Aut

dR

)(R) の元 ξ を定める。これは R に関して函手的である。

定義 . 上の対応 “r 7→ ξ” によって得られる Q 上のアフィン群スキームの準同 型 G

m

G

dR

τ とおく。容易に分かるように、 ev

Q(1)

τ = (−)

1

が成 り立つ。

さて、 “(r, u) 7→ τ (r)

−1

u τ (r)” によって群 G

m

U

dR

へ右から作用し、

O (U

dR

) へは左から作用する。したがって O (U

dR

) は自然に次数付 Q 代数と なる。

定義 . 次数付 Q 代数 O(U

dR

)

A

MT

と書く。

以下は容易に確かめられる :

(8)

命題 2.4. アフィン群スキームの自然な同型 U

dR

⋊ G

m

= G

dR

が存在する。

さて、定理 2.1 を認めた上で定理 1.2 (1) の証明の概略を述べる。まず、群 U

dR

は定義より各 Q

mot

(n) (n Z ) へ自明に作用するので、定理 2.1 (5) より MTM

/Z

の任意の対象に対して冪単に作用する。このことより U

dR

が副冪単 代数群となることが分かる。

次に、 Lie 代数 Lie U

dR

を考えると、これにも自然に G

m

の作用が誘導され るので、固有空間の部分のみを取って u

grdR

=

n∈Z

(Lie U

dR

)

n

と “ 離散化 ” す ると、これは “ 擬冪零 Lie 代数とよばれる冪零 Lie 代数の無限次元版のよう なものになる。また各 (Lie U

dR

)

n

は有限次元となることも分かる。

一方、誘導表現および制限に関して、

Res

GUdR

dR

( Q ) = Q 、   Ind

GUdR

dR

( Q ) = ∏

n∈Z

Q

rep

(n)

( Q

rep

(n) G

m

を経由して n 乗倍で作用する G

dR

1 次元表現 ) が成り立つ ので、淡中圏の一般論と代数群の簡単な議論から、 Lie 代数コホモロジーと MTM

/Z

における拡大群との同型

H

i

(u

grdR

, Q ) = ⊕

n∈Z

Ext

iMTM

/Z

( Q

mot

(n), Q

mot

(0)) が得られる。

この右辺は、定理 2.1 (4) によって i 2 のとき 0 i = 1 のとき ( 次数付 Q ベクトル空間として )

m∈N

Q

2m3

と同型になる ( Q

n

は単に Q のコピーで ある )

すると、 Lie 代数コホモロジーを用いた擬冪零 Lie 代数の構造に関する定理か ら u

grdR

m∈N

Q

2m+3

で生成される自由 Lie 群となることが分かり、 O (U

dR

) が次数付普遍包絡代数 U (u

grdR

) の双対の ( 上と同じ意味での )“ 離散化 ” である ことから定理 1.2 (1) が従う。

註 2.5. ここで、佐久川氏の講演との関係について触れておく。与えられた データから自然にテンソル函手

ω

H

: MTM

/Z

−→ MHT

Q

が、それぞれからの ω

dR

と両立するよう定義でき、これがアフィン群スキー ムの全射準同型 G

HdR

G

dR

を誘導することが確かめられる。

2.4. MTM

/Z

の構成の概略 . ここでは定理 2.1 の証明、すなわち Z 上の混 合 Tate モチーフの圏の構成のアイディアについて述べる。より詳しくは、例 えば [DG05] の第 1 章、 [BGF] 4.1 節から 4.5 節まで、 [Yas14] の第 9 節、第 10 節などを参照されたい。

ここで構成の鍵となるのは、

(i): Hanamura Levine Voevodsky らによる三角化圏「 D

b

(MM

/k

) 」の 構成、および

(ii): Borel による、代数体 ( または代数体の整数環 ) の代数的 K 群のラ ンクの計算

の二つである。まずこれらについて解説する。

まず、 (i) について述べる。先ほど、圏 MM

/k

の存在は分かっていないと述

べたが、実はその導来圏「 D

b

(MM

/k

) 」と呼ぶに相応しいテンソル三角化圏

については、少なくとも k の標数が 0 の場合には、いかなる予想も認めるこ

となく上記三者によって独立に構成されている。ここでは k = Q の場合のみ

(9)

を考えることにし、その圏を DM( Q ) と書くことにすると、この圏の特に重 要な性質として以下のようなものがある :

テンソル函手 M : Var

op/Q

DM( Q ) があり、

(D

b

(MM

/Q

) の言葉では Q

mot

(n)[0] に対応すると考えられる ) 可逆な 対象 Q

mot

(n) が圏 DM(Q) にあり、

三角化圏 DM( Q ) から、三角化圏 D

b

(Vec

finQ

) への Betti 実現および

de Rham 実現とよばれる函手、さらに比較同型に対応するこれらの

函手 ( ⊗C したもの ) の間の自然同型があり、

XY が既約非特異代数多様体のときは、自然な同型

Hom

DM(Q)

(M (X), M (Y )(n)[m]) = K

2nm

(X ×

Q

Y )

(n+dimX)

が存在する。ここで、左辺の ( )(n) は対象 Q

mot

(n) のテンソル積を表 し、右辺は (2n m) 次代数的 K ( ⊗Q を施したもの ) の、 Adams 作用素に関する同時固有空間 ( より正確には「 Ψ

k

= k

n+dimX

部分」 ) とよばれるものである。

さて、上の右辺に現れている代数的 K 群とはスキームの不変量の一つであ るが、一般には計算が大変困難な対象である。しかし、スキーム X が代数体 k のスペクトラムのときにはそのランクが Borel によって計算されている。こ れが (ii) の意味であり、特に X = Spec Q の場合には以下が成り立つ : 定理 2.6. 整数 ab に対し、 Q ベクトル空間 K

a

(Spec Q )

(b)

(1) a = b = 1 のときは Q

×

Q に、

(2) (a = b = 0) または (b が 3 以上の奇数かつ a = 2b 1) のときは Q 同型で、

(3) それ以外のときは 0 である。

これらから特に、圏 DM( Q ) における Tate モチーフ間の射の集合が以下の ように分かる :

2.7. 整数 m n i に対し、群 Hom

DM(Q)

( Q

mot

(n), Q

mot

(m)[i]) (1) i = 1 かつ m n = 1 のときは Q

×

Q に、

(2) (i = 0 かつ m = n) または (i = 1 かつ m n 3 以上の奇数 ) のとき は Q に同型で、

(3) それ以外のときは 0 である。

それでは、以上を踏まえて圏 MTM

/Z

の構成の方針を述べる。

まず、 Q 上の混合 Tate モチーフの圏の導来圏というべき圏 DMTM( Q ) を 以下のようにして定義する :

定義 . DM( Q ) の充満部分三角化圏であって、 Q

mot

(n) (n Z ) を含み、拡 大で閉じているようなもののうち最小のものを DMTM( Q ) と書く。

さて、一般に三角化圏から Abel 圏を取り出すための手法として Be˘ılinson- Bernstein-Deligne による t 構造の理論 ([BBD82] 参照 ) とよばれるものがあり、

上記の圏に対しては Levine によって具体的に t 構造が定義されている。さら

に、これから得られる Abel 圏を MTM

/Q

とすると、これが実際に Q 上の混

合 Tate モチーフの圏というべきものとなることも Levine によって示されて

いる。例えば拡大群については上の系を使って以下が分かる ( これらについて

は [Lev93] を参照。なお、定理 2.1 (4) とは、 Ext

1

の構造だけが違っているこ

とに注意されたい ):

(10)

命題 2.8. 自然数 i 及び整数 mn に対し、 Ext

iMTM

/Q

( Q

mot

(n), Q

mot

(m)) は (1) i = 1 かつ m n = 1 のときは Q

×

Q に、

(2) (i = 0 かつ m = n) または (i = 1 かつ m n 3 以上の奇数 ) のとき は Q に同型で、

(3) それ以外のときは 0 である。

最後に、 ( この箇所はやや ad hoc な構成ではあるが、 ) Z 上の混合 Tate チーフの圏 MTM

/Z

を圏 MTM

/Q

の充満部分圏として定義する。具体的には 以下の概念を用いる :

定義 . 圏 MTM

/Q

の対象 M に対し、 M の部分商 E および整数 n から成る任 意の完全系列

0 −→ Q

mot

(n + 1) −→ E −→ Q

mot

(n) −→ 0 が分裂するとき、 M は至る所不分岐であるという。

そこで、至る所不分岐であるような対象全体から成る MTM

/Q

の充満部分圏 を MTM

/Z

とおくと、これが定理 2.1 の諸性質を満たすことが確かめられる。

3. P

1

\ { 0, 1, ∞} のモチーフ論的パス空間

3.1. 本節の主定理 . 山本氏の講演では、 Q 代数

1

A

B0

1

A

dR0

、およびそれらの 間の C 代数同型 comp

AB,dR

:

1

A

dR0

C −→

= 1

A

B0

C が構成され、これらは

π( P

1

( C ) \ { 0, 1, ∞} ; 1, 0) Hom

AlgQ

(

1

A

B0

, Q ) および、

0 から 1 へのパス」 dch Hom

AlgQ

(

1

A

B0

, Q ) に対し、

((dch C) comp

AB,dR

)(ω(k)) = (−1)

dep(k)

ζ(k)

という性質を持っていたことを思い出しておく ( 佐久川氏の記事の例 2.3 (2) も 参照せよ )

以下では、 deg ω

0

= deg ω

1

= 1 によって

1

A

dR0

は次数付 Q 代数と思うこ とにする。なおこのとき、対応 e

k

ω(k) によって H

=

1

A

dR0

という同一 視ができることに注意しておく。

定義 . 以下では付録 5.2 の用語を用いる。 Q 上のアフィンスキーム Spec

1

A

B0

1

Π

B0

、圏 GrVec

finQ

におけるアフィンスキーム Spec

1

A

dR0

1

Π e

dR0

、また

1

A

dR0

の次数付を忘れて ( 通常の Q 上の ) アフィンスキームと思ったものを

1

Π

dR0

と 書く。 環

1

A

dR0

は次数付けられているので、

1

Π e

dR0

G

m

の自然な右作用をも つことにも注意。

定理 1.2 の証明における鍵の一つは、これらが実は「モチーフの圏から来 る」ことである。定理を正確に述べる前に、第 2 節の帰結として、

Betti 実現 ω

B

: AffSch(MTM

/Z

) −→ AffSch

/Q

de Rham 実現 e ω

dR

: AffSch(MTM

/Z

) −→ AffSch(GrVec

finQ

) 、お よび

比較同型 Spec(comp) : ω

B

× Spec C −→

=

ω

dR

× Spec C が得られることを注意しておく。

定理 3.1. 圏 MTM

/Z

におけるアフィンスキーム

1

Π

mot0

で次を満たすものが 存在する:

(1) 同型 ω

B

(

1

Π

mot0

) =

1

Π

B0

および

(11)

(2) 同型 ω e

dR

(

1

Π

mot0

) =

1

Π e

dR0

が存在し、自然同型が誘導する同型

Spec(comp) : ω

B

(

1

Π

mot0

) × Spec C −→

=

ω

dR

(

1

Π

mot0

) × Spec C は ( これらの同型を通じて )

Spec (comp

AB,dR

) :

1

Π

B0×

Spec

C

= Spec (

1AB0C

)

−→=

Spec (

1AdR0 C

) =

1

Π

dR0 ×

Spec

C

に一致する。

3.2. 比較同型から誘導される同型

Spec(comp)( C ) :

1

Π

B0

( C )

= 1

Π

dR0

( C )

による dch の像は、同一視

1

Π

dR0

(C) = Hom

AlgQ

(

1

A

dR0

, C) のもとで、「 ω(k) を ( 1)

dep(k)

ζ(k) に移す Q 代数準同型」となる。

定理 3.1 の証明については、例えば [DG05] 4 節や [BGF] 4.6 節などを 参照されたい。

3.2. Betti-de Rham 捻子とその 作用 ”. 以下この節では、定理 3.1 を用い て定理 1.2 (2) の図式の構成の準備を始める。まず本小節では、 Betti-de Rham 捻子を定義し、それがどのように

1

Π

B0

1

Π

dR0

とを結び付けているかをみる。

ここでは、

1

Π

mot0

の存在が不可欠であることに注意されたい。

定義 . 記号 ♯, ♭ B または dR を表すとする。このときテンソル函手 ω

, ω

: MTM

/Z

Vec

finQ

に対して Q 上のアフィンスキームを

P

♭,♯

= Isom

, ω

)

で定める。とくに P

B,dR

Betti-de Rham 捻子 (Betti-de Rham torsor) とよぶ。これは、 τ (r) G

dR

(r G

m

) の右からの合成によって G

m

の右作用 をもつ。

さて、これを Alg

Q

から Set への函手とみて特に Q 代数として O (P

B,dR

) を代入すると、

P

B,dR

( O (P

B,dR

)) = Isom

dR

⊗ O (P

B,dR

), ω

B

⊗ O (P

B,dR

))

となるが、左辺には Id

O(PB,dR)

に対応する普遍的な元があるので対応する右 辺の元、すなわち標準的な自然同型

can : ω

dR

⊗ O (P

B,dR

) −→

=

ω

B

⊗ O (P

B,dR

) を得る。

これは、 MTM

/Z

から Mod

O(PB,dR)

へのテンソル函手間の自然同型である ので、 AffSch(MTM

/Z

) から AffSch(Mod

O(PB,dR)

) への函手間の自然同型

AffSch(can) :AffSch(ωB

)

×

Spec (

O

(P

B,dR

))

−→= AffSch(ωdR

)

×

Spec (

O

(P

B,dR

)) を誘導する。

これに定理 3.1

1

Π

mot0

を代入してその条件 (1) (2) も考慮すると、 Q のアフィンスキームの射

AffSch(can)(

1

Π

mot0

) :

1

Π

B0

× P

B,dR

−→

= 1

Π

dR0

× P

B,dR

が得られ、これと第 1 成分への射影を合成して、 Q 上のアフィンスキームの射 can :

1

Π

B0

× P

B,dR

−→

1

Π

dR0

が得られる。

(12)

練習 3.3. 上の写像 can は各 R Alg

Q

に対して写像 can(R) :

1

Π

B0

(R) × P

B,dR

(R) −→

1

Π

dR0

(R)

を誘導するが、これによる (α, ξ)

1

Π

B0

(R) × P

B,dR

(R) の像は以下の元と一 致することを示せ :

ξ P

B,dR

(R) に対応する自然同型 ω

dR

R ω

B

R

1

Π

mot0

AffSch(MTM

/Z

) を代入して得られるアフィンスキーム間の射

1

Π

B0

× Spec R

1

Π

dR0

× Spec R から誘導される写像

1

Π

B0

(R)

1

Π

B0

(R) による α の像」

3.3. 図式の構成 . さて、

1

Π

B0

( Q ) には「 0 から 1 へのパス」に対応する元 dch が存在したので、これによる評価写像 “p 7→ can(dch, p)” を考えて Q 上のア フィンスキームの射

ev

dch

: P

B,dR

−→

1

Π

dR0

が得られる。容易に分かるように、これは G

m

同変である。

さらに、 P

B,dR

( C ) = Isom

dR

C , ω

B

C ) には、比較同型写像に対応 する元 comp が存在するので、これの ev

dch

による像を dch

dR

とする。これは

1

Π

dR0

(C) の元となる。

さて、定義より圏 AffSch

/Q

における図式 Spec C

dchdR

$$ H

H H H H H H H H

comp

zzuuu uuu uuu

P

B,dR ev

dch

//

1

Π

dR0

は可換であるので、対応して圏 Alg

Q

における可換図式

H

= O (

1

Π

dR0

)

(evdch)

//

(dchdR)

&&

L L L L L L L L L L

L O (P

B,dR

)

comp

zzvvv vvv vvv v

C を得る。

補題 3.4. 写像 (dch

dR

)

(=ζ

an

と書く ) は e

k

を ( 1)

dep(k)

ζ (k) に移す。

証明 . (dch

dR

)

1

Π

dR0

( C ) は定義により、 C 値点 (dch, comp)

1

Π

B0

( C ) × P

B,dR

( C ) の can による像であるが、一方これは、系 3.2 および練習 3.3 より

e

k

を (−1)

dep(k)

ζ (k) に移す Q 代数準同型」である。

定義 . 次数付 Q 代数 O (P

B,dR

)

H f 、次数付 Q 代数準同型 (ev

dch

)

ζ

mot

、 環準同型 comp

per とかく。

これで、定理 1.2 (2) において H H f に置き換えた可換図式が得られた。

註 3.5. ここで再び、佐久川氏の講演との関係について触れておく ( 2.5

参照せよ ) 。函手 ω

H

はアフィンスキーム間の射 − ◦ ω

H

: P

B,dRH

P

B,dR

を誘

導し、従って環準同型 ω

H

: O (P

B,dR

) → O (P

B,dRH

) を誘導する。上で構成し

(13)

た図式は、この準同型を以下の様に経由する :

H

ζ

an

//

ζmot

? ? ? ? ? ? ? ? C

H f

ω

H

//

comp

55 j

j j j j j j j j j j j j j j j j j j j j

j O (P

B,dRH

)

compH

:: v

v v v v v v v v v

( ここで comp

H

は、佐久川氏の原稿における comp

である ) 。なお、左上から 右下へ行く射が佐久川氏の講演における ζ

H

に符号の違いを除いて対応する、

より正確には ( 1)

dep(k)

ζ

mot

(e

k

) は ω

H

によって ζ

H

(k) に移される。

4. Betti-de Rham 捻子およびその変種の幾何学

ここでは定理 1.2 (2) および (3) を示す。第 3 節においては Betti-de Rham 捻子 P

B,dR

の関数環として H f を導入したが、実際はこの環でもまだ大きす ぎて所望の不等式を得ることができない。そこで本節では P

B,dR

の変種を構 成し、その関数環として H を定義する。これが実は自然に H f の部分環にな ること、および ζ

mot

の像を含むことが分かり、またその環論的諸性質が幾何 学的議論から分かる。

4.1. 準備 - H の構成 .

定義 . (1) MTM

/Z

の対象 M W

2

M = 0 を満たすとき、有効 (ef- fective) であるとよぶ。有効な対象全体からなる MTM

/Z

の充満部分 圏を MTM

eff/Z

と書く。また、 ∈ { B, dR } に対し、函手 ω

MTM

eff/Z

への制限を ω

eff

と書く。

(2) 記号 は B または dR であるとする。このとき、

(a) 函手 ω

eff

から函手 ω

eff

へのテンソル函手間の射全体のなすアフィ ンスキーム Hom

eff

, ω

eff

) を P

♭,♯

と書く ( 表現可能性について は例えば [Del90] Proposition 6.6 を参照 )

(b) アフィンスキーム Hom

Q

( Q

( 1), Q

( 1))

Q

A

1Q

を単に H

♭,♯

と 書く。

(c) 自然変換 α : ω

eff

ω

eff

に対して α( Q

mot

( 1)) を対応させる写 像から誘導されるアフィンスキーム間の射を ev

♭,♯

: P

♭,♯

H

♭,♯

、 または単に ev と表し、 ( Q

mot

( 1) における ) 評価写像とよぶ。

(d) 零写像 0 Hom

Q

( Q

( 1), Q

( 1)) に対応する H

♭,♯

の閉点を 0 と書く。また、この点の ev

♭,♯

に関する引き戻しを ∂P

♭,♯

と書く。

ここまでを図示すると以下のようになる。ここで 2 つの四角形はどちらも カルテシアンになっている。

∂P

♭,♯

//

P

♭,♯

ev

P

♭,♯

oo

{0} // H

♭,♯

oo H

♭,♯

\ { 0 } 練習 4.1. 右の四角形がカルテシアンになることを示せ。

特に (♭, ♯) = (B, dR) の場合を考えると、 P

B,dR

には τ (r) G

dR

(r G

m

)

の右からの合成によって G

m

が右から作用、左からの合成によって F

(14)

Aut

B

) が左から作用し、一方 H

♭,♯

への G

m

の右作用を逆数のスカラー 倍、 F

の作用を 1 倍で定めると、 ev : P

B,dR

H

B,dR

はこれら 2 つの作 用と可換になる。

定義 . アフィンスキーム P

B,dR

の、作用 F

による商アフィンスキームを P

+B,dR

と書き、 ev が誘導する Q 上のスキームの射 P

+B,dR

→ {±1}\H

B,dR

を ev

+B,dR

と書く。

また、 G

m

の左作用によって O (P

+B,dR

) には自然な次数が付けられる。そこ で次数付 Q 代数 O (P

+B,dR

)

H と書く。

註 4.2. (1) Hom

Q

( Q

( 1), Q

( 1)) は 1 次元 Q ベクトル空間、従って H

♭,♯

はアフィン直線 A

1Q

( 非標準的に ) 同型である。

(2) 自然な同型 O (P

+B,dR

) = O (P

B,dR

)

F=1

が存在する。ここで右辺は環 O (P

B,dR

) F

不変元全体を表す。なお、逆にこれを定義とするこ ともできる ( すなわち P

+B,dR

= Spec ( O (P

B,dR

)

F=1

) とおく ) 。 (3) 作用と ev の両立性により、 ∂P

B,dR

にも F

の作用、 G

m

の作用が誘

導されることが分かる。また、 P

dR,dR

および ∂P

dR,dR

にも同様な G

m

の右作用が存在する。

さて、定理 2.1 (5-c) および W

2

O (

1

Π e

dR0

) = ⊕

n≥1

O (

1

Π e

dR0

)

n

= ⊕

n≥1

(

1

A

dR0

)

n

= ⊕

n≥1

H

n

= 0

より O (

1

Π

mot0

) は Ind(MTM

eff/Z

) の対象となる。したがって、第 3 節で定義し た射

1

Π

B0

× P

B,dR

1

Π

dR0

は同様の構成により

1

Π

B0

× P

B,dR

1

Π

dR0

へと延長され、従って dch での評価写像によって射 P

B,dR

1

Π

dR0

が誘導さ れる。

さらに、 dch

1

Π

B0

( Q ) は F

不変元であることから、この射は P

+B,dR

1

Π

dR0

を誘導する。

ここまでを纏めたものが以下の左図であり、それを関数環に直したものが 右図である。以下、右図の斜めの射も ζ

mot

と書く。

P

B,dR

//

 _

1

Π

dR0

H f

ζ

H

oo

mot

P

B,dR

;; w

w w w w w w w

P

+B,dR

EE

H

OO

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