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第1章 学習評価の基本的な考え方

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Academic year: 2021

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第1章 学習評価の基本的な考え方

評定が目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)に変わり,評価の総括の問題や評価情報の保護 者への提供の必要性などが言われている。しかし,今回,評価のどの部分が変わったかという点を 重視し過ぎると,評価の改善の意図が伝わりにくくなるのではないかということが懸念される。そ こで,評価の改善が求められる背景,評価の機能と役割を再確認するとともに,これからの評価の 在り方とはどのようなものであるかを考えておく必要がある。

評価の改善が求められているのは,ゆとりの中で自ら学び自ら考える力などの生きる力の育成を 基本とし,教育内容の厳選と基礎・基本の徹底を図ること,一人一人の個性を生かすための教育を 推進することなどの理由による。

評価の機能と役割は,生徒のよさ等を客観的にとらえるなどして,生徒の学力を伸ばすとともに 教師の側では自分の学習指導の問題点を明らかにし,指導の改善に役立てることである。つまり,

評価と学習指導は一体化して進めなければならない。

これからの評価の在り方としては,まず生徒に基礎・基本を身に付けさせるための評価であると いう認識に立つことである。そのためには,学習指導要領の目標に準拠した評価が適切であると考 えられる。また,生徒一人一人のよさや可能性,進歩の状況などを適切に評価することが大切であ る。そのためには,個人内評価をより工夫していく必要がある。さらに,評価する場としては,指 導の前,後だけでなく,途中の展開が大事である。展開の過程で随時生徒の状況を見取りながら,

評価することが大切である。各教科等のそれぞれの教育活動の特質や評価の目的等に応じ,評価方 法,評価の場面や時期などについて適切な工夫をして評価し,それらの積み重ねによって生徒の成 長の状況を総合的に評価することが一層重要である。また,目標に準拠した評価は主観的になりや すいので,評価規準を作成し,評価規準を提供するなど評価の客観性や信頼性を高めていくことが 必要である。

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1 評価の改善が求められる背景

今日の生徒をめぐる状況を見ると,いじめや不登校の問題などを始め,豊かな人間性をはぐくむ べき時期の教育に様々な課題が生じている。これらの課題に適切に対応していくため,ゆとりの中 で自ら学び自ら考える力などの生きる力の育成を基本とし,教育内容の厳選と基礎・基本の徹底を 図ること,一人一人の個性を生かすための教育を推進することなどが求められている。

中学校においては,各教科の教育内容を授業時数の縮減以上に厳選して基礎的・基本的な内容に 絞り,ゆとりの中でじっくり学習し,その確実な定着を図るようにすること,選択教科の拡充を図 ることなどの改善を図っている。

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そこで 教科の指導に当たっては 基礎的な知識や技能を確実に身に付けさせることはもとより それにとどまることなく,自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,表現力の育成,学習指導要領に示され た教科の基礎・基本を確実に身に付けさせることが大切である。基礎的な知識や技能,自ら考える 力,問題解決の力,的確に判断する力,筋道立てて表現する力の育成など生徒一人一人が確実に身 に付けるよう,教師が指導することが求められている。すなわち,学習指導の質を高めることが期 待されている。

学習指導の質を高めるためには,観察・実験や調査活動,問題解決的な学習などを通して基礎・

基本を身に付けさせることが大切であり,単なる知識伝達型の授業と違ってきめ細かな学習指導が 要求されている。指導方法などの工夫改善によって,基礎・基本をすべての生徒に身に付けさせ,

教科や単元などによっては,複数の教師による指導や習熟の程度に応じた少人数の学習集団を編成

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し 発展的な学習を教師の自作教材や副教材等を活用して展開することも期待される このことは 生徒一人一人に応じた指導を目指してきめの細かい指導が求められていることを意味している。生

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徒一人一人の学習の過程を重視したり 生徒のよい点や進歩の状況を積極的に見取ったりしながら 生徒が自らの学習過程を振り返り,新たな自分の目標や課題をもって学習を進めていけるような評 価を行うことなど教師の努力が求められている。

しかし,今回,評価のどの部分が変わったかという点にのみ着目すると,こうした評価の改善の 意図が伝わりにくくなるのではないかということが懸念される。例えば,評定の在り方についての 研究に重点が置かれ,その結果,評価=評定という考えに陥ってしまいはしないかということであ る。そこで,評価とはどのようなものであるか再確認しておく必要がある。

2 評価の機能と役割

評価の機能と役割は,各学年,各学校段階等の教育目標を実現するための教育の実践に役立つよ うにすることであり,また生徒一人一人のよさや可能性を積極的に評価し,豊かな自己実現に役立 つようにすることである。評価とは,生徒のための評価であると同時に,学校や教師が進める教育 自体の評価でもあるとも言える。例えば,生徒にとってはよさを認められることにより,意欲付け られたり,自分のことが分かったり,方向性も見えたりする。また教師にとっては自分の学習指導 の問題点などを明らかにし,指導の改善に役立てることができる。このようなことから,指導と評 価は表裏一体をなすものであり,学校においては,学習指導と評価が常に一体となって行われるこ

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とが求められる。

また,どのような評価を行うかということが,これからの社会における教育のあるべき姿を明ら かにすることにもなる。すなわち,評価の在り方が示されることにより,どのような資質や能力が これからの生徒に必要であるかを一層明確にすることとなり,新しい教育の在り方について理解を 深め,その定着を確かなものにしていく効果が期待される。

さらに,生徒の学習状況等を適切に評価し明らかにしていくことは,学校教育への信頼を向上さ せていく上で欠かすことのできないものであり,保護者や地域の人々に説明を行っていくことの重 要性が高まるにつれて,学校教育の中での評価の役割は一層大きくなるものと考えられる。

3 これからの評価の在り方

平成14年度から実施された学習指導要領の下での評価については,平成12年12月の教育課程審議 会答申を踏まえ,基本的には次のように考える。

(1) 基礎・基本の定着を図る評価

生徒の学習状況を評価する際は,知識の量のみでとらえるのではなく,生きる力を育成する という観点からすべての生徒に基礎・基本を身に付けさせるための評価であるという認識に立 つ必要がある。

(2) 目標に準拠した評価及び個人内評価の重視

今回の改訂では,観点別学習状況欄と評定欄がどちらも目標に準拠した評価となった。この 評価は,目標がどの程度達成できたかをみる評価である。この評価では,これまでの 「絶対評, 価を加味した相対評価」において,あいまいであった目標に対する到達度がはっきりみえるよう になる。

したがって,全員がこのような目標に到達することが目指され,その到達度をみる評価とし て,学習指導要領の目標に準拠した評価いわゆる絶対評価は最も適切であると考えられる。

また,生徒は個性を備えた存在であるということをよく理解し,一人一人のよさや可能性,

進歩の状況などを適切に評価することが大切である。そのためには,個人内評価をより工夫し ていく必要がある。

これからは,目標に準拠した評価及び個人内評価が柱となる中で,集団に準拠した評価につ いては,生徒の発達段階などに配慮した上で,目的に応じて指導に生かすことが必要である。

○ 目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)

指導目標への到達度を評価する。指導目標に照らして身に付いたかが大事であり,他の生 徒と比較しない。生徒一人一人の努力や進歩を認めることができる。分析的にみたり,客観 性や信頼性を高めたりする必要がある。

○ 集団に準拠した評価(いわゆる相対評価)

集団の中での相対的な位置付けによって生徒の学習の状況を評価する。客観的に行いやす く,集団内での位置付け,意味付けができる。学力の高い生徒にとっては,意欲を高めるの に役に立つ。

○ 個人内評価

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以前の本人の状態と比べた変化を評価する。本人の長所,進歩の状況を明らかにすること ができ,個性を重視する教育に最も適している。甘い評価になりやすいことに留意する必要 がある。

(3) 指導と評価の一体化

評価の目的は,教育目標を実現するための教育の実践に役立つようにするとともに,生徒一 人一人の豊かな自己実現に役立つようにすることである。これは,学校や教師にとっては,指 導計画や指導方法,教材,学習活動等を振り返り,よりよい指導に役立つようにすることであ る。

生徒にとっては,自らの学習状況に気付き,自分を見つめ直すきっかけとなり,その後の学 習や発達を促すようにするということである。指導と評価の一体化とは,このように,学習の 評価によって教師の指導を改善し,生徒の学習を改善するということを意味している。

また,評価する場としては,指導の前,後だけでなく,途中の展開が大事である。展開過程 で随時生徒の状況を見取りながら,評価することが大切である。

(4) 評価方法の工夫改善

学習指導要領の下では,生徒の学習状況を,各教科等のそれぞれの教育活動の特質や評価の 目的等に応じ,評価方法,評価の場面や時期などについて適切な工夫をし,それらの積み重ね によって生徒の成長の状況を総合的に評価することが一層重要である。これまで中学校におい ては,総括的評価が中心であり,生徒の学習上の問題点を診断する評価や学習を支援する形成 的評価は意識的に行われることは少ない傾向にあった。学習の結果は評価してきたが,生徒の 学習の向上のために評価をどう使うべきかを十分考えない面があった。このようなことを見直 す評価としては,分析的な評価や記述的な評価であり, どのような点が優れていて,どのよう な点が改善を要するかを指摘した評価である。このような評価の結果の具体的な内容を伝える フィーバックが学習の向上をもたらすことは確かであり, その効果は非常に大きい。しかし,

フィードバックの時期や機会をどうつくるのか,どのように生徒に伝えるのが効果的かを工夫 しなければならない。

(5) 評価の客観性と信頼性を高める取組

今回の改訂では,目標に準拠した評価が一層重視されるようになった。この評価は主観的に なりやすいので,客観性や信頼性が問題となる。このような問題に対する方策として,次のよ うなことが挙げられる。

ア 評価規準の作成

学習指導要領に示された目標に照らして,生徒の学習の到達度を客観的に評価するための よりどころが評価規準である。

各学校では,国立教育政策研究所等で作成された評価規準を活用して,学校独自の具体的な 評価規準を作成する必要がある。その際,知識や技能,思考力,判断力,表現力や態度などを 含めた観点別の評価項目を単元ごとに設けるとともに,各時間ごとの具体的な指導目標にどの 程度到達したか,その到達度を分析的に評価するための評価規準を作成することが大切であ る。

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イ 観点別評価の客観化

「観点別学習状況」の評価は,これまでにもいわゆる絶対評価が行われてきた。しかし,

「関心・意欲・態度」の情意面にかかわるような評価など, 評価を客観的に行うことの困難 さが指摘されてきた。

その解決の方法として,一つの評価の観点に関係する評価項目をできるだけ多く用意した り 「関心・意欲・態度」や「思考・判断」などの評価には,教師の観察や面接を取り入れる, など,ペーパーテスト以外の様々な評価方法を用意したりする必要がある。また,評価の機会 や場面を多く設け,生徒の学習状況の様子を書き留めておく補助簿等を活用するなどして,そ れらのデータの蓄積を生かしていくことも大切である。

観点別評価においては,具体的に評価しやすいレベルで観点を設けることや生徒の学習の 改善に結び付けやすい観点を設けることが大事である。

ウ 評価情報の共有

評価は評価する側と評価される側との信頼関係の上に成り立っている。評価についての考 え方,内容,方法等について保護者や生徒に十分説明し,共通理解を図りながら信頼を得る とともに,指導に生かし,評価の改善に努めていくことが大切である。

エ 評価についての力量の向上

教師が評価についての考え方を深め,評価方法を改善したり,その結果を指導に生かした りするためには,教師一人一人が教育の専門職として自己研鑽に努めるとともに,学校全体 で校内研究・研修を通じて評価についての力量を高めることが必要である。教師による観察 や生徒による自己評価など視点を定めて,授業を通した校内研究会など研修の在り方を一層 工夫し,学校全体として評価の力量を高めることが重要である。

4 研究の対象

本研究は,すべての生徒に基礎・基本を確実に身に付けさせるための学習指導における評価の在 り方を探ったものである。評価の中でも,単元の指導目標の分析を基に単元の評価規準を作成し,

さらに1単位時間での具体的な評価規準を指導と評価の計画の中に位置付け,その評価方法や「お おむね満足できる」状況にない生徒への手だてを考えるなど指導と評価の一体化に焦点を当てた。

このような経緯を踏まえて,当センターでは,実践研究講座(継続的に6月,8月,10月の3回行 う講座)を行い,受講者にこれまでの研究の内容を理解してもらい,指導と評価の一体化の在り方 を探るために実証を行った。

特に,小学校や高等学校においても参考になるように中学校国語,社会,数学,理科,英語の必 修教科における評価について研究を進めた。平成15年1月には県内30校の中学校を対象に学習指導 と評価に関する調査を行い,実態を基に中学校における評価の具体的な進め方についてまとめた。

参照

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