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ベルの不等式を破る実在モデルの提示 白井仁人

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Academic year: 2021

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ベルの不等式を破る実在モデルの提示

白井仁人

一関工業高等専門学校

本稿では量子力学の諸問題のうち、とくにベルの不等式の破れという問題を解くた めに、ベルの不等式を破る実在的なモデルを提示し、それを分析する。そして、その 結果をもとに「量子力学への統計力学的アプローチ」と呼ぶ解釈を提案し、それがど のように量子力学の諸問題を解決するのか説明する。

われわれが解決したい問題は、量子力学の基礎にあるいくつかの概念的問題(哲学 的問題)である。それらを大きく分類すれば3つに分けられる。第一は「波束の収縮」

と呼ばれている。波動関数(状態ベクトル)は、系が観測されていない間、シュレー ディンガー方程式にしたがうが、系が観測された瞬間に急激に収縮し、その収縮はシ ュレーディンガー方程式にしたがわないように見える。この収縮をどのように解釈す るかという問題である。第二の問題は「粒子性と波動性の二重性」の問題である。電 子や原子はスクリーン上で観測されるときポツリポツリと1個1個点状に観測され、

粒子の性質をもつことがわかる。ところが、その点をたくさん集めると干渉縞が現れ、

波の性質ももつことがわかる。しかし、われわれの常識では粒子の概念と波動の概念 は両立しない。この二重性をどのように解釈すべきか。これが第二の問題である。第 三の問題は「物理量の非可換性」の問題である。これは、量子力学以外の諸理論で物 理量は可換であるのに、なぜ量子力学では物理量が非可換であるのかという問題であ る。この第三の問題には物理量の非両立性や基底系間の非直交性の問題なども含まれ ており、ベルの不等式の破れもこの問題の一種と言える。

これらの問題を解決するために、われわれは「量子力学への統計力学的アプローチ」

と呼ぶ解釈を提案してきた。この解釈はアインシュタインが提案した「アンサンブル 解釈(統計解釈)」と呼ばれる考え方に基づくものである。それは実在主義的な解釈で あるため、ベルの不等式の破れをいかに説明するのかが大きな課題であった。

本講演では、まず上述の3つの問題について簡単に振り返った後、アンサンブル解 釈によって第一と第二の問題が解決することを説明する。そして、第三の問題(つま りベルの不等式の破れをいかに説明するか)が課題として残されていることを指摘し た後、ベルの不等式を破る実在的なモデルを提示する。

その第一は「針金モデル」である。これは両端が折れ曲がった針金のモデルであり、

折れ曲がった方向に対して+1または-1の値をとる。その値に対する確率分布を考 えると、それがベルの不等式を破っていることを示す。第二のモデルは「白黒の糸モ デル」である。糸の上の各点は「白」か「黒」のどちらかの色になっており、「白」=

+1、「黒」=-1とすれば、やはり+1と-1の2値に対する確率分布が考えられる。

そして、その確率分布がベルの不等式を破っていることを示す。

われわれはこれらのモデルを詳しく分析し、なぜベルの不等式が破れるのかを明ら

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かにする。その後、そのモデルでは説明できない量子力学の性質があることも指摘し、

それも含めて量子力学の諸性質すべてを説明するにはどのような解釈が必要かを説明 する。そして、量子力学の諸性質を説明できる解釈としての「統計力学的アプローチ」

を提案し、それがどのように諸性質を説明するのか述べる。

参照

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