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監査公準論研究序説

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(1)

470   第36巻 第4号  

監査公準論研究序説   

−−−  マクツ・ジャラフ監査理論における  

監査公準の意儀に、ついて  

− 52 一▲▲▲  

Ⅰ はじめに  

周知のように,アメリカの会計学の研究において,従来ほ実践指導を主たる   目的としてきたアメリカ公認会計士協会ほ、最近において、現代の会計実務お   よび会計理論を根本的に再検討すべく,新しい調査研究活動を始めている。そ   の研究の成果として、既に4号までの研究書が発行され、今後も多くの研究書   が発行される予定とされている。既に発表された研究書算1号ほ、「会封の基  

(1)  

礎的公準(TheBasicPostulatesof Accounting)」と名づけられる,高度の理   論的展開を行なったものである。   

会計学における理論指向の状況と共に、監査紅おいて−も同じ傾向が芽ほえつ   つあるといえる。その顕著な例がマクツ・ジャラフであり,かれらほ純理論的   な展開を監査において試みている。監査公準(auditingpostulate)は,このよ  

うな理論構造において,最も基礎的なものである。とはいうものの,監査公準   それ自体の提唱はもとより,監査公準に関する主張または議論ほ非常に新らし   いものである。監査公準という言葉にしてからが,マクツ・ジャラフの吉「監  

(2)  

査理論(The Philosophy of Auditing)」において−,ほ・じめてこしらえられた  

(注)(1)M.Moonitz,TheBasicPostulatesofAccountin‰19611この邦訳ほ,佐藤孝⊥・  

新井清光共訳「会討公準と会計原則」の内に含められている。   

(2)R.K.Mautzand軋ASharaf,ThePhilosophyofAuditing,19611   このマクツ・yヤラフの監査理論のわがくにへの紹介ほ,近沢教授によって精力   的に行なわれている。本書の第1章についてほ,「監査理論の探究について」(産   米経理 昭和38年1月号)で,第3章についてほ,「監査公準論につい七」(産業   経理 昭和37年6月号)で,第5葦:に・ついては,「マクツの監査証拠諭について」  

(会計 昭和38年7月弓)で糾介されているc   

(2)

監査公準諭研究序胡  

471   

ー・うぶ・−一  

ものである。それほ,従来ほ監査公準の存在すら認識されていなかったからに   他ならない。   

このような事情から,監査公準論に関する従来の文献は皆無であり,またマ   クツ・レヤラフの主張紅対する反響も,今までのところ明確な形では現われて   いないので,文献として利用できるものほない。そこで,われわれとしては,  

監査におけるこの重要な問題を研究するに当ってほ,マクツ・レヤラフの主張   を基本的な依り所として検討して行かねばならない。本稿では,監査公準論に  対する序説として,監査公準の背景,すなわちマタツ・ジャラフの監査理論の   体系において,監査公準がどのような意味,性格,および地位をもっているか  

ということをとりあげる。それ改に.,本稿でほ直接に,どういうもめが監査公   準であるかというような具体的内容の議論に.まで及ばない。むしろ,監査理論   における監査公準というものを抽象的軋とりあげる。その関係か挙,公準自体 わ′  

についてばかりでなく,マクツ・ジャラフの監査理論の全体系に関説すること   に.なるであろう。  

Ⅰ‡監査公準の重要性    1.監査理論に.おける重要性  

(1)監査公準研究の端緒   

マクツ・レヤラフほ,最初から監査公準に∴問題を限定してとりあげ,それを   展開したのでほない。かれらほ監査人が実際に取り扱う実際的問題より出発し   て,理論的研究の必要を感じて,理論体系の建設という大きな構想に.進展し   た,−・つのプロセスにおいて関連する問題として公準論をとりあげたのであっ   て,独立に,換言すれば理論体系に無関係に論じているので 

ほ,かれらの書の序文に明らかである。すなわち,かれらの研究の経線を,つ   ぎの〕こうに簡単に説朋している。かれらの研究の発端ほ,監査証拠の性償に対   

私も,すで紅,ニ,三の論文において,かれらの主張を紹介L.てきた。「欄ミー立  

性巨断念の新緑点‡(監杏 昭和37年7月号),「監査人の独裁性−一米由における  

その概念と規制の展開kついて−−−−−」(香川大学経済論叢 第35巻罪3号),「現  

代証券市場と監査職能の展開」(香川大学経済論叢 罪35巻第5号) 

(3)

/172  鰭36巻 第4弓   

一 ふゴ一・  

す・る関心であって,研究な・始めたときにほ,このような大きな構想の結果を予   想していなかった。しかし,研究を進めるに従って:,証拠という概念(concept)の   提示には,その基礎とし子公準(postulate)ま−たほ基本的前提(basicassumption)  

を展開する必要があり,さらに.公準と監査実務および研究軋よって提出される  

(3)  

諸概念の考察へと研究が進んで,かかる理論体系が作られたとされる。それ放   かれらの研究の意図ほ,監査理論の展開であり,かつ監査研究の1つのパターー   ンを提示するこ.とであったのである。   

従って,われわれがマクツ・レヤラフの公準論を研究するさいにほ,マクツ  

・ジャラフの監査理論と−・体のものとして研究しなければならない。  

(2)監査の理論的研究の必要性   

マクツ・レヤラフは,監査理論の存在,すなわち,多くの基本的前提と一周と   の統合的思想(basic雪SSumPtion,integratedidea)とがあること,そしてそれ   らの理解が監査の発展および実践に直接役立つというこ.とな主張する。換言す   れほ,監査理論の理解が,現在監査人が直面している困難な問題の合理的な解  

(4)  

決を与えると.いう根本的な考え方に基づいている。   

ところで,マクツ・レヤラフは,現在において監査理論とよびうるものほご   く少数しかないが,理論は今芽ばえ始めてきたという。現在の監査理論の欠除   は歴史的に跡づけられる。すなわち,監査ほ精査の手続として生成した。こ・れ   は,英,独の場合に見られるように,与えられた基準またほ標準様式との合致   を調べるものであり,そこからは監査理論ほ生じなかった。しかし,最近,監   査手続について,「如何にして」という問題はいうまでもなく,「何故軋」と  

(5)  

いうような理由づけが問題紅され,そ・こに理論の芽ほえを見ることができる。   

つぎに,現実の監査が,その実践においで多くの困難な問題を抱いている事   実が示される。例えは,慣行的な試査とか,サンプリングが,監査人の意見を   立証するに十分であるか,マネ・−iタメント・サ−ビスほ監査に必要な独文性を  

(31RいKMautz and HASharaf,Of.citい,Vii  潮Ibid.,p‖1 

15)Ibid.,pP..1〜3 

(4)

監査公準論研究序説  

473    ー5J−・  

侵害しないか,さらに内部統制の欠陥の指摘,不正の摘発,および経営者の不   能率,判断の誤謬の指摘などについて監査人ほ責任があるのかなどの多くの問   題がある。しかるに,現在監査人は,これらの基本的な問題の解決の手引きと  

なる妥当な原則を・もたないし,かつまたある監査人は全く間違った問題解決の  

(6)  

態度をとっているとされる。   

このような深刻な現状に対して,マクツ・レヤラフは,監査理論の必要性を   説き,今こそそのときであるという。現在の多くの困難な問題の解決のために   監査理論が必要であり,かつまた監査は1っの知的職業として−自己の理論に関   心をもつべきである。現在こそ・そのときである。従来は,監査それ自体の確立  

と承認とに忙しくて,理論建設の余裕がなかった。しかし,監査職業が総合的   な理論をもたないことが,むしろ聞達っていると考えられるようにまで,監査   ほ成長した。監査は,哲学ともいうべき高度の理論をもちうるのであり,監査   人仁!身が自己の領域における理論を建設しなけれほならない。   

そこで,内省の機会を作って,監査の前提,目的,方法などを研究しなけれ  

し丁)  

はならないとされる。   

このような所論ほ,当然に監査公準の必要としても,読みうるものである。  

(3)監査の理論的アプローチと監査公準   

マクツ・レYラフほ,監査の理論的アブロ・−チとして,哲学的アブローーチ  

(philosophicalapproach)を利用して,監査に適用する。哲学とほ・,知識の集   積でほなく,知識に対する態度であり,哲学的アブロトーチは,(a)理解(compfe−  

hensiop),(b)広い視野(perspective),(c)洞察(insight),(d)想像(vision)の4   つの要素によって構成されるものとする。その内の1つの要素が公準に閑適す  

る。  

(a)理解は,全体的理解をな意味する。それ故に,−・般的概念を併用し,郁   々の関連を発見し,かつこれらの阻連を通じて意味ある全体として理解する。  

監査でほ,監査の一・般的諸概念,すなわち証拠,適正な・注意,汐スクロ・−ジャ   161Ibidりpp.3〜J4 

(7IIbid.,pp.5〜6 

(5)

‑171  男36巻 第4号   

岬・β6 【  

−・,独立性などを研究し,そこから監査が社会的に有用であるという理解に基づ   く包括的かつ凝集的理論(comprehensiveandcoherentbodybfknowledge)  

を展開する。  

(b)広い視野は,物事の負突かつ完全な意義を把握するのに必要である。狭   い観点とか特別の利害にとらわれないで,総合的な重要性とか関連性に照して   判断しなけれほならない。広い視野は,十分に根拠のある判断に必要である。  

(c)洞察ほ.,探究の深さを強調・する。洞察とほ,われわれの考え方の根底に   ある基本的前提を明らかに.することである。基本的前提は,推論の基礎である   が,それほ隠れていて−,その重要性が認識されない傾向がある。どのような主   題についても,その基本的前提およびその性質,欠点および恵儀が明らかにさ   れ,かつ検討されるまで,本当の進歩というものはない。この点で,監査ほ遅   れている。監査が重要性を増すにつれて,それは現代社会のより重大な部分に.  

接触するようにな二つてきた。しかし,監査の基本的諸前提はまだ十分な検討お   よび評価をうけてこいない。これらが不明瞭に留るかぎり,議論が建設的な結論   をうる望みほない。もしも,監査において,偏見や不建全な論理を避けようと   するならば,監査理論の基礎としての公準を公開し かつ承認をうけなけれは   ならない。  

(d)想像とほ,予見またほ,予測を意味する。すなわち,将来とか,ある問   題紅対する代替的な解決案の結果を判断し,かつ表現することである。こ.のよ  

うな問題の実体とか,将来紅おけるその意味を見通す能力ほ,学問の見通しを   え,かつ目標を確立する。   

哲学的アブロ−チは,以上の4っめ要素を含む総合的な見方である。すなわ   ち,問題を全体的に理解し,総合的な相互関係紅おいて考察し,その推論の的  

(さ)  

提虹まで洞察し,見通しおよび目標を明確にするまで予測することで参る。   

こ.のように,公準は哲学的アブロ・−チによって展開されるべき基本的なもの   であり,かつ公準は哲学的アブロ−チの1つの要素である洞察によ、つて明らか   にされる。  

㈲Ibi血,pp8〜10 

(6)

475   監査公準論研究序説   一− 57・−  

(4)監査理論の特徴と監査公準   

マクッパンヤラフほ,監査の理論的展開な哲学に基づかせる。哲学とほ,「  

何故や」という質問を永続的に展開して行く手続である。その方法に.は,分析   的方法と佃値判断的方法との2つがある。監査は,証拠を集めかつ評価すると   いう事実の問題と,社会的責任および倫理行為という価値判断の問題とをもっ  

(9ノ  

ているので,2つの方法の総合を必要とす・る。   

撃査に哲学が適用できるかどうかについてほ,監査の性質の検討が必要であ   る。通常,監査は会計学の一価分であるように考えられているが,そうでほな   い。勿論,監査ほ会計学と密接な関連をもっているが,決して全体と部分との  

関係にあるのではない。何故ならば,会計理論および会討実務をい  くら研究し  

たところで,そこからほ監査理論ほ生れない。監査ほ,会計学,論理学,数学,行   動科学,コミニケーシ  ョン,倫理学,およびその他の多くの関連諸科学から多  

くのものを借りている。しかしながら,監査ほ独立の本体をもっている。監査   ほ.,関連諸科学の概念を,監査の問題に適するように修正して採用する。監査   ほ,監査の性質および職能に特有の概念を形成す・る。他から借用した諸概念   と,自ら形成した諸概念とが,凝結的な思考に統合される。これ柊監査特有の   職能,方法,規則(precept)と共に,監査に1っの学問としての地紋を与える。  

この学問の基礎ほ,−・組の特殊的前提であり,それは前の要素と共紅,監査理   論に特徴を与える。借用概念の選択,修正,統合と必要な概念と方法論との展  

(10)  

閑が,監査理論に独立的な地位を与える。  

それ故に,マクツ・レヤラフは,監査を一つの学問の特殊領域であるとし,  

監査ほ抽象的概念をとり扱い,基礎的学問に基礎をおぎ,合理的な公準,概念,  

技術,規則の構造をもち,厳密な知的研究に.値するとする。しかし,現実に.  

は,実際的アブロ・−チが採用される傾向がある。だが,監査人ほ常に監査の実   務および手続な実際的な実践に対して吟味するばかりでほなく,監査の基礎理   論に服して検意=ノ,新しい問題と古い問題の両方に適用可灘な方法の理論せ研  

9JIbid。,pp11〜12 

10旨Ibid.,pp13〜16   

(7)

第36巻 第4号   476   一言ざ・−−  

究しなければならない。そこで,もしも監査の理論的基礎を忘れるならば,監   査はその地位を失ない,かつ困難な問題に対する解決の方法を失なってしま   

(11)  

う。   

このように,監査公準ほ監査理論に特徴を与える基本的な要素の1つであ   る。   

2.監査方法論における重要性   

(1)自然科学方法論との比較における監査公準   

設には方法論が必要である。これに閲し、マクツほ自然科学の方法   理論の建  

論と.監査の方法論とを比較する。方法論ほ・態度(attitude)と方法論的手続  

(methodologicalprocedure)との二つの内容に・分けられる。自然科学の態度   の特徴は,好奇心(curiosity)の駆使,合理的な懐疑主義(reasonable skepti・  

cism),決定性の希望(desire for conclusiveness),精神的偏見の意識的排除  

(conscious avoidance of mentalbias),誤謬紅対する用心深さ(alertnessto   error),限界の認識(awareness oflimitations),体系的な一・般化への傾向  

(12)  

(tendency toward systematic generalization)などに要約せられる。   

ところで,学問の方法ほ,問題の性質,学問の種類および学問の発展段階に  

(18)  

よって変る。この意味紅おいて,監査の態度ほ,つぎの3つの構成要素をもつ。   

第1に,監査は,その関心および探究の範囲を,基本的に判断が要求される   事項,例え.ば財務諸表に限定する。   

第2に,監査ほ,判断を形成し,表現する場合に・,公平またほ独立.の立場を   とる。  

(14)   

第3に.,判断の形成および表現ほ(合理的に利用できる証拠紅基づく。   

つぎに自然科学の方法論的手続ほ,つぎの8っの段階をもっている。   

第1に,問題を暗示する予備資料を考察する。  

(1n Ibid.,pp〜17 

(12)Ibはノ,p′ノ20   

(13)Ibid.,pp.20〜21   

(14)Ibid巾,pp21〜23.   

(8)

監査公準論研究序説   一反9−叫    477  

第2に,問題を形成する。   

第8に,問題に関連する諸事実を観察する。   

第4に.,予備的に利用できる知識とか,経験を利用して,問題に対する手掛   りをうる。   

第5に.,問題の−・時的解答としての仮説(hypothesis)を形成する。これは利   用しうる資料のもっとも合理的な説明である。   

第6に,仮説が意味するものをひきだす。   

算7に,仮説な・,追加的証拠によって−,より厳密虹検討する。  

(15)   

第8に,その結果として,結論がだされる。それほ仮説の肯定またほ否定で   ある。   

これに対して,監査の方法論的手続は.,監査が,事実の問題(prOblems of   fact)と.価値判断の問題(problems of value)との二億類の問題をもつことに   応して,2つに分れる。   

事実問題についての方法論的手続は,つぎの8つの段階に分れる。   

第1に,監査契約という総合的問題を認識,またほひきうける。   

第2に,問題に.関連する諸事実を観察する。   

罪8に,総合的問題を個別的な問題紅分割する。例えば,財務諸表ほ検証す   べき命題たる項目の集合である。   

第4に.,個別的な問題に適した利鳳できる証拠を確定する。   

第5に,適用できる監査手続の選択および適当な手続を展開する。   

第6に,証拠をうるために.監査手続を実施する。   

第7に.,つぎの三つの観点から証拠を評仙する。  

a.過当性および正しさについて9   b.追加的な問題を示すために。  

c.判断形成の十分性について。   

第8に,つぎの2つについて判断を形成する。  

胴lIbid,pp.23−26   

(9)

478   解36巻 韓4弓  

ー6∂ −  

a.個別的命題について。  

(16)  

b.総合的問題について。   

これまでの説明において分るように,マクツ・ジャラフほ,自然科学と監査   との方法論的手続の類似性を強調しているが,さらに,両名の間紅は.つざのよ   うな3っの大きな相違点があることを拒摘する。   

第1は,証拠の性質である。自然科学者ほ,決定的証拠をもつ場合のみ満足   するが,監査では,属々次善の証拠で満足しなければならないこと.がある。何   政ならほ,監査終その調査行為において−,経済性を考慮しなければならないか   らである。証拠の制約ということほ,当然に判断の形成に・も影轡をおよばす。  

このような場合に注意しなけれぼならな車のほ,そのようなときにほ現状を正   確に認識し,その理由を検討し,特にそ・のような状況での結論を承認するにほ  

(17)  

注意しなければならない。   

第2の相違点ほ,検証の諸状況の統制の可能性についてである。自然科学で   ほ,実験の統制が可能であり,その利点ほ,検証の結果がより明確であるとい   うこ.とと,検証の結果を吟味す、るため匠,同じ検証が反校できるということで   ある。ところが,監査でほこ輿と同じ状況で監査することは不可能である。従   って,監査を反榎することに.よって,監査の結果が正しいか否かを吟味するこ   とはできない。それ故に,監査の吟味は非常に困難である。   

第3の相違点は,公準に関するものである。すなわ■ら,監査では,推論の正   しさが依存する基本的前提またほ.公準が,全く十分に表明されていない。この   ことほ監査にとって−非常に不幸なことである。こ.のような諸前提は,監査人に   ょってさえ,よく認識されていない。このことほ.,職業が非常な不利益を負い   ながら活動していることを示す。すべての学問にとって前提は重要である。推   論の基礎にある前提を明確に表明し,かつ認識しないことほ.,1つの欠ノ甘であ  

る。監査の根本的な問題の解決において直面している困難というものほ,監査  

(16)Ibid。,pp.27〜29  

(17)Ibid・,pp・29〜31   

(10)

監査公準論研究序説   ,・・・・(ヲJ・  

479  

(18〕  

の基本的前祝を表明しなかったことに.直接原催するのである。   

さらに,監査は社会科学の1っとして,価値判断の問題の方法論的手続を必   要とする。監査人ほ,監査の実践把.おいて,および社会に対する監査の目標と   茸任という職業において,価値判断の問題に直面する。この2つの問題におけ  

る価値判断の方法論的手続ほ,同じである。それほ,つぎの5つの段階に分れ   る。   

第Ⅰほ,問題の認識である。   

第2ほ,問題の表明である。   

第8ほ,  可能な解答の形成である。   

第4ほ,つぎの8つの点から可能な解答を評価することである。  

a.同種の問題についての過去の経験に基づいて推論することによって,  

b 可能な代替的解答の結果を考察するこ.とによって,  

C.可能な代替的解答が,職業の目的と一一激するかどうかを考察すること  

㌢こよって:,  

く】9)   

第5ほ,判断の形成である■ム   

以上のように.,マクツ・レヤラフは,自然科学の方法論と比較しながら,監   査紅適当な方法論を,かなり厳密に展開している。このように厳密かつ合理的   な方法論に従って結論が導かれるならば,正しい結論が得られるのであるが,  

なおそのためには,結論の正しさが依存する基本的前提または公準が明確に表   明され,認識されることが必要である。自然科学の方法論と監査の方法論にお   ける重大な相違点の1っが,監査における公準の欠除として指摘されたのであ   る。  

(2)判断の正しさと公準   

マタツ・シャラフは,理論に.おける公準を重視する。科学者ほ,既存の知識   になこにものかをつけ加えようとする。換言すれば,フロンティア・−を解張しよ  

(18)Ibid.,p、・32 

(l切Ibid・,pP小3墾′−36:   

(11)

480   第36巻 第4号   

−(;ご  

うとする。科学者は,方法論という適正かつ明確なパタ」−ンに・従って判断を形   成することによって,そのことを行なう。このような判断が首底一貫的である  

ように.するためには,、その判断が基本的前提濫依存せねぼならない。それ故   に,監査人が基本的前提の存在∴および判断の正しさがこれらの基本的前提に   依存することを認識すべきことを主張する。   

例えば,古典派経済学は完全競争を基本的前提として,需要と供給の変化に   基づく価格の変化の関係が説明される。しかし,完全競争ということは現実に   ほ存在しない。だがこの前提をゆるめることによって,より厳密に現実に接近   することができ,かつ適当な信頼度をもって推論することができる。自然科学   でさえも,宇宙の秩序,不滅の法則の存在,および事物の舷続性などの諸前提   に大きく依存している。どのような種類の学問であっ子も,基本的前提に依存  

(20)  

する。   

このように,合理的な判断の形成は,適当かつ明確な方法論に従うことが必   要であり,それはまた公準に対しで首尾一一周的であるか否かによって,その正  

しさが判定される。  

ⅠⅠⅠ公準の一般的性質および要件    1公準の一般的性質 −  

これまでのところ,公準についての統一・的な概念は形成されていないようで   あり,マクツ・レYラフも,かれらの考え方によって展開しており,例え.ばム  

・−ニッツの会計公準における公準とは同一・の意味ではない。マタツ・シャラフ   ほ,公準について,つぎのような5っの−・般的特徴をあげている。  

(1)公準は,学問の発展に必須のものである。公垂ほ,論理の出発.点であ   り,それなくしては論理を展開することほ不可階である。換言すれは,公準ほ.  

理論構造の基賂である。公準が,真実であるか否かは重大な問題ではなく,頚   大なことは,公準がなければ理論が全く展開できないということである。  

12αIbid.,pp26一・ノ271   

(12)

監査公準論研究序説  

481    ー6Jヲ ーー  

(2)公準は,それ自体由按に換証できない前提である。しか、し,ある理論体   系の公準から導かれた命題ほ直接に検証することができる。そしてこの検証こ   そが,その公準の正しさの証拠とな・る。公準を廼接に検証できない理由にほ,  

つぎの2つがあげられる。   

第1に.,公準ほ理論の基礎であり,もはや公準の下にあって,公準を支持  

(21)  

し,かつ論証するものは何もない。   

第2に,もしもある公準が直接に検証できるというのであれば,それほ公準   とい・うよりもむしろ仮説(hypothese)といわれるべきであり,そゐ仮説を立証   するために証拠が並べられる。公準というものは,検証されるというよりも,  

むしろ先験的紅承認されねばならないものである。   

しかし,このことは公準が事実または.真理に基づかないということを意味す   るものではない。公準の要件として−,公準が相互に首尾−一層的でなければなら   ないこ.と,および公準は理論体系の条件および命題のすべて−を立証するに十分   なこものでなけれはならないこととが要求されるとき,そこに公準に固有の真理   が要求されていることが分るであろう。   

それ故に,最初に−・時的に論証不能として∴承認された公準であっても,その   公準がある学問僚城の必要を満足させる度合が,公準の有用性の最良の基準と  

(22)  

されるのである。  

(3)公準は,推論(inference)の基礎である。公準ほ,正しい推論の基腱を   与え.,公準がある学問の必要をみたす程度紅おいて偏瀾である。−・月ある公準   が承認されるならば,そこから命題が導かれる。またその公準は,問題および  

(23)  

その間題の解決の基礎を与える。  

(4)公準ほ理論構造建設の基盤である。公準から推論でぎるのであれば,逆   に結論からそれが基づいている公準にまで逆上って跡づけで行き,これらの結   論を公準との合致性の点から検討することができる。それ故に,公準は理論の  

(21)Ibid,,p37.  

(2勿Ibid.,pp.37へノ38.  

(23)Ibid小,p39,   

(13)

第36巻 第4号   482  

・▲(う・ノ  

展開および検討の骨組を与えるものということができる。そこで,もし公準   が,首尾−・買的かつ十分なものであれは,その公準から合理的に導かれた推論  

しご1l  

は,首尾一周的かつ合理的なものであるに適いない。  

(5)公準は,そ・の学問の将来の発展に.おいて挑戦することのできるものであ   る。もしも,ある公準が真実でないことが立証されれは,その公準ほ放棄され   ねばならない。それ故に,公準は常に斬らしい証拠によって検討する必要があ   る。そこでまた,公準ほ明確に.表明されて,公開されていなければならない。  

何故ならば,隠されている公準を検討することほできないからである。理論お   よびその理論に.よる結論が健全なものであるためにほ,理論の基礎である公準  

(25)  

の性質と意義とを明確にし,常にそれらを検討することが必要である。   

このような公準の性格を理解して,マクツ・レヤラフほ,かれらが考える監   査公準の試案を提出している。ここでほ.,その監査公準の試案を掲げるに.留   め,その内容については,次稿において検討を試みることにする。それはつぎ   の.ようなものである。   

箱1の公準ほ,財務諸表および財務的資料ほ検証可能であるということであ   る。   

第2の公準は,監査人と被監査企業の経営者との間には,利害の必然的衝突   はノないということである。   

第8の公準は,検証のために提出された財務諸表およびその他の情報ほ,共   謀その他の異常な不正を蒙っていないということである。   

第4の公準とは,満足的な内部統制組識の存在は,不正の見込(probability)  

を排除するということである。   

第5の公準は,一・般に認められた会計原則の継続的な適用ほ,財政状態およ   び営業成績の適正な表示に結果するということである。   

第6の公準ほ,明確な反証のないかぎり,被監査企業にとって過去紅兵実で   あるとされたこ.とは,将来においても真実であると推定されるということであ  

(241Ibid.,p.39.  

那)Ibid,p39 

(14)

監査公準論研究序.説  

ー叫 6β −一・  

483  

る。   

第7の公準ほ:,独立的意見を表明するI∃的で財務的資料を検査するときは・,  

監査人は専ら監査人としての資格において行動するということである。   

第8の公準は,独立的監査人の職業的地位ほ,それに応じた職業的専門家と  

(26)  

しての義務を負うということである。   

2 公準甲要件  

また,マクツ・レヤラフは,公準が適当なものであるかどうかを吟味するた   めに.,公準の諸要件として,一ランガーのつぎのような見解を利用している。   

第1の要件ほ.,結合性(coherence)である。公準は・一つの理論体系K,帰属し   なけれほならない。すなわち,公準はその属する理論体系の言葉において,全   体的に.表現されなければならない。理論体系に.おけるすべて−のものは,概念構   造に.おいて他の命題と結合するものでなければならない。   

第2の要件ほ,貢献性(contributeness)である。公準は,理論体系のより進  

んだ命題を意味するものでなけれほならない。換言すれば  ,公準というものは   より発展した命題の演繹に貢献するものでなけれぼならない。   

第8の要件ほ,首尾一慣性(consistency)である。PLつの理論体系に・おいて−,  

相互に矛盾す・る命題ほ許されない。従って,ある公準または他の公準の意味す   る命題と矛眉■するものであってはならない。   

第4の要件ほ,独立性(independence)である。公準ほ,他の承認された公   準によって,共同的に,または単独的に・意味されるべきではない。何故なら  

ば,他の公準から演繹されるものほ命題であって,前提といわれるべきもので  

く27)  

ほないからである。  

ⅠⅤ 監査理論の構造における監査公準の位置  

1 監査の概念   価)Ibid.,pl.42.  

e7)Ibid.,pp,.51〜52..   

(15)

484   

帯36巻 第4弓  

ー 66 −  

マクツ・Vヤラフは概念(concept)が,完全な理論構造において蚤要な位置を   占めるものとしているので,理論構造をみるまえに,概念についての主張を■ま  

とめておくことにする。  

(1)概念の性質   

概念は,観察および経験からひきだされた抽象的形式,すなわち一腰化され   た思考である。   

概念は,それ軋ついて∴およびその間題について.のコミ.ニケーレヨソを助ける   ことによって,学問の発展似基礎を与える。概念ほまた,新しい学問において   集積した知識を舶織することのできる中核「coIe)を提供する。この意味で,概   念ほ理論構造が親放されるフレームワークを形成する。   

それ故払 監査において:も,暗黙の前提が定義され,研究され,そしてその  

(28)  

基本的概念が展開されるまでは,学問の体系化は期待できない。  

(2)概念の展開   

−・旦,ある学問のすべての重要な諸概念が展開されれほ,原則,基準および   規則のような追加的諸概念ほ,これらの諸概念に関連した地位をもつようにな  

、\  

る。   

ところで,監査における概念の展開ほ.,つぎのような4つの段階になるであ   ろう。   

第1ほ.,主題た関する諸事実の観察である。監査人,監査手続,財務的資料   の表示についての経済社会の実践などを観察する。   

第2は,観察された諸事実に基づく一・般化の形成である。例えば,監査人が   判断を形成するまえに.とる種々の実務を観察し,このような実務を通じてえ・ら   れる結果を「証拠」と名づけ,また財務取引の結果を計算書に表示する試みを  

「公開」(disclosuIe)と名づけることがでぎる。   

第8ほ,概念における重役,矛盾,脱漏などを排除するために,こ・れらの−・  

般化されたものを相互紅関連づけることである。諸概念が十分に展開される  

佗8きIbidr,pp,53〜55.   

(16)

監査公準論研究序説  

485    一肌−67−  

と,諸概念は相互に閑適ができて,理論(frame of reference)を形成する。そ   こにおいてほ,各部分は調和のとれた統合的全体の部分とならなけれほならな   い。諸概念の関連の考慮することほ体系的な学問において重要であり,それは   重役,矛盾,脱漏を防ぐ。   

第4ほ,∬・般化されたものを継続的な有用性の観点から再検計および吟味を   行なうことである。すなわち,概念の十分性(adequacy),強さ(strength),  

相互的関連性(interrelationsbips)および意義を確定する点より,検討する。   

概念の相互的関連づけおよび批判的検討ほ,体系的な監査理論を展開するの  

(29)  

に,とくに重要な段階である。  

(3)概念の種類   

第1に,概念は,哲学的(非特殊的て)概念と本来的(特殊的)概念とに分れ   る。   

その第1の哲学的(非特殊的)概念ほ,特定の学問またほノ技術に属しない概   念である。例えば,真実,確率,原因,立証などのように,すべての学問の基   礎である概念,すなわち−・般理論の領域の概念である。   

その第2の本来的(特殊的)概念は,特殊な学問領域における概念である。  

しかし,この特殊的概念の多くほ,ある単独の学問の占有物とはならない。そ   のような概念は,一・般的性質と特殊的性質の両方の性質をもつことになる。例   えば、,内部統制の概念について−は,統制という基礎的概念軋ついてのある程度   の知識と,情報,組織,保全などの種々な問題についての内部統制の特殊な意  

(30)  

味を十分に知らなければならない。   

もう・一つの概念の分類野方法に,理念的概念(idealconcepts)と現実的概念  

(realconcepts)とに分ける分け方がある。   

第1の理念的概念ほ,実際的状況の実体を示すものでほない。この概念は,  

フィクションであり,かつまたイメーージででもある。しかし,この概念ほ実体   に基づく他の諸概念の間の論理的関連を示すものであり,それほ.また理論的分  

田切Ibid.,pp.55〜61.  

伽)Ibid,,pp61〜62   

(17)

486   第36巻 第4弓   

−−6β −  

析のために.有用である。この理念的概念が現実と比仮されることによ、らて,問   題が明確軋される。   

籍2の現実的概念ほ,現実を一・般化して表現したものであり,監査は主とし   て:現実的概念を取り扱う。しかし,「・・であるべきである」という理念的   概念が,現実的概念を批判する基準として有用であることを忘れてはならな  

く$1)  

いq  

(4)概念的アプローチ  

′マクツ・レヤラフほ,監査理論の展開に概念的アプローチを適当とする○と   いうのほ.,監査は概念の厳密な検討が必要な段階に達し,かつ数学的なアプロ   ーチを採用できないからである。   

−・般に,経験的証拠を集めることによって検証することのできない概念ほ,  

理論の展開にほ有用でほないという誤解がある。監査においては,経験的証拠  

によって検証することは不可能である。監査は,現実の諸概念が何であるかを  

発見するはかりではなく,諸概念が何でなければならないかについても問題に   する。それ故に,理念的概念にも関心をもたなければならない。監査に・おいて  

も概念的モデルを形成することができ,そしでそれは経験的立証なしに,理論  

($2)  

の展開に役立つことができる。  

(5)オバレーショナルアブローチ   

マタツ・ジャラフほ,監査においては,できるだけオバレ1−レヨナルアプロ  

−チせ,すべての概念の形成において利用することが望ましいとする。   

オノミレ−・レヨナルアプロ・−チの主張というのは,概念は数個のオバレーレヨ   ンによって構成されるこ.と,換言すれば,物事をそれについてわれわれが何を   す・るかという言葉において理解するということである。それ故に,つぎの2つ   の概念の要件とされる。   

第1は,概念が−凝のオパレ」−ジョンによって構成されるか,あるいはそれ   らを含むというこ・とである0  

飢Ibid.,pp・62〜63・  

B2)Ibid・,pp.64〜65一   

(18)

監査公準論研究序説  

487    ーー69−−   

第2ほ,そのオパレ・−レヨンが独自な(unique)ものであるということである。   

このアプロ・一チを利用すれば,それだけ思考の明確性を増すことに.役立つ。一   しかしカ・バレージョナルアブローチに対する反対も存在するので,伝統的な概   念形成の意義と,オパレ−・ショナ・ルアブローチの正確性とを結合して,夫々の   方法の最も適するところに.適用サーるのがよJ、とされる。なお,マクツ・ンヤラ  

く3$)  

フは,オパレ・−レヨナ・ルアプロ−チせ,監査において強く支持している。  

(6)監査の基礎的諸概念   

マクツ・ジャラフは,監査における基礎的諸概念として,証拠,適正な監査   注意,適正表示,独立性および倫理行為などをあげている。そして−,かれら  

(34)  

ほ,これらの夫々が監査の理論構造において一重要な位層を占めるとしている。   

このように.,監査の諸概  念ほ.,監査の理論の展開において監査公準と共に,  

最も重要な位置を占めており,かつまた監査の諸概念と監査公準とが密接な関   連をもっていることが分るであろう。   

2 監査理論の構造図と監査の公準  

マタツ・レヤラフは,監査理論の全体的構造紅ついてつぎのような構懲を描   いている。それたよれば,監査はつぎのような5つの階層的構造をもつものと   される。   

第lに.,構造の基盤にほ理論的基礎(philosophicalfoundation)が置かれ,  

それほ最も基礎的な学問,換言■すれぼ抽象的学問に.依存する。   

第2に,この理論的基礎から公準が導かれる。この公準は,重要な諸概念の  

展開の基礎構造を提供する。   

常3に,概念的構造の階層が現われる。この要素の一・般化をめぐって,大部   分の理論が体系化される。   

第4に,これらの諸概念および諸概念から力をひぎだすこと紅よって,実践   家の手続となる多少とも明確な指示(directive)がえられる。これらほ,規則  

錮Ibid.,65〜67   

(34JIbidりpい6ノア・   

(19)

488   第36巻 第4号   

ーーー 70一山 

(precept)として適当に.記述することがでぎる。   

第5に,最後の階層として,規則が実際の状況に適用される実際的適用(pI、a−  

Cticalapplication)が最上層に.おかれる。   

以上のような構造において,理論的基礎,公準,概念は,実践を指導する規   則を生む。実践は,直接にほ規則だけに関係するが,規則ほ他の理論構造の階   層に関係するので,もし実践が規則に.従い,かつ規則が適当に.展開されるなら   ば,実践は理論の強力な基礎に基づくことになる。   

そして,なお注意すべぎことは,マクツ・レヤラフが提案した諸概念および   公準は,議論および経験に.よって批判検討され,粘錬されるまで,それらは規   則を導く源として役立たないと/いっていることである。従って,かれらほ議論   の大半ほ,監査の基礎的諸概念の展開にあてて−,規則の内容についてほ全然ふ   れていない。というのほ,かれらが主張サーるように,監査ほ.規則を非常に必要  

(35)  

としているが,より以上に根本的理論を必要とするからである。   

このようなマクツ・レヤラフの監奈理論の構造の構想図として−,別掲の図が   描かれる。全体の円形によ.ってす   べての学問が意味される。そして   全体ほ,夫々の学問の領域に分割  

、せられる。その中核にある同心円   ほ,基礎的学問,すなわち形而上   学,論理学,数学である。この中核   紅接触し,かつそこから力をひぎ   だすのが,監査理論の理論的基礎   である。この層にほ,当該学問値域   の目的,基本的性質および方法論   の定義が含まれる。諸概念を推論  

草間の−御裁としてプ)監査叫1 紺!ロ】  

する基礎としての公準は,この目的紅関連し,かつ調和的でなければならず,ま  

曲Ibidい,pp.245〜2−46   

(20)

−7−7−  

監査公準論研究序説  

489   

たその方法論の可能性と限界とを認識しなけれほならない。監査のよう粧実践   的学問は,理論的基礎を忘れがちになるが,それでほ理論ほかりでなく実体を   も見失ってしまう可能性がある。このような理論的基礎(公準をも含む)か   ら,概念的構造が展開され,さらに規則および実践の領域が現われる。また,  

こ.の図は,隣接諸科学が監査理論に接触し,多くの影響を与えていることを示  

(36)  

すためにも重要である。   

この図によっても示されるように,マクツ・ジャラフは,理論と実践との密   接な関連を明らかにし,このような関連に注意しながら,現実の問題を処理す  

ることによって:合理的な解決がえられるものと主張するのである。   

すなわち,過去においてほ,監査ほ基礎的理論の必要性または可能性のはと  

んどない実践的な問題としてのみ考え.られていた。それ故に,監査の実践的適  

用にのみ注意が向けられて,理論的考察ははとんど排除されてしまった。それ   に対し,マクツ・ジャラフは,理論と実践との密接な関連を監査において強調   する。何故ならば,かれらほ,実践的問題の唯一・かつ確実な解決は,理論の展  

($7)  

関および使用によってのみ可能であることを確信しているからである。この意   味において,マクツ・ジャラフの主張ほ,単に抽象的な理論をもて遊ぶという   ものでなく,極めて現実を重視し,かつ実践を重視しているものといえるので   ある。  

Ⅴ む  す−  び  

本稿ほ,監査公準論研先の予腑的手枕として,監査公準論に関する先駆的か  

っ唯一・的文献であるマクツ・ジャラフの監査公準諭をとりあげて,その監査鹿  

論に.おける位置づけをみることであった。ただし,その場合にほ,マタツ・レ   ヤラフの監査公準論の具体的内容が一価どういうものであるのか,そしてそれ   らは適当であるのかなこどの検討ほつぎの問題に残して,ここでほ監査公準論の   構造的背景を描きだすことに限られた。従って,これまでのべてきたところを  

(36)Ibid,ppい246〜2蛤   

(37)Ibid・,p・248   

(21)

490   第36巻 第4号   

ーー 7コ・一  

ふりかえ.ってみると,マクツ・ジャラフの監査理論の全体系を概観すること把・  

なったようである。しかし,そのことほ逆にいえは,、マクツ・シャラフの監査   公準論が,如何にかれらの監査理論のすべての部分と密接に関連しているかと   いうこ.とが明らかにされているといえる。そこで,マクツ・ジャラフの監査公   準論は,かれらの監査理論の体系において理解されねはならない。   

ところで,われわれは,マクツ・ジャラフの厳密かつ積極的な方法論および   理論構造に対して,突っ込んだ批判,検討を行なうだけの準備をもっていな   い。ただ,今の段階に.おいていえるこ.とは,われわれが従来において無意識的   に・,あるいほネ明瞭な革まで行なってきた論理的な思考方法を整理して,明確   なパタ・−−ンとして表明し,かつ検討によってそのノミ一夕・−・ンをよりよいものに.楷   錬することは有意義なことであり,またこのような合理的なパタ・・−ンに従うこ 

とにより,実践的な問題に対してより合理的な結論がえられるであろう。この   意味において,マクツ・ジャラフの見解が,−・つの明確なバク・−・ンを提示した  

ものとして,非常に有意義であろう。さらに,より盛大なことは,従来のよう   に問題に対する個別的な解決の方法をとるのではなく,問題に対する総合的解   決,すなわち多くの問題に.対してこ首尾一眉的な解決のより重大なことが.主.張さ   れている点である。監査の発展は,今や問題の総合的観点よりの意義づけが,  

必要な時代に達したといえるからである。   

なお,監査公準に関する積極的な議論の展開についてほ,稿をあらためて行  

なう予定である。   

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