論文内容要旨
A New Device Facilitating Intracorporeal Purse-string Suture during Endoscopic Surgery (鏡視下手術用着脱型Purse String Instrument鉗子の開発)
THE SHOWA UNIVERSITY JOURNAL of MEDICAL SCIENCES (Vol.32 No.3 173~179 2020)
専攻名 外科系外科学(消化器・一般外科学分野) (藤が丘病院) 喜島 一博
【緒言】
標準的な腹腔鏡下大腸切除術では標本摘出のためにトロッカー創を延長する必要がある。
Natural orifice specimen extraction (NOSE) 手技は標本摘出を経肛門もしくは経腟経路で行う ことで、標本摘出のための創の延長を不要とし、より低侵襲な手術を可能にするものである。現 在、S状結腸および直腸切除術の腸管再建は自動吻合器を用いた腸管吻合が一般的であり、その ためには自動吻合器のアンビルヘッド固定として口側腸管断端に巾着縫合を行わなければなら ない。NOSE 手技で巾着縫合を行う場合、腸管断端を巾着縫合が可能な体外まで経肛門的に牽 引して行う必要があるため、肛門に近い位置での直腸切離症例に適応が制限されてしまう。この 適応を拡大するためには体腔内で巾着縫合を行える器具の開発が必要である。そこで、我々は NOSE手技を用いた腹腔鏡下S状結腸および直腸切除術の適応を拡大するために、企業協力の もと体腔内での巾着縫合を可能にする着脱型Purse String Instrument鉗子を開発した。
【方法・結果】
この鉗子は長さ75mm、幅10mmで片端にヒンジ構造を持ち、12mmトロッカーを介して体内 外の出し入れが可能となるように設計した。一般的な開腹での巾着縫合器と同様に内側が波状 構造となっているため、腸管を把持した状態で内側に設けられた溝に糸付きの直針を通すこと で巾着縫合を行うことが可能となる。術者は腹腔鏡鉗子を用いてこの鉗子を操作することで、体 腔内で巾着縫合を行うことができる。ドライボックスにて巾着縫合の正確性を、生体豚を用いた 手術にて鉗子の操作性や腸管吻合の確実性を検証し、この鉗子を用いた自動吻合器による腸管 吻合が安全に問題なく行えることを確認した。
【考察】
NOSE手技を用いた腹腔鏡下S状結腸および直腸切除術の適応を拡大させるため着脱型 Purse
String Instrument鉗子を開発した。現時点では豚を用いた検証のみのため実臨床での使用には
今後臨床試験が必要であるが、成人の人間においては体腔内の空間が豚よりも大きくなるため 操作性は容易になると考えられる。この鉗子は大腸切除のみならず、巾着縫合を要する自動吻合 器を用いた他部位の腹腔鏡下消化管手術でも有用であると考えられ、腹腔鏡下手術の発展に寄 与できれば幸いである。