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2. 調査方法および調査期間尺度原案を含んだ自記式質問紙を用いた郵送調査を実施した. 調査期間は,2005 年 10 月 11 月までであった. 3. 調査対象対象者の所属施設は, 難病医療拠点病院あるいは難病医療協力病院に指定されており, 神経難病の専門病棟を持つ病床数 300 以上の総合病院とし

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はじめに

 一般に,看護師のストレスが強いことは,これまでに 多く報告されている1-3).ストレスは,本人の健康を脅 かすだけでなく,提供するケアの質低下4)や離職につ ながる5)ため,早急に対処されなければならない.

 神経難病の多くは,原因不明や治療法が未確立のため に,経過が長期に及び,運動障害を中心とした症状が進 行することから,患者の身体的精神的負担だけでなくケ ア提供者の負担も大きいことが報告されている6,7).当 然,神経難病患者をケアする看護師も大きなストレスを 抱えていると考えられる.ストレスの少ない働きやすい 職場とするためには,看護師のどのような経験がストレ ス要因(ストレッサー)となっているかを的確に把握す ることが重要であり,それを捉えるためのストレッサー 尺度が必要である.

 看護師のストレッサーについては,全ての診療科の看 護師に適用可能な尺度8,9)が開発され,広く利用されて きた.しかし,看護師のストレッサーは,ケア特性の違 いによって所属診療科で異なることが明らかにされてお

10,11),一般看護師用ストレッサー尺度では,特殊な診

療科のストレッサーを正確に捉えることは難しい.これ までに,特殊診療科のストレッサーとして,精神科12) 小児がん13),高齢者福祉施設14)などでケアする看護師

のストレッサー尺度が開発されているが,神経難病患者 をケアする看護師のストレッサー尺度は開発されていな い.そこで本研究では,神経難病患者をケアする看護師 の仕事ストレッサー尺度(以下,仕事ストレッサー尺度)

を作成するため,質問項目の選定を行うことを目的とし た.

研究方法

1.本研究で使用した尺度原案の作成

 神経難病患者をケアする看護師のストレッサーを把握 するために,我々の先行研究15)において看護師 284 名 を対象とした無記名の自記式質問紙による調査と,看護 師5名を対象とした面接による調査を実施した.質問紙 は「あなたが仕事の中で体験した最も悲しかった/苦し かった/つらかった/嫌だった出来事を述べてくださ い」などの質問に自由記載で答える形式とし,面接は半 構成的面接法を用いた.収集した質的データを帰納的に 分析した結果,63 項目の仕事ストレッサーが抽出され た.1つの質問に2つの内容を含めている項目があった ため,質問文を一部修正し,69 項目から構成されてい るものを尺度原案として使用した.

 本研究は,神経難病患者をケアする看護師の仕事ストレッサー尺度作成のため,質問項目選定を目的とした.先行 研究で明らかになった 69 項目からなる尺度原案を用いた自記式質問紙の郵送調査を実施した.調査期間は 2005 年 10 月〜 11 月まで,質問紙配布数 221 部,有効回答数 143 部(有効回答率 64.7%)であった.得点分布に偏りのあ る項目をフロア効果・天井効果で,異質な項目を項目‐全体得点相関で,類似性の強い項目を質問項目間相関で検討 した.また,内容妥当性と表面妥当性を高めるために,対象者らの回答を参考に質問文の修正を行った.因子分析お よびクロンバックのα係数により項目数を検討した.以上より,69 項目中 42 項目を神経難病患者をケアする看護師 の仕事ストレッサーとして適さないと考え削除し,27 項目から構成される尺度を新たに作成した.

原 著

・Development of a job stressor scale for nurses caring for patients with intractable neurological illness: Selection of question items

・1)北里大学看護学部  2)広島大学大学院保健学研究科  3)北里大学大学院医療系研究科

・*連絡先:〒 228-0801 神奈川県相模原市鵜野森 1-28-6 グリーンハイツ C2-305       TEL 042-744-7664 E-mail:[email protected]

・広島大学保健学ジャーナル Vol. 8 (1・2):1〜6,2009

神経難病患者をケアする看護師における 仕事ストレッサー尺度の作成

-質問項目選定のための検討-

安東 由佳子

1,*)

,片岡 健

2)

,小林 敏生

2)

,岡村 仁

2)

,田中 克俊

3)

キーワード(Key words): 1. ストレッサー(Stressor) 2. 看護師(Nurse)

3. 神経難病(Neurological intractable illness)

(4)

2.分析結果

 1)得点分布の偏り

 使用した尺度原案は,5段階回答(そのような状況が

「5:いつもある」「4:しばしばある」「3:時々ある」「2:

まれにある」「1:ない」)のため,フロア効果が1以下 の9項目は「(そのような状況が)ない」と回答した者 が多いことを示しており,対象者らのストレッサーであ る可能性は低いと考えられるため削除した(表1).項 目 6 もフロア効果が1以下であったが,想定した下位尺 度の構成概念に必要なため本研究では削除しなかった.

 2 )項目‐全体得点相関(Item-Total correlation:I-T 相関)

 69 項目全体と各項目との相関(I-T 相関)が 0.2 未満 を示した4項目は,尺度全体で測定している現象と関係 が非常に弱い項目と判断し削除した(表1).

 3)質問項目間の相関

 質問項目間相関が 0.7 以上を示した「61 協力的でな い医師と働く」と「62 自分の仕事が医師に理解されな い」(r = 0.71)は,内容も類似していると考えられた為,

項目‐全体得点相関が低い項目 62 を,尺度全体で測定 する現象と関連が少ないと考え削除した.

 4)内容妥当性と表面妥当性

 内容妥当性は,「15 不慣れや技術不足,時間的余裕の 無さなどで患者や家族を怒らせる」と「50 急変時に即 座に対応しなければならない」は,ストレスではないと の意見があり削除した.表面妥当性については,否定の 質問文の回答に戸惑うという意見が多かったため,出来 る限り質問文を肯定型で問うように修正し,最初の説明 文に回答例を設けた.

 5)項目数の検討

 項目数を揃えるため,想定項目数が5項目以上だっ た「医師に関すること」,「仕事量の多さ」,「ケアに関す ること」,「患者からの批判や暴言」の4つの想定因子 は,因子ごとに因子数1の因子分析を行い,負荷量上位 各4項目(項目 58,48,8,31,26,53,13,46,39,28,65,7,60,52, 63,45)を採用した(表2).想定した因子に属する残っ た項目が4個未満の中で,「生命に関わる仕事」(α係数

= 0.28),「患者の死に関すること」(α係数 = 0.45) は,

項目数も少なくα係数も低いため,想定因子から削除し た.「同僚に関すること」(α係数 = 0.74)は,項目数 は3と少ないが,α係数が高いため,残した.最後に残っ た 31 項目で,固有値1以上を指定した因子分析を実施 し,負荷量 0.38 以下の4項目(項目 60,45,65,55)を削 除した.残った 27 項目について,分布の正規性を確認 したところ,ほとんどの項目は正規分布を示した.

2.調査方法および調査期間

 尺度原案を含んだ自記式質問紙を用いた郵送調査を実 施した.調査期間は,2005 年 10 月〜 11 月までであった.

3.調査対象

 対象者の所属施設は,難病医療拠点病院あるいは難病 医療協力病院に指定されており,神経難病の専門病棟を 持つ病床数 300 以上の総合病院とした.該当病院より 無作為に選んだ 17 病院の看護部長宛に調査依頼を行い,

了承の得られた 10 病院の神経難病専門病棟に勤務する 看護師および准看護師 221 名(師長は除外)を対象者 とした.

4.分析方法

 各質問項目について得点分布の偏りを確認するため,

平均値および標準偏差とフロア効果(平均値マイナス 標準偏差)・天井効果(平均値プラス標準偏差)を確認 した.項目の異質性検討のため,項目‐全体得点相関を 実施した.項目内容の類似性検討のため,質問項目間の Spearman 順位相関係数を算出した.内容妥当性と表面 妥当性を高めるため,今回の質問紙に記載されていない ストレスや,アンケート全体で改善した方がよいと思う 点などがあれば記入するよう対象者に依頼し,その結果 を参考に質問文の追加・修正を行った.想定因子の項目 数を均一にするため,項目数が5項目以上の場合は,因 子数1の因子分析で因子負荷量の低い項目を削除し,4 項目未満の場合は,Cronbach’s α係数を算出して内的 一貫性を確認し,因子を削除するか否かを判断した.

5.倫理的配慮

 対象者には,研究の趣旨,協力への自由意思の尊重,

プライバシーの保護等について文書で事前に説明し,質 問紙の回収をもって研究への同意が得られたと判断し た.また本研究は,広島大学大学院保健学研究科(看 護開発科学講座)の倫理委員会の審査(倫理審査番号 120)を受け承認を得た上で実施した.

結  果

1.質問紙回収状況

 質問紙配布数 221 部,回収数 151 部(回収率 68.3%),

有効回答数 143 部(有効回答率 64.7%)であった.ただし,

神経難病看護経験3ヶ月未満の看護師らは,病棟の環境 に慣れていないことによるストレッサーを抱えている可 能性があると考えて対象外とした.

(5)

広大保健学ジャーナル,Vol. 8(1・2), 2009

表1.質問項目の記述統計、フロア効果・天井効果、項目‐全体得点相関

n = 143 平均値 標準偏差 フロア効果

(平均値−標準偏差) 天井効果

(平均値+標準偏差)

項目−全体 得点相関

1 医師から批判される 2.17 0.99 1.18 3.16 0.57

2 懸命にケアしても、その成果が得られない 3.29 1.08 2.22 4.37 0.57

3 患者の自殺や自殺未遂に遭遇する 1.23 0.59 0.64 1.82 0.37

4 上司と考え方が食い違う 2.69 1.04 1.64 3.73 0.43

5 患者の将来の見通しがたたない 3.77 1.12 2.65 4.90 0.55

6 患者からケアを拒否される(他の看護師への交代を要求されることを含む) 1.76 0.95 0.81 2.71 0.30 7 患者や家族の訴えにどのように答えたらよいのかわからない 2.70 1.02 1.68 3.72 0.43

8 医師の対応が遅い 3.60 1.10 2.50 4.70 0.51

9 患者や家族が、治療や予後について医師からどのように説明を受けているかがはっ

きりしない 3.14 1.10 2.04 4.24 0.64

10 時間に追われて仕事をしなければならない 4.54 0.78 3.76 5.31 0.46

11 勤務場所に気持ちを打ち明けたり相談できる人がいない 2.15 1.38 0.77 3.53 0.15

12 同僚とケアについての意見が食い違う 2.34 0.87 1.47 3.22 0.29

13 人手が十分でない 4.32 1.03 3.29 5.35 0.58

14 上司から信頼されてない 2.27 1.10 1.17 3.37 0.41

15 不慣れや技術不足、時間的余裕の無さなどで患者や家族を怒らせる 2.17 0.91 1.27 3.08 0.43

16 やってもやっても患者の満足が得られない 3.19 1.20 1.99 4.39 0.66

17 上司の対応が遅い 2.50 1.16 1.34 3.67 0.47

18 困難なことが起きた時に同僚のサポートがない 1.97 1.04 0.93 3.02 0.27

19 協力的でないスタッフと一緒に働く 2.29 1.09 1.20 3.38 0.46

20 受け持ち患者や親しくしていた患者が死亡する 2.14 1.03 1.11 3.16 0.31

21 今後の治療方針や予後についての見通しがはっきりしない 3.21 1.10 2.11 4.31 0.63

22 困難なことが起きた時に上司のサポートがない 2.16 1.21 0.95 3.36 0.55

23 訴えの多い患者へのケア量が多く、他の患者をケアする十分な時間がない 4.04 1.07 2.97 5.10 0.56

24 治療や予後について患者と話す 2.30 0.86 1.44 3.16 0.03

25 患者の死に家族が間に合わない 2.28 0.98 1.30 3.26 0.32

26 患者の要望に沿えないほど仕事量が多い 3.75 1.09 2.66 4.85 0.70

27 ターミナル患者のケアに無力である 2.76 1.27 1.49 4.03 0.46

28 ケアの見通しがたたない 2.77 1.16 1.61 3.93 0.70

29 超過勤務が続く 3.23 1.39 1.84 4.62 0.52

30 患者や家族と死についての話をする 1.66 0.80 0.86 2.46 0.19

31 医師とのコミュニケーションがうまくいかない 2.93 1.05 1.88 3.98 0.64

32 苦しんでいる患者や家族の支えになれない 2.81 0.97 1.84 3.77 0.42

33 休日出勤をしなければならない 2.51 1.51 1.00 4.02 0.08

34 対応する看護師によって言葉や態度を変える患者をケアする 3.07 1.17 1.90 4.24 0.50

35 家族が患者につらくあたっているのをみる 2.41 1.06 1.35 3.46 0.54

36 看護以外の仕事(事務仕事や委員会など)が多すぎる 3.43 1.33 2.09 4.76 0.48

37 納得のいくケアができない 3.35 1.00 2.35 4.35 0.63

38 一緒に働きたくない看護師がいる 2.49 1.27 1.22 3.76 0.43

39 患者や家族の不安や要望に十分に対応できない 3.09 1.02 2.07 4.11 0.69

40 細かい要求が多い患者をケアする 4.05 1.03 3.02 5.08 0.52

41 医師に暴言を吐かれる 2.00 1.14 0.86 3.14 0.71

42 患者と家族との関係が疎遠になっている様子をみる 3.82 1.11 2.71 4.93 0.54

43 病状の進行に対し無力である 3.75 1.19 2.56 4.94 0.43

44 予後を告知されていない患者にどのように対応したらよいかわからない 2.83 1.13 1.70 3.96 0.43 45 よいと思って実施したケアが患者や家族に受け入れられない 2.44 1.06 1.39 3.50 0.60 46 患者とゆっくり関わったり話をするための十分な時間がない 4.04 1.09 2.96 5.13 0.47 47 自分の不注意で患者に悪影響を及ぼした、あるいは及ぼしたかもしれない

(インシデント・アクシデントの発生を含む) 2.10 0.87 1.23 2.97 0.36

48 患者への医師の対応に納得がいかない 3.29 1.09 2.20 4.37 0.53

49 コミュニケーションがとりづらい患者をケアする 4.43 0.86 3.57 5.29 0.24

50 急変時に即座に対応をしなければならない 3.31 1.08 2.23 4.40 0.46

51 上司が自分の気持ちを理解してくれない 2.41 1.09 1.32 3.49 0.55

52 患者に暴言を吐かれる 2.24 1.15 1.09 3.40 0.63

53 納得のいくケアをするための十分な時間がない 3.90 1.09 2.81 4.98 0.52

54 対応する職種によって言葉や態度を変える患者をケアする 2.98 1.23 1.75 4.21 0.59 55 看護師でなくてもできる手伝いのような仕事ばかりしている 3.35 1.22 2.13 4.57 0.52

56 患者の突然の死に遭遇する 2.10 0.94 1.16 3.04 0.44

57 患者や家族から信頼されていない 1.99 0.84 1.14 2.83 0.41

58 医師の方針や考え方に納得がいかない 2.92 1.11 1.81 4.02 0.66

59 機嫌を損ねがちな気難しい患者のケアをする 3.47 1.18 2.29 4.66 0.62

60 懸命にケアしているのに、患者や家族に理解されない 2.66 1.11 1.55 3.77 0.71

61 協力的でない医師と働く 2.80 1.23 1.57 4.04 0.56

62 自分の仕事が医師に理解されない 2.47 1.17 1.31 3.64 0.51

63 患者から命令口調で指示される 2.70 1.23 1.47 3.93 0.61

64 ナースコールが鳴り止まない 3.73 1.21 2.52 4.93 0.67

65 患者が自分の将来の見通しをたてられない様子をみる 3.24 1.10 2.14 4.34 0.66

66 患者に怒鳴られる 2.00 1.06 0.94 3.06 0.51

67 上司から批判される 1.88 1.03 0.85 2.91 0.54

68 懸命にケアしているのに、患者や家族から批判や苦情を言われる 2.20 1.11 1.09 3.30 0.61 69 よいと思って実施したケアが患者や家族に誤解される 1.93 1.04 0.89 2.97 0.57

(6)

表2.想定したストレッサーごとの解析結果

① ② ③ ④ ⑤ 因子負荷量 ⑥

医師に関すること 0.84 58)医師の方針や考え方に納得がいかない

0.79 48)患者への医師の対応に納得がいかない 0.73 8) 医師の対応が遅い

0.73 31)医師とのコミュニケーションがうまくいかない

0.69 61)協力的でない医師と働く

0.62 1) 医師から批判される

0.49 21)今後の治療方針や予後についての見通しがはっきりしない

62)自分の仕事が医師に理解されない

41)医師に暴言を吐かれる

上司に関すること 4) 上司と考え方が食い違う

14)上司から信頼されてない 17)上司の対応が遅い

51)上司が自分の気持ちを理解してくれない

22)困難なことが起きた時に上司のサポートがない

67)上司から批判される

同僚に関すること 12)同僚とケアについての意見が食い違う

19)協力的でないスタッフと一緒に働く 38)一緒に働きたくない看護師がいる

● ● 11)勤務場所に気持ちを打ち明けたり相談できる人がいない

18)困難なことが起きた時に同僚のサポートがない

仕事量の多さに

関すること 0.83 26)患者の要望に沿えないほど仕事量が多い 0.72 53)納得のいくケアをするための十分な時間がない 0.71 13)人手が十分でない

0.64 46)患者とゆっくり関わったり話をするための十分な時間がない

0.61 10)時間に追われて仕事をしなければならない

0.60 23)訴えの多い患者へのケア量が多く、他の患者をケアする十分な時間がない

0.52 29)超過勤務が続く

0.49 36)看護以外の仕事(事務仕事や委員会など)が多すぎる

0.35 64)ナースコールが鳴り止まない

33)休日出勤をしなければならない

ケアに関すること 0.76 39)患者や家族の不安や要望に十分に対応できない 0.72 28)ケアの見通しがたたない

0.63 ● 65)患者が自分の将来の見通しをたてられない様子をみる 0.59 7) 患者や家族の訴えにどのように答えたらよいのかわからない

0.58 35)家族が患者につらくあたっているのをみる

0.58 32)苦しんでいる患者や家族の支えになれない

0.57 9) 患者や家族が、治療や予後について医師からどのように説明を受けているかがはっきりしない

0.57 44)予後を告知されていない患者にどのように対応したらよいかわからない

0.55 5) 患者の将来の見通しがたたない

0.49 42)患者と家族との関係が疎遠になっている様子をみる

0.44 57)患者や家族から信頼されていない 患者からの批判や

暴言に関すること 0.79 ● 60)懸命にケアしているのに、患者や家族に理解されない 0.76 52)患者に暴言を吐かれる

0.75 63)患者から命令口調で指示される

0.73 ● 45)よいと思って実施したケアが患者や家族に受け入れられない

0.72 54)対応する職種によって言葉や態度を変える患者をケアする

0.72 68)懸命にケアしているのに、患者や家族から批判や苦情を言われる

0.57 34)対応する看護師によって言葉や態度を変える患者をケアする

0.42 37)納得のいくケアができない

66)患者に怒鳴られる

69)よいと思って実施したケアが患者や家族に誤解される

患者への関わりの

難しさに関すること 59)機嫌を損ねがちな気難しい患者のケアをする

40)細かい要求が多い患者をケアする

49)コミュニケーションがとりづらい患者をケアする

● 55)看護師でなくてもできる手伝いのような仕事ばかりしている

24)治療や予後について患者と話す

15)不慣れや技術不足、時間的余裕の無さなどで患者や家族を怒らせる ケアに見合った

手応えがないこと 2) 懸命にケアしても、その成果が得られない

43)病状の進行に対し無力である

6) 患者からケアを拒否される(他の看護師への交代を要求されることを含む)

16)やってもやっても患者の満足が得られない 生命に関わる

 仕事であること

→ 削除  

47)自分の不注意で患者に悪影響を及ぼした、あるいは及ぼしたかもしれない(インシデント・アクシデントの発生を含む)

56)患者の突然の死に遭遇する

3) 患者の自殺や自殺未遂に遭遇する

50)急変時に即座に対応をしなければならない 患者の死に関すること

→ 削除   20)受け持ち患者や親しくしていた患者が死亡する

25)患者の死に家族が間に合わない 27)ターミナル患者のケアに無力である

● ● 30)患者や家族と死についての話をする

削除項目は表中の●で示す 得点分布の偏り

項目の異質性 項目の類似性 項目内容の妥当性 因子分析による項目数削減

最終的な因子分析

(7)

広大保健学ジャーナル,Vol. 8(1・2), 2009

文  献

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32:412-419,2006

考  察

 天井効果が5以上の項目は,大半の対象者が「(その ような状況が)いつもある」に回答していることを示し ている.本研究では,これに該当する項目(13,40,46,49)

は,「仕事量の多さ」と「患者への関わりの難しさ」を 表す項目に集中していた.これらの項目は,看護師によ るケア量が他疾患患者と比較して多いこと16),運動障 害が進行するためケアへの要求が細かくなること,言語 障害が進行しコミュニケーションをとるための特殊な技 術を要すること17)など,神経難病患者のケア特性に由 来したストレッサーではないかと考えられた.従って,

この得点分布の偏りは,対象が特定集団であるため,そ のストレッサーの特徴が反映した可能性が考えられ,項 目は削除せず残した.

 項目数の検討では,「患者の死に関すること」,「生命 に関わる仕事であること」は,残った項目が4個未満と なり,Cronbach’s α係数も 0.45,0.28 と低いため想定 因子から削除した.先行研究ではターミナルケアに携わ る看護師のストレッサーには,死に関するものが挙げら れているが18),神経難病は,一部の疾患を除き生命に 直結する病態であることは少ない.そのため,これらは 神経難病患者をケアする看護師らにとってストレッサー となり得ないのではないかと考えられた.以上,69 項 目中 42 項目を,神経難病患者をケアする看護師の仕事 ストレッサーとして適さないと考え削除し,27 項目か ら構成される尺度を作成した.

本研究の限界と今後の課題

 質問項目選定により,神経難病患者をケアする看護師 の仕事ストレッサーとして,より洗練された項目が残っ たが,これを尺度として使用するには,更なる検討が必 要である.今後は,神経難病病棟に勤務する看護師全体 のストレッサー傾向や,個々の看護師がどのようなスト レッサーを抱えているかを把握するために有用な尺度と するために,尺度の信頼性・妥当性を検証していくこと を課題としたい.

結  論

 尺度原案 69 項目について,得点分布の偏り,項目の 異質性,項目の類似性,表面妥当性および内容妥当性,

因子ごとの項目数の検討により,質問項目の選定を行っ た.結果,69 項目中 42 項目は,神経難病患者をケアす る看護師の仕事ストレッサーとして適さないと考えられ たため削除し,27 項目から構成される尺度を新たに作 成した.

(8)

者のコミュニケーション その特性と支援の基準化に関す る検討.日本難病看護学会誌,8:41,2003

18.小島操子:ターミナルケアとケアギバーのストレス.ター ミナルケア,2:287-292,1992

16.高橋陽子,飯嶋美鈴,栗原真弓 他:特殊疾患療養病棟に 入院している疾患別直接看護業務量の検討.日本難病看護 学会誌,11:50,2006

17.小倉朗子,長沢つるよ,兼山綾子 他:神経・筋難病療養

Development of a job stressor scale for nurses caring for patients with intractable neurological illness:

Selection of question items

Yukako Ando

1)

,Tsuyoshi Kataoka

2)

,Toshio Kobayashi

2)

Hitoshi Okamura

2)

and Katsutoshi Tanaka

3)

1)School of Nursing, Kitasato University

2)Graduate School of Health Sciences, Hiroshima University 3)Graduate School of Medical Science, Kitasato University

Key words:1. Stressor  2. Nurse  3. Neurological intractable illness

  The purpose of this research was to select question items for the development of a job stressor scale for nurses caring for patients with intractable neurological illness. The study was conducted by mail and used a self-administered questionnaire comprising 69 items, as clarified in previous research.

The study period was from October to November 2005. A total of 221 questionnaires were distributed and 143 valid responses were received(valid response rate, 64.7%). Distribution of scores was confirmed via mean ±standard deviation. Differences in items were examined by item-total correlation, while similarity of items was examined by correlation of each item. Regarding content validity and face validity, questions were modified with reference to subject answers. The number of items in each factor was examined by factor analysis and Cronbach’s alpha. As a result, 42 items were eliminated because these items were not fit for a job stressor scale for nurses caring for patients with neurological intractable illness. A scale comprising 27 items was then created.

(9)

緒  言

 近年,高齢者の交通事故増加が社会的問題となってお り,高齢者人口の増加に伴い更なる増加が懸念され 1,2).自動車の運転には知覚,判断・予測,運動とい う複合的な機能が動員され,知覚の中でも視機能は,運 転能力を予測する最有力指標であることが示唆されてい 3).また,歩行者側においても,視機能は事故に遭う リスクを低下させる上で重要な因子であることが予想さ れる.一般に,視機能は個人差があるものの加齢ととも に低下する2-7)ことが報告されているが,高齢者の視機 能と運動習慣や自動車運転習慣,交通事故歴との関係に ついては明らかではない.

 また,高齢者において視機能の低下により交通事故発 生のリスクが高まるならば,視機能の維持・改善が重要 となる.視機能の向上を目的とするビジュアルトレーニ ング(Visual Training:VT)は,神経発達の観点から 10 代において最も効果が高い5)とされているが,高齢 者の VT 効果を実際に検討した報告はない.

 そこで,本研究では高齢者の視機能を個人的要因別に 調査するとともに,高齢者における VT 効果を検討し,

交通事故防止につなげることを目的とした.

対  象

 対象は本研究に同意が得られた者のうち,白内障,緑 内障,眼の外傷,肩関節疾患,脳卒中後遺症,Parkinson

病等により日常生活に支障をきたしている者,および重 度認知症者を除外した.視機能調査における対象は,運 転免許センター来所者および交通安全講習参加者である 高齢者 43 名を高齢群,本学学生 62 名を若年群とした.

VT 効果の検討においては,デイケア利用高齢者 24 名 を対象とし,VT 実施群(以下 VT 群)と,VT 非実施 群(以下非 VT 群)の各 12 名に無作為に分類した.なお,

本研究は広島大学大学院保健学研究科および協力施設の 倫理委員会より承認を得た上で実施した.対象の各群に お け る 年 齢 お よ び 静 止 視 力(Static Visual Acuity:

SVA)を表1,2に示した.

 本研究では高齢者における視機能を調査するとともに,視機能を向上させるビジュアルトレーニング(Visual Training: VT)の効果を検討した.視機能調査の対象は運転免許センター来所者および交通安全講習参加者である高 齢者 43 名,健常大学生 62 名とし,視機能として Kinetic Visual Acuity(KVA),Dynamic Visual Acuity(DVA),

Eye/Hand coordination(E/H),Contrast Sensitivity(CS)を測定した.高齢者に対しては個人的要因を聴取し,要 因有群と無群に分類した.また,デイケア利用高齢者 24 名を VT 実施群(12 名)・非 VT 実施群(12 名)に無作為 に分類し,KVA,DVA,E/H の VT 効果を検討した.その結果,高齢者の全ての視機能は若年者と比べ有意に低下 していた.また,運転習慣有群は無群に比べ,KVA が有意に高値を示した.VT 実施群においては,KVA が有意に 改善したが,DVA,E/H は変化しなかった.以上の結果から,加齢に伴い視機能は低下するものの,KVA は運転習 慣や VT により維持・改善されることが示唆された.

原 著

・Effect of aging and visual training on the visual functions

・1)関西リハビリテーション病院 リハビリテーション部  2)広島大学大学院保健学研究科

・*連絡先:TEL 082-257-5420 FAX 082-257-5420 E-mail:[email protected]

・広島大学保健学ジャーナル Vol. 8 (1・2):7〜14,2009

高齢者の視機能とビジュアルトレーニング効果

植松 ゆかり

1)

,稲水 惇

2,*)

,関川 清一

2)

,河江 敏広

2)

,高橋 真

2)

キーワード(Key words): 1. 視機能(Visual function)  2. 高齢者(Elderly people)

3. ビジュアルトレーニング(Visual Training)

表1.視機能調査の対象の年齢と SVA 高齢群(n = 43) 若年群(n = 62)

年齢(歳)

SVA

71.8 ± 4.9 0.8 ± 0.3

21.7 ± 1.3 1.0 ± 0.3

*:p < 0.01 vs. 若年群(t-test) (mean ± S.D.)

表2.VT 効果を検討した対象の年齢と SVA VT 群(n=12) 非 VT 群(n=12)

年齢(歳)

SVA

83.5 ± 4.7 0.4 ± 0.2

82.3 ± 7.3 0.5 ± 0.2

(mean ± S.D.)

(10)

KVA 動体視力(Kinetic Visual Acuity)においては測 定回数を練習2回,測定3回とした.測定後,結果を対 象にフィードバックした.

 1)SVA,KVA 動体視力

 SVA は見る能力の基礎とされ,一般的に「視力」と 呼ばれている.KVA は前方より接近するものを明視す る能力である.時速 30 km で前方から直線的に接近して くるランドルト環の方向を正答出来る視力を測定した.

したがって,SVA,KVA ともに測定値の値が大きいほ ど優れた SVA,KVA を示す.SVA,KVA ともに動体 視力計(AS-4D,Kowa)を用い,測定は両眼で実施した.

方  法

1.アンケート調査

 高齢群に対し,個人的要因(運転習慣,交通事故歴,

運動習慣)について視機能測定前にアンケート調査(表 3)を行い,要因毎に要因有群と無群に分類した.なお,

運動習慣は球技に限定した.また,視機能に対する自信 の有無も聴取した.

2.測定項目および測定方法

  各 測 定 機 器 の マ ニ ュ ア ル に 従 い 測 定 し た. 但 し,

表3.個人的要因についてのアンケート調査票

氏名:       年齢:   ,性別:男・女 Q1:運転免許を取得されたのはいつ頃ですか?

 A:(  )年前 あるいは (  )歳頃

Q2:運転される頻度はどれくらいですか?(いずれかに記入してください)

 A:週に(  )回程度/月に(  )回程度/年に(  )回程度 Q3:普段,1 回の運転でどれくらいの時間,運転されますか?

 A:(  )分間程度

Q4:普段,何か運動はされていますか?(例;テニス,ゲートボール,ウォーキング等)

 A:している(         ,週に   回程度), していない Q5:ご自身の眼の機能には自信がありますか?

 A:ある, ない

もしよろしければ,下記の質問にもご回答をお願い致します.

Q6:現在,何か治療を受けられている病気や怪我はありますか?(例;白内障,五十肩)

 A:ある(       ), ない

Q7: 過去に何か大きな病気や怪我をされ,治療・手術を受けられた事がありますか?ある方はいつ頃で,どの様 なものでしたか?(例;5 年前,脳卒中.2 年前,上腕骨骨折)

 A:ある(       ), ない

Q8: 交通事故を起こしてしまった事はありますか?ある方はどの様な事故だったか等,可能な範囲で少し詳しく 教えて下さい.(例;3年前,前方不注意による衝突事故)

 A:ある(       ), ない

Q9: 交通事故に遭われた事はありますか?ある方はどの様な事故だったか等,可能な範囲で少し詳しく教えて下 さい.(例;1年前,近付いてきている車が見えずはねられた)

 A:ある(       ), ない

ご協力,ありがとうございました.

*結果は統計学的に処理し,プライバシーを守り,個人が特定出来る様な形での発表は致しません.

(11)

広大保健学ジャーナル,Vol. 8(1・2), 2009

で4週間(計 12 回)実施した.週3回の VT 実施が不 可能な場合には,VT の内容をビデオに録画して配布し,

自宅でビデオを用いて VT を施行した.VT 実施は全て 椅坐位とした.非 VT 群は初回の測定後,通常通りの生 活を4週間送った.4週後,VT 群,非 VT 群ともに再 度測定を実施した.

 1)KVA,DVA の VT

 図1の装置を作成し,0〜9の数字(縦長 5 cm)を 黒色で書いた白色のボール(直径 7 cm)を白色の組紐(長 さ 20 cm)で対象の眼の高さに合わせて吊るし,KVA の VT では前後に,DVA の VT では左右にボールを振っ た.対象には顔を動かさず眼だけでボールを追い,数字 を判別出来た時点で口頭にて回答させ,ボールの振れが 止まるまでボールを追視させた.VT 3週目からは難易 度を上げ,ボールに反時計回りの回転をかけながら振っ た.1回の VT で,KVA,DVA を各5回実施した.

 2)E/H の VT

 紅白の手旗を左右の手で1本ずつ持ち,視覚情報のみ をもとに検者の動きに応じて素早く旗を上げ下げさせ た.1秒に1回どちらかの旗を動かし,30 秒間を1セッ トとして,1回の VT で3セット実施した.

4.データ処理

 KVA,DVA は3回測定し,平均値を算出した.KVA においては SVA と高い正の相関がある7)ため,KVA は SVA で除した比(KVA/SVA)を用いた.E/H,CS は1回測定し,その結果を測定値とした.

5.統計処理

 得られた測定値は平均値±標準偏差で表した.高齢群 と若年群の視機能,高齢群の各要因における有群と無群 の視機能,VT 群と非 VT 群における初回と4週後の群 内および群間の視機能をそれぞれ比較した.統計手法に は各処理項目の正規分布と対応の有無により,t-test も しくは Mann-Whitney の U-test を用いた.

 なお,統計処理には統計用ソフトウエア SPSS 12.0J for Windows(SPSS Inc.)を使用し,有意水準は5%

未満とした.

結  果

1.高齢群と若年群における視機能の比較

 高齢群および若年群における KVA/SVA,DVA,E/H,

CS の測定値を表 4 に示す.全測定項目において,高齢 群の視機能は若年群と比べ有意に低下していた.なお,

高齢群では眼疲労や気分不良のため,7名の DVA 測定 を中止した.

 2)DVA 動体視力(Dynamic Visual Acuity)

 眼前を横に移動するものを明視する能力である.動体 視力計(HI-10,Kowa)を用い,80 cm 前方にあるスクリー ン上を左から右へ移動するランドルト環の方向を正答出 来る回転数(rpm)を測定した.したがって,測定値の 値が大きいほど優れた DVA を示す.測定可能な値は 49.5 rpm 〜 15.0 rpm であり,480 度 / 秒〜 180 度 / 秒に 相当する.高齢者では開始速度を 40.0 rpm に設定した.

 3)眼と手の協応動作(Eye/Hand coordination:E/H)

 眼で捉えた目標に対し , 手で素早く反応する能力であ る.Sports Vision(AS-24,Kowa)を用い,0.9 秒間パ ネル上に点灯するライトを 120 個押し終わるまでに要 した時間を測定した.したがって,測定値の値が小さい ほど優れた E/H を示す.VT 群,非 VT 群においては 椅座位で測定した.

 4)コントラスト感度(Contrast Sensitivity:CS)

 白黒の明暗を識別し,夜間視力に影響を及ぼす能力で ある.sine wave contrast test(Stereo Optical Co. Inc.)

を用い,空間周波数特性 18 cycle/degree の領域 E1 〜 E8 において,白黒の縞模様の方向(真上・右上・左上)

を正確に識別出来る領域を測定した.領域の右(E8)

にいくほどコントラストが薄くなり,領域数値の大きい 値ほど優れた CS を示す.測定は高齢群と若年群のみ実 施した.

3.VT 方法

 VT 群,非 VT 群において初回の測定を行った後,

VT 群に対し KVA,DVA,E/H の VT を週 3 日の頻度

DVAࡡVTKVAࡡVT

図1.KVA,DVA の VT 装置

数字を書いた白色のボールを対象の眼の高さに合わせて吊る し,KVA の VT では前後に,DVA の VT では左右にボールを 動かし,対象には顔を動かさず眼だけで追視するよう指示し,

VT を実施した.

(12)

後 19.7 ± 6.5 rpm となり,両群ともに有意な変化を認 めなかった.

 3)E/H

 VT 群 に お い て は 初 回 117.0 ± 8.3 秒 か ら 4 週 後 115.4 ± 7.8 秒,非 VT 群では初回 120.7 ± 8.2 秒から 4週後 119.5 ± 8.8 秒となり,両群ともに有意な変化を 認めなかった.

2.高齢群の各要因における視機能の比較

 運転習慣,交通事故歴,運動習慣という個人的要因の 有無により分類した各群の測定値を表 5 に示す.また,

アンケート調査により,視機能に自信を有している者は 43 名中 24(56%)であった.

 1)運転習慣

 有群が無群と比較して,KVA/SVA は有意に高値を,

DVA は有意に低値を示した.E/H,CS においては,

2群間に有意差を認めなかった.

 2)交通事故歴

 KVA/SVA,DVA,E/H,CS の全測定項目において,

有群と無群の2群間に有意差を認めなかった.

 3)運動習慣

 KVA/SVA,DVA,E/H,CS の全測定項目において,

有群と無群の2群間に有意差を認めなかった.

3.VT 群と非 VT 群における視機能の変化(図2)

 1)KVA/SVA

 VT 群においては初回 0.34 ± 0.15 から4週後 0.55 ± 0.26 へと有意な上昇を認めた.非 VT 群では初回 0.32

± 0.24 から4週後 0.25 ± 0.13 となり,有意な変化を 認めなかった.また,4週後では VT 群が非 VT 群に比 べ,有意に高値を示した.

 2)DVA

 VT 群においては初回 20.7 ± 7.2 rpm から 4 週後 24.4

± 6.9 rpm,非 VT 群では初回 22.8 ± 6.9 rpm から4週

表4.視機能測定値

高齢群(n = 43 ※) 若年群(n = 62)

KVA/SVA DVA(rpm)

E/H(秒)

CS(指標番号)

0.42 ± 0.18 30.3 ± 6.2 102.8 ± 5.0 1.88 ± 1.83

0.61 ± 0.20 42.2 ± 3.8 84.5 ± 6.5 5.13 ± 1.71

(mean ± S.D.)

*:p < 0.01 vs. 若年群(t-test),†:p < 0.01 vs. 若年群(U-test)

※ DVA のみ,高齢群:n = 36

表5.高齢群の各要因における視機能

運転習慣 交通事故歴 運動習慣

有群(n = 34) 無群(n = 9) 有群(n = 11) 無群(n = 32) 有群(n = 20) 無群(n = 23)

KVA/SVA DVA(rpm)※

E/H(秒)

CS(指標番号)

0.45 ± 0.17 28.9 ± 6.1 102.5 ± 5.1 1.94 ± 1.89

0.29 ± 0.18 35.1 ± 3.7 104.3 ± 5.0 1.67 ± 1.66

0.46 ± 0.13 29.6 ± 4.7 103.0 ± 4.6 2.73 ± 1.95

0.40 ± 0.20 30.5 ± 6.8 102.8 ± 5.3 1.59 ± 1.72

0.42 ± 0.20 31.9 ± 5.6 103.7 ± 5.5 1.95 ± 2.16

0.41 ± 0.17 29.1 ± 6.5 102.1 ± 4.6 1.83 ± 1.53

*:p < 0.05 vs. 条件無群(U-test) (mean ± S.D)

※ DVA のみ,運転習慣有群:n = 28,無群:n = 8,交通事故歴有群:n = 10,無群:n = 26,運動習慣有群:n = 15,無群:n = 21

A

1.0

A

VT⩄

0.4 0.6 0.8

KVA/SVA

VT⩄

㟸VT⩄

Mean 㼳SD

0.0 0.2

ิᅂ 4㐄ᚃ

B

35

B

䟼䠌p<0.05 (t-test) 䇹 䠌p<0.05 (U-test)

25 30 35

A (rpm)

B B

10 15 20

ิᅂ 4㐄ᚃ

DVA

ิᅂ 4㐄ᚃ

125

C

130

C

105 110 115 120

E/H ()

100

ิᅂ 4㐄ᚃ

図2.VT による視機能の変化

(13)

広大保健学ジャーナル,Vol. 8(1・2), 2009

 本研究においても高齢者の視機能は若年者に比べ,著 明に低下していることが明らかとなり,高齢者の交通事 故防止対策の 1 つとして,高齢者の視機能対策が必要で ある.その視機能対策の 1 つとして VT が重要であると 考えられる.また,交通事故歴の有無によってこれらの 視機能に差があるという仮説も考えられる.しかし,本 研究では交通事故歴による視機能の差異は認めなかっ た.高齢群においては今回聴取した条件の他に,長年の 生活環境や習慣が視体験の多寡やレベルに影響を及ぼし ているため,視機能における個人差が大きくなり,結果 が仮説と異なったものと考える.

 運動習慣については,DVA や E/H は加齢に伴い低下 するが,運動習慣によりその低下速度を鈍化させられる という中村らの報告4)をはじめ,運動習慣により視機 能に差が生じることが指摘されている5,7,9).しかし,本 研究では運動習慣の有無による視機能の有意差を認めな かった.若年者に対する先行研究5,7,9)では球技の運動 習慣に着目していることから,本研究での運動習慣は球 技に限定した.運動習慣有群においてはゲートボールな どの球の速度が遅い種目が目立ち,視機能の維持・改善 のための運動としては不十分であったことが考えられ る.一方,高齢者において剣道の習慣により視機能に差 が生じることが報告されており4),球技でなくとも素早 い動きを認識する種目であれば視機能に影響を与える可 能性があり,種目の選別について今後更なる検討が必要 であると考えられる.

 本研究の問題点として,対象者数が全ての高齢者を代 表するのに十分な人数ではなく,また経時的変化を追っ ていないことから個人差があり,加齢による純粋な変化 をみられなかった可能性が挙げられる.また,本研究に おいて運転習慣の有無で KVA に差を認めたが,自動車 運転が KVA の VT となった以外に自動車運転に伴う生 活習慣の相違が KVA に影響した可能性もある.今後,

高齢者の視機能と交通事故との関連について,対象数を 増やすとともに,今回聴取しなかった過去から現在に至 るまでの生活環境や習慣等の個人的要因別に調査してい くことが必要であると考える.

2.高齢者における VT 効果

 現在,一般に行われている VT は測定機器を利用した もの,あるいはスポーツ選手を対象にしたものであ

5,9,10).しかし,機器は高価で設置が困難である等の

問題があり,また本研究の対象は高齢者であることから,

機器を用いず,対象の安全を確保した上で,対象が楽し みながら継続して行える様な VT を考案し実施した.そ の結果,VT により VT 群では KVA/SVA が有意に上 昇し,若年者だけでなく高齢者においても KVA の VT 効果が現れる可能性が示唆された.一方,DVA と E/H

考  察

1.高齢者における視機能の現状

 先行研究2-7)で視機能は加齢により低下するとされて いたが,本研究により高齢群の KVA/SVA,DVA,E/H,

CS が若年群と比べ有意に低下していることが明らかに なった.加齢に伴い,水晶体の弾性,輻輳調節機能,網 膜および視中枢の働きといった視覚に関する生理機能が 低下するとされており2),これら生理機能の低下が視機 能低下の一因であると考えられる.

 高齢者の視機能低下は交通事故の一因となる可能性が 示唆されている2,3,6).高齢者の交通事故には,① 交通 事故の半数以上が交差点や交差点付近で発生してい 1,3),② 運転者においては運転操作不適による交通事 故が最も多い3),③ 歩行者の交通事故は,秋から冬の 薄暮時間帯から夜間において最多となる1),等という特 徴がある.そこで,① には人や車の流れ,標識を知覚 する上で重要と考えられる KVA および DVA,② には ハンドル操作の観点から E/H,③ には夜間視力に影響 を及ぼす CS の低下が一因となっていると考えられる.

 高齢者の視機能低下が明らかになった一方で,高齢群 の半数以上が視機能に対し自信を有しており,高齢者が 自身の視機能低下を自覚していない傾向にあった.

SVA 以外は通常の健康診断に含まれず,日常生活にお いて SVA 以外の視機能低下を自覚する機会は少ないも のと思われる.高齢運転者においては過信が交通事故に 関与するとされている6)ことからも,本研究の様に検 査結果を対象にフィードバックし,加齢による視機能低 下を自覚させ,安全確認に対する意識を変化させると いった,ソフト面での対応が交通事故防止につなげてい くために重要であると考える.

 個人的要因別の視機能については,運転習慣において 有群が無群に比べ,KVA/SVA が有意に高値を示した.

身近にできる KVA のトレーニングとして,本研究で用 いた数字や文字を書いたボールを動かし,眼で追うト レーニングの他に,乗物に乗った時,前方から来る目標 を見るトレーニングがある8).したがって,自動車運転 中の適切な車間距離の調節のためには前方の車の動きを 把握する必要があるが,それ自体が VT となりえ,また,

運転中に標識や対向車を見ることは前方から近づく目標 を見る VT になると考えられる.本研究の運転習慣有群 では自動車運転自体が KVA の VT となり,その結果加 齢に伴う KVA 低下を鈍化させた可能性が示唆される.

DVA については運転習慣の有群が無群に比べ有意に低 値を示した.長年の生活環境や習慣により視覚に対する 刺激量が異なるため,視機能における個人差が大きくな ることや対象者数が結果に影響を及ぼしたものと考え る.

Table 2. Factors associated with EQS (self-coping capacity, person-coping capacity, situation-coping capacity) Variables self-coping capacity person-coping capacity situation-coping capacity

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