SHR No.75 SHR No.75 友人関係は、個人特性との関連も示唆されています。現代 青年の友人関係に対する調査研究(8)では、①情緒的に近い 関係を回避する青年、②情緒的に近い関係を持つ青年、③ 友人から傷つけられたり、友人を傷つけることを避け、また 友人と群れていようとする傾向が高い青年という 3 群が見 出されています。さらに、「友人から傷つけられることを回避 する」ことが、「友人から傷つけることを回避する心性」を経 て、「被拒絶感」を低減し、結果的に自尊感情を維持させる構 造が示されました。つまり、現代青年の友人関係において、 自他共に傷つくことがないよう配慮することによって、相手 から拒絶されず受容されることを通して、自尊感情の水準を 高揚・維持しようとする過程が見出されたのです。これは、特 に気遣い・群れ関係群において顕著に見られました。このこ とから、友人関係の中で気を遣うことは、必ずしも否定的な 意味合いだけではなく、青年の自尊感情維持という肯定的 な機能を持つとも言えます。しかし、その自尊感情が、常に 他者の承認を得られないと傷ついてしまう懸念に基づいた 不安定な自尊感情なのか、自分が他者の意図や状況に適切 に合わせられる高い対人スキルを持っているという自信に つながるものかという、自尊感情の質に関する検討は今後 の課題となっています。 また、青年期は「自分は何か」「自分はこれからどうなって いくか」という問いへの答えを模索し、自我同一性(アイデン ティティ)を確立していく時期です。友人に気を遣う人や深い かかわりを回避する人は、自我同一性(アイデンティティ)の 確立感が低く、積極的に友人との快活な関係を求め、自己を 開示する関わり方をする人は、自我同一性の確立感が高い とも言われています(9)。 友人関係は、自尊感情やアイデンティティなど、自分自身 のことにも関わってくるものだと言えます。みなさんも自分の 友人関係を振り返って、自分自身について考えてみてはどう でしょうか。 【文献】 1 落合良行・佐藤有耕.青年期における友達とのつきあい 方の発達的変化.教育心理学研究.1996, 44(1), p55-65. 2 西平直喜.成人になること−生育史心理学から.東京大 学出版会.1990. 3 千石保.まじめ の崩壊−平成日本の若者たち.サイマ ル出版会.1991. 4 岡田努.現代大学生の友人関係と自己像・友人像に関 する考察.教育心理学研究.1995, 43(4), p354-363. 5 徳田仁子.思春期・青年期のコミュニケーション―<関 係>から<共有>へ.ひと・文化・発達.京都光華女子 大学人間科学部人間科学科(編).ナカニシヤ出版. 2010, p129-147. 6 大平健.やさしさの精神病理.岩波書店.1995. 7 藤井恭子.青年期の友人関係における山アラシ・ジレン マの分析.教育心理学研究,49(2), p146-155. 8 岡田努.現代青年の友人関係と自尊感情の関連につい て.パーソナリティ研究.2011, 20(1), p11-20. 9 松下姫歌・吉田愛.大学生における友人関係と自我同一 性との関連 広島大学心理学研究.2009, (9), p207-216.
平成24年度学生定期健康診断の成績について
1
0
0
全文
関連したドキュメント
複雑性・多様性を有する健康問題の解決を図り、保健師の使命を全うするに は、地域の人々や関係者・関係機関との
当社は、お客様が本サイトを通じて取得された個人情報(個人情報とは、個人に関する情報
本報告書は、日本財団の 2016
本報告書は、日本財団の 2015
二酸化窒素については、 「二酸化窒素の人の健康影響に係る判定条件等について」 (中 央公害対策審議会、昭和 53 年3月 22
総合的なお話を含めていただきました。人口の関係については、都市計画マスタープラ
個人は,その社会生活関係において自己の自由意思にもとづいて契約をす