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crAB のプロモーター活性に与える影響

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Academic year: 2021

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(1)

Mem. School.  B.O.S. T.  Kinki University  NO.4: 7379 (1998) 

過酸化水素および N‑ エチルマレイミドが多剤排出ポンプの遺伝子

α

crAB のプロモーター活性に与える影響

武 部 聡 水 野

結 城 ひ と み2

要 約

73 

疎水性化合物を細胞外に排出する働きをもっ多剤排出ポンプの遺伝子αcrABのプロモー ター活性は、過酸化水素やN‑ethylmaleimide(NEM)による酸化ストレス下で上昇した。

αcrAB は"generalstress conditions"において転写量が増加し、環境ストレスに対する 適応応答に関与していると考えられている。環境ストレスに対する大腸菌のレギ、ュロンには Mar (multiple antibiotic resistance)やSoxRSがあり、 αcrABはこれらの調節を受け ることが示唆されている。今回、過酸化水素によってもフ。ロモーター活性が上昇したことか ら、新たな調節機構が存在する可能性も出てきた。また、過酸化水素による αcrABの発現 誘導はプロモーターP1に対する転写調節であると考えられた。

緒 論

αcrABは大腸菌染色体上

1 0 . 5

分に位置し、

3 9 7

アミノ酸残基のリポタンパク質をコード する αcrAと

1 0 4 9

アミノ酸残基からなる膜タンパク質をコードする αcrBの

2

つの遺伝子 がオペロンを構成している(九当初、 αcrABはアクリジン耐性に関与する遺伝子として見つ けられたが、その後の解析により、このオペロンがコードするタンパク質は膜に存在し、ア クリフラビン、疎水性抗生物質などのほか、構造も作用部位も異なる多種多様の薬剤を細胞 外に排出する multidrugefflux  pumpとしての働きをもつことが明らかになった(2‑uo AcrABの通常の働きは、大腸菌の生息環境に存在する胆汁酸や脂肪酸といった親油性の阻 害物質からの防御と考えられている(4)。また、 αcrABの転写量はエタノールや高濃度の塩存 在下、定常期増殖といった "generalstress conditions"において増加するωことから、環 境ストレス下では適応応答に関与する遺伝子としての役割をもっと推測される。

大腸菌をあらかじめ増殖阻害を引き起こさないような低濃度の薬剤にさらすと、その薬剤 に対して抵抗性を獲得するようになるO これを適応応答という。このシステムでは、環境変 化のシグナルを受け取った調節因子が支配下遺伝子に働きかけ、数多くの遺伝子が協調的に

1.  Department of Biotechnological Science, Kinki University, Wakayama 6496493, Japan  2.  Department of Food Science, Kyoto Women's University, Kyoto 6058501, Japan 

(2)

その発現を変化させることで抵抗性を獲得している。環境ストレスに対する適応応答には、

抗生物質や有機溶媒の耐性に関与する Mar(multiple antibiotic resistance)や過酸化水 素に対する抵抗性に関与する OxyR、酸化ストレスに関与する SoxRSなどがある(57)O

SoxRSレギュロンに属する遺伝子としては、活性酸素消去酵素のほか膜透過性に関与する タンパク質や糖代謝の酵素、 DNA修復酵素など、少なくとも10種類以上のいろいろな機能 を持った遺伝子があり(ヘ新たにSoxRS支配下にあることがわかった遺伝子も数多く見つ かっている(トlヘまた、 MarとSoxRSの両方の支配を受ける遺伝子も知られておりωαcrABもこのような遺伝子であることが示唆されているω

私たちは種々薬剤を用いて酸化ストレス状態にした大腸菌から、活性が有意に上昇するプ ロモーターの収集を行っている。その過程でαcrABのプロモーター (PαcrAB)活性が N‑ethy lmaleimide (NEM)および過酸化水素によって上昇することを見いだした。 NEM

はチオール基のアルキル化反応を行う試薬で、グ、ルタチオンやチオレドキシンなどの生理的 還元物質U~ の阻害剤となることで細胞内環境を酸化的に傾かせる。 PαcrAB が NEM や過酸 化水素によって誘導されたことから、この遺伝子が酸化ストレスにに対する抵抗性に重要な 役割をもっていると考えられる。また、 PαcrABは環境ストレスに関与する複数の調節因 子による発現調節を受けていると考えられることから、過酸化水素存在下における αcrAB の転写産物をS1マッピングにより検討した。

材料と方法

1.菌株およびベクター

フ。ロモーター検索用ベクター pMS437Cはプロモーターを欠いた lacZをもち、その上流 に制限酵素BamHIの認識部位が1カ所だけある。この部位を利用して外来遺伝子のフ。ロモー ターを挿入すると、プロモーター活性をαcZJ 産物であるs‑ガラクトシダーゼの酵素活性か ら求めることができるopUCl19は、 S1マッピングのためのプラスミド構築に用いた。

大腸菌TP2010(xyl,ムcyα,αrgH,lαcムェ74,recA, ilv, srl: :Tn10)はpMS437Cおよ びその誘導体の宿主として用いた。大腸菌MVl184 (αrα,ム(zαc‑proAB),rpsL, thi  (ゆ80 lαcZムM15,ム(srl‑.recA)306: :Tn10 (tet.)  /  F' [trαD 36, proAB  ,+ laclq,  lacZムM15J)はpUCl19およびその誘導体の調製に用いた。

2.試薬・酵素

培地用試薬は DIFCO社製を用いた。過酸化水素は三徳化学工業社製を用いた。 N ethy lmaleimide,およびその他の試薬はナカライテスク社製を用いた。 S1 nucleaseは Takara社製を、その他酵素類はTOYOBO社製を用いた。

(3)

75 

3 .  

s‑ガラクトシダーゼ活性の測定

50μg/ml a m p i c i l l i n

を含む

LB

培地に

pMS437C

またはその誘導体をもっ大腸菌を植菌 し、対数増殖期まで

3 7

0

C

で振塗培養した。その後、過酸化水素は

200μM

N ‑ e t h y l m a l e i m i d e  

5μM

になるように培養液に加えて振渥培養を続けた。一定時間ごとに培養液をサンプ リングし、 s‑ガラクトシダーゼ活性の測定に用いた。 βーガラクトシダーゼ活性の測定は、

J. 

H .   M i l l e r

の方法町こ準じて行った。

4.  S 1マッピング

目的のプラスミドを含む大腸菌を対数増殖期まで培養し、フェノールー

SDS

法日目により調 製した全

RNA

を試料として用いた。プローブは、

5

'ー末端をビオチンで標識したした合成

DNA (CGGATAACAATTTCACACAGGAAAC)

をプライマーとし、

P α

crAB挿 入 部 位 より上流にある

E c o R I

部位で直線化した

p U C l 1 9

誘導体を鋳型として

PCR

により調製し た。

PCR

はアステック社の

PROGRAMCONTLOR SYSTEM P C ‑ 7 0 0

を用いて行った。

結果および討論

1 .   NEM

および、過酸化水素による

P α

crABの誘導

P α

crABを含む

S a u 3 A I

断片

( 4 8 0b p )  

(図

3 )

をプロモーター検索用ベクタ‑

pMS437C 

BamHI

部位に挿入し、

P α

crAB‑lacZ融合遺伝子を作製した(図

1

)。これを大腸菌

T P 2 0 1 0

に導入し、過酸化水素または

NEM

添加によるプロモーター活性の変動をβ‑ガラク

トシダーゼ活性を測定することにより検討した。(図2)

過酸化水素の場合、添加前の βーガラクトシダーゼ活性は

7 2 8 u n i t s

であるが、添加後

3 0

分 には

1

2 3 3 u n i t s

となり、約1.

7

倍の上昇が見られた(図

2A)

。また、

NEM

の場合も添加前

の、活'性

5 7 5 u n i t s

が添加後

3 0

分には

9 8 0 u n i t s

となり、約1.

7

倍の上昇を示した(図

2B )

。 い ず れの試薬を用いても添加後

1 0

分は酵素活性に顕著な変化がなく、

2 0

分から

3 0

分にかけて急激

に上昇し、その後は減少するという類似した誘導パターンが見られた。

P α

crABが過酸化水素によって誘導されたこと、誘導パターンにピークが見られたこと から、

α

crABも

OxyR

レギュロンに属する可能性がある。ただし、

OxyR

による転写調節 を受けている遺伝子の典型的な誘導パターンは、誘導後

1 5

分以内に活性のピークが現れ、

3 0

分後には収束するというものである。

P α

crABの場合、試薬添加後しばらくは活性に変 化がなく誘導が遅れること、収束が不完全であることから、

OxyR

の間接的な支配、または、

他の調節因子の二次的な制御を受けている可能性もある。 αcrABの抑制因子のひとつに αcrR があるo

AcrR

α

crABの過剰発現を抑えて適切は転写レベ、ルに調節する働きがあるので¥

本実験で見られた不完全な収束パターンにはαcrRが関与していることも考えられる。

(4)

BamHI 

pMS437C 

/ ¥   / ¥   / ¥   / ¥

、 、

  / / ¥

、 、

 

Sau3AI ./  XhoI¥¥Sau3AI

4

¥ ¥ 

、 、 、 、

¥ ¥ 

¥ ¥ l   l ¥ 1  

て一一‑pri  ERI  BamHI SalI 

lacZ 

P1~ acrA 

a s' a a 

‑ ‑

‑ aa a E  

pUC119 

図1 Pα

c r A B ‑ l a c Z

融合遺伝子および転写開始点同定用プラスミドの作製法 P 1, P 2は塩基配刊から予想されるα

c r A B

operonのプロモーターを示す。

pnmer は81マッピング用のプローブ作製に用いたプライマーの位置を表す。

ここからEcoRI部位まで、の塩基配列をプローブとして用いた。 α

c r A B

のプ

ロモーターを含む8au3AI断片の塩基配列は、図3に揚げてある。

1300E  1100 

2 1 L

1000 900 

18 

1000 

800  800  700 

700~

/‑入ミ 600 

600 ~ 500 

500

10 ~!O 30  40  50  60  400 10  20  30  40  50  60  time (min)  time (min) 

図2 Pα

c r A B

のプロモーター活性に対する過酸化水素またはNEM添加の効果 Pα

c r A B ‑ l

α

c Z

をもっ大腸菌を初期対数増殖期まで培養し、過酸化水素 (panel A,・)またはNEM(panel B,・)を、それぞれ200μMまたは 5μMになるように培養液に加え、培養を続けた。その後一定時間ごとに 培養液の一部をとり、 βーガラクトシダーゼ活性を測定した (0は無添加の まま培養したときの酵素活性値)。グラフの縦軸は酵素活性、横軸は試薬を 加えてからの培養時間を表す。

(5)

2. 

Sau3AI 

GATCTCACTG AACAAATCCG ACTTGTCTTT AAAATGCCAC TAGATTGCAC CGCGCGTAAC GCCAGCTGCT  P2 ‑35  10 

TTTTGCAATC TCGCCCAGCG AGGTGGATGA TACCCCCTGC TGTGAGAAAA GACGTAGAGC CACATCGAGG 

ATGTGTTGGC GCGTTTCTTG CGCTTCTTGT TTGGTTTTTC GTGCCATATG TTCGTGAATT TACAGGCGTT  P1 35 10 ~ ~

AGATTTACAT ACATTTGTGA ATGTATGTAC CATAGCACGA CGATAATATA AACGCAGCAA TGGGTTTATT 

XhoI  ac~

AACTTTTGAC CATTGACC脇 町 田 泊 目CGGACACTCG単 位TTACATATACAAAAACAGAGGGTTTA  SD  N  K  N  R  G  F  T 

CGCCTCTGGC GGTCGTTCTG ATGCTCTCAG GCAGCTTAGC CCTAACAGGA TGTGACGACA AACAGGCCCA  P  L A  V  V  L  M  L  S  G  S  L  A  L  T  G  C  D  D  K  Q A  Q 

Sau3AI  ACAAGGTGGC CAGCAGATGC CCGCCGTTGG CGTAGTAACA GTCAAAACTG AACCTCTGCA GATC 

G  G  Q  Q M  P  A  V  G  V V  T  V  K  T  E  P  L  図3 αcrABの

5 '

領域を含むSau3AI断片の塩基配列と転写開始点

塩基配列から予想される 2つのプロモーターの‑35および‑10配列、

SD配列には下線を付した。 S1マッピングにより同定した転写 開始点は、くさび形で示しである。また、 AcrAのアミノ酸配列 (N‑末端側の一部)は塩基配列の下に示した。

αcrABの転写開始点の解析

77 

PαcrABを含むSau3AI‑XhoI断片 (314bp)をベクター pUC119のBamHI‑SalI部位に挿 入した組換えプラスミドを大腸菌MVl184に導入した(図1)。これをLB培地で対数増殖期まで 振渥培養し、過酸化水素を200μMになるように加えて、さらに30分間培養を続けた。その後、培 養液を急冷して全RNAを抽出し、 S1マッピングにより αcrABの転写開始点を調べた(図3)。

αcrABには塩基配列から予想されるプロモーターが2つ存在するが、確認された転写開 始点は下流にあるプロモーター (P 1)からのものであった(図3)。 この転写開始点は過 酸化水素無添加で培養した菌から調製した RNAでも一致したことから、過酸化水素による αcrABの発現誘導はプロモーターの使い分けではなく P1に対する転写調節である。また、

転写量の変化については、はっきりした結果は得られなかったが、 この発現制御が転写段階 におけるものであることはPαcrAB‑lacZ融合遺伝子を用いた βーガラクトシダーゼ活性の 測定結果から明らかである。

(6)

参考文献

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Microbio

  . l

19, 101‑112. 

Summary 

Oxidative stress response of αcr AB promoter  80 Takebe, Tamaki Mizuno, and Hitomi Yuki 

The effects of hydrogen peroxide and N‑ethylmaleimde on the  promoter activity  of the αcrAB operon, encoded a multidrug efflux  pump in Escherichiαcoli, were  studied.αcrAB expression was estimated from the  β‑galactosidase activity  of  a  αcrAB‑lacZ transcriptional fusion. Hydrogen peroxide, as well as N‑ethylmaleimde, 

increased the αcrAB promoter activity. These results suggest that the transcription  ofαcrAB is  mediated by OxyR, "the  global  regulator of  the  hydrogen peroxide  inducible  genes.  8 1 nuclease  mapping  experiment  was  done  to  identify  the  transcription  start  point  of  αcrAB.  The  5'  end  of  the  mRNA was precisely  mapped at just downstream of promoter P 1 , and no other significant transcription  start point was detected either upstream or downstream from the identified P 1  transcnptIon start pOln

t .  

参照

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