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海技者 ( 船員, 船舶職員 ) * 海技者 (- 船員船舶の安全運航を担う, 船舶職員 ) * - 船舶の安全運航を担う ** 渡邊尚文 ** 渡邊尚文 1. はじめに 船員と聞くと船の上での仕事のみをイメージされが ちであるが, 現場を知る技術者 ( 海技者 ) として, 陸上での業務は船舶管理

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1. はじめに

船員と聞くと船の上での仕事のみをイメージされが ちであるが,現場を知る技術者(海技者)として,陸 上での業務は船舶管理,営業への船舶全般に関するア ドバイスや船員労務関連業務など,多岐にわたる.も ちろん,海上で培った知識や経験は重要であり,船員 としての乗船は疎かにはできない.また、安全経済運 航を担う船員には,常にスキルアップが求められてお り,CBT(Computer Based Training)や陸上研修施 設での訓練研修が必須である.

本稿では船員(海技者)のうち,職員(オフィサー)

について,その職制や教育の為の訓練施設を紹介する.

2. 船長,航海士,機関長,機関士

船員とは船に乗って働く人々のことを指し,職員(オ フィサー)と部員(クルー)に分けられる.職員とは 船長,機関長,通信長,航海士,機関士,通信士など をさし,部員とはその他の甲板員,機関員や司厨員な どをさす.職員は部員を指揮して船の運航全般にかか わり,部員は職員の指示のもとに,運航や船質維持,

船内生活に関わるさまざまな仕事を行う.

1 船員肩章

このうち職員に関しては,2015 年の BIMCO/ICS

(注1/注2)の調査で2020年及び2025年の需給ギャ ップが発表されており,表1をみると6年後の2025 年には14万7 千5 百人,ざっと15万人の職員が不 足するとの予測である.この数字の前提の船員供給に ついては,2015年当時の教育訓練の規模と離職率(辞 職や定年退職による船員の減耗率)に基づいており,

また,需要に関しては2020年及び2025 年の商船隊 の規模予想に船種/船型/サイズごとの平均的な乗組員 数及び陸上休暇員数の比率が用いられている.

1 職員の需給バランス

BIMCO/ICS 2016 Report

もちろん,海運とは国家間の物流移動に関わる業態 であり,世界的な不況には一段と敏感とならざるをえ ず,この需給バランスが現実的なものであるのか不明 ではあるが予測にあたり,九つのシナリオに基づいて シミュレーションを行い,最も可能性の高い数字が採 用されているとのこと.世界の職員供給は着実に増加 するとの予測ではあるが,需要増加には追い付かない とみられ,AI,IOTを含む技術革新により,より少な い人員(無人化を含め)による,より安全に航行可能 な船舶の出現に向け種々取り組みが行われている事,

周知の事実である.

さて,外国航海に従事する貨物船の場合,船舶の最 高責任者である船長のもとに甲板部,機関部,無線部,

司厨部などが,それぞれの役割を担っているが,職員 についてその役割を下記する.

海技者(船員,船舶職員)

- 船舶の安全運航を担う

渡邊 尚文**

*原稿受付 平成 3128日.

**正会員 川崎汽船株式会社(東京都千代田区)

- 船舶の安全運航を担う

渡 邊 尚 文**

(2)

 船長(Captain:Capt.)

船の最高責任者でありまた,航海士の長.キャプテ ン又はマスターと呼ばれる船長の仕事は,指揮命令,

航海成就、緊急時の対応等様々である.

また,船上での食料/食事は重要であり,これに従事す る司厨部は船長直轄である.なお,船の安全を守る必 要がある場合は船員,乗客に対して命令することがで きるなど,法によって強い権限が与えられている.

【操船】

入出港操船,狭水道通過,荒天航海時は船長が直接 指揮を行い,航海士は船長の補佐を行う.

【連絡】

対外的なやり取りはすべて船長が行う.

【管理業務】

船内の資金管理や食料・嗜好品等の管理を行う.

 甲板部

甲板部は一等航海士を中心に運航から貨物の管理,

船体の整備など航海と荷役を担当する. 船舶は一度航 海に出れば休むことなく 24 時間走り続けるため,航 海士と甲板部員が一組になって,4 時間ずつ交代で船 橋での航海当直を行う.

 一等航海士 (Chief Officer: C/O)

甲板部の統括者として,作業現場での指揮命令を行 う.具体的な作業としては航海当直に加え,貨物管理,

船体整備立案・実施,甲板部労務管理がある.甲板部 には航海士,甲板長,甲板員などの職制があり,全て の統括を行っている. 船体の寿命は一等航海士によっ て決まると言われるほど重要な職責を担う.

航海当直は4時~8時,16時~20時

 二等航海士(Second Officer: 2/O)

航海当直に加え,航海計画の立案,海図の管理,航 海機器の整備及び管理を行う.また,航海計画では,

船長と相談し目的港までの航路を決定するため,航海 長と呼ばれることもある.

当直時間は0時~4時,12時~16時

 三等航海士(Third Officer: 3/O)

三等航海士は航海当直に加え,防火設備及び救命設 備の保守・整備等を行う.また,本船の状況を航海日 誌に記録する.その他では船内のレクレーションを三 等機関士と担当することもある.

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 機関部

機関部は機関長を中心に,エンジンやボイラーなど の運転・整備,燃料の補給,電気・冷暖房設備の管理 などを行う.外航貨物船の主機関の年間運転時間は長 いものでは8,000時間にもおよび,酷使されるエンジ ンを常に故障なく動かし続けるには,保守点検作業が 欠かせない.通常作業は担当機器ベースに機関士と機 関部員が一組になって行うが,大きな作業を行う際に は機関部総員で行うこともある.M0(エムゼロ)資 格を有する船舶であれば,通常デイタイムのみ(0800

~1700)の作業時間であるが,出入港,狭水道通過,

荒天航海時など,4 時間ずつ交代で機関室当直を行う 場合もある.なお,各機関士の担当機器については,

各社で異なるようであるが,当社を例に挙げると以下 のようになる.

 機関長(Chief Engineer:C/E)

航海に供する全ての機械・装置の運転管理を行う機 関部の責任者として船長をサポートする.また,船体 も含め整備作業に関して,各部へのアドバイスを行い 本船の安全,経済運航及び船質維持に努める.

また,事故発生時の環境負荷が高い燃料,潤滑油,

ビルジ,スラッジ等々の管理を行う.

 一等機関士(First Engineer:1/E)

主機関担当.また,実質的に機関部における作業及 び機関部職部員の労務管理,予備品,船用品の手配を 行う.機関部の“かなめ”でありその技量の良し悪し で機関の状態が決まると言っても過言ではない.その 他には,労務管理を含めた二等機関士及び三等機関士 の教育やサポートを行う.

 二等機関士(Second Engineer:2/E)

船種によって異なるが,発電機や主(補)缶担当.

タービン船においては,缶長(かまちょう)と呼ばれ ることもある.また,機関長の指示のもとに燃料油の 管理を行うなど,推進機器以外の重要機器を担当する.

 三等機関士(Third Engineer:3/E)

清浄機,空調機,冷凍機,電気,防火設備など担当 機器の数は多い. また,機関日誌や安全関連の書類,

予備品,船用品の発注書作成など業務は多岐にわたる.

二等機関士の仕事を覚え,自ら仕事にも深みを与える

(3)

3. 教育,訓練

海洋国家の地政学における概念のひとつであり,重 要な航路が集束している場所や,スエズ運河やパナマ 運河など,水上の要衝を意味する言葉に,チョークポ イント(英: choke point)がある.

石油の輸送が非常に多い海峡や過去タンカーの通過 に支障をきたした実績のあるホルムズ海峡,マラッカ 海峡,バル・エル・マンデブ海峡,スエズ運河の4つ の海峡をチョークポイントとし各国の輸入する原油が これらのチョークポイントを通過することをリスクと とらえ,経済産業省がチョークポイント比率を算出し た結果が表2である.

欧米諸国の場合,チョークポイントを通過するのは 中東から輸入する原油にほぼ限られるため,比較的チ ョークポイント比率が低く,チョークポイントを通過 せずに輸入できる原油が多いが,日本を始め,東アジ ア諸国の場合は輸入原油の大半はマラッカ海峡や,中 東から輸入する原油の大半は,ホルムズ海峡を通過す るため複数のチョークポイントを通過することでリス クが増加し数値も上昇する傾向にある.

2 チョークポイント比率 チョークポ

イント

比率(%) 2000年代 2013年 2015年

フランス 51.8 26.7 38.3

ドイツ 5 7.3 9.8

英国 3.2 3.8 5.5

米国 23.4 25.9 20.7

中国 104.6 121.7 119.5

日本 171.4 160.2 167.4

韓国 156.4 180.5 167.1

中でも,マラッカ海峡はインドネシアとマレーシア およびシンガポールの間に位置し,インド洋と南シナ 海をつないでおりペルシア湾からアジアへ石油を海上 輸送するための最短ルートにあたる.また,ペルシア 湾岸やアフリカからアジア向けの輸送ルートとしても 重要である.同海峡は国際海事機関(IMO)が250 海里 (463km)に渡り国際分離通航帯を定めており,シンガ ポール沖では東行きが 1,617m・西行きが 530m と 非常に狭い幅で設定されている.また,同海峡の最浅 部は非常に浅くVLCC は満潮時に合わせて通過する ための時間調整が必要となるほどである.

2 チョークポイント

チョークポイントは一般的にシーレーン防衛におい て重要な航路が集束している部位や,あるいはスエズ 運河やパナマ運河など,水上の要衝を意味することが 多いが,このような場所において船舶を安全に運航す ることが船員には求められる.

当社では,常に安全運航を提供するための三大指針 の一つとして,優秀な海技者の確保・育成を掲げてお り,これまで時代のニーズに対応するため,グループ 内に長年培われ蓄積してきた海技ノウハウを“K” Line Maritime Academy (KLMA)という海事技術者育成構 想の基盤とし,世界5拠点にある研修施設での陸上研 修や船上での研修プログラムおよび海陸相互勤務を含 めたキャリアパス等により,確実に次世代に継承する 体制を整えている.また,先進技術等の新たな時代の ニーズにも果敢に挑戦し,グローバルに活躍できる海 技者の育成に努めている.

これらの研修施設の中で VLCC 特集に執筆するに あたり,関係の深い日本,フィリピン,インドの三か 国にスポットを当て紹介したいと考える.

3.1 KLMA JAPAN

1970 年 神戸市布引に船員研修所を設立し職員部 員の教育・訓練を開始したが,1987年東京都町田市成 瀬に川崎汽船研修所を新設し,日本人を主体とした海 事技術者の教育・訓練を開始した. 2001 年には

LNG/LPG船荷役シミュレータ及びオイルタンカーシ

ミュレータの導入に伴い「危険物輸送船訓練センター」

を開設.2006年には優秀な海技者の確保、育成を目的 とした “K” Line Maritime Academy 構想における 各国の教育、訓練センターの一つとして KLMA

JAPAN を開設し海技者の訓練,教育,危険物輸送船

シニアクルーの養成やインストラクターの養成などが 今日まで行われている.

(4)

2015 年には最新型の操船シミュレータを導入し,

より高度なBRM(注3)研修が可能となった.

3 小学生向け体験会開催風景

1. VLCC,コンテナ船,バルカー,PCC,LNG 船など7種類の船型で訓練が可能.

2. 主な輻輳海域である東京湾,伊勢湾,シンガポ ール海峡等で訓練が可能.

3. 約20 の岸壁,桟橋等でタグボート,係船索を 使用した着桟操船訓練が可能.また,揚投錨操船訓練 も可能.

4. 視界,波浪,潮流,降雨,昼夜などあらゆる自 然現象を再現.

5. 最大199隻の他船の制御が可能で交通環境をリ アルに再現.

6. 実船と同様の航海計器を装備し,より実船に近 い訓練が可能.

7. 舵故障,レーダ故障等の機器のトラブルを発生 させ緊急事態の対応訓練が可能.

8. 船橋内の受講者の行動を監視カメラでモニタ ーし,より質の高い研修の評価が可能.

9. STCW条約(注4)に規定されている性能基準 を満たしており,DNVよりClass-A証書を取得.

また,操船シミュレータ以外の研修用シミュレータ として,LNG 船荷役シミュレータ・タービンシミュ レータやLPG船シミュレータ,オイルタンカーシミ ュレータを設置している.特にダブルハル大型オイル タンカー(VLCC)の荷役制御コントロールを忠実に 再現したオイルタンカーシミュレータはローカルバル ブ操作パネルや IGS パネル及びシミュレータと連動 した緊急対応訓練が可能な油圧操作弁を備えており,

各種荷役操作,バラスト操作等の習熟と共にシミュレ ータの持つ各種機器によるトラブルシューティングを

3.2 KLMA FILIPPINES

フィリピンにおける船員育成への取り組みは,1993 年 の“K” Line Maritime Training Corporation (KMTC) の設立に始まる. KMTC はその後 2008 年 に現在の “K” Line Maritime Academy Philippines (KLMA(Phil))にその場を変え、「船舶の安全運航と環 境保全」を支えるための大きな柱の一つとして,優秀 な海技者の安定的な確保と育成に取り組んでいる.

また,更なる教育・訓練の強化と充実を目指してその 中核研修施設である 「“K” Line Maritime Academy

(Philippines)」(フィリピン共和国パサイ市)の拡張 工事 「”K” Line Building Phase-2 Project」を行い,

既存の研修施設の隣接地に宿泊施設(225名収容)や 最新の医療機器を備えたクリニックなどを含む 11 階 建ての新ビルを建設するとともに,既存ビルの研修施 設や設備の拡張・改修工事も合わせて行うプロジェク トで、2018年3月2日に新ビルOcean Breezeが開所 した.また,同年 7 月 31 日には最新鋭の研修機器 を配したトレーニングセンター自体の改築工事が終了 し,年間 10,000 人の受講生を受け入れる体制が完了 した.今回導入された操船シミュレータは KLMA

JAPAN のものと同機種同タイプであるため,海難事

故発生時の状況を再現したBRM訓練用シナリオを両 地のシミュレータにて行うことが可能であり,国籍を 問わずより多くの船長、航海士が受講可能となった.

また,主機シミュレータに加え実機のディーゼル主機 を備えており,制御系の不具合及び機械的な不具合に 対しての緊急対応訓練が可能となっている.

3.3 KLMA INDIA

輸送船に乗組む海技者の確保、育成を担っている KLMA INDIAは2008年4月にインドムンバイに開 所し,現在までに数多くのインド人海技者の確保,育 成を行うことで輸送船隊の安全運航に寄与してきた.

2017年10月にはより現場に即した研修訓練を行うた めに,当社運航油槽船を管理している”K” LINE ENERGY SHIP MANAGEMENT(2017 年当時 は”K” LINE SHIP MANAGEMENT)に合流する事 となり専門性の高い原油・石油製品輸送を実現するた め,タンカーの安全,経済運航のノウハウを集約し顧 客サービスの向上と安全かつ効率的な輸送を行うべく 海技者の教育を行っている. PC ベースの液化ガ ス・タンカーシミュレータでバラスト操作を含め,各 カーゴポンプの起動操作などシミュレータを通しての 訓練が可能. シニア・ジュニアとのレベルを分け研修 を実施している.

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4. 終わりに

一般的な船員の国籍は日本人,フィリピン人,韓国 人,中国人,インドネシア人,インド人,ベトナム人,

バングラディッシュ人,パキスタン人,ロシア人,ク ロアチア人,東欧人,北欧人,欧州人と多岐にわたる.

また,配乗形態も日本人職員+フィリピン人,フィリ ピン人全乗,欧州人職員+アジア系船員(フィリピン 人船員等),インド人職員+アジア系船員,などあり各 船の配乗人数も船種により様々である.

このような中,安全で経済的な環境に配慮した運航 に努めるために,知識や能力の維持,向上は不可欠で あり定期的な訓練や再教育の必要がある. 最近は特に 環境対応のための最新機器の導入や国際規則の制定や 改定が数多く行われており,これらに対応するため,

乗船中・休暇中に関わらずCBTによる訓練や,休暇 中に内外の研修所にて行われる各種研修に参加するこ とで常に新しい情報に触れ,海技者(船員、船舶職員)

としてのスキルアップが益々必要である一方,AI や IOT のみならず種々技術革新に大いに期待するとこ ろである.

(注1):BIMCO(ボルチック国際海運協議会)

1905 年 に 発 足 の”The Baltic and White Sea Conference”が前身. メンバーは船社,船舶代理店を 含むブローカーの他,PI保険等を含む「クラブメンバ ー」や船級協会や海事法律事務所,損保や銀行等海運 に関心のある「準メンバー」により構成されている.

(注2):ICS(国際海運会議所)

各国船主協会を会員として1921年に設立された組 織で本部をロンドンに置く1948年に現在の名前に変 更された.日本船主協会は1957年4月に加盟.自由 主義海運を標榜するとともに,船主の利益を擁護・代 表し商船隊の発展を促進させることを目的とする団体.

海洋環境保全,船舶航行安全,海事法制,船員問題等 に関し具体的な検討を行いIMOやILO等において海 運業界を代表する組織として活動している.

(注3): Bridge Resource Management (BRM) BRM とは船橋(操舵室)においてチームワークを 強化し,また航海計器や情報等を有効に活用すること によって船舶の安全な航行を目指すマネジメント手法 のこと.STCW条約にてBRMに関する知識・スキル が船長・航海士の能力要件として定められている.

(注4):STCW 条約 (The International Convention on Standards of Training, Certification and Watch Keeping for Seafarers, 1978) 1967年 に英仏海峡にて発生した石油タンカーの座礁事故を契 機に,船員の質の向上を目指すために制定された船員 資格の国際基準を定めた条約で1984年に発効された.

その後も海難事故の人的な要因に関する包括的な見直 しが行われ,2010年6月に2回目の改正(マニラ改 正)が行われている.

参考文献

1. 経済産業省エネルギー庁

『平成29年度エネルギーに関する年次報告』

2. BIMCO/ICS MANPOWER REPORT (2016)

著者紹介

渡邊 尚文

 日本マリンエンジニアリング 学会 正会員

 1968年生.

 川崎汽船株式会社 機関長

 最終学歴.神戸商船大学

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