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寿命不確実性下の消費者行動 につ いて

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(1)

寿命不確実性下の消費者行動 につ いて

加 藤 睦 洋

本稿の 目的は,寿命 (死亡年齢)の不確実性 に直面 しなが ら生涯消費/貯蓄 計画を立案す る消費者の異時的最適化を,位相図 によ って分析す ることであ る。但 しここに寿命以外 の不確実性の源泉は存在 しないもの とす るo使用す る モデルの特徴の うち重要な ものは :

1.時間は連続変数である。

2.効用 関数 は時間的に加 法分離的である。即 ち,生涯総効用 は効用積分 (Ramsey積分) (の期待値)で表現 され る。

3.遺贈動機を持たない。

等である (本文中で更 に細かな仮定が追加 され る。)

第 Ⅰ節では寿命不確実性が存在 しない場合が分析 され る。第 Ⅱ節では,標題 の分野の先駆的研究であるYaariのモデルが紹介 され る。以上の予備的説 明 の後 に,第 Ⅲ節で筆者 自身の考察が述べ られ る。

I.不確実性が存在 しない場合

寿命不確実性の消費者行動への影響を調べ る前 に,先ず不確実性の全 く存在 しない場合 (deterministiccase)を分析す る。不確 実性の意義を理解す る 上で,何 と言 って もこの場合が基本 となるか らである。言葉で説明す るよ りも 定式化を先 に実行 した方が分 り易いと思われるので,モデルを提示す る。なお 読者の便宜を考えて,記号 とモデルはYaari (1965)とな るべ く同 じものを

109

(2)

110 43 3 ・4号

使 うよう心掛 ける。 (しか し完全に同 じとい う訳 にはいかない。)

・1‑ 1) V (C)‑∫.(i,g [C (i)] dt

(11 2) S・tS(i)

‑ J

exp

I

TtJ(x)dx)(m(I)‑C(I))dT

(1‑ 3) β(0)‑ 0 (114) S (T)‑ 0

記号の意味は :

Ⅴ (C)‑生涯総効用,α‑割引関数,ど (C)‑瞬時的効用関数,C‑消費, S‑資産 (一種数),)I‑利子率,Tn‑労働 (賃金)所得,i‑時間 (i‑ 0が 出 生年齢,Tが死l=年齢。 ここでは Tは確率変数ではない。)

モデルの意味 は, (1‑ 1)が最大化すべき効用積分で制御変数 は消費であ る。以下で我 々は通例 に従 って

(1‑ 5) α(i)‑e‑ β t

とす る。gは連続,増加的 な '>0),強凹 反 〝<0) とす る。勿論C≧O ある。 (1‑ 2)は資産畜積方程式であるO我 々は ここで単純化のために,j 及 びTnを時間を通 じて一定 と仮定す る。す ると (1‑2)

( 1 6) S (i)‑ I.tej(i‑" (mC (Tt))dT

となる。 これを微分方程式の形 に書 き直せば,

(11 7) S(i) ‑y (i)C (i)

但 し

(3)

寿命不確実性下の消費者行動 について

(i‑ 8) y (i)‑Tn+jS(i), (i‑ 9) y (o)‑m

(1110) y (T)‑m

111

とな る。 (文字 の上 の点 は時間に関す る導関数 を表わすt.e.S‑dS/dt) ここにyは所得を表わすO (1‑ 3)又 は (1‑ 9)は初期条件, (1‑ 4) 又 は (1‑10)は富制約 (期末条件)であ り, これ は要す るに素寒貧 (ない し

は無一文又 は裸一貫)で生 まれて素寒貧で死ぬ ことを意味す る。S (0)>0 として も問題 はないが,S (0)が非常 に大 きければ親か らもらった遺産を食 いっぶ して死 ぬ とい う,全然面 白 くない最適解が発生す る可能性が ある。S(T) は遺産であるか ら, (1‑ 4)は子供 に遺産を残 さず に死ぬ ことを意味す る なお (1‑4)

(1 l l ) JoTe, (Tl , (mC (i))dt‑ 0

とも書 ける

ここで一言注意 してお くが,寿命不確実性がない とい うことは, 自分が何時 死ぬかを確実に知 っているとい うことであ り,死ぬ迄 に返済可能な らば負債を 負 って もよい ことを意味 している。それ散 にSは負 にな って もよい。従 って所 得ッも負であって もよい。

最適消費 は次のEuler方程式を満たす。

(1‑12)

但 し

c j‑P C α(C)

(1‑13) α(C)ニーCg〝(C) g′(C)

(4)

112 43 3 ・4

であ り, これは限界効用の弾力性を意味す る。 (αは後 出の相対的危険回避度 と同 じものである。) もしα‑一定な らばg (C)

1‑a1 cla,al,a>0;

log c, a=1 (1‑14) g (C)

となる。す ぐに分 ることであ るが,α‑一定を仮定す ると最適解の図示 に甚だ 都合がよい。従 って我 々は以後α‑一定 を仮定す る す ると最適消費の変化率 は,時間を通 じて一定に保たれ,最適消費は指数的に変化す る.最適消費の時 間的変化率 は (1‑12)で与え られ るか ら

( 1 ‑ 15 )

> 0 ,if > β

0 ,if J= β

< 0 , ifj< B

となる。勿論最適消費の時間径路 は

(1116) C(i)‑C (o)

e x p( ( i i B j t i

となる。 (但 しここで C (o)は未知数である。)

位相図 によって最適消費の時間的推移 を理解す るには, (S‑C)平面 に図 示す るよ りも次のように した方が よい。今迄 はCを制御変数 と見て きたが, こ れに代 って消費性向

(1‑17) x‑

y

を新 たな制御変数 にす る。又 これに伴 い状態変数 をSか らyに改め る。即 ち

(5)

寿命不確実性下の消費者行動 について

我 々は (y‑x)平面に位相図を描 く。

まずyに関す る状態方程式を求める. (1‑ 8)を微分 して

118

(1‑18)

‑j (ll X)

を得 る。次 にCに関す るEuler方程式を ∬に関す る表現 に改める。 (1‑17) か ら

(1‑19) 与 ‑ 与 一y j‑β

α ーj (1‑x) を得 る

jき βに応 じて三種類の位相図が描 けるO以下 に これを図示す る。 (図 1

1, 2,3) なお y<0が許 され ることか ら,x<0も許 され るが,第 3象限の図示 は しない。 (第 2及 び第 4象限には解 は存在 しない。)

X

A1

I I

: ●‑β

lI y‑

.

l 一●̲

1 ,X‑

I

l

II

0

mI

(6)

114 43巻 3 ・4

1‑2 ‑ βの とき

A l

:l

:

I .

l

I l

,̲o

; y‑

I I l ll l

1‑ 3 j<βの とき (Aの値 は同 じ)

(7)

寿命不確実性下 の消費者行動 につ いて 115

1‑ 1では最適径路は太い矢印の曲線で示 されている。 これによれば初期 y (o)‑Tn に於いてA く x(o)< 1か ら出発 し,正の貯蓄を しなが ら消 費性向を次第に高めてゆき,ある年齢に達 した後貯蓄の食いっぶ Lを始め,T 年の寿命を全 うして y (T)‑Tn となってあの世へ旅 出つのがベス トである

ことが分 る 1‑2では最適解が存在 しないことが分 る。図 1‑3では1<

x(o)<Aか ら出発 し借金 して消費を し,ある年齢に達 した後消費を切 り詰 め正の貯蓄を して借金を返済 し,借金を完済 して死ぬのがベス トであることが 分 る。

以上の ことか ら,j>βの ときは後で楽をす る堅実型人生が最適戦略 とな り,ノ<βの ときは逆 に最初 は浪費 にふけ り, しか る後爪に火を ともす生活 を して死ぬ人生が最適戦略 となる。割引率βが大 きいということは将来を過少 評価 し,現在を過大評価す る剃那主義の表われであるか ら, この結果 は当然予 想 されるところである。

以上の位相図を (S‑C)平面 に描 き直す と,図 1‑4,5,6の如 くとな る。 (太い矢印の径路が最適径路である。)

C

1‑4 j>βの とき

(8)

116 43 3 ・4号 C

I / 孟=o

r m

Lー

/

m

O

115 j‑ βのとき

1‑6 ノ<βのとき

(9)

寿命不確実性 下 の消費者行動 につ いて 117

なお本節 の記述 に際 して は,Atkinson(1971),Sheshinski(1974),芋 (1969),Yaari(1964)等を参考に した。

寿命不確実性下の最適消費/貯蓄決定

YaaJriの分析

本節では,不確実な寿命が消費者の動学的最適化に及ぼす影響を本格的に定 式化 した最初の研究であるYaari(1965)を紹介す る この論文 は, この分 野の研究の出発点 となった記念碑的労作である。 Yaariは個人が遺贈動機を 持つ場合 と持たない場合の双方を分析 しているが, ここでは遺贈動機を持たな い場合のみを扱 う。ー更にYaariは生命保険一年金が利用可能な場合 と不可能 な場合の双方 を分析 している。(故 にYaariは四種類のケースを扱 っている。) 従 って本稿で検討す るケースは二種類 ということになる。それでは早速モデル の紹介にとりかかる

1.̲生命保険一年金が利用不可能な場合 (YaariCaseA)

寿命Tを確率変数 とす る.T0T とす る。T‑08ま死産の場合で あり,T‑李 は最大可能な長生 きを した場合である。 T の分布 は密度関数7T によって表現 される。明 らかに

7T(i) 0,

(2‑1)

J .T (i)dt 1

である. 次にE2及び7Ttを次のように定義する。

(2‑ 2) 0(i)

‑ ∫ ; 方 ( I )

dT, 0≦ t

(10)

118 43 3 ・4号

(2‑ 3) 方 t (7)昔 臣 , o≦tて≦ ,t

E?(i) は消費者がt歳時に生存 している確率を表すO図2I 1を見 られたい。

7Tは仮説的死亡確率密度関数である。 (Yaari自身 は7Tについて何 らの特定 化 もしていない。) 7T(i)t歳時に死ぬ確率の密度関数であるot歳迄生存で きた とい うことは,死ぬのは £歳以降 とい うことだか ら,£歳以降に死ぬ確率

E2がt歳時の生存確率 とい うことになる。明 らかに

(214) E2(0)‑ 1, E2(T)‑0, 0≦ E2≦ 1

である。即 ち生 まれたての赤ん坊の生存確率 は1(死産児が生涯最適化計画を 立て ることはあ りえないことに注意。),生物学的限界迄生 き伸びた場合の生存 確率 は 0である。E2の導関数を求めてみ ると

(2‑ 5) (i)J言方(I)dT

77(i)

2‑ 1

(11)

寿命不確実性下 の消費者 行動 につ いて となる。従 って

I 7T(i)

(2‑6) O (i)ユ ニ TT

‑‑7T t (i)

となる

消費計画 cの生涯期待総効用∇ (c)

( 2 7 ) (C ) ;H(i ) J三eBTg (C (7))dTd t

弓. T n ( i ) e ‑ β

tg(C (i)) dt

と書 ける。

我 々は遺贈動機を持 たない個人を考えてい るか ら

(2‑8) prob(

S

(T)≧0)‑1

119

である 生命保険一年金を利用 しない場合には借金が許 されない。 とい うのは 寿命が不確実 とい うことは,何時死ぬか全 く分か らない ことを意味 してお り, 負債を残 して死ぬ ことが許 されない とす るな らば,常 に資産を非負 に保 ってお かねばな らない。それ故 に

(2‑ 9) S(i)≧0

でなければな らない。そ して

(2‑10) S (テ ) ‑ 0

である。

(12)

120

Euler方程式 は

(2‑ll) ÷

43 3 ・4号

j‑p‑7Tt(i) α(C)

=j‑ β +E2 /E2

a(C )

となる。 (Yaariは相対的危険回避度α(C)‑一定を仮定 していない。) この 結果を不確実性が存在 しない場合 (1‑12) と比較 してみ ると, (2‑ll)で 分子 にE2/ E2が付 け加わ っているのが相違であることが分 る。

(2‑12) %<0

と考 えるのが理 にかな っているであろ うか ら,寿命不確実性 は割引率を大 き く す るの と同等の効果を持つ ことが分 る。生命保険一年金が利用で きない場合, 寿命不確実性 は単 に割引率を大 き くす るだけの効果 しか持たない と考え るのは 誤 りであ る。なぜな ら,不確実性がない ときには死ぬ迄 に返済可能な範囲内で 債務 を負 うことが許 され るが,何時死ぬか分 らない ときには一瞬た りとも借金 で きないか らであ る。

2.生命保険一年金が利用可能 な場合 (Yaari CaseC)

この場 合 消 費者 が保 有 可 能 な資産 は, 生 命 保 険 一年 金 証 券 (actuarial notes)と通常債券 (regularnotes)の二種類 となる。生命保険一年金証券

は,当の消費者 に限 り, しか もその消費者が生存 中のみ有効で,死亡後 は自動 的に無効 となる。 これに対 して通常債券 は他人 (子孫であろ うがなかろ うが) に とって も有効であ る。生命保険一年金証券の利子率をrとお き,通常膚券 ( の保有量 はSで表わ され る)の利子率 をjとお く 勿論 r>jで なけれ ばお話 にな らない。生命保険一年金証券が保険統計数理的に公正であれば

(13)

寿命不確実性下の消費者行動 について

(2‑13) T‑(i)i (i) +7T t (i)

j(tト 豊

が成 り立っか ら,消費者が存命中に限 り

(2‑14) r(i)>j(i),0≦t≦T

121

となって寿命不確実性 に直面す る消費者 は,通常債券を保有す るよ りも生命保 険一年金証券を保有 した方が有利 となる。即ち この場合消費者 は,すべての資 産及び負債を生命保険一年金証券によって保有 し,通常債券を保有す ることは ない。 (つまり生命保険一年金証券 と通常債券の間のポー トフォリオ選択 は, cornersolutionにな る。) (2‑13)の意味 は次の如 くであ る。今 1円のお 金を一年間生命保険一年金証券で運用 した ときの収益がr円である。但 し一年 間経過後実際にr円を入手す ることができるのは 1年後 に生存 していた場合に 限 られ る。その期待収益 はr+ E2/ E2であ り, これは通常債券の市場利子率j と等 しくなければな らないはずである。それ故 に (2‑13)が成 り立っ。た と えjが一定で も,r(i)は一般 には一定 にな らないことに注意O

予算制約式 は

(2115)

I

:(expl

I

ir(x,dx]) (m‑C(i" dt‑0

と書 ける。 この意味す るところは,貯蓄を生命保険一年金証券で運用 したとき 遺産がゼ ロとい うことである。

最大化すべ き目的関数 は,生命保険一年金が利用可能であるか否かには関係 ない。

Euler方程式 は

(14)

122

(2‑16)

43 3 ・4 L ー r(i)

+E?/E2 α(C)

fi α(C)

となる。 これは寿命不確実性のない場合 と同 じである。 (最適解 は勿論同 じに はな らない。)

(2‑ 6)を解いて

(2 17) Q ( i ) エ ロ (o)exp lJ 三 方x(x)dx ]

exp [ x(x)dx]

を得 る。す ると(2‑15),r (x)‑j+ 7Tx(x)を使 って,通常債券のクー ムでは

(2 18 ) :o (i) e‑,'t(m‑C (i))d t 0

となる。 この意味は,生涯期待労働所得の (通常利子率で割引かれた)現在価 値 は生涯期待消費のそれに等 しいとい うことである。更に これは通常債券の

タームで

(2 19) ;(T)S (T)e‑jTdT‑0

とも書 ける。 これは期待遺産の現在価値はゼロということである。

以上が遺贈動機を持たない場合のYaariの定式化 と分析である。

(15)

寿命不確実性下 の消費者行動 につ いて 123

Ⅲ.相 対 的危 険 回避 度が 一 定 で, 死亡 確 率が 指 数 分 布 に従 う場 合 の 最適消妻/貯蓄決定

前節で紹介 したYaariの分析 はま ことにお見事 と言 うはか はないが, しか し唯一画龍点晴を欠 くのは,彼が割 引関数,効用関数,死亡確率分布等を何 ら 特定化 していないため,最適解の挙動の具体的イメージが必ず しも明快でない

ことである。そ こで本節ではこれ らの特定化を行い,位相図を措 いて読者 の視 覚 に訴 えたい。

まず割引関数であるが, これは既述の通 りa (i)‑eβ tとお く。

次 に効用関数 は相対的危険回避度一定の関数形を採用す る。即 ち

(3‑ 1) g (C)‑ 7i i C 1‑a,0<a<1

であ る 0<a<1を仮定 したの は,a (0)‑ ‑‑を排除す るためである。

最後 に死亡確率分布 につ いて。 これ について は今迄 にい くらかの言及 が あ 。Davies(1981)によれば逆 ロジステ ィ ック曲線(inverselogisticcurve) 生存確率曲線 に良 く当てはまるとい う。(p.573Fig.2に描かれている1971 年のカナダ人男性の生存確率の グラフ参照。 これによれば,50歳位迄 は生存確 率 は非常 に高 いが, これを過 ぎると90歳位迄 は急低下をす ることが分 る。)疏 計的に計測 して彼 は次の結果を得 た。

E2(i) ‑ (1+1.00031)exp (0・002114t)

1+1.00031 exp (0・14651t) R 2‑0.999

Hurd(1989)は二つの分布例を挙 げている。一つ は一様分布でその密度関 数 は

(16)

124

43 3 ・4

(3‑2) ,T(i)=与 ,0≦t≦

T

で与え られ る。勿論 これは死亡確率が時間を通 じて一定 ということを意味 して いる。 これに対応す る生存確率は

(3 3 ) Q (i) ‑ ユ ニ⊥

であ り,従 って

(3‑ 4) 豆 = 1 f? Ii

を得 る。 もう一つは人口学者御愛用の分布で

(3‑ 5) 7T (i)‑ 60exp (616eOt+ot),

(3‑ 6) E3 (i)‑e6exp(‑6eOt),

(3‑ 7) 旦 ニ ー 6 0eO t

6<Z

である。

Fwu‑Ran° Chang (1991)は最近の論文で指数分布を使 った。即ち

(3‑ 8) 7T (i)‑Ae‑lt,

( 3 9) E3(i)‑e‑At,

(3‑10)# ース

とおいた。 (3‑ 8)の如 き分布 は しば しば観察 される (例 :放射性元素の崩

(17)

寿命不確実性下 の消費者行動 について 125

壊)が,人間の死亡確率分布 にうま く当てはまるというわけではない。 しか し なが ら (3‑10)の性質は非常に便利なので,我々は以下で指数分布を仮定す る。この分布では‑ +‑,即 ち最大可能な年齢が無限大 となる。(3‑ 8) に於て

(3‑ll) Jomw(i)dt‑ 1

であるか ら, 久が大 きくなることは,ある年齢より若い時の死亡の危険が増大 し,それより老いた時の死亡の危険が減少す ることを意味す る。他方 Aが大 き くなることは,生存確率曲線を下にシフ トさせるか ら,平均寿命は縮む。

さていよいよ図解分析にとりかかろう。

1.生命保険‑年金が利用不可能な場合

この場合資産 は通常債券の形で保有 され る。無論借金 はで きない。Euler 方程式 は

(3‑12) j β‑A

C α

となる ここで我 々はー β一入>0の場合のみを考察す る。明 らかに寿命不 確実性 は最適消費の成長率を下げる

最適消費は

(3‑13) 妄 I j ‑β‑α A ‑j(i‑ x)

(3 14) 号 ‑j ( l l )

を満たす。 ここにx‑C/yであり,初期条件は

(18)

126 43 3 ・4

(3115) y (o) ‑Tn, (S (0)‑ 0)

終端点条件 は

(3116) liTn y (T ) ‑Tn, (lim S (T )‑ 0)

T一co T十〇

となる。

位相図を描いてみると図3‑1の如 くとなる。最適径路 は図中の太 い矢印で 示 されている径路であ り, これは無限視野の場合の最適径路その ものである。

太 い矢印の径路の上の方 に描かれている湾曲 した反転径路 は,寿命が有限の場 合の最適径路である。 (右側の ものほど寿命が長い。)最適解が このよ うにな るのは, この場合消費者が生命保険一年金 システムに加入 していない ことの結 果である。なぜか というと,生命保険一年金を利用 しない以上,消費者 は仮に 最大限の長生 きを したとして も困 らないように計画を立てなければな らない。

この場合 テ ‑‑であるか ら,消費者 は無限視野の計画を立てなければな らな い。 もしこの消費者が無限の長生 きをす ることがで きず有限期間で死亡 したな

X

(19)

寿命不確 実性 下 の消費者行動 につ いて 127

らば,結果的には無駄な貯蓄を した ことになる 実はこれが寿命不確実性 に直 面 しなが ら,生命保険‑年金制度 に加入 しないことの不利益である。なお図中 の太い矢印の径路 は, (3‑16)を満た していないのではないか とい う疑問が 湧 く しか しこれは次のように考えれば矛盾ではない と (筆者 は)思 う 寿命 が有限であれば,図中の反転径路が最適解 にな り,y (o)‑m か ら出発 しy (T)‑m,で死亡す る。寿命 Tが長 くなればなるほど,出生時の消費性 向x(o) は小 さ くな り死亡時のそれx(T)は大 き くな ることが図か ら読み とれ る。そ

して T‑‑になると出生時の消費性向は

(3117) x (o)‑ 1 ーβ一 入

α

にまで低下 し,無限の時間をか けて無限の彼方か ら反転 しIim T X (T)

‑‑とな ってy‑m (遺産ゼ ロ)に回帰 して くると解釈で きる.

2.生命保険‑年金が利用可能な場合

この場合資産 は生命保険一年金証券の形で保有 され る。借 り入れが譜め られ る点が これまで と違 う。Euler方程式 は

(3‑18) ('・̲j /','

C α

とな りAを含 まない。それ故最適消費の成長率 は,不確実性がない場合 と全 く 同 じである。 ここで我 々はj>βを仮定す る。

さて位相図による分析 にとりかかろ う 予算制約式 は

(3‑19) y (i)‑Tn+r(i)Q(i)

となる。 ここに 馴 ま生命保険‑年金証券の保有量であ り,rはその利子率であ ところでr‑j‑E2/ E2かつ E3/E2‑‑ スであるか ら

(20)

128 43 3 ・4

(3‑20) y‑m+(j+A)Q

となる。依 って

(3‑21) y‑(j+A)Q

‑ (j+A)b'‑C)

であるか ら,

y ‑ (j+A)(1‑ x) (3‑22)

を得 る。次に x‑C/yの挙動 は

(3‑23) 云旦 ‑(]・ 吊 (1‑x)

で表わされる。か くて位相図は図 3‑ 2の如 くとなる。

X

(21)

寿命不確実性下 の消費者行動 につ いて ここで

(3‑24) x*‑ll

である。初期条件 は

j‑β (I+A)a

(3125) y (0)‑m , (Q (0)‑0)

129

である 最後 に最適解が満たすべ き制約条件 は (2‑18)である。 これを計算 してみると

(3‑26) 7

㌃ ‑ l o n e

‑ (j・" i c(i) dt

となる ここで (3‑18)か ら

(3‑27) C (i)‑ C (0)

e x p ( j 票t )

であるか ら

・3‑28)

‑C

(o)

I o

m expl(I+i ‑(j・ 項 ]dt

となる。m/ (∫+A)<‑であるか ら,

j ‑ β

α

であることに注意 して

(j + A ) <0

(22)

130 43巻 3 ・4号

(3129) C (0)‑ ‑ Tn ((j‑β)‑a(j十人)i a(j+ A)

を得 る. これを使 ってxの初期値を求めると,

(3‑30) ∬ (♂)

」HJ

x*

α(∫+A)

となる。故 に図 3‑2の太 い矢印で描いた水平 な径路が この場合の最適径路で あることが分 る。太線以外の径路では寿命が有限に押え られるので不適である ことは了解で きるが (7‑‑を想起すべ し),太線で示 され る最適径路では死 亡すれば結果的に遺産 を残す ことにな るのが一見奇妙 に思われ るか もしれな い。実際 (2‑18) (3‑25)を満たす計画は貯蓄性向ゼ ロを要求す るかの 如 く見え る。(貯蓄性向がゼ ロな ら資産 は蓄積 されず,利子所得 はゼ ロとな る。)

しか しなが らこのような直観 は正 しくない。最適消費 は (3‑18)を満たす以 (j‑ β)/a>0の率で不断に拡大す る。労働所得mが一定 なのに無期限 に このような ことが可能 となるのは,利子所得が不断に増加す る即ち資産が不 断に蓄積 されるか らにはかな らない。実際最適貯蓄性向は

j‑P

a(j+ A) >0

であ って これはゼ ロではない。

参考 までに (y ‑ C)平面 に位相図を措 いてお く. (3‑ 3)これを見 る

(23)

寿命不確実性下 の消費者行動 につ いて

C

131

C(♂)‑mか ら出発す ると限 りな く負債が累積 してい く破 目に陥 ることが 明 らかである

(24)

132 43 3 ・4

参 考 文 献

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HURD,MICHAEL D.(1989).Mortalityriskandbequests.Econometrica,

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参照

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