「 わ か る 」 授 業 に つ い て の 研 究
高度学校教育実践専攻 教員養成特別コース 半 嶺 由 和 子
1 研究の動機と背景
大学院1年次に実習で参観した,メンターの 国語科「くじらぐも」の授業で児童の理解度に,
4つのパターンがあると感じた。
まずは,メンターが設定した学習目標を達成 していないのに,自分は達成できていると思っ ている児童(以下,目標未達成自信過大型)と する。次に,メンターが設定した学習目標を達 成しているが,学習目標の達成に自信を持てな い児童(以下,児童を目標達成自信過小型の児 童)。そして,教師が設定した学習目標も達成で きておらず,さらに自信もない児童(以下,学 習苦手児)とメンターが設定した学習目標も達 成しており,学習目標を達成していると自信を 持っている児童(以下,学習得意児)である。
これらの児童に対しメンターは体験活動を取 り入れたり,発問を工夫したりして児童に目標 を達成させていた。また,グ?ループでお互いの 考えについて感想を述べ合わせる活動を行い,
児童を称賛することによって自信を持たせてい た。授業後の児童の様子から児童は教師の設定 した目標を達成し,自信をもっていると感じた。
教師が設定した目標を達成し,自信をもってい る状態を「わかるJと定義し,私もこのような 授業をしたいと考えるようになった。
筆者が行った「くり下がりのひき算」の授業 実践では,計算方法のよさを見つけ,そのよさ を実感させることが学習目標であった。しかし,
実 習 責 任 教 員 江 川 実 習 指 導 教 員 端 村 専 任 教 員 藤 原
弘 也 彦 克 達 仲
筆者の授業ではいく人かの目標未達成自信過 大型の児童と目標達成自信過小型の児童,学 習苦手児の児童を生むことになってしまった。
目標未達成の児童に対しては,計算のよさに 気づけるような発問や手立てが不十分であっ たため,目標を達成させることができなかっ た。自信を持てない児童に対しては,目標を 達成したことが認められるような機会を設定 しなかったために自信を持たせられなかった。
そこで,
r
わかる」に迫る授業実践について考 察していきたいと考えた。2 実践研究の目的と方法 (1)目的
児童が「わかる」授業をすることを目的とす る。前述したように「わかる」とは教師が設 定した学習目標を児童が達成し,かっ,学習
目標達成に自信をもっている状態である。
( 2 )方法
( i )教師が授業後の児童の具体的な姿から学 習目標を設定し,学習目標達成のために工夫
した発問や支援をする。
①児童の思考を焦点化したり精激化したりす る発聞をするo そうすることで,学習苦手児 は自分の考えをスモールステップ形成でき目 標未達成自信過大型の児童自身の考えが不十 分だと気づくことができると考える。目標未 達成自信過大型の児童は自分の考えが不十分
だと気づくことができると考える。これによっ か確認するための振り返りの問題と目標達成 て「わかるJに迫ることができると考える。 の自信度を問う質問項目を載せた振り返りシ
②児童の思考の葛藤や矛盾を喚起する発問,対 ートを行わせる。その振り返りシートや授業中 立意見を誘発する発問をするo 目標未達成自信 の発言をもとに児童が「わかる」状態にあるか 過大型の児童に思考の葛藤や矛盾を喚起する発 を教師が把握し,本研究の分析対象とする。
聞をすることで,自分の考え方を見直すことが
できる,対立意見を誘発するような発問をする 3 授業実践における具体的方策 ことで,他者の意見の良さに気づき自分の考え
を修正することができる。すなわち目標達成に 向けて学習を進めることができると考える
③学習苦手児に対してスモーノレステップの支援 をする。それによって目標を達成することに向 けて学習を進められると考える。
( u )学習活動の工夫
2~4 名のグループ活動の場面を設定する。
これにより,目標未達成自信過大型の児童は,
他の児童と自分の考えが違うことを知り,自分 の考えを見直すことができると考える。また,
目標達成自信過小型の児童は,自分の考えと同 じ意見を聞き,認められることによって目標達 成していると自信をもつことができると考え る。学習苦手児は他の児童の考えを,模倣した りして自分の考えをもったりすることができ,
目標を達成することができると考える。
(ui )児童への称賛
教師は,学習目標を達成している児童の意見 を取り上げ,他の児童に広めたり,できたこと を認めたりするような言葉かけをする。そうす ることで,目標達成自信過小型の児童は,学習 目標iを達成していることに気づき,自信をもて ると考える。目標未達成の児童は目標達成の状 態が明確になり,自分が十分に目標を達成でき ていないことに気づき,修正できると考える。
(iv)児童が学習を振り返るための工夫 授業の終末に児童が目標を達成できている
ア 授業実践1 国語「あつまれ冬のことぬ (2012年 12月 11日)
[冬を表すかるたの読み札を考える}
イ 授業実践2 算数 「かけ算」
(2013年 11月22日)
[式がかけ算とたし算の問題を解く]
ウ 授業実践3 国語「たのしい冬」
(2013年 12月 10日)
[お正月の行事や遊びについて発表し,
かるたの読み札をつくる]
上記の授業実践で講じた手立てを以下に述べる。
( i )教師が授業後の児童の具体的な姿から学 習目標を設定し,学習目標達成の為に工夫し た発問や支援をする。
[ア]学習目標は「リズムよく,短い文で冬を 表す読み札をつくることができる」である。
かるたの読み札の特徴に気付かせるために,
長文の読み札と短くリズムがよい読み札の違 いについて説明させるような発聞をする。ま た,学習苦手児の児童には手本をもとに読み 札をつくらせたり, リズムを意識できるよう に手を叩いて読んだりするよう支援する。
[イ]学習目標は「問題の文章を図式化し,図 から式を考えることができるjである。図を イ吏って問題を解くことの必要性を実感させる ために,問題文から即,式を考えることが難 しいと実感させ,問題文を図式化し式を考え る方が有効だと気付かせるようにする。自分
の考えの違いに気づくことができるように,
考えの違うグ、ループの図や式を取り上げ,葛 藤や矛盾を喚起するような発聞をする。他の 児童から考え方の違いを指摘されることで,
考えを見直し修正することができると考える。
[ウ]学習目標は「お正月に関連する言葉の意 味や背景を知りその要素を取り入れた読み札 をつくることができる」である。お正月に関 連する言葉を児童から出させ,意味や背景に ついて児童に聞いたり教師が紹介したりする。
( u )学習活動の工夫
[ア]児童たちはこれまでグループ活動の経験 がなく,今回の授業で、急に取り入れてもうま く進まないだ:ろうと判断した。そのため,グ ループ活動は行わなかった。
[イ]問題文を図式化し,図から式を立て る活動をグループで行う。その際,お互いの 考えを出し合い,一つの考えにまとめさせる ことによって,どの児童も目標を達成したり,
自信を持ったりすることができると考える。
[ワ]グループで,読み札の文章づくりを教え 合う活動と読み札を発表し,認め合う活動を 取り入れることによって,目標達成につなが
り,自信を持つことができると考える。
(iii )児童への称賛
[ア]教師は目標を達成してしも児童に読み札を 発表させ,リズムよく短い文で冬のかるたをつくれ ていることを称賛する。これによって,目標を達 成できている児童は自信をもつことができる。
また,目標未達成の児童は目標達成の状態が わかり,自分の読み札を修正し目標を達成す ることができると考える。
[イ]教師は目標を達成している児童の考えを取り 上げ,問題文章図にし,立式することができてい ると認める。そのことで,目標を達成できている児
童は,自信をもつことができる。また,目標未達 成の児童は目標達成の状態がわかり自分の考 えを修正し目標を達成することができると考える。
[ウ]お正月の言葉の意味や背景を取り入れた読 み札をつくってしも児童を称賛する。そして目標 を達成している児童は自信をもつことができ,目 標未達成の児童は目標達成の状態がわかり,自 分の読み札を修正することができると考える。
(iv)児童が学習を振り返るための工夫 [ア]ワークシート本時の学習を活かして
読み札をつくらせ,目標を達成しているか自 己評価できるような質問項目に答えさせる。
[イ]振り返りの問題を解く際に,図と式を書 かせる。そして,目標を達成しているか自己 評価できるような質問項目と本時の学習に 関する感想を書かせる。
[ウ]本時の学習を活かして読み札を書かせ,
本時の目標を達成しているか自己評価がで きるような質問項目と感想を書かせる。
4 分析(成果と課題)
( i )教師が授業後の児童の具体的な姿から学 習目標を設定し,学習目標達成の為に工夫し た発聞をする。
[ア]長文の読み札と短くリズムがよい読み札 の違いを説明させることで,児童はかるたの 特徴を知ることができた。しかし,学習苦手 児の中にはリズムよく短い文でつくることが できず支援の効果がない児童もみられた。
[イ]問題文から図式化させ式を書くことが有 効だと実感させるような支援はできなかった。
しかし,異なる考えのグループを取り上げ,
葛藤や矛盾を喚起する発問をすることで,目 評未達成の児童が自分の考えを修正できた。
[ウ]お正月に関連する言葉の意味や背景など
について児童に聞いたり,紹介したりするこ とによって言葉の意味や背景を知ることがで きている児童もいた。しかし,ある児童が発 言した言葉から,他のお正月の言葉を引き出 していたら,より多くの言葉の意味や背景を 学習することができたと考えるo
(邑)学習活動の工夫について
[ア]全体で数人しか読み札を発表させること ができなかったので,児童全員が自分の読み 札を紹介できるように小グループをつくって 発表させる工夫もできたと考えられる。
[イ]グループ活動で,図と式を一つにまとめ させたことで,他の児童の考えを聞いたり違 いを指摘されたりする。そして目標未達成自 信過大型の児童は自分の考えを修正するこ とができた。また,目標達成自信過小型の児 童は目標を達成していると自信をもつこと ができた。さらに,学習苦手児は他の児童の 考えを聞いて図と式の書き方について理解
し,自信をもつこともできた。
[ウ]グループ活動で、かるたの読み札づくりを させたことによって,他の児童の考えを聞い たり,違いを指摘されたりしたことで,目標 達成自信過大型の児童は自分の読み札を修 正することができていた。また,目標達成自 信過小型の児童は目標を達成していると自 信をもつことができていた。さらに,学習苦 手児は他の児童の意見をもとに読み札をつ
くり,自信をもつことができていた。
(温)児童への称賛について
[ア]リズムよく短い文でかるたの読み札をつくる ことができている児童の考えを称賛したが,目標 未達成の児童に修正させる時間をとれなかった。
そのため,目標達成している児童に自信をも たせることはできたが,目標朱達成の児童に
は目標を達成させることができなかった。
[イ]問題の文章を図式化し立式することができてい る児童を称賛した。このことによって,目標未達 成の児童は,自分の考えを見直し修正したり,模 倣したりしていた。目標達成自信過小型の児童 は目標を達成したと自信をもっていた。
[ウ]お正月の言葉の意味や背景を取り入れている 読み札を取り上げることができなかった。そのた め目標達成の状態がわからず,目標未達成の児 童は未達成のままだった。また,目標達成してい る児童に自信を持たせることもできなかった。
(iv )児童が学習を振り返るための工夫 [ア
J r
わかるJ状態の児童は少なかった。短い文でつくることができていても,リズムよ く読み札をつくれていない児童が多く見ら れた。自信を持っている児童は多く見られた。
[イJ
r
わかる」状態の児童は多くみられた。図も式も書くことができ,目標を達成したと 自信をもっている児童がほとんどであった。
[ウ
J r
わかる」状態の児童は少なかった。言 葉の意味や背景を読み札に取り入れることが できている児童は少なかったが目標を達成し たと自信をもっている児童は多くみられた。5.研究のまとめ
授業分析してみると,教師が目標達成に向け た発聞ができていないことが多かった。その点 に関しては,授業を計画する段階で児童がどの ような点で、つまずくのか詳細に予想できていな いからだと考える。また,児童への称賛や他の 児童に目標達成の状態を広げるような言葉かけ もできていなかった。それは教師の授業中の児 童の達成度を把握することが不十分だったから だと考える。これらのことを改善するために,
日々の児童の実態把握が最重要であると感じて いる。