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がんの分子診断法・治療法の開発のための臨床研究の計画と解析

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Academic year: 2021

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(1)

2010

7

9 日 統計数理研究所 オープンハ ウス

私の専門は、医学統計学です。とりわけ、臨床研究の計画と解析について研究しています。最近は、再生・移植 医療、ヒトゲノムテーラーメイド医療、医療機器などの先端医療技術の開発に興味があり、そこでの臨床研究が 主な研究対象となっています。以下では、その一例として、がんの分子診断法・治療法の臨床開発に関する研究 の一部を紹介します。

学生さんへのメッセージ:

理工系、医薬学系を問わず、医学・臨床研究に興味があり、医学統計の研究で学位を取得されたい方はご連絡 ください(

[email protected]

)。机の上での医学統計の理論や手法の研究だけでなく、実際に臨床研究プロジ ェクトに関わり、  (医師との交流や実務も含めた)実践も積んでいただきます。医学統計の理論と実践の 両面を追求します。

○ 階層混合モデルに基づく効果サイズの推定

○  生存時間における治療効果予測マーカーの探索とレスポンダーの同定

○  がんの個体差の検出

○  臨床有用性の評価のための臨床試験の計画と解析

 

がんの病型、予後、薬物への反応性などの臨床変数と関連のある遺伝子をゲノムワイドに探索するマイクロアレー研究が 近年盛んです。遺伝子データと臨床データの関連解析では、関連遺伝子の検出のための多重検定や機械学習法による判別解 析がこれまでの主流でした。これとは異なる新しい解析のアプローチとして、個々の遺伝子と臨床変数の関連の大きさ(効 果サイズ)の推定に基づくアプローチを提唱しています。基本的なツールは、階層混合モデルと経験ベイズ推定です。これ まで、関連遺伝子の検出、遺伝子のランキング、判別解析、並びに、それらの必要サンプル数の設計の方法を開発していま す。

 

同じがんという診断がついていても、分子レベルでがん細胞を調べると、遺伝子の発現量には大きな個体差があることが 報告されています。例えば、複数のがん患者から採取したがん細胞のサンプルと、同じ患者から採取した正常部位の遺伝子発 現量を比較することで、がん関連遺伝子を探し出す研究を考えます。このとき、従来法では、がん関連遺伝子が全てのがんサ ンプルにおいて、正常サンプルに比べて、一様に、高(または低)発現しているという仮定をおきます。しかし、実際には、

あるがん関連遺伝子(群)では、一部の がんサンプルでのみ高(または低)発現していることが報告されています。また、

別のがん関連遺伝子(群)では、別のがんサンプル   

(

サブセット)でのみで高(または低)発現していることが考えら れます(以下、左図

a-c

はそのイメージ。三つの例) 。

 以上のようながん特異的な発現パターンを検出するための一つの試みとして、モデルに基づく

two-way clustering

を開発し ました。 この方法を 骨 異形成症候群 髄 (

MDS

)の遺伝子発現データに適用した結果(右図)、いくつかの興味深い遺伝子・

MSD

の サンプルの クラスターが見つかりました。現在は、乳がんの病型解析への適用についても検討しています。

  A

B

の二つのがん治療があるとします。ある患者は、治療

A

を受けることで、治療

B

を受けるときよりも、生存時間が 長くなるとします (治療

A

の延命効果あり)。一方、別の患者では、治療

B

を受けることでより生存時間が長くなるとし ます(治療

B

の延命効果あり)。

 いま、治療前に採取したがん細胞から、ゲノムワイドに遺伝子発現量を測定したとします。このとき、治療

A

(または

B)

の延命効果が 期待できる患者のサブセットを遺伝子発現プロファイルに基づいて同定したい。最近になって、このような検 討が可能な大規模なランダム化比較試験が実施されるようになっています。しかし、解析法は十分には確立していません。

この分野は、現在の臨床腫瘍学、そして、医学統計学での最重要分野の一つです。

 

がんの予後や薬物反応性の診断法の開発の多くは、今後、新しい治療法の開発に併せて行われることになるでしょう ( 治療法と診断法の同時開発)。治療法と診断法の臨床有用性の検証には、そのための特別なランダム化臨床試験の計画と解 析が必要になります。最近、適用事例も徐々に報告されており、今後、更なる方法論の研究が必要です。

Logrank 統計量のヒストグラム(左)と推定した効果サイズの分布(

右)

  



ˆ 0.30

米国アーカンソー大学がんセンターで実施

標準治療(メルファラン高用量化学療法と自家造 血幹細胞移植)を受けた進行例 351 

治療前の精製した形質細胞のマイクロアレー解析 Affymetrix U133Plus2.0 による約 5 万 5 千プロ ーブセットの発現量を測定

標準治療後の予後(生存時間)と関連する遺伝子 のスクリーニング

事例紹介: 多発性骨髄腫のゲノムワイド臨床研究 関連遺伝子検出のための ROC 曲線

とサンプルサイズの影響

松井 茂之   データ科学研究系 教授

がんの分子診断法・治療法の開発のための臨床研究の計画と解析

3 DE Components

(b) Profile 2 (c) Profile 3

Cancer Normal Cancer Normal Cancer

(a) Profile 1

non-DE Component Normal

Samples Samples Samples

Genes Genes Genes

Measure marker Measure marker

Control treatment Control treatment

New treatment New treatment Marker positive

Marker positive RandomizationRandomization

Marker negative

Marker negative Off studyOff study

Marker positive Marker positive

Control treatment Control treatment

New treatment New treatment

Marker negative Marker negative

Control treatment Control treatment

New treatment New treatment Measure marker

Measure marker

“Standard Care”

“Standard Care” Control treatmentControl treatment

Marker-directed treatment

Marker-directed treatment

Marker negative Marker negative

Marker positive Marker positive

Control treatment Control treatment

New treatment New treatment Measure marker

Measure marker

Randomization Randomization

Randomization Randomization

Randomization Randomization

A) Targeted Enrichment Design B) Design with marker-positive and

marker-negative patients C) Marker Strategy Design

がんの特異的発現パターンのイメージ(がん関連遺伝子は、がんのサブ セットのみで高(低)発現している。ここでは、三つのがん関連遺伝子 のクラスター)

骨 異形成症候群髄 の遺伝子とサンプルの同時クラスタリング ( 赤:高発現、緑:低発 現)

・ 全般的に、 MDS サンプルのクラスターは、 MDS の     病理学的分類との有意な関連がみられた

・ ある MDS サンプルのクラスターでは、予後が特に悪か った

参照

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