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─ 近赤外線分光法による性差の検討

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(1)

乳児の表情認知および対乳児発話表出時における  若年成人の前頭前皮質の活動

近赤外線分光法による性差の検討

田 邊 素 子・庭 野 賀津子

要旨: 乳児の表情視聴時および対乳児発話(IDS)表出時の前頭前皮質における脳活動の 性差について,近赤外線分光法(NIRS)を用いて明らかにすることを目的とした。被験 者は健康な若年成人(大学生24名,内男女各12名)である。実験はブロックデザインと し,刺激呈示は乳児が泣いている場面(cry)と機嫌の良い状態(non-cry)の2条件とした。

被験者が乳児の表情を受動的に視聴しているときと乳児に対してIDSを表出していると きに,NIRS装置によって前頭前皮質の酸素化ヘモグロビン(OxyHb)の変化を計測した。

計側部位は前頭前皮質の19チャンネルとした。視聴時・IDS表出時のいずれについても,

各チャンネルのOxyHb値について被験者の性別×刺激条件の2要因分散分析によって統 計解析を行った。表情視聴時は眼窩皮質領域で女性の方が男性よりcry,non-cry条件と

も有意にOxyHbが高かった。前頭極領域では男女ともcry条件が有意に高いチャンネルと,

女性のみcry条件が有意に高いチャンネルがあった。IDS表出時には性差はみられず,背 外側前頭前野と前頭極領域で,non-cry条件が有意に高かった。視聴時とIDS表出時の比 較では,IDS表出時の方が脳活動の範囲が広く,若年成人においてIDS表出時は表情視聴 時よりも前頭前野が賦活されることが示唆された。本研究から得られる知見は育児ストレ スへの支援や青年期からの親性の涵養に有益な基礎資料と成ることが期待される。

キーワード: 乳児,表情認知,脳活動

1. は じ め に

言語獲得以前の乳児は,泣き声,あるいは顔面の表情や身体の動きなどの,聴覚情報と視覚情 報によって,養育者(多くの場合母親)に対して様々な情報を発信する。養育者による養育がな ければ生存できない乳児にとって,限られた表出手段を用いて情報を伝達することは生命維持に 不可欠である。

母親は乳児の表出する情報を感受性豊かに受け止め,その意味を解釈して,子のニーズに応じ た養育行動を取る1)。これまで,母親の乳児の泣き声の知覚あるいは泣き声によって生じる情動 反応について,質問紙,インタビュー等による主観的・自覚的評価による多くの研究が行われて きた。

乳児の泣きに対する母親の情動反応の縦断的な調査2)によると,出産後

1

カ月時点では乳児の 泣きに対し受容的情動であるの対し,時間の経過とともに反転し,生後

1

年時では非受容的情動 を示すことから,乳児の泣きに対する母親の情動反応は育児ストレスの要因となる可能性が考え

(2)

146 東北福祉大学研究紀要 第39巻

られる。他方では,1歳頃までの乳幼児は言葉による感情表出が難しいため,泣きなどの表情を 通して感情を表す。このような乳児の泣きなどの表情表出に対する情緒応答性を高めることは養 育行動につながり,親性を高める上で重要であると考える。

親以外の人が乳児の泣き声を聞くと不快と感じ,生理的なストレス反応が生じることを示す研 究も報告されている3)。そのため,乳児の泣き声という刺激はヒトの脳に何らかの情動反応を引 き起こす4)ものと考えられており,近年の脳の画像診断の発達により,脳機能を計測して養育行 動の神経基盤を探ろうとする研究5)がおこなわれてきている。

また,乳児の顔という視覚的な乳児刺激に対する母親の反応について

fMRI

を用いて検討した 研究は,Nitschkeら6)が先駆けと言える。ヒトの顔に対する脳反応の研究7)はそれ以前にも行わ れていたが,ヒトの母親が乳児の顔を見たときの脳反応について検討した研究はそれまでなされ ていなかった。母親が自分の子である乳児の顔を見たときに,情動や記憶と関連する脳の部位,

たとえば扁桃体,島,側頭回,前帯状回,海馬,背側前頭前野が賦活するという仮説が立てられ,

実験によってそれらの部位の賦活が実証された8,9)

これまで我々は乳児の

2

種類の表情認知時の若年成人の脳活動を近赤外線分光法(NIRS : near

infrared spectroscopy)にて計測し,乳児の機嫌が良い状態と泣いた状態では差異があることを報

告している10,11)。また実際の育児場面では乳児の表情を観察し,解釈するとともに,乳児の表情 から感情や要求を解釈し,なだめたり,あやしたりする声掛けが必要である。乳児への発話は対 乳 児 発 話(IDS : infant-

directed speech) と 呼 ば れ, 成 人 に 対 す る 発 話(ADS : adult

-

directed speech)に比べ,高いピッチ,誇張されたイントネーション,遅い発話速度などの特徴がある。

IDS

は,母親だけではなく父親でも観察されている12)。母親による

IDS

表出時の,乳児の脳反応 を調べた研究は多くなされているが,成人が

IDS

を表出している時の脳反応について検討した ものは他にはみられない。

過去の児童虐待の報告13)では,実際の虐待者は母親,次いで多いのが父親である点を考慮す ると,青年期から男女双方において,乳児の表情表出への反応を検討することは虐待予防対策と して重要である。

以上から,本研究の目的を,若年成人を対象とし,乳児の

2

種類の表情視聴時の脳活動および,

2

種類の表情に対する

IDS

表出時の脳活動の性差を検証し,表情視聴時と

IDS

表出時の脳活動に どのような傾向があるかを明らかにすることとした。

2. 方     法

2.1 対象者

被験者は健康な大学生

24

名(男性

12

名,女性

12

名,平均年齢

21.3

歳,利き手

:

全員右利き)

で,医療系および福祉系の学部に在籍している。いずれも家庭における妹や弟の育児の分担がな

(3)

いことを確認した。また,これまでの実習・ボランティアにおいて長時間,乳幼児と接した経験 がないものとした。

対象者には研究目的と内容について十分な説明を行い,書面にて研究参加の同意を得た。なお,

本研究は東北福祉大学研究倫理審査委員会により審査され承認を受けている(受付番号

RS1205282)。

2.2 実験手続

実験は,防音設備のある実験室にて実施した。被験者は背もたれのある椅子によりかかった安 楽な姿勢とした。刺激提示用のモニターは

26

インチの液晶モニター(Panasonic社製

TH

-

L26C5)を使用し,被験者の頭部から約 170 cm

前方で,床からの高さが

90 cm

にモニター画面

の下端が配置するよう設置した(図

1)。液晶モニターの背景は灰色の壁面とした。モニターの

音声は,対象者の位置にて騒音計で計側し,50〜60 dBになるように一定量に設定した。実験

1

として乳児の表情視聴時の脳活動を計測し,次に実験

2

として乳児の表情を視聴しながら,画面 上の乳児に対し

IDS

を表出している時の脳活動を計測した。

2.3 脳活動計測

脳活動の計測は,NIRS装置(日立メディコ社製,ETG-

4000)を使用した。本装置は波長の違

2

つの近赤外光(695 nm, 830 nm)を用いて,脳血流動態を

10 msec

単位で計測する。送光プロー ブと受光プローブの距離は

3 cm

に配置されている。計側に使用するプローブホルダーは

3×11

図1. 実験風景

防音設備のある部屋で,被験者は安楽な椅子に寄り掛かった姿勢で実験を行った。

乳児の表情の刺激提示は,動画を使用し26インチの液晶モニターを使用した。

(4)

148 東北福祉大学研究紀要 第39巻

ホルダーを使用し,前頭部から側頭部にかけて,国際

10

-

20

14)に基づき

Fp1

-

Fp2

ラインに最 下端のプローブが配置するよう装着した。実験に際し,計測中の頭部の回旋や前屈位による血流 変化15)等の

NIRS

信号への影響を避けるため,音声や画面の刺激に対し頷くなどの頭部の前屈運 動や,身体の姿勢を変化させることがないように対象者に注意事項として伝えた。発話課題時も 同様に頭部・身体の姿勢を変化させないこと,口の開閉は最小限の大きさで行うよう注意事項と して伝えた。また,実験時の姿勢をビデオカメラで撮影し,実験中および実験後も姿勢変化がな いことを確認した。

NIRS

装置では,脳活動の指標として,酸素化ヘモグロビン濃度変化量(OxyHb/mM・mm),

還元ヘモグロビン濃度変化量(DeoxyHb/mM・mm),総ヘモグロビン濃度変化量(TotalHb/mM・

mm)の 3

指標が計測できる。先行研究16)からこれら

3

つの指標の中でも脳血流の変化と相関が あると言われている酸素化ヘモグロビン濃度変化量を

OxyHb

値(OxyHb/mM・mm)とし本研究 での脳活動の評価指標とした。

実験で計測された

OxyHb

値は,移動平均を

5

秒に設定し波形をスムージング化した。また

cry

条件,

non

-

cry

条件別に

integral

解析を行い実験開始時の安静時課題をベースラインとし,ベー スラインからの

OxyHb

値の変化量について

2

つの刺激条件ごとに

3

回分のデータを加算平均処 理した。解析区間は,OxyHb値の反応が刺激提示時より数秒遅延する17)ことから,刺激課題の 開始直後の

5

秒を除いた

15

秒間とし,その区間の

OxyHb

値を解析対象とした。

脳活動の計側部位は,社会認知と関連するといわれている前頭前皮質部(PFC : pre frontal

cortex)の 19

個のチャンネルとした。本装置におけるチャンネル番号は次の通りの

Ch.24, 25,

26, 27, 28, 29, 34, 35, 36, 38, 39, 40, 45, 46, 47, 48, 49, 50

である(図

2)。また,計測チャンネルの

解剖学的な部位の同定は,壇らのバーチャルレジストレーション18)の結果より,標準脳座標上 で

Brodmann area

19)を参照した。

2.4 刺激課題

乳児の表情は刺激を統制するためにあらかじめ録画した動画を使用した。乳児は健康な生後

7

ヶ月の男児で,母親立会のもと本研究の研究者らによってデジタルビデオカメラ(SONY,

HDR

-

CX180)を使用し撮影した。乳児が泣いている場面,比較的機嫌の良い 2

場面から,20秒

間同じ表情が続いた場面の連続画像を刺激画像として使用した。

脳活動計測の実験デザインは安静・刺激を各

20

秒ずつ,3回繰り返すブロックデザインとし,

刺激条件は乳児が泣いている場面(cry条件),比較的機嫌の良い状態(non-

cry

条件)とした。

刺激提示は開始時の安静時課題を

30

秒とし,その後,刺激課題

20

秒と安静時課題

20

秒を交互 に

6

回行い,安静時課題

20

秒の合計

4

30

秒で終わるように設定した。刺激課題の

cry

条件,

non

-

cry

条件は,各々

3

回をランダムに配置した。

被験者へは,実験

1

の乳児表情視聴時では,刺激課題時は「乳児が何を伝えようとしているか

(5)

を考える」,安静課題時は画面上のクロスの固視点を「何も考えずに注視する」と教示した。実 験

2

IDS

表出時では,刺激課題は「画面上の乳児に対してあやすように話かける」,安静課題 は「画面に表示される

“あいうえお”

の文字を

20

秒間休まずに声に出して読み続ける」と教示し た。

2.5 統計解析

統計解析は,乳児の表情視聴時,IDS表出時ともに,各

19

個のチャンネルの

OxyHb

値につい て,対象者の性別(男性,女性)

×刺激条件(cry, non

-

cry)の 2

要因分散分析を実施した。有意 水準は

5%

未満とし,統計ソフトは

SPSS Statistics17.0(SPSS. Japan. Inc.)を用いた。

3. 結     果

3.1 表情視聴時の脳活動計測

表情視聴時に計測した各チャンネルの

OxyHb

値について

2

要因分散分析の結果,次に述べる

4

個のチャンネルで有意な効果がみられた(図

3)。まず,性別の主効果が前頭眼 窩皮質

(OFC : orbitofrontal cortex) に 相 当 す る

Ch39(F

(1,22)

=5.940, p<.05),Ch50(F

(1,22)

=8.042,

図 2 チャンネル配置図

標準脳上に、解析対象のチャンネルを白色で示す.

番号はチャンネル番号を示す.

図2. チャンネル配置図

標準脳上に,解析対象のチャンネルを白色で示す。

番号はチャンネル番号を示す。

(6)

150 東北福祉大学研究紀要 第39巻

p<.05)の

2

個のチャンネルで有意であった。女子学生の方が男子に比べ,cry,non-

cry

条件と もに有意に

OxyHb

値が高かった。

次に,前頭極(FP : frontopolar area)に相当する

Ch38

では刺激の主効果が有意であり(F(1,22)

=6.600, p<.05),cry

条件の方が

non

-

cry

条件に比べ,男女ともに

OxyHb

値が有意に高かった。

また

FP

に相当する

Ch37

は,性別および刺激の有意な交互作用がみられた(F(1,22)

=5.295,

p<.05)。刺激の単純主効果の検定の結果,女子学生においてのみ

cry

条件の方が

non

-

cry

条件よ り

OxyHb

値が有意に高かった(F(1,22)

=11.68, p<.01)。

3.2 IDS表出時の脳活動計測

IDS

表出時の脳活動は,2要因分散分析の結果,性別の主効果は

19

個全てのチャンネルにお いて有意ではなかった(p<.05)。また刺激の主効果は,背外側前頭前野(DLPFC : dorsolateral

prefrontal cortex) と FP

に 相 当 す る

9

個 の チ ャ ン ネ ル

: Ch.24, 25, 26, 27, 38, 39, 49(p<.05),

28, 35

(p<.01)において有意であり,

non

-

cry

条件の方が,

cry

条件よりも

OxyHb

値が有意に高かっ た(図

4)。

図3 表情視聴時の脳活動

A:2要因分散分析の結果、性別の主効果(Ch.39,50)、刺激の主効果(Ch.38)、女性において刺激の単純効果

主効果(Ch.37)が有意であったチャンネルを白色で標準脳上に表示する. (p<.05)

図中の番号はチャンネル番号を示す.

B:上記の性別および刺激の主効果があった4個のチャンネルのOxy-Hb値のグラフを示す.

縦軸にOxy-Hb値、横軸にチャンネル番号・性別を示す. two-way layout ANOVA , p<.05

男男女女::crcryy>>nnoonn--ccrryy

女性性::ccrryy>>nnoonn--ccrryy 女女性性>>男男性性:: ccrryy,, nnoonn--ccrryy

A B

図3. 表情視聴時の脳活動

A : 2要因分散分析の結果,性別の主効果(Ch.39, 50),刺激の主効果(Ch.38),女

性において刺激の単純効果主効果(Ch.37)が有意であったチャンネルを白色で標 準脳上に表示する(p<.05)。

図中の番号はチャンネル番号を示す。

B : 上記の性別および刺激の主効果があった4個のチャンネルのOxy-Hb値のグラ フを示す。

縦軸にOxy-Hb値,横軸にチャンネル番号・性別を示す。

two-way layout ANOVA , p<.05

(7)

3.3 乳児の表情視聴時とIDS表出時の脳活動の部位について

乳児の表情視聴時では,刺激条件による主効果が有意であったチャンネルは

Ch.38

1

個のみ であった。IDS表出時の刺激条件による主効果が有意であったチャンネルは前頭前皮質部の

9

個 のチャンネル(Ch.24, 25, 26, 27, 38, 39, 49, 28, 35)であった。刺激条件による有意な主効果が,

脳活動上みられたチェンネル数は,IDS表出時の方が乳児の表情視聴時よりも数が多かった。

4. 考     察

4.1 乳児の表情視聴時

乳児の視聴時に,眼窩前頭皮質(OFC : oribitofrontal cortex)に相当する部位では,刺激条件 に関わらず男子学生に比較して女子学生の脳活動が高かった。このことは,乳児の

2

つの表情,

泣いている場面,機嫌の良い場面の双方で,女子学生において特定の部位の脳賦活を示すものと 考える。OFCはヒトにおいては意志決定に関与する部位とされている。4つのカードの山から自 由にカードを引いてお金を儲ける意志決定課題であるアイオワギャンブリング課題では,OFC に機能障害のある患者は,健常者に比べ損失の少ないカードを選択する戦略がとれないといわれ ており20)

OFC

は報酬に関連した意志決定に関与することを示している。報酬に関連する

OFC

は,

Nitschke

5)の報告では母親の愛着とも関連するといわれている。表情視聴時,刺激条件に関わ

図4 IDS表出時の脳活動

A:2要因分散分析の結果、刺激の主効果が有意であった9個のチャンネルを白色で標準脳上に表示する(p<.05). 図中の番号はチャンネル番号を示す.

B:刺激の主効果が有意であった9個のチャンネルのOxy-Hbのグラフを示す.

縦軸にOxy-Hb値、横軸にチャンネル番号・性別を示す.

ここに示す9個のチャンネルでnon-cry条件の方がcry条件よりOxyHb値が有意に高かった.

two-way layout ANOVA , p<.05 -0.3-0.2 -0.10.10.20.30.40.50.60.70

男性 男性 男性 男性 男性 男性 男性 男性 男性

Ch24 Ch25 Ch26 Ch27 Ch28 Ch35 Ch38 Ch39 Ch49

ΔOxyHb(mM/mol)

チャンネル・性別 cry non-cry

A B

図4. IDS表出時の脳活動

A : 2要因分散分析の結果,刺激の主効果が有意であった9個のチャンネルを白色

で標準脳上に表示する(p<.05)。

図中の番号はチャンネル番号を示す。

B : 刺激の主効果が有意であった9個のチャンネルのOxy-Hbのグラフを示す。

縦軸にOxy-Hb値,横軸にチャンネル番号・性別を示す。

ここに示す9個のチャンネルでnon-cry条件の方がcry条件よりOxyHb値が有意 に高かった。

two-way layout ANOVA, p<.05

(8)

152 東北福祉大学研究紀要 第39巻

らず女子学生の脳活動が男子よりも高かったことは,乳児の表情を認知する過程で報酬に関連す る脳活動が女子学生において賦活された可能性が考えられる。

4.2 IDS表出時の脳活動について

IDS

表出時の脳活動について男女による性差はなかった。先行研究において父親の

IDS

が観察 されているが,今回の対象者は,未婚の若年成人で,育児経験もないことから,IDSを表出する 機会がないことが影響している可能性が考えられる。今後,育児経験のある成人,つまり子ども を持つ父親・母親において,IDS表出時の脳活動の性差を比較し検討する必要がある。また,育 児経験のない若年成人において,小児施設での実習など乳幼児と長時間接する経験による影響を 乳児の表情認知課題時の脳活動において検討したところ,実習前後で有意な差がみられた21)こ とから,乳幼児と接する機会の前後において,IDS表出や脳活動への影響を検討することも有意 義であると考える。

次に

IDS

表出時の脳活動において,刺激の主効果が

DLPFC

FP

に相当する

9

個のチャンネ ル(Ch.24, 25, 26, 27, 28, 35, 38, 39, 49)でみられた。cry条件に比べ

non

-

cry

条件で

DLPFC

およ び

FP

領域での脳活動が高かった。DLPFCは発動性や注意,FPは共感に活動する部位である。

乳児が泣いている場面では,泣きに対し「泣かないで」「どうしたの」となだめる言葉を容易に 選択し,話かけることができる。それに対し,乳児の機嫌が良い場面では,言葉の選択が容易で はなく,なぜ乳児の機嫌が良いのか状況を注意深く観察し,表情に適合した言葉を選択しなけれ ばならず,発動性や注意,共感の脳内活動を通し,話しかけをしようとした可能性が考えられる。

4.3 乳児の表情視聴時とIDS表出時の脳活動の傾向

乳児の表情視聴時と

IDS

表出時の刺激条件による脳活動の有意差があった部位を検討すると,

IDS

表出時の方が賦活される部位が多い。今回の対象である若年成人において,乳児への声掛け は,乳児の表情を視聴する時よりも,他者への共感に関連する

FP,注意を担う DLPFC

がより 活動したと推測する。

5. 結     語

本研究では,若年成人において,乳児の表情視聴時,眼窩前頭皮質において脳活動に性差があ る部位の存在を明らかにした。IDS表出時では性差は無かったが,機嫌の良い表情の方が泣きに 比べ前頭前皮質の広い領域が賦活される傾向を明らかにした。乳児の表情の視聴時・IDS表出時 の脳活動を検討することは,子どもをもつ両親の育児ストレス対策,また,若年成人期からの親 性の涵養のための有益な資料となることが期待される。

(9)

謝    辞

本研究は,日本学術振興会科研費(課題番号

24530831 研究代表者 庭野賀津子)の助成を

受け実施した。

引 用 文 献

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図 2 チャンネル配置図 標準脳上に、解析対象のチャンネルを白色で示す. 番号はチャンネル番号を示す.図2. チャンネル配置図 標準脳上に,解析対象のチャンネルを白色で示す。番号はチャンネル番号を示す。

参照

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