配色による食彩評価に関する研究
―食品と食器の色彩の関係性について−
The Evaluation of Meal Environment using Color Scheme - The Color Relation of Food and Tableware-
5117E031-8 藍 燕婷 指導教員 長 幾朗 教授
LAN Yanting Prof. CHOH Ikuro
概要:本研究では、食器に色彩を付加する事による食品と配色による食彩(食事の色彩)環境の改善を試み、料 理に対する印象変化と効果について検証した。食事の際の視覚効果は、味覚や嗜好の重要な役割を果たし、視覚変 化により味覚に大きな影響を与える事が可能となる。本実験では、食彩環境における配色は、喫食者に情動的な影 響を与える事を明らかにした。また、食品と食器の色彩関係を測定し、印象変化および食彩評価を行った。実験の 結果、色彩イメージは食彩イメージへの応用性があり、食器に色彩を付加することによって、料理に対する印象を 変化させる事ができる事を確認した。また、これらの結果を踏まえて、食材に適した食器の色彩を変化させるイン タラクティブな食彩環境システムを提案した。
キーワード:配色、食器、食事環境、感性評価
Keywords: color scheme, tableware, meal environment, sensibility evaluation
1.食事における視覚の重要性
食事は生命活動の維持に必要な栄養素を提供 する役割を持つと同時に、食生活を豊かにするた め、 「おいしさ」を備える必要がある。食事の「お いしさ」は当然ながら料理の味や香りが基本とな るが、料理の外観や食事環境といった視覚的要因 が大きく影響している。視覚情報は食物の存在の 認知や食物と非食物の識別に不可欠な情報であ り、さらに色彩や盛り付けは食欲に影響を及ぼす
[1]
。つまり、食事における視覚的な要素を付加す ることで喫食に情緒的な変化をもたらす事がで きる。本研究では、食事環境の彩り(いろどり)に
着目した。2.食彩環境について
本研究では、食事の色彩を食彩と定義し、また、
色彩環境を食彩環境と呼ぶ。食彩環境とは、
照明色、壁紙の色、食卓の色、食器の色、食物の盛り 付けなどの要素が含まれている。食彩環境におい ては、料理や食品に応じて、
ふさわしい色彩を配する事で視覚的な「おいしさ」の実現や情緒的な 印象を与える事が可能になる。
例えば、スーパー マーケットで購入した弁当でも、適切な食彩を配 置する事で、より「おいしそう」なイメージを形 成し、その印象を変える事ができる。このように印象を啓発するために、食彩は重要な課題である。
食彩環境については、食器と食品の色彩の関係を
解明し、形式とする事が重要である。3.色彩の心理効果について
色彩は、色相、明度、彩度の三属性とトーン(色
調)に大別される。これらがもつ心理作用をコン トロールする事により、受け手に与えるイメージを変化させる事ができる。
人々が色に抱く共通のイメージを構成して、色彩に対する心理的なカラ ーイメージと言語イメージが開発されている。
図
1. カラーイメージスケール
[*1]先行研究では、色彩変調[2]
、記憶色、
補色調和について色彩の感性効果が味覚的な印象に影響 を及ぼす事が明らかにされているため、本研究で は、
カラーイメージは食彩イメージに応用できると推測した。
中でも、食器と食品の色彩調和がどのような印象を与えるかについて測定する事が
課題となった。3.食器の色彩による印象変化に関する実験
食器は料理を盛り付ける役割を持ち、また料
理をおいしく見せるために、色や質感によって
2
選択される。それだけではなく、食器の色彩は食の知覚に影響する。食器の色は、食欲に影響する 事
[3]が明らかとなっている。
黒い皿に白いパスタを載せた場合よりも、白い皿に載せた方が
22%もその量を多く錯誤する傾向がある。その要因に
ついては、食べ物と皿の色のコントラストが弱い
ほど、喫食者は食べ物の量を意識しなくなる傾向がある。つまり、
皿の色を変える事により、喫食者を錯誤させて、
摂食する量を加減する事が可能となる。このように、食器の色彩を変化させる事 で、喫食者に心理的な効果を与え、食欲や料理に 対する印象を変化させる事が可能である。
本実験では、以下の課題について検証した。
1)食器と食品の色彩調和の効果測定。補色調和
は料理を引き立てる効果があるが、喫食者に「お いしい」印象を与える事ができるか。同系色調和、
類似色調和による料理に対する印象の変化など
を解明する。
2)食器に色彩を付加する事により、料理に対す
る印象や食欲はどのような影響を受けているか。
3)カラーイメージは、食彩イメージとして応用
できるか。
実験内容
実験 1:単色の食品に適合した同系色(アナロ ジー) 、
近似色(インターミディエート)、
補色(コンプリメンタリー)の関係にある皿に盛り付けた 時の食品に対する印象評価を行い、食品と食器の 色彩調和効果を測定した。
実験2:
調理した食品に適合した配色を考慮し、
それぞれの食品と色彩の印象評価と、異なった食器による印象変化について測定した。
図 2.実験に使用した食品と皿の様子
(上:ピーマンの刺激図、下:パスタの刺激図)
4.実験考察
実験結果により、以下の結論を得た。
図
3.実験結果(左:トマトの印象評価
右:紫の皿に対するパスタの印象評価)1、補色調和は食品の色を引き立てる効果がある
が、それが「おいしい」という認識には、必ずし
も繋がらない。2、「おいしそう」という感覚は色々な情報を総 合的に判断した上で認識している。例えば、「栄
養がありそう」「温かそう」といった主観的な印 象も影響している。
3、食器の色彩変化は、同じ料理においても、異
なる雰囲気を醸成する事が明らかとなった。
その要因は、色彩そのものが、
前述の色彩イメージを 有している事にもある。4、カラーイメージは、食彩環境においても適用
し得る。
5.今後の展望
近年、食に関する環境でも、知覚や認知に変化
を加える手法のひとつとして、
プロジェクション マッピングが用いられている。プロジェクション マッピングは、環境に機器や装置を備える必要がなく、食環境に変化を加える事ができる利点があ る。本研究の結果を基に、
プロジェクションマッ ピングなどを用いた視覚的な「おいしさ」を演出する事を試みたい。
参考文献
[1] 阿部 啓子(ネスレ栄養科学会議監修),「味覚のし くみとその不思議-食と味覚」,建帛社,東京,pp1- 32,2008.
[2] M. Nishizawa et al.: Projective-AR System for Customizing the Appearance and Taste of Food.
Proceedings of 18th International Conference on Multimodal Interaction,MVAR2016-Article#6, 2016.
[3] 氏家秀太著,『パスタは黒いお皿で出しなさい』, 日本実業出版社,2016, pp53.
図表一覧
図1. カラーイメージスケール(日本カラーデザイン 研究所)
図 2.実験に使用した食品と皿の様子(藍,2020)
図3.実験結果(藍,2020)