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地盤工学ジャーナル Vol.9,No.4, 石造構造物における力学安定評価時の 温度 - ひずみ係数 玉野富雄 1, 金岡正信 1, 西形達明 2, 西田一彦 3 1 大阪産業大学 工学部都市創造工学科 2 関西大学 環境都市工学部都市システム工学科 3 関西地盤環境研究センター 概

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(1)

石造構造物における力学安定評価時の「温度-ひずみ係数」

玉野 富雄

1

,金岡 正信

1

,西形 達明

2

,西田 一彦

3

1 大阪産業大学・工学部都市創造工学科

2 関西大学・環境都市工学部都市システム工学科 3 関西地盤環境研究センター

地盤工学ジャーナル Vol.9,No.4,619-632 地盤工学ジャーナル Vol. 9, No.4, ???-???

1

石造構造物における力学安定評価時の「温度-ひずみ係数」

玉野富雄

1

,金岡正信

1

,西形達明

2

,西田一彦

3

1 大阪産業大学・工学部都市創造工学科

2 関西大学・環境都市工学部都市システム工学科 3 関西地盤環境研究センター

概 要

本研究では,近世城郭石垣や石橋に代表される石造構造物の力学安定性を評価するための工学指標として,

外力一定条件下での単位石温度変化に対するひずみ変化の関係である「温度-ひずみ係数」について示し た。計測事例として,2か所の近世城郭石垣および1か所のアーチ型式石橋を取り上げた。2か所の近世城 郭石垣においては,石垣の変形状態を数値化した「石垣はらみ出し指数」と「温度-ひずみ係数」の関連 性について考察した。あわせて,これらの計測事例が,今後の近世城郭石垣の力学安定を評価する際の参 考とできることを示した。

キーワード:近世城郭石垣,アーチ型式石橋,花崗岩,石垣はらみ出し指数,温度-ひずみ係数

1. は じ め に

我が国における歴史遺産および建設文化としての石造 構造物の代表的なものとして近世城郭石垣(以下,近世城 郭石垣を単に石垣と呼ぶ)がある。石垣は築造後350~400 年近くを経過し,近年,各所で石垣ではらみ出し等の変状 が目立ち,集中豪雨時や地震時における崩壊の危険性が大 きくなり,修築や再築の必要性が生じているところが多い。

こうした石垣の修築や再築の必要性を検討する際,その石 垣がどのような力学安定状態にあるのかの工学的評価が 重要となる。

近年の石垣力学安定に関する研究には,深川らによる新 型スエーデン式サウンディング試験機を用いた仙台城で の地盤調査研究1),西形らによる遠心載荷実験を用いた研 究2),山本らによる実物大モデルを用いた石垣の地震時挙 動に関する振動台実験 3) などの研究取り組みが行われて いる。また,石垣とは別の力学構造を持つ石造構造物であ る石橋の力学挙動に関し,浅井ら4)は,数値解析に基づく 研究を行っている。

文化財としての石造構造物である石垣や石橋では,石材 間に接着材を用いないことより,鉄筋コンクリート構造物 と異なり,外力が作用しない状態では,個々の石材は,不 連続体の力学状態である。そのため,輪石全体および石垣 全体が連続体として力学安定するためには,アーチ構造物 に代表されるように圧縮の力学状態にあることが必要と なる。また,個々の石材が自由に膨張ができない拘束され た力学状態にあれば,温度上昇により拘束力が大きくなる。

また,集中豪雨時や地震時での石垣の崩壊は,経験的に

石垣面中央部付近ではらみ出すことにより生じることが 多い。あわせて,コーナー部にはらみ出しが生じている場 合には,石垣は,崩壊の危険性のより大きい状態にあると いえる。以上のことより,石垣の変形を全体として高精度 に計測し,ひずみ計測は石垣面中央部とコーナー部で行う ことが望ましいことになる。

従来,石垣や石橋に代表される石造構造物の力学安定性 を評価する際には,外見観察による検討が主流である。外 見観察による検討も極めて重要なことであるが,工学的に は不明確な点が残されているといえる。外見観察による検 討に加え,新たな検討法の導入が課題となっている。

こうした立場より,本研究では,石垣や石橋に代表され る石造構造物の力学安定性を評価するための工学指標と して,外力一定条件下での単位石温度変化に対するひずみ 変化の関係である「温度-ひずみ係数」について示す。計 測事例として,2か所の石垣および1か所のアーチ型式石 橋を取り上げる。2か所の石垣においては,石垣の変形状 態を数値化した「石垣はらみ出し指数」と「温度-ひずみ 係数」の関連性について考察する。あわせて,これらの計 測事例が,今後の他の石垣の力学安定を評価する際の参考 とできることを示す。

なお,本研究では地盤工学の定義に従い,圧縮ひずみを

+,引張ひずみを-とする。また,線膨張係数は,膨張が

+,収縮が-である。

(2)

玉野・他

2. 石垣はらみ出し指数

図1に「石垣はらみ出し指数」の説明図を示す。「石垣 はらみ出し指数」は,はらみ出している部分の石垣高さ Hdをメートル単位(m)で,石垣築造時の断面形状よりの 石垣はらみ出しの最大値 maxをセンチメートル単位(cm) で示し,max/Hdを「石垣はらみ出し指数」と定義する工学 指標である。「石垣はらみ出し指数」については,名古屋 城,明石城,丸亀城,高松城の4か所の石垣での検討事例 を示し,石垣の力学安定状態の評価を行う。なお,図1に おいて,石垣はらみ出し高さHdは,石垣がはらみ出して いる部分の高さを示すが,はらみ出しが石垣全高で生じて いる場合は,石垣全高Hが石垣はらみ出し高さHdとなる。

また,石垣最大はらみ出し maxは,水平方向に石垣断面 がはらみ出すと仮定した水平方向変位量として算定する。

「石垣はらみ出し指数」を算定する際,基となる石垣築 造時の断面形状を推測することが必要となるが,不明な場 合が多い。よって,利用できる断面形状設定法として,『後 藤家文書曲線』を用いる方法5)および変状の少ないコーナ ー部の断面形状を使用する方法が考えられ,事例ごとに検 討が必要となる。

図2に『後藤家文書曲線』による石垣断面形状の設定法 を示す。この方法では,図中に示すように石垣全高H,下 辺の長さb,下端部から1/3の高さまでの勾配Gを設計条 件とすればDEが求まる。次に,上辺の長さaを決めE点 から上端部FにかけてAB間をn等分する水平線を引く。

そして,n等分した各段の石垣を積み上げるごとにa0だけ 前面に張り出しF点に到達させる。n=4の場合,a0は図2 の上辺での関係よりa= ( 4+3+2+1 ) a0で計算できる。本説 明図ではn=4としたがnの数を増していけば,EFは直線 の組み合わせた形状から2次曲線の形状となる。

図 3 にはらみ出しが生じている石垣はらみ出し高さと

「石垣はらみ出し指数」の関係を示す。図中の印は実際 に崩壊が生じた事例,●印は,はらみ出しが生じているが 崩壊に至っていない事例を示している。図3での関係より

「石垣はらみ出し指数」5.5のラインを「石垣安定危険値」

と呼ぶ。「石垣安定危険値」より大きい値の石垣は,集中 豪雨時や地震時での崩壊に対する注意が必要な事例とい える。

印の事例は,1994年9月29日の台風26号による集中 豪雨時に崩壊した名古屋城二之丸内石垣崩壊事例(図4) および1995年1月17日の兵庫県南部地震時に崩壊した3 か所の明石城石垣崩壊事例における崩壊前の「石垣はらみ 出し指数」を示す6)。この4か所の石垣崩壊事例は,崩壊

図 『後藤家文書曲線』による石垣断面形状の設定法

図 「石垣はらみ出し指数」の説明図

図 石垣はらみ出し高さと「石垣はらみ出し指数」の関係

1

図「石垣はらみ出し指数」の説明図 石垣最大はらみ出しδmax(cm)

石垣はらみ出し高さHd(m)

石垣全高H(m)

基準石垣断面形状 石垣はらみ出し指数

δmax(cm) Hd(m)

=

石垣底 変状が生じた 石垣断面形状

0 5 10 15

0 2 4 6 8 10 12 14

××

×

×

明石城石垣

兵庫県南部地震時崩壊

名古屋城二之 丸内石垣集中 豪雨時崩壊)

再築前丸亀城 三之丸石垣 再築前高松城天守台石垣

×

:崩壊事例

石垣はらみ出し高さ Hd(m) 石垣はらみ出し指数(max(cm)/Hd(m) )

石垣安定 危険値(5.5)

● :未崩壊事例

下辺長さ b

y

ⅲ’

ⅱ’

ⅰ’

ⅰ”ⅱ”

ⅲ”

上辺長さ a 4a0 3a02a0

2

) 1 (

0

n n a a

n:分割数

直線勾配 H Gb

x

(3)

温度-ひずみ係数 地盤工学ジャーナル Vol. 9, No.4, ???-???

3 前のはらみ出し状態である石垣断面形状が把握できた事 例である。次に,図5に再築前丸亀城三之丸石垣7), 8), 9) お よび図6に再築前高松城天守台石垣10)における「石垣はら み出し指数」の算定結果を示す。再築前丸亀城三之丸石垣 での「石垣はらみ出し指数」は8で石垣最大はらみ出しは 69cm であった。再築前高松城天守台石垣での「石垣はら み出し指数」は,北面で8,東面で12,南面で10であり,

対応する石垣最大はらみ出しは,北面で34cm,東面で61cm, 南面で41cmと大きく,石垣は不安定な力学状態であった。

このことは丸亀城三之丸石垣や高松城天守台石垣を再築 する工学的妥当性を示しているといえる。

3. ひずみ計測法

温度-ひずみ係数

「温度-ひずみ係数」は,花崗岩石材(以下,単に花崗

岩と呼ぶ)表面にひずみゲージと温度センサー(熱電対)

を設置し,外力一定条件下で,単位石温度変化あたりのひ ずみの変化の関係を「温度-ひずみ係数(/℃)」と記述 する。また,花崗岩表面温度の計測値を単に石温度T℃ と記述する。

「温度-ひずみ係数」は,力学状態を評価する力学値で あるとともに,計測したひずみをひずみゲージ設置時の温 度に温度補正する際に用いる力学値である。一般的に,花 崗岩は圧縮ひずみで破壊することが少ないので,「温度-

ひずみ係数」の値が大きいほど安定な力学状態にあること になる。「温度-ひずみ係数」については,再築後丸亀城 三之丸石垣および再築前高松城天守台石垣の 2 か所の石 垣での計測結果とこれらの石垣と比べてより強固な石造 構造物であるアーチ型式水間寺厄除け橋石橋での「温度-

ひずみ係数」の計測結果との比較を行い,石垣と石橋にお ける力学状態を考察する。

図 名古屋城二之丸内石垣における「石垣はらみ出し指数」

図 再築前丸亀城三之丸石垣における「石垣はらみ出し指数」

はらみ出し高Hd=8.9m 石垣全高H=10.5m はら出しδmax= 54cm

石垣はらみ出し指数

1 . 9 6 . 548 

年の台風号時の崩壊状況

基準石垣断面形状

名古屋城二の丸内石垣における「石垣はらみ出し指数」

:

max/Hd) 変状が生じた石垣断面形状

石垣変状の状況

石垣全高H=15.9m

上辺a=1.8m

下辺b=8.8m 石垣最大はらみ出し

δ max=69cm 基準石垣断面形状

石垣はらみ出し高さHd=8.6m

石垣はらみ出し指数( δmax/Hd)

= 69/8.6 = 8.0

図再築前丸亀城三之丸石垣における「石垣はらみ出し指数」

:

(4)

玉野・他

石垣が力学的に安定な状態にあるかどうかの経験的な 評価法として,石垣の変形状態を数値化した「石垣はらみ 出し指数」による方法を前述した。しかしながら,石垣は,

構造や地盤状態などで一事例ごとに異なる点が多く,「石 垣はらみ出し指数」は,あくまで経験的な工学指標といえ る。以下に,「石垣はらみ出し指数」と併用する工学指標 としての「温度-ひずみ係数」について述べる。

計測ひずみは,外力によるひずみ(以下,単に外力ひず みと呼ぶ)と温度応力によるひずみ(以下,単に温度ひず みと呼ぶ)の和として計測される。外力が一定であれば計 測ひずみの変化は温度ひずみによる変化となる。また,計 測ひずみには,使用するひずみゲージと花崗岩の線膨張係

数の違いにより生じる計測上のひずみが含まれる。これを みかけひずみと呼ぶ。

式(1)と(2)にこれらのひずみの関係を示す。

KK =KJ + KM (1)

K

J +

M (2)

ここで,KK:計測温度-ひずみ係数,

K:計測ひずみ,

KJ:外力温度-ひずみ係数,

J:外力ひずみ,KM:みかけ 温度-ひずみ係数,

M:みかけひずみ,である。

図7にKK・KM・KJと温度補正法の説明図を外力ひずみ が圧縮の場合を例に示す。なお,温度とひずみの関係は,

外力一定時に石温度と計測ひずみの関係をプロットすれ ばほぼ直線的に変化するのでその直線の勾配より容易に 図6 再築前高松城天守台石垣における「石垣はらみ出し指数」

図7 KK・KM・KJと温度補正法の説明図 上辺 a=1.85m

石垣全高H=13.2m

下辺 b=7.85m 石垣はらみ出し指数

図再築前高松城天守台石垣における「石垣はらみ出し指数」南面)

Hd=4m

基準石垣断面形状

石垣変状の状況

石垣最大はらみ出し

δmax=41cm 4

41 10

変状の生じた 石垣断面形状 ( δmax/Hd)

石垣はらみ出し高さ

7

石温度 T(ºC)

ひずみ

(+圧縮

:ひずみゲージ設置時の石温度

KK計測温度ひずみ係数 直線の勾配)

石温度が上昇した場合の 計測値の温度補正 A点よりC

石温度が下降した場合の 計測値の温度補正 B点よりC

(  )

(-引張)

A点

C点 B点

O点

KJ外力温度ひずみ係数 直線の勾配

ε

Mみかけひずみ

εM

ε

Mみかけひずみ

KK=KJ+KM

ε

K=

ε

J+

ε

M

図 ..・.0・.-と温度補正法の説明図

ε

K計測ひずみ

ε

J

外力ひずみ

KMみかけ温度ひずみ係数 直線の勾配

:温度補正後の外力ひずみ 温度ひずみ

(5)

623

温度-ひずみ係数 地盤工学ジャーナル Vol. 9, No.4, ???-???

5 得られる。図中,O点ではひずみゲージ設置時の石温度と

K0を示す。また,ひずみゲージ設置時から温度が上昇 した時の

KA点で,温度が下降した時の

KB点で 表示する。それぞれ,図で示すように,ひずみゲージ設置 時の温度に

Kを補正するとC点が得られる。C点の

K

は,ひずみゲージ設置時からの温度ひずみを補正した外力 ひずみの増分を示している。

次に,C点で示される外力の大きさを知るには,ひずみ ゲージ設置時点での外力ひずみを求める必要がある。この ひずみゲージ設置時における外力ひずみは,積み上げ時で の計測や石のコアボーリングや石垣解体後にひずみを計 測するひずみ解放法の力学原理より求めることができる。

これらの計測において,ひずみゲージ設置時の温度は,外 力ひずみと温度ひずみを分離するため,正確に記録するこ とが極めて重要である。

一 般 に , 花 崗 岩 の 線 膨 張 係 数 は , 常 温 に お い て は

5~12/℃の範囲にあることが多いが,石目の方向,潜在微

細クラック,および成分の熱変性などが影響して線膨張係 数が変化する。そのため,石ごとにその特性を見極めるこ とが必要であるが,至難のことである。この点が,鋼材の 場合との相違点である。ひずみゲージを用いる際の最大の 問題点は,使用したひずみゲージと石の線膨張係数の違い により,

Mが生じることである。

Mは計測する花崗岩ご

とに岩質や風化の程度によって異なる。前述したように,

ひずみゲージ設置時の温度に

Kを補正すれば,

Mの影響

はなくなるが,石垣の力学状態をより詳細に考察するため には,

Kからこの

Mを差し引いて得られる

Jによる検

討がすべての計測点で必要となる。

KMは,無拘束力学状態での石の温度とひずみの計測よ り簡単に得ることができる。また,ひずみゲージと石の線 膨張係数が同じであれば,無拘束力学状態では温度変化に より

Kに変化のない,すなわち KJ:0/℃となる。ただ し,無拘束力学状態のひずみ計測ができない場合には KJ

の算出ができない。

また,ひずみ計測値を用い,石造構造物の力学状態を評 価する際,

Jが弾性域にあることが重要な点である。KJ

および

Jの定量的議論については,後述するひずみ計測 事例で述べる。

無拘束力学状態におけるひずみ計測

岡山県犬島産花崗岩の新石により作製した供試体(縦 10cm×横8cm×厚さ2cm)を用い,無拘束力学状態でひず みゲージ(ゲージ長:3cm)を設置し,温度とひずみの関 係を0~78oCの範囲で実験室内の恒温室で調べた。ひずみ ゲージ設置時の温度は20℃であり,そこから20℃→0℃→

78℃→23℃の温度変化を与えた。実験時の1時間あたりの 温度上昇および下降速度は5℃/hrである。なお,実験に使 用した花崗岩の力学試験結果は,圧縮強度:150.6MN/m2, 割裂引張強度:5.9MN/m2,純引張強度:5.0MN/m2,変形 係数:51.7GN/m2,破壊時ひずみ:2500,弾性限界ひずみ:

1400,ポアソン比:0.31である。

図8に

Mの計測結果を例示する。ひずみゲージを設置 時の0oCから30oCまでの石温度では

Mはほぼ0であり,

30oC をこえると急激にひずみは圧縮ひずみ増大側に変化 し78oCでは371となった。その後,石温度を低下させる と石温度上昇時と同じ経路を戻らず非可逆性を呈し,温度 上昇時に比べて大きい

Mとして変化し23oCで

M0

となった。図8での

Mより,実験に使用した花崗岩であ れば,0oCから30oCの範囲では線膨張係数は11/ ℃であ り,Mは 0を示すことがわかる。石温度が30oCを超え 上昇すると,花崗岩の線膨張係数は減少し,

Mがみかけ

の圧縮ひずみとして増大したことが読み取れる。

次に,風化の見られる花崗岩を用いて,同様の実験を行 った。実験結果を図 9 に例示する。単位石温度あたりの

Mの変化は,5.3~6.0/℃の値を示している。すなわち,

無拘束力学状態で,石温度上昇によりみかけの圧縮ひずみ が生じたのは,使用したひずみゲージの線膨張係数が花崗 岩の線膨張係数より大きいことが原因である。逆に,線膨

図8 無拘束力学状態における花崗岩の の計測事例(1) 8図9 無拘束力学状態における花崗岩の の計測事例(2) -200

-100 0 100 200 300 400

0 10 20 30 40 50 60 70 80

㻌㻔)

石温度 T (oC)

圧縮 (+)引張 (-)

風化の無い花崗岩

ひずみゲージ設置時 石温度 20ºC

鉄板 アルミ板

図無拘束力学状態における花崗岩のεM計測事例(1)

-200 -100 0 100 200

0 10 20 30 40 50

( )

石温度 T (oC)

花崗岩供試体厚さの「温度-ひずみの関係」

アルミ供試体の「温度-ひずみの関係」

線膨張係 22.4μ /℃

線膨張係 6.0μ /℃

線膨張係 5.9μ /℃

線膨張係 11.6μ /℃

線膨張係 5.3μ/℃

圧縮 (+)引張(-)

図 無拘束力学状態における花崗岩の ε

M

の計測事例(2)

風化のみられる花崗岩 KM:5.3~6.0 /ºC

ひずみゲージ設置時 石温度(20ºC)

(6)

玉野・他

張係数がひずみゲージの線膨張係数より大きい花崗岩の 場合では,ひずみゲージ設置時の温度より石温度が上昇す るとみかけの引張ひずみが生じることになる。

線膨張係数23/℃ のアルミ材による実験例を図8中に 示す。アルミ板での実験は,アルミ材が花崗岩と比較して 質量がほぼ同じで線膨張係数が2倍程大きいので,花崗岩 の場合と比較して示すと

Mの発生状態がわかりやすい と考え行ったものである。

4. ひずみ計測事例

アーチ型式石橋である水間寺厄除け橋築造時,丸亀城三 之丸石垣再築時,および高松城天守台石垣解体時における KK・KM・KJの計測結果を実証事例として示す。

図 10に水間寺厄除け橋築造時,丸亀城三之丸石垣再築 時,および高松城天守台石垣解体時で用いたロゼット型ひ ずみゲージを水間寺厄除け橋築造時で例示する。ロゼット 型ひずみゲージは3方向のひずみを計測し,それらの値を 用いて全方向のひずみや最大主ひずみ・最小主ひずみ・最 大せん断ひずみを求めることができる点で有効なもので ある。ひずみおよび石温度計測を実施する花崗岩にはシ ートにより直射日光と風雨などの影響がないように保

護を行った。

水間寺厄除け橋石橋

大阪府貝塚市にある水間寺厄除け橋の架替え時の新橋 はアーチ型式石橋として建設された。輪石のセントル支保 工上への組み立ては2010年1月に開始し2010 年3月末 に石橋は完成した。図11に輪石の組み立てが完了状態,

図12に完成状態を示す。輪石には,岡山県犬島産花崗岩 の新石を使用した。図13に石橋構造図を示す。

図12 水間寺厄除け橋の完成状態 図11 水間寺厄除け橋施工時の輪石の組み立て完了状態

図 ロゼット型ひずみゲージの水間寺厄除け橋築造時 の設置状況

1

3cm 3cm

圧縮ひずみ:(+) 引張りひずみ:(-)

図 ロゼット型ひずみゲージの水間寺厄除け橋築造時での設置状況

3

2

(7)

温度-ひずみ係数 地盤工学ジャーナル Vol. 9, No.4, ???-???

7 石橋は,長さ16.64m,幅5.1m,高さ5.3m,半径8m, 分切 0.49 の構造である。輪石と要石部輪石の断面形状お よびひずみゲージ設置位置を図14に示す。輪石の列は,

最後に据える要石部輪石と左右対称の 19列で要石を含め 計39列よりなる。輪石および要石部輪石の列は,1.7m, 1.7m,1.7mの3石で5.1mと0.85m,1.7m,1.7m,0.85m の4石で5.1mの交互に組み上げた。ひずみゲージは,セ ントル支保工上での輪石の組み立ての終了した2010 年2 月6日に設置した。ひずみゲージ設置時の輪石の石温度は 全ひずみゲージ設置期間を通じて4.7oCであった。ひずみ ゲージ設置時の外力ひずみはセントル支保工上に石が乗 った状態であるので,その期間のひずみ計測値は検討から 除外した。図15にひずみゲージ設置位置を示す。ひずみ ゲージは輪石端面に設置した。石温度は熱電対を輪石底面 に設置し計測した。また,無拘束力学状態で輪石と同じ約 30cm角の石でのひずみ計測では,石温度が変化しても

M

は0であり,KM=0/℃,KK=KJとなる。

図16に,石橋上部構造完成状態で,中央測点in:

1

おけるセントル支保工と輪石が離れた時点からの石温度 と計測ひずみの経時変化を,輪石接面に垂直方向のひずみ

1について例示する。また,図17に石温度と

K(=

J) の 図13 水間寺厄除け橋の石橋構造図

図15 水間寺厄除け橋におけるひずみゲージ設置位置

図 水間寺厄除け橋輪石におけるの計測と温度 補正例(中央測点in:1

+ P

図水間寺厄除け橋輪石におけるひずみゲージ設置位置および外力ひずみとKJ

石温度 outin

ε

2

ε

1: 輪石接面に 直角方向のひずみ

ε

1 に 直角方向のひずみ

図14 水間寺厄除け橋の輪石と要石部輪石の 断面形状およびひずみゲージ設置位置

0 5 10 15 20 25

㻜 㻞㻠 㻠㻤 㻣㻞 㻥㻢

石温度 T (o C)

月/日 (2010年)

3/20 3/21 3/22 3/23 3/24 0

50 100 150 200 250 300

㻜 㻞㻠 㻠㻤 㻣㻞 㻥㻢

K: 1㻌()

月/日 (2010年)

3/20 3/21 3/22 3/23 3/24

セントル支保工と輪石が離れた時点 ひずみゲージ設置日

年月日 設置時石温度 4.7

図 水間寺厄除け橋輪石 におけるひずみの温度補正例 ( 中央測点 in : 

1

)

セントル支保工と輪石が離れた時点

J

k(J )

温度補正後のJ 13

L=16.64m

L=16.64m

H=4.05m

4.01m0.30m3.01m 2.00m3.01m0.30m4.01m

5.10m

北側 立面図

上部構造

平面図

市道

市道

図水間寺厄除け橋の構造図

水路

岩盤 分切=

8-4.05R8RH

=0.49

・・ 南側

in in out out

ひずみゲージ ひずみゲージ

図水間寺厄除け橋の 輪石 要石部輪石

(8)

玉野・他

関係を示す。良好な直線性が得られ,KK (=KJ)で8.9/℃ であった。表1に最終計測値で整理した

J KJを示す。

in では,

J241,KJ:8.9/℃ 温度:4.7℃に温度補正 後の

J:156,であり,outでは,

J:240,KJ:10.8/℃ 温度4.7℃に温度補正後の

J137であった。

ひずみ計測とあわせて行った輪石全体の光波測量での 計測変位はゼロであった。また,表1に示す輪石の

1方 向の拘束力に対応するKJ は平均で8.1/℃であり,完全拘 束の場合の 11/℃(完全拘束の場合には線膨張係数の 11/℃だけ伸長できない)と比べて約 74%と大きかった。

また,

J は平均で175であり,弾性域のひずみであった。

これらのことより,水間寺厄除け橋石橋は安定した力学 状態にあることが考察できた。

近世城郭石垣

再築後丸亀城三之丸石垣

丸亀城は,1642年から1660年に築造された。近年,三 之丸石垣の変状が大きくなったことより,1997 年から 2002年にかけて再築がなされた。再築後の石垣高さは20m である。石垣高さ 20m にも及ぶ再築は極めてまれな事例 であったため,ひずみ計測に基づく情報化施工による安全 管理を実施した。

図18に三之丸石垣の再築施工状況を示す。計測は図中 に示すC石垣面を中心に行った。図19にC石垣面の形状 と計測を行った石垣石位置を示す。底辺長さ25.5m,上辺

長さ8.75m,高さ20mであり,ほぼ左右対称の形状である。

再築石垣断面形状は『後藤家文書曲線』をもとに設定した。

なお,再築後の「石垣はらみ出し指数」は0である。

石垣は,安山岩の岩盤上に築造され,安山岩の裏込めと 花崗岩の石からなる。高さ 15m までは,石を元の位置で 正確に再使用し,傷んでいる石は岡山県犬島産花崗岩の新 石に取り換えた。高さ15mから20mへの積み上げには岡 山県犬島産花崗岩の新石を使用した。

石垣面へのひずみゲージおよび温度計(熱電対)の設置 は 15m 積み上げ状態で設置した。ひずみゲージ設置時の 石温度は29℃であった。

図20に石垣面中央部(石番号363)の縦方向

1におけ

る20m積み上げ後における石温度と計測ひずみ

Kの計測

例を示す。良好な直線性を示し KK:5.4/℃ が得られた。

ひずみゲージは花崗岩の新石を選択して設置した。また,

表2に温度補正後の

JおよびKJを示す。石垣面中央部で は,縦方向ひずみの

J176;KJ:5.4/℃,横方向ひず みの

J122;KJ:5.0/℃である。一方,隅角部では,

縦方向ひずみでは

J65;KJ:6.7/℃で,横方向ひずみ では

J256;KJ:7.3/℃であった。

ひずみゲージ設置時の高さ 15m での石垣石に生じてい たひずみは,20mの石垣高さまで積み上げた後に行ったコ アボーリングによりひずみゲージを設置した石の部分を くり抜いて行った。すなわち,計測した引張ひずみを圧縮 ひずみに読み替えるひずみ解放法の力学原理により求め

図 水間寺厄除け橋輪石における石温度と計測ひずみ の関係例(中央測点in:1

表 水間寺厄除け橋輪石におけるJ と KJ

図18 再築時丸亀城三之丸石垣の施工状況

図 水間寺厄除け橋に輪石における石温度と計測ひずみの関係例 (中央測点 in:

1 ) KK: 8.9 /ºC

(KK=KJ)

140 150 160 170 180 190 200

6 7 8 9 10 11 12 13

㻌 

()

石温度 T (oC) 実数値に16プラスしたグラフ

26

表ー1

ε1 235 5.4

ε2 218 3.9

ε1 198 6.9

ε2 221 4.5

ε1 232 9

ε2 143 1.5

ε1 226 5.1

ε2 186 3.7

ε1 241 8.9

ε2 230 5.2

ε1 240 10.8

ε2 204 8.1

ε1 113 7.8

ε2 89 4.2

ε1 105 5.9

ε2 42 3.4

ε1 244 7.3

ε2 89 2.7

ε1 198 6.9

ε2 141 6

(M=0, K=J) 南側

測点6 in out

J () KJ㻌㻔/ºC)

北側 測点6

in out 中央測点

in out

北側 測点12

in out 南側 測点12

in out 測点 ひずみ

の方向

(9)

627

温度-ひずみ係数 地盤工学ジャーナル Vol. 9, No.4, ???-???

9 た。コアボーリングの説明図を図21に示す。その際,コ アボーリングによりくり抜いた石の石温度変化に対しひ ずみ計測値の変化は生じなかった。その結果として,コア ボーリングによりくり抜いた石のひずみの温度補正は必 要がなく,KM:0/℃であり,KK=KJとなる。次に15m か ら20mへの積み上げによる増分ひずみは,KKを用いて,

Kをひずみゲージ設置時への温度補正をして求めた。表3 に積み上げ時にともなう

Jの算定結果を示す。15m積み 上げ時と15~20m積み上げ時の増分ひずみを合算し

J

した。

これらのひずみ計測結果より,石垣の積み上げにより,

石垣面全体に圧縮ひずみが発生する力学的に安定な状態 にある石垣であることが考察できた。

再築前高松城天守台石垣

高松城天守台石垣は,築造から400年近く経ち,はらみ 出し等による石垣変状が顕著に生じていた。石垣の解体作 業は2007年から2008年にかけて行われた。

図6および図22に天守台石垣の再築前の状態を示す。

天守台天端では,東西方向20.8m,南北方向で22.4m,石 垣高さは13.5mである。前述したように,北面,東面,お よび南面の中央断面付近の「石垣はらみ出し指数」は,北 図19 再築後丸亀城三之丸石垣におけるひずみゲージ設置位置図

27

表ー

ε

1 65 6.7

ε

2 256 7.3

ε

1 176 5.4

ε

2 101 5.0

KJ (/ºC) ひずみ

石番号 方向 36 363

J ()

20

図 再築後丸亀城三之丸部石垣における石温度と計測ひずみの関係例 (石番号363:

ε

1)

-150 -100 -50 0 50 100

-5 0 5 10 15 20 25 30 35

㻌 : 

㻌()

石温度 T (oC ) KK:5.4/ ºC 石番号363:ε1

(KK=KJ)

図20 再築後丸亀城三之丸石垣における石温度と 計測ひずみの関係例(石番号363:1 ) 表2 再築後丸亀城三之丸石垣におけるJ とKJ

直径 100mm

深さ 50mm ひずみゲージ

コアボーリング

ハンマー

計測ケーブル

図コアボーリングの説明図 図21 コアボーリングの説明図

表3 再築後丸亀城三之丸石垣における積み上げに ともなうJ の算定結果

28

表 再築後丸亀城三之丸部石垣における外力ひずみの算定結果

ε1 42 23 65

ε2 221 35 256

ε1 50 51 101

ε2 43 29 72

ε

M=0,

ε

K=

ε

J

36 363

J () 石番号 ひずみ方向15m積み上

げ時

15~20m積 み上げ時の 増分

20m積み上 げ終了時

温度-ひずみ係数

(με/℃)

ε Y ε K

ひずみゲージ 設置石垣石 (石番号363)

ひずみゲージ 設置石垣石 (石番号36) C

図 再築後丸亀城三之丸部石垣C面における外力ひずみとKJ

17.0 m

13.5m

石番号36 石番号363

25.5 m

9.25 m 8.75 m 7.5 m

15m5m

(10)

玉野・他

面で8,東面で12,南面で10であった。なお,図中に示 す石垣変状前の基準石垣断面形状は前述した『後藤家文書 曲線』による方法で推定した。

図22中に再築前石垣でひずみゲージ設置した南面の石

の位置を示す。図23に解体時のひずみ計測結果より求め た

KKKをS-H-2:1の場合で例示する。

J算定のための石垣解体時の力学状態評価法,すなわち ひずみ解放法による

J算定法について説明する。石垣解

北面

南面 東面 西面

図再築前高松城天守台石垣の状態および外力ひずみとKJ

9m11m

大きなはらみ出し部分

石番号 S-C-1

石番号 S-C-2 石番号 S-H-1

石番号 S-H-2 図22 再築前高松城天守台石垣状態

図23 再築前高松城天守台石垣解体時の Kと KK の算定例 S-H-2 :1 ) 南面

0 10

1 3

5 7

9 11

係数1

10 8 6 4 2

23

図 再築前高松城天守台石垣の解体時の外力とひずみの算定例 ( 6+ 

1

)

J:-93()

ひずみゲージ設置高さよりの石垣高さ m

ひずみゲージ設置高さよりの石垣高さ m

ひずみゲージ設置高さよりの石垣高さ m 日時年月日

(11)

629

温度-ひずみ係数 地盤工学ジャーナル Vol. 9, No.4, ???-???

11 体は上部より順次行われるので,計測ひずみはマイナスの 引張ひずみが増してゆく。

各解体段階でのKK・KM・KJは圧縮ひずみでプラスとし て生じるので,これらの値もマイナスとして読み替える。

この二つを合算したマイナス値をひずみ解放法の力学原 理より圧縮ひずみに読み替えれば外力ひずみが算定でき る。前述した丸亀城石垣で行ったコアボーリングによるひ ずみ解放法と力学原理は同じである。なお,ひずみゲージ 設置高さより石垣高さ1mを近似的に石垣解体時の力学状 態とみなした。

また,解体前でのKKの算定例をS-C-1:

2の場合で図

24に例示する。良好な直線性を示しKK:5.0/℃であった。

次に,図25にKMを推定するための関係図をS-C-1:

2

よびS-H-2:

1で例示する。S-H-2:

1 の事例での上辺よ

りの高さ 11m 部のひずみ計測では,石垣解体作業時にす べての計測石は上段部の石を約1m残した状態で施工上の 理由によりひずみゲージの計測線を切断したため無拘束 力学状態でのひずみ計測はできていない。そこで,図より,

各施工ステップで計測値をもとに石垣高さとKMの無拘束 力学状態のKM:2.6/℃を求めた。KK:4.2/℃からKM: 2.6/℃を引くと KJ:1.6/℃が求まる。高さ9m の計測点 は無拘束力学状態での計測ができているので,直接的に

KJ:1.8/℃を得ることができる。

表4に南面における最終計測値で整理したKK・KM・KJ

を示す。大きなはらみ出しが生じている天端から 11m の 石垣高さの石垣面中央部測点縦方向 1では温度補正後で

J:93;KJ:1.6/℃ ,横方向 2では,温度補正後で

J: 90;KJ:1.7/℃ ,コーナー部測点縦方向

1では温度補

正後で

J94m;KJ:2.2m/℃, 横方向では温度補正後で

J:107;KJ:0.1/℃であった。

表 再築前高松城天守台石垣における外力ひずみと K

K

・ K

M

・ K

J

1 190 6.0 5.9 0.1

2 237 5.4 5.3 0.1

1 93 4.2 2.6 1.6

2 90 4.4 2.7 1.7

1 130 5.2 4.2 1.0

2 250 5.0 3.2 1.8

1 94 4.6 2.4 2.2

2 107 5.3 5.2 0.1

KK(㻛ºC) KM(㻛ºC) KJ(㻛ºC)

石番号

J ()

S-H-2 S-C-1 S-C-2

11 中央・下

9 コーナー・上 11 コーナー・下

9 中央・上

S-H-1

ひずみ 方向 石の

位置 上辺から

の高さ(m)

注:S-H-2 :

1の値は図23中に示す-93をひずみ解放法の原理より93としたものである。

表4 再築前高松城天守台石垣におけるKK・KM・KJ

図25 再築前高松城天守台石垣におけるKMの算定例(S-H-2:1,S-C-1:2

図24再築前高松城天守台石垣解体前でのKK の算定例

(S-C-1:2

24 -80

-75 -70 -65 -60 -55

11 12 13 14 15 16 17 18

㻌㻌㻌 (  )

石温度 T ( oC ) 80

75 70 65 60 55

S-C-1:

2 KK : 5.0 /ºC

図 再築前高松城天守台石垣の解体前でのKK算定例 ( S-C-1:

2 )

0 10

0 2

4 6

8 10

12

係数1

0 10

0 2

4 6

8 10

12

㻱㻙㻝㻟㻙㻢㻣㻌横加筆修正 補正係数㻔μ/℃) 㼥㻌㻩㻌㻞㻚㻣㻥㻡㻠㻌㻗㻌㻜㻚㻝㻥㻞㻠㼤㻌㻌㻌㻾㻩㻌㻜㻚㻠㻣㻢㻟㻠㻌

ひずみゲージ設置高さよりの石垣高さ (m) S-C-1 :

㻱㻙㻝㻤㻙㻟㻡 縦 加筆 補正係数㻔μ/℃) 㼥㻌㻩㻌㻞㻚㻟㻡㻥㻣㻌㻗㻌㻜㻚㻝㻡㻤㻞㻝㼤㻌㻌㻌㻾㻩㻌㻜㻚㻣㻞㻜㻡㻝㻌

S-H-2 :

4.2 /ºC

5.0 /ºC 3.2 /ºC

K

K

KJ = 4.2-2.6 = 1.6 /ºC

K

M

K

K

KJ = 5.0-3.2 = 1.8 /ºC 2.6 /ºC

25

図 再築前高松城天守台石垣におけるKK・KM・KJの算定例(S-H-2:

1,S-C-1:

2 )

K

M

外挿に よる推定値

石垣高さ P

(12)

玉野・他

高松城天守台石垣の石垣構造比(石垣上端部長さと石垣 高さの比)は2程度であり3次元力学効果を期待できる石 垣面形状である6), 9)。石垣変状が見られない上部ひずみ計 測位置と石垣変状の生じている下部ひずみ計測位置での 石垣解体前のひずみ計測値を比較検討すると次のようで ある。

表4中に示した

JKJがそれぞれ小さい値を示してい ることより,石垣面での連続体としての強固さ,すなわち 横方向への力の流れが生じる 3 次元力学効果が生じてい ないことが考察できる。外面からの石垣変状調査から,隅 角部である算木積み部の下部部分が石垣面中央部から離 れるようにズレ,3次元力学効果がなくなり,その結果と してはらみ出したと判断できた。これらの石垣変状はひず み計測結果と符合する。

5. 石垣はらみ出し指数と外力温度-ひずみ係数の 関係

表5に3計測事例での

JとKJを整理して示す。アーチ 型式水間寺厄除け橋石橋におけるKJは5.4~10.8/℃(平 均で8.1/℃),再築後丸亀城三之丸石垣では 5.0~7.3/℃

(平均で 6.15/℃),および再築前高松城天守台石垣のは らみ出しの生じている上辺より 11m 部では 0.1~2.2/℃

(平均で1.15/ ℃)であった。石垣のKJは,アーチ型式 水間寺厄除け橋石橋の KJと比べて,平均値では,再築後 丸亀城三之丸石垣では75%であり,再築前高松城天守台石 垣では14%の小さな値であった。

また,石垣がはらみ出した再築前高松城天守台石垣と緻 密に積み直した再築後丸亀城三之丸石垣の両石垣を比較 すると,緻密に積み直した再築後丸亀城三之丸石垣では,

3倍ほど石垣がはらみ出した再築前高松城天守台石垣より 大きいことが特徴である。次に,図3に示した「石垣はら み出し指数」と図20中に示したKJとの関係を再築前高松 城天守台石垣南面で考えると,KJは0.1~2.2/℃で,その 際の「石垣はらみ出し指数」は10であった。

上述した諸値は,計測事例数としては少ないものの我が 国を代表するような石垣での計測事例であり,他の類似の 石垣の安定状態を考える際の参考とできよう。

近年,石垣の老朽化が進み,再築や修築が必要とされる 事例が増えている。「石垣はらみ出し指数」による方法と あわせてひずみゲージを設置し KJを計測することで,石

垣の力学安定状態が把握できると考える。これらの方法は 歴史的文化財としての石垣を傷めることがないという大 きな利点がある。

6. まとめ

本研究のまとめを以下に示す。

① 石垣の力学安定性評価法として,「石垣はらみ出し指 数」および「温度-ひずみ係数」の二つの工学的提案 を行った。「石垣はらみ出し指数」は,はらみ出して いる部分の石垣高さHdをメートル単位mで,石垣 築造時の断面形状よりの石垣はらみ出しの最大値

maxをセンチメートル単位 cmで表示し,max/Hd

「石垣はらみ出し指数」と定義した。「外力温度-ひ ずみ係数」KJは,外力一定の力学状態の単位石温度あ たりのひずみの変化の関係より定義した。

② KJは,ひずみゲージ設置時の石温度にひずみ補正する 際に用いる数値であるとともに,力学状態を評価する 重要な力学値である。KJは,「計測温度-ひずみ係数」

KKから「みかけ温度-ひずみ係数」KMを差し引いて 求めることができる。KMは,ひずみゲージと石の線 膨張係数の違いにより生じ,無拘束力学状態の計測に より適切に求めることができる。

③ アーチ型式水間寺厄除け橋石橋におけるKJは,5.4~ 10.8/℃(平均で 8.1/℃),再築後丸亀城三之丸石垣 では5.0~7.3/℃(平均で6.15/℃),および再築前高 松城天守台石垣では0.1~2.2/℃(平均で 1.15/℃)

であった。

④ 石垣のKJは,アーチ型式水間寺厄除け橋石橋のKJと 比べて,平均値でみれば,再築後丸亀城三之丸石垣で 75%であり,再築前高松城天守台石垣で14%と小さか った。また,石垣がはらみ出した再築前高松城天守台 石垣と緻密に積み直した再築後丸亀城三之丸石垣の 両石垣を比較すると,再築後丸亀城三之丸石垣での KJは 3倍ほど再築前高松城天守台石垣より大きかっ た。

⑤ 石垣の変形状態を数値化した「石垣はらみ出し指数」

とKJの関連性を再築前高松城天守台石垣で考察した。

「石垣はらみ出し指数」は10でそれに対応するKJは 0.1~2.2/℃平均で1.15/℃ であった。

30

表 3計測事例における外力ひずみ, K

J

,および石垣はらみ出し指数

水間寺厄除け橋 105~244(175) 5.4~10.8(8.1) - 再築後丸亀城三之丸石垣 65~256(160.5) 5.0~7.3(6.15) 0 再築前高松城天守台石垣 *90~107(98.5) 0.1~2.2(1.15) 10

( )内は平均値

計測事例 石垣はらみ

J () KJ (/ºC) 出し指数

表53計測事例における

J,KJ,および「石垣はらみ出し指数」

(13)

温度-ひずみ係数 地盤工学ジャーナル Vol. 9, No.4, ???-???

13 参 考 文 献

1) 深川良一,台蔵 憲,酒匂一成,高尾秀之,大北耕三,近藤 巧:新型スエーデン式サウンディング試験機による仙台城石 垣崩壊部・非崩壊部の地盤特性評価,地盤工学ジャーナル,

地盤工学会,Vol.7, No.1,pp.219-229, 2012.

2) 西形達明,玉野富雄, 金岡正信,森本浩行, 西田一彦,引場

敬太,辻 清仁:遠心載荷実験による城郭石垣構造の変形挙 動,歴史的地盤構造物の構築技術および保存技術に関するシ ンポジウム発表論文集,地盤工学会,pp.107-112, 2008.

3) 山本浩之,西形達明,八尾眞太郎,西田一彦,笠博義:実

大モデルを用いた城郭石垣の地震時力学挙動の検討,土木学 会論文集C,土木学会, Vol.66, pp.38-41, 2010.

4) 浅井光輝,山下和也,山崎礼智,荒木和哉:離散型有限要素 法モデルによる石造アーチ橋の静的・動的強度,構造工学論 文集,土木学会,55A, pp.172-180, 2009.

5) 森本浩行,西田一彦,西形達明,玉野冨雄:城郭石垣の隅各 部形状とその数値評価法,土木学会論文集,土木学会,No.666,

Ⅲ-53, pp.159-168, 2000.

6) 天野光三,西田一彦,渡辺 武,玉野富雄,中村博司:徳

川期大坂城石垣構造の土木史的研究,土木学会論文集,土木 学会,No.660, Ⅳ-49, pp.101-110, 2000.

7) 玉野冨雄,西田一彦,B.Shrestha,金岡正信,森本浩行:城

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9) 玉野富雄,B.Shrestha,西田一彦,西形達明:近世城郭石垣再 築時の力学計測,地盤工学会誌,地盤工学会,Vol.55, No.6, pp.38-41, 2004.

10) 西田一彦,大嶋和則,玉野富雄,金岡正信,北園和憲,山中 稔,白石 建:高松城天守台解時の力学調査と保全工法,土 木史研究講演集,土木学会,Vol.29, pp.235-242, 2009.

( 受付)

“WHPSHUDWXUHstrain coefficient” for analyzing mechanical behaviors RIVWRQHVWUXFWXUHV

Tomio TAMANO

1

, Masanobu KANAOKA

1

, Tastuaki NISHIGATA

2

, Kazuhiko NISHIDA

2

1 Osaka Sangyo University 2 Kansai University

3 Kansai Geo・Enviromental Research Center

$EVWUDF

W

In this study, “stone-wall bulging index” and “temperature-strain coefficient” for analyzing mechanical behaviors of stone-structures are described. “stone-wall bulging index” is defined as a ratio (bulging(cm)/bulging height(m)) of a stone-wall. A relation of strain change for temperature change under a external force uniformly condition is defined as “temperature-strain coefficient”. Two cases of modern age castle masonry wall and one case of arch-type stone bridge were conducted with strain measurements. As the results, “stone-wall bulging index” and “temperature-strain coefficient” in these three cases of strain measurement can be useful for analyzing mechanical behaviors of other modern age castle masonry walls.

Keywords: modern age castle masonry wall, arch-type stone bridge, granite, stone-wall bulging index, temperature-strain coefficient

(2014.2.24 受付)

(14)

玉野・他

“Temperature-strain coefficient” for analyzing mechanical behaviors of stone-structures

Tomio TAMANO

1

, Masanobu KANAOKA

1

, Tatsuaki NISHIGATA

2

and Kazuhiko NISHIDA

2

1 Osaka Sangyo University 2 Kansai University

3 Kansai Geo・Enviromental Research Center

ýǕĴėdzƒq} Vol. 9, No.4, ???-???

13 参 考 文 献

1) ƶijȌ„ɼäȑ ŜɼɓфŝɼɸĩǣɼďÓȇ…ɼȿȒ ĶɾŹāe\ƒnłb[nY_ȦɷƤ>ORäăǝ Ăıċɏ‚ɯıċɏ?ýǕDŽŗȥ­ɼýǕĴėdzƒq}ɼ ýǕĴė¢ɼVol.7, No.1,pp.219-229, 2012.

2) ȚňɈžɼLJɕġɧ, ɗĬƦ°ɼƛƌƵȓ, ȚǍ„ʼnɼŃć

ųđɼȽ Ʒ™ɾɊœȹȏĜɷ>ORăɐǝĂƟɄ?ČňŨ ÏɼƨåǔýǕƟɄǃ?ƟdzšȔ"OC¯ĖšȔ>ɞ.Rc

td[wǒȕȭŶɨɼýǕĴė¢ɼpp.107-112, 2008.

3) īƌƵɼȚňɈžɼ»ĩǚđɎɼȚǍ„ʼnɼǬ×ȄɾĜ

ďyn}Vnj3ăɐǝĂ?ýɭƀÌėŨÏ?ƜȡɼúƊė

¢ȭŶɨCɼúƊė¢, Vol.66, pp.38-41, 2010.

4) ƴ—¸Ⱥɼī‡ñ‘ɼīįǢƁɼȎƊñòɾɩŲāƇɡțǸ ưyn}>ORǝɄXƒkƣ?ɮǔ‚ÏǔŅĿɼƟɄĴėȭ ŶɨɼúƊė¢ɼ55A, pp.172-180, 2009.

5) ƛƌƵȓɼȚǍ„ʼnɼȚňɈžɼLJɕ¿ɧɾăɐǝĂ?ɤé ɏňdž;1?Ŵ´ȥ­ưɼúƊė¢ȭŶɨɼúƊė¢ɼNo.666,

-53, pp.159-168, 2000.

6) Đɕ¸…ɼȚǍ„ʼnɼƹȼ ƧɼLJɕġɧɼŒƏ×èɾő

ijƉďþăǝĂƟɄ?úƊåǔǞǩɼúƊė¢ȭŶɨɼúƊ ė¢ɼNo.660, -49, pp.101-110, 2000.

7) LJɕ¿ɧɼȚǍ„ʼnɼB.ShresthaɼɗĬƦ°ɼƛƌƵȓɾă

ɐǝĂƟɄ?ÌėęěɼƎŷɼƎŷė¢ɼVol.53, No.1, pp.5-8, 2004.

8) K.Nishida, T.Tamano, H.Morimoto, B.Shrestha: Geotechnical Aspect of Japanese Castle Masonry Wall and Mechanical Analysis for its Preservation, Proceedings of the 16th International Conferece on SMGE, ISSMGE, pp.2769-2772, 2005.

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10) ȚǍ„ʼnɼďIJñÈɼLJɕġɧɼɗĬƦ°ɼÓùñŜɼīŒ

ǧɼǓǝ ŁɾɸƔăĐĘäȟƀ?ÌėȬƙ;¯ºĴưɼú ƊåǞǩȯƽɨɼúƊė¢ɼVol.29, pp.235-242, 2009.

( áœ)

“Temperature-strain coefficient” for analyzing mechanical behaviors of stone-structures

Tomio TAMANO

1

, Masanobu KANAOKA

1

, Tastuaki NISHIGATA

2

, Kazuhiko NISHIDA

2

1 Osaka Sangyo University 2 Kansai University

3 Kansai GeoʃEnviromental Research Center

Abstract

In this study, “stone-wall bulging index” and “temperature-strain coefficient” for analyzing mechanical behaviors of stone-structures are described. “stone-wall bulging index” is defined as a ratio (bulging(cm)/bulging height(m)) of a stone-wall. A relation of strain change for temperature change under a external force uniformly condition is defined as “temperature-strain coefficient”. Two cases of modern age castle masonry wall and one case of arch-type stone bridge were conducted with strain measurements. As the results, “stone-wall bulging index” and “temperature-strain coefficient” in these three cases of strain measurement can be useful for analyzing mechanical behaviors of other modern age castle masonry walls.

Keywords: modern age castle masonry wall, arch-type stone bridge, granite, stone-wall bulging index, temperature-strain coefficient

参照

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