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べートーヴェンのピアノソナタの分析と解釈

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べートーヴェンのピアノソナタの分析と解釈

末松 茂敏 Shigetoshi Suematsu

はじめに

ベートーヴェンのピアノソナタから«悲愴»«月光»«テンペスト»«ヴァルトシュタイン»«熱情»

を取り上げて、和声の進行でどんな特徴があるか。調性構造はどうなっているか。各楽章間の 共通の動機は使われているか。繰り返される同じ音が変化したとき、どのような表現をするか。

第1主題、第2主題の特徴は何か。保続音が使われることによってどのような効果があるか。

等を調べ演奏する時の助けとなることを見つけていきたい。なお、各曲で小節番号を書いてあ るので楽譜を参照して頂きたい。ヘンレ版を使用している。

1. ベートーヴェン ピアノソナタ第8番 ハ短調 作品13«悲愴»

多くのベートーヴェンのピアノソナタのタイトルはベートーヴェンが付けた物ではないが、

«悲愴»というタイトルはベートーヴェンが付けた数少ないソナタの内の1つである。第1楽章

冒頭のGraveの1小節目でC-D-Esのように3度上行してEs-Dと2度下行する音形が2、3、

5、6、7小節目でも繰り返される。1小節から3小節は32分音符が一番細かい音符なので32 分音符を心の中で数えながら弾くとリズムがきちんと取れる。c moll という調性は交響曲第5 «運命»と同じ調性である。1小節目は右手がC-D-Esと上行するのに対し左手はEs-D-Cと下 行する反行形になっている。4小節の3拍目でEs durになるが5小節の4拍目で遮るように、

c moll に戻る。5、6、7小節の反復進行だが3回目の7小節から3小節の長いフレーズにな

って、それまでの5、6小節の1小節単位のフレーズと対比がある。5小節からのバスのEs-D- C、6小節のH-B-A-G、7小節のFis-F-D、8小節のH-As-Gを聴くと良いと思う。11小節から 第1主題で、11小節から98小節までフォルテがない。11小節から14小節まで右手は上行形だ

が、cresc.が書かれていないので大きくならないようにし、又11小節から15小節までバスはC

の音が保続される。35小節から、39小節から、43小節からと3回のゼクエンツだが3回のゼク エンツは良く出て来る。

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51小節から第2主題だが、ここはes mollである。c mollで始まったので普通は平行調のEs durに行く事が多いが、ここはes mollで第2主題が出る。この第2主題のB-Es-F-Gesの音型は 第3楽章のG-C-D-Esと同じ音程関係で、ソナタの統一感がある。53小節の右手はB-Gesと6 度だが、56小節でB-Asと7度に広がるので、その違いを弾く時に感じると良い。67小節で第

2主題がDes durになるが長調になる事で、ほっとした感じである。121小節の第1主題は、第

1主題で初めてフォルテが出てくる。11小節目はピアノだった。132小節の一番括弧はg moll の属七からⅠ度のG-B-Dに行かないでc mollの属七のG-F-H-Dへ行くので解決するのを否定 する感じで弾く。

133小節から展開部だが1小節目と調性が違いg moll143小節からDの音がバスで148 節まで保続される。167小節から3拍目と1拍目の頭の音が170小節までCis-D-C-H-Cis-D-C C の辺りを中心に動くが 1799 年当時の音楽ファンが驚いてこれでも本当に音楽と呼べるもの かどうか質問したそうだ。181小節から186小節まで2小節ごとの音型が3回繰り返される。

3回繰り返すのは、ベートーヴェンがよく使う方法である。

195小節から再現部で、207小節の3拍目からDes durになるが、この調は67小節で第2主 題で出てきた調、211小節からのes moll51小節でも使われた。また215小節からのf moll 221小節からの第2主題でも使われる調である。第2主題が237小節で主調のc mollで繰り返 され調的安定を取り戻す。293小節と305小節の減七の和音を特別に緊張感を持って弾く。295 小節で再びGrave で同じリズムが3回繰り返される。299 小節から第1主題が出るが cresc. 303小節に書かれているので、そこまでは小さく弾く。309小節の和音の音は冒頭の和音と同じ 音が使われる。

第2楽章の冒頭の2小節は私が学生の時、和声の授業で先生が最高の配置とおっしゃった事 が心に残っている。1小節の2拍目の属七の第3転回形の緊張感と2小節の2拍目の属七の第 一転回形のほっとした所の違いを感じる。1小節目から8小節目までを三重奏、9小節目から 16小節までを四重奏と考えても良いと思う。14小節の2拍目から15小節の1拍目にかけてⅡ 調のbmollの和声が使われたり、20小節でEs durに転調した時、2拍目でEs durのⅥ調のc mollの和声を使っているので表情の多彩な変化がある。1718小節でCの音が続くが和声によ って表情を変えると良い。37小節でAs durの同主調のas mollになり4243小節で盛り上がり E durになる。as moll から見ると E durはⅥ調と言える。Ⅵ度の和音Fes-As-Cesの異名同音E-

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Gis-H E dur の主和音になる。

第3楽章の冒頭のG-C-D-Esは第1楽章の237小節でも使われた音である。又、第1楽章の 1小節目で C-D-Es の音が使われるがこれらの音は3楽章の冒頭でも使われ、第1楽章の2小

節目、F-G-Asの音も第3楽章の4小節目から5小節目にかけて、8小節目から9小節目にも使

われる共通音である。このソナタは統一感がある。1、2小節でト音記号の音で Es-D-C、3、

4小節目でヘ音記号にH-As-Gと順次進行の3音がある。5、6小節は5度の下行でAS-DG- Cが旋律として出てくる。それに対して右手の3738小節では Es-As、左手はBからEsへ、

44小節の4拍目から45小節の1拍目へFからBへ4度で上行する。43小節でB-Fと5度上行 するが、第2楽章でも17小節の右手の最後の音から18小節でFからCと上行する他、38小節 G-Desでも5度上行する。

第3楽章の46小節の3拍目のフランスの6の和音はバスの Cesを強調して和音の響きをよ く感じたい。5455小節のバスの2分音符Assfがついているが56小節の2分音符のAs はついていない。前者はEs durの属七であるが56小節はc mollの属九の根音省略の第4転回 形になるので、不安定な感情からかsfが無いのかもしれない。64小節の左手を見るとGの音 が保続される。79小節から右手は4度上行、左手は5度下行が出てくるが第3楽章の冒頭の5、

6小節のAs-DG-Cの5度下行と関連があり、また3738小節の右手の2拍目終わりから3 拍目のEs-As37小節の左手の4拍目終わりのBから次の38小節の頭の音Esへの4度上行と 関連がある。

78小節からはオーケストラの音をイメージする。78小節からは管楽器、98小節からは弦楽 器も加わっているように感じる。107小節から120小節まで属音のGの保続音が続き、音域が 高くなり緊張感が高まり、120小節から主題が戻る。134小節でC durになる所は明るく光が射 すようである。159小節でc mollへ、160小節からEs dur、そして164小節の4拍目でc moll 戻る。198小節のナポリの6の和音はドラマチックで、高音のFから下行し201小節のDes 到達する。199小節で第2楽章の主調のAs durに行くが207小節でc mollに戻り、フォルティ ッシモで締めくくられる。

2.ベートーヴェン ピアノソナタ第14 嬰ハ短調 作品272«月光»

第1楽章はナポリの6の和声が多い。3小節目の3拍目のFis-A-D21小節のH-G-D50小節

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Fis-D-Aで使われる。その事で陰りや不安を感じる。28小節から属音のGisの保続音が続き、

3031小節はⅠ度、32小節は属9の根音省略、33小節はⅠ度、34小節はⅤ調のgis mollの属 9の根音省略、35小節は属9の根音省略、38小節は属9の根音省略で4拍目がⅣ、39小節は 3拍目がナポリのⅡ、4拍目がⅣ、40小節は属9の根音省略と、Gisの上にのる和声は様々に 変化していく。48 小節でcresc.をして音もH-His-Cisと上がっていくにもかかわらず、49小節 Disがピアノになるのが印象に残る。7小節目の3拍目から9小節目まで、44小節目の3拍 目から48小節の2拍目まで、56小節でE Durになるが一瞬明るくなりほっとする。第1楽章 の最後はCisで終わるが第2楽章の開始和音は一番上の音がDesなので高さは1オクターブ違 うが異名同音である。Attacca subito il seguenteと書かれていて、すぐに次に続く様に指示してい るが、CisDesの音のつながりを感じることが大切だと思う。

第2楽章は明るくアウフタクトで始まる。全体に3拍目からフレーズが始まることが多い。

掛留音も多く使われ8小節から9小節のDes、9小節から10小節のB10小節から11小節の Desがそうである。TrioではAsの音が37小節から44小節まで続く。45小節から48小節まで 属七が使われバスがD-Des-C-Cesと半音ずつ下がる。

第3楽章は16分音符が続くが弾き方として次の拍の1音目の16分音符に向かって弾くと良 いと思う。Gis-Cis-EGisへ、Cis-E-GisCisへと。感情の激しい楽章である。8小節目でド イツの6が出てくるのでバスのAが次のGisに向かう気持ちが強い。9小節目から14小節ま で属音のGisの保続音が続く。28小節でgis mollのⅤ度が次の29小節でⅠ度に行かないでcis mollの属七へ回避し解決していない。33小節から35小節までgis mollのナポリの6の和音の Cis E Aが続く。36小節はgis mollの属七が3、4拍目で使われ、次の37小節の1拍目でⅥ度 へ行きⅠ度へ解決するのを避けているので意外な気持ちで弾く。4142小節は2拍ごとにフォ ルテが書いてある。41小節目の1拍目のgis mollのナポリの第1転回形から3拍目でⅤ調のdis mollの属9の根音省略形の第1転回形、42小節の1拍目のⅠ度の第2転回形、3拍目の属七の 進行を良く味わう。50小節の1拍目の裏からの属9のフォルテの和音が強烈に印象に残る。提

示部の最後の57小節から63小節まではgis mollで主音のgisの上にⅠ度と属七が交互に出る。

65小節からの2番括弧はfis mollのⅤ度から始まり67小節で属七の第3転回形、69小節で

Ⅰ度の第1転回形、70小節で属七の第1転回形、71小節でⅠ度へ収まる。87小節からcis moll の属音のGisの保続音が99小節まで続く。

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123小節のcis mollのⅤ度の第1転回形から124小節の1拍目はⅣ調のfis mollの属七の第3 転回形に行くので、普通だとⅠ度に行くので、解決するのを打ち消すように弾く。126 小節の 3拍目、128小節から130小節まで、132小節の2拍目から134小節までナポリの6のFis- A - Dの和音が使われる。151小節から157小節まで主音のCisの保続音が使われ安定感がある。

163小節から166小節からの減七は否定的で緊張感がある。168小節から倚音が使われCis169 小節のDis170小節のEは倚音なのでたっぷりと弾く。175小節のcis mollのⅠ度→3拍目で

Ⅳ調のfis mollの属七の第3転回形→176小節のⅣ度の第1転回形→3拍目でⅣ調のfis moll

Ⅴ度の第1転回形の進行では、バスのCisHAEisの流れを大切に。その後、179小節でナ ポリの6から181小節でⅤ調であるgis mollの属9の根音省略形の第1転回形になるが、とて も緊張感のある和音だ。187小節は即興的で、今まで規制があった曲だが打ち破る。190小節か 195小節まで主音のCisの保続音上にⅠ度と属七が繰り返され、196小節から最後までⅠ度 の和声をアルペッジョと和音で激しく閉めくくられる。

3.ベートーヴェン ピアノソナタ第17 ニ短調 作品31-2«テンペスト»

第1楽章は倚音が多く使われる。3小節目の1、2、3拍目の頭のGFEの音や5小節目 CBAの音等である。1小節目でd mollで始まり7小節でF dur、9小節の4拍目で g moll に、そして10小節の G-B-Esの和音でd mollへ転調し、この和音はナポリの6の和音である。

第1主題は1小節から6小節でLargoAllegroAdagioとテンポの変化がありLargoではアル ペッジョ、Allegroでは隣り合った2度の8分音符が連続して使われる。21小節からの旋律を第 1主題と見ることも出来ると思う。ここで使われるD-F-A-Dは、1、2小節目のA-Cis-E-A 同じ動機が使われる。21小節からバスが D25小節でE29小節でF31小節でGis33 節でA35小節でH37小節でC38小節でDis41小節でEと上がっていく。555759 小節で使われるD-F-Bのナポリの6の和音が印象的。

99小節から108小節まで右手でCisの音が使われる。その後109小節でD113小節でE 117小節でFと上がっていく。99小節からのAllegroでは3連符が多用される。99小節の左手 Fisで始まり103小節でGis107小節でA109小節でH113小節でC115小節でCis 117小節でDと上行していく。和声は99小節からfis mollのⅠ度、103小節から属七の第2転 回形、107小節からⅠ度の第1転回形、109小節からⅣ度、111小節でナポリの6、C durで考え

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るとⅤ度の第1転回形、113小節でC durのⅠ度から115小節でd mollのⅤ度の第1転回形、

117小節でⅠ度と進行する。

143小節から148小節のLargoはレチタティーヴォ。161小節はfis mollのⅠ度で163小節は

Ⅵ度の第1転回形であり、又g mollのⅤ度の第1転回形でもあり、この和声でg mollにスムー ズに転調していく。189小節から192小節で右手の上の音で Dの保続音が使われる。205206 209210213214小節でバスにd mollの属音の Aの保続音が使われ217小節でⅠ度へと収 まる。

第2楽章は管弦楽のイメージを持って弾くと良いと思う。1小節目は弦楽器、2小節目はフ ルートが使われているように感じる。11小節目でGesが使われることによりB durの属9の準 固有和音である。14小節目の1拍目の属七からⅠ度に解決しないで、3拍目でⅥ調のg moll 属9の根音省略形の第1転回形の Fis-C-Es-Aと回避する。24小節の2つ目のGis-C-Eの和音で GisGの音に対する上方変位である。同様に26小節の右手の2つ目のGisの音もGに対す る上方変位。38小節からFの保続音上に394041小節で減七の和音が使われる。45小節で EsFGesと進むがこのGesの音も準固有和音で印象的だ。60小節、62小節の3拍目で使わ れるFis-B-Dの増3和音もよく感じて弾く。65小節から71小節までB durの属音のFの保続音

上に68小節のG-B-Des-Eの準固有和音など様々な和音で進行していく。80小節から主音のB

の音の保続音で安定する。91小節から93小節にかけて音域をすごく変えている。

第3楽章は執拗に出だしの音形が繰り返される。«エリーゼのために»も同様である。1小節目 から左手の符点8分音符と8分音符がタイで結ばれフィンガーペダルになっている。30小節か ら左手にメロディが出る。43小節から48小節までFEの執拗な繰り返し。87小節から90 小節にかけてAGisが強調される。959697小節のEs-A-B-CA-B-Cは出だしのA-F-E-

DF-E-Dの音の反行形。148小節のフォルティッシモは叫びのように感じる。158小節から

168小節までBの保続音がある。169小節で右手が2声になる。193小節から198小節で属9と

Ⅰ度の和声が3回繰り返される。233小節でB durのⅡ度に行くが、225小節との違いを感じて 弾く。246254262小節の属7の和声はしっかり弾く。270小節でイタリアの6のB-D-Gis 音が使われるのでバスのBからAの音の進行を良く聴く事。271小節から276小節までBA の音が、同様に279小節から284小節も繰り返される。315小節から318小節までDCis 音が強調される。350小節から358小節まで右手の内声にメロディがあり右手が二声になる。

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373小節のスフォルツァートのAの音、また377小節のスフォルツァートのDの音と、381 節でフォルティッシモのFの音を印象的に弾く事。397から399小節の最後は忽然と終わる。

4.ベートーヴェン ピアノソナタ第21 ハ長調 作品53«ヴァルトシュタイン»

第1楽章の第1主題の2小節目から3小節目にかけて E-Fis-G と上行するが、それに対して 第2主題の35小節目からの音はGis-Fis-E-Dis-Cisと下行しているので反行している。1小節目 のバスはCから始まり3小節目でH、5小節目でB、7小節目でA、8小節目でAs、9小節で Gと半音ずつ下がる。1小節目をG durと考えるとC-G-C-Eの和音はⅣ度で、2小節目の4拍 目で属7の第3転回形、3小節目の1拍目でⅠ度の第1転回形になり、5小節目からFdurと考 えると5小節目はⅣ度、6小節目の4拍目で属7の第3転回形、7小節目の1拍目でⅠ度の第 1転回形となり同じ和声が繰り返される事になる。2小節目の3、4拍目の E-Fis-G の3音の 上行と3小節目のH-A-Gの下行で対比している。14小節からは第1主題の確保で、22小節で e mollで考えるとC-E-Aisの音はイタリアの6の和声なので、バスのCから次の小節の23小節 Hの動きを良く聴く事が大切である。23小節から30小節までe mollの属音のHの音の上に

Ⅴ度、属七とⅠ度の和声が交互に出てくる。35小節からE durで第2主題が出る。第1主題は

C durなので長3度上の調に進むのは珍しい。ヘンレ版を見ると35小節から37小節のト音記

号で一番上の声部だけ棒が上向きなので、上の声部を良く響かせることが大切だと思う。43 節から第2主題の変奏で、44小節と48小節の1拍目にE durのⅥ調のcis mollの属七のGis- His-Dis-Fisが使われ、普通は cis mollのⅠ度に進行するが44小節と48小節の3拍目でE dur

Ⅳ度のA-Cis-Eへ回避するので意外な感じで弾く。5253小節でシンコペーションで生き生き

となり54小節から59小節で、Ⅰ度と属7が交互に繰り返される。62小節のバスのA64小節 Ais66小節のHのバスの進行は大切なので良く聴くこと。Hのバスの音は71小節まで続 く。70小節でCが使われ一瞬e mollの和声が使われるが72小節でCisになるのでその変化を 感じる事が大切である。C durのカデンツがようやく84小節から1番括弧の86小節で出てく る。ここまではC durのⅠ度で始まってもその後C durのⅠ度へ落ち着くことはなかった。

展開部は90小節から始まる。91小節のバスのFの音は本当は半音下のEの音に進むはずだ (2小節のバスのCは3小節はHに進んでいる)当時の鍵盤の音域として無かった。90小節で F dur91小節でC dur93小節でc moll94小節でg moll99小節でc moll103小節の3拍

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目でf moll105小節でCes dur106小節でb moll107小節でAs dur108小節でGes dur 109小節でf mollと、めまぐるしく転調していく。111小節の3連符の拍の頭のE-Es-D-Des ら次の小節のCの音の進行は大切で、4拍目はイタリアの6の和声が使われるのでDesの音を 良く聴くと良いと思う。112小節からの新しいフレーズの特徴は114115小節、118119小節、

122123小節、124小節から140小節でタイを伴った指を押さえたフィンガーペダルが使われ る。その事でフィンガーペダルをしている所の和声がはっきり浮かび上がってくる。142 小節 からG-C-H-A16分音符が152小節まで出てくる。146小節のH-C-Dの音は、3小節のH-A- Gと同じリズムであり、146小節のへ音記号のH-A-Gに対する反進行で、この反進行は155 節まで続く。この順次進行で上行する3つの音は、ベートーヴェンの交響曲第4番の第1楽章 でも同じパッセージが使われるが作曲した年が近い。152小節でG-C-H-AG-Cis-H-Aに変化

し、153小節でG-D-H-Aに変わるので変化する音をよく聴く事が大切。

156小節から再現部。168小節で変化があり1213小節はC-G-Es-C-Gだが、ここはC-G-Es- C-Asと最後の音が変わる。196小節からの第2主題はA durで始まり、200小節ではA durでな C durのⅥ度のA-C-Eの和音へと進む。ここに対応する提示部の第2主題の35小節はE dur で始まり39小節からもE durのままである。半音の違いが印象深いのは231小節のAs233 小節のA236小節のAs240小節のA245小節の2拍目のバスのA247小節の2拍目の As248小節はf mollのⅠ度の第2転回形→属七→249小節でⅥ度と偽終止になり、249小節か ら長いコーダが始まる。255小節からスフォルツァートを伴って2拍ごとに緊張感が高まり257

小節でC durのⅤ調のG durの属9の根音省略の準固有和音の第2転回形になり、255小節から

259小節のフレーズの山になる。261小節から268小節はヘ音記号の方に第1主題が出る。272 小節からスフォルツァートを伴った2拍ごとの反復進行が繰り返され275小節はE-Gis-Cの増 三和音の音が印象深い。275小節のGisGと次の276小節のAの経過音。280281小節はG- E-Dis-EG-C-H-Cの音が左手と右手で入れ換えられる。290小節はG-A-Hと長調、291292 小節はG-As-Hと短調で、293294小節で再びG-A-Hと長調になるのでA-As-Aの音の変化を よく味わうことが大切。

第2楽章は1小節目の4拍目から6拍目でa mollで考えるとイタリアの6の和声のF-A-Dis の音が、5小節目の4拍目から6拍目もF durで考えるとイタリアの6の和声が使われるので、

1小節目のバスのFの音から次のEへの進行、5小節のバスのDesからCへの進行をよく味わ

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う事。11小節目、13小節目は多声部的に書かれている。属七からⅥ度への和声進行の6小節目 から7小節目、26小節目のGis-H-D-Fの音から27小節目のⅥ度のA-C-Eの和声進行が印象深 い。2楽章の最後はGの音で終わるが、Gott(ドイツ語で神)の頭文字である音でGottへ語って いるように私は感じる。

第3楽章の15小節のEs17小節のE19小節のEsと半音を行きかうので変化を感じるこ と。86小節から98小節までAの音が保続される。106小節からのF-F-D-H-G-Fは第2楽章の 24小節、25小節の右手のF-D-H-F-D-Hと使われている音と下行で共通性がある。この3楽章 で特徴的なのはペダルの長さである。ペダルが1小節から8小節、9小節から12小節、13 節から 22 小節まで続くが、違うハーモニーがあるにもかかわらずペダル記号が続いている。

152小節から166小節まで属音のGの保続音が続く。175小節からc mollになり177小節から c mollのⅣ調のf moll179小節からはc mollのⅥ調のAs durになる。189190小節ではAs dur のⅤを基本として経過和音が使われる。Hの音が3回スフォルツァートで印象深くあらわれる のは197205209小節でこのHによってc mollへ転調する。221小節から224小節までAs 保続音が、225小節から228小節までFの保続音が、229小節から240小節まではDesの保続 音が使われる。各フレーズの調性の主音なので安定感がある。

344小節から348小節まで主音のCの保続音、352小節から360小節までもCの保続音、368 小節から402小節まで属音のGの保続音が使われ、377小節まではⅤ度とⅤ調のG durの属七 の音が交互に出て繰り返される。378小節からC durのⅤ度、382小節からは属7,386小節か ら属9の準固有和音が使われ緊張感が高まる。403 小節からプレスティッシモで主題のテンポ が速くなる。441小節からAs durになり444小節でf moll449小節でDes durになるが、これ 221小節からのAs dur225小節からのf moll229小節からのDes durに対応する。465小節 から480小節までバスにGが使われ477小節からは右手のトリルのGも保続される。465小節 からオクターブが出てくるがグリッサンドで弾く場合、困難であるが、ベートーヴェンが使っ ていた頃の楽器だと現代のピアノよりも楽にグリッサンドが出来たと思われる。497 小節から As dur501小節からはf mollになる。509小節ではイタリアの6の音が使われるので、バスの Asから511小節への半音下のGへ行く気持ちが強い。542543小節で和音の一番上の音がE Cであるので第1楽章の301小節の1拍目のE302小節のCと共通している。515小節か 529小節まで主音のCがバスにあり529小節からはⅠ度の和音なので安定感がある。

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5.ベートーヴェン ピアノソナタ第23 ヘ短調 作品57 «熱情»

第1楽章の第1主題はC-As-Fと3度ずつの下行で始まるが35小節からの第2主題はC-Es- Asと上行する。冒頭は16分音符で数えながら弾くとリズムがきちんと保たれる。又、1小節 目のFの符点2分音符を聴き続けて次のAsへ、つないでいくと長いフレーズが作れる。決し て次のAsにアクセントがついて飛び出ない様に。5小節でナポリの和声が使われる。10小節 で交響曲第5番«運命»と同じように、同音が3回使われ「運命の扉が開く」動機が使われる。

ここで使われるのはDesCの音で1213小節でも使われる。冒頭はC-As-FCの音から始 まり4小節目からDes-B-GesDesから始まるので、ここでもCDesの音が重要なのが分か る。42小節の内声はAsからBesへ半音で上行するが、出てきたCDesのように半音がこの 楽章で大切な役割をする。47小節の下行は和声短音階と旋律短音階で使われる下行の音が両方 とも使われる。それが顕著なのがG-Ges-Fesの音である。和声短音階ではG-Fesが使われるが Gesの音は使われなく旋律短音階ではGesFesは使われるがGは使われない。34小節の和音 で一番上の音でDesが使われ35小節のオクターブではCが使われるのも101213小節との 共通点である。51小節からのフレーズで53小節のナポリはものすごい緊張感である。57小節 からのナポリも同様である。

65小節でH-Gis-Disとこれでいいのだろうかと質問するように始まり、次のH-Gis-Eでこれ

でいいと答えているようだ。79小節でe mollになり次は3度下がって81小節でC dur83小節 で同主調のc mollから85小節でまた3度下がりAs durになる。9192小節でバスでAsA の音を交互に半音で行き交うが、これは101213小節でDesCを半音で行き交うのと共 通している。109 小節から第2主題が展開していく。132 小節から 134 小節まで運命の動機が Des-Des-Des-Cで繰り返される。

134小節から再現部でf mollの属音のCの保続音が続き、139小節でDesの保続音、そして 144小節で又Cの保続音が151小節まで続く。保続音の変わり目を意識して弾くと良いと思う。

139小節、140小節はDes-Ges-Bとナポリの音が使われる。159小節で減三和音のE-G-B161 節でB-DesE-Gの減七の和音と緊張感が高まる。165166小節でF-F-F-Eと運命の扉の動機が 使われる。184185小節でDes-Cの音が繰り返される。190小節のバスのF192小節のGes この楽章で大切な半音の関係である。192196小節でGes-B-Desのナポリの和声が使われるが

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4小節、5小節と同じ音が使われる。193197198小節でDes-Cの音が使われる。194小節で バスでFから196小節でGesの音へ、198小節で左手にF-EDes-Cの半音が、又200201 202小節の左手の2つ目から3つ目の和音でもDes-Cが繰り返され、右手も200小節から203 小節までF-E-Fの半音が繰り返される。218219小節でナポリの6の和声の音のB-Des-Gが壮 大に使われる。222小節のE-G-Cの和声が223小節はF-As-Desf mollのⅤ度からⅥ度へ進行 し、Ⅰ度へ行くのを回避している。235小節から238小節にかけてDes-Cの音が繰り返される。

238小節のPiù Allegroで属七のC-E-G-Bが3回、そして次の239小節でF-As-CへⅠ度に解決 し、運命の動機が使われる。242小節と245小節の7拍目からのB-C-E-Gの和声が次の243 節と246小節へ、Ⅰ度のAs-C-Fに行かないでⅣ調のb mollの属9の根音省略の第1転回形へ 回避する。

第2楽章は変奏曲である。テーマが1小節目から、変奏1が17小節から、変奏2が33小節 から、変奏3が49小節からで、81小節からテーマが戻る。6小節目のBes-E-G-Desはドイツの 6の和音の音が使われている。Eの音をFesの読みかえと考えると)7、8小節の和音の一番 上の音でDesCDesが、10小節の和音の一番上の音でAsDesCDesと第1楽章で出て きたDesCの音が使われる。30小節で右手の最後のフォルテのAsから31小節でBへ音が 上がるがピアノになるのが印象的だ。49小節の和声はⅠ度→Ⅳ度の第2転回形で、初めて第2 転回形が使われる。それに対応する1小節の2拍目や17小節の2拍目、33 小節の2拍目はⅣ 度の基本形でバスがGesである。55小節の和音の一番上の音もDes-Des-C-Cが使われる。66 節の左手もDesCの音、74小節の左手の和音の2、3、4番目の一番上の音もDes-C-Des 音が使われる。又878890小節の和音の一番上の音でもDesCDesが使われる。95小節の Des durのⅤ度のAs-C-Esが次にⅠ度の和音に行かないでB-Des-E-Gと減七の和音へ回避する。

第3楽章は減七の和音で開始。5小節目でDesCの音が、131415小節でもCDes 音が繰り返される。20小節でCFAsCと上行するが第1楽章の第1主題はCAsF.と下 行していたので反行している。第1楽章の5小節目で使われるナポリの音が、第3楽章の24 節目でもB-Des-Gesの音で使われる。28小節の左手の和音の上のCの音、32小節の和音のDes 34小節の和音のCの音が使われる。50小節から64小節の16分音符の左手の音は心の中で良 く歌うと良いと思う。7678小節目で右手の1番目でDesが、最後から2番目でCの音が使わ

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れる。また7678小節の右手の最後の音はDesだが、80小節ではDに変化するので違いを良 く聴くこと。868890小節の左手の和音もDesCの音が繰り返される。96小節から右手 を左手が追いかけるが左手をはっきりめに弾くと掛け合いがよく分かる。111小節でf moll 属七の音が112小節でⅣ調のb mollの属9の根音省略の第4転回形へ回避するのでGes-C-Es- A-Cの音を力強く弾く。

116小節のGes118小節でFへ進むが、度々出てくるDesCの半音関係との関連がある と思う。130小節のb mollEs-Ges-Cesのナポリの音も印象的だ。134小節から137小節のB- A-Bも半音の関係なのでDes-Cの半音と関連があると思う。又142小節から149小節のF-Ges- F150小節から157小節のC-Hの半音も同様。168小節からf mollの属音のCの保続音が続き 緊張感が高まり176小節の和音でナポリの6の和音のB-Des-Ges-BとなるのでここにDesの音 が入っていてCからDesへの進行がある。184小節から205小節まで減七の音が印象的に続く。

260小節でf mollのⅥ調のDes durへ転調し、268小節でf mollへ戻り268270272小節と B-D-Gesのナポリの6の音が使われる。278小節から284小節も右手にDesからCの音が使われ る。1番括弧の301小節目でf mollの属七のG-C-E-Bが次にⅣ調のb mollの属9の根音省略の 第4転回形へ回避するので302小節の和音を緊張感を持って弾く。2番括弧では f mollのⅠ度 へ解決する。300小節から304小節まで旋律短音階の上行形と和声短音階の下行形が交互に出 てくるので緊張感が高まる。329330337338で使われるナポリの6の音が印象的だ。341 節からはバスに主音のFの音を基本として置き、Ⅰ度とⅤ度が交互に出た後、353小節はⅠ度 のアルペッジョと和音で激しく締めくくられる。

おわりに

今まで分析していた曲と、今回新たに分析した曲をまとめてベートーヴェンの5つのピアノ・

ソナタについて書いたが、今回の執筆によりこれらの曲に対する思いが一層深まった。ベート ーヴェンの曲を演奏すると生きるエネルギーを得られるように思う。

参考文献

大木正興他 1980『最新名曲解説全集第14巻(独奏曲1 音楽之友社 。 児島新 1985『ベートーヴェン研究』 春秋社 。

島岡譲他 1965『和声 理論と実習Ⅱ』 音楽の友社 。

諸井誠 1978ブレンデル『ベートーヴェン:ピアノソナタ全集譜例』。SFX-9664~76

(レコード製作日本フォノグラム)

参照

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