飼 育 室 海 水 の 性 状
飯 塚 昭 二 ・ 梶 原 武
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Tab.2は12月5日測定したもので,当日揚水ポンプ故障のためまる1昼夜給水中止,ために第2水槽第3 水槽はフグ類と小マダイ(F.L.約IOOmm)を除いてすべて蛯死し,第工水槽の小アジ群は若干の死滅以外は 蝿死をまぬがれた。この結果からみると1・cc/4程度が生存可能の限界量のように思われる。現在行なわれて
Tab.2 ユ2月5日測定 溶在酸素量
俵二
階1水槽 第2水槽
3.occ/e
o.scc/e
第3水槽』2cc/e
ノj、 水 率曹 3.Occ/e
底 層
3. 5cc/e
o. 9cc/e
o.9cc/e
魚
類
小アジ約100匹
スズキ,シログチ,小マダイ,メジナ,
アイナメ,大マダイ(2匹),フグ類 ウミタナゴ約50匹
カナゴ,メバル
カワハギ,
いる給水量は1時聞に約901以上であるが大水槽でかなり高密度に魚類を飼養しても酸素量減少のための生 存不能状態になることはないのを知った。表層と底層の酸素量分布が均一でないのでないかという疑問に対 しては,その疑問が不必要なものであることを示してくれた。
pH pHについては!月8日より9.月初旬まで適宜測定した(崎辺湾観測資料参考)。その結果による と大俳8.4(salt erroピ未補正,以下同様)で外海水(以下外海水とは崎辺湾海永を示す)のそれと同じで 常時constantである。然し試料によれば4月下旬から低下しはじめ5月下旬には8.2に低下,その後回復 することなく8月には8・0にまで低下したが,これは常態ではなく貯水槽に沈澱した浮泥が夏期の高温により 分解pHの低下をもたらしたものである(この期間中外海では表層底層共8.4を示した)。 このことに気付き
9月になって貯水槽底の浮泥を除去したところpHの値は再び旧に復:した。
水 温 飼育水槽水の水温は外海水の水温と気温とで規定される。年間を通じてみると日中の最高は 7・OOc最高は28・0。cで外海水の表面水温底層水温のいずれよりも低いのが普通である (但し5月から7月 までの水温上昇期には外海表層,底層の中間の値を示した。外海表層水よりはTab.5に示した値で低いが特 にIO月ではその差が顕著で2・3N 2.5。c程度低い,これは10月に飼育槽水
温が急激に低下することを示すものであるから外海魚を飼育槽にいれる時に は注意しなくてはならない。 同じ状態でも春は秋程顕著ではないが5月が それに相当する。水槽の日々変動は不規則である,観測期間中 ( 5フ年9月 26日 》ノ58年10月21日)の記録から日々水温変化の差の最も激しいものをも とめると,L80c降下(ユ工月28日〜29日),2・0。o降下(11月 15日《 16日),
ユ・80c上昇(3月25日〜26日),L8。o降下(3月27日 》28日)で2。cを越 えることはなく,又4日間に3・6。o低下(lq月17日〜21),3日間で4・0。c 低下(L月14日〜17日),2日間で3・Oo6低下(3月26日〜28日)などがそ の最たるものである。 然しこの程度のものなら外海表面水においても観察 されることでそのため魚類の生存が著しくおびやかされることはなかった。
塩 索 量 当初はもっぱら比重測定を行ったが,比重計が種々の点で 不都合のため3.月3日からはMohrの銀滴定法による塩素量検定を行い8 月19日までの間,降水との関係を調べた。
飼育槽海水の塩索量は降水がない時は外海表層水と殆ど変らないが,それ よりも僅か0・5%o程度だけ低いのが常態である。降水による影響の表われ 方は降水時の外海の潮位,その日の潮位差,降水時間の長短,その激しさ等
に関係し一定しておらない。然し一般的に降水の影響は外海表層水干にはす ぐにあらわれて来ず,その影響され方も激しくはないが残存効果は持続的で
年 月
水温差
1667
1958
x
z
皿
皿
W V
X
2.30e
1. 4 it
1.1 it
i.Oti
O. 8 ii
O.8 ,i
O.7 i,
Ll ,i
1.C i,
O. 9 t,
O. 8 t,
1.工〃
2.5 it
丁ab.3 外海表面水温と飼育 槽水温差月別平均
Z8
ある。これは外海水は流動と混合によりすぐ旧に復するが永槽水では雨が止んだ後でも地下水として徐々に 濾過井戸に侵入するためである。4月上旬の降水は(F;9・ 2参照)飼育糟水の塩素量を外海表層水と同程度
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飼奢槽水塩棄量
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Fig.2外海表層,底層及び飼育槽水の塩素量と降水との関係
にまで下げたが,他の降水効果と較べると特長的である,普通飼育槽海水は外海表層水程には塩素量は低下 しないというのが常態であるからである。この理由を考えてみると,当日(4月4日)は1年のうちで最も 潮位差の大きい日で(潮位差318cm,佐世保港平均潮位差18Dcm)最下潮時には約5m海底が露:出する,この 時激しい降永があったため差しく濾過井戸水の塩素量が稀釈されたと考えるが,厳密な意乗での理由づけは 詳らかでない。又ある程度降水があったのにその影響が全く表れないこともある,6月6日,38.3mmの降 水で影響ほとんどなく,6月29日29・lmm,8月工0日13・5mm,8月1工日38・8mmの各降水で影響はほとんど
なかった。これは降水効果がごく表層性にとどまったことと潮位差,及び降水時の潮位のためであることが その後の調査で判明した。反対に殆ど降雨らしきもの炉ないのに塩素量だけが低下することもある。これに 4月n日,5月26日の例がある。このようなことを考えると降水量:と塩素量の低下を論ずることは極めてむ
1.激 しい 降 雨 の あ とに水 槽 水 が 濁 る こ とが あ るの で 採水 機 構 の 何処 か に欠 陥 が あ るの で な い か。
2.溶 在 酸 素量 は水 槽 の表 層,底 層 で殆 ど変化 は な い 。
3.大 水 槽 で はか な りの 高 密度 で魚 類 が 飼 育 され て も溶在 酸 素 量 は3・0cc/l以 下 と な る こ とは あ ま りな い。
これ は現 在 の よ うな 上 方 よ りの落 下 法 式 が 大 い に 関 係 して い るた め と考 え る。
4.pHは 外 海水 と殆 ど 変 らない が,夏 期 に は沈 澱 し た浮 泥 が 分 解 し てpHを 低下 さ せ る こ とが あ るの で 時 々貯 水 槽 底 の浮 泥 は 除 去 す る必 要が あ る。
5.水 温 の 年間 最 低,最 高 は7.0℃,28.0℃ で あ る。
6.前 日 との温 度 差 の 最 も 大 きか った の は2.0℃ で あ る。
7.降 水 量 と塩 素量 の 低下 との関 係 は極 め て 複 雑 で,降 水 時間 の長 短,そ の量,降 水 時 と観 測 時 の関 係,降 水 時 の潮 位,当 日の 潮位 差 等 に よ って 決 定 され る。
8.水 槽 水 の塩 素 量 低下 は大 抵 の 場 合 外 海表 層 水 程 に は 低下 し な いが 降 水 効 果 は持 続的 で 残 存性 が あ る。
9.調 査 期間 中著 しい 降 水 が な か った ため 塩 素量 低 下 に よる飼 育 魚 が斃 死 す る こ とも なか った が,外 海 表面 水 のChlorinityで4‰ ま で 低下 した こ と もあ るので,こ の よ うな 時 飼育 槽 水 に 与 え る影 響 は今 後 調 査 の 要 が あ る。