フランス語の半過去と期間句の共起制限について
−日本語のテイタとの比較−
著者 上原 由美子
雑誌名 言語科学研究 : 神田外語大学大学院紀要
号 27
ページ 47‑65
発行年 2021‑03
URL http://id.nii.ac.jp/1092/00001757/
as KUIS 著作権ポリシーを参照のこと
文
語 について
語
(神田外語大学)
要
本稿では、フランス語の半過 と、「9時から11時まで」「3年間」など期間 を表す表現(以下、期間句)が共 しない、または共 すると不自 になる という現象について、日本語のテイタ/テイルと比較しながら、 象投 理論
(岩本2008)の みで考察した。フランス語の半過 は0次 (状態)を 指定するテンスであるが、期間句は1次 (動態)を要求し、 者はアスペ クト的に する。また、統語構造上、半過 はテンスであることから、ア スペクトのレベルで解釈 則( 制)を導入してアスペクトを変 するとい うことが不可能であり、その を回 することができない。フランス語の 半過 と期間句が共 しにくいことは、上記のように説明できる。
キーワード:アスペクト、テンス、概 構造、テイル、解釈 則( 制)
フランス語の過 時制の一つである半過 (imparfait、英語でimperfect)は、
アスペクトにおいて不 了を表し、さま まな用法を つ。新 他(1996)
では半過 について(1)のように説明されている。
(1) 習的に認められている半過 形という訳語はあまり適当なものとは えないが、フランス語の名 imparfaitが示すように、この時制の主な 機能は、 不 了 ないし 続 を表すことにある。すなわ 、過 の 象を、 点も終点も判 としないある 続として えるわけであり、
このことから進行・状態・習 ・ 等々の 相 を伝える用法が生ま れてくる。(中略)これらの性格を っくるめ「記 をさかのぼって得 られる かつての現在時 を示すもの」との定義が与えられているが、
たしかにこの時制は、現在形のきわめて 広い用法と 応するように、
48
過 時制の中でも最も多様な用法を っており、最もニュアンスに富
時制と言える。 (新 他1996:232)
過 時制の中で、アスペクトとしては不 了を表す半過 と、過 の 象を ごと える複合過 (pass compos )または 純過 (pass simple)( 者 の違いは2.1で述べる)の対立を表す文として(2)のような例がよく げられ る。
(2) uand il est entré dans le salon, je regardai s la t l vision.
が 間に入ってきたとき、 はテレ を見ていた。
(複合過 ) (半過 )
(井 2017:108、下 と( )内は筆者)
(2)では、半過 は日本語の「テイタ」に対応し、過 の動作 続を表して いる。日本語のテイタと、フランス語の半過 は、いずれも不 了を表すとい う点で対応関係にあるといえる。しかし、 者は に対応する訳ではない。文 法カテ リーの点では、テイル/テイタはアスペクトであり、過 、現在など 複数のテンスにおいて実現され得るのに対し、半過 は 本的にはテンスとさ れているという違いがある。また、テイタは動作 続の他にも結果 続、パー フ クトなどの用法があるが、フランス語の半過 にはさま まな用法がある なかで、テイタが表すような結果 続やパーフ クトの意味は表さない。特 に 味深いのは、井 (2010、2017)が指 するように、テイタは、「 は 9時から11時まで本を読んでいた」「 はフランスの学校に3年間通っていた」
のように期間を表す表現と問題なく共 するのに対し、フランス語の半過 は、これらの表現と共 しない、または不自 になるという違いである(井 2010:191、井 2017:14)。
本稿では、このような期間を表す表現(以下、期間句)との共 制限について、
フランス語の半過 と日本語のテイタの間にな 違いがあるのか、半過 では どのようなメカニズ で共 制限がかかるのか、「 象投 理論」(岩本2008)
の みで考察する。なお、テイタについては、アスペクトとしては「テイル」
の性質と共通するところが多いため、 論に影響しない限りにおいて、テイル
について
に関する研究を 用する。
要 2 1
フランス語の過 形には、不 成相を表す半過 と、それとアスペクト的に 対立する 純過 および複合過 がある。 純過 と複合過 の違いについて は、本稿の 論と関わらないが、 に述べておく。 純過 は、「現代フラ ンス語では文章語においてのみ用いられ、 史的 述、物語、小説などできわ めて に見られる」(新 他1996:244)とされている。一方、複合過 は、「近 代フランス語において、複合過 形はまず何よりも 口語的 過 形としてあ る。(中略) 来、複合過 形は現在形に対応する 了形であり、形態的には 現在 了形と同等のものである」(同 : 227)とされている。つまり、複合過 は、
現在 了の意味から過 を表す形式へと 張されたものである。 者には文章 語と口語という違いの他にも様々な違いが 在するが、半過 とアスペクト的 な対立があるという点は共通している。
フランス語のテンス・アスペクトに関する先行研究においては、半過 と対 立するものとして、通 、 者のど らかが用いられている。本稿でも、先行 研究に言及する際、 論に影響しない限り、 純過 と複合過 の違いは考慮 に入れず、半過 とアスペクト的に対立するものとして 者を同様に うこと を断っておく。
2 2
半過 には様々な用法があり、半過 を対象とする研究は多い。半過 の用 法の分 や名 けについては研究者によって異なるが、以下では、井 (2010、
2017)および新 他(1996)に き、用法をまとめる。井 (2017)では、
半過 の 本的な用法として、(3a)「過 の状態」、(3b)「過 の行 の 続」、
(3c)「過 の行 の 」、(3d)「過 の習 」が げられている。
(3) a. J’ai rencontr une jeune fille hier. Elle é tait tr s belle.
日若い女性に出会った。 女はとても美しかった。
b. Marie s’est retourn e vers moi. Elle riait.
50
マリーは のほうを り向いた。 っていた。
c. L’image de Jenny passait et repassait devant ses yeux.
Jennyの面影が目の前を行ったり来たりした。( 2002)
d. uand j’ tais petit, j’allais l’ cole avec ma s ur.
子 の 、 は と学校に通っていた。
(井 2017:111、下 は筆者)
また、半過 は、 の にも用いられる。新 他(1996)は、この用 法について、「 の半過 形」として(4)のように述べている。
(4) (前略)しばしばそれは優れて 的な効果をもたらす。物語では、中 心的 を 純過 形・複合過 形で述べ、その となる状況、ある いは 場人物・語り手の心理などを半過 形で語る場合が多いが、半過
形一本で が進められることも少なくない。
(新 他1996:233)
ここまでは、不 成相のアスペクトとして、状態性を表す一般的な用法と言 えるが、半過 には、他にも様々な用法がある。特に、よく研究の対象となる 用法に、小説等で用いられる「語りの半過 」または「絵画的半過 」と ば れる用法がある。 的な出来 を述べる際に使われ、 純過 に きかえて も意味は変わらず、ただそこにニュアンスが加わるとされる用法である。この 用法の一 と言われる「切断の半過 」という用法もある。半過 には、その 他にも「試みの半過 」「語調 和の半過 」「市場の半過 」「 情表現の半過 」
「 の半過 」「間一 の半過 」など、「 の半過 」と ばれる数多くの用 法がある(井 2010、2017、新 他1996他)。ただし、本稿では、(3)で げた半過 の 本的な用法のみ い、その他の用法については立 入らない。
井 (2010、2017)は、(5)のように期間を示す表現と半過 を同時に使 うと不自 になり、通 、期間を示す表現がある場合は、半過 ではなく複合 過 または 純過 が使われるとしている1。特に(5b)のように「pendant
について
期間」という表現は半過 とは共 しないとしている。pendant は英語のf orに 相当する、期間を表す前 詞である。
(5) a. Je lisais (un livre) de 9 heures 11 heures.2、3 は9時から11まで本を読んでいた。
(井 2017:14、108、下 は筆者)
b. Je f ré que ntais une cole fran aise pendant trois ans.
はフランスの学校に3年間通っていた4。
(井 2010:191、同上)
(5a,b)に見られるように、日本語では、期間句とテイタは共 するのに対し、
フランス語の半過 では、共 しない、または不自 になるという共 制限が ある。本稿では、このような期間句との共 制限に関する、テイタと半過 の 違いについて考察する。
(199 )
本章では、半過 のアスペクト的特徴について、De Swart(1998)の分 析を概観する。De Swart(1998)は、coercion( 制)という概 を用い、
Discourse Representation Theory(DRT)の みで、フランス語と英語の アスペクト変 の現象を比較し分析している。De Swart(1998)は、英語の 進行形や 了形がアスペクトであるのに対し、フランス語の半過 と 純過
は「アスペクトに 感なテンス」だとしている。 体的には、半過 は 質的(homogeneous)なeventuality(De Swartの用語ではstateとprocessに相 当)を過 に 付けるオペレータであるとする。一方、 純過 は、 子 化された(quantized)eventuality(De Swartの用語ではeventに相当)を過 に 付けるオペレータであるとする。そして、それぞれの を満たさない eventuality(以下、 象)と結びつく場合は、 を回 するためにcoercion(
制)が導入されアスペクト変 が こるとしている。
以下、 しく見ていく。De Swart(1998)は、Comrie(1976)によれば「テ ンスはある 象の時間を他の時間と関係 けるもの」であり、「アスペクトは
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象の内的時間構成のさま まな見方である」としている。そして、テンスは アスペクトのすべての が行われたあとで作用すると 定され、文の統語構 造は(6)のようになるとしている。「 」は0または1以上を表す。
(6) Tense Aspect eventuality description
(De Swart 1998:348)
また、De Swart(1998)は、名詞の え方を 象に し、 象には、state、
process、eventの3つのタイプがあり、stateとprocessは 有の終結点を たず、
eventは 有の 点を つとする。processとeventはnon-stativeであり、この 二つの上 概 としてdynamic 象という上 カテ リーが設けられ、これら が図1にまとめられている。
HOMOGENEOUS UANTI ED state process event STATIVE DYNAMIC
図1 (De Swart 1998:351)
英語の進行形や 了形といった文法アスペクトや期間 詞句などはアスペク トオペレータを導入するが、アスペクトオペレータは、 象のアスペクトを 変 するものとしている。例えば、進行形は動的な 象を進行中というstate に するアスペクトオペレータPROGを導入する。PROGのような明示的な アスペクトオペレータとは別に、 象のアスペクトと文 中の要 のアスペ クトが する際に導入される、形態的・統語的に不可視の再解釈のプロセ スがcoercion( 制)であるとしている。 制によって き こされるアスペ クト変 を明示するために次の3つの 制オペレータが導入されている。Cehは eventからhomogeneousな 象への、Cheはhomogeneousな 象からeventへの、
Csdはstateからdynamicな 象への 制オペレータである(De Swart 1998:
360)。例えば(7a)の構造は(7b)である。もともとstateである Susan like this play が進行形へのインプット を満たすために、 制オペレータ Csdによってdynamic 象に 制されている。
について
(7) a. Susan is liking this play.
b. PRES PROG Csd Susan like this play (同 : 363)
De Swart(1998)は、英語とフランス語を比較し、フランス語の半過 と 純過 はアスペクトに関連しているが、それは英語の進行形などの明示的な アスペクトとは異なるものであるとし、フランス語の 純過 と半過 につい て、以下の 説を提示している。
(8) 純過 と半過 は、アスペクトに 感な過 のテンスオペレータで ある。 体的には、 純過 はeventを、半過 はstateまたはprocessを
表す。 (同 : 368、訳は筆者)
もとの 象が、それぞれ(8)の通りである場合は選択制限を満たすため適格 となるが、そうでない場合は 制オペレータが導入されるとする。例えばフラ ンス語には進行形を表す動詞の形がないが、(9)ではもともとeventである 象が半過 (IMP)と み合わされることによりアスペクト が こり、
制オペレータの Ceh が導入され、進行中の出来 と解釈される。
(9) a. Jeanne crivait une lettre. (J eanne w rote -I M P a letter.)
b. PAST Ceh Jeanne write a letter (同 : 371)
またDe Swart(1998)は、半過 は結果として 象がstateかprocessになる 限り 本的にはいかなる も許容するとしている。半過 が英語の進行形よ りも広い意味を表すのは、半過 には進行形の解釈だけでない、このような、
より自由なアスペクト移行があるからだとしている(p.372)。
本稿では、以上のDe Swart(1998)の主張について、①半過 と 純過 はアスペクトに 感なテンスである(つまり、特定のアスペクトを指定するテ ンスである)、②アスペクトが する場合は 制が きる、という2点につ いて支 する。ただし、 制の 体的な方法として、設定されているChe、Ceh、 Csdという 別の 制オペレータについては、その 要性および について
の余 があると考えている。また、また岩本(2008)が指 するように、
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制によって導入されるPROG等いくつかの関数の意味的 作の内容、および いの間の関係などについては 論されていない(岩本2008:268)点も問題 が る。 体的に、どのようなメカニズ で、2.2で見たような半過 のさま まな用法が実現するのか、それについては 後の課題としていきたい。 と まず、本稿では、De Swart(1998)の半過 に関する主張のう 、上記①② にを採用し、次章で概観する「 象投 構造」の みを用いて、期間句との 共 制限について分析を試みる。
(200 )
岩本(2008)は、Jackendo (1996)の「構造 束 理論」を修正発 させ、
「動き」「変化」といった概 をより 的な 性対立によって定義し、一 し た体 性の中に 象のアスペクトが定義される「 象投 理論」を提案した。
本稿では、 象投 理論の みで半過 の概 構造を定義するにあたり、岩 本(2008)による日本語のテイルの概 構造について概観する5。
1
テイルは、多くの先行研究で示されているように、動作 続、結果 続、パー フ クト、 、習 などさま まな意味を表す。岩本(2008)は、テイル の多義性は、 象とテイルの概 的意味の計算により明示的に説明が与えられ るとしている(p.177)。テイルの概 構造は(10)と定義され、(11)のよ うに説明されている。
(10) テイルの概 構造
(岩本2008:186)
(11) (10)の構造は、非限界時間4 4を0次 化するCRS関数こそがテイルの概 的意味であることを表している。
テイルの文では、もとの 象の概 構造と(10)が 一化された結果、その
について
計算により、さま まな解釈を つ概 構造が実現する。なお、(10)の中で、
0dは0次 (状態)、1dは1次 (動態)、-bは-bounded (非限界的)、 dirは directed(投 が方向 けられたものである)を表している。
2
動作 続を表すテイルの概 構造は(12)のようになる。
(12)「流れている」(動作 続)の概 構造
(岩本2008:189、「流れる」の表示は筆者)
テイルのない「流れる」だけの構造は省略するが、(12)の構造の下の部分 がこれに相当する。「流れる」の構造を 足すると、一番下の0次 (0d)の
「BE X , Space 0d )Time 0d 」がPR(projection)関数で1次 (1d)に投 さ れている構造である6。PR関数の 性に示されているように、「流れる」は -b
(-bounded 非限界的)の「動作」を表す 象である(他の 性表示の説明は省 略する)。「流れる」の概 構造と「テイル」の概 構造(10)を 一化すると(12)
となる。(11)によるとテイルは時間項( Time )を0次 化するものであるが、
(12)では空間項( Space )も同様に0次 化されている。これは(13)の原 則に く。
(13) 「相変 関数の相同項への 行的適用の原則」
相変 関数が一つの項に適用するとき、適用を する要 がない限 り、それと相同的な項にも同様に適用する。 (岩本2008:190)
56
つまり、「流れている」(12)では、テイル自体は時間項だけを0次 化するが、
空間項に 行的適用を する要 がない( -b である)ことにより、空間項 も0次 化される。このように、結果として、時間項と空間項の 方が0次 化された構造が、動作 続を表す構造となる。
なお、岩本(2008)では、動作 続の他、結果 続、パーフ クト、 など、
テイルの他の解釈を表す概 構造も提示されているが、本稿の分析には 接関 わらないため省略する。
1
(5)で見たように、通 、半過 は期間句とは共 しないか、共 すると 不自 になる。(5)に相当する日本語のテイタの文(「 は9時から11時まで 本を読んでいた」「 はフランスの学校に3年間通っていた」)は、問題なく言 えるのに対し、な 、半過 は期間句と共 しにくいのか。
まず、結論を先に述べ、続いて岩本(2008)のテイルに関する分析を用い て説明を 足する。
フランス語の半過 が期間句と共 しにくいことは、半過 が、テンスであ ること、特にDe Swart(1998)が主張するように「アスペクトに 感なテンス」
であることが影響していると考えられる。 体的には次のように説明できる。
(5a)のテイタの文「 は9時から11時まで本を読んでいた」と、対応する不 自 な半過 の文の構造を に示すと、それぞれ(14a)(14b)のようになる。
(14) a. 1d TENSE(タ) 0d ASPECT(テイ) 本を読 9 ~ 11時 1dを要求
b. 0d TENSE(IMP) 本を読 9時~ 11時 1dを要求
まず、テイタの(14a)では、「アスペクトで0次 化(状態化)された 象 が指定された期間(9時から11時まで)続く」ということが、最後にテンスによっ
について
て時間 上に 付けられる。この際、「9時から11時まで」という期間句に より、 象が1次 であることが要求される(期間句が1次 を要求すること については6.2で述べる)。ここで、日本語のテンスには次 (d)の指定がな く、つまり、非過 も過 も、 成相と不 成相のいずれをも(ル、テイル、タ、
テイタ)取ることができる。したがって、(14a)は、期間句の次 である1次 に合わせ、問題なく1次 の 象となることが許容される。
半過 の(14b)では、半過 が不 成相アスペクトをあらわすことから0 次 を指定すると考えられる。しかし、上述したように「9時から11時まで」
という期間句は1次 の 象を要求することから、これと する。さらに(6)
で見たように、テンスである半過 は統語構造上アスペクトより外 にあり、
テンスはアスペクトのすべての が行われたあとで作用すると 定されるこ とから、テンスの においては、もはや解釈 則( 制)によってアスペク トを変 して を回 することはできない。また、 に を回 すべく 象を0次 化しようとすると、解釈 則( 制)が導入されて0次 化される ことになるが、その場合、1dである「9時から11時まで」の意味が される ことになる。これは後述する「解釈 則による投 構造の空 化を ずる原則」
(岩本2008 : 157)に 触することになり、この構造は不適格となる。
以上が、期間句が半過 と共 しない、または不自 になるメカニズ であ ると考えられる。
次に、上述した、期間句が1次 を要求することの と、「解釈 則によ る投 構造の空 化を ずる原則」について、岩本(2008)のテイルに関す る分析に いて 足する。
2 1 要
期間句が1次 を要求することについては、期間句の概 構造として、非限 界的実体を限界化する関数であるCOMP(Composed of)が適用されること(岩 本2008 : 124)、およびCOMPが1次 の実体に適用されることから説明される。
例えば、「10時まで った」の概 構造は(15)のようになる。
58 (15) 太郎は10時まで った
岩本(2008:124、「 る」「10時まで」の表示は筆者)
(15)は、「 る」という非限界 象(-b)が、COMPである「10時まで」と いう期間句によって限界化( b)されていることを表している7。なお、(15)
はテイルの文ではなく、 成相であるタ形の文であり、もともと1次 の 象 である((12)の説明を参照)。したがって、一 して1次 であり、COMPによっ て次 が変わることはない。しかし、テイルの文では 情が異なる。(16)は「太 郎はここで 後6時まで っている」という、期間句を含 、動作 続を表す テイルの文の概 構造である。
について
(16) 後6時まで っている
岩本(2008:197、「 る」の表示は筆者)
(16)では、「 る」がテイルで0次 化され、その後、COMPである「6時まで」
と 一化されるが、その際、概 上の ( )を解 するために解釈 則によっ てPRが導入される(岩本2008 : 197)。つまり、0次 であるテイルの 象を「
後6時まで」という期間句(COMP)によって 接限界 けることは不可能であ ることから、解釈 則により0次 を1次 にする関数であるPRが導入される。
(14)で「期間句が1次 を要求する」と述べたことは、以上のように説明される。
「 」
次 に、「 解 釈 則 に よ る 象 投 構 造 の 空 化 を ず る 原 則 」( 岩 本 2008 : 157)について 足する。(16)は、期間句を うテイルが動作 続を 表す例であるが、同様に期間句を うテイルの文でも、「10分間 っている」
のように、動作 続の解釈が不可能な文もある8。
60
な 、「 後6時まで っている」が動作 続の解釈が可能であるのに対し、「10 分間 っている」は動作 続の解釈が不可能なのか9。その違いは、「 後6時 まで っている」の動作 続の解釈は、「 っているという0次 状態」が「6 時まで」 続することを表しており、 後6時まで ここで っている とい う構造を つ(岩本2008 : 196-197)。これは、発話時において「6時まで」
続くとわかっていることであることから、動作 続の文として解釈できるもの と考えられる。一方、通 「10分間」は動作終了時に計 され決定される期 間であり、動作 続の解釈では、 っている時点、つまり発話において「10 分間」と ることはできない。したがって、 10分間 っている ではなく、
10分間 る テイル という構造になる。しかし、以下に述べるように、動作 続としてはこの構造は不適格となる。
(17) 10分間 っている。・・動作 続としては不適格
(岩本2008:219、「 る」「10分間」の表示は筆者)
⎣⎢
⎢⎢
⎢⎢
⎢⎢
⎢⎢
⎢⎢
⎢⎢
⎢⎢
⎢⎢
⎢⎢
⎢⎡ [0 ] [0 ]
〈 〉 ↑ 〈 〉 ↑ 1 , +
+ , − , − 1 , +
+ , − , −
〈 〉 ↑ 〈 〉 ↑
1 , +
+ , + , −
+([ ])
−
⎣⎢
⎢⎢
⎡ +1 , +, + , −
+([ ])
−
− = 10 ⎦⎥⎥⎥⎤
+([ ])
−
↑ +([ ])
−
− =10
↑
1 , +
+ , − , − 1 , +
+ , − , −
1 , +
+ , − , −
↑ 1 , +
+ , − , −
↑
[ ], 0 ; [ 0 ]
⎦⎥
⎥⎥
⎥⎥
⎥⎥
⎥⎥
⎥⎥
⎥⎥
⎥⎥
⎥⎥
⎥⎥
⎥⎤
ࢸ ࣝ
Ћ ゎ 㔘 つ ๎
Ћ ✵ 㸦10ศ 㛫 㸧
㉮ ࡿ
について
(17)が動作 続としては不適格になることについて、岩本(2008)では、
おおよそ次のように説明されている。
COMPによって限界 けられた項にCRS(テイル)を適用するためには、いっ たん解釈 則によってGR(grinder : 非限界化関数)という関数を導入して b を -b に変 しなければならない。しかし、このようにGRで非限界(-b)化す ると、「10分間」の概 的意味が、計算上、概 構造の中から われてしま い、「10分間」の構造が空 なものとなってしまう(岩本2008 : 219)。なお、
GR(grinder : 非限界化関数)という関数を導入して限界的( b )を非限界的
( -b )に変 しなければならない理由は、CRS(テイル)は 1d,-b を 0d に変 するものであるから、それが適用される項は、 界を取り われた非限界実 体 -b でなければならないからである(岩本2008 : 192)。「10分間 っている」
が動作 続の意味を えないことは、以上のように説明される。
なお(17)のように、解釈 則が、概 構造の一部を取り すことができ ないことは、(18)の原則として提示されている。
(18) 「解釈 則による 象投 構造の空 化を ずる原則」
解釈 則は、それが適用する 象投 構造の一部あるいは全部を取り すことはできない」(岩本2008:157)
(18)の原則は、解釈 則が 制限に導入されると、 象投 構造にどのよう な変 でも加え得る 制限な理論になり、説明力のないものとなってしまう ため、それに制限をかけるためのものである(岩本2008 : 156)。同様の制限 として、De Swart(1998)でも、「 制」(coercion)が適用する場合、もと の 象の内部構造を しなければならないという を課している(岩本 2008 : 157)。
なお、誤解のないように述べておくと、上記では、テイルの文において、「6 時まで」(動作 続の解釈が可能)と「10分間」(動作 続の解釈が不可能)で、
テイルの解釈に違いが出ることを述べたが、これは、あくまでも「解釈 則に よる 象投 構造の空 化を ずる原則」の説明のために例にあげたものであ る。「~まで」と「~間」の違いは、フランス語の半過 の共 制限には 接 関係なく、半過 では、(5)で見たように、ど らにも共 制限がかかる10。
62
日本語でも、過 テンスの「テイタ」の場合は、「 日の 後は、3時間 ー をしていた」など、「~間」について動作 続の解釈も可能である。これは「テ イタ」の場合は、発話時から見れば、動作が終わった時点で時間を ることが できたからであると考えられる。 り返しになるが、半過 の共 制限を考え る上で重要なのは、「~まで」と「~間」の違いではなく、半過 と期間句が 共 すると、期間句の概 構造が取り されて(つまり空 になって)しまい、
「解釈 則による 象投 構造の空 化を ずる原則」に 触することにより、
共 制限がかかるという点である。
6.2と6.3の 足説明を まえた上で、半過 の話に って、結論を再度確認 する。
(19) (14)
a. 1d TENSE(タ) 0d ASPECT(テイ) 本を読 9 ~ 11時 1dを要求
b. 0d TENSE(IMP) 本を読 9時~ 11時 1dを要求
(19a)のテイルの文は、(16)の「6時まで っている」と同様の構造を つ。
つまり、 9時から11時まで 本を読んでいた の構造である。「9時から11時ま で」はCOMPで限界付けられていることから1次 となる。そして、日本語の テンスは、特定のアスペクトを指定しないため、テイタの(19a)では、「0次 化(状態化)された 象が指定された期間(9時から11時まで)続く」とい うことが、最後にテンスによって特に問題なく時間 上に 付けられる。こ うして、動作 続の解釈が得られる適格な文となる。
一方、半過 の(19b)も、COMPで「9時から11時まで」と限界付けられ て1次 となる。しかし、半過 はアスペクトではなくテンスであり、かつ De Swart(1998)が指 するように、「アスペクトに 感なテンス」である。
について
半過 は動作 続等の不 成相アスペクトを表すことから0次 を指定すると 考えられ、ここで期間句のCOMPによる1次 と半過 による0次 のアスペ クト が こる。さらに、テンスである半過 は、(6)で見たように、統 語構造上アスペクトより外 にあり、アスペクトに関しての処理は終わった
にあることから、 回 のために解釈 則( 制)によってアスペクトを 変 することはできない。 に を回 すべく 象を0次 化しようとする と、解釈 則( 制)が導入されることになるが、その場合、1次 である「9 時から11時まで」の概 構造が されることになる。これは「解釈 則に よる投 構造の空 化を ずる原則」(岩本2008 : 157)に 触することになり、
この構造は不適格となる。
以上が、期間句が半過 と共 しない、または不自 になるメカニズ であ ると考えられる。
7.おわりに
本稿では、フランス語の半過 が期間句と共 しない、または共 すると不 自 になることについて、「 象投 理論」の みで分析し、そのメカニズ を示した。 回は、期間句との共 制限に関する問題だけを ったが、半過 には、「3回 した」など回数を表す表現と共 しにくいという現象もあるこ とが指 されている(井 2010 : 191)。また、そもそもフランス語の半過 は、
どのような概 構造を っているのか、テイル/テイタや英語の進行相など他 の不 成相と何が共通していて何が異なるのか、またどのようなメカニズ で 数多くの用法が可能になるのか。これらのことを本稿の みで明らかにして いくことは 後の課題である。
謝辞
本稿の執筆にあたり、査読の先生方に大変有 なコメントをいただき、修正 することができました。ここに感謝いたします。
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1. 井 (2010、2017)では、フランス語の時制についてメンタルスペースの みで分 析されており、期間句との共 制限についてもその観点から考察されている。
2. 井 (2017)では「 」ではなく「×」となっている。井 (2017)は学習者向け書 であるからか、全編にわたって文法性判断については「×」のみが使われている。当 例文の説明、および井 (2010)における他の例文の文法性判断とそれに対応する記 述との比較等から判断し、ここでは「 」と記した。
3. ただし、 問の えなどで「9時から11時ですか、そうですね、本を読んでいました」
のような文 では半過 でも問題ないとのこと(井 2017 : 14)。これに関する分析は、
本稿では わず 後の課題としたい。
4. 井 (2010)では、訳は「 はフランスの学校に3年間通った」となっている。過 の 習 を表すという点では「通った」と「通っていた」で意味は変わらないため、本稿で は「テイタ」と半過 を比較していることから、「通っていた」と表記した。
5. 岩本(2008)では、「テイル」としてアスペクトに焦点をあてて分析されており、テイ ル/テイタのテンスの区別に関しては特に われていない。本稿でも、岩本(2008)に 言及する際は、原 のまま「テイル」と表記する。
6. 空間項と時間項の関数同士は「構造 束 」(structure preserving binding)の関係に ある(岩本2008 : 123)。「構造 束 」に関しては、岩本(2008)、Jackendo (1996)
を参照されたい。
7. (15)の構造の中のbdby (bounded by )は、終 において限界 けられていること を表す(岩本2008 : 93)。
8. なお、「10分間 っている」は、動作 続の解釈は不可能であるが、パーフ クトや
(「 日、10分間 っている」など)の解釈は可能である。パーフ クトや を表 す適格な概 構造は岩本(2008)で示されている。
9. 「10分間 っている」と「 後6時まで っている」の動作 続解釈の容認性の 異は明 確でないと感じられるかもしれない。しかし、例えば「2年間パリに んでいます」と「来 年3月までパリに んでいます」のように、「~まで」が発話時より後であることが明確 な文 であれば、前者が動作 続解釈が不可能でパーフ クトの解釈のみが可能である のに対し、後者は動作 続の解釈が可能であるという 異がより明らかである。
10. ただし、半過 の期間句の共 制限にはグラデーションがあり、pend ant(「~間」に相当)
は、期間句の中でも「特に(中略)半過 とは共 しない」(井 2010 : 191)とあり、
共 制限が いようである。動作 続のテイルにおいて、「~間」が共 しないことと 関連性がある可能性はある。
について
参考文献
季雄(2002)『新フランス文法 』白水社
井 (2010)『メンタルスペース理論による日 英時制研究』 つじ書 井 (2017)『中級フランス語 時制の を解く』白水社
岩本遠億(2008)『 象アスペクト論』開拓社
新 一・ 比 ・ 生永・井村順一・ 永明夫・ 原信・山本 一(1996)『 版フ ランス語 ンドブック』白水社
Comrie, Bernard (1976) Aspect, Cambridge University Press, Cambridge.
De Swart, Henri tte (1998) Aspect shift and coercion , N atural L anguage and L inguistic T he ory 16, 347-385.
Jackendo , Ray (1996) The proper treatment of measuring out, Telicity, and perhaps even quantification in English, N atural L anguage and L inguistic T he ory 14, 305-354.