Title
コンクリート構造物の補修用樹脂材料の性能評価( 内容と審
査の要旨(Summary) )
Author(s)
柿澤, 雅樹
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 工博甲第506号
Issue Date
2016-09-30
Type
博士論文
Version
ETD
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/55515
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。1 別紙様式第15号(論文内容の要旨及び論文審査の結果の要旨) 氏 名 ( 本 籍 ) 学 位 の 種 類 学 位 授 与 番 号 学 位 授 与 日 付 専 攻 学 位 論 文 題 目 学位論文審査委員 柿澤 雅樹 (長野県) 博 士(工学) 甲第506号 平成28年9月30日 生産開発システム工学専攻 コ ン ク リ ー ト 構 造 物 の 補 修 用 樹 脂 材 料 の 性 能 評 価 (Performance evaluation of polymeric materials for repairing concrete structures) (主 査)教授 内田 裕市 (副 査)教授 小林 孝一 教授 國枝 稔 特任教授 六郷 恵哲 論 文 内 容 の 要 旨 高度経済成長期に建設された橋梁やトンネルをはじめとする社会基盤構造物の高齢化が進んでお り,点検,診断,補修・補強,アセットマネジメント等の維持管理技術の重要性が増している。コン クリート構造物の補修・補強を行う場合には,セメント材料とともにエポキシ樹脂などの樹脂材料が 用いられることが多い。本研究では,この樹脂材料に着目し,ガラスチョップドストランドマットに 光硬化性の樹脂を含浸させた光硬化型FRP シートと,ひび割れへ注入されるエポキシ樹脂とを取り上 げ,それらの性能の評価を行っている。 2 章では,ひび割れを跨いで貼付された光硬化型 FRP シートに生じるバックリング現象を評価する ための試験方法を提案している。構造物からのコンクリート片のはく落防止を目的に,ひび割れを跨 いでFRP シートが構造物の表面に貼付されることが多い。この場合,ひび割れが開く方向だけでなく 閉じる方向に対してもFRP シートに追従性が求められる。しかしながら,ひび割れが閉じる方向への FRP シートの追従性については,既往のひび割れ追従性試験では評価できない。本研究においては, FRP シートの厚さやひび割れ幅などを変化させて試験を行い,提案した試験方法の有効性を確認する とともに,ひび割れ近傍のFRP シートの付着を無くすることやシートを厚くすることにより,ひび割 れが閉じる方向へのシートの追従性が向上することを明らかにしている。 3 章では,光硬化型 FRP シートを貼付した RC はりのせん断耐力の算定方法を提案している。RC 構造物の耐震補強などに用いられる連続繊維シートについては耐力算定式を含む設計施工指針が整備 されているが,光硬化型 FRP シートのような短繊維補強シートについては十分には整備されていな い。本研究においては,光硬化型FRP シートを RC はりに貼付したときのせん断耐力は,既往の算定 式でシートが部材軸となす角度が 45 度(せん断耐力が最大)の場合に算出されるせん断耐力として よいことを明らかにしている。FRP シートの貼付がせん断ひび割れの発生位置や角度に影響を与える ことも明らかにしている。 4 章では,コンクリート片の剥落防止対策として用いられる光硬化型 FRP シートに,ひび割れ等か ら水圧が作用した場合の付着特性の評価試験方法を提案している。コンクリート試験体の表面に欠損 やひび割れを模擬した開口を設け,FRP シートを貼付し,裏面からポンプにて水圧を作用させる試験 を行っている。その結果,コンクリートの欠損を模擬し円形状の開口とした場合には,直径と反比例 してFRP シート剥離時の最大水圧が低くなることと,全荷重と周長とには比例関係があることを明ら かにしている。全荷重を欠損部の周長で除して求めた単位周長当たりの荷重は,開口の形状や周長に 関わらず一定の範囲となることから,この単位周長当たりの荷重をもとにFRP シートの耐水圧性能を 評価することを提案している。 5 章では,ひび割れ部に注入されたエポキシ樹脂とコンクリートとの付着性能の評価試験方法とし て,樹脂充填部を含むコア供試体(直径 25mm または 50mm,長さ 250mm 程度) を用いた引張なら びに曲げ試験方法を提案している。樹脂がひび割れ部に確実に充填されていれば,供試体の破壊は, 樹脂充填部以外で生じることを確認している。 6 章では,骨材のアルカリシリカ反応(ASR)による亀甲状のひび割れを再現したコンクリート供 試体を作製し,ひび割れへのエポキシ樹脂の充填状況を評価するための方法を提案している。実験室 内で亀甲状のひび割れをコンクリート供試体に短期間に生じさせるため,高靱性繊維補強モルタルに
2 膨張性の静的破砕剤を混入した模擬膨張骨材を使うことを提案している。模擬膨張骨材を用いて再現 した亀甲状ひび割れへ補修用のエポキシ樹脂を注入したところ,注入孔の近傍は樹脂が充填されたも のの,注入孔から遠いと樹脂がほとんど充填されず,実際のASR によるひび割れへ樹脂を注入した場 合と類似していることを明らかにしている。模擬膨張骨材を用いてコンクリートに亀甲状のひび割れ を短期間に生じさせる方法は,樹脂の充填性能の迅速な評価に有用なことを指摘している。 論文審査結果の要旨 この論文では,コンクリート構造物の補修用樹脂材料として構造物の表面に貼付される光硬化型 FRP シートとひび割れへ注入されるエポキシ樹脂とを取り上げ,それらの性能の評価を行っている。 FRP シートに関して,ひび割れを跨いで貼付された FRP シートに生じるバックリング現象を評価す るための試験方法,FRP シートを貼付した RC はりのせん断耐力の算定方法,および FRP シートに ひび割れ等から水圧が作用した場合の付着特性の評価試験方法を提案している。また,ひび割れ部に 注入するエポキシ樹脂に関しては,樹脂とコンクリートとの付着性能の評価試験方法として,コア供 試体を用いた引張ならびに曲げ試験方法を提案している。ASR ひび割れを再現したコンクリート供試 体を作製し,ひび割れへのエポキシ樹脂の充填状況を評価するための方法を提案している。このよう に,この論文は,新規性,有用性の点で優れている。したがって,学位審査委員会は,審査の結果, この論文を学位論文に値するものと判定した。 最終試験結果の要旨 学位審査委員会は,提出された論文の主要部分が,下記に示す5 編の審査付き論文として既に発表 済みであることを確認するとともに,平成28 年 8 月 3 日に開催された学位論文公聴会における質疑 応答と口頭試問などに基づいて審査を行い,最終試験に合格と判定した。 1. 柿澤雅樹,藤田征也,六郷恵哲:コンクリートのひび割れの収縮に伴う補修材・光硬化型 FRP シ ートにおけるバックリング現象の評価試験方法の提案,コンクリート工学年次論文集,Vol.36,No.1, pp.1906-1911,2014.
1’. Masaki Kakizawa,Masaya Fujita,Kousuke Tanabe and Keitetsu Rokugo: Evaluation of buckling -behavior of UV-cured FRP repair-sheet due to narrowing concrete crack width, The 6th International Conference of Asian Concrete Federation (ACF), pp.234-237, 2014.
1’’. Masaki Kakizawa , Kousuke Tanabe , Koichi Kobayashi and Keitetsu Rokugo: Buckling-behavior of UV-cured FRP repair-sheet due to narrowing concrete crack width, The Fifth International Conference on Construction Materials (ConMat’15), pp.2061-2070, 2015. 2. 柿澤雅樹,田邊幸佑,内田裕市,六郷恵哲:光硬化型 FRP シートの異方性を有した貼付による RC 梁のせん断耐力の実験的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.37,No.1,pp.1555-1560,2015. 3. 柿澤雅樹,西尾亮人,藤本匠,六郷恵哲:コンクリートに貼付されたシート系材料の水圧作用に対 する耐水圧性評価の試験方法の提案,コンクリート工学年次論文集,Vol.38,No.1,pp.1947-1952, 2016. 4. 西尾亮人,柿澤雅樹,六郷恵哲,小林孝一:コンクリートコア供試体の引張ならびに曲げ試験によ るひび割れに充填された樹脂の付着性能の評価,コンクリート工学年次論文集,Vol.38,No.1, pp.441-446,2016. 5. 柿澤雅樹,藤本匠,西尾亮人,高木雄介,六郷恵哲:模擬膨張骨材を用いたコンクリートの ASR ひび割れの再現と樹脂注入性評価への利用,コンクリート構造物の補修・補強・アップグレード論文 報告集,Vol.16,2016.(印刷中)