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― ― ― ― 地域に根ざした障害福祉と社会的養護事業の展開

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はじめに

 岐阜羽島ボランティア協会の川合宗次と初めて会ったのは,2015年 8 月,全国障害者問題 研究会(全障研)全国大会分科会の席だった。「障害のある子どもの入所施設」を話し合う分 科会で川合が発表した報告のタイトルは,「罪を犯した障がいのある少年の支援~社会的養護 の制度改正を~」。障害福祉サービスを中心に岐阜県羽島市で事業を展開する社会福祉法人で ある同協会が自立援助ホームを立ち上げた経過とともに,「社会的養護の事業活動を行う中 で,行き場がなくなった者や非行を繰り返す児童に障がいのある者が多いことを実感」した と報告している。そして,児童養護施設などで暮らす障害のある子どもたちが小さいうちか ら児童発達支援などの障害児支援を受けることができたら大きく変わるのではないかとの思 いをもち,その可能性を追求するためにファミリーホームの開設を準備していると結んでい た(川合,2015)。

 私は2009年度から立正大学社会福祉研究所のプロジェクト研究で,社会的養護と特別支援 教育の連携をテーマとして微力ながら研究を続けてきた(中村他,2013)。この研究における 関係者からの聞き取りによって,児童養護施設で生活していた特別支援学校高等部生徒が卒 業するに当たって,住まいと仕事の上で困難に直面せざるを得ないこと,本来ここで提供さ れるべき支援に関してその責任主体や連携が必ずしも明確になっていないことが明らかにさ れた(中村2013,中村2016,新藤2016)。社会的養護と障害福祉の行政の縦割りによってもた らされる連携の課題も大きいことを実感した。

 また2015年度からは,本学部新藤こずえ准教授が代表を務める科研費研究「社会的養護に おける障害児者の支援に関する研究―ライフコースの視点から―」に参与し,社会的養護と 障害福祉にかかわる事例の聞き取りをつづけている(その内容は新藤報告参照)。だが,課題

*立正大学社会福祉学部社会福祉学科

キーワード:障害福祉サービス,社会的養護,自立援助ホーム

地域に根ざした障害福祉と社会的養護事業の展開

―岐阜羽島ボランティア協会を視察して―

Community-based Welfare for Persons with Disabilities and Social Care

―The Visit to the Association of Hashima Volunteer―

中村 尚子

Takako Nakamura

〈報告〉 社会的養護と障害児者支援の連携に関する研究 その 1 

(2)

に取り組む方向性が見えているわけではない。

 川合の報告を聞いた私は,岐阜羽島ボランティア協会の実践には,本学部と本研究所で継 続して検討してきた「社会的養護と障害福祉・特別支援教育をつなぐ」というテーマを考え る上で多くの示唆を含んでいると考え,新藤とともに視察に赴くことにした。

1  岐阜羽島ボランティア協会の概要

 岐阜羽島ボランティア協会(以下,「ボラ協」と略)のある羽島市は,岐阜県南部に位置 し,隣県滋賀県や愛知県とは往来しやすい土地である。人口約68,000人(2017年11月)。「羽 島市地域福祉計画」(2009年 3 月)によると,年少人口率は15.1%でほぼ横ばい,高齢化率は 18.7%で上昇傾向にある(1)

 ボラ協は,1981年に羽島市社会福祉協議会(社協)が組織して発足した羽島市ボランティ ア活動連絡協議会を原点として出発した。1993年に市社協から独立し,「羽島市ボランティア 協会」として自主運営を開始,ここから1999年に特定非営利活動法人岐阜羽島ボランティア 協会として法人化し,以後,羽島市や近隣自治体の社会福祉事業を受託するとともに,独自 事業の展開してきた。2014年には社会福祉法人の認可を受け,社会福祉法人,NPO 法人の二 つの機能を有効に関連させながら,羽島市と周辺地域を中心に,地域にねざして,子どもと 障害のある人の福祉事業を展開している。

 この経緯を川合(現在,社会福祉法人理事長)はつぎのように述べている。

 「(自主運営のボラ協立ち上げたころ)当時,羽島市には一か所の社会福祉法人が障害者の 入所施設や通所授産施設を実施してただけで障がい児(者)の居場所が限定されていました。

そのような状況の中,協会所属のグループは障がい児(者)を対象とした者が多かったこと もあり,障がい(児)者の居場所づくりに取り組む事になりました。/移送サービスから始 まり,特定非営利法人の認証後,支援する仲間を増やすため 2 級ヘルパー養成講座などを行 い,平成12年(2000年)には羽島市から身体障害者デイサービスセンターの委託を受けるこ とになりました。(2)

 現在,市内に 3 ヵ所の拠点をもち,社会福祉法人は障害者総合支援法,児童福祉法,更生 保護,その他の社会福祉事業を,NPO 法人は障害者総合支援法事業,社会的養護に関する事 業とともに,ボランティアの研修・組織など市民へと活動を広げている。 3 つの拠点がある といっても,それぞれの拠点が複数の事業を実施しており, 1 ヵ所 1 事業でもないため,実 施事業の全体像をひと言で表すことは難しい。資料 1に法人の年次報告から全体像を転載す る。福祉分野ごとに整理すると,おおむね下記のようになる。

 【障害者総合支援法関係】

 生活介護,就労移行支援,就労継続支援B型,共同生活援助,居宅介護,重度訪問支援,

行動援護,同行援護,一般相談支援,地域生活支援事業(意思疎通支援,移動支援,他)

ほか

(3)

資料 1  岐阜羽島ボランティア協会事業一覧

(4)

 【児童福祉法関係】

 ○障害児支援 児童発達支援事業,放課後等デイサービス,特定障害児相談支援,ほか  ○社会的養護 児童自立生活援助事業,ファミリーホーム

 ○子育て支援 病児病後児保育事業,ファミリーサポート,子育てひろば ほか  【更生保護などその他】

 自立準備ホーム,補導委託,一時保護事業など

 資料 1 にみるように,「既存の施策で対応する」だけではなく,法定事業ではカバーでき ない複雑で多様な問題に対応するため,あるいは福祉サービスから落ちこぼれる人がない ように,いわば「隙間をうめる」かのようにさまざまな事業が行われている。

2  視察の内容 1 )行 程

 日時 2017年 8 月31日, 9 時30分~17時30分  訪問施設・事業(訪問順)

  ①「健康促進住宅はしま」 1 棟

   [児童]* 児童自立援助ホーム Ohana の家/岐阜県委託  児童福祉施設退所者等アフターケア

   [障害]共同生活援助(グループホーム)/ショートステイ   ②かみなり村

 [障害者]生活介護(かみなり村北館)

 [障害児]放課後等デイサービス(かみなり村北館)

 [障害者]*共同生活援助(グループホーム)ゆうやけこやけ(かみなり村西館)

 [障害児]放課後等デイサービス(かみなり村本館)

 [児 童]*小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム) ゴロゴロくん

 以上のように 2 つの拠点で 7 事業所を訪問し施設内を見学,*の施設では職員からお話を うかがった。

2 )障害福祉サービスと障害児支援の事業

[かみなり村北館・かみなり村本館]

 児童発達支援事業・放課後等デイサービスや生活介護事業を行っている「かみなり村北館」

は玄関広場にある赤い二階建てバスが目印。訪問したときはちょうど昼休みで,生活介護に 来ているみなさんはゆったりと過ごしていた。機織りや木工などの作業を行っており,布袋 などの製品を作っているが,生産活動を中心にしているのではなく,毎日を快適に過ごすこ とを目的に,散歩やレクレーションなどを大事にしているそうだ。かみなり村北館の生活介 護は2017年 3 月から定員40名に増員して,特別支援学校高等部卒業生を受け入れる態勢を整

(5)

えた。したがって,2017年度利用者の平均年齢 は28歳と若い。

 児童発達支援と放課後等デイサービスが使う 子どもたちのスペースは「遊ぶこと」を中心に しており,室内,屋外の空間が広い(写真 1 ) ものをつくる活動や体を動かす活動に力を入れ ている。

 法人機関誌(3)には「今いちばんしたいことを『家 でも学校でもない第 3 の空間』でめいっぱい楽

しんでいます」とあり,「仲間で遊ぶ,興味ある事に夢中になる,課題に取り組み」ことを大 切にしていると記されている。ふだんは障害のある人の活動に使っている機織りなども使っ て,「手づくりクラブ」の子どもの活動で行われている。

 かみなり村本館のグループホーム(ゆうやけこやけ)では職員からお話を聞いた。

 ここは現在 7 人の利用者居住している(定員は 8 人)。居住者は,朝,それぞれの日中活動 の場や職場にでかけ, 4 時頃帰宅。食事やゆったりした時間を,必要な介助や生活上の支援 を受けながら過ごす。ここでの暮らしを選択するまでの経緯は,児童養護施設で生活したこ とがある,アパートで一人暮らしをしていたなど,さまざまである。誕生会や年間に何度が みんなで出かける旅行や行事などを組んでいる。日常の休日は DVD を見たり,ショッピン グモールにでかけたりと,自分で楽しんでいるそうだ。「年次報告2017」によれば,グループ に分かれて,月二回の定期外出や毎週外出が行われ,地域の運動会も開催されている。

 法人内には,「かみなり村」エリアに「ゆうやけこやけ」のほか小規模なホームと,他のエ リアに 2 ヵ所のグループホームがある。障害のある人の希望や障害の状態に合わせて,グルー プホームを変更することもある。ある人は,希望して少し離れた「グループホーム健康促進 住宅」(アパート形式)に「お試し」で生活しては「ゆうやけこやけ」に戻ってくるというこ とを数回繰り返した。「困ったらいつでもここに帰ってこられるようなホームであること」,

ここを出て一人暮らしなどを選択する際に生活する力をつけていってほしいという思いをもっ て支援をしているという。

 なお,このエリアのグループホームでは,ショートステイを併設している(定員 2 名と 4 名)。緊急時だけでなく,ここを定期的に利用したいという要望が高まっている。

[健康促進住宅はしま]

 「健康促進住宅はしま」エリアの中 に,児童自立援助ホーム(後述)に 隣り合わせるかたちで「グループ ホーム健康促進住宅」がある。グルー プホーム入居者の増加に対応するた

写真 1  児童発達支援と放課後活動の場

写真 2  健康促進住宅はしま全景(ボラ協 HP より)

(6)

め,県の廃止された雇用促進住宅( 2 棟)を買い取り改修,その一部で2013年からグループ ホームを運営している(写真 2 )。「雇用促進住宅」跡を「健康促進住宅」と命名したことに,

法人のユーモアを感じる。

 ここは各戸にキッチン,バス,トイレがあり, 1 室( 2 部屋)に 2 人が共同生活を送ると いう基本的な生活形態をとっている。 1 階に共有スペースがあり食事は一緒にとる(図)。生 活面での自立度の比較的高い人の利用が念頭にある。未使用の部屋を見学したが,一部屋ご とに玄関があることが印象的だった(写真 3 )

 法人機関誌から生活の一端を紹介する。

 「現在,女性12名/男性 3 名の入居者の方々がそれぞれ楽しみながら共同で生活をしていま す。今回は,入居者の方々がより楽しく生活するために日頃思っている事や,やってみたい ことなどを話し合うみんなの会についてご紹介します。……ほぼ全員参加のもと話し合っ た内容は……

 ①新しく決まったグループホームのルール(朝食のこと,掃除のこと。買い物のこと etc)

 ②やってみたいこと,外食で行ってみたいところ

などを話し合いました。「映画を観たい」「カラオケに行きたい」「花火を見に行きたい」「ホ タルを見に行きたい」など,色々な意見が出ました。さらに外食については,みんなの意見 がまとまらないくらい意見が出た為,意見箱を設置して後日集計を取ることになりました。(4)

3 )社会的養護にかかわる事業

[健康促進住宅はしま]

 雇用促進住宅を改造した「健康促進住宅はしま」(上述)の一部で,2012年から自立援助 ホーム「Ohana の家」を開所,2014年からは岐阜県の委託で児童福祉施設退所者等アフター ケア事業として「Lala の部屋」を開所した。ハワイ語で家族・仲間を意味する「Ohana」か ら名付けられた。

写真 3  グループホームの玄関 図 見取り図

(7)

 「Ohana の家」は定員12名(女子)で,児童相談所との連絡調整のもと,原則20歳を上限 に,自立した生活を送れるよう援助する。味岡施設長らから,長時間にわたって話を聞いた

(本報告ではその詳細にはふれない)。

 生活上のルールや大切にしていることは,「働いて自分で稼ぐ」「食事を作る」ことだ。働 くことは住居費や生活費を自分で負担しなければならない自立支援ホームでは当然だが(Ohana の家の利用料は 2 人部屋で月20,000円),すぐに見つからない場合は,法人内の事業所で働く ことを選択したケースもあるそうだ。

 食については,「今まできちんとした食事を摂れていない子」も多いことから,おいしいも のを手間ひまかけてつくる。そのことが「自分が大切にされていること」を実感できること につながっていくという(5)。だしの取り方からしっかり教え,一緒に手作りもする。

 ここで生活しているときと同様,退去後のケアに力を入れているのも特徴だ。近隣にアパー トを借りた子は,よく,ちょっとしたことで立ち寄る。食材を分けてもらうこともある。成 人式や夏のバーベキュー大会は恒例行事となった。結婚,出産などはもちろん,日常さまざ まなことで相談や近況報告があるという。Ohana の家は, 5 年間の実践によって,ここを巣 立った子どもたちにとっての「帰る家」になっていると,味岡はいう。

 「自立という形で退居していった子たちにとっても Ohana は帰る場所であって,連絡 があって遊びに来たり,お米やパンをもらいに立ち寄ったりと,安心して”“気軽に”“戻る ことのできる場所であると感じています。(6)

  「Lala の部屋」児童養護施設等を退所して行き場のない人の宿泊や仕事探しの支援を行っ ている。2016年度の実績は,自活訓練 3 件,緊急宿泊 3 件で,進行中の相談ケースが30人ほ どだ。職業紹介については,12ヵ所の事業所が登録されており,「仕事に繋ぐ」活動をしてい (7)

 法人機関誌から事例を要約して紹介する。

 会社の人間関係悪化により,仕事と住まいを失い,緊急宿泊。仕事が見つかり雇用主の協 力でアパートも借りるが長時間労働等が理由で退職。再度 Lala がかかわる。無事転職し住ま いを移す。「こうした対応も,児童養護施設を出た若者を理解してくださる方々の協力があっ てのことだと思います」と結んでいた(8)

 ここでの生活を経験した人の中には,療育手帳や精神保健福祉手帳所持者もいる。川合は,

児童養護施設を退所する障害のある子どものケアに関わる困難を,次のように述べている(川 合,2015)。

 「児童養護施設職員から障がいのある入所児童の相談も多い。措置施設であるがゆえに『地 域の福祉サービスが受けられない』『特別支援学校や障害福祉の環境になじんでいないがため に障がい受容ができず退所後福祉サービスを受けない』など施設職員の障がい支援における 苦悩が垣間見える。二次的な障がいによる非行化も見受けられる。そのため障害手帳を持っ ている児童が自立援助ホームを希望する場合,グループホームにと迷う。明らかに福祉サー

(8)

ビスへ繋ぐべきと思っても自立援助ホームに一旦入ってしまうとグループホームへの入居拒 否(障がい受容できない),本人が固辞するからだ。」

 こうした現実があるからこそ,ボラ協のような,障害福祉と社会的養護の双方にまたがる 活動を展開している法人の意義は大きい。それぞれの子どものケースを一般化することは困 難なことではあるし,すべきではないだろうが,個々のケースに関わる人を広げ,つながり を強めていくことが大切なことだと思われた。

[ファミリーホーム ゴロゴロくん]

 ファミリーホームは2017年 4 月に開設した,ボラ協の なかでは一番新しい事業である。「『すべての人々』であ る『生きづらさを抱えた人々』『行き場のない子どもた ち』『ほかに受け皿のない人々』への支援活動を強化し,

『居場所と出番』を創っていきます」という法人の方針の 重点事業として開始された(9)。岐阜県内では 6 ヵ所目。ファ ミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)の定員 6 人 に加え,子育て短期支援事業(定員 2 名)を併設してい る。

 ホームページに記載された「名前の由来」によれば,

「かみなり村のゴロゴロという響き」とともに「みんなゴ ロゴロできるような場所にしていきたい」という思いで

つくられたのだという(10)。そのことは,掲げられた日課に「自由時間,ゴロゴロ OK !」とい う言葉にも表れている。また,Ohana の家同様,食事をとても大事にして,一人ひとりが大 切な存在だということが伝わるように取り組んでいる。

 訪問した 8 月の時点で 4 人の中高生が生活していた。中学生は高校進学の希望をもってい る。また夏休みは近隣のかみなり村の施設でボランティアをした子ども,長期帰省をした子 どももいるそうだ。

 建物が印象的で,木材を使った居室は温かく,吹き抜けの食堂・談話室は明るい雰囲気を 醸し出していた(写真 4 )

3  視察を終えて

 ボラ協のいう「生きづらさを抱えた人々」「行き場のない子どもたち」「ほかに受け皿のな い人々」への支援は,まさに私たちが解明しようと取り組んでいる課題と重なり合う。

 今回の視察先は,限られた時間の中で私たちの目的が達成できるよう,法人事業の中から 川合理事長がセレクトしてくださった場所だ。子育て支援や障害者就労支援などは今回の視 察からは外れていた。ボラ協の事業をすべて視察し,その内容を理解しようとするとどれく らいの時間が必要かはわからない。それほど多種多様な事業が行われている。その多種事業 写真 4  ファミリーホームの個室

(9)

が,制度の壁で仕切られることなく,可能な限り融通を利かせて利用できるように仕組まれ ていた。視察を終えて,「生きづらさを抱えた人々」「行き場のない子どもたち」「ほかに受け 皿のない人々」の支援の中核に「居場所と出番」を据えているのがボラ協の特徴であると思 われた。「生きづらさを抱えた人々」たちに,住まいと社会とつながる活動を,地域のなかに つくりつづけた到達点が,現在の諸事業だ。

 多種多様な事業は完成形ではなく,「現在進行形」であり,「相互交流」を特徴としている。

複数のグループホーム間で利用者に合ったホームを選択する,児童自立支援ホーム等の入居 者の仕事やファミリーホーム入居児の夏休みの活動として障害福祉の場に誘う,それぞれの 施設を日中活動に相互利用するなどが試みられており,また支援スタッフの養成にも取り組 み,地域の人が研修に参加することで「地域の福祉力を育む」(法人の目的)ことにも寄与し ようとしていた。かみなり村北館のスペースなどは,地域のイベントなどに利用され,常に 地域に開かれていることも興味深い。

 原点はどこにあるのか。川合から引用する(川合,2017)。

 「今から50年近く前,『子どもたちに絵本を!!』と北海道札幌市で『ふきのとう文庫』活 動が始まりました。羽島市では,昭和55年頃に竹鼻町在住のベッドに寝たきりの池田義照さ んという脳性まひの方が近所の子どもたちに英語を教えながら,その文庫活動に取り組んで みえました。その活動に共感し,現在中部学院大学の飯尾良英先生(当時,岐阜県社協の職 員)が活動に協力していました。当時,漫画タイガーマスクに影響を受け,児童養護施設な どに絵本を宅配したのが始まりです。その後,『絵本』に『おもちゃ』を加え,『おもちゃ図 書館かみなりくん』の活動がスタート。障がい児を抱えた家族とともに活動を続け,やがて おもちゃ図書館は平成15年支援費制度をきっかけに児童デイサービスをはじめとして,生活 介護やグループホーム,子育て支援の病児保育,ファミリーサポートなどが生まれました。

単体施設だったおもちゃ図書館は複数の施設に発展し,次第に『かみなり村』と呼ぶように。

現在は,行き場のない子どもを支援する社会的養護の活動に広がってきました。40年の長い 年月が流れましたが,また,最初の活動に戻った気がします。」

 地域の子ども活動,子育て支援活動から始まり,そこに参加していた障害児とその家族が 必要とする支援を,制度を使いながら実現し,障害のある子どもと大人にかかわる福祉事業 を展開。そこでの「事業」の対象となって現れる人の中に,障害福祉だけでは解決が困難な 課題を抱えている人が見えてきた。これまで見落としてきた課題だったのなら,支援に活用 できる制度・施策はないかと考える一方,そうした「制度の対象」だけを対象とするのでは なく,つねに「現実から考える」姿勢がボラ協には貫かれているように思われた。

 2017年の社会福祉法改正による「社会福祉法人改革」では,社会福祉法人に「過剰な内部 留保がある」とされ,「地域貢献」が必須事項として定められた。しかし,ボラ協を視察して 感じるのは,地域の課題に正面から向き合ってきた法人は,つねに法定事業の枠を越えて活 動しているということである。はみ出す活動に公的支援が得られるように自治体に働きかけ,

(10)

部分的にだが,新規事業の創設に結びつけている。

 私たちが研究の対象としてきた社会的養護と障害のある人々への支援は,まさに制度の狭 間の事業で,現状では「こうあるべき」という施策は講じられていない。私たちも協働の「答 え」をまだ見つけることができていないが,今回視察したようなボラ協の実践の蓄積が,「地 域貢献」ではなく,社会福祉施策として法定化され,必要な専門性が社会的に承認されてい くことが必要であると思う。

謝辞: 多忙な中,視察とヒアリングに応じてくださった社会福祉法人岐阜羽島ボランティア 協会と川合宗次理事長に,この場を借りてお礼申し上げます。

 本研究は,科学研究費補助金挑戦的萌芽研究15K13098(研究代表者 新藤こずえ)による。

( 1 )羽島市ホームページ http://www.city.hashima.lg.jp/ 2017年11月30日閲覧

( 2 )川合宗次「協会概要 だれもが活き活きと」社会福祉法人岐阜羽島ボランティア協会 ホームページ http://www.volavola.org/idea.html 2017年11月30日閲覧

( 3 )「児童デイサービスかみなりくん&かみなり村北館」『くろーばあ(岐阜羽島ボランティ ア協会機関誌)』第83号,2017年さくら号,p.14

( 4 )「GH 健康促進住宅」『くろーばあ』第84号,2017年うみ号,p.23

( 5 )「施設レポート Ohana の家ホーム長 味岡和子さんのインタビュー」2017年 1 月 1 日。愛知県の児童福祉施設ポータルサイト「児童福祉の架け橋」http://jidoufukushi.jp/

( 6 )「Ohana の家」『くろーばあ』第84号,2017年うみ号,p.22

( 7 )岐阜羽島ボランティア協会『年次報告2017』,p.24

( 8 )「Lala の部屋」『くろーばあ』第84号,2017年うみ号,p.23

( 9 )「平成29年度 事業計画」の「基本方針」,『くろーばあ』第83号,2017年さくら号,

p. 4

(10)ファミリーホーム ゴロゴロくん http://www.volavola.org/gorogoro.html 2017年 11月30日閲覧

文献・資料

川合宗次(2015)「罪を犯した障がいのある少年の支援―社会的養護の制度改正を―」『全国 障害者問題研究会第49回全国大会レポート集』p.278

川合宗次(2017)「かみなり村の始まり,はじまり」『くろーばあ』,83,p. 1

中村尚子・大竹智・堺正一・村尾泰弘(2013)「社会的養護と特別支援教育の連携をさぐる

(立正大学社会福祉研究所2009~2013年度プロジェクト研究)」『立正大学社会福祉研究所年 報』15, 1 -72.

(11)

中村尚子(2013)「児童養護施設で暮らす障害のある子どもの生活と教育」『障害者問題研究』

41(1),68-73

中村尚子(2016)「児童養護施設で暮らす障害のある子どもにとっての特別支援教育」『立正 大学社会福祉研究所年報』18, 5 -14

新藤こずえ(2016)「児童養護施設における障害のある子どものライフコースに関する一考 察」『立正大学社会福祉研究所年報』18,15-22

参照

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